Noismかく語る・2020春① - Noism0 金森穣・井関佐和子・山田勇気

まったく先を見通すことのできない新型コロナウイルス禍にあって、Noism2定期公演の延期に続き、オープンクラスのプレオープンが中止を余儀なくされたのに加え、サポーターズとしましても、好評発進したばかりの「ランチのNoism」の取材を控えざるを得なくなるなど、世界がすっかりその様相を一変させた感が強いこの頃ですが、Noismの全メンバーからサポーターズの皆さまに向けたコメントが届きました。今回より全4回の予定で掲載して参ります。題して「Noismかく語る・2020春」。まずはNoism0の三人からどうぞ。

■金森穣

この文章を読んでいる今、皆様が、そして皆様の身の周りの方々が、健やかで愛の裡にあることを願います。

世界中が同時に、その社会基盤からこれほど揺さぶられる日々を、一体誰が予測できたでしょうか。

日々ニュースで為政者や医学者たちが警告を鳴らす“3の密”は、そのまま舞台鑑賞の状況に符合します。

それでも尚、日々己の身体と向き合い、鍛錬を続け、私たちNoismは未来に向けて創作を続けています。

舞踊家とは、己の生命の危機を感じれば感じるほどに、その身と向き合う覚悟が決まる生き物だからです。

舞踊とは職業ではなく、生き様だからです。舞踊芸術とは平和な時代の娯楽ではなく、魂の叫びだからです。

その叫びを共有して欲しい。だから今はただ、その時が再び来ることを信じ、私たちは稽古を続けています。

その時が来たら、皆様に最上の、この忍従の日々を補って余りあるほどの感動を届けるために。

どうぞ皆様、お身体ご自愛ください。お会いしましょう、劇場で。

Photo: Kishin Shinoyama

(かなもりじょう・Noism芸術監督)

■井関佐和子

今回のクリエーションは生涯忘れる事の出来ないものになると思う。

人生でまさかの時代を生きる事になった。それは皆さんが同じように感じている事だろう。

その「まさか」はいつどこに潜んでいるか分からない。明日はどうなっているのか分からない日々を過ごしながら、ひたすら創作をする日々。

そして毎日毎日稽古をしながら、ひたすら幸せを噛みしめている。

踊れることの幸せ。それを許される環境。現在を生きていることの幸せ。

ネガティヴな状況でネガティヴなことを思うだけではなく、明らかに日々をポジティブに生きられている今、本当に感謝しかない。

皆さんの健康を願って…この創作を続けていく

Photo: Noriki Matsuzaki

(いせきさわこ・Noism副芸術監督)

■山田勇気

Noism2の定期公演が延期になり、ご迷惑、ご心配をおかけしています。

今はメンバー総動員で、『春の祭典』の創作に勤しんでおります。集団の中に入って共に身体を動かし、影響し合うことがとても刺激的です。互いに尊敬しあえるグループへと成長していくことも、創作の一部であると考えています。

この非常事態の中、舞台芸術、複製できない「この場所」「この時」でしか味わえない体験の存在意義が問われています。リスク回避と効率化はもともと相性の良いもので、それが遠隔技術の発展によって現実に可能となり、これからさらに必要とされていくでしょう。

私たちはリスクが高く、効率の悪い場所で、創作して、表現しています。人間の身体がその場所です。私たちは身体から離れません。離れていってしまうまでは、身体と一緒です。舞踊とは根本的には、そのようなことを表現するのだと思います。多様な身体の在り方、関わり方を通して。

そしてそれは、生身の体験として、深く人に影響を与えるものだと信じています。

Photo: Noriki Matsuzaki

(やまだゆうき・Noism2リハーサル監督)

皆さま、如何でしたか。ご堪能いただけましたか。次回もどうぞお楽しみに。

(shin)

*ポートレートのクレジットに一部誤りがございましたので、訂正させて頂きました。ここにお詫び申し上げます。

新企画!「ランチのNoism」#1:金森穣さん&井関佐和子さんの巻

取材日:2020/02/15(Sat.)

チョコレートを巡る賑わいも前日で一区切りを迎えた2月折り返しの土曜日、ランチを拝見しながら、お話を伺うという某テレビ局の人気番組に想を得た取材をしようと、fullmoonさんと一緒にりゅーとぴあに向かいました。

聞けば、Noismのお昼休みは13:30から14:30までなんだとか。そこで、13:15にNoismスタッフの堀川さんを訪ね、『春の祭典』の音楽が漏れてくるスタジオBのホワイエに移動して、そのときを待ちました。

誰にでも昼はくる。時計は13:30。りゅーとぴあ・スタジオBに昼がきた。

「ランチのNoism」第1回。ホワイエに出て来た金森さんと井関さんは勿論、稽古着姿。衝立を兼ねたホワイトボードのこちら側で、まず、手提げから取り出されたお弁当のタッパーを撮影させて貰って、ランチ取材開始です。

ランチはホワイエ内、衝立のこちら側で寛いで

*まずは、毎回、全員に尋ねる(予定の)「10の質問」から。

「10の質問」は共通質問シート

1 今日のランチを簡単に説明してください。

 井関さん「今日のランチ…、サラダ。『サラメシ』。いつもお昼は基本、サラダです」

 金森さん「そうだね。でも、グルテンフリーして…いつからだ?あなたが急にサラダを始めたのは…?」

 井関さん「1年半とか、2年とか」

 金森さん「でも、なんでサラダにしたの? 俺はただ出されたもの食ってるだけだから。理由、俺も知りたいんだけど」

 井関さん「Noism始まった当初はコンビニのパスタとか。そこからおにぎりに変わって。2個食べてたのが1個になって。でも、コンビニのおにぎりって1個だとお腹が張らないですよ。なのに、炭水化物を摂ると眠くなるんです。で、とりあえずタンパク質いっぱい摂りたいからサラダにした」

 金森さん「俺が踊り始めたから。今より5kgくらい太かったからね、当時は」

人参(オーガニック)・トマトは井関さんの実家・高知産
新潟のプチヴェールも最近のお気に入りなんだとか

2 作るのに時間はどれくらいかかりますか。

 井関さん「全然かからないですよ。朝、朝食の準備と一緒に」

 *なんでも、朝食は主に米粉パンとコーンフレークに珈琲で、お昼のお弁当には前日の余り物(この日は里芋)も入れて来るんだそう。

3 ランチでいつも重視しているのはどんなことですか。

 井関さん「お腹がいっぱいになって、重くなくって、タンパク質がメイン。1にタンパク質、2にタンパク質、3、4がなくて、(アマニ)オイル。それがしたくてサラダにしたので。凄いボリューミーですよ、おにぎりのときよりも」

 金森さん「炭水化物は血糖値がすぐ上がるけど、すぐ下がるので良くない、とこの人(井関さん)が言ってました」

 井関さん「正解!」

「写真、撮っておいた方がいい。重要」と井関さん
必殺アマニオイル、ハーブソルトほか
アマニオイルとハーブソルトをかけ、
タッパーを揺さぶって馴染ませてから、いただきます

4 ランチで「これだけは外せない」というものはありますか。

 井関さん「アマニオイルと、何でもいいけどタンパク質」

 金森さん「俺は味噌汁」

 井関さん「穣さんは味噌汁だよね。絶対に欠かせない。サラダなのに味噌汁」

 *ちなみに、味噌汁はコンビニで買うことも多いそうですが、この日はこれも前日の残りの豚汁。それを金森さんは美味しそうに頬張っていました。

左上が金森さんのお味噌汁
お弁当ふたつは「まったく同じもの」(井関さん)

5 サラダの内容は大体同じなのでしょうか。

 金森さん「ローテーションだね。今日はソーセージでしょ。卵が入っていたり、いなかったりとか、ベースがサラダなだけで色々変わるよ」

 井関さん「…チキンの日とか、ベーコンエッグみたいなのが載ってたりとか、上の具が変わりますね」

6 公演があるときのお昼は変わったりしますか。

 井関さん「公演があるときは、一週間前からサラダは止めようと。お腹が冷えるんで」

 金森さん「足りなくなる。劇場入りしたくらいからは炭水化物を摂るようにしてる」

「7 いつもどなたと一緒に食べていますか」は割愛しようとしたところ、

 井関さん「訊いてみてください」

 金森さん「ひとりです。『お互い、ひとりです』っていうのどう? ひとりとひとりが一緒に食べているだけで」(一同爆笑)

笑顔で応じてくれる金森さん、井関さん

8 主にどんなことを話していたりするんですか。

 金森さん・井関さん「何しゃべるんだろう? お昼、結構黙々と」

 *お昼休みに入る直前の話はしたりしますか。

 金森さん・井関さん「あんまりしたくない。スタジオじゃない仕事の話はするかもしれないけど、今さっきやってたことを引き摺ることはあんまりない。うん、大事」

『9 おかずの交換などしたりすることはありますか』は訊けないし」にウケる二人。

 金森さん「交換はしないけど、この人(井関さん)が俺の方に入れてくる。『これ、好きでしょ』とか。交換とは言わないよね、俺、あげないもん。いやいや、あげたくない訳じゃないんだけど、この人が放り込んでくる」

 井関さん「穣さん、野菜好きなんですよ」

「おかず交換」ならぬ人参の移動は
井関さん→金森さんの「一方通行」
丁寧にオーガニックの人参を
摘まんで見せてくれる金森さん

10 いつも美味しそうなお弁当を持ってくるのは誰ですか。

 井関さん「(山田)勇気(さん)のサンドイッチ。フォカッチャの。私たちはもう食べないんですけどね、パンは。でも美味しそうだねって」

 *ここからはランチ以外の質問です。

11 『春の祭典』のクリエイションはどのくらい進んでいますか

 金森さん「3割くらい。今、Noism2が(定期公演のクリエイションで)いないからね」

12 そのNoism2の方の進み具合はどうですか。

 金森さん「全然見てない。ギリギリまで見ないようにしてる。驚きがなくなるから」

13 『春の祭典』の音楽は誰の演奏を使う予定ですか。

 金森さん「色々あるからね。今、使っているのはアンドレア・バッティストーニ指揮の東京フィル」

 井関さん「若い指揮者ですね。穣さんが最初選んだやつ(ズービン・メータ)も良いんだけど。今、厄介なことやっていて、色んな音をとらなきゃいけないんですよ。今のところはこれ(バッティストーニ)が一番、各楽器が聴こえる」

 金森さん「各楽器が安定して聴こえるから、稽古はし易い。本番、どうするかわかんないけど。全部仕上ったところで、いろんなものをかけてみて選ぼうかと思っている。…指揮者が凄い個性を出すでしょ。それは今は要らないかなと。今はできるだけドライにいって欲しいんだよね」

 *気になるのは演奏の違いと踊りの関係なのですけれど、「楽譜と照らし合わせて作っているから、突拍子もないことは起きないんです」と井関さんが言えば、「なんだったら、『今、オケ、間違えたな』とかもわかる。このあいだ、言ってたじゃん。別のCD使っていたときに『おかしい、おかしい』って」と金森さん。音の入りがワンテンポ早くなっている箇所に気付いちゃったんだそうです。ちょっと凄いかも。新作「ハルサイ」では、メンバー毎に楽器が割り振られていて、井関さんが踊るのはファゴット。管楽器が鳴り出すと、音が全然消えちゃうから大変なんですって。お話を伺っているだけで、大いに興味を掻き立てられました。6月、楽しみです♪

今回の取材はここまでです。貴重なランチブレイクを20分も割いていただき、感謝しかありません。

お二人のやりとりが楽しくて、できるだけそのままの言葉のご紹介を心掛けました。お楽しみいただけたなら幸いです。

「意外と地味なお昼ごはんでしたね」とは井関さん。いえいえ、そんなことはありません。大切なお昼の時間にお邪魔させていただき、色々と有難うございました。

金森さん、井関さんのお弁当、ご馳走様でした。それでは今回はこのへんで。お相手は shin でした。(…って、記念すべき第1回、中井貴一を存分に意識しながら纏めてみました。そのあたり伝わりましたでしょうか。)次回もご期待ください。

(shin)