2018年1月28日(日)は、Noism2定期公演vol.9の「マチソワ」の日。
この日の2公演は、ダブルキャストの両方を続けて観られる日ということで、
マチネとソワレの両方を観にいらしたお客さんも多かったようでした。
そして、この日をもって「3日間4公演」の幕が下りました、
観る者の心に爽やかな感動を残して。
そう、それは、まさに金森さんがツイッターで、
「『時分の花』の、なんと美しいことか。」と呟いたとおりに…。
【1/28マチネ】
【1/28ソワレ】
楽日の日曜日、私も一日のうちにダブルキャストの両方が観たくなり、
午前11時を待って、電話をかけて、急遽、13:30の回の当日券を求めたのですが、
そうやって備えた甲斐がありました。趣の異なる2公演を、
或いは、金森さんの言葉を借りて言えば、「ふたつの異なる世界観」を続けて目にすることができたからです。本当に楽しかった。
その趣の違いを全て書くことはできませんが、例えば、Noismレパートリー中の『PLAY 2 PLAY』パートにおいて、奥側4人と手前側4人の位置が入れ替わることで、雰囲気がまるで別物のように見えましたし、
また、例えば、島地さんの『私を泣かせてください』のラストのソロに関して書くなら、マチネの西澤真耶さんが哀歓を表出していた一方、ソワレの門山楓さんは憧れを迸らせていたと感じました。
もてる力を振り絞り、「マチソワ」に臨み、それを走り切った9人の若手舞踊家は、「身銭を切って」間違いなくかけがえのない経験を積んだことでしょう。更なる飛躍に繋がる礎として。
3日間にわたって、その身体を以て、私たちを非現実の2本立ての「夢」へと
誘ってくれた9人の若手舞踊家に心からの拍手を送りたいと思います。
以下、ホワイエに出て行われた、楽日のアフタートークからいくつか記しておきます。
☆山田さんと島地さんが互いの演目に関してどう感じているかを訊ねる質問を受けて、
山田さんが、「島地さんの作品は日に日に変わっていった。難しいことにトライしている。
ダンサーが尊敬していたし、自分も尊敬しましたね。舵の利かない船を漕いでいる感じ。
成功の瞬間でさえ、頭で思い描いていたものではないだろう」と言えば、
島地さんは、「山田さんがディレクション(演出)しているのを見て影響を受けた。
それは公開リハの際、『ダメだ!』とスパッと言ったこと。言うんだ、この人って、と。
でも、ダンサーは変わるということを信じていればこそ言えること。
みんなのこと、好きなんだねぇ。関係性が凄く見えちゃった。
ボクにはできないけど、やろうと思った。
『ダメ!』と言う強さを持ちたいと思った」と語りました。
★島地さんの指導を得てのちの変化を訊ねられた山田さんは、
自由をテーマに、まるっきり何もない状態から個々のダンサーの決断や判断を大事にして、
チョイスしていくアプローチはダンサーの主体性を育む意味合いが大きいと答えました。
☆外部から振付家を招く際に重視している事柄を訊ねられた金森さんが挙げた3点は、
①第一義的にはやはり才能、
②自分たちでは与えることができない何かを与えてくれること、
③舞踊芸術の力が社会的に有用であることを認め、ともに闘っていける「同志」であること。
★Noismレパートリーにおける衣裳(トップス)について訊ねられた山田さん、
「全部、彼女たちの私物であり、かぶらないようにちょっと変えてみたりしたけれど、
大事にしたのは、個々の背中がどう見えるかという点だった」とのこと。
☆作品のなかで多用された「言葉」について台本の存在を訊ねられると、島地さんは
「セリフは即興ではなく、しっかり決まっていて、100回くらい練習している。
それだけは削らずに残そうと決めていた」と答え、
本人が大好きだと語る「言葉遊び」を今回の作品に持ち込んだ例として、
「悲しみ」→「かな」+「しみ」に分けて、
森加奈さん(かなちゃん)に「シミがない」と語らせたことを挙げて解説。
すると、今度は金森さんが加わって、「言語は音の集積で、社会的な産物。
彼はそれを脱構築して遊ぶ。通常、こうだろうと思われていることを常に疑っている」
という纏め方で、島地さんの人柄の一端を紹介してくれました。
また、今回の人間と魔女のキャスティングに関してですが、
島地さんが新メンバー4人を魔女に据えたのは、なんら意図してのものではなく、
普段一緒にいるからという感じで分けてみたら、
「後で、その分け方って…」と気付くことになったものなのだそうです。
★この日のマチネとソワレで異なる点を訊ねられると、
島地さん、「今日変えたのは、ラスト付近だけ」ながらも、
「どういう風に行ったら良くなるのかを考えて、通常、毎回変えている。
舞踊家の肌艶、におい、エネルギーなどを見て、この『薬』がいいかなぁ、とか。
たまに間違うんだけど、…。」(笑)
「で、楽しみだけれど、凄く怖い。本番で見るドキドキ感は半端ない。
その『賭け』を残しておくようにしている」と語ると、
ここでも金森さんが次のように付け加えています。
「自由に見える瞬間も、そんなに簡単ではない。
(島地さんは)そんな儚さ、脆さ、危険性をよく知る者である」と。
☆ダンサーの細かい仕草について、その演出意図を訊ねられた島地さんは、
「ひらめきや思いつき、ノリ、そのとき出たものを常に信じたい」と語り、
金森さんは「(舞踊の)ルールは常に破るためにある。自由になるためには踏台が必要。
型の大切さ。それがなければ、飛べない」と補足してくれました。
更に、島地さん、作品がある程度かたまったのは「2日前」とか「ゲネプロのとき」と、
驚きの舞台裏も明かしてくれました。えっ、驚きでもなんでもない?(笑)
公演最終日ということもあり、訊けないことがないほどにリラックスした空気のなか進行し、途中、何度も大爆笑が起きたアットホームで楽しいアフタートークも、最後、金森さんの「我々がこうしてチャレンジングなものを創り、それを観た人が、非日常に触れて、何を感じるか。舞踊言語は多様で、社会的に有用であることをこれからも発信していきたい」という言葉をもって締め括られました。
「非現実」にどっぷりと浸かり、夢見心地のうちに過ぎた週末の3日間。とても幸せでした。その多幸感をもたらしてくれた9人の躍動する身体が瞼の裏に焼き付いていて、もう既に次のNoism2の公演が待ち遠しい気持ちが湧いてくるのですが、今はまず何よりも、どうもお疲れ様でした。そして爽やかな感動を有難うございました、そのふたつの言葉を伝えたいと思います。
【追記】金森さんも「事後的に知った」という、島地さん「新曲」2曲入りCD販売は、
この日の追加分も含めて、すべて「sold out」となりました。(笑)
無事にゲットされましたか。
(shin)