『火の鳥』からの『フラトレス』&『ボレロ』を満喫した「サラダ音楽祭2025」♪

2025年9月15日(月・祝)、前日開幕した「サラダ音楽祭」2日間の2日目、池袋の東京芸術劇場に出掛けて来ました。この日はまず、13時にプレイハウスにて、Noism2による「親子で楽しむダンス バレエ音楽《火の鳥》 Noism2メンバーによるダンス公演&ワークショップ」、そして15時からはコンサートホールでの「音楽祭メインコンサート《Boléro》」において、Noism1の『Fratres』、そしてNoism0+Noism1『ボレロ』が観られるとあっては駆けつけない理由を見つけるのが困難なスケジュールが組まれていたのでした。

まだまだ蒸し暑さが去らないなかでしたが、JR池袋駅から地下通路を使って劇場に向かいますと、不快感はありません。胸が高鳴るのみで、ややもすると足早にさえなりそうでした。

エスカレーターで2階のプレイハウスへ進みます。入場時に渡された二つ折りカラー・リーフレット(デザイン:ツムジグラフィカ・高橋トオルさん)の素晴らしい出来栄えにワクワクしなかった人はいない筈です。名作『火の鳥』、満を持しての東京上演です。

この『火の鳥』の上演&ワークショップは前日の音楽祭初日から既に好評を博していた様子(当然!)ですが、私は各種SNSをほぼ全てシャットアウトしてこの日に臨みました。東京の(家族連れの)観客、一人ひとりの心に刺さる様子を臨場感をもって感じたかったからです。そしてNoism2メンバーの熱演もあり、その通りの「帰結」を迎えたことに心のなかで快哉を叫びました。

金森さんから若者に向けた「贈り物」という性格を有する名作『火の鳥』は、「0歳から入場OK!」と謳われたこの音楽祭での上演にあたり、衣裳、照明など様々な刷新が図られ、より広範な観客を惹き付けるものとなった感があります。特に作品のラストの改変!それはあの二つ折りカラー刷りリーフレットの表紙、容易に切り取れる「白いマスク」によって、誰もが「火の鳥」になった気分を味わえる工夫と相通ずるものと言えるでしょう。この度刷新された『火の鳥』、今後ご覧になる機会もあるだろうことに鑑みて、ここではラストの改変の詳細は伏せておくことと致します。そのときまでお楽しみに。

その後は、「スチール撮影可」のレクチャーとワークショップが続きました。時間にして約30分間、進行は山田勇気さんと浅海侑加さんです。客席から選ばれたお子さんが舞台にあがって、作中の「少年」が持ち上げられる場面を体験する機会なども用意されているなど、満足度の高い好企画だったと思います。自分もひとりの親たる身として、我が子が小さかった頃のことなど思い出したりしながら、微笑ましいひとときを過ごしました。

次いで、15時からの「メインコンサート」です。コンサートホールは3階席まで満員。

当然のことながら、都響(東京都交響楽団)の演奏は素晴らしく、20分間の休憩を挟んだ約2時間、それだけでもホントに贅沢な気持ちになりました。休憩前にはモーツァルトを2曲(『魔笛』序曲と《戴冠式ミサ》)、典雅だったり、厳かだったり、その流麗な心地よさときたら、もうハンパないレベルだったかと。

そして、休憩が終わると、いよいよNoismの登場となります。ペルトの音楽に合わせて踊られる『Fratres』、(彩り豊かで活気溢れるファリャ『三角帽子』を挟んで、)更にラストにはラヴェルの『ボレロ』が待っています。

『Fratres』は、先日の公開リハーサルで、金森さんが繰り返し口にされていた「手の舞」という視点から見詰めました。「う~む、なるほど」と。しかし、これまで幾度も観てきていて、「あ?ん?え?」となった見慣れない振付にも出くわします。終演後に偶然お会いして少しお話しをする機会を得た糸川さんから、それは「利賀村ヴァージョン」(『マレビトの歌』中の『Fratres』)と教えて頂き、既にして「古典」の趣すらあるこの作品も刷新が続いていることを知る機会となりました。

ラストの『ボレロ』。もう圧巻の一言でしかありません。赤い衣裳の井関さん、黒からベージュのNoism1の8人、全員が客席を圧倒し尽くしました。舞踊家にあって、「メディア」としての自らの身体を両の掌で確かめながら、ラヴェルによるリフレインの高揚をそこを通過させ、可視化して周囲に放っていくひとりと8人。

この日、都響が奏でたのは、ともすれば走りがちになりそうなところ、終始、それを抑制しつつ進んでいく泰然たる『ボレロ』であり、過度の興奮を煽ることをしない、ある種禁欲的な姿勢で向き合われたその音楽は、零れるようにニュアンス豊かなものとして耳に届き、その豊かさな響きに同調する舞踊家の9つの身体により、一瞬一瞬、味わい深い厚みが加えられ、見詰める目に映じることとなりました。かようにためてためて「走らない」『ボレロ』、これも糸川さんに伺ったところ、都響とのリハーサルを通してこの間変わらないことだったのだそうです。都度書き換えられていく『ボレロ』の記憶!都響とNoismによる一期一会のもの凄い実演を目の当たりにし、『ボレロ』のまた違った一面に触れた気がして、もう興奮はMAX。繰り返されたカーテンコールに、スタンディングオベーションをしながら、「ブラボー!」と叫ばずにはいられませんでした。

感動を胸に東京芸術劇場を後にしましたが、酩酊は今も…。

(shin)

「こ、これは!」作品の内奥に連れて行かれた驚嘆の「SaLaD音楽祭2025」活動支援会員/メディア向け公開リハーサル♪

酷い雨も去って、酷暑も少しは和らいだ感もありましたが、それでもこの日もやはり暑い一日に変わりはなかった新潟市。2025年9月6日(土)、りゅーとぴあ〈スタジオB〉にて、「SaLaD音楽祭2025」に向けた活動支援会員/メディア向け公開リハーサルを見せて貰ってきました。

受付を済ませて、ホワイエに並べられた椅子に腰掛けると、丁度、正面に見えるパーテーションを兼ねたホワイトボードに、「12:00~公開リハーサル ボレロ」や「ボレロ ダメ出しRH」の文字が書きつけてありましたから、そのつもりで入場を待っていました。

で、12時少し前に、スタッフから「今日は『通し』ではなく、…」とそのあたりのことが告げられようとするや、パーテーションの向こうから、「通します、通します」という金森さんの声が聞こえてくるではありませんか。『ボレロ』のあの高揚感に浸ることが出来る!入場を待つ者のなかに、胸の高鳴りを感じなかった者などいなかった筈です。同時に、この日の公開リハーサルは1時間の予定でしたから、「あと45分程度はどうなるのだろう?」というドキドキもありました。

促されて、〈スタジオB〉に入り、用意された椅子に腰を下ろします。その後、金森さんが「こんにちは」、そう言いながら入って来ます。奥の掛け時計は「11:59」を指しています。メンバーたちは『ボレロ』冒頭の位置につこうとします。

「いこうか。大丈夫?」(金森さん)
「どこまで?」(井関さん)
「通すよ」(金森さん)
「えっ?(知らなかったのは)私だけ?」(井関さん)
「昨日、最後まで確認したじゃん。あと通すだけじゃん?」(金森さん)

そんなハプニングめいたやりとりを目撃して、声をあげて笑う私たち。敢えて表情筋を動かしつつ、スタンバイに入る井関さん。金森さんが音楽スタートの合図を送るときには、張り詰めた空気感が支配していました。

そこからの約16分間、衣裳こそ本番と同じではありませんでしたが、音楽と舞踊が醸す圧倒的な生命力に揺さぶられつつ、惹き込まれて見入りました。

「オーケー!」そう言ってスタジオ中央に進んだ金森さん。手のスパイラルな伸ばし方、中尾さんと糸川さんによる井関さんのリフト、そして「昨日変えたところ」(!)など、幾つかの修正を加えていきました。そして全体的には、金森さんから、「本番は生オケだからどうなるかわからないけど、『ボレロ』は基本、『後(あと)どり』。くっちゃうと高揚感出ないから」という指示があったりもしました。

でも、金森さんから見て、この日通された『ボレロ』は満足いくレベルだったようで、「良かったよ」。更に、「オレは良かったと思うけど、皆さんからダメ出しないですか?」の言葉には、笑いながらも、拍手していた私たちです。

それらが一段落をみると、再び、
「『通し』やると思っていなかったから。今日はダメ出しだと」(井関さん)
「昨日終わってるから」(金森さん)
「両方、飛び交ってたから」(井関さん)
笑う私たち。すると、
「いいよ、いいよ、終わり。『Fratres』やろうか?」(金森さん)
金森さんを除いて、〈スタジオB〉の中にいた誰もが「!」っとなった筈。このとき、時間は12:25。
「ダメ出しは終わったから。ずっとそうやっていてもしょうがないでしょ。通さないから」(金森さん)
そんな訳で、その後、『Fratres』冒頭部分の入念な調整過程をつぶさに見る機会が訪れたのです。

「こ、これは!」それこそ、まさしく仏像への「魂入れ」にも似た、あたう限りギリギリまで表現に彫琢を施す時間。剔抉され、刷新されていく動き、そして身体。金森さんがメンバーの動きに向き合い、自らの身体でも示しながら発せられた言葉の数々に、私たちも『Fratres』という作品の内奥にまで連れて行かれることになった、そんな、実に得難い時間だったと言えます。そして、それらの言葉は、『Fratres』を鑑賞する際の私たちの視座に大きな刺激を与え、ことによっては、それを刷新し得るような深みを持つものだったと言っても過言ではありません。断片的に書き留めたそれらの言葉たち、そのなかから少しご紹介いたします。

「ただのポールドブラ(腕の動き)ではなくて、両手のチャクラを身体の前から上に」
「掌のチャクラを開く。何かを外から受けなきゃダメ。そこに掌があるだけじゃダメ。受信する手だから」
「手が伸びるから、身体が伸びる。両手のチャクラ、魂をつかむ。掌が自分の方に向いているか、外を向いているか。伏せて、自分の身体に寄せて、入れて」
「『Fratres』は全て手だから。手との関係性を身体化しないと、ポーズ・ダンスになっちゃう」
「手のなかにある何かを自分の中に入れる。自分の身体を撫でるということを感じて欲しい。ある種の官能性・エロさが欲しい」
「そのままのコントラクション(筋収縮)で足が伸びる」
「耳の後ろに何かあるんだよ。それをとらないと。何かは知らん。夜道で背後に何かを感じるような、自分の背後への感覚。それをとって、見る。掌でまわして、のっけたものを投げる。手をそっちに動かすために、身体を動かす」
「日本舞踊っぽい手の舞。手の繊細さが欲しい。ないと体操っぽくなってしまう」
「観る人に質感を届けなきゃいけない。形じゃなくて」
「持続させなきゃいけない。終わりはない。音楽は続いてるんだから。君たちのなかにある一つひとつのシークエンスを身体化してはいけない」
「手を空間に投げていく。掌にボールを持っている感覚。繋がってなくちゃダメ。ボールを落とさない」
「頭は下に。前じゃなくて。フォーカスは『イン』だよ。見えない壁に頭をぶつけている。鳥籠のなかで鳥が頭をぶつけている。行き詰まっている。壁、壁、壁。向こうに光を見て、リーチ・アウト。伸ばす。スパイラルで」
「宇宙まで伸びる。呼び込んで、自分の身体に集めて、抗って、パッ!離れて」
「外から何かが来る。リアクション。聞きたくないから耳を覆う。祈る。怖い」
「能動ばっかりで、受動がないから、『どうしてそうなったんだろう?』っていうサプライズがない」
「『動きが弱い』と言うと、すぐ、強くやっちゃおうとするんだけど、弱いのはイメージ。イメージの持続」等々…

私自身は『Fratres』という作品の核とも呼ぶべきものに接することが出来て、大興奮の時間となりましたが、それを「紹介」しようとすると、やはり、「紹介」と言うには程遠く、断片的な言葉の羅列となってしまう他ありませんね。その点、力及ばずです。すみません。それでも、上に書き付けたものから少しでも「作品」に近付くアングルを見出して頂けたなら幸いです。

時計の針は予定時間を超過して、13:10を指しています。金森さんが、「時間過ぎちゃった。こんな感じじゃないかな」、そう言ったところで、この日の濃密な公開リハーサルは終了となりました。もう目が点になりっ放し、息を詰めっ放しの一時間強でした。

この『ボレロ』と『Fratres』は、9月15日(月・祝)に東京芸術劇場〈コンサートホール〉にて「サラダ音楽祭」のメインコンサートとして東京都交響楽団の生演奏で踊られます。この日の驚嘆の公開リハーサルを経て、両作品がどう見えてくるか、期待感も募ろうというものです。楽しみでなりません。

なお、今なら期間限定ですが、TVer「アンコール!都響」で、昨年の同音楽祭にて踊られた『ボレロ』ほか(114分)を観ることが出来ます。よろしければ、そちらも次のリンクからどうぞ。

TVer「アンコール!都響」より「サラダ音楽祭2024」メインコンサート

また、今年はNoism2も同音楽祭に初登場し、9月14日(日)、15日(月・祝)の両日、同じく東京芸術劇場の〈プレイハウス〉を会場に、『火の鳥』の上演とワークショップを行います。そちらも楽しみです♪

「活動支援会員」であることのメリットを噛み締めた、豊穣過ぎる一時間強の贅沢でした。

(shin)
(photos by aqua & shin)

「纏うNoism」#11:兼述育見さん

メール取材日:2025/03/20(Thur.)&03/28(Fri.)

春の足音が確実に大きくなってきて、漸く、前の季節の忘れ物のようだった寒さも回収された感のある弥生の下旬。3ヶ月後のNoism0+Noism1『アルルの女/ボレロ』のチケット発売時期にもなり、その意味でも季節は決して留まることなく、前に進んでいると実感される今日この頃です。で、このタイミングでお届けするのは第11回の「纏うNoism」、兼述育見さんの回になります。どうぞお楽しみください。

「ファッションは楽しくて身近なものでなくちゃ」(アナ・スイ)

それでは「纏う」兼述育見さん、はじまりです。

纏う1: 稽古着の兼述さん

 *おお、「白+黒」!クールでシック、そしてすっきりシンプル。そして2枚目では、何と坪田光さんと糸川祐希さんにリフトされちゃって、ホント楽しそうな表情です♪
この日の稽古着のポイントを教えてください。

 兼述さん「アース・セレブレーション2023のTシャツです。ロゴが可愛くてお気に入りです!ズボンはユニクロで、とんでもなく伸びるので動きやすいです。靴下は靴下屋です」

 *他の色目(例えば、鮮やかな色)のものを着て稽古を行うことはありますか。あるとしたら、上下、どのような色のものですか。

 兼述さん「基本的にズボンは黒、Tシャツは白か黒が多いです。 衣装がぴったりしたものの時は、レオタードを着ることもあります。レオタードは寒色が多いです」

 *なるほど。そこは「締まる」感じのものを着られて稽古されているのですね。

 *「お約束」の靴下について伺います。靴下屋さんの靴下、黒の他にどのような色を買われますか。また、靴下屋さんの靴下はどのようなところが気に入っているのでしょうか。

 兼述さん「去年までずっとNEW ERAの靴下を履いていて、最近、靴下屋のものを履き始めました。まだ黒しか買ったことがありません!(気に入っているのは)素材が薄くて、床がつかみやすいところです!」

 *足裏の感覚が大事なのですね。

 *続いて今度はTシャツに関してですが、「アース・セレブレーション2023」で印象に残る思い出なども教えてください。

 兼述さん「2022年と2023年と二度、出演させていただきました。2回とも鼓童村で初めて合わせた時の衝撃がすごかったです。どれだけスタジオで練習して行っても、音の迫力に飲まれてしまいそうになり、自分の足りないところがたくさん見つかりました。 真夏の野外ステージだったので、熱中症との戦いも大変でした!」

 *鼓童さんとのコラボでは、(例えば、『鬼』なども)観ていると、両者、互いに斬るか斬られるかみたいな、ギリギリのところで対峙することになっているように感じられます。惹きつけられる訳です。そして更に熱中症とも戦っていたのなら、忘れられないのも道理ですね。真夏に開催される「大地の祭事」、やはり相当に過酷なのですね。

纏う2: 兼述さん思い出の舞台衣裳

 *これまでの舞踊人生で大事にしている衣裳と舞台の思い出について教えてください。

これはまた全く違った雰囲気の写真!!

 *本格クラシックバレエの素敵な写真ですね。こちらは?

 兼述さん「高校2年生のとき、地元のバレエ教室の発表会で踊った『くるみ割り人形』の「金平糖の精」の衣裳です。初めてのグランパドドゥで、体力的にとてもハードでした。チュチュを着ると身体も重くなり、背中も曲がりにくくなり、大変さが増します(笑)」

 *そうなのですか。見た目は「優雅」の1語に尽きますが、着て踊るのは結構な重労働なのですね。こちらの「チュチュ」はおおよそどれくらいの重量になるのでしょうか。

 兼述さん「重さは分かりませんが、着ているかどうかで体感はかなり違いました。Noismに入って、からだにフィットして軽くて踊りやすい衣裳ばかりなので、今考えるとチュチュは重さがあり、生地に厚みもあったりして、踊るのが大変だったなと思います」

 *言われてみれば。でも、そうした衣裳を着て踊ることへの思いには強いものがあったとも思うのですが、バレエ留学を経て、コンテンポラリーダンスの道へと進まれます。Noismとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。

 兼述さん「小さい頃からズボンばかりで、男の子に間違われていたタイプの人間だったので、バレエをやっている子の中では、意外とチュチュに憧れがないタイプだったかなと思います(笑)。留学する前の夏に、スタジオの先生にすすめられてNoismのサマースクールを受けました。初めてのことがたくさんの刺激的な時間で、留学を経てオーディション活動する際に、Noismの舞台に立ちたいと思いオーディションを受けました」

 *出会いと刺激があって、「縁」が出来て、新潟に来ることになったのですね。

纏う3: 兼述さんにとって印象深いNoismの衣裳

 *Noismの公演で最も印象に残っている衣裳とその舞台の思い出を教えてください。

 兼述さん「2022年のNoism2定期公演vol.13で着た、『火の鳥』の赤いレオタードです。あの赤を纏うと、舞台を背負うプレッシャーをすごく感じます。同時に、心と身体に気合も入ります。あのレオタードは肌触りが良く、着心地抜群でした!」

 *『火の鳥』の赤いレオタード、これまで多くの方が着てこられましたが、「着心地抜群」ということで、観客から見てもいつも着る方にフィットしているように見えます。体格の違いに応じられるようにサイズ違いを新調したりして、何着かあるのでしょうか。それとも調整して同じものを着ておられるのでしょうか。

 Noismスタッフ・深作さん「『火の鳥』の赤いレオタードですが、2022年のNoism2定期公演の際に『火の鳥』の衣裳をリニューアルしたため、兼述育見と土屋景衣子が初めて着用した2人でございます。衣裳は1着のみで、同じものを着用しています。
また、2024年度の新潟県文化祭で矢部真衣、Noism2定期公演vol.16で平尾玲が着用した赤いレオタードも兼述、土屋が着用したものと同じものです」

 *詳しいご説明、有難うございます。そうなのですね。リニューアルされたレオタード、初めて着用されたのですね。なるほど。いやあ、あのレオタード、実際どうなのだろうとずっと気になっていましたので、お訊ねしてみてよかったです。深作さん、どうも有難うございました。

 *Noism Web Siteへのリンクを貼ります。
2022年5月のNoism2「ディアギレフ生誕150周年記念『火の鳥』」画像をご覧いただけます。同公演で兼述さんが「火の鳥」役を踊ったのは1日目でした。

纏う4: 普段着の兼述さん

「黒と黄」! 私の好きな「あの組み合わせ」ではないですか(笑)

 *この日のポイントと普段着のこだわりを教えてください。

 兼述さん「黄色いズボンです!岡山のOKAPITALというお店で一目惚れして買いました!冬は暗い色の服が多くなりがちなので、このズボンを履くだけで気分が上がります」

 *はい、はい、はい、はい、「一目惚れ」。商品棚からこっちを捉えて放さないものってありますよね。こっちも「ロックオン」して近付いていくしかないという。「気分が上がる」感じもよくわかります。ええ、洋服が気分に及ぼす効果、絶大です。
で、そのズボン、「四角」と「三角」で「米」にも見えるステッチ柄は、なにか懐かしささえ覚えるような温かみのあるデザインで、とても素敵ですね。素材は何ですか。兼述さんは岡山ご出身で、岡山だけにデニムだったりするのですかやわらかそうにも見えますが。

 兼述さん「綿の生地に刺繍が入っています」

 *ご説明のなかに出て来た「OKAPITAL」、こちらのお店ですね。とても素敵です♪
他にも、「OKAPITAL(や「KAPITAL」)のものはお持ちだったり、よく着られたりしているのですか。もしそうなら、それはどんなものですか。

 兼述さん「ここ何年か岡山に帰るとお店に行って新作をチェックしていて、気に入ったものがあれば購入しています」

 兼述さん「この写真のトップスとズボンもOKAPITALのもので、袖のパッチワークがポイントです!」

 *そうですね。こちらのトップスも「和」のテイストが温もりのあるアクセントになっていて、お洒落なハイブリッドに映ります、うん。兼述さん、着こなしておられて、とてもカッコいいです。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「いつも温かいご支援、ありがとうございます。みなさまの応援が励みになっています。これからも、より良い舞台を届けられるよう精進いたします。
今後ともよろしくお願いします!」

ということで、「纏うNoism」第11回、兼述育見さんの回はここまでとなります。

これまでに当ブログでご紹介してきた兼述さんの他の記事も併せてご覧ください。

「私がダンスを始めた頃」#24(兼述育見さん)

「ランチのNoism」#24(兼述育見さん)

「纏うNoism」兼述育見さんの回、お楽しみ頂けましたでしょうか。では、また次回ということで♪

(shin)

清新さと野心と(サポーター 公演感想)

毎年3月恒例の研修生カンパニーNoism2定期公演。今回(vol.16)はNoism1・中尾洸太さんに加え、同じく樋浦瞳さん(新潟市出身)が演出振付家デビューすることもあって、各種媒体でも公演が紹介され、初日の客席も盛況だった(BSN新潟放送の取材班もお見かけした)。客席や物販コーナーではNoism1メンバーの姿もあり、皆で若き舞踊家と演出振付家を盛り立てようという思いが、劇場に漂うよう。


開幕は樋浦瞳作品『とぎれとぎれに』から。私たちが「Noism的なるもの」として連想する、虚飾を剥いだ舞踊の連なりに、樋浦さんならではの細やかな感性が染み込んだ一作。舞台正面から斜め方向を意識した空間構成や、ある舞台美術が雄弁に示す舞台の一回性。白から黒、生から死へのあわいで悶える6人の若き舞踊家達と、照明が織りなすものに、私は奪われていくガザ始め世界を生きる人たちの命を思わずにはいられなかった。

続く中尾洸太作品『It walks by night』は、中尾さんの既にして才気溢れる作家性に圧倒される仕上がりとなっていた。Noismの基礎にある「クラシックバレエ」そのものを解体し、再構築していく舞台に息を幾度も呑んだ。あるクラシックの有名曲(最近ではアキ・カウリスマキ『枯れ葉』でも印象的に使用されていた)と9人のダンサーの調和、バレエでの女性表象を超えるNoismらしいエログロまで内包した演出には唸るばかり。

公演ラストを飾るのは金森穣芸術総監督による、最早古典的風格さえ漂う「火の鳥」。ストラヴィンスキーの楽曲と寸分違わず溶け込む振付、8人の舞踊家の「今」を活かし切る瑞々しさと、安易な感傷を排して観客のイマジネーションを膨らませる「仮面」と「黒衣」。幾度見ても新たな発見を得られる名品だ。

公演初日は、地域活動部門芸術監督・山田勇気さん、中尾洸太さん、樋浦瞳さんによるアフタートークが開かれた。「若いダンサーへのメッセージ」を問われ、「自分が今持っている身体に向き合えるのは自分だけ。未来と今、他者と出会うことを意識して踊り、あなたの身体でしか発見出来ないことを見付けてほしい」と語る樋浦さんと、「夢を見ないこと。夢は叶わないかもしれないし、逃げにもなる。身体や心から起こる野心と、現在地を見つめる為の目標を大切にしてほしい」という中尾さん。対照的でいて、各々の誠実さが滲む答えに胸が熱くなった。


若き舞踊家それぞれの献身と躍動に加え、新しい舞踊作家の誕生を目撃する機会。本日の公演の更なる盛況を祈る。

久志田渉(新潟・市民映画館鑑賞会副会長、「安吾の会」事務局長)

「Noism2 定期公演vol.16」活動支援会員/メディア向け公開リハーサル&囲み取材に行ってきました♪

2025年2月28日(金)、りゅーとぴあに向かうのに、考えなしにセーターを着てダウンコートを羽織ろうしたところ、連れ合いからダメ出し一発。この日は新潟県も「4月中旬の気温」となるということで、少し薄めのものに変えて、「Noism2 定期公演vol.16」活動支援会員/メディア向け公開リハーサル&囲み取材に行ってきました。

予定時刻の12:30、〈スタジオB〉にて、中尾洸太さん演出振付の『It walks by night』のクリエイション風景から公開リハーサルは始まりました。ホワイエで待っている間から耳に入ってきていたチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」のあの最も知られた旋律が流れる場面を中心に、クリエイションの様子を見せて貰いました。中央奥にとても象徴的な木製の扉。Noism2メンバー9人のうち、ひとりだけ黒い帽子にベージュのステンカラーコートを纏っています。

「タータァタタタータターター、パッ」旋律を歌い、「1234、56」カウントを数え、自ら汗をしたたらせながら踊って、振りとそのイメージを伝えていく中尾さん。この日、私たちの目の前でじっくり時間をかけていた回転の振り。「足、そして手首、身体の順」(中尾さん)に動きが伝わっていき、2本の腕が纏わり付くかたちで身体を捩らすような複雑な回転にはブラッシュアップが続きました。チャイコフスキーの旋律にのせて、中尾さんのロマンがどのように可視化されていくのか、楽しみでなりません。

13:00、次いで今度は樋浦瞳さん『とぎれとぎれに』からの一場面を見せて貰う番です。こちらの作品、まず最初に大きな白い紙が運び込まれて敷かれていったところから、既に何やら独特な世界観が漂ってきました。音楽も、先刻までの中尾さんがメロディアスだったのに対して、ざらつくノイズ然としていたり、機械的だったり、ビート音だったり、全く別の趣のもの(原摩利彦)です。で、それに合わせた振りはやはりソリッドなもので、ところどころ、『R.O.O.M.』や『NINA』を想起させる動きも見出せるように思いました。

「一回、紙から逃げてみて、でも戻っていく感じ」とか「倒れた直希(=与儀直希さん)に、自分の吐く呼吸を入れていくみたいな」「もっと持ち上げるような感じで」とかと丁寧にイメージを伝えていく樋浦さん。Noism2メンバーの9つの身体と一緒になって、私たちをどこへ連れて行き、どんな世界を見せてくれるのでしょうか。興味が掻き立てられました。

上演3作品の使用楽曲です。

13:30、ホワイエにて囲み取材が始まり、地域活動部門芸術監督・山田勇気さんと今回、演出振付作品を発表するNoism1・中尾洸太さん、樋浦瞳さんがそれぞれ質問に答えるかたちでたっぷり話してくださいました。以下に、かいつまんでご紹介します。

Q・今回の作品のテーマ、伝えたいもの。
 -A・中尾洸太さん(『It walks by night』): 一番のテーマは「選択」「チョイス」。同年代(20代前半)の振付家と舞踊家のクリエイションは珍しい機会。同年代の観客層に届けたい思いもある。人生のなかで、何かを選択することを恐れないこと。そのときには誰かがまわりにいて、ひとりじゃないということ。まわりの人がいるからこそ、様々な感情が生まれること。それらを再認識するなかで、この先の自分の選択を噛み締めていけるような、未来に繋がる作品になればいい。
 -A・樋浦瞳さん(『とぎれとぎれに』): 自分が、人が、生命体が生まれてくる前にはどのような光景が広がっているのだろうという疑問から創作を始めた。「舞踊」という芸術は舞踊家が踊るその時間のなかにしか持続はない。その時間とその身体でしか起こることが出来ないもの。生命にも舞踊にも終わりは来るが、途切れたあとも繋がっていくものがきっとある筈だという思いを主軸に創作した。一人ひとりがその身体を持っていることを喜べるきっかけになったら嬉しい。「紙」については、舞踊作品の一回性を作品のなかでより顕著に表したかった。その「紙」に舞踊家たちが集まってきての始まりは、生命の源、「泉」のようなイメージによるもの。今の舞踊界で、このような時間と場所と舞踊家を得て創作出来るのは奇跡的なこと。この環境だからこそ出来ることを追求していきたい。
 -A・山田勇気さん: 【①金森さんの『火の鳥』について】: 金森さんが初めてNoism2のために作った作品で、2011年に初演、これまで5回ほど再演している。 メッセージ性がシンプルで強く、踊る者にとっても「登竜門」のようでもあり、これを越えることで成長できる、或いは、成長しなければ成立しない「強い」作品。これは生き残る作品であり、後世に伝えていくべき作品。これを通過する色々な舞踊家を見て欲しい。ある種、伝統になればいい、という思いもあって選んだ。
【②中尾さん・樋浦さん作品について】: レパートリーを踊るとなると、自分の選択をために振り付けられたものではないため、「踊ってみた」みたいに踊ってしまうことも起こり得るもの。そうした点から、相互に影響を与え合い、主体的に考えないければならないクリエイティヴな場所を設けることでカンパニーとして成長することを期している。若い振付家にがっぷり四つで組んで格闘して貰って、そのなかで何か新しいものが生まれることを期待して、ふたりにお願いした。作品自体がゼロから始まる、「教える-教わる」関係を一旦離れた場所と考えた。

Q・一公演で同時にふたりが演出振付することについて。
 -A(山田さん):
 ふたりも刺激し合っているが、一番は、プロの振付家の現実問題として、時間の割合が大変なこと、そうした制約があるということがある。与えられたもの、限られたもののなかでベストを尽くすこと。メンバーは3つの作品を踊る、『アルルの女』のリハーサルも行っている、そうした同時進行状況のなかで、如何にフォーカスしてやっていくかは難しいことだが、やらなければならないこと。
現役メンバーに振付家としての依頼をすることには、Noismというカンパニーに属し、ひとつの「言語」のようなものを共有する者が、その中から如何にして「自由」を獲得していくかは大切なことと考える。自分たちが今ここで作っている身体性にどれだけの普遍性があるかは、そのなかで何かを作ることでしか分からないものがある。
また、次世代の振付家を輩出することはレジデンシャルカンパニーにとって大切なことでもある。

Q・【中尾さんに】タイトルは(ジョン・ディクスン・カーの)推理小説と同名。具体的なストーリーをイメージしているのか。
 -A(中尾さん):
 ストーリー・テリングはしない。(使う)曲毎に詩を書いていて、その自分が想像したこと(詩)と音楽、それを社会(観客)とどう繋げていくかを意識している。振付家と舞踊家と観客のトライアングルが綺麗に揃っていないと良い瞬間は生まれない。この時代に簡単に溶け出してしまわない作品を残したい、その時間を提供したい。
観客が観に来ることも選択なら、自分たちが本番中に振りを踊るのもひとつの選択であり、既存のものをただ舞台にのせているのではない。研修生カンパニーであることから、自分たちの葛藤と闘っていて、身近に重い選択を控えている。それは舞台に出て来る。自分たちのベストを尽くした作品で観客に真っ向から立ち向かう時間を作りたい。それら全てが「選択」。タイトルは語り過ぎず、抽象的な感じで、意味を込め過ぎない、ふわっとしたものである。

Q・選曲理由は。
 -A(中尾さん):
 チャイコフスキーがどう亡くなったか知っていたので、「選択」「チョイス」は常に頭にあった。「悲愴」はチャイコフスキー最後の交響曲であり、哲学的思想が詰め込まれている。自分が振付家として彼の音楽と闘うのと同時に、舞踊家と一緒に、彼の音楽を通して、社会になにか普遍的なものを提供出来るのではないかと思った。
 -A(樋浦さん): 自分がそれらを聴いているときに、彼女たちが世界を繰り広げている様子を想像出来たこと。音がなくなる瞬間があったり、メロディー自体が存在しなかったりするが、その空間のなかに舞踊家がいることで、音楽と身体とが相互補完的だったり、相乗効果が生まれたらよいと。それが音楽と舞踊家との関係性として目指していること。

Q・この3作品での公演に関して。
 -A(山田さん):
 ヴァラエティ豊かで、楽しんで貰える。3つの全然違う作品にNoism2の舞踊家がどう取り組んで、そこで生きるのか。若い身体、若い思い、若い精神からしか出て来ないエネルギーを是非感じて欲しい。3作品が合わさったときに、彼女たちの表情とか輪郭とかが見えてくるのかもしれないと期待している。(13:55囲み取材終了)

…というところをもちまして、公開リハーサル&囲み取材の報告とさせて頂きます。

色々な意味合いで、とても興味深い「Noism2 定期公演vol.16」は3月8日(土)と9日(日)の2 days。只今、チケットは好評発売中です。若き舞踊家9人が格闘する3作品、そこに漲るエネルギーを全身で受け止めてください。

更に、8日の終演後には、この日の囲み取材時と同じ、山田さん、中尾さん、樋浦さんが登壇してのアフタートークも予定されています。(9日のチケットをお持ちの方も参加出来ます。)作品が生まれる現場により一層コミットしてみる機会です。楽しくない筈がありません。ご検討ください。

【追記】現在、発行されている「Culture Niigata」最新号(2025.03-05、vol.122)に、今回、振付家として創作している樋浦瞳さんが取り上げられています(表紙およびインタビュー記事)。加えて、昨年11月「新潟県文化祭2024『こども文化芸術体験ステージ』」(@十日町市・段十ろう)に登場し、『火の鳥』と『砕波』を披露したNoism2についても掲載されています。同誌は無料。りゅーとぴあにも置かれていますので、是非、お手にとってご覧ください。

(photos by fullmoon & shin)

(shin)

2025年2月23日はトークイべント日和(その2):「柳都会vol.30 二代目 永島鼓山×山田勇気 -受け継がれていく、大切なこと」(@りゅーとぴあ〈スタジオB〉)

2025年2月23日(日祝)はNoism関連のトークイベント日和でした。ここからは、「その2」です。16:30より、りゅーとぴあ〈スタジオB〉を会場に開かれた「柳都会vol.30 二代目 永島鼓山×山田勇気 -受け継がれていく、大切なこと」のご報告となります。

(「その1」井関さんの講演会についてはこちらからもどうぞ。)

江戸時代から約300年続く新潟の郷土芸能「新潟樽砧」。二代目 永島鼓山氏は、樽砧の保存継承を目的とした「永島流新潟樽砧伝承会」の創設者である永島鼓山氏の名跡を継ぎ、2022年に二代目を襲名。型を守りながらも自由に探求することを大切にし、新潟の地で、樽砧を伝え広めている。鼓山氏と山田の出会いは、2015年に山田が演出振付をしたNoism2×永島流新潟樽砧伝承会のコラボレーション『赤降る校庭 さらにもう一度 火の花 散れ』。伝統と現代の融合は、当時互いに大きな挑戦となった。“新潟に住む人にこそ新潟の文化を誇りに思ってもらいたい。” 文化を根付かせるために何をどのように伝えていくのか。ともに新潟で活動する両者が見据える新潟の芸能・文化の未来とは。

*山田さん、当時20歳の現・二代目鼓山さんと出会う: 2015年「水と土の芸術祭」において、金森さんから「一緒にやってみないか」と言われたのがきっかけでのコラボレーション(『赤降る校庭 さらにもう一度 火の花 散れ』)。「ただ者じゃない雰囲気」を感じた。先代の鼓山さんから、「この子をメインに据えたい」との意向を聞く。「のめり込んでいる感じが違うなぁ」(山田さん)

*「樽砧」とは: 300年くらいの歴史をもつ。昔、「湊町」新潟は北前船の一大拠点で、無事の航海を願って、龍神に祈りを捧げる意味合いから海岸沿いで船べりが叩かれていた。それが陸にあがって、樽を叩くかたちとなり、盆踊りに繋がっていった。叩かれるようになった樽は、当時、家庭でよく見かけられたもの。今は楽器用の強化樽である。

*二代目鼓山さんの樽砧との出会い: 新潟市西区の通っていた小学校に樽砧のオリジナル楽曲があり、小5になると、授業で樽か笛を選ぶことを求められて、「どうせやるなら」と樽を選んだ。そこに先代が教えに来てくれて、最初は言われるままにやるだけでさぐりさぐりやっていたが、時折、先代が「これは出来ている」という顔をするのを見て、「面白いかも」と思った。それでも、最初からちゃんと教えて貰えた訳ではなかったが、小6になってから、「これ、こうした方がいいんじゃないか」などと言われるように変わっていった。
→しかし、先代が弟子(中学生、6人くらい)を連れて来た際、その技術に圧倒されて、「ここには入れないな」と一度止めた時期もあった。それが、中2になったとき、「やっぱり樽砧やりたいかも」と思い、インターネットで検索してヒットした練習会に参加することで、今に至る。

*永島流樽砧: 先代が11歳のときに、既にあった盆踊りの樽を叩く演奏を兄から習うかたちで継承してきた、と聞く。その後、パフォーマンス性をあげたり、「樽だけで演奏出来るようになったらいいんじゃないか」との声が聞こえてきたりもして、盆踊りから独立するかたちで、ひとりで元々あったものを編纂し、楽曲として整えていった。(当時は、「新潟甚句」のほかにも沢山盆踊りの曲はあったが、消えてしまっている。)

*文化を伝承していくこと: 「そこに自然にあった時の人たちがやっていたことが、その環境が消えている現在、かつて、無意識に捉えられていたものを、意識的に残していこうとする気持ちが感じられる」(山田さん)
また、2015年のコラボでは、「新しいものが生まれる感覚があって、彼女と一緒にやってみたい気持ちになった」(山田さん)

二代目 永島鼓山さんによる基本となる7つの叩き方(「型」)の実演(解説付き:①合わせ打ち、②流し打ち、③正調打ち、④蛙(かわず)打ち、⑤八方崩し、⑥時雨打ち、⑦勇み打ち)があり、それに続けて、その場の雰囲気を取り込んで叩く、アドリブ性の高い「乱れ打ち」(2025年2月23日の今日ヴァージョン)も披露して頂き、そのダイナミックな動きと音に圧倒されたスタジオBの場内からは大きな拍手が沸いた。

*伝承にとっての定型化・パターン化・抽象化: 
 -山田さん: 基本をもとに乱れることが出来る。基本がなければ、乱れることは出来ない。バレエも同じ。抽象化された「かたち」の組み合わせは無限。 
 -鼓山さん: 樽砧が自然だった環境が今はない。パターン化・抽象化されたものを手段として用いて、繰り返していくことで、「自由」に至ることが出来る。作曲もしているが、常にこれが正解かと自問している。自由度がないと面白くない。何も考えないで、そこまで行けるようになりたい。

Q1:若い世代の育成に関して思うこと:
 -鼓山さん: 今の世界には、樽をやるよりも面白いことが溢れていて、ひとつのことを長く続けられる人は少なくなっている。そんな現代の世界に合わせると、「ある程度の、早く、短期に」と思うこともあるが、長く続けて貰うためにはどうしたらいいか、課題である。
 -山田さん: 例えば、金森さん振付のレパートリー『火の鳥』、振付家(=金森さん)がいることで、まだまだその瞬間に生まれるものがあり、作品はまだ生きている、そう感じる。先代のどういうところを「守り」、継承していくのか。
 -鼓山さん: 一人ひとり体つきは異なる。基本を踏まえたうえで、「あなたの身体なら、こっちの方がいいよね」など、魅力的に見えるようにするのが理想。

*「二代目」ってそもそも何で?(そうしたシステムがないなかで、先代の七回忌目前での「襲名」に込められた思いとは?): 
 -鼓山さん: ①先代を忘れて欲しくなかった。思い起こしながら続けていって欲しいと思って。 ②「この名前」に耐えられるようにならなければならなかった。③「先代孝行」が出来ていなかった。「先代のために何が出来るんだろう」と考えて、名前を継ぐことで喜んで欲しい思いがあった。 背負うことのプレッシャーもあったが、それで言えば、先代が倒れた翌月の舞台で、当然、先代がいるだろうと思われていた場所(センター)に立ったときの緊張感の方が凄かった。怖くて、足がすくんで、幕があがるのが嫌だった。
 -山田さん: どうしてそこまで先代にのめり込んだのか?
 -鼓山さん: 孤独だった小学生のとき、打ち返せば、打ち返すほど認めてくれた。好きなものに打ち込むことが救いになった。
 -山田さん: これだと思ったら放さないこと。好きな言葉に「映画に救われた人が映画を救う」というのがある。自分も「重くて黒い観念」を抱えていた。踊りに救われた。踊りに恩返しがしたい。2015年のコラボの際、廃校のグラウンドに、20歳にして「崖っぷちにいる感」漂う姿があり、緊張感があった。 

*鼓山さん、未来への展望: 
 -鼓山さん: 二代目としては次(三代目)を探したい。根を張って、葉を広げていきたい。なくすのは簡単。繋いでいき、出来れば大きくしていきたい。
 -山田さん: 時代は変わっていく。人の力だけでは負けちゃう。システムが残ることが、伝承会が残っていくこととパラレル。
 -鼓山さん: 楽曲はフル尺では7分に及び、昨今は「もっと短く」とも言われる。ちょっとずつでも変えながら、今いる人たちが面白いと思ってくれるものを作っていきたい。そのうえで、自分ひとりで背負わないようにしていきたい、次の三代目のためにも。伝承会は拠点を持たないために、通える人は入って来られる一面がある。
 -山田さん: 「場所」を持って欲しい、と言っている。記憶として残り、空間自体も伝承されていく。そこに物質(建物)の強さがある。 
 -鼓山さん: また、上に行きたい人にどうチャレンジさせていくかということも私の役目である。

Q2: 「バチ」についても教えて欲しい
 -鼓山さん: 「新潟甚句」のバチとは違う作りで、少し太い。上部は樫、持ち手は竹(軽くて頑丈、持ち易い)。先代の頃は、先代自身か大工さんが作っていたが、今は、鼓山さんのお父様が「日曜大工で」作ってくれたものを使っている。(材料はホームセンターで買えるから、と先代。)

Q3: 衣裳は?
 -鼓山さん: 着物の帯を使って、手作りで、袖のない羽織のようなものを作っている。履くのは普通、地下足袋、或いは同じメーカー製のクッション性のある黒いスニーカー。(夏の灼けたアスファルトは本当に熱い。)
 -山田さん: 舞踊家たちは靴下にはこだわりがある。(素材、フィット感等々)

Q4: 樽砧を叩く身体性やトレーニングについて:
 -鼓山さん: 上半身・下半身ともある程度の柔軟性があるとよい。樽の高さは一定なため、揃って見えるために。(足を広げ過ぎることも出来ない。)上半身・下半身とも使い方のルーティンはある。初心者には、先ずは身体を確認してから始めている。

Q5: 活動の間口を広げることやアプローチについて:
 -鼓山さん: 練習会(公民館を会場とすることが多い。)の日程を開示しているほか、小学校へ教えに行ってもいる。但し、コロナ禍以降、大人向けの機会は減少してしまっている。

*山田さん: 二代目はどこかで何かするんじゃないかと、ドキドキしながら見ている。今段階、共演の予定はないが、常に一緒に何かやりたいと思っている。(場内から拍手が起こる。)内側にある熱い思いが活動に繋がっている。若手・次世代をどう育て、繋いでいくか。これからも新潟で活動する者として、頑張っていきましょう。

…山田さんからのそうした言葉で90分超のこの度の「柳都会」は締め括られました。歩んできた足跡を、更に前へと力強く運んでいこうとするおふたりの気概に触れて、心熱くなる時間でした。

以上で、2月23日「その2」、二代目 永島鼓山さんと山田勇気さんによる「柳都会vol.30」のご報告とさせて頂きます。

(shin)

FM-NIIGATA「NAMARA MIX」に山田勇気さん登場♪(2025/02/18)

この日から強烈な寒波が約1週間も居座る予報などが出ていて、「またか!」って感じの2025年2月18日(火)。その夜19時21分から、FM-NIIGATAの番組「NAMARA MIX」(第151回)にNoismの地域活動部門芸術監督の山田勇気さんがゲストで出演されました。昨年11月には井関さんも出演された番組です。

山田さんが登場したのは、「こちら、NAMARA党本部」というコーナーで、この日の番組案内には次のようにあります。

架空の政党であるNAMARA党の総裁・江口歩が新潟をより明るくするため、社会課題について有識者とトーク。そして机上の空論にならないよう、実際に社会に向けて番組からアクションを起こしていくコーナーです。今回はNoism Company Niigata地域活動部門芸術監督として活動する山田勇気さんが登場します!

2005年Noismに入団し、プロを目指す若手舞踊家を率い、作品を発表されている山田さん。近年は新潟市内の小中学生や舞踊未経験者にむけたワークショップ等のアウトリーチ活動も積極的に行っています。

そもそもNoismとはどんな団体なのか、20年間Noismを見てきた山田さんが思うNoismと新潟エンタメの変化、そして今後Noismはどこへ向かっていくのか、また現在鋭意準備されている直近の公演と対談についてもお話をお聞きします。

約12分にわたって、多岐にわたるお話しをお聞き出来ました。そのアウトラインだけですが、ご紹介します。

*日本で唯一の公共劇場専属舞踊団Noism(20年間)。
*地域活動部門の活動。
*「視覚障がい者のためのからだワークショップ」(2025/02/16)。視覚障がい者の「研ぎ澄まされている皮膚感」。相互に刺激を受け、勉強になる機会。

*北海道出身で「サッカーばかりやっていた」山田勇気さん。ダンスにはまって、東京でブラブラしていた折、Noismが設立されて、「日本で唯一、ダンスでめし食えるカンパニー。これは行くしかないと思った」。2年目のNoismに加わる。
一旦、離れた期間もあったが、研修生カンパニーNoism2が設立されたことをきっかけに戻ってきた。20歳頃にダンスを始めて、のめり込んでやってきた「雑草」。その部分が、地域活動をやっていくうえで、普段、踊りをやっていない人にも何か伝えられることがあるんじゃないか。
*昔のNoismはもっと尖っていた。設立当時は環境も整っていなかったし、「今日この一瞬で全力出して証明していかないと、いつ潰れるかわからない」という緊張感があった。
今は20年経って、ある程度認知も進んだNoismをどう育てていって、もっと広く知って貰うためにどうすればいいか、に変わってきた。
*「Noism2定期公演vol.16」(2025年3月8日・9日)、金森さんの『火の鳥』再演とNoism1メンバーによる振付の新作(2つ)。瑞々しい公演になる筈。エネルギーを感じて貰いたい。


*「柳都会vol.30」(2025年2月23日)、ゲストは二代目 永島鼓山(えいじまこざん)さん(永島流新潟樽砧伝承会)。Noism2の作品(Noism2×永島流新潟樽砧伝承会『赤降る校庭 さらにもう一度 火の花 散れ』)でコラボしたときに、「只者じゃないな」と思った。「二代目襲名」の彼女(2022年)、自分たちNoismも「次の世代」を担うことを考える時期。

以上をもって、報告といたします。

明日(2025年2月19日)17:00からは、金森さんと井関さんがゲスト登場する牧阿佐美バレヱ団「ダンス・ヴァンドゥⅢ」のインスタLIVEもあり、そこでは金森さんが振り付けた『Tryptique~1人の青年の成長、その記憶、そして夢』についても話されることになっています。

春のNoism、さながら「百花繚乱」の趣で、雪にも折れない心を取り戻せそうです。そんな気分にさせて貰いました。

(shin)

「新潟県文化祭2024」こども文化芸術体験ステージ(2024/11/23)、Noism2に胸熱!

2024年11月23日(土)勤労感謝の日、十日町市の越後妻有文化ホール「段十ろう」を会場に開催された「新潟県文化祭2024」こども文化芸術体験ステージに、午前午後2回、Noism2が登場し、「未来を担うこどもたちが舞台公演を通じて豊かな感性や創造性などを育み、文化芸術に興味・関心を持つきっかけになってほしい…」と設けられた機会において、その溌剌としたパフォーマンスで観客からの温かみのある大きな拍手を浴びました。

私が観に駆けつけたのは14時開演の第2部(推奨年齢:中学生以上)。霰が落ちてきたり、時折、篠突く雨も寒々しい、かと思えば、陽が差す時間帯もあったりという、冬を前にした忙しい天候のなか、車で高速道路を走り、一路、十日町市を目指したような次第です。

2017年にオープンしたという越後妻有文化ホール「段十ろう」。今回が初めて訪れた建物でしたが、十日町の中心市街地に位置する、なかなか綺麗な複合施設でした。

13時15分に開場。「新潟県文化祭」ということもあり、ホワイエには新潟県産木材を紹介するコーナーが設けられていて、木琴やら色々な玩具、それに木製スピーカーほかが並べられており、木を使って仕上げられた段十ろうの内装によくマッチしていました。

そして、開演時間の14時になります。緞帳の手前、上手(かみて)と下手(しもて)両側から、Noism2ダンサーの9人が現れ、横一列となるが早いか、心臓の鼓動、心拍音が聞こえてくると、それに合わせてビートを刻み始める9人。黒いジャケットに黒いパンツ姿。緞帳が上がってから繰り出されたクールでソリッドに絡んでいくスピーディーなダンスは、先ずは名刺代わりのご挨拶。そのスタイリッシュな幕開けで、もう、つかみはOKです。そんなふうにはじまったこの日の舞台。

次いで、地域活動部門芸術監督・山田勇気さんとNoism2リハーサル監督・浅海侑加さんがステージ下手に現れてご挨拶。そこから、浅海さんから『砕波』が紹介されました。その内容をかいつまんで記しますと、港町・新潟市が開港150周年を迎えたのを機に、Noism芸術総監督・金森穣さんが、佐渡の太鼓芸能集団・鼓童の楽曲に振り付けた作品であり、Noism2メンバーは波の動きを踊り、それを通して、波の様々な感情を表現するとのこと。「激しく荒れ狂う海。怒っている波、泣いている波、笑っている波…」(浅海さん)

8人のダンサーによって、日本海の様々な波、その感情が身体と音楽とで可視化されていくさまを目撃する私たち観客は、一人残らず、言葉を用いない舞踊の何たるか、それを身を以て感得していくという豊かな時間を享受したのでした。更に、子どもたちを含めて、Noismを初めて観るという人も多かったのだろう客席。『砕波』のラスト、舞台上の動きが止まってから、場内に響いた温かい拍手には舞踊への驚きといったものが聞き取れるように感じられました。

次の演目にいく前に、再び山田さんが舞台に現れると、スクリーンを用いて、国内唯一の公共劇場専属舞踊団である「新潟のダンス集団Noism(Noism Company Niigata)」を簡潔に紹介していきました。

そのなかで、私が観た午後の部では、江川瑞菜さん(愛知県出身)、与儀直希さん(米・ロサンゼルス出身)、高田季歩さん(兵庫県出身)、四位初音さん(宮崎県出身)の4人も舞台にあがり、山田さんからの質問に、ひとりひとつずつ答えていくことを通して、Noism2というカンパニーの横顔が伝わってきました。それらもご紹介しましょう。

*Q:Noism2の生活はどんなふうか? → A:四位さん「朝9時のNoismバレエ、Noismメソッドに始まり、途中に休憩を挟んで、18時まで舞踊に向き合う日々」
*Q:どうして踊りを始めたのか? → A:高田さん「身体を動かすのが好きで、3歳でクラシックバレエを、小学校6年生のときにコンテンポラリーダンスを始めた。コンテンポラリーダンスの全身で表現することに惹かれた」
*Q:踊りの魅力とは? → A:与儀さん「踊りの表現が人生経験が深まっていくのと同時に深まっていくこと。そして人と繋がるきっかけになること」
*Q:辞めたくなったことはないか? → A:江川さん「思いつかないが、怪我をしたとき、前のように踊れない日々は辛かった。踊ることが好きなのでワクワクしている」

出前公演やアウトリーチを通して「舞踊の種を植える」Noism2。自分の夢を叶えるために稽古に打ち込む研修生カンパニー。そしてホーム・りゅーとぴあで「くらす」「つくる」「(文化を)そだてる」Noism Company Niigata、と。

Noism2メンバーの9人
新メンバー3人をアップで

時刻は14:30、今度は浅海さんによる『火の鳥』の紹介です。2011年に金森さんがNoism2のためのオリジナル作品として振り付けた作品で、「今を生きる子どもたちに向けたメッセージ」が込められている。それはシンパシー(共感・共鳴)、心の動き。そして次のように、あらすじも紹介されました。
*少年: 自分の殻に閉じ籠もり、闇やネガティヴなエネルギーに囲まれている。
*火の鳥: 少年を強く優しいエネルギーにより、殻の外へ連れ出す。
*黒衣(若者たち): 嫉妬にかられ、火の鳥に襲いかかる。
 → 痛めつけられた火の鳥は火が消えてしまうことに。
 → 少年の流す涙によって、若者たちの心に何かが起こっていく…
…「それを観て聴いて感じて欲しい」(浅海さん)

この日の舞台、「少年」は髙橋和花さん、「火の鳥」は矢部真衣さんが、そして6人の「若者たち」がストラヴィンスキーの楽曲に乗って躍動しました。この演目、とてもエモーショナルで、Noism入門にはもってこい、まさにお誂え向きとも言えるものなのでしょうが、いつ観ても、鳥肌もので、心を激しく揺さぶられてしまいます。それはこの日も同様でした。Noism2メンバーたちの熱演に対して、場内からは今度は熱い思いが込められた拍手が長く長く続きました。
この『火の鳥』ですが、来春3月のNoism2定期公演vol.16(2025/03/08&09)でも踊られることが告知されています。この同じメンバーで更に進化・深化した『火の鳥』が今から楽しみです。

Noism2のメンバーの皆さん、山田さん、浅海さん、胸熱で素敵な舞台を有難うございました。この日観た子どもたちも、大人たちも、みんな新潟(市)にはNoism Company Niigataという世界に誇るべきカンパニーがあることをはっきり認識し、「文化」というものを心ゆくまで堪能したものと思います。冬枯れの景色のなか、そんな高揚する気持ちのままに帰路につきました。

なお、この日の舞台の模様は、後日、編集したものがYouTube(新潟ステージチャンネル)にアップされる予定とのことでした。本日、ご覧になられなかった方はそちらをお待ちください。

(shin)


「纏うNoism」#10:太田菜月さん

メール取材日:2024/03/20(Wed.)& 03/24(Sun.)

春彼岸にあってさえ、雪など降ったりするあり得ない天候が続きましたが、それも昨日3/24(日)朝の「全米桜祭りオープニングセレモニー」が春を運んできてくれたかのように、本来のこの季節らしさに戻ろうとしています。
皆さま、如何お過ごしでしょうか。既に Noism Company Niigata 20周年記念公演「Amomentof」のチケットもおさえて、日々期待に胸を膨らませていることと思います。そんななか、ここにお届けするのは「纏うNoism」の10回目、太田菜月さんのご登場です。画像もたくさんご紹介しながら、太田菜月さんに迫っていけたらと思います。

「自分に似合う色が、いちばんいい色なのだ」(ココ・シャネル)

それでは「纏う」太田菜月さん、お楽しみください。

纏う1: 稽古着の太田さん

 *おお、ほぼ黒一色でシンプルな装い。余計なものは何も持ち込まず、気持ちが入った感じですね。ええっと、この日の稽古着について教えてください。

 太田さん「リハーサル中は、基本タンクトップを着用しています。以前は、よくTシャツを着ていたのですが、暑がりなので袖をよく肩まで捲り上げてしまっていたので、タンクトップを着るようになりました。 朝のクラスでは、冷えないようにヒートテックを着ています。ズボンはメーカーにはこだわっていないのですが、なるべく重すぎないものを着ています。あとは、よく膝下が出るように裾をまくっています」

 *右足の裾がまくられ、肌が覗いているのがアクセントになってますね。素敵です。

 *4枚の画像に共通している「黒」について伺います。稽古着に「黒」を選ばれることは多いのでしょうか。また、「黒」を選ばれる理由などあれば、教えてください。

 太田さん「黒を選ぶ理由として単純に私自身が、黒色が好きということもあるのですが、汗かきなので、汗の色がうつりにくいというのが一つと、黒色を着ることによって、身も心も引き締まる気がして、『今からリハーサル頑張るぞ』とマインドチェンジする為に、選んでいます。 その代わり朝のバレエクラスでは、赤、青、ピンクや紫のカラフルなレオタードを着ていることが多いです」

 *なるほどです。その時々の意味合いに応じて色を選ばれているのですね。色がそれを纏う人の気持ちに対して与える効果には大きなものがありますからね。朝に着るカラフルな色は気分をあげてくれますよね、絶対。

 *3枚目・4枚目に着ておられるダウンベストはどちらの製品になりますか。そして、「名入れ」サービスも特注なのでしょうか。

 太田さん「出身のバレエ教室で頂いたものです。 UNIQLOのもので名入れサービスしたものを頂きました」

 *そうなのですね。それは思い出深い物ですね。いつも見守られていたり、励まされていたりする感覚もあるのでしょうし。ある意味「原点」みたいな。この先も大事に着続けていくことになりますね。

 *次は稽古着に関して「お約束」の質問です。お好みの靴下などありますか。お気に入りポイントも教えてください。

 太田さん「靴下のブランドに全くこだわりはないんです(笑)。ただ直ぐに破いてしまうので、できるだけ枚数が多いH&Mなどで購入する事が多いです」

 *おお、ここまでの連載で初めて出てきました、H&M。あそこ、お洒落な感じですよね、全体的に。今度、見に行こうと思います。

纏う2: 太田さん思い出の舞台衣裳

 *これまでの舞踊人生で大事にしている衣裳と舞台の思い出について教えてください。

 太田さん「これはバレエ学校時代の公演で、Matthew Bourne振り付けの『Sleeping Beauty』 のFeralという妖精のソロを踊った時の衣裳です。(曲はカナリヤの精)
この作品を踊ったことがきっかけで、私がコンテンポラリーに出会い、のめり込んで行きました。 人生で初めてカツラと羽を付けて踊りました」

 *それは英国の「Central School of Ballet」時代のことでしょうか。在学期間のなかで、いつ頃の公演だったのでしょうか。

 太田さん「Central School of Balletには、2年間しか在学していなかったのですが、 最終学年(3年生)の時に、半年間ほど(3月から7月の5ヶ月)イギリスを周るツアー公演をしていた際にパフォームしました。

 *おお、大掛かりなツアーなのでしたね。で、ワタクシ、不勉強なもので、お訊きするのですが、その「Feralという妖精のソロ」について、もう少し教えてください。

 太田さん「Feralとは動物的な妖精で、ソロ自体は40秒にも満たない短い作品なのですが、終始飛び回っています(笑)。私の性格にぴったりのソロでした。 よくカナリアの精のVA(ヴァリエーション)として知られているのですが、わかりやすく言うと、子供っぽくおしゃべりなキャラクターです(笑)。

 *そうなのですね。’feral’って語は「野生の」という意味ですものね。なるほど。有難うございました。画像からだけでもチャーミングな様子はビンビン伝わってきます。

 *この作品がきっかけとなって、コンテンポラリーに出会い、のめり込んでいったとのことですが、「コンテンポラリー」のどこに惹きつけられたのかお聞かせください。

 太田さん「この作品は、古典バレエとストーリーが一緒だったのですが、身体の使い方が今までやってきたバレエとは違い、型にハマらず、より表現出来る方法や幅が広がった事で、自分を解放できた感じがした事に魅力を感じました」

 *ふむふむ、表現の新しい扉が開いたって感じだったのですね。大きなきっかけになったって訳ですね。

纏う3: 太田さんにとって印象深いNoismの衣裳

 *Noismの公演で最も印象に残っている衣裳とその舞台の思い出を教えてください。

 太田さん「2022年のNoism2定期公演vol.13で着た『火の鳥』の少年役の衣裳です。 デザインはとてもシンプルなのですが、私にとっての辛い経験や楽しい思い出など全てが詰まっている思い出深い衣裳です。今見てもあの時の感情が蘇って涙が出ます…」

 *あの『火の鳥』の少年役、素晴らしかったです。で、その衣裳に関して、蘇ってくる「辛い経験や楽しい思い出」、差し支えない範囲でどんなことか教えて頂けますか。ホント差し支えない範囲で結構なのですが…。

 太田さん「ありがとうございます。 裏話を言うと、本番3週間前に肋骨を怪我してしまって、Bキャスト(少年:太田菜月・火の鳥:土屋景衣子)は、しばらく練習できなかった期間があったんです。Noismに入って、1年目だったということもあり、迷惑をかけてはいけないと焦ってしまい辛かったです。本番直前までサポーターをつけながら練習していました。 でも最終公演日、舞台上で感情が爆発し、今までの辛い経験など全てを忘れて、ただひたすら舞台上で踊っている喜びに浸り込み、少年として存在した楽しかったあの瞬間がこの衣裳に残っているように、私には見えるんです」

 *えっ!そうだったのですね。実演家は舞台上だけで勝負するものとはいえ、お話を聞いて、私も涙が出そうです。燃えるような熱い思いが、あたかも舞台上で翼を得たかのように、踊る身体から余すところなく迸り出て、それが観る者の心を揺さぶったのですね。文字通り、入魂の舞台だったのだと…。今にして納得です。そのあたり、詳しく聞かせて頂き、有難うございました。

 *Noism Web Siteへのリンクを貼ります。
2022年5月のNoism2「ディアギレフ生誕150周年記念『火の鳥』」画像となります。太田さんが「少年」役を踊ったのは2日目でした。

纏う4: 普段着の太田さん

 

 *この日のポイントと普段着のこだわりを教えてください。

 太田さん「この時は地元の友達が新潟に遊びに来てくれていたので海での写真です。 よくZARAで服を買うのですが、このアウターもZARAで購入しました。 因みに私の弟も色違いを持っています(笑)。 パンツはどこのかわからないのですが、母のものをこっそり貰ってきました! 足のサイズが大きい方で、靴屋さんに行ってもなかなか良いものに出会えないので、よくZARAやGUでブーツを購入します」

 *ZARA! 私がそのブランド名で思い出すのは、庵野秀明『シン・ゴジラ』(2016)。米国大統領特使として日本に派遣されたカヨコ・アン・パタースン(石原さとみ)の「ZARAはどこ?」という台詞なのですが、こちらのファッションブランド、発祥はスペインってことのようで、「a(あ)」という母音で終わる開音節のネーミングも理解できようというものです。それはそれとして…

 *こちらの2枚も「黒」ベースで素敵にまとめられていますが、普段着も「黒」っぽいものを多く選ばれているのでしょうか。

 太田さん「この日は、たまたま暗い色にまとまっているのですが、冬は、セーターなどは、かなりはっきりとした色の物を着ています。青や黄緑色もよく着ています。 タートルネックを着る時は、黒色の方が、顔が映えるので、濃いメイクをしたりして、アクセントを入れるようにしています」

 *有難うございます。ちょっと細かいことをお訊きします。首に巻かれているのはスヌードとお見受けしますが、太田さんはスヌード派ですか、マフラー派ですか。それとも「二刀流」ですか。

 太田さん「りゅーとぴあに行く際は、基本マフラーを愛用しています。マフラーの方が橋を渡る際に、風をよりブロック出来ている気がします(笑)。ただ、マフラーはチェック柄のものしか持ってないので、このアウターに合わせる時は、基本このスヌード使っています。なので、二刀流ですね」

 *なるほど。風、冷たいですものね。あと、この日のアウターは厚手のシャツコートという理解でよいでしょうか。

 太田さん「はい!」

 *「赤」のチェックも映えて、とても素敵です。因みに、弟さんはどんな色を選ばれたのですか。また、弟さんとは服の好みは似ていたりするのですか。

 太田さん「 弟は白ベースの物を選んでいました。 姉弟で服の好みは違いますね。弟は、ちゃんとコーディネートしていたり、ブランドや生地にもこだわっているみたいなのですが、姉の私はかなり無頓着なので…(笑) 学ばないとです」

 *貪欲だ(笑)。ここもで色々、細かく突っ込んじゃいましたが、丁寧にお答え頂き、有難うございました。

 太田さんからもサポーターズの皆さまにメッセージを頂いています。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「いつもあたたかな応援をして下さり、ありがとうございます。皆様の素敵なエネルギーを受け、私も毎日頑張ることができています。これからも感謝の気持ちを忘れずに、良い舞台をお届けできるよう精進して参りますので、どうぞよろしくお願い致します」

ということで、「纏うNoism」第10回、太田菜月さんの回はここまでとなります。

これまで、当ブログでご紹介した太田さんの次の記事も併せてご覧ください。

 「私がダンスをはじめた頃」#23(太田菜月さん)

太田さんには、この先、糸川祐希さんともども、「ランチのNoism」へのご登場予定もあります。そちらもご期待ください。

「纏うNoism」太田菜月さんの回、お楽しみ頂けましたでしょうか。では、また次回♪

(shin)

「2日で2公演じゃ勿体ない!」そんな実感のNoism2定期公演vol.13楽日

2022年5月22日(日)、見事にたくさんの「2」で表記されたこの日の15時から、りゅーとぴあ・劇場にて、Noism2定期公演vol.13楽日の公演を堪能しました。前日に幕が上がり、もうこの日がラストです。日曜日の楽日とあって、メンバーのご家族と思しき方々も多く訪れていたようです。

夥しい数の「2」が本公演を祝福♪

運良く、両日とも観ることができた者のひとりとして、まず感じたのは、たった1日の本番経験で踊りが格段に練度を上げていることでした。昨日は昨日で、ある意味、初々しさが目を楽しませましたが、今日の舞台は、全くその趣を異にし、自信と確信を増した8人の舞踊を観ることになったと言い切りたいと思います。彼ら彼女たちの伸びしろ、そして成長速度の恐ろしさよ。勿論、良い意味です。

第1幕、金森さん振付のNoismレパートリー。この日の舞台の印象としては、全員に「攻める」部分が出て来ていると感じられたことが大きかったと思います。泣いても笑っても、この日が最後。ならば、全部出し切ろうという覚悟が動きのキレとなって表出されていて、ビンビン心に刺さってきました。
なかでも(あくまでも個人的に、ですが、)圧巻だったのは、レパートリーの最後に踊られた『砕波』です。鼓童の太鼓が刻む細かいビートが8人の身体によって増幅されてくるかのようで、観ているこちらも、金森さんが折々に口にするミラーニューロンの働きにより、完全なシンクロ状態に至り、演者と同じ時間を共有し得たことに大きな満足感を感じる自分を見出しました。この後、Noism2は鼓童のイベント「アース・セレブレーション」に参加して、同演目を生演奏で踊る予定があるらしく、一気に、佐渡へ出掛けて、その時間を堪能したい思いが膨らんでしまったのは私ひとりではなかったでしょう。『砕波』、全編通してまた観たいです♪その後の15分間の休憩は、8つの身体が心地よく刻んだビートのままに過ぎていきました。

休憩後、再び、緞帳が上がると蹲る少年と背後には黒衣たち。この日も名作『火の鳥』を観られることが嬉しくない訳がありませんでした。ダブルキャストで踊られた同作は、この日の火の鳥は土屋景衣子さんで、少年が太田菜月さん。前日と異なるメインキャストのみならず、8人全員が、作品全体の趣を一変させ、また違った味わいの『火の鳥』を見せてくれたことは、正直、驚きでした。「こんなにも違うのか!」といった案配だっただけに、ダブルキャストの両方を観られたことは実に嬉しい事柄でした。昨日とは違うものを観ている意識で視線を送るうちに、作品は最後の場面を迎えます。知ってはいても、やはり鳥肌もののラストの切れ味です。この日も大きな拍手が湧き上がり、カーテンコールが繰り返されました。客電が点ってからも、鳴り止まぬ拍手に、緞帳があがり、笑顔の演者たちはより一層の笑顔で拍手に応えます。場内を包んだ多幸感。それはもう言葉で表現することなどできよう筈のないものでした…。

そして今思うこと、それは「2日で2公演じゃ勿体ない!勿体なさ過ぎる!」ってことのみです。舞台で踊った者も、客席から視線を送った者も、例外なく、そんなことを思っていたと断定して間違いなかった筈です。2日間、それほどまでに充実した公演を見せてくれたNoism2メンバーの今後に期待は膨らむ一方の今です。

(shin)