2ヶ月強振り♪ウェブ「dancedition」連載「Noism20年 井関佐和子、全作品を語る(17)」

2026年7月8日(水)、ウェブ「dancedition」の連載企画は、「金森穣&井関佐和子に聞く、退任発表の真意とNoismの行方(2)」(6/22)を挟んで、この日、「Noism20年 井関佐和子、全作品を語る(17)」をアップしました。正規の連載としましては、前回(16回)からは2ヶ月強経ってのものとなります。

今回、先ず井関さんが語ったのは、劇的舞踊『ROMEO & JULIETS』(初演:2018年7月6日・新潟・富山・静岡・埼玉)。井関さんが書いておられたように、SPAC(静岡県舞台芸術センター)の俳優さんたちが大勢出演された豪華な大作でした。

「ジュリエットたち(複数)」という点でも、井関さんがアンドロイドであるという点でも、実にオリジナリティ溢れる、観ていて楽しい作品でした。そのなかで、井関さん演じるロザラインは、当初はまだ充分に書き込まれていないところから創作が始まっていたのですね。「頭で考えてわかるものではない」「身体で空間に入り、理解して、そこから役がどんどん入っていくようになりました」と井関さん。あの楽しさの裏にそんな当惑する事情があったとは。

その『ROMEO & JULIETS』ですが、各地の劇場を巡演する間に、大小様々な変更がなされていったことも記憶に新しいところです。とりわけ、各劇場の舞台形状の都合からトップシーンが変わり、「死」の表現も違うものになっていたり、挿入されるロザラインの映像が何度も差し替えられていたりと各地で様々なヴァージョンを観ることになり、それも楽しさに繋がっていたことは確かでした。

そして諸々節目の年でもあったという「不惑」の40歳の頃のこと。先入観を捨てて、身体への向き合い方を見直していく作業は本当に大変だったに違いないでしょうが、「実感を伴った」ことで続けられたとされたあたりは、「やはりそれはそうなのだな」と繊細な作業の「真実」を感じながら読みました。

次いでは、「R.O.O.M./鏡の中の鏡」公演(実験舞踊vol.1『R.O.O.M.』『鏡の中の鏡』)(初演:2019年1月25日・新潟・東京)です。

こちらも魅力的な2演目でしたね。あの存在感溢れる「箱」は、あれ以前も、あれ以後も見たこともないものであり、その存在感に舞踊家たちが絶妙に絡み合う様子は、とてもシュールで美しく、ワクワク感に半端ないものがありました。

愉しいことこの上ない演目『R.O.O.M.』では、トウシューズには、勿論、大きなインパクトがありましたが、それを巡って、ここでも、井関さんは身体への気付きを得て、それを新たなテクニックに落とし込んで進んでいたのですね。

もうひとつの『鏡の中の鏡」 の方は、最初にまったく別の音楽を用いて振付を行っていたことも興味深い事実ではありますが、目を合わすことなく踊られていくデュオ、その緊張感、思い出しました。最後のところ、タイミングを決めずに、初めて顔を上げて相手を見やる場面の「一回性」、その妙味もはっきり思い出しました。

読んでいると、舞踊家(井関さん)が自らの身体に注ぐ視線のその奥深さを、少しなりとも想像出来るような「Noism20年 井関佐和子、全作品を語る(17)」でした。こちらからどうぞ。

【追記】今回も、この後、コメント欄にて、舞踊評論家の故・山野博大さんによる『ROMEO & JULIETS』のご批評ほか(PDF)へのリンクを貼らせて貰う予定です。そちらも是非ご覧ください。

(shin)

大感動の新潟公演中日にアップされていた「dancedition」連載「Noism20年 井関佐和子、全作品を語る(13)」

大感動に酔いしれていました。決して忘れていた訳ではなかったのですが、それでも気が回らなかったことは確かでしょう。なんと、『マレビトの歌』新潟公演の中日にウェブ「dancedition」に「Noism20年 井関佐和子、全作品を語る(13)」がアップされていたのでした!もっと注意力をもって、複眼で周囲を見なきゃダメですね。今、大層慌てながら、このブログでのご紹介を始めようとしています(汗)。

でも、アップされた当日(12/6)、あの中日に気付いていたとして、ふたつを平行して書けたかどうか、自信はありません。張り切ってそんなことをしようものなら、きっとぶっ倒れてしまっていたことでしょう(汗)。ですから、今になって気付いたことは幸運だった、今回はそう思うことに致します。それでは連載「第13回」のご紹介を始めたいと思います。

先ずは「青山バレエフェスティバル – Last Show -」で踊られた『Under the marron tree』(2015年1月29日・こどもの城 青山劇場)です。金森さんの処女作であるこちらの作品ですが、音楽はマーラーの交響曲第5番の第4楽章「アダージェット」ですから、陰影に満ち、穏やかで静謐な作品と言ってもよいものかと思います。私は別の機会に観たのですが、舞台上、テーブルの裏側からぽとっと落ちてくる井関さん。後の『R.O.O.M.』における「落下」もそうですが、その擬音(ぽとっ)が実際に聞こえてくる気がして、ややユーモラスにも映ります。ですが、それも一瞬、そこから一気に井関さんを包んでいく「寂寥感」が半端なく、井関さんが繰り返し右手の人差し指を立てて作る「1」、それが喚起するイメージが強烈な印象として残っています。

でも、この作品、井関さんのために振り付けられたものでなかったために、「何か」を掴む迄、長い苦闘があったのですね。そして、それは一旦手にしても、時を隔てたら、そのままで良い訳ではないのだということ、毎回、挑戦なのだということに舞踊家が作品を踊ることの奥深さを認めました。世阿弥の言葉を大切にしている井関さんに、私たちの想像を遙かに超えた深みを見せつけられる思いがします。

次いで、「NHKバレエの饗宴2015」での『supernova』(初演:2015年3月28日・NHKホール)です。頭まですっぽりの白タイツ、照明が反射してとても見え難かったとか、周囲のバレエ団からは奇異の目で見詰められたなど、別の場所で教えてくださったことを思い出しながら読みました。ですが、決して「放送事故」などは起きていません(笑)。ハードディスクに録画しておいたものを見返そうと考えています。

3番目は、近代童話劇シリーズの第1作とされた『箱入り娘』(初演:2015年6月6日・新潟、神奈川、石川、韓国・ソウル)です。

様々な趣向で織り込まれた映像のなかに、新潟市の海岸(五十嵐浜)で撮影されたモノクロ映像が含まれていたりして、新潟市民として(或いは少し範囲を広げて、「新潟人」として)愛着を覚えた方も多かったのではないでしょうか。私もその映像が嬉しかったひとりです。でも、その撮影がとても厳しいものだったことは想像もしませんでした。

言ってみれば、これはかなりぶっ飛んだ正真正銘の異色作で、「えっ?金森さん、こういう作品も作るの!?」と呆気にとられながら愛でていたことを思い出しますので、それだけに、井関さんの「イライラ」は今初めて知りました。前回の第12回もキツイ内容ではありましたが、今回はその比ではない様子。その「イライラ」をここまで赤裸々に語ってくださったことに驚きを禁じ得ません。それはまさに読んでいるだけで辛くなってくる程です。それは勿論、「外」にいる部外者としてのレベルですけれど、それでもどうしてどうして、心をひりつかせるものがあります。

長い年月に渡る「舞踊への献身」にあっては、ただ舞踊のみを相手取るだけでは済まず、伴って、周囲との関係性や自分の立ち位置も大きく変わっていくのが必定と言えば、必定でしょう。で、こうして「全作品を語る」となると、そのあたりの葛藤まで漏らさず含めざるを得ないことになる道理なのですね。この連載、(ぞんざいに読んできたつもりは毛頭ありませんが、)これまで以上に心して読みます。

そんな「Noism20年 井関佐和子、全作品を語る(13)」、どうぞお読みください。

それにしましても、最後の方には「ここからの数年間は闘いの時期でした」との文言もあり、不穏な気持ちや胸騒ぎを覚えますが、「人生で最大の勉強をした時期だったと思います」と振り返られたことに救いを見出しつつ、次回を待つことにします。それでもちょっと辛い予感はよぎりますけれど…。

(shin)

「Noism2 定期公演vol.16」活動支援会員/メディア向け公開リハーサル&囲み取材に行ってきました♪

2025年2月28日(金)、りゅーとぴあに向かうのに、考えなしにセーターを着てダウンコートを羽織ろうしたところ、連れ合いからダメ出し一発。この日は新潟県も「4月中旬の気温」となるということで、少し薄めのものに変えて、「Noism2 定期公演vol.16」活動支援会員/メディア向け公開リハーサル&囲み取材に行ってきました。

予定時刻の12:30、〈スタジオB〉にて、中尾洸太さん演出振付の『It walks by night』のクリエイション風景から公開リハーサルは始まりました。ホワイエで待っている間から耳に入ってきていたチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」のあの最も知られた旋律が流れる場面を中心に、クリエイションの様子を見せて貰いました。中央奥にとても象徴的な木製の扉。Noism2メンバー9人のうち、ひとりだけ黒い帽子にベージュのステンカラーコートを纏っています。

「タータァタタタータターター、パッ」旋律を歌い、「1234、56」カウントを数え、自ら汗をしたたらせながら踊って、振りとそのイメージを伝えていく中尾さん。この日、私たちの目の前でじっくり時間をかけていた回転の振り。「足、そして手首、身体の順」(中尾さん)に動きが伝わっていき、2本の腕が纏わり付くかたちで身体を捩らすような複雑な回転にはブラッシュアップが続きました。チャイコフスキーの旋律にのせて、中尾さんのロマンがどのように可視化されていくのか、楽しみでなりません。

13:00、次いで今度は樋浦瞳さん『とぎれとぎれに』からの一場面を見せて貰う番です。こちらの作品、まず最初に大きな白い紙が運び込まれて敷かれていったところから、既に何やら独特な世界観が漂ってきました。音楽も、先刻までの中尾さんがメロディアスだったのに対して、ざらつくノイズ然としていたり、機械的だったり、ビート音だったり、全く別の趣のもの(原摩利彦)です。で、それに合わせた振りはやはりソリッドなもので、ところどころ、『R.O.O.M.』や『NINA』を想起させる動きも見出せるように思いました。

「一回、紙から逃げてみて、でも戻っていく感じ」とか「倒れた直希(=与儀直希さん)に、自分の吐く呼吸を入れていくみたいな」「もっと持ち上げるような感じで」とかと丁寧にイメージを伝えていく樋浦さん。Noism2メンバーの9つの身体と一緒になって、私たちをどこへ連れて行き、どんな世界を見せてくれるのでしょうか。興味が掻き立てられました。

上演3作品の使用楽曲です。

13:30、ホワイエにて囲み取材が始まり、地域活動部門芸術監督・山田勇気さんと今回、演出振付作品を発表するNoism1・中尾洸太さん、樋浦瞳さんがそれぞれ質問に答えるかたちでたっぷり話してくださいました。以下に、かいつまんでご紹介します。

Q・今回の作品のテーマ、伝えたいもの。
 -A・中尾洸太さん(『It walks by night』): 一番のテーマは「選択」「チョイス」。同年代(20代前半)の振付家と舞踊家のクリエイションは珍しい機会。同年代の観客層に届けたい思いもある。人生のなかで、何かを選択することを恐れないこと。そのときには誰かがまわりにいて、ひとりじゃないということ。まわりの人がいるからこそ、様々な感情が生まれること。それらを再認識するなかで、この先の自分の選択を噛み締めていけるような、未来に繋がる作品になればいい。
 -A・樋浦瞳さん(『とぎれとぎれに』): 自分が、人が、生命体が生まれてくる前にはどのような光景が広がっているのだろうという疑問から創作を始めた。「舞踊」という芸術は舞踊家が踊るその時間のなかにしか持続はない。その時間とその身体でしか起こることが出来ないもの。生命にも舞踊にも終わりは来るが、途切れたあとも繋がっていくものがきっとある筈だという思いを主軸に創作した。一人ひとりがその身体を持っていることを喜べるきっかけになったら嬉しい。「紙」については、舞踊作品の一回性を作品のなかでより顕著に表したかった。その「紙」に舞踊家たちが集まってきての始まりは、生命の源、「泉」のようなイメージによるもの。今の舞踊界で、このような時間と場所と舞踊家を得て創作出来るのは奇跡的なこと。この環境だからこそ出来ることを追求していきたい。
 -A・山田勇気さん: 【①金森さんの『火の鳥』について】: 金森さんが初めてNoism2のために作った作品で、2011年に初演、これまで5回ほど再演している。 メッセージ性がシンプルで強く、踊る者にとっても「登竜門」のようでもあり、これを越えることで成長できる、或いは、成長しなければ成立しない「強い」作品。これは生き残る作品であり、後世に伝えていくべき作品。これを通過する色々な舞踊家を見て欲しい。ある種、伝統になればいい、という思いもあって選んだ。
【②中尾さん・樋浦さん作品について】: レパートリーを踊るとなると、自分の選択をために振り付けられたものではないため、「踊ってみた」みたいに踊ってしまうことも起こり得るもの。そうした点から、相互に影響を与え合い、主体的に考えないければならないクリエイティヴな場所を設けることでカンパニーとして成長することを期している。若い振付家にがっぷり四つで組んで格闘して貰って、そのなかで何か新しいものが生まれることを期待して、ふたりにお願いした。作品自体がゼロから始まる、「教える-教わる」関係を一旦離れた場所と考えた。

Q・一公演で同時にふたりが演出振付することについて。
 -A(山田さん):
 ふたりも刺激し合っているが、一番は、プロの振付家の現実問題として、時間の割合が大変なこと、そうした制約があるということがある。与えられたもの、限られたもののなかでベストを尽くすこと。メンバーは3つの作品を踊る、『アルルの女』のリハーサルも行っている、そうした同時進行状況のなかで、如何にフォーカスしてやっていくかは難しいことだが、やらなければならないこと。
現役メンバーに振付家としての依頼をすることには、Noismというカンパニーに属し、ひとつの「言語」のようなものを共有する者が、その中から如何にして「自由」を獲得していくかは大切なことと考える。自分たちが今ここで作っている身体性にどれだけの普遍性があるかは、そのなかで何かを作ることでしか分からないものがある。
また、次世代の振付家を輩出することはレジデンシャルカンパニーにとって大切なことでもある。

Q・【中尾さんに】タイトルは(ジョン・ディクスン・カーの)推理小説と同名。具体的なストーリーをイメージしているのか。
 -A(中尾さん):
 ストーリー・テリングはしない。(使う)曲毎に詩を書いていて、その自分が想像したこと(詩)と音楽、それを社会(観客)とどう繋げていくかを意識している。振付家と舞踊家と観客のトライアングルが綺麗に揃っていないと良い瞬間は生まれない。この時代に簡単に溶け出してしまわない作品を残したい、その時間を提供したい。
観客が観に来ることも選択なら、自分たちが本番中に振りを踊るのもひとつの選択であり、既存のものをただ舞台にのせているのではない。研修生カンパニーであることから、自分たちの葛藤と闘っていて、身近に重い選択を控えている。それは舞台に出て来る。自分たちのベストを尽くした作品で観客に真っ向から立ち向かう時間を作りたい。それら全てが「選択」。タイトルは語り過ぎず、抽象的な感じで、意味を込め過ぎない、ふわっとしたものである。

Q・選曲理由は。
 -A(中尾さん):
 チャイコフスキーがどう亡くなったか知っていたので、「選択」「チョイス」は常に頭にあった。「悲愴」はチャイコフスキー最後の交響曲であり、哲学的思想が詰め込まれている。自分が振付家として彼の音楽と闘うのと同時に、舞踊家と一緒に、彼の音楽を通して、社会になにか普遍的なものを提供出来るのではないかと思った。
 -A(樋浦さん): 自分がそれらを聴いているときに、彼女たちが世界を繰り広げている様子を想像出来たこと。音がなくなる瞬間があったり、メロディー自体が存在しなかったりするが、その空間のなかに舞踊家がいることで、音楽と身体とが相互補完的だったり、相乗効果が生まれたらよいと。それが音楽と舞踊家との関係性として目指していること。

Q・この3作品での公演に関して。
 -A(山田さん):
 ヴァラエティ豊かで、楽しんで貰える。3つの全然違う作品にNoism2の舞踊家がどう取り組んで、そこで生きるのか。若い身体、若い思い、若い精神からしか出て来ないエネルギーを是非感じて欲しい。3作品が合わさったときに、彼女たちの表情とか輪郭とかが見えてくるのかもしれないと期待している。(13:55囲み取材終了)

…というところをもちまして、公開リハーサル&囲み取材の報告とさせて頂きます。

色々な意味合いで、とても興味深い「Noism2 定期公演vol.16」は3月8日(土)と9日(日)の2 days。只今、チケットは好評発売中です。若き舞踊家9人が格闘する3作品、そこに漲るエネルギーを全身で受け止めてください。

更に、8日の終演後には、この日の囲み取材時と同じ、山田さん、中尾さん、樋浦さんが登壇してのアフタートークも予定されています。(9日のチケットをお持ちの方も参加出来ます。)作品が生まれる現場により一層コミットしてみる機会です。楽しくない筈がありません。ご検討ください。

【追記】現在、発行されている「Culture Niigata」最新号(2025.03-05、vol.122)に、今回、振付家として創作している樋浦瞳さんが取り上げられています(表紙およびインタビュー記事)。加えて、昨年11月「新潟県文化祭2024『こども文化芸術体験ステージ』」(@十日町市・段十ろう)に登場し、『火の鳥』と『砕波』を披露したNoism2についても掲載されています。同誌は無料。りゅーとぴあにも置かれていますので、是非、お手にとってご覧ください。

(photos by fullmoon & shin)

(shin)

BSNテレビ特番『劇場にて-舞踊家 金森穣と新潟』上映会&トークショーに行ってきました♪

2024年6月14日(金)@りゅーとぴあ4Fギャラリー

BSN新潟放送制作のドキュメンタリー『劇場にて-舞踊家 金森穣と新潟(英題:On Stage)』が今年5月、ドイツの「ワールドメディアフェスティバル2024」でドキュメンタリー部門(Documentaries: Arts and Culture)金賞を受賞したことはご存じかと思います。
それを記念して開催された上映会と、金森さん×番組ディレクター坂井悠紀さんのトークショーに行ってきました!


最初は椅子が50席ほど用意されていましたが、どんどん椅子追加で、終わる頃には満席立ち見の大盛況でした♪
https://www.ohbsn.com/event/wmf-onstage/

まずは上映会です。
テレビでリアルタイムで見て録画もしてありますが、大画面はやはり違いますね!
ナレーションは石橋静河さん。2022年初演のNoism×鼓童『鬼』に関して、金森さんに密着したドキュメンタリーです。
あの頃はマスク必須でした。『鬼』を作曲した原田敬子さんのことや、新潟、埼玉、京都、愛知、山形の5会場での公演のこと等、懐かしく思い出しました。

続いてトークショーです。
すっかりおなじみ同士の金森さんと坂井さん。明るく楽しくいろいろなお話が繰り広げられました。

坂井さんは授賞式のため5月末にハンブルクに行き、3泊したそうです。
街の中心にある国立劇場で、ジョン・ノイマイヤー、ハンブルクバレエ団『ガラスの動物園』を鑑賞。
「どうだった?」ときく金森さんに、「セットが豪華だった」と答える坂井さん。
「踊りを観にいってセットが豪華って、そりゃダメでしょう!」とすかさず突っこむ金森さんでしたが、坂井さんには訳が。
坂井さんは「舞踊と言えばNoism」が沁み込んでいます。
「Noismは舞踊家たちの身体性が共通しているが、ハンブルクバレエ団は身体性が共通していなかった」そうで、動きの質がNoismより雑と感じたのだそうです。
この返答には金森さんもちょっと驚いたようでした。

ハンブルクバレエ団は公演数がすごく多く、スケジュールが過密で多忙なので、集団性よりも個々の魅力を重視しているのではとのことでした。金森さんは「他の一流の舞踊団を観るとNoismのこともよくわかるよね」と応じていました。

●ハンブルクバレエ団、日本人初のプリンシパル菅井円加さんへのインタビュー( by 坂井さん)
菅井さんは2019年からプリンシパルになったそうで現在29歳。国家公務員という立場。
ノイマイヤーが芸術監督をもうすぐ退くことになっているが、それまではバレエ団にいるし、その後は流れを見たい。
劇場の課題は、観客の高齢化。← これは世界的現象だそうで、若者向けの演目を上演するなど、対処しているそうです。
菅井さんは金森さん、井関さんの大ファンとのこと♪
この『劇場にて-舞踊家 金森穣と新潟』を見て、とても勉強になったそうです。

金森さん談:
ノイマイヤーもそうだが、20世紀の巨匠たちがやめると、そのあとがてんやわんやになる。
自分はその次の世代だが、そうならないようにどのように残して、世代交代していくか。
自分がいなくなってもNoismが今のように続いていくにはどうすればいいか、考えているが難しい。
舞台芸術が定着しているヨーロッパではなく、この国独自の専属舞踊団のあり方を考え出して、世界に貢献したいと思っている。
日本は、かつて経済に注いだ情熱を、今度は文化に注げば文化大国になれるのにもったいない。
★この番組が金賞を受賞したからには、全国放送をしてほしい。新潟でしか見られないというのはそれこそもったいない!(拍手)

そのほか、坂井さんは2019年1月『R.O.O.M.』の公開リハで初めて金森さんとNoismに出会ってビックリし、密着取材をしつこく申し込みましたが、断られ続けたこと。その後、モスクワまで(『カルメン』公演の取材に)来たら考えると言われたため、同年5月末にモスクワに行ったこと(モスクワの会場でお目にかかりました)。
ハンブルクでの授賞式・レセプションには審査員が誰も来ていなくて驚いたこと。等々々書ききれず、すみません。

4年前、文化庁芸術祭賞のテレビ・ドキュメンタリー部門で大賞を受賞したBSNスペシャル
『芸術の価値 舞踊家金森穣 16年の闘い』で、坂井さんは「新潟に金森穣がいることの意味」を撮りたかったそうですが、この度は「金森穣にとっての新潟」を意図したそうです。
番組中、昨年の関屋浜海岸清掃のシーンで金森さんが言った「この海の向こうには大陸があるんだよね」という言葉が坂井さんには印象深いそうです。新潟にいて、いつも世界のことを考えている人、なのでしょう。

最後に金森さんのひとこと、
「Noismで二つも賞を取ったのだから、BSNはそろそろNoismのオフィシャルスポンサーになれば!」
拍手喝采! あっという間の1時間、楽しいトークでした!
終了後は来場者と写真撮影♪
https://twitter.com/NoismPR/status/1801581021382721871

なお、6月28日(金)— 30日(日)
Noism 20周年記念「Amomentof」公演期間中も同番組が上映されます。

※28日(金)、29日(土)の上映はどなたでもご入場いただけます。
入場無料(申込不要/当日直接会場へ)
※30日(日)の上映は、会場が劇場ホワイエとなるため、当日の公演チケットをお持ちの方のみのご入場となります。なお、椅子のご用意はありませんので、ご了承ください。

6/28(金)17:30-18:25 4Fギャラリー
6/29(土)15:30-16:25 4Fギャラリー
6/30(日)14:00-14:55 劇場ホワイエ

公演&上映、ぜひどうぞ!

(fullmoon)

【追記】
坂井ディレクターによる授賞式を含むハンブルク訪問の様子は、6月12日(水)夕にBSN新潟放送『ゆうなび』内にて、「芸術の国 ドイツ・ハンブルク 現地リポート(Noismを知るトップダンサーにも取材)」として、10分の尺(!)をとって放送されました。その放送ダイジェストは次のリンクからご覧いただけます。併せてどうぞ。
https://news.infoseek.co.jp/article/bsn_1226246/#goog_rewarded 
(放送には映っていた授賞式での坂井ディレクターの尊いタキシード姿がこちらには載っていない点は誠に残念ですが…。)

(shin)  

Noism2定期公演vol.15:「舞踊家として悩む中日」(中尾さん)を体験した13人とそれを見詰めた観客

2024年3月2日(土)の新潟市は、雪は舞うは、道路は凍りつくはで、まさに冬に逆戻りでもしたかのような一日。3月だというのに。
前日に幕があがっていたNoism2定期公演vol.15は、この日、14時からと18時からの2公演がある「マチソワ」の日だったのですが、その両方の舞台を目撃してきました。そう、まさに「目撃」の一日でした。

まずは踊られた2つの演目に関して、感じた事柄を書くことから始めようと思います。

最初は金森さんの振付で、山田さんによる構成の「Noismレパートリー」からです。今回は電子音やノイズの中で踊られる作品(『R.O.O.M.』『sense-datum』『no・mad・ic project – 7 fragments in memory』)からの抜粋なのですが、最初の一音が響いたその一瞬から、極めて「Noism的な」と言う他ない動きへの、13人の挑戦が始まることになります。それは、舞踊家が苦しければ苦しいほど、観客は気分があがってくるといった嗜虐的な時間です。しかし、エッジの効いた早いビートに乗るだけでは不充分であり、更に、その向こうに、踊る舞踊家その人でしかないものが見えてこなければなりません。課せられたそんな極めて高いハードルに対して、多くの視線を浴びるなか、アドレナリンを出しつつも、「離見の見」をもちつつ挑んでいく時間の体験です。大きな成長に繋がる機会と言える訳です。「Noismレパートリー」には、13人全員が各自の「今」を超え出ようと格闘する姿が溢れていて、見詰めていると胸に迫ってくるものがあります。
この日の2公演を観ての感想としては、2年目の5人の動きに、やはり一日の長があり、安定した「Noismらしさ」が強く感じられたと記しておきます。そして、なかでも春木有紗さんに目が惹きつけられたことも。場を圧する空気感において群を抜いていたように感じました。

休憩後は、Noism1の中尾洸太さん振付演出の新作『水槽の中の仮面』です。30分の作品を振付るのは初めてとのことですが、主に6組のデュオのフォーマットを用いて、中尾さんらしいリリカルさを基調にしながら、描かれていく2者間の隔たりに、ある種の不穏さが色濃く漂うアレゴリカルな(隠喩的な)作品と映りました。現在の世界情勢などが、否応なしに、反映されているといった感じも受けますが、「隔たり」を扱うこの作品自体は、踊り込まれることによって、様々な受け取り方を許すものになり得るように感じました。踊る側の深度が増すことによって、中尾さんの当初のイメージを超えていくだろう可能性をそこここに感じながら観たような次第です。(同時に、これも否応なく、「水槽」と「仮面」についての思索に誘われています、今。)また、使用楽曲のシューベルト『死と乙女』もそれが描く死と安息を「隔たり」繋がりで捉えようとすると、今作に奥行きを与えてくれるものがあると言えるでしょう。様々な点で、たくさんの「開口部」を持つ作品であると思いました。
いずれにしましても、今回が本格的な振付デビューとなる中尾さんが、Noism2メンバーの「今」に向き合うかたちで作られた本作、必見ですね。

2つの演目を公演中日の2時の回と6時の回に観た訳ですが、2回を併せて、そんなことを感じました。

その後のアフタートークについてもかいつまんで記します。この日の登壇者としてアナウンスされていたのは、地域活動部門芸術監督・山田勇気さんとNoism2リハーサル監督・浅海侑加さんでしたが、途中、質問への回答上の要請から、場内にいた中尾洸太さんも加わることになりました。

*メンバーが悩んだり、苦しんだりしているときの声掛け
浅海さん: 【今回のクリエイションにおいては】(じっくり考えてから)「洸太(=中尾洸太さん)を真似してみて。洸太も音楽を聴いて動きを作っているので」とか言ったりした。
【普通に悩んだり苦しんだりしているときには】経験する時間を感じて欲しい。その気持ちを感じることも経験だから。
山田さん: 経験が浅いし、難しい部分。簡単な答えはない。今日の舞台もひとつの経験。

*今回、苦労したところは
浅海さん: 洸太の作品は新作で、過去に踊った人の手本がないので、ゼロから作り上げなければならない。洸太の作品なので、稽古をみていて、自分が思うことだけになっていって、違ってしまっては嫌なので。どこまで伝えたらいいか。
山田さん: 「レパートリー」には過去の振付があって、難易度が高くても崩せない。そこにもっていって、自分が踊る意味を見出させること。

*中日の舞台(2公演)に関して
山田さん: 昨日、初日があけて、今日は2公演。初日はエネルギーを解放させたのだが、中日の昼の部(2時の回)は持っていき方が難しかった。しかし、夜の部(6時の回)には、修正して、違った面が見られた。「レパートリー」に関しては、どちらも色々な「点(=箇所)」でいい人、光る人が違った。洸太の作品は、全体の色が毎回違ってきていて、どこへ落ち着くのかなぁと。
浅海さん: ここまで3回全部違う。洸太の作品は毎回印象が変わるが、今回は「人間」というものを感じた。彼らが経験している姿を見て、人生の一部だとか、「今」だとかいうふうに。言語化できない気持ち、したくない気持ちになった。

*身体のケア・回復方法
山田さん: 個人に委ねられている。その準備もひとつの経験。自分の身体を知って、ルーティーンを確立していく。

*中尾さんのメンバーの選び方
中尾さん: 選び方はインスピレーション。曲を決めてあるので、そこから思い浮かぶ人のを選んだ。そして、自分は振りを決めていかずに、その人がいる場で音楽を聴いて、振りを決めていった。(曲 → ダンサー → 振り、の順。)

*中尾さんが苦労したこと
中尾さん: 『鬼』の公演前に急ピッチに振り付けたものが、『鬼』公演の1ヶ月をおいたら、不安な気持ちになってしまった。どう見えているのか精査し切れないままだったので、「過去(1ヶ月前)」に考えて出したものが「これでよかったかなぁ」と不安に。
『鬼』が終わって、再開したとき、「1回通しで見せてくれ」と言って、「今」の自分を重ねていく前に、「過去」の自分を再確認して始めた。

*中日の舞台の印象
山田さん: 彼ら自身と自分の向き合い方を考えて見てしまった。これからどうしようかと。
中尾さん: 気分によって、波が激しいなと。自分も気分によって変わるタイプなのでわかる。「中日」は舞踊家にとって、どう持っていったらいいか悩む日。2時の回は「うーん、あんまりだなぁ」と思ったが、6時の回は「その体験を体験たらしめている」と思った。昇華して、伝え方も変わった。(その体験を)次に使えている。
浅海さん: 2時の回と6時の回とでは全然違っていた。稽古監督としては、踊りの部分での見せ方とか言いたいことは結構あるけれど。

*中尾さん作品の衣裳に関して(←衣裳の着方の違いに気付いたという会場からの声を受けて)
中尾さん: 表と裏で着ている。最初に出した衣裳案は、「Aライン」の白で、立体的にふわっと、というもの。その後、そこに黒いライン(線)も欲しいと思ったが、その下を黒にして、透ける感じにした。表と裏にして着ることで、パターンを増やさなくて済んだ。どっちが表、裏を着るかは純粋に見た目で決めた。

と、そんな感じでご紹介とさせて頂きます。

さて、これを書いているうちに日付も変わってしまいましたので、Noism2定期公演vol.15も本日(楽日)の2公演を残すのみとなりました。まだ、夜の回はお求め頂ける様子です。日々「体験」し、「経験」を増していく13人の若者。是非、彼らの「今」の格闘を目撃しにいらしてください。それはそのまま、観客としても、きっと心動かされずにはいられない時間の「経験」になるでしょうから。

(shin)



「挑戦」を超えた、若き舞踊家と振付家の誕生(サポーター 公演感想)

Noism2定期公演vol.15初日は、完売・当日券無しの盛況となった。先日の活動支援会員向け公開リハーサルでは、まだまだ緊張や葛藤も見られたNoism2メンバーだったが、第一部「Noismレパートリー」の幕が開くや、身体の躍動と音楽の連打で一気に会場の空気を高揚させた。金森穣作品の内、『R.O.O.M.』始め電子音楽に乗って展開する諸作に絞ってNoismならではの無機質さと有機的な身体との拮抗や、硬質なエロスといったエッセンスを抽出した山田勇気地域活動部門芸術監督の構成が冴え、Noism的なるものを体得しつつあるメンバーと、成長の途上にあるメンバーとの共闘や、その差異がもたらす新鮮な感覚に、いつしか忘我して舞台に没頭した。過去最多となる13名のメンバー各々の個性は、これから更なる開花を見せるだろうが、しなやかな身体性と既にして凄絶ささえ漂わせる表情で舞台を牽引した春木有紗さんをここでは特筆したい。

そして「Noism1メンバー振付公演」を経て、本格的な演出・振付家デビューとなった中尾洸太作品『水槽の中の仮面』が生み出した、瑞々しい感動たるや。12人の女性メンバーによる6組のデュオが交錯し、音楽の高揚とそれぞれの身体が確かな共振を現出させ、いつしか目頭が熱くなっていた。支配・被支配、仮面と素顔という対比を超えて、重ね合う額や肌で通じ合う6組の「魂」(中心となる春木有紗さん・与儀直希さんコンビ始め、デュオそれぞれが互いを高め合うようだった)。否応なく、パレスチナを始め世界で命を奪われている人々に思い至る鮮やかな終幕。舞台美術の明確なコンセプト。師・金森穣の影響を感じさせつつも、独自の舞台芸術を産み出そうとした中尾洸太さんの挑戦は、確かな成果として結実していた。実に4回に及んだカーテンコールでの熱い拍手もその証左だろう。

山田勇気さんとのアフタートークで、初日の印象を問われた中尾さんの「サプライズがあった。僕の考えた振付を超えて、メンバーが舞台で生きていた」という感慨は、観客もまた感じ取ったものだった。6組のデュオは「インスピレイションで決めた。対になるような個性のメンバー同士で」という裏話や、「楽曲と自身のイメージが先にあって、その先に振付がある」という創作過程、会場からの現在の「戦争」からの影響を感じたという声に、「強く影響を受けた。最近は三島由紀夫や鈴木忠志、宮崎駿など『戦争』を経験した人の作品に関心がある」という回答など、中尾さんの率直かつ誠実な言葉の数々。舞台の仕上がりに安堵したと語りつつ、「欲を言えば、金森穣作品と、もっともっと違う世界を見せて欲しい」「自身のイメージを基にすると、そこに縛られることもあるよね。それをどう超えるか」「Noism2を、Noism1メンバーが振付ける試みを永く続けたい」と優しくも鋭くエールを送る山田勇気さんの姿も印象深い。若き舞踊家と振付家の渾身に、観客もまた全身で向き合うことで、豊かな時間となったNoism2定期公演初日。明日・明後日の公演をご覧になる方も、是非刮目して彼女・彼らの躍動に立ち合っていただきたい。

久志田渉(新潟・市民映画館鑑賞会副会長、安吾の会事務局長、さわさわ会役員)

Noism2定期公演vol.15 活動支援会員対象公開リハーサルを見てきました♪

2024年2月24日(土)、気温もそこまで低くはなく、季節は確実に動いているなぁと感じさせられるような三連休の中日、りゅーとぴあ〈スタジオB〉に赴き、標記Noism2定期公演vol.15に向けた活動支援会員対象公開リハーサル(12:00~13:00)を見てきました。

3日前のメディア向け公開リハーサルは、中尾洸太さんの新作『水槽の中の仮面』のリハーサル風景だったのですが、この日は、1時間枠を2分割して、前半は山田勇気さんが指導する「金森穣振付Noismレパートリー作品」の様子を、後半は中尾さん作品について見せて貰いました。

正午。その「金森穣振付Noismレパートリー」からです。山田さんの「それじゃあいきましょうか、3曲。3曲続けて」の言葉から始まりました。村上莉湖さんが両腕を拡げて上手(かみて)に伏せると、聞き覚えのあるノイズ然とした音楽が聞こえてきます。まずは『R.O.O.M.』から。(今回は天井から落ちてきたりはしなさそうです。)次いで、『sense-datum』へと進んでいくのを見ることになりました。

山田さんは椅子に腰掛けたまま、Noism2メンバーたちの動きを細大漏らさず、逐一目で追い続けますが、時折、音楽に合わせて腕(そして掌や指)を動かすその後ろ姿には、あたかも、自らがその一本の腕へと収斂し、その腕が追い求められ得る限りの理想の動きでその時々の一音一音を踊っているかのような風情が認められたほどです。

一旦、「3曲」を通し終えたところで、音楽を止めた山田さん。『R.O.O.M.』から動きのブラッシュアップが始まります。
「最初のポジションにきもちエネルギーが欲しい。張りを見せていく」
「それだと動きが消えちゃうんだよね」
「しっかりダウン。(重心が)常に下にあるんだから、大きくは飛べない筈」
伏せている姿に対して、または、足を回す動きについて、或いは、身体を回転させたその後に関して、そのひとつひとつに、山田さんから丁寧に細かなチェックが入り、若き研修生たちがそれに向き合っていきます。それらを通して、その場に居合わせた私たちにも「レパートリー」とは単になぞられるものでは済まず、同じ精神性の共有を求めてくるものなのだという当然過ぎる事実が(わかってはいたつもりでしたが、)ビンビン伝わってきました。

12:30。「じゃあ、ここまでで、次、洸太作品」という山田さんの声がかかり、後半の『水槽の中の仮面』リハに移りました。この日のメンバーは仮面はない代わりに、恐らく、衣裳と思われるものをその上半身に纏っています。

この日の中尾さんは、山田さんとは異なり、共にリノリウムの上にいて、音楽を都度止めながら、動きを練り上げていきました。
「音楽が“のぺーっ”と聞こえちゃう。音楽は壁紙じゃないんだから」
「イメージが自分だけで完結している。自分の呼吸感をまわりに伝播させていくこと。そして、まわりはそれを受け止めないと」
「(動きの)弱いところは弱くして欲しい。そして、強いところも、なんでそれが強く見えるのか、その本質的なところが大事」
中尾さんによって研修生たちにかけられる言葉、そして同時に示される実演、そのどちらにも、先日の囲み取材の折に、中尾さんが強く実感したと語った「僕の当たり前が当たり前じゃない」という意識が見てとれました。動きを磨くことで、作品のヴィジョンの共有も進んでいくのでしょう。

前半の山田さん、後半の中尾さん、その都度、ふたりによるチェックが入った後は、それぞれ、みんな動きが違ってきます。その様子をつぶさに目撃すること、それは活動支援会員にとって本当に大きな「特典」と言えるでしょう。この日、私たちが息を殺して見詰めたものは、向上心に溢れる若い13人の研修生たちによる挑戦と格闘のドキュメントと呼んで間違いないものだったからです。そしてその先に、来週末の公演「本番」を位置付けて待つ日々に格別な楽しさが宿った、そうも言い添えたいと思います。(皆さんも是非、活動支援会員の仲間入りをしてみませんか。)

来る弥生3月初、若竹の如く、ぐんぐん成長を続けるNoism2メンバーによる定期公演です。くれぐれもお見逃しなく!

(shin)

Noismの現到達点たる『セレネ、あるいはマレビトの歌』、その夢幻(サポーター 公演感想)

5月11日、りゅーとぴあでの『セレネ、あるいはマレビトの歌』公開リハーサルの衝撃は忘れ難い。『Nameless Hands-人形の家』や『NINA』『R.O.O.M.』など舞踊家の渾身と演出振付・金森穣の魔術的洗練に圧倒される舞台に幾度も立ち会ってきたが、りゅーとぴあ〈劇場〉の舞台上に設えられた客席で展開された舞踊と音楽の濁流と、作品の精神には、真底打ちのめされた(リハーサル後、金森さんにバッタリ会い、「これは凄いです。大好きな作品です」と興奮気味に声を掛けてしまった)。

その本番が、5月20日・21日、「黒部シアター2023 春」として黒部市の前沢ガーデン野外ステージにて開催された。初日の圧倒的舞台についてはしもしんさんが当ブログにて詳報している。私もまたTwitterで「激賞」と呼べる感想を書き連ねたり、「月刊ウインド」6月号にて魚津滞在を含めた紀行記事を掲載予定の為、2日目(5月21日)の感想を主に記載する。

魚津駅から黒部駅へあいの風とやま鉄道の列車で向かい、前沢ガーデン行きのバスが発車する「ホテルアクア黒部」へ。新潟や東京から駆け付けたNoismサポーターの方々と合流し、16時発のバス車中では(初見の方も同乗しているので配慮しつつも)昨日の公演の素晴らしさをあれこれ語り合う(この様子を、同乗していた富山県市町村新聞の宮﨑編集長が聞いており、会場でお声がけいただく。公演について記事を書かれるとのこと。特に声の大きな私の放言、失礼しました)。
開演の19時迄は前沢ガーデンの圧倒的な空間美と自然に浸りつつ待機。鈴木忠志氏をお見かけしたり、会場入りする金森穣さんや井関佐和子さん、山田勇気さんにご挨拶(金森さんのご両親や鈴木忠志氏率いる「SCOT」の本拠地である南砺市長も足を運んでいた)。

そして、19時定刻に始まった本番。舞台は常に一期一会だが、野外公演は吹く風や、それにはためく衣装、空の色(この日は渦巻くような雲が空を覆いつつも、陽光がうっすらと覗く)が繊細なコントラストを生み、作品の強度は変わらぬとはいえ、観る者が受け取る印象が新鮮に変わっていく(舞台に立つ舞踊家にとっても、きっとそうなのだろう)。

活動継続問題やコロナ禍の苦しみの中で、ひたすら舞う「Noism」の集団としての強さと祈りに幾度も涙した『Fratres』を、アルヴォ・ペルトの楽曲を駆使しつつ、作品の一部とし、全く違った文脈で再構築した『セレネ、あるいはマレビトの歌』。異端・来訪者を排斥し、互いを縛る「集団」と、個を確立した者が手を取り合う「連帯」との対比。女性同士の深い共感が、集団の論理に楔を打つ展開(井関佐和子さんと6人の女性舞踊家が織り成す洗練と爽やかなエロスに充ちたシークエンスには、ペルトの楽曲相まって涙が溢れた)。ベクトルの異なる舞踊の連鎖を休む間もなく躍り続ける井関佐和子さんやNoism1メンバー、野外ステージの高低差を活かした演出の中で「恐怖」さえ覚える登場を見せる山田勇気さん。そして、言葉を越え、この世界に生きる人の胸に確かに届くであろう「ヒューマニズム」を謳い、アンゲロプロスやタルコフスキーといった名匠が映画で描いた夢幻のごとき光景を現出させた金森穣さんの手腕に、陶然としてしまう。Noismを応援してきた者にとっての冥利を覚えつつも、この現到達点は、Noism Company Niigataの更なる未来と拡がりを想像させる。

カーテンコール後、初日(5月20日)に続いて舞台に立った金森さんは「自分にとっても手応えのある作品」、「この作品を持って海外に出掛け、世界に挑みたい。新潟のカンパニーが黒部に滞在して創った作品です。東京(発)じゃないんです。それが文化」と語った。この挑戦を、更にしっかり応援していきたい。

(久志田渉)

Noism2定期公演vol.13 公開リハーサルに行ってきました♪

日時:5月13日(金)14:00~14:30 終了後 囲み取材14:30~14:45
会場:りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館〈スタジオB〉
対象:マスコミ、Noism活動支援会員

朝の雨はすっかりあがって薄日が差す中、気温も上がり蒸し暑いようなお天気です。そんな鬱陶しさを吹き飛ばすようなNoism2公開リハーサル!


本番(5/21、22)が来週に迫る中、『火の鳥』(約25分)を見せていただきました!

『火の鳥』は2011年に金森さんがNoism2のために、そして学校公演を視野に創作した作品で、再演を繰り返し、今回は6年ぶりの上演となります。
登場するのは少年と火の鳥、そして若者たち6名の、計8名。
少年と火の鳥はこれまでもダブルキャストの時がありましたが、今回もダブルキャストで、本日は〇〇さんと〇〇さん♪(あえて伏字)。
少年役は踊りもさることながら表情が素晴らしい! 火の鳥も伸びやかに舞います。

もう一組のキャストのお名前もお聞きしましたが、どうぞ当日のお楽しみに♪
土・日の二日間とも、ぜひお運びくださいね!
公演・作品について等、詳細はプレスリリースをご覧ください。

公開リハーサルには、Noism2リハーサル監督 浅海侑加さんはじめ、金森さん、井関さん、山田さん、そしてNoism1メンバーも参加して注視!
出演メンバーは緊張しますよね~。 Noism2メンバーの二人が体調不良とのことで、代わりにNoism1坪田光さんと準メンバー杉野可林さんが特別に出演します。
リハーサルが終わると、金森さんから若者たちへ、歩き方、立ち方の指導が入りました!
本番がますます楽しみです♪

リハは拍手で無事終了し、Noism2リハーサル監督 浅海侑加さんの囲み取材です。BSNで放送されると思いますのでご覧ください。
浅海さんのお話によると、公演の稽古は昨年末頃から始まったそうですが、メンバーが変わったりしたので、まとまってきたのは4月頃だそうです。
『火の鳥』は再演なので動画があり、それを見れば振りはわかりますが、できるだけ浅海さんから振りを渡すようにしたそうです。振りを自分のものにして表現してほしいと話されました。

難しいのは、全員が組んで踊る場面で、激しい動きの中でリフトして回転させたりするので、同じようになることは無く、難しさを痛感しているそうです。
少年、火の鳥、若者たちが、それぞれ影響しあい、変わっていくことが作品のテーマであり、人と人との関係性を感じてほしいと話されました。

私は歴代の『火の鳥』を観ていますが、やはり最後は泣けますね~。。。
そして、ストラヴィンスキーの音楽にぴったり合っていてすばらしい~♪

■上演予定作品
演出振付:金森穣 稽古監督:浅海侑加
・solo for 2 より 初演:2012 年
・R.O.O.M.より 初演:2019 年
・砕波 初演:2017 年
・Phychic 3.11 より 初演:2011 年
・Me/mento, 4 am ”ne” siac より 初演:2001 年
・火の鳥 初演:2011 年

上演作品、見どころ満載です!
5月21日(土)17:00、 22日(日)15:00 @りゅーとぴあ〈劇場〉
若さ溢れる舞踊家たちの輝きを観に、どうぞ劇場にお運びください♪

(fullmoon)
(撮影:aqua)

公開リハーサル2日目、金森さん「今回お見せできてよかった」

2020年6月14日(日)の新潟市はお昼頃から雨。しかし、あまり気温が上がらなかったため、不快感はさほどでもなかったのが救いでした。

そんななか、新潟在住の活動支援会員を対象とした公開リハーサルの2日目です。今日も取材クルーの姿が数多く見られ、前日と併せて、県内全てのテレビ局が大きな機材を抱えて劇場を訪れたように思います。

で、この日の感染予防措置ですが、検温機器の設置場所に前日からの変更点があり、まだまだ手探り状態にあるといった様子で、検温スタッフにとっても、この2日間の全てが「リハーサル」であったり、ある意味、「実証実験」でもあったりするのだろうと理解しました。

前日とは異なる動線の配置
「正常な体温です♪」
検温機器にそう言われない限り、
この先には進めません
この光景、初めての方には物々しく映りますよね
脇道に逸れますが、感染経路を追うためという
趣旨はホテル等の宿帳も同じと聞いています

この日もリハーサル開始時刻が近付くにつれ、静寂が場内を支配するようになり、その静けさがいつまでも続くかと感じられ始めた頃、15時を2分ほどまわっていたでしょうか、これまた音もなく、スルスルと緞帳が上がり、井関さんと山田さんの脚部から、体幹、そして顔が、順に、真横から見るかたちで、私たちの目に入ってきます。ためらうような、たゆたうような、求め合うような、そんなふたり。『Adagio Assai』(仮)です。見惚れるしかないふたり。映像との相互作用も、通り一遍のものではないため、目は舞踊家と映像の行き来を求められるなど、上品な刺激に満ちたものと言えます。緩やかな切なさが印象的な小品です。

そして、ある効果音が聞こえてくると、そのまま『Fratres III』に接続していくのも前日観た通りです。舞台中央奥、登場時点から既に金森さんの目、或いは表情は、「同志」を先導する者のそれにしか見えません。そこから始まる「祈り」と同義でしかないソロと群舞が創出する豊穣な時間。ブレることなく、自らコントロールできることのみに専心する愚直な潔さが観る度に胸を打ちます。

休憩後は、実験舞踊vol.2『春の祭典』。金森さんのこの新作で、ストラヴィンスキーの手になる変拍子や不協和音に合わせて、21の身体を通して可視化される世界は、バーバリズム(野蛮・未開)とは異なる、極めて今日的な主題の体系に収まるものと言えるでしょう。混沌としていながらも、(須長さん制作の椅子に代表されるような)直線的なシンプルさ、或いは明晰さも同居したものであり、照明の果たす役割が印象的な作品と言うに止めておきます。

全て終わった後、この日も「ブラボー!」の掛け声が飛ぶなど、目にした舞台が、もはや「公開リハーサル」の範疇で語られるものではないことは誰しもが共通して感じていた事柄に過ぎません。ただ、舞台両袖に様々な道具や資材の類いが隠されることなく、全て顕しにされていたことのみが、これが「リハーサル」であることを思い出させるくらいだった筈です。

最後の挨拶。この日の金森さんは笑顔で話されました。「ほとんど本番。今まで仕上ったもので、最上のものであり、何の出し惜しみもありません」と。更に続けて、「今、ここに彼らがいて、皆さんがいて、今、この日の実演を彼らがやって、今、この瞬間が非常に貴重だということです。この困難な社会を生きていくうえで、一助になれれば嬉しい。これからも精進していきます」とも。

金森さんがそう語り、一通り、挨拶も終わった感が伝わってきた頃合いで、金森さんの後方、一列に並んだ舞踊家たちの列の中央、井関さんがしきりに隣のジョフォアさんの腕を掴んで、前に押すような仕草を見せています。

そのタイミングで、金森さんが、「ジョフ(ジョフォア・ポプラヴスキーさん)は今シーズンで終わり。8月から、次のカンパニーが始まるので、7月で(Noismを)離れなきゃいけない」と告げるではないですか!「他にもいるんだけど…」と「悲報」の多くは語られなかったものの、ジョフォアさんについては、「今回お見せできてよかった」と言い、8月のプレビュー公演には出演しないことが明らかになりました。(涙)

前日とこの日、『春の祭典』の冒頭、ジョフォアさんの登場場面、大柄の体躯を小さく折りたたむことで表出された「可愛らしさ」が個人的にはツボだっただけに何ともショックな報せでした。

でも、彼がNoismのDNAとでも言うべきものを次なる場所に拡散してくれて、異なる場所にいるNoismファミリーとして踊り続けてくれることを期待したいと思います。そして、この先も長く、新潟のことを覚えていてくれたら嬉しいです。いつまでもみんなで応援していきましょう。

さて、実演は一旦終了ですが、今週の金曜日(6/19)にはシビウ国際演劇祭2020 online special edition にて、Noism1の『R.O.O.M.』がオンラインで配信されます。奇しくも、「実験舞踊」繋がりでもあり、あの野心作、久し振りに堪能したいと思います。配信はライヴ配信のみで、朝4;20からと、夕刻16:20からとのこと。詳しくはこちら、Noism Web Siteをご覧ください。

(shin)