観る者の心に運ばれてきた爽やかな風、いつまでも吹かれていたかった - Noism2定期公演vol.17千穐楽♪

2026年3月8日(日)、外にはこの日もつめたい風が吹き、季節が逆戻りしたかのようで、どんなに身を縮こまらせて歩いても、身体は否応なく冷やされてしまうそんな一日だったのですが、新潟市のりゅーとぴあ〈スタジオB〉に若き振付家と若き舞踊家が運んできた風はそれとはまったくの別物でした。それはとても爽やかで、いつまでも吹かれていたいと願うような、そんな風。その場がNoism2定期公演vol.17千穐楽の公演会場だったと言えば、頷いて頂けるものと思います。

「振付家育成プロジェクト」の一環ということもあり、どこを切っても、溌剌とした若さが眩しい3日間4公演だった訳です。

Noism2メンバーへの贈り物といった感もある山田勇気さん振付演出のオープニングから、踊った4人の身体とその動きは伸びやかで自信や確信に満ちたものとして目に映じてきます。(出演:四位初音さん・平尾玲さん・鈴木彩水さん・大﨑健太郎さん)

真っ向勝負の正統派的味わいが魅力の坪田光さん振付演出『Island』。より大きな動きを獲得したふたつの身体のあいだ、「境界線」が越境を許したり、拒んだりするさまが鮮明になり、終始、心を揺さぶられて見詰めました。(出演:平尾玲さん・大﨑健太郎さん)

実験性に溢れた野心作、樋浦瞳さん演出振付『A Mosaic of Moments』。時折、『R.O.O.M.』や『NINA』など想起させられながら、顕微鏡を覗くような感覚で、振付家が求めた「ふたつの身体がひとつの生き物に」なって見えてくるに至りました。(出演:四位初音さん・鈴木彩水さん)

そして、武満徹に胸を借り、その楽曲の強度に敢然と挑んだ、中尾洸太さん演出振付『地平線のドーリア』。一音が響くだけで一瞬にして立ち上がる空間の強靭さに、「身体10割を貫き通して」拮抗することを求められた舞踊家ふたり。その身体は確かにその空間のなかに位置を占めて、まばゆく映りました。(出演:鈴木彩水さん・平尾玲さん)

それはそれは見どころに満ちた、素敵過ぎる公演でした。

劇場専属舞踊団の研修生カンパニーとして、長い時間を共有して稽古を積んできたNoism2のメンバーの身体と動きは、若く粗削りであるにせよ、揃ってNoism印の刻印を見出せるものばかりであり、受け継がれてきたものは確かにそこにありました。そして、この先、一人ひとりが大輪の花を咲かすのを期待させるに充分なものを見せて貰ったと思っています。爽やかな風を感じた所以です。

千穐楽のパフォーマンスに大きな希望を感じながら、一時間ほど友人と話した後、りゅーとぴあの外に出てみると、観客(或いは目撃者)になったその瞬間から思い出すこともなかった「冬」を思わせるつめたい風に再び見舞われることになりました。雪片も混じっていたほどです。しかし、若人たちによって希望を灯された心はそれなどものともする筈もありません。この先もずっとNoismを見続けていきたい、その希望は捨てない、そんな思いを益々強くして帰路につきました。

(shin)

「舞踊」を信じる者たちの熱が感じられたNoism2定期公演vol.17中日のマチネ♪

2026年3月7日(土)、前日に「弥生つめたい風」などと書いてみたものの、明らかにそれを凌駕する冷たい強風に閉口しながらも、りゅーとぴあ〈スタジオB〉の中は、幕1枚を挟んで、地続きの舞台と客席の間に熱の交感があったと断言出来ます。明らかに。

そこで地続きだったのは、高低差なく連続する床面だけの話ではなしに、「舞踊」を信じて創作した若き振付家と「舞踊」を信じて踊った若き舞踊家、そして「舞踊」を信じて舞台を刮目した観客、その全員が、「舞踊」そのものの懐に抱かれるかたちで、1時間強の時間を共有した様も間違いなく地続きだった訳です。

Noism2定期公演vol.17「Three Duets in the Black Box」、山田勇気さん振付のオープニングに登場する「黒い箱」のなかにあったもの、それは舞踊家をして「舞踊」に駆り立てる悦ばしき動機或いは衝動であると同時に、全き献身を求めずにはいない「舞踊」の厳しさであったのだろうと理解するものです。

山田さんのオープニングを含めて4つの「舞踊」作品と、それらを包含する「舞踊」そのもの、そのどちらをも意識せずにはいられない見逃せない好舞台、とそう言い切りましょう。「舞踊」が好きでよかった、そんな思いに満たされています。

〇オープニング・演出振付:山田勇気さん(Noism地域活動部門芸術監督)、出演:四位初音さん・平尾玲さん・鈴木彩水さん・大﨑健太郎さん
上にも書いた通り、若き舞踊家の「今」への深い理解に基づき、一人ひとりの成長を信じて、限りない愛情を注ぐ作品。Noism2メンバーの伸びやかさが目に焼き付きます。

●『Island』演出振付:坪田光さん、出演:平尾玲さん・大﨑健太郎さん
衣裳も照明も奇を衒ったところのない、スタイリッシュな作品。根底にあまり年齢差のない舞踊家2人へのシンパシーの目線が感じられる。前日のアフタートークで語っていた通り、詰め込まれた振りの数々を高速に処理していく様が見もの。

〇『A Mosaic of Moments』演出振付:樋浦瞳さん、出演:四位初音さん・鈴木彩水さん
(幕があがり、目に飛び込んでくる順番で)照明、中嶋佑一さんによる衣裳、そして動き、今公演の4つの演目のなかでも、ひときわ異彩を放つ作品。蠢き、縺れて絡み合い、重なっては分離し、再び融合する2つの身体は見ていて飽きることはない。

●『地平線のドーリア』演出振付:中尾洸太、出演:鈴木彩水さん・平尾玲さん
この日のマチネ上演前の「前説」で、「ほぼカウントをとっていない。相手がいかなかったら、いかない。カウントで踊るのではなく、2人の空気や間(ま)で踊る作品」と。武満徹の音楽の強度に身体の強度で拮抗しようとする挑戦に息をのむ。

どの作品も刮目必至の好演目です。

更に、やはりと言うべきことながら、どの作品にも、Noismの舞踊ボキャブラリーが顔を出して来る瞬間があり、その度に微笑ましい気持ちになってしまいました。(それは前日も同様でした。)Noismが磨いてきたNoism印の動きは確かに手渡されてきているのですし、それはこの先も変わらないことでしょう。これを豊かさと呼ばずして、何と呼びましょう。

中日のマチネについて、これを書いているうちに、時間は18時をまわりました。ソワレの舞台の幕があがる頃です。一日2公演は大変でしょうが、そのことも若き舞踊家にとってはひとつの「経験値」となるもの。必ず、やり切ってくれるものと信じます。

(shin)


Noism2定期公演vol.17「Three Duets in the Black Box」初日、得も言われぬ瑞々しさを満喫♪

2026年3月6日(金)、芽吹きの前触れたる弥生つめたい風も、まさにこの公演にベストマッチするものに感じられてしまうほど、得も言われぬ瑞々しさがこの上なく目に眩しかった、りゅーとぴあ〈スタジオB〉。Noism2定期公演vol.17「Three Duets in the Black Box」を満喫してきました。

今公演、Noism2の定期公演として、踊るのは若手舞踊家であり、また同時に「振付家育成プロジェクト」の一環として、振り付けたのがNoism1メンバー3人であるという、それぞれに「若き芽」がそれぞれの「今」に向き合い、個々人として、カンパニーとして、しっかりと明日をも見据えた公演スタイルと言えるものです。魅力的でない筈がありません。

冒頭まず、山田勇気さんの振付で、4人の出演者全員で踊られるオープニングが置かれ、その淀みない展開が魅力的なイントロダクションとして機能し、後に控える3つのデュエット作品への期待感を高めてくれるでしょう。

幕がおりると、下手(しもて)側の袖から、その山田さんが登場してご挨拶。そのなかで、続く3つの作品それぞれの直前に、振付をしたNoism1メンバーが作品や経緯について話してから上演するかたちで進行することが告げられました。

この初日レポートの眼目ですが、3作品それぞれの上演前に話された内容と、終演後のアフタートークについて順番にかいつまんでご紹介することとし、三者三様にして、その清新さがとても魅力的だった3つの演目そのものについては書かずにおきます。その点、ご了承願います。

『Island』(演出振付:坪田光、出演:平尾玲・大﨑健太郎)
坪田光さん: 「他者とは何か。自分と自分以外のものの間の境界線をどう捉えるか。ただ止まっているのではなく、生き続け、更新されていく時間。今を生きる身体と、それを動かす舞踊家の意志にフォーカスした。舞踊家の熱量を感じて欲しい」

(10分休憩)

『A Mosaic of Moments』(演出振付:樋浦瞳、出演:四位初音・鈴木彩水)
樋浦瞳さん: 「舞踊作品を作るたび、踊りとは何か、身体とは何かを考える。自己を見つけて、掘り下げて、その探訪の先に変身・変貌すること。今回の衣裳は中嶋佑一さんにお願いし、テーマや2人の関係性など頭の中身をさらけ出して伝えようとしていくと、中嶋さんから帰ってくるデザイン画や言葉によって、世界観を深めていくのに繋がった。身体は自分が生きてきた経験の集積。2人の皮膚・目・呼吸が何を語るのか感じて欲しい」

『地平線のドーリア』(演出振付:中尾洸太、出演:鈴木彩水・平尾玲)
中尾洸太さん: 「武満徹の楽曲からのインスピレーション。メロディアスと歪さが重なり合う瞬間が多々あり、空間性が提示される。今作では振りを減らしていくことを目指したが、それはそのまま強度が増していくことである。古代ギリシャの「ドーリア式」(建築)を意識し、1枚の「長方形」の布をベルトで縛ったアシンメトリーで偏りのある衣裳とした。記憶に残る舞踊家になって欲しい。記憶に残る舞踊を見せられればと思う」

ここからは、アフタートークについてのご紹介に移ります。

山田さん: 「3人の『講師』(金森さん・井関さん・山田さん)がいて、コンセプトからディスカッションを行い、講評(『審査』)も行いながら進めてきた創作だった」

Q: 自分の意図とは別に滲み出してしまったものはあるか。
 -坪田さん: 「緊張し過ぎて、受け取る準備出来ていなかった。イメージとの差、う~む。緊張とけていない…」
 -樋浦さん: 「実は3人の舞踊家と向き合ってきた。負傷があって、キャストが変わって、最初のイメージとは違うものとなったが、それによって客観的に自分の振付を見詰めることが出来た」
 -中尾さん: 「インスピレーション直行で、意図して作っていないから…。2人の性格と若さが出ていたが、そのふたつによって大きく変わってしまう作品」

Q: 踊っている最中の頭の中はどうなっているのか。そのあたり、どう思うか。
 -坪田さん: 「頭の処理の能力を上げて欲しい思いがあり、振りを詰め詰めにした。瞑想とは異なる集中。一つひとつの動きに全てを出し切って、それを連続していくこと」
 -樋浦さん: 「拘っていたものは目や手、背中。『手が目なんだよ』とか『目で空間を触れ』とか言ってきた。頭で考えているというよりは、感じて踊っているなと」
 -中尾さん: 「何も考えていないだろう。言葉にも出来ない速さなので」

山田さん: 「オープニングは、良いとか悪いとかではなく、凄く緊張していた。一期一会の何かが生まれたなと。で、そのオープニングの使用曲はマイケル・ナイマンの2曲。1曲目は今ちょっと思い出せないが、2曲目は『プロフィット・アンド・ロス』というタイトルで、モーツァルトが得たものと失ったものを表すもので、今回の公演に合うと思った」

Q: 樋浦さんはSNSに描いた絵をあげているが、今回の作品と共通するものはあるか。
 -樋浦さん: 「絵を描き始めたのは、踊りや動きを見た後に、それをなぞりたいという思いから。共通するのは必然と思う」

Q: 振付は今回が初めてではないが、変化や成長の感覚は。
 -坪田さん: 「Noism2に振り付けるのは今回が初めてで、自分がNoism2にいたときのことを思い出していた。要求は今まで以上に高かった。自分がもっともっと要求出来たら良いなと思った」
 -樋浦さん: 「作り始めると、思い込みが激しいタイプ。創作過程で見て貰って、『本当にそれで良いのか』などと言われ、作っては壊し、作っては壊しだった。この環境だからこそ、色々言って貰える。自分のなかにそういう視点を持たなければと思う」
 -中尾さん: 「楽曲の選択やプロセスには成長したことを感じる。動きに頼らない舞踊。穣さんにも褒められたりしたが、『もうないかもしれないから、よく聞いておけ』と言われて、怒られているみたいだった」「褒める時もそうなんだ(笑)」と山田さん。

Q: 常に何か作りたいと思っているのか、それとも、この機会があったからなのか。
 -坪田さん: 「Noism2に作るから、これになった」
 -樋浦さん: 「Noism2の5人とインプロしてみて、ハッとなったのが、この作品との出会いだったと思う」
 -中尾さん: 「武満徹のこの曲との出会いは4年前。それ以来、頭のなかで構想していたかもしれないし、勇気さんからこの話があって始まったのかもしれない」

Q: これまでにない「縛り」のある構成、「前説」のある構成にした理由は。
 -山田さん: 「デュオは関係性の原点。たとえ、1人で踊っても、そこに不在の関係性があるし、『2』には無限の可能性がある。あなたと私しかいない状況で作ってみて欲しかった。身体と向き合って何かを作ることを求めた。
構成には紆余曲折があり、幕間の作品やエンディングを作ることや映像を使うことなども考えたが、一つひとつの作品をしっかり見て貰いたいということで、このかたちになった」

山田さん: 「成長を見た。振付家が生まれる瞬間に立ち会った感覚がある。記憶に残るものになっていて欲しい」

…概ね、そんな感じでしたでしょうか。

踊られた3作品には触れずに書かせて貰ったのは、初日のレポートでもあり、これからご覧になる方々が初めて作品に向き合った際に抱く「ファースト・インプレッション」を変に損ねることはしたくなかったからです。今はまだまだ「Black Box」の中、ということで。
劇場専属舞踊団だからこそ、20年以上かけて築いてきた環境の豊かさがあればこそ、初めて可能になるような形式の今公演。継承することの何たるかを目撃する機会になるでしょう、間違いなく。生き生きと芽吹く新鮮な才能を前に、新鮮な気持ちで見詰めて欲しいと思います。

(shin)

「Noism2定期公演vol.17」活動支援会員/メディア向け公開リハーサル&囲み取材に参加してきました♪

2026年2月26日(木)、上着を着る必要もないようなお昼どき、りゅーとぴあ〈スタジオA〉を会場に開催された「Noism2定期公演vol.17」活動支援会員/メディア向け公開リハーサル及びその後の囲み取材に参加してきました。

この度の定期公演(3/6~3/8・4公演)は、「振付家育成プロジェクト」として、Noism1メンバーの中尾洸太さん、坪田光さん、樋浦瞳さんがNoism2メンバーに振り付けた3つの新作デュエット作品をその内容とするもので、題して「Three Duets in the Black Box」です。

この日は12:15からの公開リハーサルで、その3作品を15分ずつ見せて貰いました。

最初は、坪田光さんの『Island』(出演:平尾玲さん大﨑健太郎さん)。

Noism1 坪田光さん

続いて、樋浦瞳さんの『A Mosaic of Moments』(出演:四位初音さん鈴木彩水さん)。

Noism1 樋浦瞳さん

最後に、中尾洸太さんの『地平線のドーリア』(出演:鈴木彩水さん・平尾玲さん)。

Noism1 中尾洸太さん

年末からずっとのしかかっている重苦しい空気感をひととき忘れて、舞踊に見入る時間、その贅沢なことと言ったらありませんでした。少し忘れてしまっていたそんな感覚。振付家1人と舞踊家2人。それぞれの「作品」イメージを間に置いて、若き振付家と若き舞踊家が対峙しながら創作を行う様子は、とても瑞々しく、新鮮味溢れる時間でした。

3つの作品(の断片)の外見的印象からのみではなく、細かな動きのブラッシュアップを行う3人の若き振付家の姿からも、個性の違い、もっと言えば、多様性を感じることが出来ました。

その後、場所をホワイエに移して行われた「囲み取材」に立ったのは、Noism地域活動部門芸術監督の山田勇気さんと、中尾さん、坪田さん、そして樋浦さんの4人。そこでのやりとりからご紹介を試みます。

〇今回の公演の全体像・趣旨
-山田勇気さん 「研修生の定期公演は、これまではダンサーの育成が中心だったが、クリエイターも対(つい)で成長していく必要がある。専属舞踊団として、作る人も育てていかなければならないということで、少し前から始めていた振付家育成プロジェクトをNoism2のメンバーと新作を作ってNoism2の公演のなかでやってみようということになった」
(今回の「デュエット」という制約に関して) 「2人という小さな単位で、身体と身体で何が出来るかにフォーカスして、舞踊家と舞踊を作ることを見詰め直すことで、振付家としての自分の立ち位置・欲望などがより良く見えてきて、次に活かすことが出来ると考えた」
(3人それぞれの作品の仕上がりに関して) 「今年に入ってから、段階を踏んで、国際活動部門芸術監督(井関さん)、芸術総監督(金森さん)も含めた3人で途中経過から見て講評を与え、ディスカッションしてやってきたことは今までにないプロセスであり、完成度が高まってきた」

●今回の作品のテーマ、作品に込めたもの
-坪田光さん 「デュエットということで与えられた課題はすぐに肌で感じた。それをNoism2の作品でやるに際して、『試練』とそれに対してどう闘うかを作品に込めれるようにした」
-樋浦瞳さん 「自分が身体をどう捉えているかを見詰め直した。身体はその人が生きてきた経験や瞬間の集積であり、どんどん変わっていくもの。生まれ変わりながら生き続けていく状況を作品にした」
-中尾洸太 「今回は音楽自体がテーマ。しかし、音楽を表現するものではなく、武満徹という圧倒的な芸術家の音楽に対して、どう向き合うか、そのプロセスの集積・結果のようなものがこの作品になったと実感」

〇山田さん担当のオープニングや構成の見どころについて
-山田さん 「デュエット作品は密な空間が生まれるものだが、集団として、舞踊家全員が集まって踊っているシーンはやりたいし、見せた方が良いと思っている。『これがNoism2だ」という集団性を最初に見せるのがオープニングの意図。そのなかの一人ひとりが作品のなかでどんな姿を見せていくか。構成は色々試しているが、結果はシンプルなものになりそう。一つひとつの作品を楽しんで貰うために、時間をちょっと作るようなシンプルなもの」

●選曲について
-中尾さん 「武満徹は西洋の音楽と日本や東洋の独自性を混ぜ合わせたり、再定義しようとする問題意識があると思う。自分自身、祖母が日本舞踊を教える稽古場の傍ら、クラシックバレエを踊ってきたので、同様な問題意識が根っこにあると思っている。なんとなくこのタイミングかなと思い、自分の挑戦でもあり、この曲(『地平線のドーリア』)を選んだ」
-樋浦さん 「曲が先にあったのではなく、誰に踊って貰うかを決めて、テーマが見えてきて、それを表現するために思い至った曲(『Alva Noto & 坂本龍一『By this River – Phantom』)。もともと、ブライアン・イーノの原曲が好きで聴いていた。今回、テーマ設定した際、繰り返すメロディや脈打っている感じを曲のなかに見出したことでやってみようと決めた」
-坪田さん 「4曲使っている。まず作品のなかにある波から想像して、『旅立ち』とか『出会い』とか『試練』とかを基に曲を探した。で、3曲目のショパン(「12のエチュード Op.10-4嬰ハ短調」)は『試練』にピッタリだと思って選んだ」

〇山田さんの目に映る3人の振付家の印象
-山田さん 「その人が出ていると言えば、出ている。性格というよりは、その人の物の見方・考え方・感じ方。それが物凄い集中力でひとつの事に向かったときにこういうかたちで出力されるのかと。根っこにあるものが自分だけのものにならずに、お客さんと共有可能なものになるのか、舞踊という身体を使った限られた表現のなかでどういうふうにしていくのか、それぞれの『色』が以前より明確になってきた感じがする」

●Noismを巡る現在の「不安定」な状況下での公演に関して
-山田さん 「本来あるべきかたちとして、芸術総監督の金森が言っていたことでもあるが、『今回が最後だと思って作らなければならないし、今回が最後だと思って踊らなければならない。それはいつでもそういうもの。今回もそう」
-坪田さん 「我々は舞台の上での活動なので、舞台でどう闘うかだけだと思う」
-樋浦さん 「本当に一期一会で、毎回、毎舞台。以前にもNoism2メンバーと作品を作ったことがあるが、そこから巣立って、別の環境で踊り続けている人もいる。このNoismという場所が、舞踊家・振付家含めて、大きな野望の旅の途中であることは今も昔も変わりはないと思う。一つひとつの瞬間を大切にしたい」
-中尾さん 「大変です、気持ちが。不安のなかで作品を作ること。不安や恐怖が積み重なっていく実感がある。そのなかで自分と向き合って作品を作ることの恐怖、純粋に。作品に向き合う、舞台に向き合うという気持ちはあるが、まだ25歳でしかないので、不安で一杯。色々なことに凄いビビっている。でも、それを隠して頑張っている」

…大体、そんなところでこの日の囲み取材は終わりとなり、その後、進行役のNoismスタッフ・高橋和花さんより以下の事柄が告げられました。
・3/6(金)公演の後に、アフタートークがあること。
・樋浦さん作品の出演者が、当初、キャスティングされていた沖田風子さんが怪我のために降板し、四位初音さんの出演となったこと。(←囲み取材の際のやりとりでも、fullmoonさんから質問があり、この交替については触れられていました。)
・3/6(金)及び3/7(土)14時の回がチケット完売となり、千穐楽の3/8(日)もチケット残り僅かで、3/7(土)18時の回のみ、まだ余裕がある販売状況とのこと。なお、Noism Web Siteの「News」欄に【チケット販売・最新状況】が随時更新し掲載中とのこと。

諸々混迷を極める状況下ながら、弥生3月、春風のような爽やかな公演が待たれてなりません。大注目ですよ、皆さま。

(photos: aqua & shin)

(shin)

「新潟県文化祭2024」こども文化芸術体験ステージ(2024/11/23)、Noism2に胸熱!

2024年11月23日(土)勤労感謝の日、十日町市の越後妻有文化ホール「段十ろう」を会場に開催された「新潟県文化祭2024」こども文化芸術体験ステージに、午前午後2回、Noism2が登場し、「未来を担うこどもたちが舞台公演を通じて豊かな感性や創造性などを育み、文化芸術に興味・関心を持つきっかけになってほしい…」と設けられた機会において、その溌剌としたパフォーマンスで観客からの温かみのある大きな拍手を浴びました。

私が観に駆けつけたのは14時開演の第2部(推奨年齢:中学生以上)。霰が落ちてきたり、時折、篠突く雨も寒々しい、かと思えば、陽が差す時間帯もあったりという、冬を前にした忙しい天候のなか、車で高速道路を走り、一路、十日町市を目指したような次第です。

2017年にオープンしたという越後妻有文化ホール「段十ろう」。今回が初めて訪れた建物でしたが、十日町の中心市街地に位置する、なかなか綺麗な複合施設でした。

13時15分に開場。「新潟県文化祭」ということもあり、ホワイエには新潟県産木材を紹介するコーナーが設けられていて、木琴やら色々な玩具、それに木製スピーカーほかが並べられており、木を使って仕上げられた段十ろうの内装によくマッチしていました。

そして、開演時間の14時になります。緞帳の手前、上手(かみて)と下手(しもて)両側から、Noism2ダンサーの9人が現れ、横一列となるが早いか、心臓の鼓動、心拍音が聞こえてくると、それに合わせてビートを刻み始める9人。黒いジャケットに黒いパンツ姿。緞帳が上がってから繰り出されたクールでソリッドに絡んでいくスピーディーなダンスは、先ずは名刺代わりのご挨拶。そのスタイリッシュな幕開けで、もう、つかみはOKです。そんなふうにはじまったこの日の舞台。

次いで、地域活動部門芸術監督・山田勇気さんとNoism2リハーサル監督・浅海侑加さんがステージ下手に現れてご挨拶。そこから、浅海さんから『砕波』が紹介されました。その内容をかいつまんで記しますと、港町・新潟市が開港150周年を迎えたのを機に、Noism芸術総監督・金森穣さんが、佐渡の太鼓芸能集団・鼓童の楽曲に振り付けた作品であり、Noism2メンバーは波の動きを踊り、それを通して、波の様々な感情を表現するとのこと。「激しく荒れ狂う海。怒っている波、泣いている波、笑っている波…」(浅海さん)

8人のダンサーによって、日本海の様々な波、その感情が身体と音楽とで可視化されていくさまを目撃する私たち観客は、一人残らず、言葉を用いない舞踊の何たるか、それを身を以て感得していくという豊かな時間を享受したのでした。更に、子どもたちを含めて、Noismを初めて観るという人も多かったのだろう客席。『砕波』のラスト、舞台上の動きが止まってから、場内に響いた温かい拍手には舞踊への驚きといったものが聞き取れるように感じられました。

次の演目にいく前に、再び山田さんが舞台に現れると、スクリーンを用いて、国内唯一の公共劇場専属舞踊団である「新潟のダンス集団Noism(Noism Company Niigata)」を簡潔に紹介していきました。

そのなかで、私が観た午後の部では、江川瑞菜さん(愛知県出身)、与儀直希さん(米・ロサンゼルス出身)、高田季歩さん(兵庫県出身)、四位初音さん(宮崎県出身)の4人も舞台にあがり、山田さんからの質問に、ひとりひとつずつ答えていくことを通して、Noism2というカンパニーの横顔が伝わってきました。それらもご紹介しましょう。

*Q:Noism2の生活はどんなふうか? → A:四位さん「朝9時のNoismバレエ、Noismメソッドに始まり、途中に休憩を挟んで、18時まで舞踊に向き合う日々」
*Q:どうして踊りを始めたのか? → A:高田さん「身体を動かすのが好きで、3歳でクラシックバレエを、小学校6年生のときにコンテンポラリーダンスを始めた。コンテンポラリーダンスの全身で表現することに惹かれた」
*Q:踊りの魅力とは? → A:与儀さん「踊りの表現が人生経験が深まっていくのと同時に深まっていくこと。そして人と繋がるきっかけになること」
*Q:辞めたくなったことはないか? → A:江川さん「思いつかないが、怪我をしたとき、前のように踊れない日々は辛かった。踊ることが好きなのでワクワクしている」

出前公演やアウトリーチを通して「舞踊の種を植える」Noism2。自分の夢を叶えるために稽古に打ち込む研修生カンパニー。そしてホーム・りゅーとぴあで「くらす」「つくる」「(文化を)そだてる」Noism Company Niigata、と。

Noism2メンバーの9人
新メンバー3人をアップで

時刻は14:30、今度は浅海さんによる『火の鳥』の紹介です。2011年に金森さんがNoism2のためのオリジナル作品として振り付けた作品で、「今を生きる子どもたちに向けたメッセージ」が込められている。それはシンパシー(共感・共鳴)、心の動き。そして次のように、あらすじも紹介されました。
*少年: 自分の殻に閉じ籠もり、闇やネガティヴなエネルギーに囲まれている。
*火の鳥: 少年を強く優しいエネルギーにより、殻の外へ連れ出す。
*黒衣(若者たち): 嫉妬にかられ、火の鳥に襲いかかる。
 → 痛めつけられた火の鳥は火が消えてしまうことに。
 → 少年の流す涙によって、若者たちの心に何かが起こっていく…
…「それを観て聴いて感じて欲しい」(浅海さん)

この日の舞台、「少年」は髙橋和花さん、「火の鳥」は矢部真衣さんが、そして6人の「若者たち」がストラヴィンスキーの楽曲に乗って躍動しました。この演目、とてもエモーショナルで、Noism入門にはもってこい、まさにお誂え向きとも言えるものなのでしょうが、いつ観ても、鳥肌もので、心を激しく揺さぶられてしまいます。それはこの日も同様でした。Noism2メンバーたちの熱演に対して、場内からは今度は熱い思いが込められた拍手が長く長く続きました。
この『火の鳥』ですが、来春3月のNoism2定期公演vol.16(2025/03/08&09)でも踊られることが告知されています。この同じメンバーで更に進化・深化した『火の鳥』が今から楽しみです。

Noism2のメンバーの皆さん、山田さん、浅海さん、胸熱で素敵な舞台を有難うございました。この日観た子どもたちも、大人たちも、みんな新潟(市)にはNoism Company Niigataという世界に誇るべきカンパニーがあることをはっきり認識し、「文化」というものを心ゆくまで堪能したものと思います。冬枯れの景色のなか、そんな高揚する気持ちのままに帰路につきました。

なお、この日の舞台の模様は、後日、編集したものがYouTube(新潟ステージチャンネル)にアップされる予定とのことでした。本日、ご覧になられなかった方はそちらをお待ちください。

(shin)