「挑戦」を超えた、若き舞踊家と振付家の誕生(サポーター 公演感想)

Noism2定期公演vol.15初日は、完売・当日券無しの盛況となった。先日の活動支援会員向け公開リハーサルでは、まだまだ緊張や葛藤も見られたNoism2メンバーだったが、第一部「Noismレパートリー」の幕が開くや、身体の躍動と音楽の連打で一気に会場の空気を高揚させた。金森穣作品の内、『R.O.O.M.』始め電子音楽に乗って展開する諸作に絞ってNoismならではの無機質さと有機的な身体との拮抗や、硬質なエロスといったエッセンスを抽出した山田勇気地域活動部門芸術監督の構成が冴え、Noism的なるものを体得しつつあるメンバーと、成長の途上にあるメンバーとの共闘や、その差異がもたらす新鮮な感覚に、いつしか忘我して舞台に没頭した。過去最多となる13名のメンバー各々の個性は、これから更なる開花を見せるだろうが、しなやかな身体性と既にして凄絶ささえ漂わせる表情で舞台を牽引した春木有紗さんをここでは特筆したい。

そして「Noism1メンバー振付公演」を経て、本格的な演出・振付家デビューとなった中尾洸太作品『水槽の中の仮面』が生み出した、瑞々しい感動たるや。12人の女性メンバーによる6組のデュオが交錯し、音楽の高揚とそれぞれの身体が確かな共振を現出させ、いつしか目頭が熱くなっていた。支配・被支配、仮面と素顔という対比を超えて、重ね合う額や肌で通じ合う6組の「魂」(中心となる春木有紗さん・与儀直希さんコンビ始め、デュオそれぞれが互いを高め合うようだった)。否応なく、パレスチナを始め世界で命を奪われている人々に思い至る鮮やかな終幕。舞台美術の明確なコンセプト。師・金森穣の影響を感じさせつつも、独自の舞台芸術を産み出そうとした中尾洸太さんの挑戦は、確かな成果として結実していた。実に4回に及んだカーテンコールでの熱い拍手もその証左だろう。

山田勇気さんとのアフタートークで、初日の印象を問われた中尾さんの「サプライズがあった。僕の考えた振付を超えて、メンバーが舞台で生きていた」という感慨は、観客もまた感じ取ったものだった。6組のデュオは「インスピレイションで決めた。対になるような個性のメンバー同士で」という裏話や、「楽曲と自身のイメージが先にあって、その先に振付がある」という創作過程、会場からの現在の「戦争」からの影響を感じたという声に、「強く影響を受けた。最近は三島由紀夫や鈴木忠志、宮崎駿など『戦争』を経験した人の作品に関心がある」という回答など、中尾さんの率直かつ誠実な言葉の数々。舞台の仕上がりに安堵したと語りつつ、「欲を言えば、金森穣作品と、もっともっと違う世界を見せて欲しい」「自身のイメージを基にすると、そこに縛られることもあるよね。それをどう超えるか」「Noism2を、Noism1メンバーが振付ける試みを永く続けたい」と優しくも鋭くエールを送る山田勇気さんの姿も印象深い。若き舞踊家と振付家の渾身に、観客もまた全身で向き合うことで、豊かな時間となったNoism2定期公演初日。明日・明後日の公演をご覧になる方も、是非刮目して彼女・彼らの躍動に立ち合っていただきたい。

久志田渉(新潟・市民映画館鑑賞会副会長、安吾の会事務局長、さわさわ会役員)

「「挑戦」を超えた、若き舞踊家と振付家の誕生(サポーター 公演感想)」への3件のフィードバック

  1. 久志田 さま
    お疲れのところにも拘わらず、これからの鑑賞への期待を煽るに充分な原稿をお寄せ頂き、誠に有難うございました。
    Noism2メンバーたちの躍動は、恐らく、残り4舞台で、その都度、益々その訴求力を増していくものと思われます。それこそまさに「目撃」の一語の時間かと。
    そしてヴェールを脱いだ中尾洸太さん作品につきましても楽しみがいや増すほかありません。
    どうも有難うございました。
    (shin)

  2. 久志田さま
    公演初日ブログありがとうございました!
    とてもよかったですね!!
    メンバーはそれぞれ違う個性でありながら、皆で気持ちを合わせて創り上げていました。山田さん、浅海さん、中尾さんの指導の賜物ですね。
    アフタートークによると、それまでの稽古に比べ、前日のゲネ、当日のリハーサル、そして本番と、全然違ったそうで、特に中尾さんは、本番の予想を超えての出来ばえに感慨深くも嬉しそうでした。
    まさに成長著しい若者の本領発揮ですね。
    2日目、3日目も楽しみです♪

    皆様、3/2,3とも夜公演はチケットがあるそうなので、
    ぜひぜひNoism2の輝きを「目撃」してください✨
    (fullmoon)

  3. shin様・fullmoon様

     2日目14時の回も盛況でしたね。
    少しでも多くの方に届いて欲しい、瑞々しい公演だったと改めて思います。そして、更に突き抜けて欲しいとも。

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