2017年2月26日(日)の朝は晴天、青空が広がった新潟。
Noism1『マッチ売りの話』+『passacaglia』新潟凱旋公演の千秋楽の日。
ここまで高い確率で雪に見舞われてきた今回の長丁場の公演も、
最終日を迎え、よもや雪など想像できないほどに
ポカポカの午前中でした。
がしかし、公演時間の一時間半前の13:30、
一天にわかに掻き曇り、
途端に、大粒の霰(あられ)が垂直に落下をはじめ、
音を立てて、屋根を、地面を叩き付けることになろうとは誰が予想できたでしょうか。
それも色こそ違え、ミモザの黄色を降らせた劇的舞踊『カルメン』を彷彿とさせる勢いで。
最後の最後まで、天候を味方に付けるとは、
やはり名作のなせる業に違いありません。
そんな天候のなか、開演時間が近づくと、前日書いた「ラス前」のレポートのように、
否、それ以上に、この日の公演を楽しみにして、
ホワイエに集結してくる「Noism愛」の面々を目にし、思わず笑みが零れました。
でも、それも束の間。
最後の公演が始まると、
舞台から10人の舞踊家が10人とも、
いつも以上に思いを込め、気合いを入れて踊っているのがビシバシ伝わってきて、
それを受け止めるこちら側としては、魅了されながらも、
同時に寂寥感がこみ上げてきてしまうのも致し方なかったことかと。
やはり千秋楽は普段とは違うものなのでした。
普段とは違う・・・。
手許のチケットは今日で尽きてしまったというのに、
感覚はまだそれについて行けず、
また次の週末には、普通に、スタジオBで公演がありそうな気がして、
それを打ち消すのがとても切ない、そんな心持ちです。
ホワイエで行われた終演後のアフタートークも、
平行して撤収されていくスタジオBという現実を受容することを求めてきました。
「今日で千秋楽を迎えましたが、まだ観足りないという方は
来月末、ルーマニアにおいでください。
ルーマニアに行くからといって、特別変わったことはありません。
新潟の舞踊団としてベストの舞台になるよう努めるだけです」(金森さん)と言われてしまうと、
何やら誇らしくもあり、現地でその様子を見届けたい気にはなりますが、
いかんせん・・・。(汗)
楽日のアフタートークとあって、質問も多かったようです。
なかから、このあと5月に控える新作にまつわる金森さんの言葉を紹介して、
締め括りとさせていただきます。
「最近ハマっているものや、ことがありましたら教えてください」との問いに、
「最近ハマっているものですか・・・」と少し考えた後、
金森さんの口から、「ショーペンハウアーの本ですかね。」と意外な名前が飛び出し、
続けて、「ショーペンハウアー、今まで読んだことがなかったのですが、
次回作にも関係しているので、今読んでいます」と事情の一端を明かしてくれました。
もしかして、Noismロスの「心に空いた大穴」を埋めてくれるのは、
案外ショーペンハウアーなのかもしれません。(笑)
この機会に、一緒に勉強してみようかな、と思ってみたりもしますが、
私の場合、今はまず、村上春樹からですかね。(汗)
寂しい気持ちを抱えつつ、今回はこのへんで。
皆様からのコメントなど賜りましたら、寂しさも紛れようというものです。
どしどしお寄せください。
そして、ルーマニアへおいでの方、現地のレポートを心待ちにしております。
ルーマニアへおいでにならない方、次回、ダブルビル公演の「劇場」でお会いしましょう。
ではでは。
追記
この冬、新潟と埼玉の地に、金森穣とNoism1が灯した燐寸は、
燐寸であればこそ、他の点火器具とは異なり、
いかに望もうともいつまでも灯り続けることなどあり得ず、
避けがたく訪れた消えることの摂理にも、「Patience!」とばかりに耐えねばなるまい。
しかし、また、燐寸だけが、消えてなお、微かに燐の匂いを鼻孔に伝えてくるのに似て、
千秋楽を終えた今も、金森穣とNoism1の燐寸が放った残り香に囚われ、
酔いしれたままの自分を見出だすのも、私ひとりであろうはずがない。
(shin)