「柳都会」Vol.27栗川治×山田勇気(2023/7/23)を聴いてきました♪

2023年7月23日(日)、暑い日が続く文月下旬、日曜日の夕方、スタジオBを会場にNoism地域活動部門芸術監督・山田勇気さんが初めてホストを務めるかたちで開催された「柳都会」vol.27を聴いてきました。

山田さんの「柳都会」デビューとなる今回のゲストは栗川治さん(立命館大学大学院先端総合学術研究科博士課程ほか)。視覚障がいを持つ栗川さんは、2019年から続く「視覚障がい者のためのからだワークショップ」に初回から参加し、山田さんと共に、同ワークショップの充実・発展に多大な寄与をしながら、普通に、一観客として、本番の公演にも足を運ばれておられます。

栗川さんには、いったいどんな世界が「みえている」のか。打合せ、メール、ワークショップ、公演を通して重ねてきたやり取りを手掛かりに、参加者の皆さんとも一緒に身体や芸術についてイメージを膨らませ、思索を深めます。

Noism Web Site より

申し込みの動きも早く、定員に達して迎えたこの日の会場。参加者は全員、おふたりによる大いに刺激的な対談を堪能しました。

障がいのある人も障がいのない人と同様に、普通の生活を送るべきであり、双方、社会生活を共にするべきとする「ノーマライゼイション(Normalization)」の考え方に基づいた社会参加を行い、サッカー観戦などにも出向く栗川さん。観客4万人のビッグスワンでは、ゴールを外したときや決めたときをはじめ、その場の雰囲気、臨場感に、「見えていないんだけど、その場に身を置いているだけで楽しい」と語り、聞いているし、感じているし、「見ている」だけではない(視覚優位ではない)「五感で開く可能性」に関して、「視覚障がい者のためのからだワークショップ」のこれまでを紹介することを中心に、山田さんと示唆に富む対談を聞かせてくれました。ここでは、かいつまんでそのやりとりのご紹介を試みようと思います。

(1)ワークショップ1回目(2019年12月18日): 手のひら合わせ→相手を感じて動く/踊りになっていく
・この時期は、Noism存続問題で大変だった時期と重なり、一層の地域貢献が求められていた。
・サッカー観戦と異なり、声を出せない劇場の性格から、いきなりの舞踊鑑賞は課題も多い。互いに理解し合う必要があった。
・栗川さん「実際に舞踊家の身体に触ってみてくださいと言われ、全身を触りまくった」
・山田さん「手が求めている。手が目である。触りにきているその勢いに頭が真っ白になった」
・栗川さん「肌と肌の触れ合いのなかで一緒に動いていくことに大きな意味がある。視覚障がい者に対する一般的な鑑賞サポートの在り方が、(1)オーディオガイドによる『ことば』を使った説明、(2)事前事後に組まれる『タッチツアー』と呼ばれる大道具や小道具を触る機会の提供だったりするなか、『ことば』に依らないで、ダンスを感じて、体験することを目指すもので、『とてもよかった』。『ことば』は理解するには優れたツールであるが、ダンスを鑑賞するには、足りないし、場合によっては害になり得る。本来、『ことば』では表現出来ない筈のものを『ことば』に還元してはダメ」

(2)ワークショップ2回目(2020年12月19日): Noismの作品『春の祭典』を踊ってみる
・実際の舞台を経験して貰えないかが出発点。
・『春の祭典』の冒頭部、椅子に座って、踵で床をリズミカルに踏み落とす。(2グループで違うリズムで)
・また、『夏の名残のバラ』の音楽に合わせて、身体で相手を感じて、繋がり、踊った。
・栗川さん「金森さんが『ダンスによる音楽や物語の可視化』と言ったものを、再不可視化したとき、何が残るかを楽しみにして本番の公演を観に来た。音、重量感、拍手、米の音や振動、息遣い等、触れるように感じることが出来た。体験したものが始まる瞬間には『来たー!」という嬉しさがあり、身体が覚えているものは一緒に動いて踊っているように感じた。しかし、映像作品(映像舞踊『BOLERO 2020』)には何も感じなかった」 
・栗川さん「視覚的には『見る』とは網膜に映すことを意味するが、網膜を介さなくても頭にイメージが浮かべば『見た』ことになるのではないか。何らかのかたちで外界をキャッチすることが『見る』ではないか」
・山田さん「踊っているとき、まだ見えないものやこれからの動き等、半分はイメージの中にいる。そういう時間軸のなかで踊っている。
・栗川さん「目で『見る』というのはほんの一部に過ぎない。視覚は強烈な感覚であるだけに人を惑わすこともある」
・山田さん「そのことは舞踊の本質と関係ある。いろんな要素が絡み合って、いい舞踊となる」

(3)ワークショップ3回目(2022年3月12日): Noismの作品『Nameless Hands - 人形の家』を踊ってみる
・栗川さんから「物語、ストーリー、Noismの世界観を感じたい」とのリクエストを受けて実施。
・山田さん「『ことば』だけでなく、身体で直接、伝え導いて振り付けることは出来ないかと考え、人形浄瑠璃にヒントを得た、黒衣による人形振りの作品を選んだ」
・栗川さん「本当に後ろから抱きかかえられて、人形となり、それが踊りになっていくのは面白かった」
・山田さん「最後はアラベスク、足を上げる動きまでいった」

(4)ワークショップ4回目(2022年12月17日): 『Der Wanderer - さすらい人』を踊ってみた
・スタジオBに設えられた本番の舞台で、空間も共有し、本番の曲を踊るに至った。
・更にワークショップの終わりには、車座になってのディスカッションの時間が初めて設けられ、感想や疑問を出し合った。
・栗川さん「本番も観に来たが、スタジオBでは、(劇場ほど大きい空間ではないので、)空気を切って動く動きまでを全身で感じることが出来た。また、歌曲の歌詞も貰っていたので、点訳したものに触りながら鑑賞することが出来た。リハーサルでは倒れて死んでいる筈がハアハアしていたのが、本番ではピタッと息を止めていた」(笑)
・山田さん「栗川さんが来ているときの本番では、踊りが『やかましくなる』。(笑)そこにいる人にどうしたら何かが届けられるか、届けたいと思うから」

(5)『Floating Field』 声の踊り: 新たな試み、その映像の紹介
・山田さん「舞台上のあちこちで展開される、抽象的で踊りそのもののような作品『Floating Field』。それを踊っている映像に、演出振付・二見一幸さんの許可を得て、Noism2のメンバーたちによって、『シュッ』『ダッ』『ドンドン』などの声(一種のオノマトペ)をインプロ(即興)でかぶせて録音してみた」
・栗川さん「割といいかもしれない。可能性があるかもしれない。意味のある『ことば』よりもスピード感やきざみがあって、動きに近い。例えば、リヒャルト・ワーグナーは楽劇を創るにあたって、キャラクターの音形を『ライトモチーフ』として予め設定しておいて、それを用いて構築していくスタイルをとった。また、これはこれで現代音楽としても面白いんじゃないか」

*会場からの質問01: ワークショップといった体験なしに、実際の舞台を見ることは可能か?
 -栗川さん: 「領域」ダブルビル公演は体験なしに観た。金森さんと井関さんの『Silentium』はとても静かな作品だったので、ステージの気配を感じ取るハードルは高かったが、『Floating Field』の方は動きが激しいので感じ易かった。

*会場からの質問02: ダンスという非日常の体験を経て、日常の何かが変わったようなことはあるか?
 -栗川さん: 便秘気味だったが、「ピョンピョン」とか「ブルブル」とか、身体を大きく動かしたり、細かく動かしたりして、便通がよくなった。内臓にもいいのでは。Noismのお陰かなと。(笑)

*会場からの質問03: 視覚障がい者のためのからだワークショップ、ひとつの舞台のように見えた。見学できないか?
 -山田さん: 人数が多くなると大変なところもあるが、今後、目が見える人と一緒にやることなどもあっていいかもしれない。

…と、そんな感じだったでしょうか。一緒によりよいものを目指して、模索し、工夫に工夫を重ねて、「視覚障がい者のためのからだワークショップ」をアップグレードしてきたおふたり。「柳都会」の終わりにあたり、山田さんが「ワークショップで出会えた人たちに感謝します。踊りが広がり、身体感覚が深くなった」と語れば、栗川さんは「一緒に芸術を創っていきたい」と応じました。

手探りで始められたのだろう「ワークショップ」が僅か4回で大きな進歩を遂げてきたことに驚きを隠せません。

そして、何より、山田さんのみならず、金森さんも井関さんも常々、ワークショップに出られる視覚障がい者の方たちの感覚が、「本当に踊れる舞踊家のようだ」と語っている、その一端を垣間見ることができて、多くの学びを得ることが出来ましたし、今回の「柳都会」のおふたりのやりとりの中心にあった『見る』ことや、逆に、やや旗色の悪い趣だった『ことば』の働きについて、更なる思索に誘われる刺激に満ちた時間となりました。そうした空気感だけでも伝えることができたら幸いです。それではこのへんで今回の「柳都会」レポートを終わりとさせて頂きます。

(shin)


感性の領域を押し広げられずにはいない2演目-Noism0 / Noism1「領域」新潟公演初日♪

雲が垂れ込めた鈍色の低い空からはひっきりなしに雨が降り続け、湿度が高かったばかりか、時折、激しい風雨となる時間帯もあり、まさに憂鬱そのものといった体の新潟市、2023年6月30日(金)。しかし、私たちはその憂鬱に勝る期待に胸を膨らませて、19時を待ち、劇場の椅子に身を沈めたのでした。Noism0 / noism1「領域」新潟公演初日。

ホワイエにはこれまでの外部招聘振付家による公演の(篠山紀信さん撮影の)写真たちやポスター等が飾られていたほか、見事なお祝いのスタンド花もあり、それらによって、内心のワクワクは更に掻き立てられ、舞台に臨んだのでした。

開演時間を迎えると、顕わしになったままだった舞台装置の手前に緞帳が降りてきて、客電が落ちます。それが再びあがると、Noism0『Silentium』は始まりました。沈黙と測りあうような音楽はアルヴォ・ペルト。先日の黒部・前沢ガーデン野外ステージでの『セレネ、あるいはマレビトの歌』に続いてのペルトです。そして、数日前にビジュアルが公開された金色の衣裳は宮前義之さんの手になるもの。眩い金一色に身を包んだ金森さんと井関さん。久し振りに髪が黒くなった井関さん、たっぷりした衣裳の金色も手伝って金森さんと見分けがつかなくなる瞬間も。そのふたりが絡み合い、動きに沈潜していくと、2体だった筈の身体領域は溶け合い、ほぼ一体化してしまい、もはやふたりには見えてきません。それは「じょうさわさん」と呼ばれるのが相応しいほどで…。おっと、まだまだ書きたいのですが、ネタバレみたいになってもいけませんし、これがギリギリ今書ける限度でしょうか。ただ一言。観ている側も己の感性の未踏の領域を逍遥せしめられるとだけ。

15分の休憩を挟んで、ノイズが轟くと、二見一幸さん演出振付のNoism1『Floating Field』です。こちらは以前の公開リハーサルで全編通しで見せて貰っていたのですが、照明と衣裳があると、(ほぼ身体だけを用いることは変わらないのに、)やはり格段にスタイリッシュで、実に格好いい仕上がりになっていました。そして小気味よく心地よい動きの連鎖や布置の更新の果てに何やら物語めいたものが立ち上がってくるかのようにも感じられます。随所で、脳内の「快」に関する領域(扁桃体)をくすぐり、ドーパミンの放出を迫ってくる憎い作品と言えるでしょう。

そしてこの日はアフタートークが設けられていて、地域活動部門芸術監督・山田勇気さんと二見一幸さんが登壇し、『Floating Field』に関して、主に客席からの質問に答えるかたちで進行していきました。なかから、いくつか、かいつまんでご紹介します。

Q: 誰がどこを踊るかはどう決めたのか?
 -A: 直接、触れ合ったなかで、ワークショップの様子などを観察して決めた。

Q: 二見さんの「振り」・動きはどうやって出てくるのか?
 -A: まず適当に音楽をかけて、即興で動きを作っていく。そのなかで、伝えら
れないものは排除して、相手の舞踊家に「振り」を渡して、キャッチボールするなかで、刺激されながら作っていく。
音に合わせている訳ではなく、音と関係ないところで作っていくが、そのうち、音が身体に入ってきて、自然と合っていく。 

Q: 作品を作るときに信条としているものは?
 -A: 自分のやりたいと思ったものが心に訴えかけるものでないこともある。客観的に判断して、独りよがりにならぬよう修正・変更したり、変えていく勇気を持つこと。

Q: 井関さん曰く、「金森さんと共通性がある」とのこと。どこだと思うか?
 -A: グループを組織して牽引していることから、メンバーを活かすことやタイミング的にどういったものを踊ったらよいか考えているところかと思う。

Q: Noism1メンバーの印象は?
 -A: 踊りに対して向き合う姿勢がプロフェッショナル。と同時に、ふとした瞬間に、可愛らしい人間性が垣間見られた。一回飲みに行きたかった。(笑)

Q: テーマ「領域」について
 -A: まず、二見さんが送ってくれた「演出ノート」があり、金森さんも同様に、お互いに作りたいものがあり、そこで共通するものとして「領域」と掲げた。
舞台の空間(領域)において発表することを前提に、Noism1メンバーのコミュニケーションの在り方、繋がり、意識、身体を用いて、最後は天昇していくイメージでクリエイションを行った。

…とそんな感じだったのでしょうか。最後に、山田さん、「二見さんはご自分でも格好いい踊りを踊る」とし、更に「(二見作品は)その日によって見え方も変わってくると思う。まだチケットはありますから、また見に来てください」との言葉でこの日のアフタートークを結ばれました。

あたかも「万華鏡」のように、舞台上の様々な場所で動きが生まれ、踊りが紡がれて、様々に領域が浮遊するさまを楽しむのが二見作品『Floating Field』だとするならば、金森さんと井関さんがそれぞれ領域を越境し、侵犯し合い、「じょうさわさん」と化して展開する一部始終に随伴することになる金森作品『Silentium』。畢竟、いずれも観る側の感性の領域は押し広げられて、見終えたあとには変貌を被った自らを見出すことになる筈です。

「ホーム」新潟での残り2公演、お見逃しなく!

(shin)

2023年6月1日、JR東日本「トランヴェール」6月号にサポーターズ登場♪

「君が取り上げてくれたから、6月1日はサポーターズ記念日」(笑)

どこかで聞いたようなフレーズですが、暦は水無月の朔日となり、既報の通り、JR東日本の新幹線搭載誌「トランヴェール」6月号にて、私たちNoismサポーターズについても取り上げていただきました。

同誌のウェブサイトには以下のような文字が(文字通り)踊っています。

2023年6月号特集 『踊る、新潟。』
「江戸時代末期、日本海側屈指の湊町だった新潟。古町かいわいを歩くと、そうした当時のにぎわいを感じることができる。毎年9月中旬に開催する、江戸時代の盆踊り図に着想を得た新潟下駄総踊り。そして、新潟市が舞踊家の金森穣さんを迎えて誕生した日本初にして唯一の公共劇場専属舞踊団 Noism Company Niigata の奮闘を通じて、新潟市の文化的な豊かさを体験していく。」
(同ウェブサイトより)

…勿論、奮闘するNoismあってのことですが、その「金森穣 Noismを、静かに熱く見守り応援する」私たちサポーターズに目を留めていただき、「以前から、いつか取材したいと思っていました」、そう語ってくださった同誌の編集ディレクター・籔下純子さんに取材していただいたのでした。有難いことです。

取材当日(2023年4月19日)、小一時間に渡って、事務局代表のfullmoonさんをはじめ、acoさん、aquaさんと私、4人でNoismの魅力について、かな~り熱くお話しさせて貰ったことを覚えています。そして、今、そのときの楽しさを感じていただける誌面を作っていただいたことに感謝いたします。

(また、今号にはNoism地域活動部門芸術監督を務めるNoism0・山田勇気さんや、以前、その山田さんの手になるNoism2の名作『赤降る校庭 さらにもう一度 火の花 散れ』で共演した永島流新潟樽砧伝承会、その2代目・永島鼓山を襲名された岡澤花菜子さんについての頁もあるなど、Noismそのものに関しても読み応えありの一冊と言えます。)

Noism(と私たちサポーターズ(笑))に興味をお持ちの方は、是非、今月(生憎、6月は「小の月」で、30日しかありませんし)、こぞってガンガン、JR東日本の新幹線にご乗車いただき、お手に取っていただけたらと思います。(笑)

*下の画像2枚(↓)はfullmoonさんが実際に新幹線に乗車して撮影したものです。大勢の方々の目に触れることでしょう。嬉しいことです。

そしてこれをきっかけにサポーターズの存在を認知された方々、私たちと一緒に静かに熱く、そして楽しく、Noismを応援していきませんか。皆さまのご参加を心よりお待ちしております。

(shin)

小学校へ、海岸へ…。りゅーとぴあから地域へ♪地域貢献を活発化させるNoism Company Niigata

暖かいを通り越し、暑いと感じられる日も多くなってきた2022年5月末の新潟市界隈。もしかしたら、一週間前のNoism2定期公演vol.13で若きメンバーたちが見せた「熱演」が季節をグッと進める効果を発揮したのかも知れません。

そのNoism2メンバーたちは公演後、市内の小学校へのアウトリーチに忙しい日々に突入しています。2週間(7日間)で12ヶ校の訪問とのことで、しかも、ほぼ大半を占める5日間は2校ずつの訪問という過密スケジュールを精力的にこなします。

「アウトリーチ」、どんなことをやるのかなぁと思っていたところ、5/27にFNNプライムオンラインが、前日(5/26)の大野小学校訪問の様子を伝えてくれました。

上のリンクからは、和気藹々に交流する様子を垣間見ることができますし、更に、「ここの場だけではなく、りゅーとぴあとか違うところでもまた活躍しているところを拝見したいです」と話した男の子の言葉にはダンサーへのリスペクトが感じられ、地域の文化継承にとって計り知れない意味をもつ活動であることがまざまざ伝わってきました。間違いなく劇場に環流するだろう流れ、その始原の営み。こんなかたちの「アウトリーチ」、実に羨ましい!ホント羨ましい!

また、その数日前の新潟日報(5/25)には、5/29(日)の県知事選関連の記事として、山田勇気さんが取り上げられていました。

新潟日報2022年5月25日朝刊より

「もしも私が知事になったら」という特集記事の中で、「文化を守り、発展させて地域を元気にしたい」とし、「心を豊かさは数字で計れないが、そうしたことを大切にしたい」と語る山田さん。9月にはNoism初代の地域活動部門芸術監督に就任されます。上にあげた「アウトリーチ」を含めて、舞踊団とそれを抱える地域とのWin-Winの関係構築に向けて一層精力的に動いてくれることは間違いありません。Noism Company Niigataがこの国唯一の劇場専属舞踊団であるのですから、それは、大袈裟に言えば、この地上、未だかつてどこにも存在しなかった類いの活動になる筈とも言えるでしょう。期待は膨らみます。

そして、知事選の日程繋がりでもうひとつ。選挙当日5/29(日)の朝7:00~8:00(受付6:30~)に新潟市・関屋浜で「春の海ごみゼロウィーク2022・全国一斉清掃キャンペーン」が行われ、清掃前の準備体操をNoismメンバーが指導してくれるというかつてないかたちの触れ合いの場面が用意されています。『NINA』だとか、『R.O.O.M.』だとか身体を酷使する系の準備体操ではないとは思われますが、たとえそうだったしても、シュールで面白いだろうなぁと妄想は止みません。(笑)

以前、『箱入り娘』のラストシーンが撮られ、今般のアウトリーチでも披露されている『砕波』のイメージの源泉とも言える「ニイガタ」の海岸、そこを清掃する活動。円環が綺麗に繋がり、Noism Company Niigataの新生面を見る思いです。そしてまだまだ見たこともないこの舞踊団の姿は無数にあって、この先、それが一つひとつ、地域・市民と共に形作られていくとしたら…。Noism Company Niigata、既に私たちにとっての「シビックプライド」の対象なのですが、更に更に「ちむどんどん」でしかない訳です♪

追記: 知事選において、「山田勇気」と投票したいところですが、山田さんはNoismに不可欠なだけでなく、そもそも無効票となってしまいますので、お控えください。蛇足でした。(笑)

*翌日開催された「にいがたクリーンアクションin関屋浜」の様子についてはこちらからどうぞ。

(shin)

再始動!「ランチのNoism」#2:山田勇気さんの巻

メール取材日:2020/5/26(Tue.)

全国的に「緊急事態宣言」は解除されたものの、ウイルス感染の第2波、第3波を招かぬよう、所謂「新しい生活様式」を立ち上げるための模索が続く日々にあって、Noismの公演がお預けになるなど、寂しい思いでお過ごしの皆さま。ここに、漸く、前回ご好評を頂いた「ランチのNoism」の第2回をお届けできる運びになりました。直接りゅーとぴあにお伺いしての取材ではありませんが、こうしてご紹介を再開できるようになったことを嬉しく思います。前置きはこのくらいにして、そろそろ始めましょうか。

♫ファイティン・ピース・アン・ロケンロオー…♪

りゅーとぴあで稽古を重ねる舞踊家の昼ごはん、それが「ランチのNoism」!

今回は山田勇気さんのランチを覗いちゃいましょう。

って訳で、ズンっ。山田さんのお出ましです。

さわやか笑顔の山田さん
右手にこの日のお昼ごはん

1 今日のランチを簡単に説明してください。

 山田さん「フォカッチャサンドイッチです」

豪華なお昼ごはんをアップで!
「しあわせ」がはみ出してますねぇ

 *前回、井関さんが「おいしそう」と言っていたサンドイッチですね。う~ん、豪華で、見るからにおいしそうです。

2 誰が作りましたか。

 山田さん「パートナーの手作りです!」

 *「手作りです」に添えられた「!」が幸福感を存分に伝えてくれますね。こんなの毎日食べてたら、もう完全に、胃袋、捕まれちゃいますよね。羨ましいですぅ。

3 ランチでいつも重視しているのはどんなことですか。

 山田さん「重すぎず、軽すぎず」

 *な~るほど。動くためには大事ですよね、それ。

4 「これだけは外せない」というこだわりの品はありますか。

 山田さん「とくにないです」

 更に、「食のこだわり特になし。好き嫌い特になし。なんでも食べますっ」とのこと。

5 毎日、ランチで食べるものは大体決まっている方ですか。それとも毎日変えようと考える方ですか。

 山田さん「最近は毎日、日替わりフォカッチャサンドです!!」

 *今度は「!」が2つ!それにしても、「日替わり」なんて、ちょっと贅沢すぎません?

笑顔で頬張る山田さん
目が「しあわせ」を物語ってます

6 公演がある時とない時ではランチの内容を変えますか。

 山田さん「公演があるときは、おにぎりが多いです」

 *バタバタしてても簡便に食べられちゃいますもんね、おにぎり。聞けば、山田さん、よく選ぶのは、赤飯や、昆布、それから梅のおにぎりが多いんだとか。ちなみに、お味噌汁は、長ネギ派とのことです。

7 いつもどなたと一緒に食べていますか。

 山田さん「Noism2のリハーサルのときは一人で食べることが多いですが、最近は、Noism1,2合同のリハなので、JoさんとSawaさんの横で」

8 主にどんなことを話しながら食べていますか。

 山田さん「たわいもないこと、などです」

 *おおっとぉ、興味湧いちゃいますねぇ、Noism0的「たわいもないこと」!聞き耳を立てに行っちゃいたいですねぇ。あっ、「耳を立てる」と言っても、「Noismメソッド」ではないですよ。って、さすがにわかってますよね。(笑)

9 おかずの交換などしたりすることはありますか。

 山田さん「ないです」

 *割とキッパリ。でも、それもそうですね。井関さんが前回、(小麦粉の)パンはもう食べないって言ってましたもんね。納得。

10 いつもおいしそうなお弁当を作ってくるのは誰ですか。

 山田さんタイロンのヴィーガンお弁当は気になります」

 *「ヴィーガン」とは、卵や乳製品も含めて動物性食品を一切口にしない「完全菜食主義者」のこと。おやおや、それは気になりますね。この企画を続けていけば、今後、そのお弁当も拝見できるものと楽しみがまたひとつ増えました。

ってことで、今回の(メール)取材に基づく第2回はここまでです。山田さん、どうも有難うございました。

ところで、先日のインスタLIVEの折りに金森さんが「井関さんと山田さんの新作」に触れていましたよね。楽しみでなりません。このあいだの『夏の名残のバラ』も素敵過ぎましたし、期待は募ります。少し遠のいちゃいましたけれど、必ず観られるものと信じて待ちます。なにしろ、「Noismは裏切らない!」ですから。あっ、なんか、番組、違っちゃいました?でも、いいですよね、ホントのことですから。

では、「ランチのNoism」、今回はこのあたりで。どうもご馳走様でした。

(shin)

Noismかく語る・2020春① - Noism0 金森穣・井関佐和子・山田勇気

まったく先を見通すことのできない新型コロナウイルス禍にあって、Noism2定期公演の延期に続き、オープンクラスのプレオープンが中止を余儀なくされたのに加え、サポーターズとしましても、好評発進したばかりの「ランチのNoism」の取材を控えざるを得なくなるなど、世界がすっかりその様相を一変させた感が強いこの頃ですが、Noismの全メンバーからサポーターズの皆さまに向けたコメントが届きました。今回より全4回の予定で掲載して参ります。題して「Noismかく語る・2020春」。まずはNoism0の三人からどうぞ。

■金森穣

この文章を読んでいる今、皆様が、そして皆様の身の周りの方々が、健やかで愛の裡にあることを願います。

世界中が同時に、その社会基盤からこれほど揺さぶられる日々を、一体誰が予測できたでしょうか。

日々ニュースで為政者や医学者たちが警告を鳴らす“3の密”は、そのまま舞台鑑賞の状況に符合します。

それでも尚、日々己の身体と向き合い、鍛錬を続け、私たちNoismは未来に向けて創作を続けています。

舞踊家とは、己の生命の危機を感じれば感じるほどに、その身と向き合う覚悟が決まる生き物だからです。

舞踊とは職業ではなく、生き様だからです。舞踊芸術とは平和な時代の娯楽ではなく、魂の叫びだからです。

その叫びを共有して欲しい。だから今はただ、その時が再び来ることを信じ、私たちは稽古を続けています。

その時が来たら、皆様に最上の、この忍従の日々を補って余りあるほどの感動を届けるために。

どうぞ皆様、お身体ご自愛ください。お会いしましょう、劇場で。

Photo: Kishin Shinoyama

(かなもりじょう・Noism芸術監督)

■井関佐和子

今回のクリエーションは生涯忘れる事の出来ないものになると思う。

人生でまさかの時代を生きる事になった。それは皆さんが同じように感じている事だろう。

その「まさか」はいつどこに潜んでいるか分からない。明日はどうなっているのか分からない日々を過ごしながら、ひたすら創作をする日々。

そして毎日毎日稽古をしながら、ひたすら幸せを噛みしめている。

踊れることの幸せ。それを許される環境。現在を生きていることの幸せ。

ネガティヴな状況でネガティヴなことを思うだけではなく、明らかに日々をポジティブに生きられている今、本当に感謝しかない。

皆さんの健康を願って…この創作を続けていく

Photo: Noriki Matsuzaki

(いせきさわこ・Noism副芸術監督)

■山田勇気

Noism2の定期公演が延期になり、ご迷惑、ご心配をおかけしています。

今はメンバー総動員で、『春の祭典』の創作に勤しんでおります。集団の中に入って共に身体を動かし、影響し合うことがとても刺激的です。互いに尊敬しあえるグループへと成長していくことも、創作の一部であると考えています。

この非常事態の中、舞台芸術、複製できない「この場所」「この時」でしか味わえない体験の存在意義が問われています。リスク回避と効率化はもともと相性の良いもので、それが遠隔技術の発展によって現実に可能となり、これからさらに必要とされていくでしょう。

私たちはリスクが高く、効率の悪い場所で、創作して、表現しています。人間の身体がその場所です。私たちは身体から離れません。離れていってしまうまでは、身体と一緒です。舞踊とは根本的には、そのようなことを表現するのだと思います。多様な身体の在り方、関わり方を通して。

そしてそれは、生身の体験として、深く人に影響を与えるものだと信じています。

Photo: Noriki Matsuzaki

(やまだゆうき・Noism2リハーサル監督)

皆さま、如何でしたか。ご堪能いただけましたか。次回もどうぞお楽しみに。

(shin)

*ポートレートのクレジットに一部誤りがございましたので、訂正させて頂きました。ここにお詫び申し上げます。

Noism2札幌公演(4/19)(サポーター 公演感想)

☆Noism2札幌公演『金森穣振付Noismレパートリー』+『BOW!!!』

4/19(金)札幌文化芸術劇場hitaruへNoism2札幌公演を観に行きました。

今シーズンのNoism2を観るのは今回が初めて。新メンバーに久しぶりに男性メンバーが加わったのも楽しみです。

私は普段、遠征はしない派ですが(Noismを除く)、今回を見逃すと今季のNoism2メンバーを知らないままになってしまう可能性があるので思い切って遠征してみました。
北海道へは学生の時に合唱団の演奏旅行で訪れて以来2回目となります。航空会社のパックツアーで往復航空券・ホテルを安く手配できたので助かりました。

会場の札幌文化芸術劇場hitaruのクリエイティブスタジオは、りゅーとぴあのスタジオBと雰囲気が似ています。チェロのエンドピン跡があったので音楽でも利用されているようです。
開演を待つ観客の様子も、おしゃべりしている方もヒソヒソ声で周りに気を遣っている様子。皆さん総じて静かなのも新潟と似ているなあ、と感じました(両方とも寒い地域だから、ということもあるのでしょうか?)。

第1部は金森穣レパートリー。solo for 2は観たことがなかったので観ることができて嬉しかったです。抜粋でしたが、3つのストーリーが展開する演出が素敵でした。
続いてTraining Piece。池田亮二さんの音楽も相俟って、先日のR.O.O.M.を思い出しました。第1部終わった際、カーテンコールはありませんでしたが、拍手は鳴り続けていたのが印象に残ります。

休憩の後は第2部、平原慎太郎BOW!!!。Noism2で平原作品を観るのは「よるのち」に続いて2回目。今回のBOW!!!も強烈な印象を残す作品でした。各ダンサーには異なるキャラクターを与えられているようで、人間の欲が浮き彫りになるような印象を受けました。

アフタートークでは山田勇気さん、平原慎太郎さんお2人とも今日のパフォーマンスについて「良かった」とおっしゃっていました。新潟での5公演の経験、またある程度期間があったことでダンサーの中でイメージが深まったからではないか、とのことです。

私は新潟公演は観ていませんが、今回のパフォーマンスは第1部、第2部ともメンバーがいきいきと演じていて素晴らしかったと感じました。研修生カンパニーではありますが、Noismの名を背負って札幌で踊っているプライドも感じました。

また、アフタートークでは質問タイムも設けられていました。
「劇中の言葉をどう捉えれば良いか?」「Noismが初めて新潟で公演した時の観客の反応は?」「平原さんの頭の中をみてみたい!」など、
質問からは平原作品への驚きがあったように感じました。
(ちなみに、札幌ではコンテンポラリーダンスを生で観る機会は少ないようです。)

札幌文化芸術劇場hitaruは開館したばかりですが、バレエやダンスの企画を意欲的に開催していて、東京からみても気になる存在となりつつあります。
またNoismを招聘してどんどん盛り上がれば良いな、と期待しています。
(かずぼ)

「Noism2 初体験!」(サポーター 公演感想)

☆Noism2定期公演vol.10『金森穣振付Noismレパートリー』+『BOW!!!』

Noism2 初体験しました。ハートウォーミングな気持ちになりました。

Noism1は『カルメン』から観ていて、もうお馴染みなのですが、先日は『R.O.O.M.』の公開リハで「ん♪⁈」となり、公演は期待を裏切らず三回観ました。

公開リハ見たさに支援会員にもなった私。これは勢いでNoism2も観るか!

ということで足を運んでみた。
感動しました! 技術も年齢も若いけど、その時期にしか発散しないエネルギーを感じました。応援したい気持ちがフツフツと湧いて来て、ノイズム作品の最中はニコニコしてエールを送りながら観てました。ダンサー達に届いてたらいいなあ。

バッハの『solo for 2』ではクラシックが基礎にあってこそのコンテンポラリーというのをしっかり見せていました。『R.O.O.M.』のコンポーザーRyoji Ikeda(池田亮司)さんの『Training Piece』は好感の持てるリズミックなコンテで大好き。”フィジカル”ですね。(3/16アフタートークでTraining 「Place」 と言ってしまった …ごめんなさい)

Ryoji Ikeda『supercodex』

平原作品は力作力演よくやったと思います。いつも予備知識なしに観るのでBOWは挨拶(バウ)だと思ってました。が、違った。

ボウという音で連想されるもののカオスの世界。確かに若い暴力的なパワーを感じました。さすがラッパー。

観終わった後、これからも見守っていきたいと思った夜でした。札幌公演も頑張ってくださいね!
(たーしゃ)

Noism2定期公演vol.10、瑞々しい新潟公演3日間の舞台に幕

2019年3月17日(日)、この日のNoism2定期公演もマチソワ。そしていよいよ迎えた新潟公演の最終日。観るならやはりこの日ということで、チケットの動きも早かったようでした。

それを含めて、この3日間は、東京をはじめ、県外からのお客様も多数お見掛けしましたし、研修生カンパニーとしては大きな関心を寄せられた3日間だったと言えると思います。

そう、研修生カンパニーですから、専門的な目線からは課題もたくさんあるのだろうとは思います。しかし、一観客としましては、3日間という短い間でさえ、大きな進歩を見せて貰った、そういう気持ちの方が大きいです。
アフタートークで山田さんと金森さんが明かしたこと、それは『Noismレパートリー』のうち、『solo for 2』についてはオーディションが行われ、全員が全曲を踊っていたという今公演の裏話。「クリエイションの過程で、上がる子もいれば、下がる子もいた。今、舞台に立たせることが出来る子を選んで、曲も取捨選択をした」と山田さん。
また、『Training Piece』に関しても、敢えて、1年目のメンバーを使うことで、「戦って欲しい」(山田さん)という思いがあり、「競争原理」(金森さん)を持ち込んだとのこと。そうしたことが食らいついて踊る舞台の緊迫感に結実していたのでしょう。

「頑張れば出れる世界ではない。練習しても舞台に立てないことがあるのはプロも同じ。発表会ではない」(金森さん)という厳しさのなか、「完全な子はいなかった。パフォーマンスと身体の強さを基に、本番まで時間があるからと、可能性を信じてキャスティングした部分もある」と山田さんは語りました。(それに対して、「勇気は優しいから」とぼそっと突っ込んだ金森さん。)

このあと、Noism2としては、5月末のロシア(モスクワ)に招聘された劇的舞踊『カルメン』にも出番はあるのですが、それも全員ではなく、「出演者はオーディションで選ぶ。(モスクワには行かない)留守番メンバーも出てくる」とここでも敢えて厳しさを打ち出す金森さん。

しかし、この日、先ず、私たち観客の目を射たのは、『Noismレパートリー』を踊るNoism2メンバーたちの表情でした。なかに、紅潮した顔に自然な笑みが浮かぶさまを見たからです。勿論、表情と身体は別物ではありませんから、同時に、身体の動きも伸びやかで見違えるようでした。この公演期間中に自信を深めたのでしょう。課題も多いのでしょうが、どうなりたいのか、志と覚悟を持ち、まずは、オーディションの人選で金森芸術監督を困らせるようになって欲しいものです。大いに期待しております。

来月には、Noism2として初の県外公演である札幌公演(4/19&20)が控えています。平原さんと山田さんが北海道出身という縁もあって実現したものなのでしょう。
で、『BOW!!!』について金森さん、「ダンサーに負う部分が多い作品。何を感じ、自分のキャラクターをどう感じているか。それが見えてくる時があった。ちょっとずつ変わってきた。両作品とも実演の質を上げて、(札幌に)持っていきたい」と。山田さんも同じ思いでしょう。きっと彼女らと彼なら応えてくれると信じるものです。応援しております。

さてさて、今度は私たちです。上に触れた『カルメン』モスクワ公演に関しては、公開リハーサルが2度もたれるそうです。しかし、それを観るにはNoism支援会員になっていることが必要です。「是非観たい」ということなのでしょう、この日、アフタートークの後、ホワイエで支援会員となる手続きをしておられる方を数名目にしました。新潟市民による「評価と必要性」が問われる今、これまであまり目にしてこなかったダイレクトな反応、その光景を嬉しく思いました。

Noismの未来は、ある意味、私たちの手の中にあるのかもしれません。「Noismがある週末」を心ゆくまで堪能し、その最後にそんなことを思いました。皆さん、私たちの大切なNoismをご一緒に支えて参りましょう。
(shin)

Noism2定期公演、中日のマチソワで飛躍を見せる若き舞踊家♪

2019年3月16日(土)、Noism2定期公演vol.10の2日目にして中日のこの日は「マチソワ」の日。踊る側は大変なのでしょうが、観る側としては、一日浸って、どちらも観て「満喫」しまくることも可能な訳で、かく言う私もそのひとりだったりして、それはもう目一杯楽しませていただきました。

ソワレの後のアフタートークで、Noism2リハーサル監督の山田勇気さんは、この日の2公演、特にソワレを評して、「若いんだし、疲れとかじゃない。エネルギーが良い意味でも悪い意味でもかかっている状態で始まった。それを制御していくことが大事」と語り、金森さんも「そうだね」と応じていましたが、一観客として、この日のマチソワを、初めて、そして2回目、ということで続けて観た率直な感想を言うなら、2公演の間での変化は歴然で、動きが確信を深め、よりシャープなものとなり、迫力を増したパフォーマンスに変わり、随所で息をのみました。

更にアフタートークでの質問に絡めて書けば、平原作品『BOW!!!』を踊ることでメンバーに訪れた変化として、山田さんが「自分は素の彼女らと素の彼を知っているつもりだし、自分も自分を知っていると思っているだろうが、どちらも一面に過ぎない。平原作品を通して、新しいものが出てきたらそれを掴みたい」と全公演期間を通した語り方をしたあと、金森さんは「欠片は見えてきたりしているが、まだまだこれから。ちょっと何かを掴みかけている感じが見えるので、この本番の機会を利用して欲しい」と語っていました。

同時に、若々しく瑞々しい「素材感」もまたNoism2の魅力でもあります。金森さんが「舞踊家に委ねていてある種危険」で、「全体的にレベルの高いものが要求されている」作品と語った『BOW!!!』、クリエイションの間のコミュニケーションを通して「造形されたキャラクター」を踊るメンバー9人は、時に、平原作品寄りの姿を顕して頼もしかったり、時に、各々の若さが顔を覗かせて微笑ましかったりと、二極間の「拮抗」にたゆたう9つの身体として映じました。それは個々の変化の過程をつぶさに目撃することに他ならず、「今、このとき」にしか見られ得ない、究極の再現不可能性を纏った5公演を意味するものです。そんな魅力。

アフタートークの方から始めてしまいました。戻りましょう。

では、山田さん演出の、7人で踊られる「金森穣振付Noismレパートリー」です。山田さんが「えいっ」とか「良いのかなぁ」とか思いながら、今踊るメンバーに合わせて手を入れ、アジャストを施したこともあり、金森さんも「自分のオリジナルなのに、新鮮だった」(*註)と語ったレパートリーを踊る前半25分。カナール・ミラン・ハジメさんの動き出しから踊られ、門山楓さんがラストを締める『solo for 2』も、Noism定番の横一列から始まる『Training Piece』もそれぞれに美しく、これから更にNoism的身体性を身につけていくのだなと、まるで育ちゆく「わが子ら」を観ているかのような感覚が訪れてきます。(失礼)
また、椅子を使わない『solo for 2』+黒いレオタードで踊られる『Piece』は、前日の公演を観たfullmoonさんが書いたように、シックな「別の作品」と言う味わいもあります。レオタードの黒、その隙間から覗く肌の色、たったそれだけなのに、それが限りなくゴージャスに見えてきます。

休憩を挟んだ後半は平原さんの新作『BOW!!!』。休憩の途中から低く聞こえてくる怪しげな音楽。心の準備をしてお待ちください。怪しげなフランス語。嘲笑。青い照明。そして特権的な赤。これから観ることになる全てが疑わしい感じ。「平原ワールド」全開。或いは、「平原劇場」。
Noism2最年長となる門山さん制作で『羊たちの沈黙』を思わせるようなオブジェの下、門山さんを中心に据えた、瞬発力、爆発力が要求される50分間の舞台が進行していきます。何が起きたのか。金森さん×山田さんの前半とはまったく趣が異なります。それぞれが同じ黒を基調としながらも、全く「別の黒」を見ることになるでしょう。

「演出をするうえで、最も難しいのは、実演家の内面をいかに見抜いて引き出すか。それも熟練した実演家ではないので、本人たちも気付いていない未知なる『何か』を、ということになる」(金森さん)

既に本日は公演最終日。再びのマチソワ2公演。どうぞりゅーとぴあ・スタジオBへお越しください。「未知なる『何か』」を目撃するために。
(shin)

【註】「もとより、歴史上のいかなるマスターピースであっても、残された(映像)記録から振り起しをしていく際に、それを担う人のファクターがかかることは必定で、あたかも『伝言ゲーム』ででもあるかのように、(正確には)原形を留めていないものになってしまう」と金森さん。(アフタートークより 文責:shin)