豊前に響いた「円環」の妙なる音(サポーター 公演感想)

12月22日(日)のJ:COM 北九州芸術劇場に於けるNoism「円環」公演の為、北九州市小倉北区へ足を運んだ。

先日10月20日に開催され、金森穣さん・井関佐和子さんにも観ていただいた「坂口安吾生誕祭118 玉川奈々福 新作浪曲『桜の森の満開の下』口演」でお世話になった玉川奈々福さんと曲師・広沢美舟さん出演の「小沢昭一十三回忌追善公演 日本の翻弄芸」が20日(金)に浅草・木馬亭であったこともあり、羽田空港から北九州空港迄往復する旅程を選んだ。

21日(土)夕刻、クリスマスイルミネーションイベントで凄まじく賑わう小倉の街を歩き、北九州芸術劇場を下見がてら訪問。屋外のデジタルサイネージや、商業施設と一体となった館内そこかしこに掲示された「円環」のディスプレイに、芸術劇場の皆様の気合が見て取れた。

22日(日)は門司港駅から関門トンネル人道を目指し、山口県下関市に立ち寄った後、小倉へ戻る。「北九州市立松本清張記念館」や小倉城の展示など、国内外から街に訪れる人を「楽しませよう」とする姿勢が徹底している印象。新潟市も見倣ってほしいなぁ。

Noismサポーターズ事務局・fullmoonさんや、Noism制作・上杉さん、深作さん、関東から来場されたサポーターズの方にご挨拶しつつ、最前列の客席で16時の開演を待った。

幕開けとなる金森穣さんとNoism1メンバーによる『過ぎゆく時の中で』から、北九州芸術劇場の音響の見事さに気付く。John Adams『The Chairman Dances』の音ひと粒ひと粒が輝いて聴こえるようで、時の流れを押し留めようとしつつ、やがて時間の不可逆性を豊かに肯定するかのような金森さんと、若きNoismメンバーの疾走する舞踊と音楽の一体感に、いつしか涙が溢れていた。客席全体も見巧者と思しき方が多く、ピシリとした静寂に充ちた場内の空気が徐々に熱を帯び、舞踊を観る歓喜に包まれてゆく様が、確かに感じられた(お隣の方の静かにノッていく様子が実に心地よかった)。

近藤良平演出振付によるNoism1『にんげんしかく』では、樋浦瞳さんについて「北九州公演」ならではの改変があり、客席にも温かな笑いが起こった。緻密に舞台を構成しつつ、ダンサーの情感が溢れだす金森穣作品と対称的な近藤作品。一見自由奔放に見えて、細部や感情まで構成が徹底していることに、改めて気付く。

そしてNoism0井関佐和子さん・山田勇気さん、久々にNoismに帰ってきてくれた宮河愛一郎さん・中川賢さんという円熟の舞踊家による傑作『Suspended Garden - 宙吊りの庭』は、その研ぎ澄まされた美を、更に深化させていた。既にして古典のようなトン・タッ・アンさんの楽曲も、北九州芸術劇場の音響で改めて聴くと、重低音と舞踊家の身体のシンクロなど新たな発見に充ちている(音源の発売を強く希望します)。舞台で展開される映像にも、金森さんによる微細な変更が加わり、「求めようとして得られなかったもの」を巡る主題が、より切実に観る者の心を震わせた。そしてまさしく舞台一回ごとが一期一会であることを叩きつけてくるような4人の舞踊家の素晴らしさたるや。裂帛の気合、お互いの身体と反応し合うような動作の美しさ。ため息さえ憚られる舞台に、誇張無く「いのちがけ」で観客も向き合える至福を、しみじみと再確認し、カーテンコールでは「中川! 宮河! 山田! 井関!」とまたも大向うを掛けてしまった。客席には井関佐和子さんのご両親もおられ、金森さんにもご挨拶した後、会場を後にした。

翌23日(月)、小倉の街を軽く散歩した後、北九州空港行きのリムジンバスに乗っていたところ、途中のバス停から金森さん・井関さん・中川さんが乗り込んで来られたので、吃驚仰天(サンクトペテルブルク公演の帰りも同じ飛行機だったなぁ)。このブログ用に記念写真をお願いした(「おっかけですねぇ」と中川さん。飛行機では座席も前後だった)。羽田経由の旅程を組んだ故の偶然含め、また忘れられない旅となった北九州公演。ぜひまたNoismを招いていただきたいと、切に願う。

左から井関さん、中川さん、金森さん


久志田 渉(新潟・市民映画館鑑賞会副会長、安吾の会事務局長、舞踊家・井関佐和子を応援する会役員)

心が震え、涙も…「円環」新潟公演楽日の幕おりる

2024年12月15日(日)、天気予報では早くから強い冬型で降雪予想の一日とされていたこの日でしたが、私たちにとっては、それ以上にNoism0 / Noism1「円環」トリプルビルの新潟公演楽日であり、そもそも落ち着きをもって迎えるのが困難な日だった訳です。

始まれば、終わるのが舞台の常であるために、新潟公演初日の金曜日にりゅーとぴあに足を踏み入れた際に、まだ何も観ていないというのに、「もう足のつま先から、手の指先からじわじわ『Noismロス』が体をのぼってきている感じがする」などと言っては、「気が早い」と笑われていたのでしたが、それほど3日間というのは短いものだと、この日に至っては完膚なきまでに思い知らされるほかなかった訳です。相応の覚悟が必要でした。

この日、その相応の覚悟を必要としたのは、今回の三つの演目がどれも素晴らしかったからという謂わば「通常の理由」に加えて、ずっとサポーターとしての念願だった「Reunion(再会)」を果たして踊ってくれたゲスト舞踊家の宮河愛一郎さんと中川賢さんが、そして、彼らが舞った記念碑的な傑作を生み出す最大の要素と言ってよい、あの美し過ぎる音楽を書いてくれたトン・タッ・アンさんも、月曜日にはみんな新潟を離れていってしまうからなのでした…。

井関さんが現実のものとしてくれた今回の奇跡のような公演、そこに冠されたタイトルが「円環」であるのなら、またその時が巡り来るのを今から信じて待つ以外ないのです。今日が一旦とはいえ、別れの日であるならば…。でも辛い…。

全身を目にして、見逃すことなく、全身を耳にして、聞き漏らすことなく、すべてを玩味せんと臨むことを要する舞台、その裏にあったもの、やはりそれは人と人との繋がり以外の何物でもある筈がないのです。

14時30分の開場の以前には、予報に反して、空から落ちてくるものはそぼ降る雨でしかなかったり、陽が差す時間さえあったりしましたが、ホワイエに入って暫くすると、窓外を横殴りの突風が雨とも雪ともつかないものを物凄い勢いで運んだりもするようになりました。リアルに「遣らずの雨」、そういうことだなと納得したものです。

そして迎えた開演時間、15時。先ずは金森さん+Noism1『過ぎゆく時の中で』。走る金森さんを含めて、舞台上の全員の動きがもうキレッキレで、その半端ない疾走感は私たちをも巻き込み、内心の寂寥気分は目と耳とから入ってきたワクワクによって上書きされていきました。

一度目の休憩ののち、近藤良平さん演出振付のNoism1『にんげんしかく』です。いつ見ても楽しい作品。「奔放に見えて、ストイック」、そう近藤さんを捉えたNoism1メンバー。笑いを自らの「演出の癖」と捉える近藤さん。段ボールとも格闘しながら、振付家が目指すものを身体と段ボールとで追い求めようと躍動する様に惹き付けられました。

二度目の休憩後は、Noism0の『Suspended Garden - 宙吊りの庭』です。井関さん、山田さん、宮河さんと中川さん、そしてトルソー。そこに映像が加わり、アンさんの音楽が流れることで織り成されるのは、怖いほどの美の世界。これに比肩するものなど容易には名をあげるべくもないほどの35分間の悦楽。みんなの人生が交わったここ、新潟の地で。
見逃さず、聞き漏らさず、そう言いながらも、否応なしに『夏の名残のバラ』、『カルメン』などを幻視し、『NINA』、『PLAY2PLAY』の楽音などを思い浮かべつつ。心が震え、涙も…。

どの演目のあとにも、大きな拍手と掛け声が飛び交いましたが、やはり、『Suspended Garden』は別格でした。鳴りやまない拍手と飛び交う「ブラボー!」「アイチ!」そして「さとし!」。カーテンコールの度にスタンディングオベーションは広がっていきました。果たされた「再会」の果ての散会、それを惜しむ人がどれほど多かったかが分かろうというものです。

客電が点き、もう緞帳があがることがなくなってからも、いつまでも拍手をしていたかったのですが…。
そんな気分を抱えたまま、ホワイエに出て、同様な思いの友人たちと言葉を交わしつつ、立ち去り難くいたそのとき、背後から大きな音が聞こえてきます。「拍手みたい」そんな声があちこちから上がりました。私もそう思いました。その音、りゅーとぴあの建物に叩きつける大粒の霰(あられ)がもたらすものでした。でも、実際、「拍手みたい」だったのです。(以前にも一度、そんなことがあったのも思い出しました。)先程の「遣らずの雨」転じて、天からの大きな拍手。そう思えただけで、慰めになりました。
その後、アンさんと、次いで宮河さんとそれぞれ会う場面に恵まれましたが、その際も涙なしの笑顔で話すことが出来ましたから。
また、色々な条件が揃っての「再会」があって欲しい、今は再びの念願モードにいます。通常の「Noismロス」も当たり前に抱えながら。

新潟公演の幕はおりましたが、このあと、福岡へ、年明け2月には滋賀、そして近藤さんのホーム埼玉へと巡演する「円環」。それぞれの地で鑑賞予定の方々、期待をぱんぱんに膨らませて、今暫くお待ちください。その期待、決して裏切られることはありませんから。

(shin)

「円環」トリプルビル、新潟公演中日も客席を魅了♪

12月14日(土)、新潟市界隈は冬っぽくはあっても、「円環」公演の時間帯には雪はおろか、雨も落ちてきてはいずに、その意味では大助かりだった訳ですが、「大動脈」新新バイパス上で2件の事故があったお陰で、開演時間(17時)までにりゅーとぴあに辿り着くことが出来るか、ホント冷や汗ものの移動となったのは私だけではなかったのではないでしょうか。何とか滑り込みセーフで事なきを得ましたけれど、もう気が気ではありませんでした。

ホワイエでは、前日撮影しないでしまった「物販」コーナーの写真を撮らせていただきたいと思っていましたから、まずはそこを押さえることが出来て、自分に課したミッションクリア、でめでたし、めでたしでした。(休憩時間には、本日お越しになられていた花角知事が20周年記念冊子をお買い求めになる場面に遭遇しました。やっぱり、アレいいですよ、お洒落そのもので。2,000円はマストバイのアイテムかと。)

入場時に手渡される公演パンフレットと各種チラシの束のなかには、私たち NoismサポーターズUnofficial 製作の「サポーターズ・インフォメーション」の第11号も含まれております。力を込めてつくっておりますので、是非ご覧いただき、仲間に加わっていただけたなら嬉しく思います。

移動のドキドキから解放され、落ち着きを取り戻して客席から見詰めた「円環」トリプルビルの新潟公演中日の舞台は、この日もまさに会心の出来栄え。すっかり心を鷲掴みにされてしまうことになります。

まだまだ先の長い公演日程に鑑み、3つの演目について詳述することは致しませんが、最初の演目、金森さん演出振付で、金森さん+Noism1の『過ぎゆく時の中で』と二つ目の近藤良平さん演出振付のNoism1『にんげんしかく』が肌合いを異にするように感じられるのは、ある意味、容易に頷けるにしても、最後の『Suspended Garden - 宙吊りの庭』がまた同じ金森作品でも、『過ぎゆく…』とは別種の風情を湛えた作品であることも一見して明らかでしょう。
そして、それと同時に、昨日も今日も見終えたときに感じたのは、そうした相異なる3作品が、不思議に繋がり合っているようだということでした。それこそ、まさに「円環」。舞踊の多様性と奥深さに同時に触れ得た気がした次第です。そのあたりのこと、皆さんはどうお感じになられたでしょうか。コメント欄に書き込みいただけたりしたら嬉しいです。

ここからはこの日の終演後に行われたアウタートークについて、かいつまんでご紹介していこうと思います。この日の登壇者は、三つ目の演目を踊られた井関佐和子さん、山田勇気さん、宮河愛一郎さんと中川賢さんでした。
踊り終えたばかりの4人が着替えてクールダウンするまでの間の「場つなぎ」として金森さんが登場して、そのまま進行を務めたのですが、今公演は、井関さんが方向性を定め、構成を決めるプロデューサー兼出演者であったことを再度、念押しされたことも併せて記しておきます。

Q:(井関さんに)今回、近藤良平さんを招聘した理由について
 -A(井関さん):「Noism1メンバーのことを常々考えている。何が足りていないか。彼らの現在の問題も良さも個性も、どの振付家が来ても出てしまうし、自分が見る限り、新しい発見はない。近藤さんをお呼びしたことで自ら気付いて貰う機会にして、成長して欲しいという思いがある」

Q:(宮河さん・中川さんに)久し振りにNoismの舞台に出て感じたこと
 -A(宮河さん):「リハーサルに時間をかけられる環境。とことん深めていく作業、久し振り」
 -A(中川さん):「流れていたところに、また違う流れという感じ」

Q:新潟での12月の公演は厳しい。11月にならないか?
 -A(井関さん):「確かに12月は自分たちも寒くて厳しい(笑)。今回もクリエイションが始まった頃は晴れた秋空だったのが曇り空になり、段々、『新潟』の空になってきた。検討してみます」

Q:新潟で美味しいと思う食べ物は?
 -A(山田さん):「刺身。自分は北海道生まれなのだが、新潟が一番美味しいと思う」
 -A(中川さん):「タレカツ」
 -A(宮河さん):「居酒屋しののめさんのとりカツ」
 -A(井関さん):「お米」

Q:ダンスを始めたきっかけは?
 -A(山田さん):「大学に入ってから。ダンス甲子園とか深夜番組でヒップホップが流行っていて、ストリートダンスをやっていたが、大学のダンス部では違うモダンダンスをやっていた」
 -A(中川さん):「姉が現代舞踊(モダンダンス)をやっていたことから」
 -A(宮河さん):「応援団に入っていたり、バレエやジャズダンスなどから。マイケル・ジャクソンとかダンス甲子園とかの頃」
 -A(井関さん)「3歳で踊り始めたので、記憶がない」

Q:舞台芸術を裏で支える人になりたい。求めていることは?
 -A(井関さん):「是非、ウチに。状況であったり、何が求められているかであったりを把握できること。機転が利いて、その瞬間を生きること」

Q:どうやって動きを合わせていたのか。呼吸?カウント?
 -A(宮河さん):「場所によって違う。カウントのところもあれば、デュエットは呼吸」
 -A(井関さん):「結構、カウントは決まっていたが、重要なところはカウントではなくなってきた。アン(=トン・タッ・アンさん)の音楽に呼吸を感じる」

Q:リノリウムに画像が映されるのは踊り難かったりしないか?
 -A(宮河さん):「テンションがあがるが、画像が動くと目印が動いて惑わされることも」
 -A(中川さん):「自分は踊り難くはない。テンションあがる」
 -A(山田さん):「デジタルの画像なので、細かいグリッドが見える。客席からは綺麗に見えるようになっている」
 -進行役・金森さん「そうなんだよね。客席からの見え方で作っている」

Q:海外公演、どの国で行いたいか?
 -A(井関さん):「スイス。自分がいたところであり、欧州でも違う国なので。そしてフランス。舞踊に厳しい国で、今、金森作品を持っていったら、どう感じて貰えるか興味がある。是非、連れて行ってください」

Q:お気に入りのポーズは?
 -A(山田さん):「手を繋いで斜め一列になるところ。深いプリエをする。頑張っているなぁと思って好き」
 -A(宮河さん):「佐和子(=井関さん)をリフトして止まるところ。うまく入ると気持ちいい。やってやるぞと」
 -A(中川さん):「ポーズではないが、4人が揃っているとき」
 -A(井関さん):「奥で全員集まって、顔を見るところが好きな瞬間。いい瞬間だなと」

Q:これまでの衣裳で、一番の好みは?
 -A(中川さん)「ISSEY MIYAKEとか白の全身タイツとか印象に残っている」
 -A(宮河さん)「『中国の不思議な役人』の布団。布団風ではなくて、めちゃめちゃ重かった」
 -A(山田さん):「今回のは凄く好き。違和感がない」
 -A(井関さん):「『夏の名残のバラ』の堂本教子さんによる赤いドレス」

Q:(宮河さん・中川さんに):久し振りに金森作品を踊っての感想
 -A(宮河さん):「今でもまだ信じられない。戻ってくることがあるとは思っていなかった。クリエイションが始まったときから笑いがとまらない。今でも本当なのか疑っているほど信じられない経験。心が追い付かないくらい嬉しい」
 -A(中川さん):「昔、自分は穣さんの作品に出たくてNoismに来た。その頃、メンバーにならなければ穣さんの作品は踊れなかったから。今、ひとりの中川賢として踊っている。メンバーだった自分がいてよかった」

Q:アンさんの素晴らしい音楽を踊っての感想
 -A(井関さん):「アンの音楽は導いてくれる。幾つものレイヤーがあって、その都度、耳に入ってくる音が違う。日本(新潟)に来てくれて、調整してくれた音はまた全く違って聞こえてきた」
 -A(宮河さん):「母の作るシチューが安心感あるのに似ている」
 -A(中川さん):「純粋にいい音楽だなと。最初のピアノの4つの音、もはや聴きたくなっちゃっている」
 -A(山田さん):「アンの音楽は変わっていない。聴いた瞬間、『ああ、アンだな』と思った」

Q:年齢による踊りの変化、どう感じているか?
 -A(山田さん):「色々経験を重ねて、見える部分増えたが、今回、同じ釜の飯を食ってきたこのメンバーで踊って、話さなくても、身体的にわかる。このメンバーでやることに安心感があり、広い心で舞台に立つことが出来た」
 -A(中川さん):「環境によって、果たすべき役割は違う。一緒に長くやってきたことは貴重」
 -A(宮河さん):「年をとることは嫌なことだと思ってきたが、ここ1、2年は違う。父が亡くなったり、怪我をしたりしたことがダブって見えてきた。経験を重ねることで見えるものも増えていて、年をとるのも悪いことではないなと」
 -A(井関さん):「(金森さんも含めて)5人の年齢を合わせると200歳を超える(笑)。舞台に立つ心持ちが変化した。ただ単純に『自分を見て欲しい』ではなくて、どう人と繋がっていくか。これから年をとっていくことが楽しみ。このふたり(宮河さんと中川さん)はずっと身体と向き合っているから呼んで欲しいと思った。年齢を重ねても進化出来る。自分自身に期待している」

最後に、金森さんから、新潟楽日は当日券の余裕もあり、もう一度観たいという方は是非に、とのお誘いなどがなされ、大きな拍手のなか、この日のアフタートークが締め括られました。

…大体、そんな感じでしたかね。以上、報告とさせて頂きます。

そしてこれを書いているのは、その新潟楽日の未明。半日後にはその舞台もほぼ最終盤に差し掛かっている筈、というそんな時間。本日が新潟で今公演を観る最後の機会。
皆さんも「円環」よろしく、素晴らし過ぎる「非日常」が待つりゅーとぴあ〈劇場〉への「円環」を企ててみませんか。Noismロスになる前にもう一度。
私?もちのろんです♪って、年を重ねた観客がここにもひとり。皆さんも是非♪

(shin)

なんという豊かさ!なんて素敵な宵!Noism0 / Noism1「円環」新潟公演初日♪

奇しくも、一般的には不吉とされる日にちと曜日の組み合わせであった12月13日(金)、新潟市のりゅーとぴあ〈劇場〉には、逆にこの日を待ちに待った者たちが18時をまわった頃から冷たい雨すら厭うことなく、続々集まってきました。

Noism0 / Noism1「円環」新潟公演初日、近藤良平さんを招聘してのこのトリプルビルは、国際活動部門芸術監督の井関さんが「自信をもってお届けする」と語ってきた豊かさで早くから評判を呼んでいましたが、なるほど、舞踊の多様性や奥深さを示す、まさに「目にご馳走」のラインナップと言えるものでした。

開演時間の19時を迎えます。まずはNosim0+Noism1『過ぎゆく時の中で』(約15分)。こちらは2021年のサラダ音楽祭で初演された作品の劇場版であり、新潟市初登場となる演目です。疾駆するかのようなジョン・アダムズの音楽(『The Chairman Dances』)に乗って、駆け足で、或いは、ゆっくりスローモーションのように、舞台を下手(しもて)から上手(かみて)へ、或いは、その逆に動いていく身体たちが未来への思いや、過去への追想を描き出し、「時」の流れが可視化されていきます。永遠の相のもとに…。
この作品でNoism1のメンバーと一緒に踊る金森さんの姿はこれまでに目にしてきたどの金森さんとも違う空気感を出していて、そこも見どころと言えるかと思います。

一回目の休憩は10分。それを挟んで、二つ目の演目は、かつての『箱入り娘』(2015)のメインビジュアルと相通じる感もある、近藤良平さん演出振付のNoism1『にんげんしかく』(約35分)です。さすがは近藤さん、奇抜!まさにその一語なのですが、そこは磨かれた身体性のNoism1メンバーたちのことですから、「ちょっと苦労させてみたかった」思いの近藤さんを相手に、「段ボールとの格闘日記」の末、もう充分「段ボール専門家(!)」といった風情を漲らせて舞台狭しと踊ります。ですから、無地の矩形で代替可能でしかない段ボールの一つひとつが、中や脇で踊る各メンバーの個性を帯びて見えてくる不思議な感覚にも出会いました。
観る者を武装解除させずにはいない内橋和久さんによるダクソフォンの音楽も相俟り、10人のそのとても楽しそうな様子が客席にも伝播していく、笑いに満ちた「生命賛歌」と言ってよい会心作です。

20分間の二回目の休憩ののち、三つ目の演目がNoism0『Suspended Garden - 宙吊りの庭』(約35分)、金森さん演出の新作で、元Noismの宮河愛一郎さんと中川賢さんが、井関さんと山田さんと一緒にトン・タッ・アンさんによるこの上なく繊細な響きの音楽を踊る、これもまた注目作品です。こちら、同じ金森作品でも、最初の『過ぎゆく時の中で』とは全く趣を異にし、息を呑むほど美しい作品で、その点では、『夏の名残のバラ』(2019)を彷彿とさせるものがありますし、登場するトルソーも、同『夏の名残のバラ』のカメラコード、『Near Far Here』(2021)のアクリル板がそうであったように、舞踊家と一緒に踊っているのを見ることになるでしょう。更に、そのトルソーと人形振りという点からも多くの過去作と呼び交わすものがあることは言うまでもありません。
そこに黒い衣裳の宮河さんには『ZAZA』(2013)の、中川さんの背中には『ラ・バヤデール - 幻の国』(2016)のそれぞれ記憶が回帰しました。(個人的な印象ですが。)瞬きするのさえ惜しいほど、それだけで「尊い」のですが、初めてふたりを観る方も心配ご無用、熟練の舞踊家が醸し出す色気は誰の目にも明らかでしょうから。

このトリプルビル、なんという豊かさであることでしょうか!3作品、それぞれ持ち味を異にするラインナップで、どの演目にも大きな拍手と「ブラボー!」の声が送られたことは言うまでもありません。

終演後、金森さんと近藤さんが登壇して、Noismスタッフ・上杉晴香さんによる手際のよい進行のもと、アフタートークが行われました。で、冒頭、その上杉さんから、動画ではなく、写真であるならば撮影して構わないと告げられたことも嬉しい事柄でした。
以下にこの日のやりとりから、おふたりの回答中心にまとめて少しご紹介します。

Q:『にんげんしかく』の段ボールについて
 -A(近藤さん):「燕三条で買ったもの。『何でこんなに買うんですか?』と訊かれたが、細かいサイズ指定をして買った」「自分の目の高さちょうどのところに小さな穴がふたつ開けてあって、そこから見ている」「箱の中に持ち手などはない。付けるのは邪道」「横に倒れるのは怖い。訓練が必要」「勿論、自分も入ってみた」
 -金森さん:「俺は(入ったことは)ないよ」
 -近藤さん:「でも、誰もいないところで、こっそり入ってたりして(笑)」「みなさんもMy段ボール用意して入ってみてください。いいですよ(笑)」

Q:コンドルズに振り付けるときとの違いは?
 -A(近藤さん):「基本的にはない。生き生きするその人なりの方法を探すのは同じ。調子に乗ってくるとダメだし、あんまり上手くなられるのも困る」

Q:コンドルズの次の新潟公演の予定は?
 -A(近藤さん):「コンドルズは今、28周年。来年が29周年。で、30年、やっぱりめでたいじゃないですか。そのときが一番かなあ」

Q:『にんげんしかく』のお題にある「88%星」にはどこかの国のイメージあるのか?
 -A(近藤さん):「架空の星。星新一に出てくるような。衣裳は、お題にある『一張羅』という投げ掛けにより、段ボールを被ることもまだ知らされていなかった頃、まさか舞台で着ることになるとは思わずにメンバーが描いたデザイン画によるもの。絵はあまり上手くなかったものの、それが結構な精度で出来上がってきた」
*このあたりを巡っては、公演プログラムにこの度のプロダクションについての情報も沢山掲載されていますので、鑑賞前に目を通されておくのもいいですね。(私はしませんでしたけれど…(汗)

Q:『にんげんしかく』にはNoism旗揚げ時の『SHIKAKU』への意識あったか?
 -A(近藤さん):「自分のなかで途中で浮かんできてびっくりした。同じようなこと考えてるんだなと」

Q:(近藤さんに)Noismを振り付けたことについて
 -A(近藤さん):「金森さんのしっかり線を引く作り方、ちょっとだけ憧れる。イメージはあるが、そんなふうに作れない。でも、似ている部分はある。男の子だし(笑)」
 -金森さん:「えっ、そこ?」
 -進行・上杉さん:「聞こえてきたメンバーの話として、近藤さんは奔放なようでいて、凄くストイック。自由が如何に難しいか感じたと」

Q:舞踊家を目指す者として、若いうちに経験すべきことは?
 -A(近藤さん):「無謀なこと。む・ぼ・う」
 -A(金森さん):「出来るだけ色々なことを自分の肌で体験すること」

Q:一緒に創作をしたい団体あるか?
 -A(近藤さん):「団体ではなくて、動物に振り付けたい。概念変えなきゃいけないけど」
 -A(金森さん):「特に団体はない。Noismがもっと豊かになって、色々なことが出来るようになればということしか考えていない」

Q:『Suspended Garden - 宙吊りの庭』の振り付けについて
 -A(金森さん):「(『NINA』は振付が先行だったが、)今回は曲が先行。アンさんは4人のことをよく知っているから、聴きながらインスピレーションを得て、振り付けた。観念の他者がいることで、あり得たかもしれない未来やあり得たかもしれない過去を生きるものに」

Q:金森さんが取材協力した恩田陸さんの小説『spring(スプリング)』と創作について
 -A(金森さん):「難しい質問。でも、恩田さんのフィクションだから、『ああ、そうそう』ってところもあるし、『率直に言うと、そうじゃないんだけど』ってところもある。舞台芸術には、舞踊の当事者だからこそ不思議だなという感覚がある。また、本を読んでいろんなイメージをしながら観ていることについても、舞台芸術って良いものだなと思う」
 -進行・上杉さん:「恩田さんは今日は来られていないが、よく観に来てくれては、新潟に泊まってお酒や美味しいものを楽しんでいかれる」
 -金森さん:「チョコを差し入れしてくれる」


…と、そんな感じでしたでしょうか。

で、ここで、個人的な内容で恐縮なのですが、ちょっとだけ書かせて貰いたいことがありまして。それは、今回の「円環」トリプルビル中、金森さんの新作『Suspended Garden - 宙吊りの庭』の音楽を担当されたトン・タッ・アンさんについてです。
ワタクシ、随分前にアンさんとは、(台湾在住ということで、直接お会いしたことも、お話ししたこともないのですが、)某SNSで「友だち」になり、時折、コメントをやりとりさせて頂いておりました。
で、今回のプロダクションに関して、アンさんが、Noismの20周年記念冊子に関するポストをされた際に、恐れ多くも、コメント欄に「できればサインを頂きたい」旨の気持ちを綴ったところ、「喜んで!」と返信があり、ワクワクが倍増どころではないことになってしまい、この日を迎えていたのでした。
開演前のホワイエに姿を現したアンさんに初めてお会いして、「二回目の休憩の際に」ということになり、(初めて)お話しも出来て、勿論、サインもいただき、一緒に写真を撮っていただいたうえ、更には「終わったら飲んだりしながら話そう」まで言っていただき、(そこに関しましては、あまりにも身に余るお誘いであり、丁重にご辞退申し上げましたが、)もう気さくで腰が低く、魅力的なお人柄にすっかりノックアウトされてしまったような次第でした。リアル「天使」じゃないですか、こんなのって。そんな具合です。


長くなってましたね、すみません。いい加減、少し「公」の方向に戻します。
で、話をするなか、休憩後の演目での自作曲について、「You can swim in the music.(音楽を聴きながら泳げるよ)」との言葉。泳ぎました、泳ぎましたとも、はい。実に気持ちよく。
終演後に、その旨も伝えつつ、「まだ夢見心地だ」など、また少しやりとりするなかで、「think I will need some time to come down again.(落ち着くには少し時間が必要だね)」、そして更に「and I was so overwhelmed by people’s reaction. It was wonderful!(私は観客のリアクションに圧倒された。素晴らしかった)」の言葉が届くに至り、その「観客」のひとりとしてとても嬉しい気持ちになりました。なんて素敵な宵だったことでしょうか!

アンさんしかり、近藤さんしかり、勿論、金森さんと井関さんも、そして宮河さん、中川さんに山田さん、更にNoismメンバーみんなが、舞台芸術のために、この新潟の地に降臨した「天使」、そんなふうに映った魅惑的過ぎる新潟公演初日でした。

新潟ではそんな「天使」たちを目撃する機会はもう2公演。その境地、是非ともご体感ください。

(shin)



Noism0 / Noism1「円環」活動支援会員 / 視覚・聴覚障がい者 / メディア向け公開リハーサル(+囲み取材)に参加してきました♪

2024年12月5日(木)。週末には本格的な雪になるだろうことなども取り沙汰されるこの頃ですが、この日の新潟市は明らかに冬っぽい雰囲気が強くなってはいても、まだその白いものの心配までは要らない、そんな一日でした。

そのお昼の時間帯、12:30~13:30にNoism0 / Noism1「円環」活動支援会員 / 視覚・聴覚障がい者 / メディア向け公開リハーサルとそれに続く、囲み取材が開催され、そこに参加してきました。会場はりゅーとぴあ〈劇場〉です。

スタッフから入場が許されて、会場内に入ると、舞台上に、まず3人の姿を認めました。中央奥には帽子を被った黒ずくめの金森さん、その手前に庄島さくらさんと坪田さん。Noismレパートリー『過ぎゆく時の中で』のようです。

井関さんが客席の方に向き直り、「今日は45分で短いんですけど、3つの作品のところどころを、本当、短いんですけど、ご覧いただきます」と告げて、公開リハーサルは始まりました。

『過ぎゆく時の中で』、2021年8月のサラダ音楽祭で上演された演目ですが、新潟の舞台には初登場となりますから、待ちわびた感も大きな作品なうえ、今回の公演では金森さんがNoism1の10人と一緒に踊るという点でも興味を搔き立てられずにはいられません。
ジョン・アダムズによる、疾駆する機関車などを思わせる軽快な音楽『The Chairman Dances』に乗って、淀みない動きを見せるNoism1メンバーは、ほかに、三好さんと糸川さん、中尾さんと庄島すみれさん、樋浦さんと兼述さん、太田さんと松永さん(準メンバー)が、ペアでの踊り、リフト、全員での群舞などを見せてくれました。
駆け足で舞台袖へとはけて行くと、「ハイ、OKです。みんな、最後、遅くなってるよ」井関さんから動きのチェックが入りました。

続いては『Suspended Garden - 宙吊りの庭』です。舞台に「マネキン」(黄?黄土色?)が置かれると、金森さんの言葉「ちょっと袖幕とばしてくれる?あっ、時間がかかるか。じゃ、いいや。このままで」、そんなふうに始まったふたつ目の演目は、一気に別の時空に連れ去られたかのような重厚な雰囲気の作品です。
中川賢さん(白)、山田さん(茶)、宮河愛一郎さん(黒)、井関さん(赤)の順に早足で舞台上に現れてから繰り広げられる、「マネキン」を含めた「5人」でのダンスは恐ろしいまでに息もピッタリ合っていて、目を疑うほどです。宮河さんと中川さんの身体、動き、醸し出される空気感。おかえりなさい。待ちわびていました。
そして美しい照明と息を吞む映像、そこにトン・タッ・アンさんによる情感豊かな響きの音楽が重なるのですから、冬枯れの新潟市にいた筈が…!!至福の体験が約束されていると言い切りましょう。

ここまでで時刻は12:55。「みんなどうぞ。次のかた」、井関さんから声がかかると、大小多くの段ボール箱が登場してきて、近藤良平さん演出振付のNoism1新作『にんげんしかく』に移っていきました。段ボール箱たちだけでも不思議な光景でしたが、Noism1メンバーが着る衣裳も風変わりと言えば、風変わりで、さすがはコンドルズの近藤さん。そう頷かざるを得ないものがあります。
「足が出てて、みんなが綾音(=三好さん)に出会うところからやりましょうか」???
「一回被ってごらん。『無人感』出(で)そう」????
「一回倒れてみて、そこからスタートしよう。倒れてみて。どうぞ」?????
「ついでに太鼓やって」??????
…そんな指示のもと、段ボール箱という大きな制約こそあるものの、作品としては制約を次々無化していかんとするかのような意志に溢れ、まるでおもちゃ箱をひっくり返しでもしたかのように、縦横無尽、かつ賑やかな近藤ワールドが立ち現れていきました。

3作品とも、ほんの部分部分を見せて貰っただけですから、大したご紹介も出来ませんでしたが、(否、たとえ出来たとしても、今はするべきではありませんが、)テイストを全く異にする3作品であることは確かです。本当に贅沢なトリプルビル公演になることだけは間違いありません。そこはしっかり書き留めておきたいと思います。

13:15、ホワイエにて、近藤良平さん、金森さん、井関さんへの囲み取材が始まりました。やりとりをかいつまんでご紹介いたします。

Q1:「公演時の三作品の並び順は?」
 -A:「最初に『過ぎゆく時の中で』、休憩を挟んで、『にんげんしかく』、『Suspended Garden』となります」(井関さん)

Q2:(近藤さんに)「『にんげんしかく』のクリエイションを通して、改めて作品について教えてください」
 -A:「今回は段ボールを使うのが分かり易いポイント。目新しい不自由さ。このNoismのメンバーでなければ出来上がらない方法が生まれた。段ボールとの格闘日記。劇場も、我々の生活のカレンダー的なものも箱。人生のなかのフレームなども箱。日常とちょっと違う、特別な枠組み。(笑いが起きるのは)僕の演出の癖。笑ってはいけないとはどこにも書いていないし」(近藤さん)

Q3:(金森さんに)「今回のふたつの作品(『過ぎゆく時の中で』『Suspended Garden』)にはそれぞれ関係するようなところもありそうに思うが、そのあたりは?」
 -A:「時の流れにどう向き合うかが、結果として共通してきたが、結果論であり、全然考えていなかった。親和性・共通性が生まれた。そして四角く区切った空間の使い方では『にんげんしかく』と図らずもリンクした」(金森さん)

Q4:(金森さんに)「『Suspended Garden』のイメージについて」
 -A:「常に私自身の作品の作り方なのだが、目の前にある素材、目の前にいる他者だけで完結するものを発想できない。それだと自己完結してしまう。もう一個飛躍的な側面・視座が欲しいというのは常に意識すること。今回は『観念の他者』として『マネキン』を出し、架空の女性がいて、4人にとってそれぞれの『観念』があることから、『5人』で織りなされるひとつの小さな物語」(金森さん)

Q5:(井関さんに)「『円環』という公演にあたり、三作品の必然性など感じることは?」
 -A:「『円環』というタイトルがここまで崇高なものになり得るとは思っていなかった。『作りたいものを作ってください』ということだったが、『円環』というタイトルがピッタリなものとなった。Noismがここで20年やってきて、『人がめぐる』というのは本質的なこと。三作品それぞれに見応えがあって、それぞれが語っていくのだが、最終的には『円環』という言葉に戻っていく感じ」(井関さん)

Q6:(近藤さんに)「『円環』という公演タイトルに対して、『にんげんしかく』という作品を構想した意図は?Noism最初期の『SHIKAKU』へのオマージュなども込められていたりするのか?また、『犬的人生』に通じる部分も感じられたが、そのあたりについて」
 -A:「面白い。それ(そういう指摘)は嬉しいですね。ちょっとだけオマージュを入れたいところも、ちっちゃいことでも。今回、作るにあたって、前の(『犬的人生』)を見ちゃうと引き摺られちゃうから見なかったのだが、最近、見直したら重なる部分があった。犬はそこまで好きなんだなと、自分の中でずっと続いていたなと。段ボールは皆にちょっと苦労させたいなと。あと、(段ボールを)実際に見ると、シンプルに『揺りかごから墓場まで』みたいな発想(墓場もひとつの箱)が浮かんだ。そういうところに『円環』との一致感もあって、こういう作品にした気がする」(近藤さん)

Q7:(金森さんに)「トン・タッ・アンさんへの『Suspended Garden』の音楽依頼はどういう依頼だったのか?」
 -A:「曲数を5曲くらいという数はお願いした。『観念の他者』としての『マネキン』を含めて、5人の登場人物がいるので。アンは彼らをよく知っているので、彼らを思って作曲して欲しいと。それ以外は言わなかった。で、書き上げてきた曲は、凄くアンだし、凄く彼らだし、素晴らしい曲が仕上がっている」(金森さん)

Q8:「Noism1の若い舞踊家が趣を異にするふたつの作品を踊ることについて」
 -A:「10分や15分の休憩で切り替えるのは誰でも大変。順番に気を遣うのもわかるが、そこはプロフェッショナルなので違うものを見せる。Noismには力量がある。そういったことも楽しみという言えば、楽しみ」(近藤さん)
 -A:「ある意味、作家が違って、要求されることも違うと切り替えはし易い。逆に言うと、ひとつの作品の中でも、関わる人・状況・音楽によって切り替えなければならない。そのためにも、感性の引き出しを沢山持っていることが必要。異なる作家の作品を踊ることで感性が磨かれ、引き出しが増えるのは良いこと」(金森さん)
 -A:「どの作品をやっても、彼らが今問題としている壁は同じ。本質は変わらない。ふたつ異なる作品だからこそ、その壁を突き抜けられる方法がたくさんある。普段なかなか出せなかったものが、良平さんの作品でふわっと浮き出てきたときに、自分のものとして掴めて、またNoism作品でもそれを失わずにやって欲しいという思いがある。それが良平さんをお呼びした一番の理由。全然違う彼らを届けたい」(井関さん)

囲み取材の最後に、井関さんから、「3つの作品が全然違う、唯一無二のプログラムになっています」との言葉があり、この日、断片を見ただけでもそれは実感できました。物凄く色々な楽しみ方ができることは確かです。これ見逃せませんよ。いよいよ、来週の金曜日(12/13)に新潟から始まる「円環」ツアー、各地のチケットは絶賛発売中です。良い席はお早めにお求めください。くれぐれも必見ですからね♪

(shin)

(photos by aqua & shin)

*以下に、Noism Officialから提供を受けた画像を掲載しますので、ご覧ください。

◇Noismレパートリー『過ぎゆく時の中で』

◇Noism0新作『Suspended Garden - 宙吊りの庭』


◇Noism1新作『にんげんしかく』


◇囲み取材(近藤良平さん・金森さん・井関さん)

*末筆にはなりましたが、ここにNosimスタッフの方々へのお礼を記させていただきます。どうも有難うございました。