『新潟はシュツットガルトになるか?』再掲載

2026年5月29日、りゅーとぴあ公式サイト「RYUTOPIA Log」に掲載された『新潟はシュツットガルトになるか?』は、その後閲覧できない状態となりました。
本記事について執筆者に確認したところ、本文の再掲載のご了解をいただきました。掲載にあたっては関係各所へ連絡を行っています。

本稿は、Noism Company Niigataをめぐる2026年当時の状況や、それに向き合った一職員の思考を伝える記録の一つとして、後日の参照に資することを目的に掲載するものです。
その目的から、写真等を除き、執筆された原文のまま掲載します。
以下、本文です。

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新潟はシュツットガルトになるか?

シュツットガルトとは何か

「新潟はシュツットガルトになるか?」これは、批評家の三浦雅士さんがNoism CompanyNiigataの20周年記念冊子に公演の評をご寄稿いただいた際につけられたタイトルです。

『ジョン‧クランコ バレエの革命児』

先日、新潟‧市民映画館「シネ‧ウインド」で上映中の『ジョン‧クランコ バレエの革命児』を見てきました。来週(2026年6月5日)まで上映予定ですのでみなさまもぜひご覧ください。

ジョン‧クランコはドイツの地方都市、シュツットガルトのバレエ団を世界有数のバレエ団に育て、『ロミオとジュリエット』『オネーギン』『じゃじゃ馬馴らし』といった数々の名作を生み出した振付家です。映画では、クランコが小さなカンパニーに居場所を見つけ、カンパニーの中で劇場支配人、ダンサー、スタッフはじめ、様々な人々とぶつかりあい、傷つけあいながら、芸術家として情熱と信念を持って、「シュツットガルトの奇跡」と呼ばれる成功を収める様子が描かれていました。

また、映画では触れられていませんが、ジョン‧ノイマイヤー、イリ‧キリアン、ウィリアム‧フォーサイス、そしてウヴェ‧ショルツといった大物振付家たちが、クランコの影響を受け、このシュツットガルト‧バレエ団から巣立っていきました。

私がクランコの作品で最初に出会ったのは『ロミオとジュリエット』。映画の中でもロミオの友人であるマキューシオの死、ロミオとジュリエットのバルコニーのシーンの振付が描かれていましたが、それは「人間とは何か」「生きるとは何か」を問いかけ、生き急ぐ若者の愚かさ、切なさを見事に描いています。その劇的で、美しい作品は、クランコが亡くなった今も世界中のバレエ団で上演されています。

シュツットガルトは20世紀バレエにおいて、新潟は21世紀バレエにおいて

三浦雅士さんは、金森穣の『かぐや姫』とNoism20周年記念公演「Amomentof」での2作品を物語バレエと抽象バレエの新展開になっていると評しつつ、寄稿文の最後をこのように結んでいます。「シュツットガルトは20世紀バレエにおいて燦然と輝いている。いずれ新潟が21世紀バレエにおいて燦然と輝くことになるだろうと、私は信じている。」

この寄稿文をいただいてから2年。りゅーとぴあの劇場専属舞踊団‧Noism Company Niigataは存続の岐路にいます。『ジョン‧クランコ バレエの革命児』の上映も現在のNoismの状況を憂い、Noismを応援するために、シネ‧ウインドのみなさんが企画してくださいました。

Noismとしても、コロナ禍や国際情勢の関係でなかなか実現できなかった6年ぶりの海外公演で成功を収め、金森穣の次世代の振付家の育成にも取り組み、その萌芽が見え始めている最中での現在の状況。新潟はシュツットガルトのように奇跡を起こせるのか、起こせないのか。新潟が、りゅーとぴあがNoismを失くしてしまうというのはどういうことなのか。あらためて、みなさまとともに考えていければと思います。

この記事を書いた人 施設・利用課 B

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本文、以上です。

(NoismサポーターズUnofficial事務局一同)

「ランチのNoism」#25:松永樹志さんの巻

メール取材日:2026/05/23(Sat.)&06/05(Fri.)

NHK総合でやっていた中井貴一さんの「本家」(『サラメシ』)は既に終わってしまっていますから、こちらも終わったんじゃないの、そんなふうに思ってる方もおられたかもですが、こちらはまだまだやりますよ。やります、ハイ(キッパリ)。Noismの稽古場にお昼が来る限り。

17ヶ月振りの「ランチのNoism」、その第25回は松永樹志さんご登場。それではいきますよ。「レッツら ゴー!」、あっ、これでは田中美佐子さんの『にっぽん縦断 こころ旅』になってしまいますね。やり直します。

♫ふぁいてぃん・ぴーす・あん・ろけんろぉぉぉ…♪

今月末に控える『私は海をだきしめていたい』+改訂版『春の祭典』の稽古に余念がないスタジオBに昼がきた!「ランチのNoism」!(より正確を期すならば、「黒部シアター」を挟んでのメール取材でしたけれど、これをお届けする今にあわせて、ってことで…。)

*先ずはランチのお写真からです。

松永さんと隣には与儀直希さん、見惚れてまうやないかい。

*笑顔の素敵な写真ですね。って、違う、違う。ここで欲しいのはランチ画像ですから!
なので寄ってみますね。で、ズンッ

で、ズンッ!
寄りましたが、ボケてしまってます…(汗)

1 今日のランチを簡単に説明してください。

 松永さん「白米にふりかけをかけたものです」

 *そうですよね、ふりかけご飯。そこはわかりましたが、おふたりの立ち姿に持って行かれちゃって、その詳細が未だ謎です。
 -この日はどんなふりかけだったのですか。

 松永さん「『しらすとわかめ』のふりかけでした」

 -「男メシ」って感じのタッパー入りご飯ですけれど、ご飯の量はいつも同じですか。見た目、大体、一合ってところでしょうか。

 松永さん「いつも同じで、大体一合です」

 *若いし、動きますものね。うん、うん。
 -ランチのとき、どんな飲み物をあわせていますか。

 松永さん「飲み物は水で、日常でもほぼ水です」

 *なんとも男前なお答えですね、知らんけど(笑)。
  で、次の質問は果たして質問たり得るのか、かな~り疑問な気持ちもありますが、訊くほかないので訊きます。

2 誰が作りましたか。普通、作るのにどれくらい時間をかけていますか

 松永さん「自分で作りました。タッパーによそうだけなので10秒です」

 *ビシッときましたね、ホントにビシッと。はい、10秒。 もうスピーディーですね。

3 ランチでいつも重視しているのはどんなことですか

 松永さん「すぐに食べられることです」

 *でも、こちらはさすがに10秒ではないですよね。そのあたりも訊いちゃいますか、念のため。
 -食べるのは速い方ですか。ゆっくり食べようとする方ですか。

 松永さん「どちらかというとゆっくりペースだと思います」

 *想定外!それ、想定外ですって、松永さん(笑)! てっきり「秒で」食べてしまうのかと思いきや。でも、「早食い」は身体に良くはないですから、そこは気を遣っているってことですかね。納得することに致します。

4 「これだけは外せない」というこだわりの品はありますか

 松永さん「ふりかけはマストです」

 *はい、はい、そのお答えは誰しも充分に想定内かと。いや、想定内過ぎるかもしれませんね。
で、別の日のお弁当画像もおねだりしちゃいましたが、やはり。

「この日はわかめでした」(松永さん)とのことです。

 -どんな「ふりかけ」がお好きですか。ベスト3を教えてください。

 松永さん「1位 わかめごま油、 2位 しらすとわかめ、 3位 鮭です」

 松永チョイスの栄えある第1位、わかめごま油ふりかけ、一度試してみたい気持ちになりました。探してみます。で、取材日の画像は2位のふりかけご飯だったと。了解です。
 -ふりかけは何種類くらい常備されているのですか。

 松永さん「ストックが2種類くらいあります」

 -「今日は〇〇だから、これをかけていこう」みたいなゲン担ぎ風なことってあったりしますか。

 松永さん「特にないです(笑)。 そのとき使っているものがなくなったら次の味にいきます」

 *なるほど、迷う余地なし。食べ切ってから次を買うのですね。な~る。

5 毎日、ランチで食べるものは大体決まっている方ですか。それとも毎日変えようと考える方ですか。

 松永さん「毎日同じです」

 *うん、潔し!
 -ご飯の量を変えたりすることもないのですか。

 松永さん「変えることはないです」

 *不動心!

6 公演がある時とない時ではランチの内容を変えますか。どう変えますか。

 松永さん「同じです」

 *1ミリもブレることなし。ここまでの流れからそうじゃないかと思ってましたけど…。
 -ではでは、じゃあじゃあ、「ホーム」新潟を離れての公演時だと、どんなランチになりますか。どこで買いますか。よく買ったりするものなどありますか。ちょっとそれら教えてくださいな。

 松永さん「近くのスーパーでおにぎり二つ(いつも鮭と高菜)とサラダチキンが毎回のメニューです」

 *買う品もいつも決まってるんだ。参りました、もう降参です(笑)。orz

7 いつもどなたと一緒に食べていますか。

 松永さん「隣にアリサ(=春木有紗さん)とナオキ(=与儀直希さん)がいることが多いです」

 *最初の画像で与儀さんと写ってましたけれど、そうすると、撮ったのは春木さんですかね、そんなふうに思ってます。

8 主にどんなことを話しながら食べていますか。

 松永さん「アリサの実家の愛犬の話や、ナオキの歯医者に行く話などを聞かされます」

 *「聞かされます」? 意味深な言い回しですねぇ。ちょっとだけ深掘りさせてください。
 -先ず、春木さんがご実家で飼われているのはどんな犬種の犬ですか。で、松永さんは犬はお好きですか。「犬派」ですか、「猫派」ですか。

 松永さん「トイプードルです。犬は好きで断然犬派です」

 *私も「犬派」です。って、それどうでもいいか。
 -で、次ですが、与儀さんの歯医者のお話、とても気になります。差支えない範囲で、どんな内容だったりするのですか。

 松永さん「定期検診だったようです(笑)」

 *直近のネタが印象深く語られたのですね、定期健診。「(笑)」まで付いてるし。
 -続けて、「意味深」ポイント、「聞かされます」についてです。春木さんと与儀さんおふたりが(勝手に)「最新情報」を「報告」してくる感じなのでしょうか。

 松永さん「ただただ情報を報告してくるような感じです」

 -そうですか。そうすると、松永さんの方から話題をふることはされないのですか。もしあるとしたら、どんな話ですか。差支えない範囲で教えてください。

 松永さん「あまりないのですが、たまに姪っ子の写真や動画を2人に見せつけます」

 *おお、姪っ子さん! 可愛いのでしょうね。伝わってきます。うん、きます、きます。

9 おかずの交換などしたりすることはありますか。誰とどんなものを交換しますか
(…果たして「交換」が成り立つかどうかという根本的な問題はありますが、一応、みなさんに訊くことにしているもので…(汗)。)

 松永さん「おかずはありません」

 *はい、そうでした。知っていました(笑)。

10 いつもおいしそうなお弁当を作ってくるのは誰ですか。料理上手だと思うメンバーは誰ですか。

 松永さん「他のメンバーの弁当を見ることがあまりなく。でも、料理上手はヒカルくん(=坪田光さん)です」

 -坪田さんはお料理好きで、上手なようですね。前回も坪田さんの名があがってましたよね。
 *ランチでもそれ以外でも、坪田さんが作ったお料理で印象に残っているものについて教えてください。

 松永さん「モンブランを作ってきてくれたことがあって、それがとても美味しかったです」

 *おお、至福の「白い山」モンブラン! 栗のペーストを糸状に紡ぐアレ、ホント手の込んだスイーツですよね。聞くだけで美味しそうです。
 -他にもありますか、坪田さんが作ったお料理を食べられたこと。ご感想も聞かせてください。

 松永さん「モンブランの他に、ヒカルくんが作った豚汁がとても美味しかったです」

 *豚汁! 間違いないですね。特に大勢で食べるのに適した汁物の代表選手かと。で、みんな一様に幸せな顔になってしまう魔法の汁物。ああっ、既に唐辛子を振って今すぐにも食べたくなってしまってます。
 色々訊いちゃいましたね。どうも有難うございました。

 最後はいつも通り、松永さんから頂いたメッセージです。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「いつもNoismのサポート、応援本当にありがとうございます!
これからもたくさんのエネルギーをお届けできるよう頑張ります!」

月末から始まる公演に向けて集中を高めているなか、丁寧なご対応を頂いたことに感謝致します。松永さん、どうもご馳走さまでした。

「ランチのNoism」第25回もここまでです。今回もお相手はshinでした。次回もありますよ、近々。どうぞお楽しみに♪

(shin)


 

 



狂える集団に対峙する「正気」という狂気(「黒部シアター春2026」2日目)(サポーター 公演感想)

富山県黒部市前沢ガーデン「黒部シアター」でのNoism野外公演も、4年目となった。5月30・31日の『春の祭典』は、両日とも魚津市に宿泊のうえ鑑賞した。31日は歌舞伎観劇時にもお会いする方始め関東からのNoism応援勢の方々に同行し、扇状地の高低差を活用した「釈泉寺円筒分水槽」「東山円筒分水槽」や、滑川港からの富山湾クルーズなど富山の自然と地形を浴びてから、二日目の鑑賞に臨んだ。夕刻となって雲ひとつ無い快晴となった前沢ガーデン。16時頃入場整理券待ちをしていると、ガーデンハウス玄関に現れた金森穣さんに手を振っていただき、「これから御大が来られるんだよ」と教えられる。金森さんが師と仰ぐSCOT鈴木忠志氏と団員の皆さん、前沢ガーデンハウスを所有するYKKの方々、『鬼』や『still / speed / silence』などの金森作品の音楽を手がけた原田敬子さんをお見かけしつつ、盛夏を思わせる暑さの中で開演を待った。


19時定刻、円形劇場に能を思わせる摺足で井関佐和子さんが音も無く現れてからの、序曲『Zodiac 1~5』のNoism的なる支配と被支配の黒い喜劇と人形振り、間髪入れずに始まる『春の祭典』の圧倒的な狂える美に至る50分間。新潟での6月末からの改訂版『春の祭典』公演を控えるため核心には触れないが、コロナ禍中に創作された金森版『春の祭典』初演・再演時にあった人間たちの狂騒さえ呑み込む人智を超えた存在への「畏れ」は、本作では全く異なる「人の集団」そのものや、今の世界を覆う全体主義・ファシズム・国家という暴力装置への「恐れ」と「抵抗」の物語として、力強い変容を遂げたように思える。狂える集団の同調圧力の中で、「正気を保つ」ことこそ「狂気」ととられることを体現するような井関佐和子さんの裂帛の気合こもる舞踊は勿論、初演時に井関さんが演じたパート含め表情豊かに舞台を駆ける現Noismメンバーの躍進に幾度も涙が溢れた。太田菜月さん演じる「生贄」が取る行動の残酷さ・脆さ・狂気こそ、私たちが生きる人間社会の酷薄なる象徴であり、それでも尚孤立を恐れずに「個の自由」の為に舞うかのような井関さんの凄烈なる表情に打ちのめされた。
前沢ガーデン野外劇場でしか実現できない終幕の、神がかり的な自然と照明が織りなす背筋が凍るほどの美含め、ここまでの彼岸に観る者を運ぶNoismという「集団」が持つ、肯定的な意味での「狂気」と「献身」にも思いを馳せずにはいられなかった。
6月末からの改訂版『春の祭典』で、また私たち観客の想像を遥かに超えたものを金森さんとメンバーが届けてくれるだろう予感に震えつつ、美しい満月に照らされた前沢ガーデンを後にした。

久志田渉(「月刊ウインド」編集部)

「黒部シアター春2026」、圧倒的な舞台に酔いしれた小一時間(2026/05/30)

5月というのに、季節外れの「夏」を思わせるような陽光降り注ぐ2026年5月30日(土)、その宵の「黒部シアター2026」前沢ガーデン屋外ステージで上演される『Zodiac 1~5』+改訂版『春の祭典』を観るために、朝、高速に乗って新潟市から富山県を目指しました。それは本当にカーエアコンが有難いドライヴでした。

この前沢ガーデン屋外ステージでのNoism Company Niigataは、これまで『セレネ、あるいはマレビトの歌』(2023)、『セレネ、あるいは黄昏の歌』(2024)、そして『めまい-死者の中から』(2025)と観続けてきていましたから、ここが他と違う特別な舞台であることは予め充分に知っており、そのワクワク感には半端ないものがありました。

また、今回は、悪天候や日没後の低気温に嬲られる心配もなさそうと思える予報が出ていたことで、初めて軽装備での現地入りが出来ました。

先ずはチケット片手に前沢ガーデンの総合受付に行き、16:30からの「整理番号」配布に臨みました。この日の配布は予定を少し早めて、16:20頃から始まったでしょうか。手にした「整理番号」は8番・9番。車を宮野運動公園駐車場に置いてから17:15発の(無料)シャトルバスで再び前沢ガーデンに向かいました。

そしてガーデンハウス内でサポーターズ仲間と合流して話をして過ごしていると、金森さんが通りかかったので、みんなで手を振ると、笑顔で手を振り返してくださいました。その後、金森さんは、今回の公演で登場する椅子をデザインした須永檀さんと話しておられました。(下の画像の1枚に写り込む金森さんと須永さん、わかりますか。)

整列時間(18:40)が近付き、見事な芝の斜面へ。空には移ろい表情を変える雲、そしてこれから向かう屋外ステージの方向にはうっすら茜色。このランドスケープに趣を添えてくれていて、この日の特別感は弥(いや)増す一方です。

是非とも座りたかった最前列に腰をかけて、開演を待ちます。円形舞台上に12客の椅子、12人の出演者、「Zodiac(黄道十二宮)」、…。これに先立つ公開リハーサルを見ていない者に降り注ぐ様々な「12」たち。そのときです。「あっ!」「えっ?」、その目に飛び込んできた「13?」。それは円形の舞台奥、等間隔に立てられた細い金属のトーチとそこに揺れる炎でした。確かに13本です、何度数えても、それだけ13。「えっ?」そんな疑問を抱えつつ…。

客席の誰もが、屋外にて、「自然」の掌(たなごころ)の中にあり、「人為」を離れた感覚にあったのでしょう。18:59が19:00になっていたことに気付くことのないまま、未だざわつきやガサゴソが残るなか、「自然」の連続性に、不連続な時間という「人為」が重ね書きされ、定刻19:00、井関さんが下手(しもて)側からゆっくりゆっくり舞台上に歩を進めてきます。開演のベルはありません。やや遅れてその姿に気付いた客席は静まり返っていきます。しかし、そこは「自然」の屋外、夕暮れに烏でしょうか、微かに鳴く声などは時を選びませんし、舞台を照らす足許すぐ脇の照明に集まってきては自ら身を焦がしてしまう虫たちのにおいもあります。そんななか、やはり刻々暗さを増していく「自然」の「照明」には有無を言わせないものがあります。やはり特別な舞台なのです。

この日、私にとって、初めてにして、最後(?)の『Zodiac 1~5』。5月30日ですから「双子座」にあたるこの日に観た「山羊座」「水瓶座」「魚座」「牡羊座」、そして「牡牛座」。(天文についても、ギリシャ神話についても、)浅学ですので、ただ見詰めるのみでしたが、様々な要素が盛り込まれた導入部は、私にとって「この日限り」でしたので、見逃してはならぬとやや落ち着きなく観ていたように思います。金森さんの懐の深さに圧倒されながら、もっと深い見方が出来るように、もっと色々知りたいという気持ちになりました。そしてそれは金森さんが生み出す作品の大きな魅力のひとつであることは間違いないことです。極めて良質な刺激に満ちている訳です。

そして舞台はそのまま、改訂版の『春の祭典』に移行していきます。公開リハーサルをご覧になったfullmoonさんが書いておられたように、今回の『春の祭典』は、テーマは変わらずとも、これまでのものとかなり異なっており、更に表現が磨かれ、彫琢が施された感が強くするものに仕上がっています。しかしながら、私たちには、どこからどこまでが「黒部シアター仕様」なのかはわかりませんし、6月~7月の公演時には、また違ったものが観られることでしょう。実に贅沢なことと言えます。

しかし、何を措いても、この日、私が感じたことは、「自然」と「人為」に尽きます。「黒部シアター」で上演される金森さんの作品にあっては、「獣性」が迸る瞬間が強く印象に残り、裏返せば、その点で、「聖性」も立ち上がってくる構造があると言えるかと思いますが、この日、前沢ガーデンの屋外円形ステージという、まさに「自然」と「人為」がせめぎ合う、或いは拮抗する舞台において、私には「獣性」と「聖性」とが1ミリも相反せず、同居するのが「自然」、それを二分せずにはいられないのが「人為」という感覚に強烈に襲われたのでした。

金森さんの演出振付のもと、12人の舞踊家が示した舞踊への発火せんばかりの献身。その周囲に圧倒的な趣で目に飛び込んでくるランドスケープ。目撃したのは「人為」と「自然」が高い次元で両立し得た小一時間。どちらも本物ゆえ、見詰める私たちの身体も熱を帯びてくるばかりです。更にストラヴィンスキーの楽曲にも煽られている訳ですし、熱くならない訳がありません。そう、この体感、これも本物としか言えません。

この『春の祭典』、「黒部シアター仕様」のラストシーンについては、恐らく誰もが想像する通りのものであるでしょうが、その味わい深さには想像を絶するものがあります。これこそ観る他にないもの、観る価値があるものと断言致します。見詰める誰にとっても、至福以外の何物でもない「とき」が訪れることでしょう。

「自然」の照明は既になく、「人為」の照明が残るなか、大いに満たされた気持ちで振り返り振り返りつつ、バスに乗ろうと歩を進めていたとき、煌めく綺麗な星は見ましたが、「セレネ」の舞台であったというのに、その場で月を確認しなかったのは不覚でした。
この日はほぼ満月の「小望月(こもちづき)」という月らしく、後刻、新潟へ帰る高速道路のサービスエリアで遅まきながら見上げました。で、正真正銘の「満月」は5月31日とのこと。更に、更に、それ、調べてみると、「ブルームーン」といって、2~3年に一度しかない、一ヶ月のなかで2度目に見られる「満月」とのこと!で、その「ブルー」というのは、色のことではなく、英語の慣用句「Once in a blue moon(極めて稀なこと、ごく稀に)」に由来するもので、「滅多に見られない特別な満月」らしいです。「金森さん、やはり凄い!」としか。

あっ、ここに至って、蛇足をひとつだけ。上に書いたまま放置していた等間隔に立てられた炎揺らめく「13本」のトーチですが、なるほど、見方を変えると、「13」はそのままで「12」でもあったのだと気付くことになり、「さすが、金森さん!」と膝を打ったような次第です。
何を言っているのかって?はい、上演後、促されて舞台に立った金森さんの「(5/31は)まだ当日券はあるそうです。わかりにくいと言われる金森作品ですが、2回観るとわかるらしいです」との挨拶に繋げて、この日のレポートの締め括りとさせて貰います。
今宵、「ブルームーン」の満月のもと、前沢ガーデン屋外ステージにて、こちらも極めて稀なものと言えるNoism Company Niigataの舞台を是非ご堪能ください♪

(shin)

まさに我が意を得たり♪新潟日報紙5/27朝刊「日報抄」!

今週末、恒例となった富山の「黒部シアター」に招かれての『春の祭典』上演を控えるNoism Company Niigata。その「ホーム」新潟で、地元紙・新潟日報紙が2026年5月27日の朝刊「日報抄」にて、金森さんとNoismが新潟市で刻んで来た20年以上の時間について取り上げてくれました。新潟日報さん、有難うございます♪

朝早く、友人がLINEで知らせてくれて、先ずは急ぎデジタル版で確認、その後、紙面で再確認したような次第です。そして思った「我が意を得たり」、まさに♪

デジタル版はこちらからもどうぞ

冒頭、先日の東京バレエ団『かぐや姫』から始まり、来年のフランスはパリ・オペラ座での公演予定について触れられ、金森さんが「振付家として稀有な存在」であるとするバレエ関係者の言葉が引かれています。なんと誇らしいことでしょう♪とりわけ新潟市民にとって。まさにシビックプライドな訳です。

しかし、次の段落に入ると、そこから一転し、「新レジデンシャル制度」のもと、「後任次第で、ノイズムは新潟市での活動を終える可能性が高い」ことが紹介されます。

この度の「日報抄」、これまで、連載も挟んで、昨年末の金森さんの「退任意向」を報じて以来、精力的に記事を載せてきた新潟日報紙が、改めて新潟市民に向けて発した問いかけ、或いは問題提起の様相を帯びて締め括られていきます。ノイズムを「市が20年以上かけて育てた文化的財産」とし、「その実像を足元の市民が広く理解しないまま、手放すことになってもいいのだろうか」と。

恐らく、今週末には富山の観客を魅了し尽くすことに間違いはありませんし、来年には、国境を越えて、フランスの観客も度肝を抜かれることになるでしょう。しかるに、「足元の市民」は?その「理解」は?

嘆かわしいことに、日本初にして日本唯一の公共劇場専属舞踊団の「実像」を理解するための機会も既に限られている状況にあります。黒部まで赴ける方は今週末、万難を排して是非!それが叶わない方は来月末の『私は海をだきしめていたい』+改訂版『春の祭典』公演(新潟・埼玉)に駆け付けて、改めてNoismの舞踊を目撃してください。そして、自分の目で他に類のない「実像」を確かめて欲しいものです。

私はNoismを抱きしめていたい、です。

(shin)

個と社会の相克を描く、圧倒的な完成度(『春の祭典』5/23公開リハーサル)(サポーター レポート)

来週末5月30日、31日の富山県黒部市「黒部シアター2026春」に向けたNoism活動支援会員向けの『春の祭典』公開リハーサル。昨日に加えて、急きょ本日のスタジオBでのリハが追加開催され、約20名の会員が集まった。


いつに増して緊張が空間に漲るスタジオB。12時定刻、芸術総監督・金森穣さんのいつもの「はい、始めましょうか」の合図で、井関佐和子さんが能を思わせる摺り足で歩み始めてから、約50分間、息つく間もないほどの勢いで展開される音と心体の共振。昨日のリハーサルレポートでfullmoonさんが詳述された黒部公演のみの新作『ゾディアック』は、冒頭の摺り足始め、人形振り、支配と被支配などNoismが22年間表現してきたエッセンスが凝縮しており、様々に舞台の記憶が脳裏を駆け巡る。そして、この鮮やかな序曲を経ての改訂版『春の祭典』はその到達した高みに涙を禁じ得ないほどの仕上がりだった。詳細は黒部、そして6月末からの公演で確かめていただきたいが、新型コロナ禍の苦しみの中で創作され、個と社会の相克とそれをも凌駕する人智を超えたものに打ちのめされた初演・再演を超えて、金森さんは12名の舞踊家の心体による渾身、12脚の椅子、そしてストラヴィンスキーの楽曲の力を駆使して、人は本当に「自由」を希求し得るのか、異端を排するものとは誰なのかを冷徹なまでに突きつけてくる。終盤の改編には、息を呑み、鮮やかな終幕には打ちのめされた。

リハーサル後、金森さんは「これだけの仕上がりになっています。舞踊家たちは身を削って、ここまでに達しています。これもこの恵まれた環境あってのこと。そして、それも後一年」「バイトの合間に集まって練習していては、ここまでのレベルには届かない。比べてお見せしたいくらいだけど」と、Noismが置かれた苦境を踏まえつつ語った。
公演後、あまりの興奮にりゅーとぴあ屋上庭園で一服していると、「お疲れさまです!」と井関佐和子さんが声を掛けてくださった。二日続けての公開リハーサルだった為お疲れとのことだったが、改訂版に至るまでの初演・再演時の記憶含めて、お話することが出来た。コロナ禍中の初演時の公開リハーサルで、金森さんが見せた涙を思い返しつつ、この舞踊団が新潟で続けてきた「献身」は決して失われないし、その為に何が出来るかを、改めて思わされた。まずは来週末の黒部公演に心して臨みたい。

久志田渉(「月刊ウインド編集部」)

黒部シアター2026春『春の祭典』活動支援会員向け公開リハーサルに行ってきました!

5月22日(金)肌寒く雨が降る中、りゅーとぴあ〈劇場〉で、活動支援会員オンリーの公開リハーサルが行われました! メディアは無しで、写真撮影も不可。
劇場のステージは、前沢ガーデンの野外ステージを模した特別舞台仕様になっていて、私たちは舞台上に用意された椅子に座って、超間近で見せてもらいました♪

まずは、黒部公演のみの特別オープニング、現代音楽作曲家シュトックハウゼンの楽曲「ティアクライス」(黄道十二宮)より、新作『ゾディアック』(約15分)。そして切れ目なく『春の祭典』(約35分)へと続きます。

横道にそれますが、この「ティアクライス」と『ゾディアック』は、ゲームのタイトルにもなっています。更に『ゾディアック』は実際の事件を基にしたサスペンス映画のタイトルでもあります。
(2006年アメリカ映画。デヴィッド・フィンチャー監督による本格サスペンス。実際にアメリカで起きた連続殺人、ゾディアック事件を原題としている)
さすが金森さん、いつもながら奥が深いです。

『ゾディアック』は黒部でしか上演しません。皆様お見逃しなく!
最初に井関さんが登場し、次いで山田勇気さん、そして徐々に人数が増えていき、準メンバーを含む12名が、金森さんのインスピレーションによる星座の物語を顕現します。

摩訶不思議な『ゾディアック』に続いて、『春の祭典』!
物凄いド迫力に圧倒されました!!
観ている方も緊張して全身に力が入りました。
いやぁ、凄いですよ~

金森穣『春の祭典』は2バージョンありますが、そのどちらとも違う新バージョン!
黒部は野外なので、これがそっくりそのまま新潟公演で上演されるかは謎です。

そして『ゾディアック』と『春の祭典』の終わり方が絶妙すぎます!
当然ながら見なくてはわかりません。

特別感満載の黒部シアター2026春『春の祭典』公演!
無理をしてでも見に行きましょう!!

チケット情報 | 黒部シアター

(fullmoon)

「私がダンスを始めた頃」#26 春木有紗

3歳の私はバレエスタジオの外で母の足にしがみついて大泣きしていました。
なんとも苦い思い出ですがこれが踊りに触れた最初の記憶です(笑)。
残念ながら楽しい記憶ではないのですが、お稽古の日は毎回のように泣いていたと母が話していました。


そんな状態で長続きするはずもなく1年程でバレエはやめてしまいましたが、小学校5年生の時、友人がバレエを習っているのを見て自分も踊りたい!と思い、母にもう一度バレエを習わせてほしいと頼みこみました。
母は一度やめているバレエをまた始めてもすぐにやめてしまうのでは、と簡単には始めさせてくれませんでした。私は何度も何度も踊りたい事を伝えてやっとの思いで許しをもらい、習い始めました。

ここが本当の”私がダンスを始めた頃”になると思います。
3歳の頃にバレエをかじったとはいえほとんど記憶もない頃だったので、がちがちの初心者です。クラスの中では何が何だかわからず、とりあえずやってみる精神で真似していたのを覚えています。記憶力や頭を使う力がついてきていたので私にとっては良いタイミングだったのかもしれません。
時を見計らって踊りを辞めさせてくれた母にも始めさせてくれた母にも感謝しています。


その後高校2年生の夏からイギリスのCentral School of Balletに留学し、たくさんの知識、様々な文化にふれることができたのは全て今に繋がっています。


人との巡り合わせと運に恵まれてきた人生です。感謝を大切に、そして自分自身に素直に踊りを続けていきたいです。

(はるきありさ・2001年東京都生まれ)

金森さんが「X」とインスタで嬉しい【ご報告】♪

2026年5月19日(火)の夕刻になって、金森さんからSNSで発信された【ご報告】、Noismの今後について案じていた私たちにとって、とても嬉しいものでした。

先ずは、こちら、金森さんの「X」へのポストです。

そして全く同じ内容のものですが、インスタグラムへの投稿もどうぞ。

https://www.instagram.com/p/DYg3d-IuCZk/?igsh=OTdpajZlZTd0NDEw

「X」とインスタグラムとで、都合2回確かめたことになる訳ですから、身中に沸いたこの喜びに間違いない筈(笑)。金森さんが明言されたNoismの活動継続。リアル「喜びの舞」ものです♪

金森さんと井関さんが立ち上げた法人「NEMUSPORTA(ネムスポルタ)」、その「新しい船」による希望の船出となる訳ですよね。

その来年8月以降のNoismの活動についても、「NEMUSPORTA」についてもまだまだ詳細は伝わってきていませんけれど、絶えず舞踊への献身のみを志し、止まることを知らず、信じる道を往く金森さんは、私たちをまだ見ぬ景色に連れて行ってくれることに間違いありません。それはそのまま私たちの希望以外の何物でもありません。私たちとしましては、これからもずっと「静かに熱く見守り応援する」の一択ですね♪

この【ご報告】に接してのち、昨年末からずっと続いていた憤りに満ちた重苦しい時間とは異質の時間に浸れています。何はともあれ、今夜は「静かに熱く」祝杯ですかね。

(shin)

「私がダンスを始めた頃」#25 松永樹志

ダンスは姉の影響で、6歳の頃から始めました。
姉のダンスクラスのお迎えに母と行くたびにスタジオ内を走り回っていたのですが、足音が一切しなかったらしく、スタジオの先生から『この子は将来、忍者かダンサーになるしかない』と言われ、僕のダンス人生がスタートしました。


身体を動かすことが好きで、水泳、器械体操などいろいろと習い事をやっていましたが、気がつくと今の年齢までダンスを続けていました。


高校卒業までは、趣味程度でダンスを続けていましたが、大学進学とともに将来について考え始め、やりたいことがダンスしかなかったため、オーディションを色々と受け始めました。
ミュージカルやテレビCMのダンサー、当時通っていたスタジオの講師などの活動をしながら、Noismのオーディションに挑戦し、今に至ります。


自分の挑戦したいことはなんでも挑戦する、一度きりの自分の人生、後悔しないようこれからも走り続けます!

(まつながたつし・2000年神奈川県生まれ)