「柳都会」Vol.27 栗川治×山田勇気(2023/7/23)を聴いてきました♪

2023年7月23日(日)、暑い日が続く文月下旬、日曜日の夕方、スタジオBを会場にNoism地域活動部門芸術監督・山田勇気さんが初めてホストを務めるかたちで開催された「柳都会」vol.27を聴いてきました。

山田さんの「柳都会」デビューとなる今回のゲストは栗川治さん(立命館大学大学院先端総合学術研究科博士課程ほか)。視覚障がいを持つ栗川さんは、2019年から続く「視覚障がい者のためのからだワークショップ」に初回から参加し、山田さんと共に、同ワークショップの充実・発展に多大な寄与をしながら、普通に、一観客として、本番の公演にも足を運ばれておられます。

栗川さんには、いったいどんな世界が「みえている」のか。打合せ、メール、ワークショップ、公演を通して重ねてきたやり取りを手掛かりに、参加者の皆さんとも一緒に身体や芸術についてイメージを膨らませ、思索を深めます。

Noism Web Site より

申し込みの動きも早く、定員に達して迎えたこの日の会場。参加者は全員、おふたりによる大いに刺激的な対談を堪能しました。

障がいのある人も障がいのない人と同様に、普通の生活を送るべきであり、双方、社会生活を共にするべきとする「ノーマライゼイション(Normalization)」の考え方に基づいた社会参加を行い、サッカー観戦などにも出向く栗川さん。観客4万人のビッグスワンでは、ゴールを外したときや決めたときをはじめ、その場の雰囲気、臨場感に、「見えていないんだけど、その場に身を置いているだけで楽しい」と語り、聞いているし、感じているし、「見ている」だけではない(視覚優位ではない)「五感で開く可能性」に関して、「視覚障がい者のためのからだワークショップ」のこれまでを紹介することを中心に、山田さんと示唆に富む対談を聞かせてくれました。ここでは、かいつまんでそのやりとりのご紹介を試みようと思います。

(1)ワークショップ1回目(2019年12月18日): 手のひら合わせ→相手を感じて動く/踊りになっていく
・この時期は、Noism存続問題で大変だった時期と重なり、一層の地域貢献が求められていた。
・サッカー観戦と異なり、声を出せない劇場の性格から、いきなりの舞踊鑑賞は課題も多い。互いに理解し合う必要があった。
・栗川さん「実際に舞踊家の身体に触ってみてくださいと言われ、全身を触りまくった」
・山田さん「手が求めている。手が目である。触りにきているその勢いに頭が真っ白になった」
・栗川さん「肌と肌の触れ合いのなかで一緒に動いていくことに大きな意味がある。視覚障がい者に対する一般的な鑑賞サポートの在り方が、(1)オーディオガイドによる『ことば』を使った説明、(2)事前事後に組まれる『タッチツアー』と呼ばれる大道具や小道具を触る機会の提供だったりするなか、『ことば』に依らないで、ダンスを感じて、体験することを目指すもので、『とてもよかった』。『ことば』は理解するには優れたツールであるが、ダンスを鑑賞するには、足りないし、場合によっては害になり得る。本来、『ことば』では表現出来ない筈のものを『ことば』に還元してはダメ」

(2)ワークショップ2回目(2020年12月19日): Noismの作品『春の祭典』を踊ってみる
・実際の舞台を経験して貰えないかが出発点。
・『春の祭典』の冒頭部、椅子に座って、踵で床をリズミカルに踏み落とす。(2グループで違うリズムで)
・また、『夏の名残のバラ』の音楽に合わせて、身体で相手を感じて、繋がり、踊った。
・栗川さん「金森さんが『ダンスによる音楽や物語の可視化』と言ったものを、再不可視化したとき、何が残るかを楽しみにして本番の公演を観に来た。音、重量感、拍手、米の音や振動、息遣い等、触れるように感じることが出来た。体験したものが始まる瞬間には『来たー!」という嬉しさがあり、身体が覚えているものは一緒に動いて踊っているように感じた。しかし、映像作品(映像舞踊『BOLERO 2020』)には何も感じなかった」 
・栗川さん「視覚的には『見る』とは網膜に映すことを意味するが、網膜を介さなくても頭にイメージが浮かべば『見た』ことになるのではないか。何らかのかたちで外界をキャッチすることが『見る』ではないか」
・山田さん「踊っているとき、まだ見えないものやこれからの動き等、半分はイメージの中にいる。そういう時間軸のなかで踊っている。
・栗川さん「目で『見る』というのはほんの一部に過ぎない。視覚は強烈な感覚であるだけに人を惑わすこともある」
・山田さん「そのことは舞踊の本質と関係ある。いろんな要素が絡み合って、いい舞踊となる」

(3)ワークショップ3回目(2022年3月12日): Noismの作品『Nameless Hands - 人形の家』を踊ってみる
・栗川さんから「物語、ストーリー、Noismの世界観を感じたい」とのリクエストを受けて実施。
・山田さん「『ことば』だけでなく、身体で直接、伝え導いて振り付けることは出来ないかと考え、人形浄瑠璃にヒントを得た、黒衣による人形振りの作品を選んだ」
・栗川さん「本当に後ろから抱きかかえられて、人形となり、それが踊りになっていくのは面白かった」
・山田さん「最後はアラベスク、足を上げる動きまでいった」

(4)ワークショップ4回目(2022年12月17日): 『Der Wanderer - さすらい人』を踊ってみた
・スタジオBに設えられた本番の舞台で、空間も共有し、本番の曲を踊るに至った。
・更にワークショップの終わりには、車座になってのディスカッションの時間が初めて設けられ、感想や疑問を出し合った。
・栗川さん「本番も観に来たが、スタジオBでは、(劇場ほど大きい空間ではないので、)空気を切って動く動きまでを全身で感じることが出来た。また、歌曲の歌詞も貰っていたので、点訳したものに触りながら鑑賞することが出来た。リハーサルでは倒れて死んでいる筈がハアハアしていたのが、本番ではピタッと息を止めていた」(笑)
・山田さん「栗川さんが来ているときの本番では、踊りが『やかましくなる』。(笑)そこにいる人にどうしたら何かが届けられるか、届けたいと思うから」

(5)『Floating Field』 声の踊り: 新たな試み、その映像の紹介
・山田さん「舞台上のあちこちで展開される、抽象的で踊りそのもののような作品『Floating Field』。それを踊っている映像に、演出振付・二見一幸さんの許可を得て、Noism2のメンバーたちによって、『シュッ』『ダッ』『ドンドン』などの声(一種のオノマトペ)をインプロ(即興)でかぶせて録音してみた」
・栗川さん「割といいかもしれない。可能性があるかもしれない。意味のある『ことば』よりもスピード感やきざみがあって、動きに近い。例えば、リヒャルト・ワーグナーは楽劇を創るにあたって、キャラクターの音形を『ライトモチーフ』として予め設定しておいて、それを用いて構築していくスタイルをとった。また、これはこれで現代音楽としても面白いんじゃないか」

*会場からの質問01: ワークショップといった体験なしに、実際の舞台を見ることは可能か?
 -栗川さん: 「領域」ダブルビル公演は体験なしに観た。金森さんと井関さんの『Silentium』はとても静かな作品だったので、ステージの気配を感じ取るハードルは高かったが、『Floating Field』の方は動きが激しいので感じ易かった。

*会場からの質問02: ダンスという非日常の体験を経て、日常の何かが変わったようなことはあるか?
 -栗川さん: 便秘気味だったが、「ピョンピョン」とか「ブルブル」とか、身体を大きく動かしたり、細かく動かしたりして、便通がよくなった。内臓にもいいのでは。Noismのお陰かなと。(笑)

*会場からの質問03: 視覚障がい者のためのからだワークショップ、ひとつの舞台のように見えた。見学できないか?
 -山田さん: 人数が多くなると大変なところもあるが、今後、目が見える人と一緒にやることなどもあっていいかもしれない。

…と、そんな感じだったでしょうか。一緒によりよいものを目指して、模索し、工夫に工夫を重ねて、「視覚障がい者のためのからだワークショップ」をアップグレードしてきたおふたり。「柳都会」の終わりにあたり、山田さんが「ワークショップで出会えた人たちに感謝します。踊りが広がり、身体感覚が深くなった」と語れば、栗川さんは「一緒に芸術を創っていきたい」と応じました。

手探りで始められたのだろう「ワークショップ」が僅か4回で大きな進歩を遂げてきたことに驚きを隠せません。

そして、何より、山田さんのみならず、金森さんも井関さんも常々、ワークショップに出られる視覚障がい者の方たちの感覚が、「本当に踊れる舞踊家のようだ」と語っている、その一端を垣間見ることができて、多くの学びを得ることが出来ましたし、今回の「柳都会」のおふたりのやりとりの中心にあった『見る』ことや、逆に、やや旗色の悪い趣だった『ことば』の働きについて、更なる思索に誘われる刺激に満ちた時間となりました。そうした空気感だけでも伝えることができたら幸いです。それではこのへんで今回の「柳都会」レポートを終わりとさせて頂きます。

(shin)


Noismの現到達点たる『セレネ、あるいはマレビトの歌』、その夢幻(サポーター 公演感想)

5月11日、りゅーとぴあでの『セレネ、あるいはマレビトの歌』公開リハーサルの衝撃は忘れ難い。『Nameless Hands-人形の家』や『NINA』『R.O.O.M.』など舞踊家の渾身と演出振付・金森穣の魔術的洗練に圧倒される舞台に幾度も立ち会ってきたが、りゅーとぴあ〈劇場〉の舞台上に設えられた客席で展開された舞踊と音楽の濁流と、作品の精神には、真底打ちのめされた(リハーサル後、金森さんにバッタリ会い、「これは凄いです。大好きな作品です」と興奮気味に声を掛けてしまった)。

その本番が、5月20日・21日、「黒部シアター2023 春」として黒部市の前沢ガーデン野外ステージにて開催された。初日の圧倒的舞台についてはしもしんさんが当ブログにて詳報している。私もまたTwitterで「激賞」と呼べる感想を書き連ねたり、「月刊ウインド」6月号にて魚津滞在を含めた紀行記事を掲載予定の為、2日目(5月21日)の感想を主に記載する。

魚津駅から黒部駅へあいの風とやま鉄道の列車で向かい、前沢ガーデン行きのバスが発車する「ホテルアクア黒部」へ。新潟や東京から駆け付けたNoismサポーターの方々と合流し、16時発のバス車中では(初見の方も同乗しているので配慮しつつも)昨日の公演の素晴らしさをあれこれ語り合う(この様子を、同乗していた富山県市町村新聞の宮﨑編集長が聞いており、会場でお声がけいただく。公演について記事を書かれるとのこと。特に声の大きな私の放言、失礼しました)。
開演の19時迄は前沢ガーデンの圧倒的な空間美と自然に浸りつつ待機。鈴木忠志氏をお見かけしたり、会場入りする金森穣さんや井関佐和子さん、山田勇気さんにご挨拶(金森さんのご両親や鈴木忠志氏率いる「SCOT」の本拠地である南砺市長も足を運んでいた)。

そして、19時定刻に始まった本番。舞台は常に一期一会だが、野外公演は吹く風や、それにはためく衣装、空の色(この日は渦巻くような雲が空を覆いつつも、陽光がうっすらと覗く)が繊細なコントラストを生み、作品の強度は変わらぬとはいえ、観る者が受け取る印象が新鮮に変わっていく(舞台に立つ舞踊家にとっても、きっとそうなのだろう)。

活動継続問題やコロナ禍の苦しみの中で、ひたすら舞う「Noism」の集団としての強さと祈りに幾度も涙した『Fratres』を、アルヴォ・ペルトの楽曲を駆使しつつ、作品の一部とし、全く違った文脈で再構築した『セレネ、あるいはマレビトの歌』。異端・来訪者を排斥し、互いを縛る「集団」と、個を確立した者が手を取り合う「連帯」との対比。女性同士の深い共感が、集団の論理に楔を打つ展開(井関佐和子さんと6人の女性舞踊家が織り成す洗練と爽やかなエロスに充ちたシークエンスには、ペルトの楽曲相まって涙が溢れた)。ベクトルの異なる舞踊の連鎖を休む間もなく躍り続ける井関佐和子さんやNoism1メンバー、野外ステージの高低差を活かした演出の中で「恐怖」さえ覚える登場を見せる山田勇気さん。そして、言葉を越え、この世界に生きる人の胸に確かに届くであろう「ヒューマニズム」を謳い、アンゲロプロスやタルコフスキーといった名匠が映画で描いた夢幻のごとき光景を現出させた金森穣さんの手腕に、陶然としてしまう。Noismを応援してきた者にとっての冥利を覚えつつも、この現到達点は、Noism Company Niigataの更なる未来と拡がりを想像させる。

カーテンコール後、初日(5月20日)に続いて舞台に立った金森さんは「自分にとっても手応えのある作品」、「この作品を持って海外に出掛け、世界に挑みたい。新潟のカンパニーが黒部に滞在して創った作品です。東京(発)じゃないんです。それが文化」と語った。この挑戦を、更にしっかり応援していきたい。

(久志田渉)

Noismオープンスタジオ(リハーサル公開)に行ってきました♪

2023年4月15日、薄曇りの暖かな土曜日♪
古町や白山祭りの賑やかな人出を抜けて、りゅーとぴあに向かうと、そこにも賑わいが!
りゅーとぴあでは、今日(4/15)明日(4/16)「アート・ミックス・ジャパン」が開催され、野外での公演もあり、屋内外ともたくさんの人! りゅーとぴあ内は出店も出ていて華やいでいました♪

そんな本日、行われた「Noismオープンスタジオ」とは!?
公式ホームページよると、
「G7財務大臣・中央銀行総裁会議が新潟で開催されることを記念して、アート・ミックス・ジャパン2023の開催に合わせ、Noismのスタジオを特別に公開します。
4月22日(土)・23日(日)に予定している「Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023」で上演する作品のリハーサル風景を、予約不要でご覧いただけます。
この機会にぜひNoismのスタジオにもお立ち寄りいただき、間近に迫る公演に向けた創作の様子をご覧ください。
アート・ミックス・ジャパン2023連携 -G7新潟財務大臣・中央銀行総裁会議開催記念-」
とのことでした。

リハーサル公開は14:15~ですが、受付開始の14時にスタジオBに入場。
用意されていた席は間もなく満席となりました♪

■「Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023」上演予定作品
☆Noism1 メンバー振付公演 2023
・中尾洸太 振付作品
・坪田光 振付作品
・樋浦瞳 振付作品
・糸川祐希 振付作品

★Noism2 定期公演 vol.14
演出振付:金森穣
構成:山田勇気
稽古監督:浅海侑加
・『ZONE―陽炎 稲妻 水の月』より「academic」(2009 年)
・『no・mad・ic・project―7fragments in memory』(2005 年)より
・『Complex~旧作と新作の融合による』(2021 年)より
・能楽堂公演『play 4:38』(2006 年)より
・『Phychic 3.11』(2011 年)より
・『Nameless Hands―人形の家』(2008 年)より
・『愛と精霊の家』(2015 年)より
・『クロノスカイロス 1』(2019 年)より

以上の中から、この日は、Noism2 定期公演 vol.14の、
・『Nameless Hands―人形の家』(2008 年)より
・『Phychic 3.11』(2011 年)より
を見せていただきました!

○『Nameless Hands―人形の家』(2008 年)より
バッハの無伴奏チェロ組曲、と言えばアレです!
かつての山田勇気さん&中野綾子さん、中川賢さん&真下恵さん・・・
人形2体と黒子たちによる名場面が彷彿としてきます♪

今日、じっくり稽古をするところを見たら、難しいんですね~~
驚きました!
その難しい作品をNoism2の1,2年生6名が踊ります。
乞うご期待!

□『Phychic 3.11』(2011 年)より
この時は3年生3名が踊りました。
さすがは3年生!うまさと貫禄が違いますね!

この2作品だけでもすごいのに、たくさんの上演作品で大変と思いますが楽しみです!
指導は山田勇気さんと浅海侑加さん♪ 丁寧な指導に見入ってしまいました。
皆さん、がんばってください!

19日には劇場でメディア向け&活動支援会員向け公開リハ―サルがあります。
そして本番は、22,23日!もう来週ですね!
ぜひどうぞご来場ください!
若々しいエネルギーをご堪能くださいね♪

(fullmoon)

「Noism2定期公演vol.11 Noismレパートリー感想」(サポーター 公演感想)

☆金森穣振付Noismレパートリー(Noism2定期公演vol.11より)

去年ノイズム2の公演を初めて観て、その初々しさに魅了されました。今年も研修生たちの成長を見ようと心待ちにしていましたが、期待を裏切らずハートウォーミングなひとときでした。

会場ロビーの演目表も見ず、プログラムはお手元用メガネを忘れたので読めず、幕が上がった。

ひとつの作品と疑いもせずに観ていた。面白い!身体もよく動いている。既視感はあるがなんという演目だったかなぁ。まあいいや。とにかく楽しもう。

操り人形、人間。どちらでもなさそうな物体。

休憩時にやっと三作品のオムニバスと分かった!思い込みってスゴイですね〜

『ホフマン』と『人形の家』は観てないのでそれはともかく、『NINA』もハッキリとは認識出来なかった。でも忘れるからこそ新鮮に感じられる、という事のいい例だな。

違和感なく最後まで楽しめたというのは、三作品を一つのトーンにまとめあげた山田監督の演出の力量ではないでしょうか?

『NINA』

赤い照明の下に四体の人体模型。肌色レオタードで動きがだんだんと生き物っぽく猿っぽくなって来る。既視感。

ベジャールの「春の祭典」

去年東京で、バレエ友達のおごりで東京バレエ団の春祭を観た。その後でNoism次の公演は春祭だって、と伝えたら彼女は「えっ?NINAが金森さんの春祭だと思ってた!」と言った。

なんだか納得。

最後に…

身長体型もバラバラな四体の彼女たちは涙が出るほど美しかった。

他のダンサー達もみんなキラキラ輝いてうつくしかった。

応援します。ありがとう

(たーしゃ)

Noism2定期公演vol.11楽日の余韻に浸る♪

2020年7月12日の新潟市は、時折、晴れ間が覗く曇天で、雨は小休止。湿度も低めで、案外過ごしやすい日曜日でした。昨日のソワレに続いて、この日が楽日のNoism2定期公演vol.11を観に行ってきました。

私は全4公演のうち、後半の2回を観たのですが、運良く、ダブルキャストの両方を観ることが出来ました。

『ホフマン物語』の「妻」役が前日ソワレの長澤さんから、この日は杉野さんに。

『人形の家』の「みゆき」役も、中村さんから橋本さんに、「黒衣」も坪田さんから中村さんに変わっていました。

それぞれの持ち味の違いが感じられて、嬉しかったです。

そのふたつ、回数を重ねることで、前日よりも滑らかな印象に映りました。

そして、暗転後、『Mirroring Memories』の場面転換の音楽が聞こえてきて、扇情的な「赤」の『NINA』に突入していきます。前日に観て、わかってはいても、ドキドキ鳥肌がたつ感じが襲ってきました。「これでラストだから、もう、むちゃむちゃやったれ!」みたいな気持ちで踊り切ろうという空気が感じられ、観ているこちらとしても、「頑張れ!頑張れ!」と心の中で声援を送りながら見詰めていました。そんな人、多かったと見えて、暗転後、絶妙なタイミングで思いを乗せた拍手が贈られることになりました。

15分の休憩を挟んで、山田さんの『黒い象/Black Elephant』。その「黒さ」が支配する45分間です。

自らの身体を隅々まで隈なく触れて、自己を認識することから始めて、他者或いは取り巻く世界を認識しようとする冒頭。そこからして既に断絶が待ち受けている気配が濃厚に漂います。

“Products”… ”cutting: a girl”…”少女”… ”cutting: three opinions”…”三つの言い分”… ”gossip”… ”in the dark”… ”Nobody”… ”in memory of”…、時折、暗示的な言葉が投影されるなか、いつ果てるともない音楽『On Time Out of Time』が立ち上げる、「現(うつつ)」の世界とは異質な時空で8人によるダンスは進行していきますが、焦点は容易には結ばれません。

象徴的な銀色の円柱と途中に一度挿入され、一瞬軽やかな雰囲気を連れてくる映画『Elephant Man』(ここにも象が!)からの音楽(『Pantomime』)とに、『2001年宇宙の旅』におけるモノリスとヨハン・シュトラウス『美しく青きドナウ』を連想したのは私だけでしょうか。

「そして私が知っているのは真実のほんの一部分だということにも気がつきませんでした」の台詞、そして叫び声。認識の限界或いは「不可知論」を思わせるような断片が続きますが、最後、リトアニアの賛美歌が小さく流れ出すなか、ひとり、取り出した「白い本(タブララサか?)」を円柱に立てかけると、一向に焦点を結ぶことのなかった認識の象徴とも呼ぶべき「黒い本」を愛おしむように抱きしめてじっとうずくまる人物…。暗転。

あらゆる認識もすべからく全体像に迫ることに躓き、その意味では、自分の視座からの解釈しか行い得ないというのに、認識すること/認識されることから逃れられない業を抱える私たちを慰撫するかのような優しさで締め括られるように感じました。

終演後、途切れることなく続く拍手。客電が点るまで、何度もカーテンコールが繰り返されるうちに、8人の表情が和らいでいったことをここに記しておきたいと思います。皆さん、本当にお疲れ様でした。

さて、次にNoismを目にする機会は、来月の「プレビュー公演」2 days♪ チケットは絶賛発売中です。お早めにお求めください。大きな感動が待つ舞台をどうぞお見逃しなく!

(shin)

Noism2定期公演vol.11中日ソワレを観に行く♪

前日の天気予報では雨が酷くなりそうだった2020年7月11日、土曜日の新潟市。雨は降ったりやんだり程度で、ひとまず安堵。この日の定期公演はマチソワの2公演。そのうち、ソワレ公演(18:00開演)の方を観に行きました。

入場から退場まで、幾重にも新型コロナウイルス感染症への予防措置がとられたりゅーとぴあは、この困難な時代に公演を打つことにおいて、いかなる油断もあってはならぬという意識がかたちをとったものでした。

共通ロビーからスタジオへのドア手前の
サーモカメラ曰く
「正常な体温です」
この方もカメラに収めていました
誰あろう、「芸術監督」さん♪

画像のデータで確認しますと、17:10のことです。芸術監督氏も同じ場所に立ち、管理体制の一端をカメラに収めていました。その様子をまたスマホで撮った画像を、直接、ご本人に許可を頂いて、掲載しています。「盗撮だね♪」と笑いながら、「いいですよ」と応じてくれた金森さん。有難うございます。

入場整理番号、10人ずつ検温してから
4階・スタジオBに進みます
場内で許可を得て撮りました。
隣とは3席、或いは2席とばした
「赤」の座席のみ着席可です

そうして進んだ場内で、山田勇気さんをお見かけしましたので、「やはり、『おめでとうございます』ですよね」とご挨拶すると、「そうですね。有難うございます」のお答え。

さて、前置きが長くなり過ぎました。この日の公演について記していきます。

最初の演目は、金森穣振付Noismレパートリー。昨日、及びこの日のマチネとは異なる別キャストだそうです。ダブルキャストなのですね。

見覚えのある衣裳、見覚えのあるメイク、そして聞き覚えのある音楽…、かつての名作にあり余る若さをぶつけて挑んでいくNoism2メンバーたち。今回、抜粋された場面は、どれも趣きをまったく異にする3つの場面。それらを一気に踊る訳ですから、彼ら、彼女たちにとっては、大きく飛躍するきっかけとなる筈です。

なかでも目を楽しませたのは、やはり最後に置かれた『NINA』でしょう。それも観る者の情動を激しく揺さぶり、昂ぶらせる、あの「赤」の場面です。これはもう敢闘賞もの、燃え尽きんばかりの頑張りに気分も上がりまくりでした。

15分の休憩を挟んで、プログラム後半は山田勇気さんの新作『黒い象/Black Elephant』です。

客電が落ちる前から聞こえ出す、海中、それも深海を思わせるような、たゆたうような、終わりを想像し得ない音楽のなか、照明はあるものの、暗く、黒く、不分明な舞台空間。それはいかに目を凝らそうとも、しかとは見えないような具合の色調。見ること、見えるものに疑いを抱かせるような案配とも。

「cutting(カット)」、裁断されて提示される場面の連続は、それらを繋ぐ糸、そんな「何か」を見つけようとすることを徹底して拒むかのようです。目の奥の脳を働かそうとするのではなく、目に徹して見詰めるのがよいでしょう。翻弄され続けるのみです。今回、それがテーマに適う態度というべきものかと思いました。若い8名が熱演する「決定不可能性」、魅力的です。

場内の席から、この舞台を目撃した観客を数えることはさして難しいことではありませんでした。スタジオBには35名の観客(と山田勇気さん)。収容人数の3分の1ということで設けられた上限人数マックスの観客はもれなく、「お値段以上」で、「この感動はプライスレス」とでも言うべき熱演を満喫したに違いありません。その人数からして、「耳をつんざく」とは言えぬまでも、惜しみない、心からの拍手が続いたのがその証拠です。

3日連続で、この日も200名を超えるコロナウイルス新規感染者が確認された東京。私たちを取り巻くネット環境の拡大・進展に、もうこの世界が「ボーダーレス」であるかのように感じていた私たちは、具体的な場所(トポス)の制約を受けることなく、どこにいても文化そのものにアクセス可能になったかのように錯覚してしまっていたのでしたが、具体的な身体は具体的な場所にしかあり得ず、人の移動、及び「対面」が不可避であること、「劇場」の、そのどうしようもなく不自由な性格は否定しようがないものだったことに改めて気付かされ、同時に、文化の東京一極集中は、文化そのものの中断を意味しかねない、相当に危うい事態だと思い知らされた気がします。日頃の稽古を含めて、東京から離れた場所、新潟市に拠点を置くからこそ行い得た公演、そうした側面を痛感したような次第です。

8人を追いかけて見詰める両目が歓喜に震える時間。私たちはこうした時間が好きなのでした。日本のアートシーンを考えたとき、この日の80分×2回において、間違いなく、新潟市は日本の中心にあった、そう言っても決して大袈裟ではないでしょう。居合わせる栄誉に浴した35名の至福。そんな思いに誘われるほど、久し振りに「劇場」で充実した時間に浸れたことを有り難く感じました。

若さの何たるかを観る機会となる今回の定期公演も、あと明日の一公演を残すのみで、チケットは既に完売。明日、ラストの公演をご覧になられる方は是非心ゆくまでご堪能ください。

(shin)

Noism2定期公演vol.11 初日!

*今も列島に甚大な被害をもたらし続けている「令和2年7月豪雨」。被災された方々に心よりお見舞いを申し上げますと同時に、一日も早く平穏な日常が戻ってきますようお祈り申し上げます。

2020年7月10日(金)19時のスタジオB。本来ならば、3月6,7,8日に開催されるはずだったNoism2公演。まずは本日、無事 初日が明けたことを喜びたいと思います。

とはいえ、観客はもちろんマスク着用+消毒・検温があり、座席はソーシャルディスタンスで予想以上の席数減(わずか35席)! たくさんの人に観てほしいのに…(涙)

開場前はいつも人で溢れるスタジオBのホワイエも、寂しいほどひっそりとしています… それにアフタートークも中止とのこと。残念です。

さて、開演! Noismレパートリーから、劇的舞踊『ホフマン物語』(2010年)より、『Nameless Handsー人形の家』(2008年)より、『NINA-物質化する生け贄』(2005年)より、が続けて上演されます。(20分)

目の前で躍動する眩しい身体に重なって、これらの作品を踊った何人ものメンバーたちの姿が思い出されます。

休憩15分の後は、山田勇気さんの新作『黒い象/Black Elephant』(45分)。この作品は、「私たちは何を見た/触れたのか」ということが主題になっているそうです。

ドキッとする幕開け。暗く深い闇の舞台でうごめくメンバーたち。観客は盲人になったかのようです。夢の中のような音楽(On Time Out of Time)が絶えず流れ、明るい音楽の中間部がありますが、静かに終わります。

惜しみない拍手! 『春の祭典』公開リハーサルにも出演したNoism2メンバー。一段と逞しさを増したようです♪ 4回公演もチケット完売です。座席数が少ないのが本当に残念です。 

明日からは 真打ち、shinさんが登場しますよ♪ どうぞお楽しみに!

(fullmoon)

Noism2定期公演vol.11 公開リハーサルに行ってきました!

春まだ浅い2月末。陽が差したり、曇ったり、雪が舞ったりと、冬の終わりらしいお天気の新潟市。

2/27(木)、りゅーとぴあスタジオBでのNoism2公開リハーサル(メディア+活動支援)に行ってきました。

■プレスリリース:https://noism.jp/noism2定期公演vol-11-プレスリリース/

Noism2リハーサル監督 山田勇気さん4年ぶりの新作となる『黒い象/Black Elephant』!

見応えあります!!

「研修生」とは言わせないゾ!という、メンバーと山田監督の意気込み・気迫が伝わってきます!

それもそのはず、現在のNoism2メンバーは、今年21歳(1名)、22歳(2名)、23歳(2名)、24歳(3名)になる8名です。まだまだ若いですが年齢的には大人。いつまでも、青春まっただなか、ではいられません。

これまでホワイトのイメージが強かった山田勇気Noism2ですが、今回はブラック。

これまでとは違う、大人なNoism2を感じました。 ぜひご堪能ください!

■山田勇気さん囲み取材より

「暗闇の象」「群盲の象」の故事を現代社会のことのようにずっと感じていた。創作のきっかけではあるものの、象は比喩。

・真実はひとつなのか、たくさんあるのか。

・黒い空間の中でいかに人間が光るか。

・触れること、見ること、を意識して創作した。

・黒い布を被っての移動はゾウではなくゴースト(お化け)。

・四つん這いの動きは動物というよりは、理性とは逆の本能的なもの。

・本番までの課題としては、今やっていることに対して、どのくらい理解し、感じているかということ。無意識に動いている時が多い。ある程度骨格ができたので、自分も含め、何をやっているのかわかって踊れるように熟していきたい。

・今のメンバーとは、お互いに特に遠慮もなく、自分と距離が近いと思う。

・創作を4年間休んでいたので、今回は落ち着いてやりたいことをやれた。

・音楽は、William Basinskiの「On Time Out of Time」。(ブラックホール同士の衝突をイメージした音楽だそうです。神秘的な曲。)

物事の本質を突いてくる、山田勇気さんの新作。メンバー一人ひとりの熱演も見どころです。どうぞお楽しみに!

同時上演の、山田勇気演出、金森穣振付Noismレパートリーは、劇的舞踊『ホフマン物語』、『Nameless hands ―人形の家』、 『NINA―物質化する生け贄』 より。こちらも楽しみですね♪

◆Noism2定期公演  https://noism.jp/npe/noism2_teiki_vol11/

3/6金 19:00 (前売チケット完売)

3/7土 14:30/18:00

3/8日 13:30/17:00  ※全5回

会場:りゅーとぴあ スタジオB

料金:2,000円(入場整理番号付自由席)

問い合わせ:チケット専用ダイヤルTel: 025-224-5521(11:00-19:00, 休館日除く)

※夕方の回は3回とも終演後に金森さん・山田さんによるアフタートークがあります。

不穏なウィルス状況ですが、新潟県は感染者ゼロ。公演は今のところ開催予定です。寒さもウィルスも吹き飛ばす Noism2公演、どうぞお運びください。

(fullmoon)
(撮影:aqua)

*同公演は、残念ながら延期が発表されております。こちらの記事も併せてご覧ください。