場内を魅了し尽くして幕をおろした「Amomentof」7/28大千穐楽(@埼玉)+6/29アフタートーク補遺

Noism Company Niigataの20周年記念公演「Amomentof」が、遂に2024年7月28日(日)に灼熱の埼玉は与野本町、彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉にてその全6公演の幕をおろしました。

この日の開演時刻(15:00)頃には、気温は38℃になるとの予報が出ていた与野近辺。風もなく、蒸し風呂の中にでもいるかのようなその暑さは、ヒトの暑熱順化など到底追いつくべくもないほどの気温であったかと。

そんな酷暑の街路を辿って彩の国さいたま芸術劇場を目指して歩いていたのは、しかし、別種の「熱」を求める人たち。その移動振りは、この日、その場所を目指した目的から、周囲の異常とも言える高温にさえ負けぬ様子を示していたように思います。

その「熱」を発する舞台を観ようと集まってきた大勢の観客のなか、浅海侑加さんのお母さん、糸川祐希さんのお母さんと、そしてフランスからドバイ経由の20時間の空旅で駆けつけた旧メンバー・中村友美さんとも色々お話ができましたし、更に宮前義之さんの姿なども認めたりして、いやが上にも気分はあがりました。

大千穐楽の舞台はやはり「熱」を発して余りあるものでした。

まずは『Amomentof』。バレエバーに手をかけて身体をほぐすことに始まる日常から、日々に住まう葛藤や苦悩をあからさまにしつつ、物凄い高揚を見せてのち、最初の場面へ。「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただひとつの道」と言ったのはイチロー選手。誰もが肯(がえ)んずるほかない真理なのですが、この舞台ほどの説得力を伴って可視化されることは稀でしょう。井関さん、金森さん、そして他のメンバーたち、それぞれが見せる目の表情、それらが行き違い、交錯するさまには実にスリリングなものがあります。

この演目には、Noismの過去作で目にしてきた「振り」の数々があちらこちらに織り込まれているだけでなく、終盤に至っては、私たちが見詰めるその舞台の奥に、『Mirroring Memories』を彷彿とさせるようなかたちで、先刻、ハケたメンバーたちがこれまで井関さんが纏ってきた数々の衣裳ほかに身を包んで居並ぶ姿が見えてくるではありませんか!更に、やがて、その上方に「20年間」の公演ポスターが一気に映し出されて追い打ちをかけてくるのです。胸に去来する様々な思い出の場面。「ずるいよ、金森さん」涙を堪えることなど早々に諦めるしかありませんから。目に映ずるのは孤高を経て、やがて敬意の群舞へと転じ、その舞台狭しと躍動するメンバーたちの中央、井関さんが発する万感籠もった泣き叫びの声には胸を強く揺さぶられずにはいられません。

更に言えば、マーラーの交響曲第3番第6楽章「愛が私に語りかけるもの」をその作品中に取り込んでしまうといった、大胆と言えば大胆に過ぎる構成の妙も畳みかけてきます。マーラーの旋律とともに現前する圧倒的な高揚感の画、しかし、その全てが、最後、井関さんがメンバーたちに向けるキョトンとした目によって、ありふれた日常の時間のなかに回収されてしまうさまが実に詩情豊かで、切れ味抜群、憎いくらいに見事なのです。

この日は完全に幕がおり切るまで、拍手は一切起こらず、(刹那とはいえ、)甘美な余韻が静寂となってホール内におりてきました。その後、「もっと拍手をしていたいのに」、そんな気持には頓着することなく、呆気なく客電が灯るのはいつも通りでした。

20分の休憩を挟んで、『セレネ、あるいは黄昏の歌』が記念公演の掉尾を飾りました。この大作も、目の表情のスリリングさの点で『Amomentof』に全く引けを取らないものがあります。陶然として春の歓びを発散させる目があったかと思えば、動物的な「生」のエネルギーが「性」的な逸脱へと至る様子を押し殺した怒りを浮かべながらも、敢えて直視しようとしない目があり、はたまた、「憎しみ」の連鎖を宿し、その対象を見出してしまう凶暴な目や、その自らの「蛮行」に自ら怯える目もあり、老いて呆けた印象の、同時に寛容さを示す目に、それを模倣しようとする剽軽な目や、何物にも囚われることのない無邪気さそのものの目、かと思えば、呪術的な手の仕草を繰り返しながら、真っ直ぐ前を見詰めて動じない迫力に満ちた目、等々、挙げだしたらきりがないほどです。舞踊作品において、目ばかり取り上げるのもどうかと思いますが、少なくとも、そこにこの作品を読み解く鍵(のひとつ)があるとしか思えないのです。

命が芽吹く春。内的な力が溢れて、ときに暴発し、その様相をすっかり異にしてしまう夏。平衡かに見える秋を経て、やがて冬の死へ。しかし、一刻も止まることはなく、やがて再生へ…。そんなふうに巡る季節。循環。描かれる円環。

そう、「ENKAN」。近藤良平さんを招いての来る冬の「トリプルビル」です。「巡ること」のモチーフはこの後のNoismにあって、多様に追い求められていくことになりそうですね。楽しみです。

大千穐楽の幕がおりたとき、場内に谺した大きな拍手と「ブラボー!」。そして広がったスタンディングオベーション。無理からぬことです。「20周年」ということを全く抜きにしても、私たちが目撃したのは、物凄い訴求力をもつふたつの演目であり、それは取りも直さず、舞踊家の献身煌めく刹那が途切れることなく連なることで編み上げられた舞台だった訳ですから。もう、端的に言って、至福のときを過ごしたとしか言いようがありません。

皆さんの目には、そして心にはどう映じたでしょうか。「Amomentof」大千穐楽についてはここまでです。

ここからは、以前(2024/6/29)のブログ記事(「Noism 20周年記念公演新潟中日の眼福と楽しかったアフタートークのことなど♪」)において、公演が続いている事情から、「ネタバレ」に繋がるので書けないでいた同夜のアフタートークでの井関さんと金森さんのやりとちをご紹介して、ブログの締め括りにしたいと思います。以前の分と併せてご覧頂けたら幸いです。

☆★6/29アフタートーク(新潟公演中日終演後開催)補遺★☆
☆井関さんが一番思い出に残っている衣裳は何か
金森さん: 『Amomentof』では井関さんがこれまでに着た衣裳を出した。
井関さん: 「一番」となると難しいが、思い入れで言ったら、故・堂本教子さんによる『夏の名残のバラ』の赤い衣裳。生地に拘って色々語っていたのを思い出す。今回、出ていなかった衣裳だけど。
金森さん: 色味が色々あったし、バランスがあった。でも、拘りがあって、最後の最後、井関さんが「あれは(出すのは)イヤだと言った」
井関さん: アレを出したら、「私が着ます」となっちゃうから。

…というところを今漸く書くことが出来て、スッキリした気持になりました。以上です。

(shin)

「Amomentof」埼玉公演2日目!

今日(2024年7月27日・土)も素晴らしい公演でした!!

危険な暑さは相変わらずで、しかも開演時にはゴロゴロとかすかに雷の音が・・・
『Amomentof』は静かな雷鳴と共に始まりました。
しかし音楽が流れると全く気にならず、どんどん引き込まれていき、感動的な音楽と踊りにまたも感涙。。。
そして最後、皆がバーに戻り、佐和子さんがハッと気がつくシーン、静かな舞台に、最初と同じようにかすかな雷鳴が聞こえました。自然の音響が感慨深かった次第です。

休憩時には新潟からの友人たち、吉﨑裕哉さん、そして糸くん(=糸川祐希さん)のお母様にもお目にかかれて嬉しかったです♪
さい芸芸術監督の近藤良平さんもいらっしゃいました。
そして、舞台評論家 堤広志さんご提供のパフォーミング・アーツ・マガジン「バッカス」02号(編集責任者・堤さん:2004年刊)、無料置き配布されています! その「バッカス」02号には「特集 未知なる挑戦Noism04」が掲載されており、懐かしい写真が満載! 早い者勝ちですよ♪
昨日もありましたが、あっという間に無くなり、今日は追加してくださったようです。
新潟公演時にもありましたし、少し前にサポーターズにもご寄贈いただきまして、会員の皆様にお送りしました。堤さん、どうもありがとうございました!

そして『セレネ、あるいは黄昏の歌』。
圧巻の舞台に惜しみなく拍手が贈られました! ブラボーもスタンディングもあって本当に嬉しいです。充実・充足感に満たされ、幸せな気持ちで大満足で帰路につきました。
帰る時は昨日も今日も小雨になりました。明日は涼しくなるといいですね♪

さい芸1階ガレリアでは世界に名だたる舞踊家、舞踊団の、さい芸での公演写真展が開催されています。日本ではNoismとコンドルズがありました♪
Noism『鬼』は2022年。あのときも暑かったですね🔥素晴らしい公演と共に駅前広場の赤いバラを懐かしく思い出しました。今年のバラはピンクが多いです。

明日(2024年7月28日・日)は大千穐楽、皆様どうぞお見逃しなく!

(fullmoon)

「Amomentof」埼玉公演初日!

*この度、山形や秋田ほか大雨被害に見舞われた方々に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。

2024年7月26日(金)、気温は36、7℃でしょうか🔥 暑い中、埼玉は与野本町、彩の国さいたま芸術劇場に行ってきました!
いろいろな看板、グッズ販売。そして新潟公演と同じく、サポーターズからのお花が華やかにロビーを彩ります♪

お久しぶりの関東の知人友人。そして会場での私の隣席はなんと、浅海侑加さんのお母様でした! 愛媛からもお知り合いがたくさんいらしていたようです♪
新潟公演からひと月近く過ぎ、金森さんはXに「再演のよう」と書いていましたね。ワクワクして開演を待ちます。

静かに幕が上がり、舞台にはバーと佐和子さんが・・・
ますます美しい素晴らしい『Amomentof』✨ 観客は涙腺崩壊です。私もわかっているのにウルウルです。
大きな拍手が2回。何事もなかったかのようにバーの場面に戻る「一瞬」の余韻に打たれました。

休憩の後は『セレネ、あるいは黄昏の歌』。幻想的、幻惑的な大傑作。
この音楽を選んで振り付けた金森さんは大天才としか言いようがありません。それに応えてますます人間離れしていく井関さんは神の領域✨
メンバーもしっかりしっくり、それぞれ踊りきり、見事でした。
カーテンコールは大歓声とスタンディングオベーションで盛り上がりました!

ますますブラッシュアップした2作品。もう明日(7/27・土)とあさって(7/28・日)だけなんて・・・
観ないともったいないですよ。ぜひどうぞ!

(fullmoon)

NHK「ラジオ深夜便」インタビューに金森さん登場♪

皆さま、昨夜(2024年7月17日・水)はお聴きになられたものと思います。勿論、NHKが毎日放送している深夜番組「ラジオ深夜便」(アンカー:芳野潔)、その午後11時台後半、金森さん登場の「公共劇場専属舞踊団を20年」と題されたインタビューのことです。

こちらのインタビューですが、鈴木由美子ディレクターとオンラインで行われたものとのことで、約25分間の放送でした。

未だ「道半ば」とする金森さんのご意向と拝察しますが、聞き手から終始、「20周年おめでとうございます」のような言葉はなく、「前例のないことでしたので、あらゆる面で困難の連続でしたし、まあホント、あっという間に過ぎたっていうのが実感ですかねぇ」と語り出した金森さん。

その後、Noismの「20年」に発して、話は多岐に渡ります…。
・新潟市長交代期に(「幸か不幸か」(金森さん))政治的なトピックになってしまったNoism
・「日本初の公共劇場専属舞踊団」が意味するもの
・「新潟の文化」であることの理解の継続性
・舞踊や文化をめぐって、この国で変えるべきもの、可能性への献身
・「無理解の壁」との闘い、後世のための文化状況改革への闘い
・この国の文化状況を新潟から変えるための金森さんの闘い
・舞踊家たちの稽古への情熱
・芸術が社会に浸透していく循環の実現へ
・記念公演「Amomentof」に込めたもの、舞踊とは一瞬への献身
・消えてなくなること、残らないことの尊さ
・「時分の花」(世阿弥)を目の当たりにすることの醍醐味、一期一会、緊張感
・井関さんの20年間の献身、その身体に刻まれた記憶や注いできた情熱、舞踊への愛をマーラー交響曲第3番第6楽章『愛が私に語りかけるもの』を用いて作品化、未来に繋がれていく情熱、その刹那を共有して欲しい
・次週に迫る「東京公演」(←浦安にあるにも拘らず、「東京ディズニーリゾート」とされるテーマパークに似た、聞き手による「その」表現に、「『埼玉公演』でしょうが!」と思わず突っ込みを入れましたけれど)、「東京一極集中」(金森さん)の危うさ
・「劇場」とは(東京を介さずに)地方独自の文化を創造・発信する場所という理念
・金森さんの「私がダンスを始めた頃」、欧州で体感した社会と舞踊
・目指すもの: 舞踊芸術に従事する舞踊家の情熱・献身が社会のなかでうまく活用され、社会に還元され、この国の劇場文化が、地方が豊かになり、その劇場文化から創造されたもので平和に寄与したい(金森さん)
・舞踊家であること: その社会や他者にとっての価値、世界にとっての貢献、それを一人でも多くの後輩たちに伝えたい、可能性を見せてあげたい(金森さん)…

そんなこんなで、中身の濃い約25分間でした。

こちらのインタビューはNHKのネットラジオ「らじる☆らじる」にて、7月25日(木)午前0:00までの期間限定で配信中です。お聴きになりたい方はこちらからどうぞ。(金森さんへのインタビューは23:17頃から始まります。)

また、この日のやりとりに興味をお持ちになられた向きには金森さんの著書『闘う舞踊団』(夕(せき)書房:2023年)の一読をお勧めします。金森さんの信念と「闘い」の真実が余す所なく記されていて、読めば胸アツになること必至、必読の好著です。

さて、いよいよ「埼玉公演」3 DAYSも間近に迫って参りました。献身のさまを目撃し、刹那を共有すべく、是非、彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉へ♪お見逃しなく!

(shin)

胸に迫る万感と感涙、そしてその先へと~Noism20周年記念公演「Amomentof」新潟公演の幕おりる

2024年6月30日(日)、Noism20周年記念公演「Amomentof」新潟公演楽日の新潟市は昼過ぎから雨。あたかも一足先に天がホームでの最終舞台となるのを惜しむかのように、数時間後の私たちの心を映した天候となっていったのでしょうか。そんなふうにすら思えてしまうほど、楽日の心持ちには寂しさも忍び込んでいたりします。

この日は15時の開演でしたが、通常より30分早い14時ちょうどにホワイエまでの開場となり、そのホワイエ内で同時刻に『劇場にて-舞踊家 金森穣と新潟』の上映が始まり、多くの人たちが大型モニターの前に立ち、その優れたドキュメンタリーに見入っていました。

そうでなくても、楽日の賑わいを示すホワイエ。この日の公演に足を運んだ方々のなかには、金森さんの芸術監督招聘およびNoismの設立に関わった篠田昭前新潟市長や、鼓童とのコラボレーション『鬼』の音楽を作曲した原田敬子さん、そしてかねてより金森さんと親交が深く、『ラ・バヤデール-幻の国』において空間を担当した建築家・田根剛さんといった面々の姿がありました。(とりわけ、ご自身も登場するドキュメンタリーに視線を送る原田さんの姿には興味深いものがありました。)

約55分の尺をもつドキュメンタリーが半ば過ぎに差し掛かった14:30、客席への入場も始まりました。チケットカウンターには「当日券あります!!」の表示があったりもしましたが、この日の〈劇場〉はほぼ満席に近かったように見えました。

20年!そう、20年前に今のNoism Company Niigataを、ピークを更新し続ける日本唯一の公共劇場専属舞踊団の姿を想像できていた人は恐らく、そう多くはなかったのではないでしょうか。勿論、金森さんを除いて。

「すみずみまで明瞭にイメージできたことは間違いなく成就するのです。すなわち見えるものはできるし、見えないものはできない。したがって、こうありたいと願ったなら、あとはすさまじいばかりの強さでその思いを凝縮して、強烈な願望へと高め、成功のイメージが克明に目の前に『見える』ところまでもっていくことが大切になってきます」そう書いたのは京セラを設立した稲盛和夫氏(著書『生き方』(サンマーク出版)より:同書は「あの」大谷翔平選手がお勧めの本として挙げる一冊。)ですが、恐らく、金森さんが歩んで来た20年の軌跡にも、ここに引いた内容と重なる部分が大きかったものと推察されます。(稲盛さんの「見える/見えない」という言い回しは、奇しくも前日のアフタートークにおいて、音楽に振り付ける際のキーワードとして金森さんが使ったものでもあります。)

この度の記念公演の舞台を観ていると、新潟と世界が直結されている、或いは、今のこの一瞬間、ここ新潟はある意味、間違いなく世界の中心と言って差し支えなさそうだ、そんな普通なら途方もない放言と捉えられかねない思いさえ、自然に信じられてくるのです。恐るべし、金森さん。余人をもって代え難い芸術総監督、そう思う所以です。そして、今この国にあってそんな類い希な芸術家を支援することの豊かさや誇らしさといったらそうそうあるものでもないのでは。そんな思いも。

「今、自分が日本の劇場で働けていることは誇りなんですね。海外への憧れよりも、もっと素敵な『夢』を20年かけて作ってきてくれたという思いをのせて公演をよいものにしたいです」4月19日の20周年記念公演「Amomentof」記者発表の席上、そう語ったのはNoism1メンバーの三好綾音さん。(ウォルト・ディズニーではありませんが、)「ワンマンズ・ドリーム」を着実に根付かせるといった「偉業」に対して、(その闘いを知る)メンバーから贈られたこの言葉に相好を崩した金森さん。そして今公演で踊るメンバーたちを「みんないい顔をしている」と評したのは金森さんと井関さん。大きく頷いた山田さん。信頼やら発展やら継承やら…。素晴らしい公演にならない訳がないのです。

新潟楽日のこの日も終演後、りゅーとぴあ〈劇場〉は割れんばかりの拍手とどんどんその数を増していくスタンディングオベーション、そして飛び交う「ブラボー!」の掛け声に満たされました。誰もが幸せを絵に描いたような表情を見せています。(最高潮に達したところで終わりを告げるマーラーの楽曲、前日同様、それにつられて湧き起こった拍手すらご愛敬に見えました。)

20年!当たり前のように新潟の地にあり続けたNoism。一瞬一瞬の献身によって、弛むことなくピークを更新し続けた20年。しかし(これも前日のアフタートークで語られたことにはなりますが、)20年という年月にすら、何かを成し遂げたという感覚はなく、常に今日より明日、すべての可能性はここにあるとして更に先へと目を向ける金森さん、井関さん、山田さん。翻って私たち観客は、だから、次から次へと、常に純度の高い良質な刺激に恵まれた20年を過ごしてこられた訳です。それを幸せ以外のどんな言葉で言い表せましょうか。

『Amomentof』も『セレネ、あるいは黄昏の歌』も、Noism20年の軌跡の果てに、今この時点で結実した「奇跡」のような2演目であり、同時に、そこにはNoismに伴走してきた私たち観客側の年月も(当然に)織り込まれる筈ですから、涙腺破壊指数が高くて当たり前な道理です。舞踊家と観客、向かい合う2者が、非言語の「舞踊」を介して(無言のうちに)20年の区切りを寿ぐことになる2演目と言えます。

しかし、安住することを嫌うのが金森さん。この間の金森さんの言動によって想起させられるものはといえば、やはり彼が常々唱える「劇場文化100年構想」でしょう。20年をかけて、既に言葉以上のものとなっている金森さんの「ワンマンズ・ドリーム」、その軌跡を情感豊かに可視化させた2作品にまみえることを通じて、更に長い100年というスパンで劇場文化を捉える視座のもとに、一緒に明日の劇場を作っていく観客という名の「同志」として誘われているようにも感じた次第です。胸に迫る万感と感涙、それを携えながら、更にその先へと。金森さんと一緒なら。
…そんなことを感じた新潟3daysの楽日でした。

さて、全舞踊ファン必見のNoism Company Niigata 20周年記念公演「Amomentof」ですが、今度は約1ヶ月後の7月26、27、28日、埼玉3days(@彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉)です。期待に胸を膨らませてお待ちください。

(shin)