『ロミジュリ(複)』in富山、一夜限りの舞台が客席沸かす

予報に違わず、酷暑が日本全土を襲った
三連休初日の2018年7月14日(土)。
Noism1×SPAC劇的舞踊Vol.4『ROMEO & JULIETS』が
「ホーム」新潟を離れ、最初のツアーの地、
富山のオーバード・ホールの舞台に登場しました。

開演1時間前、午後4時になると、
当日券を求める人が並び、
順に、それぞれ、出来るだけ良い席を確保しようと、
示された座席表に目を落とし、
真剣に席を選ぶ姿が見られました。

欧州の劇場かと見紛うような
大層立派な劇場、オーバード・ホールの威容。
鮮やかな差し色も美しい場内のあちこちには、
様々なアート作品が飾られ、
それはそれは本当に素敵な大劇場でした。

加えて、この日、ホワイエの客席入口脇には、
地元・チューリップテレビからNoismとSPACに贈られた花と、
和田朝子舞踊研究所からかつて所属していた中川賢さんの
「凱旋」に対して贈られた花とが飾られ、
富山での今公演の実現を祝していました。

…午後5時を少し回って、客電が落ちる前の場内に
あの音楽が流れ出し、
いよいよ富山『ロミジュリ(複)』開演です。…

こんなに立派な劇場での公演がツアーに組み込まれていたのですから、
恐らく、富山にお住いの方々は、
この日が今作初鑑賞という方が大多数だった筈。
金森さんが仕掛けた様々な見せ場に、
客席からは、とてもダイレクトで、素直な反応が返されていました。

1幕、金森さんが提示する「厚み」に気持ちよく翻弄されたことでしょう。
幕がおりたあと、ややあって、あちこちから拍手が起こり、
それがやがて、会場中に広がりました。

2幕、冒頭から眼を凝らして見入る張り詰めた空気感のうちに
ラストの衝撃まで連れて行かれたことでしょう。
繰り返されたカーテンコールでは、
スタンディングオベーションと「ブラボー!」の声が送られました。

で、客電が点いたあとも幕があがったことで、
「えっ?」という笑顔を浮かべて並ぶ実演家たち。
その姿を目にした客席からも、笑みが広がり、
更に大きさを増した拍手が送られて、
和やかな空気感のうちに
一夜限りの富山公演は締め括られていきました。

twitterで金森さんが呟いていた「追加された演出」、
…わかりませんでした。(涙)

しかし、個人的には初めて訪れた劇場オーバード・ホールで、
富山のお客さんたちと一緒に、新たな気分で翻弄され、
心臓はバクバク、
大いに楽しみました。
中川賢さん繋がりということもあってのことでしょうが、
何より、昨年の射水市に続き、
今年もこの公演を組んでいただき、
富山を再訪する機会に恵まれたことも
心底嬉しかったです。

ツアーに出た『ロミジュリ(複)』、
次の訪問地はSPACの「ホーム」静岡。
7/21分は前売り完売で、キャンセル待ち。或いは当日券対応があるかも(?)で、
翌7/22も残り席はホントに数枚とのこと。
それでも、何としてもご覧頂きたい真の意欲作です。
更に、静岡公演についてはその劇場形状から「変更」箇所もあるとのこと!
私は行けないのが残念でなりません。
皆さま、是非お見逃しなく!
(shin)

『ロミオとジュリエットたち』感動の新潟楽日を終えて、アフタートーク特集

2018年7月8日(日)、雨予報を裏切り、晴れるも、相当な蒸し暑さの一日。
感動のうちに、「新潟 3 DAYS」全3公演の幕が下りました。
この日のアフタートークでのSPAC・舘野百代さんの言葉を借りれば、
「一幕の丁々発止のやりとりから、このまま二幕も転がる感じがした」との、
鼓動は高まり、「胸熱」だった新潟公演の楽日。

一幕の終わりにこの日も拍手が沸き起こり、(私も拍手しました)
終幕には「ブラボー!」の掛け声、(私も叫びました)
そしてスタンディングオベーション。(私も自然と立ち上がっていました)

回数を重ねたカーテンコールのラストに至り、
退団が決まっている中川賢さんと吉﨑裕哉さんに、
金森さんから情熱的な赤色が印象的な花束が手渡されると、
会場中から一層大きな拍手が贈られたこともここに書き記しておきます。

この日はアフタートークに先立って、
客席で一緒に新潟楽日の公演を観た篠田昭・新潟市長の挨拶があり、
「文化発信都市」を自認する一地方都市・新潟市にあって、
ここまでNoismが担ってきた役割の大きさについて話され、
今後も持続可能な活動を作っていきたいと結ばれました。

「ホーム」新潟・りゅーとぴあ公演における一大アドバンテージと言ってよい
3日間のアフタートークには、
連日、Noism1からは、金森さん、井関さん、山田さん、
SPACからは、武石さん、貴島さん、舘野さんの合わせて6名が終演後の舞台に登場して、
様々な質問に答えたり、色々なお話を聞かせてくださいました。

で、ここからは、今回の分厚い力作『ロミジュリ(複)』を観るにあたり、
期間中のアフタートークから、
読んでおけば、少しは参考になる事柄などを少しご紹介していきたいと思います。
ネタバレはしないつもりですが、それでもご覧になりたくない向きには、
この下の部分(☆★を付した部分)をそっくり読み飛ばしていただきますようお願い致します。

  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★ 
〇井関さんの役柄「ロザライン」: 原作では直接登場してこない役どころながら、
  「元来、物語全体がメインの人物だけに付随する構造は好きじゃない。
  ほんのちょっとしか登場しない人が見ている世界の方が豊かなこともあり得る」(金森さん)
  ということで、ロザラインの比重が大きくなったのだと。
  ロザラインはアンドロイドの看護師(全機、両手に手袋)、
  他の看護師ふたりは歪な体はしているが、人間、
  金森さんが演ずる医師ロレンスは半人半機(片手の手袋)の存在。
◎その井関さん: 「一番楽しいシーンが一番大変で、大変過ぎて笑っちゃうくらいだった」と  
  明かす。←きっと「あの」シーンです。

〇患者たち、チームC(奇数)とチームM(偶数)について:
  「キャピュレットは奇数っぽかったし、モンタギューは偶数っぽかったので、
  そういう患者ナンバーを割り振った。(笑)」(金森さん)
  彼らはみんな、ナンバー化され、ナンバーとして管理される存在。
  それぞれの背中、縦一列にナンバーが付けられている。
◎彼らの体のあちこちに貼られたテープ2種の意味合い: 
  暖色(オレンジ)→パワーアップしている部位、
  寒色(青緑)→マイナスがかった部位、 をそれぞれ示している。
  【例】山田さん演じるポットパンは頭に「寒色」: おつむが弱い。
     5人のジュリエットたちも喉に「寒色」: 発話しない(できない)。
     反対に、ティボルト(中川さん)は両手が「暖色」、
     マキューシオ(シャンユーさん)は両足が「暖色」。
〇両足「寒色」で車椅子のロミオについて:
  「車椅子を押してまっすぐ行くのも、曲がるのも難しい。人の体なら通じるのに、
  物はなかなか通じない」と井関さん。
  ロミオ役の武石さんは「車椅子での事故はなかった。愛があった」と。  

◎精神病院でのロミジュリ、あるいは、多様性(diversity)と包括性(inclusiveness)の問題:
  「今の時代を言い現わす象徴的な2語だろう。
  多種多様な人たち、多種多様な趣味嗜好、多種多様な価値観が混在する世界。
  それはどのように包括されたらよいのか。
  『視線』が複雑なものにならざるを得ないのが、まさに(現代の)世界。
  今回の作品も同じ。そのどこを見て、何を感じるのか。
  作品に正解を求めるのではなく、どう見るかを問いたい」(金森さん)
〇金森さんが師と仰ぐ鈴木忠司さんの『リア王』も精神病院を舞台にしていたが、その類縁性について:
  「絶対、言われるだろうと思っていたが、好きなので、『まあ、いいや』と。
  今回の『ロミジュリ』に関しては無自覚だった部分もあったのだが、
  大好きなので、そういう文脈で観て貰えることは嬉しい」(金森さん) 

◎実演家として大事だと思う事柄:
  SPAC武石守正さん(ロミオ役): 「関係性。ある瞬間が切り取られたものが舞台。
    他者との関係の中で、声も演技も定まってくる」
  SPAC貴島豪さん(グレゴリー/キャピュレット役): 「見られている感覚。
    本番までどういう準備をして、舞台に立つのか。
    お客さんが舞台を観に来られる理由はさまざま。
    何が観る者の心を動かすのか」 
  Noism山田勇気さん: 「関係性。例えば、武石さんが体から発しているものがあって、
    自分はそこにどう居るべきなのか、肌で受け止める。
    そうやって何かが生まれたら嬉しい」
    (そこで金森さんの「感受性だね」の言葉に一同頷く。)

〇シェイクスピア『ロミオとジュリエット』は「死ぬことでしか叶わない愛」を描くが、
  「今回のロザラインには『死ねないことの悲哀』を込めた」(金森さん)
  (また、「ジュリエットたち」が果たしてどうなっていくかについても要注意、
   と書くことに留めておきます。)
・・・場合によっては、読み飛ばして欲しい箇所、ここまで。
  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★

Noism1×SPAC劇的舞踊Vol.4『ROMEO & JULIETS』、
「お互い境界線を感じない、ひとつの舞台を創る舞台人」(井関さん)として、
舞踊家と俳優とががっぷり四つに組み、
渾然一体となって取り組んだこの野心的なクリエイションで、
双方の実演家の皆さんが異口同音に、
大きな刺激を受けたと語っておられたことも印象的でした。
それはひとえにどちらも「劇場専属」という在り方に関わっているのだとする
金森さんの指摘にも首肯する他ない事実が含まれているように思いました。

また、「繰り返される一回性」や「一瞬、一瞬」という言い方も、
日頃の金森さんがよく口にされる「刹那」とピタリ重なり合って、
動かしようのない「舞台の真実」を物語っていました。

「繰り返す『一回性』」と語ったのは武石さん。
更に続けて、「舞台は日々模索し、発見するもの。
再現することが出来ないことも多いのだが、
再現しなきゃならない」とも。
で、井関さんが、「舞台は立たないとわからない。常に発見があり、
お客さんが入ると、本気を越えた本気になる」と言えば、 
貴島さんも、「毎日、フルパワーでやっていても、日々違うものがある。
一回一回新しいものがどんどん生まれている。
いろんなところに『宝箱』があって、それを探しに行く感じ」と応じました。
山田さんは、「舞踊でも演劇でもない『劇的舞踊』がようやくわかってきた。
やっているなかで、見出すもの」と語り、
舘野さんも、「神秘的で曰く言い難い魅力」を指すらしい「ドゥエンデ」という
言葉を使って、それがあるのが舞台であると纏めました。
そんなふうに、舞台のうえで生まれる「一瞬、一瞬」を共有しに、
私たちも劇場に足を運び続けましょう。
…人生を豊かにするために♪

以上、力の及ぶ限りの「採録」を試みてみました。
ご覧になられた方にとっても、これからご覧になられる方にとっても、
僅かでも何かの参考にしていただけたなら、望外の喜びです。

さて、3日間、新潟の地に大きな驚きと感動をもたらした『ロミジュリ(複)』、
次は、週末7/14(土)、中川さんご出身の富山県はオーバード・ホールに参ります。
演出・振付家、舞踊家、俳優が揃って創りあげるこの渾身の舞台、
ゆめゆめお見逃しなきように!
(shin)

    

七夕の『ROMEO & JULIETS』、新潟2日目そしてサポーターズ交流会

長引く大雨、台風の影響で、ロマンティックに空を見上げる気分からは程遠く迎えた
今年の七夕、2018年7月7日(土)でしたが、
それでも、引き裂かれた織姫(織女)と彦星(牽牛)が、
ジュリエットとロミオに何やら符合するようにも感じられもし、
『ロミジュリ(複)』を観るならこの日を措いてあるまい
というような心持の方もおられたのではないでしょうか。
そんな新潟・りゅーとぴあ公演の2日目。

前日、公演初日の終演直後の観客席の雰囲気を、
主に「戸惑い」と「驚き」の2語で表出したのは金森さん。
確かにそうした要素も濃厚でした。
当初、「どうリアクションしたらよいのか」という空気感は確かにあったようです。
しかし、一幕45分+休憩15分+二幕50分の「非日常」を見つめてきた目が、
徐々に、観終えたばかりの質の高い「一回性」を反芻できるようになってくるや、
拍手は段々にその大きさを増していきましたし、
それに呼応するかたちで、
カーテンコールが何度も繰り返されました。
それが初日。

そして、fullmoonさんが前日のコメント欄で拾ってくれた金森さんの言葉
「今日はびっくりして、明日は少し慣れて(落ち着いて)、3日目は楽しんでください」で
迎えた2日目の客席は、2日連続でご覧になられる方も相当数おられた様子で、
それがレスポンスにおける瞬発力の違いとなって現れ、
劇場全体の雰囲気を押し上げていたように感じました。
一幕のラスト、禍々しい悲劇の予感が募っていくなか、
すべての登場人物が出揃ったところで、緞帳がおりてくると、
客席の抑えきれない思いはここでまず最初の拍手となって表現されたからです。
このとき既に落涙寸前の私も、それが当然とばかり、自然と拍手していました。

休憩中、ホワイエへ出てみると、
一見奇抜を装ったかに見える設定も、
その実、さして奇抜と受け取られてはいない様子で、
心地よい翻弄を楽しみ、二幕への期待感を募らせる
陶然とした表情の人たちばかりを目にしたものです。

そして美しいソロとデュエットで始まる二幕は、
この日も、金森さんが仕掛ける驚きの展開を含みつつ、
もうそれこそ怒涛の展開で、終幕へと雪崩れ込んでいきました。

よく知る「ロミジュリ」とは多分に異なっています。
若く美しく、同時に、世知に疎く、ナイーヴに過ぎる男女の
ストレート直球勝負の恋愛悲劇という趣ではないからです。

そして更に、
古典をベースにしながら、それを近未来的な設定で描くという
よくある類の翻案ものとしてさえ容易に片付けてしまえない、
多様なものの混在ぶりが襲ってくると言いましょう。
金森さんとNoism1、そしてSPACという3者がいてこその今回のクリエイションであって、
そこでは、金森さんお得意のとても「あやしい(怪しい・妖しい)」
呪術的な要素も堪能できます。
そう、この作品、ナイーヴなのではなく、「あやしい」のです、とても。

「戸惑いも価値あるもの」(金森さん)ながら、
この日、終演後の客席から、決然たる態度による勢いのある拍手が沸き起こり、
「ブラボー!」の掛け声が多く飛び交った点において、
前日とのレスポンスの違いが存するように思いました。
しかし、それは決して、どちらがどうと言いたいのではないことは付言しておきます。

☆  ★  ☆  ★  ☆

そして、この日はアフタートークのあと、
りゅーとぴあ内のリバージュを会場に、
サポーターズの交流会が開催されました。
悪天候のなか、遠くは、横浜や東京からお越しのサポーターの方々や、
今回初参加の「U25」とお若いサポーターの方などを含め、
Noism愛を共通項とする19名の参加者を得て、
屋外の雨も物かは、公演を観た後の充実した表情そのままに、
楽しく有意義な交流ができました。

その席での会話からは、11月のロシア・サンクトペテルブルク行はどうするかとか、
12月の諏訪市・ニムラ舞踊賞の授賞式はツアーを組んで行けるよねなど、
Noism繋がりの楽しみが尽きないことを喜ぶ声があちこちから聞こえて来ました。
そんなあれこれを耳にしていると、
何か、ロシア行さえ現実のものとしかねない猛者も出てきそうな気もし、
終始、あたかも不在の金森マジックにかかってしまった者たちばかりの宴だったかのようで、
それはもう、とても「あやしく」愉快な時間を過ごしました…。(笑)

☆  ★  ☆  ★  ☆

これを書いているのは、7月8日(日)の朝。
金森さんが言う「3回は」が果たされる最短日の朝です。
先程、地球規模の蹴球の祭典で、
「ホーム」ロシアが、延長120分の激闘の末の
PK戦でクロアチアに破れてしまいましたが、
そのロシア、最後の最後の瞬間まで「ホーム」ならではの存在感を示し続け、
テレビの画面からはその圧が溢れ出していて、
もう目を離すことなど出来ませんでした。

Noism1の「ホーム」新潟・りゅーとぴあでの公演も本日限り。
「ホーム」で躍動する我らが舞踊団を是非目撃しに来て欲しいものです。
勿論、決して「3回」でなくとも、
初めての方も、既にご覧になっておられる方も、
その回数分の刺激に満ちた舞台であることは言うまでもありません。

あなたはこの野心作にして、衝撃作、或いは問題作をどう見るでしょうか。
人生が変わるきっかけにもなり得る、は決して大袈裟ではありません。
間違いなく分厚い贅沢な時間がそこにはあるからです。
さあ、今日は、こぞって「ホーム」最終日の舞台へ!
(shin)

『ROMEO & JULIETS』驚愕の世界初演、その初日!

九州、中国地方をはじめ、西日本で猛威を振るい続ける記録的な大雨と台風、
被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。
また、一日も早く平穏な日常が戻ってくることをお祈り致します。

全国を覆う何やら怪しい雲行きが、やはりと言うか、
夕方を前に多量の雨を降らせた、2018年7月6日(金)の新潟市にあって、
信濃川沿いのりゅーとぴあ・劇場にも
400年の昔に書かれた「あの戯曲」が人心を騒がせる風雲を運んできました。
「大時代的」とも称されかねない古典「ロミオとジュリエット」が、装いも一新。
現代的な肌感覚にも違和感のない「ロミオとジュリエットたち」として現前したのです。

客電が落ちる前から響きだすプロコフィエフによる「前奏曲」がその入り口です。
そこからはまさに怒涛の足し算の連続。

河合祥一郎訳による台詞、
過去作の記憶と綯い交ぜになりつつ「再利用」(金森さん)される舞台装置、
舞踊家と拮抗する役者、
或いは、役者と拮抗する舞踊家、
言葉、身体、手話、
語る者、語らない者、
「不在」にして言葉を押し付ける存在、
キャピュレットとモンタギューの二項の構図とそれを更に包摂する収容・監視・支配の構図、
文字、映像、
身体に散りばめられて輝く暖色(赤)と寒色(青)、
そして「原作者」シェイクスピア譲り饒舌なロミオに対し、
時間感覚を引き延ばす効果を伴う5人のジュリエットたち、等々。

ひとりのインスピレーションから創られた舞台とは俄かには信じられない程の
情報量と高密度で圧倒的なボリュームは
観る者の度肝を抜き、観る者をして驚愕させずにはおかないことでしょう。
(実演家一人ひとりの熱演をダイレクトに受け止めることができる
前方のお席もさることながら、
今回の作品では、少し引いたお席からのご鑑賞も
充分お薦めできるように思いました。)

また、目に飛び込んでくる実演の舞台作品として、
渾然一体となって演じる舞踊家たちと役者たちの姿も驚きでした。
Noismを語るとき、真っ先に浮かぶ単語、身体性。
それを共有し、台詞や所作に込めるSPACの俳優たちの表現力。
その2者互角で遜色のない舞台上での「綱引き」こそが、
金森さん言うところの「舞踊とも演劇とも名状し難い」がまでの
今回の劇的舞踊を顕現させていると言える筈です。
新潟と静岡にあって、
ともに専門的に鍛錬と研鑽を積む環境にあるふたつの集団があればこそ、
世に送り出せる作品であることは言うまでもありません。

そして、「演劇なのか、舞踊なのか」です。
観た人それぞれで答えは異なるものと思われますが、
そもそも、この問いをたてること自体、
今回の野心的な創作、既に大変な衝撃作、或いは問題作でもある証。
どちらかと言うと、「演劇」寄りで観に来る感覚でいた方が
自然に受け止められるのかもしれません。

しかし、勿論、舞踊的にも見どころはたくさんあります。
上にも触れた5人で踊られるジュリエットたちなどはやはりその筆頭で、
時間の「遅延」振りの見事な可視化を楽しむことが出来るでしょうし、
ここでは他にもうひとつだけ、過度のネタバレを避ける意味合いから、
ゆる~く紹介させて貰います。
それは休憩後の二幕冒頭に置かれたあの人とあの人のデュエット。
この「新作」を読み解く鍵を握るものであるばかりでなく、
(上野の森バレエホリディの記憶なども呼び覚ましながら、)
瞬きするのも惜しいほどの見せ場を作っているとだけ。
これではなんのことやらわかりませんね。
でも、乞うご期待、ということで。(笑)

今回は金森さんも出演されるということで、
入場時にご挨拶に立つ姿はありません。
でも、あそこで出てくるのか!
舞台に登場してくる際のオーラを受け止める楽しみに変えて、お待ちください。

なお、今公演では、ホワイエにて、
通常のNoismロゴ入りTシャツの他に、
右画像のようなNoism×SPAC特別仕様の公演Tシャツ(白・黒、1枚各2500円)の販売もございます。
腰の部分には公演日の記載もありますので、鑑賞の記念にはよろしいかとも。
劇場入口のドア脇で、購入したばかりのTシャツに着替えてから入場する方もいらっしゃったくらいです。
これも要チェックですね。
ご検討ください。(笑)

さて、世界初演の初日の幕があけたNoism×SPAC版の
劇的舞踊『ロミオとジュリエットたち』、
皆さんの目にはどう届いた(届く)のでしょうか。
この日のアフタートークは、Noismから3名(金森さん、井関さん、山田さん)、
SPACからも3名(貴島さん、武石さん、舘野さん)が登壇され、
初日を終えたあとの和やかな雰囲気のうちに行われたことも記しておきましょう。
新潟公演はあと二日。
フルハウスのりゅーとぴあ・劇場で、
渾身、衝撃の野心作を是非とも目撃してください。
(shin)

井関佐和子さん ニムラ舞踊賞受賞! Noismサポーターズ会報34号 &  さわさわ会 会報誌vol.5 発行

井関佐和子さんが、第38回ニムラ舞踊賞を受賞!

おめでとうございます!!

そして、ロミジュリ公演、いよいよ明日開幕!!

ドキドキ、ワクワク、ソワソワ・・・

公演に合わせ、サポーターズ新会報と、さわさわ会 新会報誌を発行し、会員の皆様にお送りしました。

各公演会場でも折込配布予定です。
どうぞお楽しみに♪

11月には『ラ・バヤデール-幻の国』が、ロシア・サンクトペテルブルクのプティパ生誕200年記念フェスティバルに招聘されています♪

目出度い続きのNoism!

うれしいですね!!
(fullmoon)

『ロミジュリ(複)』、「世界を驚かす」まであと2日!

Noism1×SPAC劇的舞踊Vol.4『ロミオとジュリエットたち』、
2度の公開リハーサルを観た感触から、この新作は「観た人の人生を変える可能性がある舞台である」と言っても、何ら大袈裟ではないと断言しましょう。
古典に則りつつ、現代的な問題意識をもって、それを脱構築して描かれる野心作。
支える突出した身体、そして押し寄せる言葉、音楽、文字、映像。
まさにこの時代における「総合芸術」が、
日本、まずは新潟から発信されることは誇り以外の何物でもありません。
世界初演まであと2日。きっと「世界を驚かす」ことになるでしょう♪
7月は今週末の新潟を皮切りに、富山、静岡、そして9月の埼玉を見逃してはなりません!

また、新潟3デイズのあとの公演地である、
富山・オーバード・ホールのHPでも
充実した『ロミジュリ(複)』特集ページをご覧いただけます。
Noismに関する様々に要を得た説明のほか、
退団される中川賢さん(富山県射水市出身)のコメントなども
紹介されていますので、是非お目通しください。
こちらからどうぞ♪

なお、残席僅かな公演日もあります。
お席の確保はお早めに。
(shin)

『ROMEO & JULIETS』メディア向け公開リハ、目の当たりにしたのは溢れる野心

前夜、蹴球の世界最大イベントにおいて、
我が国代表が、フェアプレーを巡るレギュレーションで予選を勝ち上がったことに対し、
「そもそも蹴球におけるフェアプレーとは何か」を問う姿を装いつつ、
ありとあらゆる場所から湧き上がる毀誉褒貶に接して、
正直、少なからず、困惑を覚えながらも、
しかし同時に、この時代にあってなお「侍」と称される者たちが
少なくとももう一度「世界を驚かす」機会を手にし得たことには
安堵と喜びを感じるという、複雑な心持ちで迎えた2018年6月29日(金)午後3時、
りゅーとぴあ・劇場の舞台で、
Noism1×SPAC劇的舞踊Vol.4『ROMEO & JULIETS』のメディア向け公開リハーサルを見せて貰い、
引き続き、金森さんの囲み取材にも参加してきました。

有名な「4大悲劇」もあるお陰で、物騒にも「ひとごろしいろいろ」として記憶される、
1564年(生年)から1616年(没年)を生きたウィリアム・シェイクスピア。
世界的に知らぬ人のない彼の400年以上前の戯曲が、
彼の生地ストラトフォード・アポン・エイボン(エイボン川沿いのストラトフォード)ならぬ、信濃川沿いのりゅーとぴあから、
今、金森さん+Noism1+SPACによって新たな息吹を吹き込まれ、
全世界に向けて発信されようとしています。

この日、メディアに公開されたのは、
先日、活動支援会員およびサポーターズにも公開されたのと同じ第一幕。
もとの戯曲で言えば、「第二幕・第二場」として知られる、
有名な「バルコニー」の場面までとなります。
(もっとも、今回の翻訳テキストをものした河合祥一郎氏によれば、
緞帳などなかった時代のシェイクスピアその人は
幕場割りを設けたりしてはいなかったそうで、
そのため、舞台の流れは、変にリアリズムを追求することなく、もっと自由に
クロスオーバーしたり、ワープしたりなどしながら移り変わっていくのが常で、
近代劇に慣れた私たちの目には「大胆」に映るものであっただろうそうですが…。
*角川文庫「新訳・ロミオとジュリエット」の訳者あとがきを参照されたい。)

この日は、照明も入り、衣裳あり、装置や小道具ありで見せていただきました。
なにより、衣裳の別が明らかにするのは、モンタギューとキャピュレットの区別ではなく、
更に重要な「別の関係」の区別。
恐らく、一目で理解、納得できることでしょう。
閉鎖的な舞台設定。監視とそれに続く威嚇、或いは鎮圧。「大公」の存在。
音楽、身体のみならず、押し寄せる言葉、文字、映像…。
今回のリハを見ていると、
前回、ブログを書いたときにも既に頭にあったのですが、
ミシェル・フーコーが別の著作『監獄の誕生』で取り上げたベンサム
「一望監視装置(パノプティコン)」の印象がより強くなったことも書き記しておきます。

「古典だからと古典的にやることには違和感を感じる」(金森さん)
「現代に置き換えた表現の方が、私たちにはより切実で、創る意義がある。
新しいロミオとジュリエットを表現していくのが、私たちの野心であり、チャレンジ。
演劇であるのか、舞踊であるのか」とも語っておられました。

『ロミオとジュリエット』と精神病棟、その2者に関して、
金森さんは、「現代の監視社会(=病院=精神病棟)の方が先にくる。
そこの患者たちが演じている」というヒントを与えてくれたうえで、
「現代の新しい価値観、新しい感情の在り様、人間や社会の複雑さや多様性など、
難しさに向き合おうとしている」のだとも。
また、今回、手話を作中に取り入れていることに関しては、
「言語表現と身体表現の橋渡しをする身体動作とみている」と説明。

「驚いているあいだにことが過ぎてしまう。3回は観た方がいい」(金森さん)

前回の公開リハを見て書いた以上に「分厚い」印象です。
舞踊というだけでは言い尽くせないその「厚み」は、
更に「総合芸術」の名に相応しい舞台になっていると言い切りましょう。
身体よりも、物語なのか。しかし、身体あっての物語でもある。
いずれにしましても、『NINA』とは対極に位置する創作という印象が濃厚で、
まず、驚きをもって凝視する以外に術はなさそうです。

プロコフィエフの音楽と
七五調という日本語の特性を踏まえて、歌うように語る河合祥一郎訳のテキスト
の相性について、金森さん、
「単なるアイディアではなく、インスピレーション(霊感)で、全て合うと気付いた」

そして最大の謎である「ジュリエットたち」という複数形については、
「最初はジュリエットはひとりでと考えていた。
しかし、未だかつてないような形でやろうと思った。
そして、役者と舞踊家半々をつかって創るとき、
出てない人がいない、『(カンパニーの)みんなが生きる』形を考えたら、複数になった。
もし、Noismが20人だったら、また違ったものになっていただろう」と、そのあたりの事情の一端を明かしてくれました。

発話しないジュリエットという制約のもとで描き出されるロミオとの「デュエット」。
そのリリシズムは、今風に言えば、「ジュリエット(たち)、半端ないって!
そんなんできひんやん、普通!」って感じです。(笑)

極めて、今日的な問題意識を取り込むことで、
古典作品を相手に「攻めている」感も強く漂うのですが、
根源的でオーソドックスな情感で貫かれている点で、
意外に、古典としてみても破綻がない感じがしたことも記しておきましょう。
しかし、このあと、まだ見ぬ第二幕で、
金森さんはどのような着地点を見出そうというのでしょうか。
まさに真の野心作!
一日も早くその全貌を目の当たりにしたいところなのですが、
今は、日一日と近付いてくる
全く新しい「ロミジュリ(複)」世界初演の日まで、
身中募る一方の興奮と向き合いながら、
あれこれ想像しては、楽しんで過ごしていこうと思っています。

なお、この日、Noismスタッフから、
『ロミオとジュリエットたち』特設ページがオープンしたとの告知がありました。
初めて明示されるキャスト表など興味深い内容です。
どうぞそちらもご覧いただき、是非とも「3回」劇場に足を運んで頂けたらと思います。(笑)   (shin)

Noism1×SPAC劇的舞踊Vol.4『ROMEO & JULIETS』公開リハーサル、分厚さに圧倒される

(*今回の記事は、富山公演の会場であるオーバード・ホールが発信するDMにも
転載される予定です。)

2018年6月16日、時折吹く風は肌に冷たく感じられながらも、動くと汗ばむという
寒暖が「混在」する土曜日の午後3時、りゅーとぴあ・スタジオB。
Noism1×SPACによる注目の新作、
『ROMEO & JULIETS』の公開リハーサルを観てきました。
この日朝の金森さんのツイートによれば、
参加申込者は43人。
いつものようにスタジオBの三方の壁面に沿って置かれた椅子に腰かけて、
第一幕の通し稽古を見せて貰った訳です。

りゅーとぴあ・劇場の舞台と同サイズで作られているスタジオBに、
プロコフィエフによるバレエ音楽が流れだすと、
前方には自らの体を叩き、身を仰け反らせ、煩悶、懊悩する舞踊家たち。
そして最背面に居並び、楽の音に口上を重ね合わせることで、
唱和される謡(うたい)に似た響きを重々しく立ち上げたかと思うと、
次の瞬間、あたかも将棋盤上にあって横一列に配された「歩」の駒が、
一斉に躙り寄りでもするかのように、
能を思わせる摺り足で観る者の側へと迫り出してくる役者たち。
それらすべてが渾然一体となることで発せられる「圧」。
「これから2時間ご覧あれ」と物語世界のとばくちで誘われるだけで既に、
良く知る「あの」古典的な戯曲とは異なる、
ただならぬ予感に包まれてしまう他ありません。
音楽と肉声、舞踊家と役者、身体と声、西洋と東洋、
更に、これまでの作品で目にしてきた三角柱の塔や車椅子、ベッドといった
「金森穣的世界」の記憶を呼び覚まさずにはおかない装置一つひとつに至るまで、
幾重にも重なり合う「混在」振りが示す「分厚さ」に目も眩む思いがしました。

伝え聞くところによれば、舞台は病院、それも精神病棟とか。
メンバーで最近鑑賞したという映画『カッコーの巣の上で』(ミロス・フォアマン)(1975)や、
ミシェル・フーコー『狂気の歴史』などをも彷彿とさせながら、
狂気と正気も「混在」していくのでしょう。

そして何より、タイトルが仕掛ける今回の配役も謎のままです。
池ヶ谷さん、浅海さん、井本さん、西岡さんと鳥羽さんの女性舞踊家5人が
「ジュリエットたち」であるだろうことは察しがつきましたが、
しかし、なにゆえ5人なのか。
更に、最も大きな謎は井関さん。果たして彼女は何者なのか。
5人を束ねる6人目なのか。

知らない者もないほど有名なシェイクスピアの戯曲に、多くの謎が「混在」し、
古典的な物語と、現代的な問題意識が「混在」する。
そうした多様に夥しい「混在」振りが私たちを途方もない幻惑へと導く作品のようです。
ならば、浴びるように観、浸るように観て、驚くこと。
しかし、緻密に構成された動きに至っては、
「謎」の対極にあるものとして観る者の目に飛び込んでくるでしょう。
その点に関しては揺るぎないものがあります。

金森さん曰く、役者の台詞はすべて河合祥一郎訳に拠っているとのことで、
多少、前後の入れ替えがある点を除けば、
他の『ロミオとジュリエット』の舞台となんら変わるものがないとのこと。
「それをNoismがやれば、こうなる」と金森さん。
役者の発する言葉と舞踊家の動きがスパークする、
この新作は、紛れもなく、現代における総合舞台芸術のひとつの在り様を
示すものとなることでしょう。必見です。お見逃しなく。

そして富山の皆さま。
昨年8月、射水市・高周波文化ホールでの洋舞公演において、
『Painted Desert』を踊った、和田朝子舞踊研究所出身の中川賢さんに送られた
熱狂的な熱い拍手と歓声の記憶も新しいところですが、
残念ながら、その中川さんもNoismの退団が発表されております。
ですから、中川さんの故郷・富山の地で、
Noismの一員としての中川さんを目にするのは、今回が最後の機会となります。
即ち、「凱旋公演」の趣のある、Noism在籍8年間の集大成の舞台。
中川さんは入魂の舞踊で、有終の美を飾ってくださるものと確信しております。
7月14日(土)のオーバード・ホール、是非ともご来場ください。
(shin)

【追記】
金子國義の絵が妖しい雰囲気を放つ、
河合祥一郎訳の角川文庫版・新訳『ロミオとジュリエット』。

冒頭の口上はこんな具合です。
「花の都のヴェローナに 肩を並べる名門二つ、
古き恨みが今またはじけ、 町を巻き込み血染めの喧嘩。
敵同士の親を持つ、 不幸な星の恋人たち、
哀れ悲惨な死を遂げて、 親の争いを葬ります。
これよりご覧に入れますは、 死相の浮かんだ恋の道行き、
そしてまた、子供らの死をもって
ようやく収まる両家の恨み。
二時間ほどのご清聴頂けますれば、
役者一同、力の限りに務めます。…」

声に出して読んでみると、独特の跳ね感ある河合訳のリズムと
金森さんのクリエイションは決して不可分ではないでしょう。
或いは、ここにももうひとつ「混在」を見るべきでしょうか。
そのあたりも、是非、劇場でお確かめください。

(池ヶ谷さん+中川さん)×Yuto Sato=「アーティストの日常」、それを垣間見る特別な宵♪

2018年6月2日(土)、昼は暑いくらいだというのに、
陽が落ちてしまうと、風は冷たく、もう「寒い」と言わねばならないような路地。
前日、池ヶ谷さんがSNSで寒さに備えるよう呼び掛けてくれていたお陰で、
震えずに済んだというもの。
行ってきたのは、新潟市学校町通にある、Yuto Sato(佐藤悠人)氏のアトリエでの
「Yuto Sato 2018 T-shirts 展示即売会」。

佐藤悠人氏とは、一言で言えば、
前の投稿でFullmoonさんも書いてらっしゃいますように、
「新潟の服飾デザイナー・ペインタ―」ということになるのでしょうか。
彼の即興のペン画に魅了された人も多くいらっしゃる筈ですが、
最近は、亀田縞や五泉ニットに新たな息吹を吹き込む製作をしておられ、
新潟伊勢丹が「メイドイン新潟」の品々をラインナップする好評企画
「越品(えっぴん)」にほぼ毎回呼ばれるなど、
ある意味、その「顔」となりつつある、今注目の気鋭の若手クリエイターです。
更に、Noismメンバーとの親交が深いことでも知られる男性アーティストでもあります。
そんな訳もあって、サポーターズのなかにも佐藤悠人ファンは数多くいらっしゃいます。
かく言う私もその一人で、この日はどちらも悠人さん作のスヌードを首に巻き、
ショルダーバッグを肩にかけて、いそいそ出かけて行ったような次第です。

この日のイベントは次の通り。
18:30(~22:00) 展示会オープニングパーティー
20:00 Noismダンサーによるパフォーマンス公演

せっかちな私は15分くらい前に会場に到着してしまい、一番乗りでした。(汗)
やがて、受付が始まったテントで、会費1,500円をお支払いすると、
悠人さんから渡されたのは、
池ヶ谷さん愛用の「ガチャピン&ムック」柄トランプで、「クラブの9」。
ドリンク引換券ということでした。
そのまま持ち帰りたい気持ちもありましたが、それを抑えて、
私はジントニックを作って頂きました。(笑)

20:00が近づくにつれ、続々とお客様が集まってきます。
Noismの公演会場でよく会う方、お見掛けする方。
はたまた、恐らく、佐藤悠人さんの繋がりの方。
そして、Noism、悠人さん双方と交流のある方。
やがて、Noismメンバーや新作「ロミジュリ」に出演される
SPACの役者さんたちの姿も見られました。

お手洗いの蛇口に至るまで、あらゆる部分が白く塗られた悠人さんのアトリエの
1階部分で行われるパフォーマンスを
ビルトインの駐車場に座って観るとのことでした。
アトリエ自体、お世辞にも広いとは言えないのでしょうが、(←失礼(笑))
駐車場に面したL字2面の建具を外すことで、
かなりのオープンスペースが確保されました。
昔の日本の家屋はよくできていますね。

正確な開始時間も、公演の長さも記憶しておりません。
恐らく、20時を少し回っていたのかと思いますが、
悠人さんがご挨拶され、公演開始を告げられると、
緞帳代わりに、鋲でとめられ、視界を遮っていた白布が外され、
目に入ってきたのは、左にミシン、右に無造作に山と積まれた白い布。
どこかで見覚えのある衣裳に身を包んだ中川さんが
2階からコーヒーカップを手に下りてくると、おもむろにミシンがけを始めます。
すると、右側、白い布のなかから池ヶ谷さんが登場。黒い新作Tシャツ姿です。

踊り出した池ヶ谷さんはさかんに中川さんを誘いますが、
中川さんはそれを微塵も意に介することなく、ミシンを踏み続けます。
客席側からは見えない柱に貼られた音楽プレーヤーに寄り、音楽をかける中川さん。
どうやらクリエーションに音楽は不可欠のようです。
その音楽に池ヶ谷さんも反応して、ソロのダンスを踊り出しますが、
それは主に苛立ちを表現したものでした。
ひとつの音楽のもと、ふたつ別々のクリエーションが進行する趣向です。

池ヶ谷さんがTシャツを脱ぎ捨て、
白いロングスカート姿になって気を惹こうとしても、
中川さんのクリエーションとの接点はうまれません。
中川さんがミシンを離れた隙に、椅子の向きを逆向きにして、
池ヶ谷さん方向を見ないではいられないようにし、
また違う音楽をかけてみても、
中川さんは、今度は池ヶ谷さんをモチーフに「絵」を描こうとするだけで、
別々のクリエーションのなかに留まったままのふたりです。

それが趣を変えたのは、中川さんの「産みの苦しみ」がきっかけでした。
ひとりになろうと椅子を動かしたものの、頭を抱える中川さん。
池ヶ谷さんが「椰子の実」(島崎藤村・作詞、大中寅二・作曲)を流します。
すると、その楽の音は孤独と向き合うクリエーターの心に染み入り、慰撫し、
ふたつバラバラだったクリエーションをひとつに纏め上げます。
そこまで踊らずにいた中川さんが池ヶ谷さんの横に立ってから、
この宵、初めてシンクロして踊られるデュエットはそれは素敵なものでした。

「椰子の実」 (Wikipediaより転載)
名も知らぬ遠き島より 流れ寄る椰子の実一つ
故郷(ふるさと)の岸を離れて 汝(なれ)はそも波に幾月
旧(もと)の木は生(お)いや茂れる 枝はなお影をやなせる
我もまた渚を枕 孤身(ひとりみ)の 浮寝の旅ぞ
実をとりて胸にあつれば 新たなり流離の憂
海の日の沈むを見れば 激(たぎ)り落つ異郷の涙
思いやる八重の汐々 いずれの日にか故国(くに)に帰らん

ラスト、池ヶ谷さんが唐突に言葉を発し、中川さんがそれに応えます。
-「コーヒー?」
-「うん。」
件のコーヒーカップを手に、2階に消える池ヶ谷さん。終演。

階下の中川さんから「かな!」と呼ばれて、池ヶ谷さんが下りてきます。
大きな拍手がおふたりに送られるなか、「ブラボー!」の声も聞かれました。
大粒の汗を浮かべ、笑顔でお辞儀を繰り返す池ヶ谷さんと中川さん。
そして池ヶ谷さんに促されて登場した佐藤悠人さんは
帽子、眼鏡、スカーフ、服、パンツ、演じた中川さんと瓜二つの姿だったのです♪
また大きな拍手が沸き起こったことは言うまでもありませんね。

公演後もパーティーは続きました。
公演を観た後、誰の気持ちも昂揚していたのが見て取れるようでした。
古くからの閑静な住宅街の一画。
そこを舞台に服飾系の関心と舞踊系の関心とが混じり合い、
化学反応を起こしたアートの熱が寒気を上回る様子は、
「学校町通」の地名にも相応しく、
往時の「カルチエ・ラタン」もかくやありけむと思うほどで、
明らかに、あの時刻における新潟市内の一大ホットスポットと化して、
魅力溢れる時空が広がっていました。

素敵な公演と素敵な時間。
笑顔に彩られた親密な空気感を堪能して、
公演前に購入していた新作Tシャツを抱え、会場を後にしました。
「またこんな機会があるといいな」、
名残惜しく、立ち去り難い気持ちも抱えながら。
(shin)


【註】右の画像はパフォーマンスのなかで、中川賢「画伯」が描いた池ヶ谷さんの肖像画。

Noism1 中川賢さん・池ヶ谷奏さん ダンスパフォーマンス

新潟の服飾デザイナー・ペインタ―、Yuto SatoによるUTOPIAイベント・オープニングの一環として、中川さんと池ヶ谷さんが、会場のUTOPIAアトリエで踊ります!
パフォーマンスの時間は短いそうですが、どうぞご覧くださいね♪

日時:6月2日(土)20:00
会場:UTOPIA / Yuto Sato アトリエ(新潟市中央区学校町通2-598)
入場料:1,500円(1drink付)※中学生以下は無料
詳細:http://utopiautopia.jugem.jp/?eid=1609

翌6月3日は、中川さんのトークイベントが富山であります!

●対談企画 中川賢×田辺和寛(DJ/ほとり座代表)
「コンテンポラリーダンスの魅力とは。Noismで踊り続けること」
6/3(日)オーバード・ホール(富山市芸術文化ホール)
映画上映13:00~14:40 上映終了後に対談
http://noism.jp/talk_aubade_nakagawa/

そして金森さんのNHK講座放送も!

●「人間を考える 美を語る」(5/1開催の講座を放送)
6/3(日)NHKラジオ第2
放送時間20:00~21:00
再放送6/10(日)10:00~11:00
http://www4.nhk.or.jp/P1940/

PC・スマホより「NHKラジオ らじる★らじる」でも聴けるそうです(ラジコでも)。
放送終了後は、「カルチャーラジオ 日曜カルチャー」のホームページのメニュー「ストリーミングを聴く」から放送後2ヶ月間、いつでも聴けるそうです。

諸々どうぞお楽しみに♪
(fullmoon)