「円環」記者発表に行ってきました♪

2024年11月13日(水)11:00 – 12:00、秋晴れの新潟市。りゅーとぴあスタジオAで、「円環」記者発表が開催されました。


登壇者は、井関佐和子さん(Noism国際活動部門芸術監督)、金森穣さん(演出振付家、舞踊家)Noism芸術総監督、近藤良平さん(振付家、ダンサー)彩の国さいたま芸術劇場芸術監督、コンドルズ主宰、の3名です。
井関さん、近藤さん、金森さんの順でお話があり、そのあと会場参加者の質問、オンライン参加者の質問と続き、最後に写真撮影です。司会はNoism広報の谷内紫乃さん。

●井関さんのお話:
・「円環」は3作品の総合タイトルであり、20周年イヤーにふさわしいプログラムと思う。
・近藤さんをお呼びしたのはNoism1メンバーのため。近藤さんは「ダンサーはダンサーを演じることがある」と話されていたことがあり、自分でも知らないうちに行動が「ダンサー」になっていたりする。メンバーは自分自身と向き合い、近藤さんと一緒に感情の旅を楽しんでほしい。
・Noism0+今回のゲストは皆40歳を過ぎている。若手育成を担う年代でもあるが、円熟の力を発揮できる年代でもある。舞踊に限らず40代以上の人たちがますます活動的になっていくといいと思う。
・『過ぎゆく時の中で』では、私は出演せず、穣さんとNoism1メンバーが踊ります。(!!)(←金森さんは山田勇気さんが踊った役のようです)

●近藤良平さんのお話:
・19年ぶりだが、Noismは変わらずにいる、在る、という感じで、自分も「帰ってきたな~」と思っている。
・今、段ボールにハマっていて『にんげんしかく』は、段ボールと人が関わる作品になる。
・メンバーとは最近会い、今、クリエーション中で、刺激をもらっている。困るくらいやる気がある。身体に真面目に取り組んでいる。この作品では自分を磨くというよりは、作品に溶け込んでもらえればと思う。
・作品は段ボールを使った、段ボールとの作品なので、不思議な珍しい作品になると思う。ケガをしないで段ボールと格闘してほしい。

●金森さんのお話:
・『過ぎゆく時の中で』は2021年、サラダ音楽祭での作品。このころ、コロナ明けで外国人メンバーが一斉に帰国した。集団と個人、どちらかとなったら個人を選ぶ。コロナという特別な状況下とは言え、無常なる集団性を感じた。と同時に集団性の尊さを感じた。
メンバーは通り過ぎていく。これまでに156名。この事業の価値を信じてくれる関係者がいてNoismは継続できてきた。長い時の流れの中で今がある。 
Noism1メンバーと間近で踊るのは初めてだと思う。井関も言っていたが、育成と同時に円熟した力を還元し、共有することで若いメンバーに届けられるものがある。
・Noism0新作『Suspended Garden-宙吊りの庭』は、あまり考えず、皆が集まってから創ったが、8日間であっという間にできた。それはゲストの身体性が前と変わっていなかったから。若い人や外部振付だと求める身体性から教えるので時間がかかる。(トン・タッ・)アンの音楽を含め、6人でこれから深めていきたい。
・『Suspended Garden-宙吊りの庭』とは、「劇場」が(も)メタファー。近藤さん的に言うと「段ボールの箱の中」。現実とは違う宙吊りの庭に舞踊家が集い、別れていく。(それは劇場だけではない)

お話は以上でこのあと質疑応答です。
ちなみに取材メディアは、NHK、BSN、TeNY、新潟日報、朝日新聞、月刊にいがた。
オンライン質問は、バレエチャンネル、チャコット、東北新社、埼玉新聞、ダンスマガジン。
と、錚々たるメディア陣で、Noism創設時とは隔世の感で感涙もの。。。
よくぞここまで大きく育ってくれました。(お母さんはうれしい、的)

ということで、たくさんの質問があり、とてもご紹介しきれません。いくつか。

●井関さん:
-Noism0新作で舞踊家としての実感は?
・『Suspended Garden-宙吊りの庭』で、十数年ぶりに宮河、中川に触れた。最初に触れる時、どう感じるのか、怖い・恥ずかしいという気持ちがあった。それは彼らも同じだったと言っていた。
しかし、触れた瞬間から、「あの時と同じ」、「変わらないものがある」と感じた。
20代の頃と感覚は変わらない。それぞれの「くせ」や、それに対して自分がどう思うかまで同じで、とても貴重だった。

-近藤さんの作品とNoism1の身体性について
・近藤さんの作品とNoism0のダブルビルでもよかったのだが、トリプルにしたのは、Noism1メンバーに多面的なものを自覚してほしいと思ったのと、観客の皆様にもNoism1の身体性の違いを見てほしいと思ったから。

●近藤さん:
-Noismへの思いは?
・Noismが20年続いている。続けている。存在している。知られていく。知られている。
ぐっと熱く、深くやりたい。
・Noism1メンバーはすごく踊れる方たち。自分の振りを5秒で取り込み再現する。取り込みがダントツに早い。自分は30分たつと自分の振りを忘れるので教えてもらっている。

-近藤さんにとって舞踊とは?
・模索しているが、解答は出ないと思う。舞踊というよりは、ダンス、踊る、舞う、と考えている。
特別なものではなく、自分としては「日常的」で身近なもの。日常の中にたくさんのものがあり、それがダンスになる。

-『にんげんしかく』の音楽は?
・内橋和久さんの音楽で、ダクソフォンという不思議な楽器を使った不思議な音。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E6%A9%8B%E5%92%8C%E4%B9%85

●金森さん:
-音楽は録音?
・『過ぎゆく時の中で』はサラダ音楽祭とは違い録音。ただ舞台は広く使えるので「劇場版スペシャル」になる。
・『Suspended Garden-宙吊りの庭』も録音。楽譜に書けるような音楽ではないが、メロディーがあり情感豊か。外界からふわっと聞こえてくる映画音楽のような。

-Noism1メンバーと踊ってみて
・若手と円熟では情報の量と質が違う。一緒に踊らなければ伝えられないものがある一方、こちらもメンバーの奔放な情報に刺激を受けている。
舞踊に限らず、若手と円熟の両輪を回していかなければならない。

-Noism0+ゲストについて
・一瞬をいかに生きるか。人間って何だろう。友情?友愛? 時を経て再び会う。
変らないもの、変わらないことへの愛。

お話たくさん。濃い記者発表でした!
ほか詳細、ぜひどうぞ!
▼公演詳細ページ
https://noism.jp/noism0-noism1-enkan/
▼公演プレスリリース
https://noism.jp/pressrelease_enkan_2024/

なお、メディア・活動支援会員対象の公開リハーサルは12/5(木)の予定だそうです。

「円環」公演、ますます楽しみです!!!

(fullmoon)

◎以下に、Noism公式から提供を受けたこの日の記者発表画像(15枚)を追加掲載します。是非、ご覧ください。

「きゃあ!あっちにもこっちにも♪」メディア登場ラッシュのNoismに嬉しい悲鳴♪

設立20周年の記念すべきシーズンのラスト、来週の「サラダ音楽祭」での『ボレロ』を前にして、このところのNoism Company Niigataはメディア登場ラッシュで、嬉しい悲鳴の「大渋滞」中♪

皆さんはそれら全てを追えているものと思いますが、こちらにもその「大渋滞」を纏めておきたいと思います。よろしければ、改めてご確認ください。

見逃し無料配信動画サービス「TVer」のTOKYO MX『アンコール!都響』#32 J.S.バッハ(マーラー編曲):管弦楽組曲より「序曲」「エア(アリア)」,ドヴォルザーク:スターバト・マーテル【配信期限あり・9/21(土)14:59まで】

2023年の「サラダ音楽祭」メインコンサートにおいて、J.S.バッハ(マーラー編曲)管弦楽曲より「エア(アリア)」を踊る金森さんと井関さんを観ることができます。
*8:15あたりで、メインコンサート映像の前説が始まり、おふたりのパフォーマンスについて、「その存在自体が美しい」「『美しい』の一言に尽きる」などと語られます。
*9:08頃より、今回の放送に向けての金森さんからのメッセージがあります。こちら、ご覧ください。


*10:06から「序曲」「アリア」が始まります。
*16:20頃、両袖から金森さんと井関さんが登場して「アリア」(17:47頃)に繋がっていきます。まさに「美しさの極み」です。配信終了まで何度も観ちゃいますよね。

NHK国際放送「ワールドジャパン」、「Direct Talk」での金森さんのインタビュー動画「Dancing into the Future」

15分に纏められたインタビュー自体、「稽古ism」Noismに関する奥深い内容が語られていて興味深いのは勿論ですが、途中にインサートされる欧州時代の若き金森さんの画像と動画はまさに「蔵出し」クラス!「喜びの舞」もので、必見です♪

③ 「新潟日報デジタルプラス」の連載記事(全4回)「新潟からの挑戦Noism(ノイズム)20年」です。
こちらでは、以下にX(旧twitter)「新潟日報ニュース」のポストへのリンクを貼らせていただきます。
【各記事の全文を読むためには、新潟日報パスポート(ID)の登録が必要となります。(新潟日報ご購読の方は無制限で利用できます。)】

〈1〉「国内初、そして唯一の公共劇場専属舞踊団…「りゅーとぴあ」から劇場文化をつくる」
〈2〉「財政難の新潟市が税金を投じる意義とは…存続問題浮上、文化的価値の評価は難しく」
〈3〉「地域に根ざした舞踊団になるには…アウトリーチやコラボに手応え、世代超えファン増やす」
〈4〉「金森穣さんが考える地方発信とは、井関佐和子さんの舞台への思いとは/インタビューで語る現在地」

Noismのこれまでを読み、新潟市のこれからを考える機会となる連載記事です。なかでも、「第4回」に出てくる新たなレジデンシャル制度における芸術監督の任期「1期5年、最大2期10年」という規定と金森さんの思いが気になるのは、この間ずっと変わりません。

…以上、今回は各メディアで「大渋滞」となっている昨今のNoism Comapny Niigataについて、「交通整理」を試みたつもりですが、「賞味期限」の早いもの(TVerの配信)から一つひとつ全てご覧頂きたいと思います。そして、更に支援に力を注いで参りましょう。

(shin)

NHK「ラジオ深夜便」インタビューに金森さん登場♪

皆さま、昨夜(2024年7月17日・水)はお聴きになられたものと思います。勿論、NHKが毎日放送している深夜番組「ラジオ深夜便」(アンカー:芳野潔)、その午後11時台後半、金森さん登場の「公共劇場専属舞踊団を20年」と題されたインタビューのことです。

こちらのインタビューですが、鈴木由美子ディレクターとオンラインで行われたものとのことで、約25分間の放送でした。

未だ「道半ば」とする金森さんのご意向と拝察しますが、聞き手から終始、「20周年おめでとうございます」のような言葉はなく、「前例のないことでしたので、あらゆる面で困難の連続でしたし、まあホント、あっという間に過ぎたっていうのが実感ですかねぇ」と語り出した金森さん。

その後、Noismの「20年」に発して、話は多岐に渡ります…。
・新潟市長交代期に(「幸か不幸か」(金森さん))政治的なトピックになってしまったNoism
・「日本初の公共劇場専属舞踊団」が意味するもの
・「新潟の文化」であることの理解の継続性
・舞踊や文化をめぐって、この国で変えるべきもの、可能性への献身
・「無理解の壁」との闘い、後世のための文化状況改革への闘い
・この国の文化状況を新潟から変えるための金森さんの闘い
・舞踊家たちの稽古への情熱
・芸術が社会に浸透していく循環の実現へ
・記念公演「Amomentof」に込めたもの、舞踊とは一瞬への献身
・消えてなくなること、残らないことの尊さ
・「時分の花」(世阿弥)を目の当たりにすることの醍醐味、一期一会、緊張感
・井関さんの20年間の献身、その身体に刻まれた記憶や注いできた情熱、舞踊への愛をマーラー交響曲第3番第6楽章『愛が私に語りかけるもの』を用いて作品化、未来に繋がれていく情熱、その刹那を共有して欲しい
・次週に迫る「東京公演」(←浦安にあるにも拘らず、「東京ディズニーリゾート」とされるテーマパークに似た、聞き手による「その」表現に、「『埼玉公演』でしょうが!」と思わず突っ込みを入れましたけれど)、「東京一極集中」(金森さん)の危うさ
・「劇場」とは(東京を介さずに)地方独自の文化を創造・発信する場所という理念
・金森さんの「私がダンスを始めた頃」、欧州で体感した社会と舞踊
・目指すもの: 舞踊芸術に従事する舞踊家の情熱・献身が社会のなかでうまく活用され、社会に還元され、この国の劇場文化が、地方が豊かになり、その劇場文化から創造されたもので平和に寄与したい(金森さん)
・舞踊家であること: その社会や他者にとっての価値、世界にとっての貢献、それを一人でも多くの後輩たちに伝えたい、可能性を見せてあげたい(金森さん)…

そんなこんなで、中身の濃い約25分間でした。

こちらのインタビューはNHKのネットラジオ「らじる☆らじる」にて、7月25日(木)午前0:00までの期間限定で配信中です。お聴きになりたい方はこちらからどうぞ。(金森さんへのインタビューは23:17頃から始まります。)

また、この日のやりとりに興味をお持ちになられた向きには金森さんの著書『闘う舞踊団』(夕(せき)書房:2023年)の一読をお勧めします。金森さんの信念と「闘い」の真実が余す所なく記されていて、読めば胸アツになること必至、必読の好著です。

さて、いよいよ「埼玉公演」3 DAYSも間近に迫って参りました。献身のさまを目撃し、刹那を共有すべく、是非、彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉へ♪お見逃しなく!

(shin)

20周年記念公演「Amomentof」記者発表に出席してきました♪

2024年4月19日(金)の新潟市は、雨こそ落ちてはこないものの曇天そのもので、薄着では肌寒く感じられるような一日でした。そんなお昼の時間帯(12:00~13:00)に、りゅーとぴあの〈スタジオA〉で開かれたNoism Company Niigata 20周年記念公演「Amomentof」の記者発表に出席してきました。

Noismの出席者は金森さん、井関さん、山田さん、そしてその後ろにNoism1及びNoism2全員の総勢25名。揃って居並ぶ様子は壮観でした。この日の会場には県内マスコミ各社が駆けつけていたほか、オンラインで約20社ほどの参加があったとのことです。
ここではその記者発表での様子についてご報告いたします。

☆井関佐和子さん(Noism 国際活動部門芸術監督): 今回の公演の意図と経緯
・新作2本(『Amomentof』『セレネ、あるいは黄昏の歌』)を上演。
・演出振付家の金森に依頼するにあたって、20年を通過点とみて、「蓄積」(=今までのもの)ではなく、飛躍のためにも、「蓄積」の次の一歩を、と思った。
・演出振付家への信頼、メンバーへの信頼とともに、観客への信頼がある。「次は何を作るんだろう」「それに観客はどう反応するんだろう」→金森には「何もテーマを決めることなく、今、現時点で作りたいものを作って欲しい」と依頼。→作品はほぼ仕上がりつつあるが、「20周年記念」に相応しいものになったと思っている。

★金森穣さん(Noism 芸術総監督): 今回の演出振付作品について
・芸術家は何もテーマがないところから創作は出来ない。必ず、そこには対象がある。
・『Amomentof』の対象は井関佐和子。その身体のなかにNoismの歴史がある。そしてマーラーの交響曲第3番第6楽章から感じる「舞踊とは何か」を井関佐和子という舞踊家を通して顕現させたいと思った。
・『セレネ、あるいは黄昏の歌』に関しては、現代の科学技術の進歩の恩恵は計り知れないが、それによって脅かされているもの、失われていくもの、忘れられているものがある。再び忘れてはならないものに向き合うきっかけを与えるものが芸術のひとつの力と考えている。「人間とは何か」ということを軸に集団として表現したい。また、『Amomentof』とも共通して、Noismとして蓄積してきた身体性が総動員されている。春夏秋冬、異なる身体性で創作している。

☆山田勇気さん(Noism 地域活動部門芸術監督): Noism2メンバー出演に関して
・研修生カンパニーNoism2は2009年に発足。地域の学校公演、地域のイヴェント等で活動している。今回は『Amomentof』に出演する。
・カンパニー全体としての層の厚さ、空間的な広がり、奥行き等を表現出来たら嬉しい。
・次の5年、次の10年、次の20年に向けて鼓舞したり、希望となるような公演にしたい。

★質疑応答:
【Q1】20周年を迎えてどんな思いか?
 -金森さん: 「A moment」、一瞬だった。20回、循環する四季の巡りを体験してきたが、ひとつとして同じ季節はなかった。時間の蓄積と多様性が大きな変化。20年ということに「節目」感はない。裏を返せば、毎日が節目。
 -井関さん: 現時点では、一瞬といえば一瞬だが、いろんな道のりがあった。この20年の歩みのなかで、この道しか自分を生かす道はないなと思った。この道を歩くというのをこの20年で定めた。

【Q2】公演に向けてここからどう進めていくのか?
 -金森さん: 作品としてラフスケッチは出来たが、更に練って練って試行錯誤。舞踊家の身体に入れていく。演出という行為は、そこにある空間・もの・気配などを活かすことではなくて、変容させること。それは振付も同様。舞踊家が変容していくさま。無自覚で潜在的な能力や才能、輝きみたいなものを引き出すために振付はある。そのためには時間もエネルギーも必要。我々のこのような環境でなければ辿り着けないもの。Noismにおける金森穣の舞台芸術は、金森穣のアイディア、コンセプトに基づいて生まれるものではあるが、ひとり残らず、参加するNoismの実演家たちによって生み出されるもの。そうした実演のされ方が重要。
 「どれだけの時間をかけてきたんだ、この人たちは」といったものを我々の舞台を通して感じて貰えるようでなければ、Noismとしての存在意義はないと思う。

【Q3】「一瞬の」と読める作品、もう少し説明して貰えないか?
 -金森さん: 20年前からずっとNoismを追ってくれている人たちにとっては涙がとまらないような作品になるかもしれない。極めて具体的にNoismの20年を想起させる演出をしている。一方、初めてNoismを観る人にとっても、舞踊芸術への昇華ぶりを目の当たりにして感動して貰える作品にしたい。

【Q4】改めて今、金森さんにとって、「舞踊とは何か」を聞かせて欲しい。
 -金森さん: 詩や音楽やあらゆる文化・芸術が生み出される前に、そして、我々が身体をもって生まれる限りにおいて、そこには既に舞踊がある。それだけ根源的な芸術こそが、「人間とは何か」を表現するのに最も相応しい、それが私の舞踊観。「人間とは何か」の問いは、どれだけ時代が変わり、社会が変容し、技術が発展したとしても問われ続けていくこと。そうした舞台芸術を新潟市という一地方自治体が文化政策として掲げていることの価値や意義には大きなものがある。生涯、命が尽きるまで舞踊と向き合っていく。「私を見てください。それが舞踊です」

【Q5】(メンバーへの質問)「20年」の歴史の節目に立ち会っている思いと公演への意気込みを聞かせて欲しい。
 -Noism1・三好さん(井関さんからの指名による): これまでの様々な人の顔が思い浮かび、プレッシャーに感じることもあるが、この一瞬にどれだけ同じような愛情を注げるか。今、自分が日本の劇場で働けていることは誇り。海外への憧れよりも、もっと素敵な「夢」を20年かけて作ってきてくれたという思いをのせて公演をよいものにしたい。

【Q6】ファンの人たちへの思いは?
 -金森さん: 感謝しかない。感謝という言葉では足りない。見て貰えなければ成立しないものだから。ただ、その人たちのためにやっているのではない。そのあわいを失すると芸術家として死んでしまう。物凄い感謝を感じつつ、背を向ける。その背中で愛を感じて欲しい。
 今、私が思っている未来は、このふたつの作品に全て込めている、それが今、演出家として言える全て。

【Q7】舞踊家・井関さんのどこに創作の源泉を感じるのか?
 -金森さん: 一舞踊家として様々な要素があるが、何より生き様とか献身する姿。これだけ舞踊芸術を信じ、献身する舞踊家を見て触発されない演出振付家はいないだろう。

【Q8】『セレネ』に関して、前作と今回作との関係性は?
 -金森さん: どちらも「セレネ」という役が出て来ること、イメージ的には前回は黒が基調の世界観に対して、今回は白と反転。(井関さんからの囁きがあって、)共通するのは儀式性。 

【Q9】『セレネ、あるいは黄昏の歌』、ヴィヴァルディを選んだ理由は?
 -金森さん: 四季の巡りのテーマからリサーチをした。最初にヒットしたのがヴィヴァルディだったが、「これは作品化できないなぁ」と思って、更にリサーチして、マックス・リヒターの編曲版と出会い、「これはいける」と感じた。
そのふたつの『四季』に関して、「何故この音楽には舞台空間が見えて、何故この音楽には見えないか」は本質的な問い。「この(創造の)能力は果たして何なのか、どこから来ているのか」、答えられる者はどこにもいないと思う。「見えた」ということ。

【Q10】井関さんの身体に蓄積された年月というアプローチには『夏の名残のバラ』もあったが、今回との違いなどあれば聞きたい
 -金森さん: そこは私の魂の同じ箇所から出てきている。過去作のなかで類似するものがあるとすれば、『夏の名残のバラ』だと昨日あたりから考えていたところ。しかし、今回は先にマーラーの音楽を舞踊化するというのがあり、その感動を表現するのに、井関佐和子を軸にしたアプローチをという発想。マーラーのあの崇高な音楽を聴いたときに、愛や献身や喜びや苦悩、「生きるとは何か」が迫ってくる。それを舞台上に顕現させる方法論として、井関佐和子という舞踊家が蓄積してきたものを舞台化することで、マーラーの音楽を自分なりに表現出来ると感じたということ。

…大体、そんな感じでしたでしょうか。その後に写真撮影がありました。

写真撮影をもちまして、この日の記者発表は終わりました。

以下に、Noismの広報スタッフより提供して頂いた「公式」画像をアップさせて頂きます。ご覧ください。(どうも有難うございました。)

最後に、この日の記者発表の席上、スタッフの方から『セレネ、あるいは黄昏の歌』の公開リハーサルが来月あること、そして、金森さんからは、その前作『セレネ、あるいはマレビトの歌』の再演予定もある旨、語られたことも記しておきたいと思います。

そして、テレビ各局の報道に関してですが、私が確認した限りでは、NHK新潟放送局が同日夕刻の「新潟ニュース610」内において、この記者発表を取り上げていました。そちら、一週間、NHKプラスで見ることが出来ますから、是非。おっと、同じものがもっと簡便に、こちらからもご覧いただけます。NHKの「新潟 NEWS WEB」です。どうぞ♪
あと、他局の放送、及び各紙誌の掲載が楽しみです。

それでは以上をもって、この日の記者発表報告とさせて頂きます。

(photos: aqua & shin)
(shin)

NHK新潟放送局「新潟の挑戦者たち」に金森さん&Noism登場♪(2024/04/17)

2024年4月17日(水)、NHK新潟放送局、夕方のローカルニュース番組「新潟ニュース610」中の「新潟の挑戦者たち」に金森さんとNoismが取り上げられたことは、皆様、ご存じのことと思います。無事ご覧になられましたか。

NHKプラスには「見逃し配信」がありますので、「新潟ニュース610」を検索して、「4/17(水)午後6:10」分をご覧ください。(放送後1週間視聴可能。)金森さんとNoismが登場するこの日の「新潟の挑戦者たち」は画面左上の表示時刻で「6:33」~「6:39」(動画の23:40~29:50)あたりとなります。

俳優・渡辺謙さんの「ふるさと新潟が元気になる、そのヒントを探ります」の言葉に始まり、男性キャスター(木花牧雄さん)が「地方が活性化するためには地域独自の文化が必要」とする金森さんの言葉が紹介され、コーナーが始まりました。

以下に金森さんが語った言葉を(かいつまんで)紹介していこうと思います。

「舞踊の場合は非言語。“ことば”に類型化される前の表現」
「舞踊は音楽よりも、詩よりも先に誕生している文化」
「人間が人間であること、人間たらしめている文化だと思う」

「地方にはまだ時間も場所もある。それは文化を醸成する上ではすごく必要なこと」
「ましてわれわれが志しているような独自の身体表現を生み出そうと思ったら、体と向き合って毎日毎日稽古を続けて、すごい時間をかけなければいけない」

「劇場がその地域だけで消費されるものではなくて、もっと交流を生むものだし、『世界とつながる場所なんだ』『いち地方自治体が世界とつながれる場所なんだ』という認識をこの国に根づかせたい」

「20年新潟に住んで、皆さんとともに作ってきたこの道をどうしたら未来につないで、さらに豊かに広げていけるか、皆さんで考えていただきたい」

「あなたにとって挑戦とは?」(渡辺謙さん)に対して、金森さんはズバリ「命をかけるにつきますね」!
続けて、「日本に観光に行くんだったら、絶対、新潟に行って、りゅーとぴあに行って、Noismを見たほうがよいと言う観光客がどんどん増えてくるようなね」と。

「劇場文化あるいは生のライブパフォーマンスの醍醐味ってまさに皮膚で感じること」
「情報技術がどんどん非身体化していけば非身体化していくほど、“この身体とは何か”を通して“人間とは何か”と向き合うこの劇場文化はこれからより重要になってくる」

そうした金森さんの言葉たちを受けて、
女性キャスター(石井由貴さん): 「いやあ、『命をかける』とおっしゃっていましたが、こうした熱い思いを持っている方が新潟にいらっしゃるってことがとても嬉しいですし、楽しみですよね」
木花牧雄さん: 「それにしても、舞踊の世界というのは奥が深いですよね。舞踊によって、新潟がどう変わっていくのか、これからの挑戦も楽しみですね」
石井由貴さん: 「はい、期待したいです」

6分程度のさして長い尺ではありませんでしたが、いつもながらの濃い中身でした。

石井さん同様、多くの方が「命をかける」の覚悟に胸を打たれた筈ですよね。金森さん、やはり、余人をもって代え難い類稀なる「芸術総監督」です。「新潟の宝」であり、「新潟の誇り」、私たちも負けずに熱い思いを持って、現在のこの一瞬一瞬、金森さんと同じ夢を見ながら伴走していかなきゃいけませんね。そんな思いを強くしました。よい夕方のひとときでした。

(shin)

インスタライヴで語られたNoism的「夏の思い出2022」

2022年9月25日(日)、2度目の3連休最後の日に金森さんと井関さんによるインスタライヴが配信され、Noism的に「てんこ盛り」状態だった今年の「夏の思い出」が振り返られました。アーカイヴが残されていますが、こちらでもごくごくかいつまんでご紹介を試みます。

☆「NHKバレエの饗宴」に関して
・中村祥子さんからの依頼によるもの。新潟でのクリエイションは2回。初日(3月?4月?)、パートナーの厚地康雄さんは(井関さんに源を発する噂を耳にしてか)大緊張。2回目にはもう出来上がっていて、「意外とサクッと出来た」(金森さん)
・舞台上での緊張感。「終わって舞台に走って行ったら、ふたりとも死にそうになってたもんね。ホントに怖かったんだろうなと思って」(井関さん)
1公演のみで収録のためのカメラが入る。「その瞬間を味わいたいのに、『これが残る』とかって考えてしまって」(井関さん)
・「あのふたりだから出来た」(井関さん)「本番、もうふたりしかいない。何が起こってもお互い助け合って、お互い委ねて、引っ張っていくしかない。その関係性がパ・ド・ドゥって良いよなぁって」(金森さん)
・「次世代の若い子たち、これから日本のバレエ界とか欧州でも活躍していくだろう子たちの『今』と直接話す機会もあったし良かった」(金森さん)

☆「聖地」利賀村に関して
・3年振りに行った利賀芸術公園(富山県南砺市利賀村)。作品を観るだけではなく、「心の師匠」鈴木忠志さんと話して、ドオーンとふたりで仰け反るような言葉を貰った。「この国に帰ってきて鈴木さんがいらっしゃったこと、鈴木さんがこれまでにやってこられたこと、その全てをこの国で実現できるんだということがどれほど勇気を与えてくれたか計り知れないし、今なお、鈴木さんが利賀でやられている活動、何より舞台芸術、作品を観たときに得られる感動、刺激、影響」(金森さん)「言葉で言えない。あの空間に入った瞬間、皮膚レベルで圧倒的な違いを感じる。刺激っていう言葉以外見つからない」(井関さん)「強めの、過剰なね」(金森さん)「過剰な刺激」(井関さん)
・来月(10月)、黒部市の野外劇場でのSCOT公演を初めてNoism1、Noism2みんなで観に行くことになった。「彼らが行きたいと言って、みんながまとまって、それが結果、全員だったってのが何より」(金森さん)
・「また絶対に踊りたい」(井関さん)「踊らせたい」(金森さん)「踊りましょ」(井関さん)

☆「SaLaD音楽祭2022」に関して
・『Sostenuto』:都響からいくつか候補が示された中からラフマニノフを選んだ。3月、『鬼』の創作中に、「歩いて」と言って井関さんに歩いて貰った金森さん、「OK!見えた。じゃあ5月まで」と。→『鬼』が固まってきた5月くらいに創作着手。
・クリスチャン・ツィメルマン(Pf.)・小澤征爾指揮・ボストン交響楽団のCDで創作したが、生演奏がどう来ようが、それによって作品が破綻しないように考えていたとして、「万が一、凄く遅く演奏されてもこれなら大丈夫。速くなったとしてもこれなら大丈夫」(金森さん)
・そのツィメルマンのCDも素晴らしいが、生には勝てないと口を揃えたおふたり。「生で聴いた瞬間にその世界に入っちゃう」(井関さん)「Noismと一緒に作るという感覚を持ってくれていて、その思いがそこにあるだけで唯一無二」(金森さん)「その瞬間しかできない。消えちゃうがゆえに美しさは半端ない」(井関さん)「音楽はデフォルトが無音。必ず静寂に向かう。静寂への向かい方が音楽の肝。それを感じるためには生じゃなきゃダメ。録音は時間的に定められている」と生演奏の醍醐味を語る金森さん。「このコラボレーションは続けていきたい」とおふたり、もうちょっとだけ舞台を拡げて欲しいという気持ちも共通。

☆新体制、新シーズン
・国際活動部門芸術監督・井関さん:「まだまだそこまでやれている実感はないが、役割分担もあるので、思ってたより大丈夫」「今はメンバーに伝えたいことを何のフィルターも通さずに話せるのが良いこと」(井関さん)「メンバーもこの体制になって、素直に聞けるようになったと思う。今は彼らの芸術活動の責任を担う芸術監督として言ってくれていると彼らも思える。見てると良い関係性だなと」(金森さん)

☆『Andante』の金森さん・井関さんヴァージョンを観る可能性は…
・「あれは彼らのために作ったものなので、彼らが踊っていくものなのですが」(井関さん)「できますよ、できますけど、100%無理なのが全身タイツで出るのは無理。多分、皆さんからも悲鳴が出るんじゃないかと。あれはやっぱり厚地くんの身体を以てして観られる、彼の身体という『作品』があるから」(金森さん)「踊りたいと思わないし、向き合い方が違う。彼らのために作って、彼らが美しく見えるようにやっているから」(井関さん)「期待には応えられない。皆さんの『あのふたりが踊ったら』という妄想がベストだと思う。それを超える実演は出来ない気がする」(金森さん)

等々…。ほか、夏を越えて次々壊れるおふたりの家電製品を巡る話も楽しくて、ホント笑えますし、新作に関する話や「兄ちゃん」小林十市さんについての話もあります。まだご覧になられていない方はこちらのリンクからアーカイヴでどうぞ。

(shin)

「NHKバレエの饗宴2022」に行ってきました!

8月13日(土)は お盆。そして台風襲来!そんな中、NHKホールで賑々しく開催された「バレエの饗宴」、満員御礼です!


私のお目当てはもちろん金森さんの新作『Andante』ですが、綺羅星のごとく輝く他の出演者たちにも興味津々です♪


14時開演で、20分の休憩を2回入れて17時終演、3時間の長丁場です。第3部の『ジゼル』は出演者が来日できず、上演されませんでしたが、それ以外はつつがなく進行し、たっぷりと堪能しました♪
個人的には、『牧神の午後への前奏曲』、『ロメオとジュリエット』、『ドン・キホーテ』に惹かれました♪

そして、最後の最後の大トリが、金森さんの『Andante』です! 中村祥子さんと厚地康雄さんの、この世の者とは思えない、抜群のスタイルと雰囲気にメロメロ✨
この美しいお二人のために金森さんが創った至上、至福、至宝の奇跡の作品✨✨
舞踊評論家 高橋森彦さんの解説をお読みくださいね♪


時間にして、約10分!
もっともっと見ていたい!それなのに終わってしまう〜・・・
感涙必至のこの作品、終演後はステージに金森さん、そしてソロバイオリンの小林美樹さんも登場して4名でのカーテンコール✨

短時間で金森さんが創ったという照明もとても素晴らしくて、うっとり大満足です♪

最後は出演者全員が「眠れる森の美女」のワルツでカーテンコール♪ 演奏は東京フィルハーモニー交響楽団、指揮は冨田実里さんでした。
「バレエの饗宴」は8Kで生放送されたそうですが、来たる9月18日(日)午後9時〜、Eテレ「クラシック音楽館」で放送されるそうです!どうぞお楽しみに♪

(fullmoon)

中村祥子さん×井関佐和子さんの「柳都会」vol.25を聴いてきました♪

Noism×鼓童『鬼』京都公演チケットの先行発売が始まった2022年4月16日(土)、夕刻16;30から、りゅーとぴあの能楽堂で開催された「柳都会」vol.25。初ホスト(ホステス)役を務める井関さんたっての希望で招かれたゲストは中村祥子さん。「舞踊家として生きる2人の女性、初の対談」を聴いてきました。

会場となった能楽堂に集まってきた聴衆はこれまでの柳都会とは違った雰囲気で、バレエダンサー中村さんお目当てという方も多かった様子。今回が初めての柳都会参加という方が大勢いらっしゃいました。

16:32。先ずは井関さんが、そして彼女の紹介を受けた中村さんが、それぞれ黒のワンピースに白い足袋を履き、摺り足で、橋掛かりから本舞台に用意された椅子へと進み出ました。

以下、この日のお話から少し紹介を試みたいと思います。

まず、スイスのローザンヌ国際バレエコンクールで出会った、中村さん16歳、井関さん17歳の頃の話から。
その時、初めてコンテンポラリーに挑戦したという中村さん、斜めの床で踊った『海賊』のヴァリエーションで「すってんころりん」とやってしまったことが紹介されるも、「転倒など重要なことではなく、将来性を見極めるのがローザンヌ」と井関さん。
その後、「挽回しなきゃ」との思いで踊った『告白』、中村さんは「何かが降りてきた」感覚で、(理由はわからないとしながらも、)亡くなったお祖母ちゃんと連動して踊り、自分なりに解釈して踊ることを体験、オーディエンス賞を受賞するに至ったとのこと。そしてスカラーシップを得て、シュトゥットガルトへ。

そこからクラシックバレエとコンテンポラリーと、2人の道は別々になるが、その奇縁を繋いでくれていたのが、2人とロパートキナ(ロシア:1973~)を好んだライターの故・浦野芳子さんで、平凡社から2人の本を出版してくれた、と井関さん。

シュトゥットガルトでの中村さん、靱帯断裂の大怪我をして帰国。そのまま契約が切れると、今度はウィーンへ。
やっと入ったバレエ団。コールドバレエだったところ、ソリストの役を貰い、意気込んで、ダブルピルエットの場面で3回まわったら、またしても「すってんころりん」。監督から「舞台全てを台無しにした。お金を払って観に来てくれたお客さんにも失礼」と言われ、プロの厳しさ、プロとは何か、みんなで作り上げていく責任を学んだ。
「『コールドが踊れないと、センターは踊れない』と言いますよね」と井関さん。

井関さんが、ナタリア・マカロワさん(ロシア:1940~)に指導を受けたことがある中村さんに、その印象を訊ねます。答えて中村さん、小柄ながら、「スーパーサイヤ人」のようなオーラを出していた人で、「ひとつひとつの形や振りではなく、内側のものを出すこと。何を表現したいのか見せなさい」と言われたことを紹介。その後、自分のこだわりを入れて踊ろうと思うようになったとのこと。
そして中村さん、ベルリンでウラジーミル・マラーホフ(ウクライナ:1968~)監督のもと、プリンシパルに昇格後も、自分らしさを忘れてはいけない、自分にしか出せないものを、自分ができるベストを、との思いで踊ってきたと。

日本のバレエ環境について:
「こういうふうにやらなきゃ」というふうに固まっていて、狭い。「自分をオープンにできる環境」や自由さがないのが残念と井関さんが言えば、中村さんも、「海外にはいろんなダンサーがいて、エクササイズにしても、みんな違った。美しくいたいという思いがあり、みんな違った格好をしていた。鏡に映してやる気を出したり」と。

ルーティーンに関して:
井関さんが、30代前半はルーティーンが凄かったと言うと、中村さん、「私も!」。「少しズレたら、ピリピリしていた」(井関さん)、「全く同じ道を通り、同じ物を食べないと舞台がうまくいかないみたいに考えて、凄くツラい生き方をしていた」(中村さん)
「その頃、自分は『失敗しない女』だと思っていた。今は『失敗してもいいや』と、舞台ではそれすら自由だと感じられるようになった。隣にいる47歳の人(金森さん)は、積み上げてきたものを崩して、失敗しないギリギリのところを狙える強さがある人」(井関さん)、「挑戦するのが好き。挑戦しないと」(中村さん)

中村さんと井関さん、中村さんと金森さん:
井関さんが柳都会に中村さんを呼んだのが先で、その後、金森さんが中村さん(と厚地康雄さん)を振り付けることになったもの、と明した井関さん。
中村さんは「金森さんは雲の上の人」で、「穣さんの作品を踊れるなんてあり得ないと思っていた」のだが、「NHKバレエの饗宴」に際して、自らの挑戦として、「穣さんの作品を踊らせて頂きたい」と申し出たとのこと。
そのオファーに、井関さんが「熱意は伝わるもの。穣さんはすぐにOKしていた」と話すと、中村さん、「厚地くんは『穣さんが忙しくて断られますように』と言っていた」など、リハーサルまでの間、2人とも不安だったと舞台裏を語った。で、そうして迎えたリハーサルを終えてみて、厚地さんは「一生の宝物になります」と言い、中村さんも「良いものを作りたい。穣さんの世界観に近付きたい」とその思いを口にしたところで、時間は17:20。そこから10分間の休憩に入りました。

(休憩中に、井関さんが紹介していた中村さんの本『SHOKO』をamazonでポチった私です。蛇足でした。)

休憩後は会場からの質問シートを基に、井関さんが中村さんに訊ねるかたちで進行されました。なかからいくつか、簡潔に質問と答えを記していきます。

*中村さんの今後の活動は?
中村さん「Kバレエ団を退団して、今はフリー。バレエの他にも、幅広いことが見えてきた。こういう時期も必要だったと受け止めている。もっと踊りたいとも」
井関さん「表現は息の長いもの。同世代の中村さんは大切な存在」

*一番楽しいこと、一番ツラいことは?
井関さん「楽しいこととツラいことは重なっていることが多い」
中村さん「若い頃と違い、日によって波がある。自分の求める動きじゃなかったりする日はツラい。それを受け入れて、前へ行く」
井関さん「ずっと集中しているのは無理。ONとOFFは大事。最近、Noismも良い感じの波が出来てきた」(笑)

*身体を鍛えること:
井関さん「していない」
中村さん「していない。背中の筋肉が綺麗と言われ、『絶対にしてますよね』と言われるが。でも、リハーサルが始まると、ババババァンって(筋肉が)付いてくる。要は使い方と意識なんですよね」
井関さん「脳からの指示で筋肉は変えられる」

*足袋とトゥシューズ:
中村さんの足のサイズは25.0cmなのに、そのサイズの足袋が入らず、26.0cmの足袋を履いて能舞台に立つことになったのは、甲高だったため。
中村さんの「トゥシューズはスリッパ」発言に、井関さん「!」

*食事で気をつけていること:
「イメージはササミ。ササミですよね。チョコレート、食べないですよね」と言われたりすることが多いという中村さん、「チョコレートは普通に食べるけれど、踊り出したらすぐにシュッとなる。筋肉もついてくる」

*バレエ、ちっとも上達しない。どうやればいい?
中村さん「私もまだまだだと思いながらレッスンしている。終わりがない世界。調子が悪いときには受け入れるしかなく、それを乗り越えてやろうと思える。スタジオに行くだけで気持ちがリセットされる。終わって外に出たときに新たな気持ちになっている。それだけで良いのかなと」

*ルーティーンに入れている食べ物は?
中村さん「納豆や卵といったタンパク質を摂るようにしている。他に、これは初めて言うけど、ヤクルト1000を飲んでいる。(息子はヤクルト400)」
井関さん「うちの人(金森さん)も毎朝、ヤクルトを飲んでいる。市内のスーパーからヤクルト、消えたりして」(笑)

*舞台に出るとき、緊張するのだが、どうすれば?
中村「緊張していてもいい。昔はお客さんへの意識強くて、怖いくらいの緊張感があったりしたが、ある時、舞台のここ、ハコで、自分のファンタジーを作って、自分の世界を楽しもうと思えるようにもなった。要は考え方次第」
井関さん「緊張しない方がヤバイ」
中村さん「ミラクルな舞台の経験ありますか」
井関さん「一度、幽体離脱のような経験がある。『今、舞台から出て行ってもいいよ』ともう1人の自分が言っていて、本当に自由な選択の感覚があった」
中村さん「『白鳥』を踊っている、ゆったりしていた時、何でも出来ちゃうみたいな、余裕の瞬間を味わったことがある」

*ダンサーとして一番の喜びは?
中村さん「終わった瞬間の客席からの拍手。『こういうふうに感じて貰えたんだ』と、それを浴びたとき」
井関さん「終わったときの(客席との)波長がピタッときたとき」
中村さん「踊っているあいだ、普通、客席は見えないのだが、『クレオパトラ』では落ちるとき、見える瞬間がある。これだけの人が一緒に舞台を支えてくれているんだという有難みを感じる」
井関さん「舞台は一期一会の会話」

…とまあ、そんな具合でしたでしょうか。完全にご紹介することは出来ませんが、雰囲気だけでも伝わっていたらと思います。(18:08終了)

中村さんと井関さん。「Fratres(同志)感」溢れるおふたりはもう息がピッタリ合っていて、いつまでも話していられるといった感じでした。金森さんの振付で一緒に踊る機会なんかも妄想されるだけでなく、早晩実現する日がやって来るのでは、とそんな途方もない期待も芽生えたトークイベントでした。

この後、インスタライヴに場所を移して、「柳都会」初、終了後の楽屋トークが配信されました。その模様はこちらからアーカイヴでご覧ください。(スタッフのように動く金森さんも楽しいですよ。)

(shin)

あの感動をご家庭で♪ NHK-BSプレミアムステージ『境界』放送迫る

さあ、いよいよ迫って参りましたね。勿論、NHKのBSプレミアムでの『境界』放送です。明日3月6日(日)の「プレミアムステージ」枠での放送は夜23:20から翌7日(月)2:59まで(『境界』は同番組前半にオンエア予定)。週頭の深夜となるので、リアルタイムで観ることが難しかったりするかもしれませんが、その場合は録画か、或いはNHKオンデマンドでの視聴も選択肢に入ってくることでしょう。

山田うんさん振付演出のNoism1『Endless Opening』と金森さんによるNoism0『Near Far Here』、あの感動の舞台がまた観られるかと思うと本当に嬉しくて嬉しくて、今、言葉にならないくらいです。

同公演に足を運ばれなかった方も、今回はBSの電波に乗って届けられますから、「近い」や「遠い」といった「境界」もなく、皆さんにとっての「ここ」で観ることができる機会な訳ですから、ホント見逃し厳禁ですよね。

この『境界』公演につきましては、当ブログにも稲田奈緒美さんのご批評を掲載させて頂いていますし、「ダンスマガジン」2022年3月号(新書館)には渡辺保さんによる批評(「官能の焔」)のほか、三浦雅士さんによる金森さんへのインタビュー記事(ダンスマガジンインタビュー「21世紀のバレエが動き始めた」)のなかでの言及もあります。どれも読み応えのあるものばかりですから、今回の放送を機に、改めて目を通して浸る愉悦の時間まで手にしたと言えようかと思います。はたまた、金森さんと井関さんによるインスタライヴでの公演「裏話」の方へ行くというのも楽しいでしょう。

そして、それら反芻的な振る舞いにとどまらず、こうしてテレビ放送されることには、様々な「境界」を越境していく波及効果に大なるものがあると信じます。

でも、まずは私が、あなたが、数時間後に迫った放送を堪能致しましょう♪
あな待ち遠しや、待ち遠しや♪

(shin)

祝!金森さん、紫綬褒章受章♪(速報)

新潟日報紙2021/4/28付け朝刊より

大型連休直前の2021年4月28日(水)、いつものように朝の支度をしていると、acoさんからメールがあり、今年の「春の褒章」における、このビッグニュースを知りました。嬉しいですね、これは。まさに新潟市の誇りにして宝。金森さん、おめでとうございます♪

今回も、内示から発表までの間の、口外できない「大人の事情」期間は相当長いものだったと察せられます。その分、この朝、私たちにとっては嬉しい嬉しい「サプライズ」だった訳ですけれど。

それにしても、井関さんと合わせて、このところの受賞&受章ラッシュ、めでたい、本当にめでたい♪

まずは簡単ですが、速報ということで。

【追記】県内各メディアも報じていますので、ご覧下さい。

*当初、「受賞」と表記していましたが、褒章関連では、「受章」が正しいことから表記を改めました。

(shin)