「ランチのNoism」#3:ジョフォア・ポプラヴスキーさんの巻

メール取材日:2020/6/18(Thur.)

さてさて、ご好評いただいております(って、完全に言い切ってしまってますが、)「ランチのNoism」の第3回は、つい先日、Noism1メンバーとしての最後の舞台を汗だくで踊り終えたジョフォアさんのご登場です。名残惜しい気持ちは募りますが、それでも、こうして間に合って良かった♪

持ち前の明るさと剽軽さが感じられる回となりました。英語の質問シートを用いてやりとりをさせていただき、それを shin が日本語に訳したものでお届け致します。あと、おしまいには、サポーターズの皆さまへのメッセージもありますから、そちらも是非、お楽しみにってことで。では参りましょう。

ふぁいてぃん・ぴーす・あん・おけんろぉぉぉ…♪

りゅーとぴあ・スタジオBでの稽古に余念のない外国人舞踊家に昼がきたぁ!

いきなり、「らしさ」炸裂の
ジョフォアさん!

1 今日のランチを簡単に説明してください。

 ジョフォアさん「サラダとゆで卵2つ、そして納豆1パックのランチです」

両手に握られていた物体はゆで卵だったんですねぇ

 *「外国人は納豆が苦手」はもう古いのでしょうか。まあ、人によるんですよね。日本で見たって、関西人でも納豆が大好きって人、多いですからねぇ。

2 誰が作りましたか。(または、 主にどこで買ってくるのですか。)

 ジョフォアさん「前のシーズンではランチは自分で作っていたのですが、イトーヨーカドーの近くに住んでいることもあり、今年に入ってからは、前日の晩に翌日分を買うようになりました」

 *故郷を離れた遠い国で、日々の稽古や公演に全力を注ぐ毎日な訳ですから、無理もありませんよね。イトーヨーカドー、有り難いですね。

3 ランチでいつも重視しているのはどんなことですか。

 ジョフォアさん「大事にしているのは、筋肉の回復にとって充分で、ランチ後ずっと空腹を感じないで済むくらいのたんぱく質を摂るということです。また、量も減らしていて、より安くて、より美味しいことも重要です」(笑)

 *な~るほど。さすが舞踊家、やはり体のことを考えて食べてるんですね。それと、お値段の点でも、賢いお買い物を心掛けているんですねぇ。パッケージに貼られたシール、大事です。思いのほか、庶民的でホッとしました。(笑)

4 「これだけは外せない」というこだわりの品はありますか。

 ジョフォアさん「セブンイレブンのゆで卵です。とても塩味が利いているんです!!」

 *…って、驚きじゃないですか。セブンイレブンの食べたことがないのでわからないのですが、「塩味が利いている」んですか。これについてはご存知の方、教えて欲しいですぅ。

「塩味の利いたゆで卵」発言に
目が点になりますけれど…
殻ごと食べるから塩味が強い
って訳でもありませんよね。
…ってか、殻は食べないし!(笑)

5 毎日、ランチで食べるものは大体決まっている方ですか。それとも毎日変えようと考える方ですか。

 ジョフォアさん「サラダ以外はよく似たものを食べています」

 *もしかしたら、サラダは貼られた「シール」によっても変わるのかもしれませんね。…なんて言っちゃったら、怒られちゃいますよね、きっと。(汗)

6 公演がある時とない時ではランチの内容を変えますか。

 ジョフォアさん「公演がある日も似たものを食べていますが、普段と異なるのは、一度に詰め込み過ぎてしまわないように、一日中、拡げておいて、食べるようにしていることです」

 *自分の身体に耳を澄ましながら摂る食事、やはり気の使い方は半端ないんですね。

7 いつもどなたと一緒に食べていますか。

 ジョフォアさん「みんなから離れて、上の階にあがって、チャーリーと一緒に食べることが多いです」

8 主にどんなことを話しながら食べていますか。

 ジョフォアさん「一緒には食べるのですが、お互いが食べ終わるのを待って、午後のリハーサルに万全で臨めるように、出来るだけ早く仮眠をとりに行くって感じです。なので、ふたりとも、ランチの間に話すことにはあまり重要性を見出してはいません」

 *おっとぉ、基本的に話したりせず、なんですね。それじゃあ、あくまでもランチは稽古の合間にささっと、って感じですか。舞踊への献身振りが窺える、プロならではのお答えですね。恐れ入りました。m(_ _)m

9 おかずの交換などしたりすることはありますか。

 ジョフォアさん「誰かが枝豆を買って持ってきたような時だけですね。もしも私や彼のおかずに触れることが危険でなければ、私たちは気楽に手を伸ばすかもしれませんけど」

 *画像にある(前日の朝採り)枝豆はチャーリーさんとシェアしたってことですかね。「危険」という語が飛び出すあたり、いかにもユーモラスなジョフォアさんらしいお答えと理解しましたが、まさか、「新型コロナ」関係ってことじゃなくて、ユーモアですよね。「舞踊家のおかずに手を出すな!」って感じですかぁ。(笑)

10 いつもおいしそうなお弁当を作ってくるのは誰ですか。料理上手だと思うメンバーは誰ですか。

 ジョフォアさん「前のシーズンでは、私もチャーリーも毎日、ランチを作っていたのですが、そのときなら、私は、チャーリーが大抵、一番豪華なランチを持ってきていて、他のみんなも「今日彼は何を持ってくるのだろうか」と思っていた、そう言っていたに違いありません。でも、その彼もイトーヨーカドーで「半額」の商品を見つけるに至り、もはや誰もそういうことは思わなくなりました…」

 *イトーヨーカドーの(恐らく、夕方以降の)「破壊力」、恐るべしって、感じですかね。でも、食品廃棄が問題となる昨今、お財布に優しい上に、社会問題にも対処できているのですから、言うことはありませんね。そうしたイトーヨーカドー情報は今後もメンバー間で引き継がれていくものと想像いたします。ジョフォアさん、お忙しいところ、楽しいご回答を有難うございました。

ランチに関するやりとりはここまでですが、冒頭にて触れましたジョフォアさんからのメッセージがございます。次の通りです。

 「サポーターズの皆さまは既にご存知かと思いますが、私はNoismを離れます。私にとって、日本文化と出会い、学べたことは光栄なことであり、素晴らしい機会となりました。私はこれからパートナーのもとに戻ります。それは『幸せな時間』の同義語でもありますが、同時に、私の心はとても重くもあり、こんなに早くカンパニーを離れていくことをとても悲しく感じています」

 「サポーターズの皆さま、私たちの人生をより輝かしいものにしていただき、私たちメンバーと私たちの芸術に対して関心を寄せていただいたことに感謝します。芸術はそれを愛したり、または反対に嫌ったりする人たちがいなければ存在し得ないものです。どうかこれからも関心を持ち続けてください!」

…宮河さん、吉﨑さんと続いた大柄の舞踊家の系譜に連なるジョフォアさん。三者三様ではありながら、前のふたりと同様、その心優しい人柄に加え、今回の取材でも存分に発揮された明るいキャラクターが前面に出ていらっしゃいましたよね。個人的には、昨日、配信された『R.O.O.M.』の公開リハーサルのときの様子やらがとても懐かしく思い起こされます。他にも様々な場面が今も鮮明に浮かんで参ります。

今後は、パートナーのお近くにて、時系列的には「after Noism」となるのでしょうが、「with Noism」たる舞踊を踊り続けてくださることを期待して止みません。ジョフォアさん、ご活躍を確信しております。どうぞお元気で。今回もお相手は shin でした。

(日本語訳+構成:shin)

公開リハーサル2日目、金森さん「今回お見せできてよかった」

2020年6月14日(日)の新潟市はお昼頃から雨。しかし、あまり気温が上がらなかったため、不快感はさほどでもなかったのが救いでした。

そんななか、新潟在住の活動支援会員を対象とした公開リハーサルの2日目です。今日も取材クルーの姿が数多く見られ、前日と併せて、県内全てのテレビ局が大きな機材を抱えて劇場を訪れたように思います。

で、この日の感染予防措置ですが、検温機器の設置場所に前日からの変更点があり、まだまだ手探り状態にあるといった様子で、検温スタッフにとっても、この2日間の全てが「リハーサル」であったり、ある意味、「実証実験」でもあったりするのだろうと理解しました。

前日とは異なる動線の配置
「正常な体温です♪」
検温機器にそう言われない限り、
この先には進めません
この光景、初めての方には物々しく映りますよね
脇道に逸れますが、感染経路を追うためという
趣旨はホテル等の宿帳も同じと聞いています

この日もリハーサル開始時刻が近付くにつれ、静寂が場内を支配するようになり、その静けさがいつまでも続くかと感じられ始めた頃、15時を2分ほどまわっていたでしょうか、これまた音もなく、スルスルと緞帳が上がり、井関さんと山田さんの脚部から、体幹、そして顔が、順に、真横から見るかたちで、私たちの目に入ってきます。ためらうような、たゆたうような、求め合うような、そんなふたり。『Adagio Assai』(仮)です。見惚れるしかないふたり。映像との相互作用も、通り一遍のものではないため、目は舞踊家と映像の行き来を求められるなど、上品な刺激に満ちたものと言えます。緩やかな切なさが印象的な小品です。

そして、ある効果音が聞こえてくると、そのまま『Fratres III』に接続していくのも前日観た通りです。舞台中央奥、登場時点から既に金森さんの目、或いは表情は、「同志」を先導する者のそれにしか見えません。そこから始まる「祈り」と同義でしかないソロと群舞が創出する豊穣な時間。ブレることなく、自らコントロールできることのみに専心する愚直な潔さが観る度に胸を打ちます。

休憩後は、実験舞踊vol.2『春の祭典』。金森さんのこの新作で、ストラヴィンスキーの手になる変拍子や不協和音に合わせて、21の身体を通して可視化される世界は、バーバリズム(野蛮・未開)とは異なる、極めて今日的な主題の体系に収まるものと言えるでしょう。混沌としていながらも、(須長さん制作の椅子に代表されるような)直線的なシンプルさ、或いは明晰さも同居したものであり、照明の果たす役割が印象的な作品と言うに止めておきます。

全て終わった後、この日も「ブラボー!」の掛け声が飛ぶなど、目にした舞台が、もはや「公開リハーサル」の範疇で語られるものではないことは誰しもが共通して感じていた事柄に過ぎません。ただ、舞台両袖に様々な道具や資材の類いが隠されることなく、全て顕しにされていたことのみが、これが「リハーサル」であることを思い出させるくらいだった筈です。

最後の挨拶。この日の金森さんは笑顔で話されました。「ほとんど本番。今まで仕上ったもので、最上のものであり、何の出し惜しみもありません」と。更に続けて、「今、ここに彼らがいて、皆さんがいて、今、この日の実演を彼らがやって、今、この瞬間が非常に貴重だということです。この困難な社会を生きていくうえで、一助になれれば嬉しい。これからも精進していきます」とも。

金森さんがそう語り、一通り、挨拶も終わった感が伝わってきた頃合いで、金森さんの後方、一列に並んだ舞踊家たちの列の中央、井関さんがしきりに隣のジョフォアさんの腕を掴んで、前に押すような仕草を見せています。

そのタイミングで、金森さんが、「ジョフ(ジョフォア・ポプラヴスキーさん)は今シーズンで終わり。8月から、次のカンパニーが始まるので、7月で(Noismを)離れなきゃいけない」と告げるではないですか!「他にもいるんだけど…」と「悲報」の多くは語られなかったものの、ジョフォアさんについては、「今回お見せできてよかった」と言い、8月のプレビュー公演には出演しないことが明らかになりました。(涙)

前日とこの日、『春の祭典』の冒頭、ジョフォアさんの登場場面、大柄の体躯を小さく折りたたむことで表出された「可愛らしさ」が個人的にはツボだっただけに何ともショックな報せでした。

でも、彼がNoismのDNAとでも言うべきものを次なる場所に拡散してくれて、異なる場所にいるNoismファミリーとして踊り続けてくれることを期待したいと思います。そして、この先も長く、新潟のことを覚えていてくれたら嬉しいです。いつまでもみんなで応援していきましょう。

さて、実演は一旦終了ですが、今週の金曜日(6/19)にはシビウ国際演劇祭2020 online special edition にて、Noism1の『R.O.O.M.』がオンラインで配信されます。奇しくも、「実験舞踊」繋がりでもあり、あの野心作、久し振りに堪能したいと思います。配信はライヴ配信のみで、朝4;20からと、夕刻16:20からとのこと。詳しくはこちら、Noism Web Siteをご覧ください。

(shin)

渾身!熱い思いで実現した活動支援会員対象 公開リハーサル初日

数日前に梅雨入りが報じられましたが、この日も新潟市に雨はありません。2020年6月13日(土)の新潟りゅーとぴあ・劇場、年頭からのコロナ禍に延期に次ぐ延期を余儀なくされ続けたNoismの舞台にまみえる機会を、全国の、否、世界中のファンに先駆けて手にし得た果報者は、Noism Company Niigataの「ホーム」新潟に住む活動支援会員、およそ50名。更には、開場前からメディア各社も集結しており、「劇場再開」への関心の高さが窺えました。

待ちに待った案内…

沸き立つ心を抑えつつ、足を踏み入れたりゅーとぴあの館内で私たちを待っていたのは、長い空白の果てに漸く、この日を迎た劇場の「華やぎ」ではなく、「With Corona」時代の劇場が直面する「物々しさ」の方だったと言えるかもしれません。

館内に入ると先ず
サーモグラフィーカメラで検温
この後、劇場前に並びます
距離をとって2列に並んだ先、
劇場入り口手前はこんな感じ
6つの「お願い」近景
入場直前に再度の検温

列に並んでいる間、りゅーとぴあの仁多見支配人をお見かけしたので、ご挨拶した後、少しお話する機会を持ったのですが、すぐに検温スタッフが飛んできて、もう少し距離をとるように注意されたような次第です。

入場受付スタッフは当然、衝立の向こう
ホワイエには連絡先記入用紙も
受付時に座席指定がありました

漸く迎えたこの日、久方ぶりに集う見知った顔、顔、顔ではありましたが、それ以上に「重々しさ」が漂うホワイエは、私たちに今がどんな時なのかを決して忘れさせてくれませんでした。

公開リハ開始15分前、促されて劇場内の指定された席へ進みます。すると、この日の席は一列おきのうえ、両横が3つずつ空けられて配され、そのため、中央ブロックは各列4人、脇のブロックは1人ないし2人しかいないというこれまで見たこともない光景を目にすることになり、その裏に、この日を迎えるための厳しいレベルでの安全管理意識の徹底振りにハッとさせられたものです。

15:00。客電が落ちてからは、そうした時間とはまったく異なる別の時間が流れました。最初はNoism0・井関さんと山田さんの『Adagio Assai』(仮)です。緞帳が上がると向かい合うふたり。無音。不動を経て、動き出すと、次いで流れるモーリス・ラヴェルのピアノ協奏曲、その第二楽章、そして映像。熟練のふたりによる「とてもゆっくり」流れる豊かな時間。『春の祭典』ポスターが舞踊家たちの足を捉えているのと対照的に、今作ではふたりの手に目を奪われます。

15:13頃。浸って見つめていると、緞帳は下りぬままに、次の演目であるNoism0 + Noism1『Fratres III』にそのまま移行しました。ですから、Noism0と言っても、井関さんと山田さんは不在で、金森さん+Noism1(併せて12名)とでも言った方がよい感じでしょうか。で、この完結版とも言える『Fratres III』ですが、いつかの折に、金森さんが「I 足す II が III」と言っていた通りの構成で、その言葉からの想像は当たっていましたが、実際、目にしてみると、これがまた圧巻。鬼気迫る金森さん、一糸乱れぬNoism1ダンサー。それはまさに「1+2=3」以上の深みと高揚感。圧倒的な崇高さが目を釘付けにします。「そうなる訳ね。ヤラレタ」と。更に、どうしても「コロナ禍の舞踊家」というイメージが被さってきましたし、「これを目にする者はみな勇気づけられるだろう。慰撫されることだろう」と、まさに今観るべき舞台との思いを強くした15分弱でした。

休憩を挟んで、今度はNoism0 + Noism1 + Noism2による実験舞踊vol.2『春の祭典』。ホワイエから戻り、自席から目を上げると、緞帳の前、横一列に綺麗に並べられた21脚の椅子。舞踊家にはそれぞれ別々の楽器が割り振られているとの前情報から、背もたれを構成する横に走る黒い5本の線が21脚分、一続きになって並ぶ、この冒頭部においては、何やら五線譜を想像させたりもしますが、須長檀さんによるこの一見、無機質に映る椅子は、この後やはり、様々に用いられ、様々な表情を示すことになります。

作品に関してですが、私自身、先行する『春の祭典』諸作について深く知るものではありませんので、次のように言うのも少し躊躇われますが、ストラヴィンスキーのあの強烈な音楽に導かれると、畢竟、情動的なものへの傾向が強くならざるを得ないのだろうと、そんな印象を抱いていました。それが金森さんの新作では、情動のみならず、理知的なコントロールが利いていて、つまりはスタイリッシュな印象で見終え、私たちの時代の『春の祭典』が誕生したとの思いを強く持ちました。また、この作品、若い西澤真耶さんが大きくフィーチャーされていることは書いておいても差し支えないでしょう。準主役の立ち位置で素晴らしいダンスを見せてくれます。ご期待ください。

ネタバレを避けようということで書いてきましたから、隔靴掻痒たる思いも強いことかと思われますが、ご了承ください。今回、公開リハーサルとしながらも、休憩を挟んで、見せて貰った大小3つの作品は、どれひとつ取っても、大きな感動が約束されたものばかりだと言い切りましょう。『春の祭典』の終わりには、「ブラボー!」の掛け声がかかり、会場の雰囲気はリハーサルとは思えないようなものであったことを書き記しておきたいと思います。

また、こちら過去の記事4つ(いずれも「Noismかく語る・2020春」)ですが、併せて御再読頂けたらと思います。

最後、客席から黒いマスク姿の金森さんが登壇し、挨拶をした場面について触れない訳には参りません。

舞台上、熱演した舞踊家たちに、”You guys can take a rest.(さがって休んで)”と指示を出した後、「本当は昨日が初日だったんですけど、…」と語り始めた金森さん、そこで声を詰まらせ、続く言葉が出て来ません。そのまま後ろ向きになると、私たちの目には、必死に涙を堪えようと震える背中が、そして私たちの耳には、その手に握られたマイクが拾った嗚咽が。瞬間、客席にもこみ上げる熱い思いと涙が伝播します。やがて、「…ご免なさい。こんな筈じゃなかったんだけど。言うことも考えていたし…。」と言った後、続けてキッパリと言い切ったのは「これが今の我々に出来るベストです。我々にとっての本番です」の言葉。「出来る限りを続けていきます」とも。

更に、「今出来る限りをやりたいということで、スタッフにも演出家のワガママに付き合って貰いました」と、リハーサルらしからぬリハーサルが実現した舞台裏を明かしながら、スタッフに向けられた感謝の言。そこに溢れる、この日に賭ける並々ならぬ思いに心打たれなかった者はひとりもいなかった筈です。

いつ果てるとも知れない、暗く長いトンネル。未だ「抜け出した」とは言えないような日々。不安で不自由な環境の中にあってさえ、共有されていたNoismというカンパニーの鍛錬に纏わる揺るぎない精神性。同じものを見詰める「同志」たる舞踊家たち。その凄さを垣間見せることになったのが、この日の公開リハーサルだったと思います。

終演後は、大きな感動に包まれながらも、場内放送で、後方の席から順番の退場を指示されるなど、私たちの周囲にある「現実」に引き戻された訳ですが、そうした「現実」があるのなら、勿論、「生活」だけでは満たされ得ず、真に「生きる」ために、こうした優れた「芸術」や「文化」が必要であることが身に染みて感じられたような次第です。裏返せば、それこそ、私たちが「Noismロス」にもなる理由です。(長い文章になってしまったのも、ここまでの長い「Noismロス」の故とご容赦ください。)今回、ご覧になれない方々、次の機会まで今暫くお待ちください。今度のNoismも、必ずその辛抱に応えてくれますから。

この日、確かに、Noismの歴史がまたひとつ刻まれたと言っても過言ではないと思います。それを目撃し得たことの、否、ともにその時間を過ごし得たことの喜びに、今、浸っています。

(shin)