2026年3月6日(金)、芽吹きの前触れたる弥生つめたい風も、まさにこの公演にベストマッチするものに感じられてしまうほど、得も言われぬ瑞々しさがこの上なく目に眩しかった、りゅーとぴあ〈スタジオB〉。Noism2定期公演vol.17「Three Duets in the Black Box」を満喫してきました。



今公演、Noism2の定期公演として、踊るのは若手舞踊家であり、また同時に「振付家育成プロジェクト」の一環として、振り付けたのがNoism1メンバー3人であるという、それぞれに「若き芽」がそれぞれの「今」に向き合い、個々人として、カンパニーとして、しっかりと明日をも見据えた公演スタイルと言えるものです。魅力的でない筈がありません。
冒頭まず、山田勇気さんの振付で、4人の出演者全員で踊られるオープニングが置かれ、その淀みない展開が魅力的なイントロダクションとして機能し、後に控える3つのデュエット作品への期待感を高めてくれるでしょう。
幕がおりると、下手(しもて)側の袖から、その山田さんが登場してご挨拶。そのなかで、続く3つの作品それぞれの直前に、振付をしたNoism1メンバーが作品や経緯について話してから上演するかたちで進行することが告げられました。
この初日レポートの眼目ですが、3作品それぞれの上演前に話された内容と、終演後のアフタートークについて順番にかいつまんでご紹介することとし、三者三様にして、その清新さがとても魅力的だった3つの演目そのものについては書かずにおきます。その点、ご了承願います。
『Island』(演出振付:坪田光、出演:平尾玲・大﨑健太郎)
坪田光さん: 「他者とは何か。自分と自分以外のものの間の境界線をどう捉えるか。ただ止まっているのではなく、生き続け、更新されていく時間。今を生きる身体と、それを動かす舞踊家の意志にフォーカスした。舞踊家の熱量を感じて欲しい」
(10分休憩)
『A Mosaic of Moments』(演出振付:樋浦瞳、出演:四位初音・鈴木彩水)
樋浦瞳さん: 「舞踊作品を作るたび、踊りとは何か、身体とは何かを考える。自己を見つけて、掘り下げて、その探訪の先に変身・変貌すること。今回の衣裳は中嶋佑一さんにお願いし、テーマや2人の関係性など頭の中身をさらけ出して伝えようとしていくと、中嶋さんから帰ってくるデザイン画や言葉によって、世界観を深めていくのに繋がった。身体は自分が生きてきた経験の集積。2人の皮膚・目・呼吸が何を語るのか感じて欲しい」
『地平線のドーリア』(演出振付:中尾洸太、出演:鈴木彩水・平尾玲)
中尾洸太さん: 「武満徹の楽曲からのインスピレーション。メロディアスと歪さが重なり合う瞬間が多々あり、空間性が提示される。今作では振りを減らしていくことを目指したが、それはそのまま強度が増していくことである。古代ギリシャの「ドーリア式」(建築)を意識し、1枚の「長方形」の布をベルトで縛ったアシンメトリーで偏りのある衣裳とした。記憶に残る舞踊家になって欲しい。記憶に残る舞踊を見せられればと思う」
ここからは、アフタートークについてのご紹介に移ります。
山田さん: 「3人の『講師』(金森さん・井関さん・山田さん)がいて、コンセプトからディスカッションを行い、講評(『審査』)も行いながら進めてきた創作だった」
Q: 自分の意図とは別に滲み出してしまったものはあるか。
-坪田さん: 「緊張し過ぎて、受け取る準備出来ていなかった。イメージとの差、う~む。緊張とけていない…」
-樋浦さん: 「実は3人の舞踊家と向き合ってきた。負傷があって、キャストが変わって、最初のイメージとは違うものとなったが、それによって客観的に自分の振付を見詰めることが出来た」
-中尾さん: 「インスピレーション直行で、意図して作っていないから…。2人の性格と若さが出ていたが、そのふたつによって大きく変わってしまう作品」
Q: 踊っている最中の頭の中はどうなっているのか。そのあたり、どう思うか。
-坪田さん: 「頭の処理の能力を上げて欲しい思いがあり、振りを詰め詰めにした。瞑想とは異なる集中。一つひとつの動きに全てを出し切って、それを連続していくこと」
-樋浦さん: 「拘っていたものは目や手、背中。『手が目なんだよ』とか『目で空間を触れ』とか言ってきた。頭で考えているというよりは、感じて踊っているなと」
-中尾さん: 「何も考えていないだろう。言葉にも出来ない速さなので」
山田さん: 「オープニングは、良いとか悪いとかではなく、凄く緊張していた。一期一会の何かが生まれたなと。で、そのオープニングの使用曲はマイケル・ナイマンの2曲。1曲目は今ちょっと思い出せないが、2曲目は『プロフィット・アンド・ロス』というタイトルで、モーツァルトが得たものと失ったものを表すもので、今回の公演に合うと思った」
Q: 樋浦さんはSNSに描いた絵をあげているが、今回の作品と共通するものはあるか。
-樋浦さん: 「絵を描き始めたのは、踊りや動きを見た後に、それをなぞりたいという思いから。共通するのは必然と思う」
Q: 振付は今回が初めてではないが、変化や成長の感覚は。
-坪田さん: 「Noism2に振り付けるのは今回が初めてで、自分がNoism2にいたときのことを思い出していた。要求は今まで以上に高かった。自分がもっともっと要求出来たら良いなと思った」
-樋浦さん: 「作り始めると、思い込みが激しいタイプ。創作過程で見て貰って、『本当にそれで良いのか』などと言われ、作っては壊し、作っては壊しだった。この環境だからこそ、色々言って貰える。自分のなかにそういう視点を持たなければと思う」
-中尾さん: 「楽曲の選択やプロセスには成長したことを感じる。動きに頼らない舞踊。穣さんにも褒められたりしたが、『もうないかもしれないから、よく聞いておけ』と言われて、怒られているみたいだった」←「褒める時もそうなんだ(笑)」と山田さん。
Q: 常に何か作りたいと思っているのか、それとも、この機会があったからなのか。
-坪田さん: 「Noism2に作るから、これになった」
-樋浦さん: 「Noism2の5人とインプロしてみて、ハッとなったのが、この作品との出会いだったと思う」
-中尾さん: 「武満徹のこの曲との出会いは4年前。それ以来、頭のなかで構想していたかもしれないし、勇気さんからこの話があって始まったのかもしれない」
Q: これまでにない「縛り」のある構成、「前説」のある構成にした理由は。
-山田さん: 「デュオは関係性の原点。たとえ、1人で踊っても、そこに不在の関係性があるし、『2』には無限の可能性がある。あなたと私しかいない状況で作ってみて欲しかった。身体と向き合って何かを作ることを求めた。
構成には紆余曲折があり、幕間の作品やエンディングを作ることや映像を使うことなども考えたが、一つひとつの作品をしっかり見て貰いたいということで、このかたちになった」
山田さん: 「成長を見た。振付家が生まれる瞬間に立ち会った感覚がある。記憶に残るものになっていて欲しい」
…概ね、そんな感じでしたでしょうか。
踊られた3作品には触れずに書かせて貰ったのは、初日のレポートでもあり、これからご覧になる方々が初めて作品に向き合った際に抱く「ファースト・インプレッション」を変に損ねることはしたくなかったからです。今はまだまだ「Black Box」の中、ということで。
劇場専属舞踊団だからこそ、20年以上かけて築いてきた環境の豊かさがあればこそ、初めて可能になるような形式の今公演。継承することの何たるかを目撃する機会になるでしょう、間違いなく。生き生きと芽吹く新鮮な才能を前に、新鮮な気持ちで見詰めて欲しいと思います。

(shin)

















































































