「ランチのNoism」#13:カイ・トミオカさんの巻

メール取材日:2021/7/17(Sat.)

もう圧倒的な舞台の力を見せつけたストラヴィンスキー没後50年 Noism0+noism1+Noism2『春の祭典』公演が全てのツアー地を巡り終え、次のサラダ音楽祭に向けて、活動支援会員を対象とする公開リハーサル(1日目)が行われた日、2021年8月5日。「ランチのNoism」も取り急ぎ、その13回目としてカイ・トミオカさんの巻をお送りします。

今回、故あって、少し予定を変更し、以前に、クリスマスの番外編として、その料理の腕を見せてくれただけでなく、その背景に料理哲学みたいなものを存分に感じさせてくれたカイ・トミオカさんが「ランチのNoism」レギュラー回に再登場してくれました。

では、いってみましょうか。

♫ふぁいてぃん・ぴーす・あん・ろけんろぉぉぉ…♪

りゅーとぴあ・スタジオBに舞踊家たちの昼がきた♪「ランチのNoism」!

*まずはランチのお写真から

おおっと、これは絶対…
そう、顔になってますね、顔に。
お茶目です、カイさん!

1 今日のランチを簡単に説明してください。

 カイさん「Noismでの3年間、私のランチはずっととても似通ったものでした。まず初めは、納豆ともずく。それからメインディッシュ。そちらに関しては、毎日、或いは、一日おきに異なっていましたが。これは私が作ったラザニアになります」

 *納豆、嫌いじゃないんですね。もずくだって、嫌がる外国人は多い筈ですけど。そしてまた再燃する「バナナ問題」(林田海里さんの回)!(笑)カイさんは「青バナナ」専ではないと見えます。私も草みたいなの(←酷い言い方…。(汗))よりはこのくらいが落ち着きますけど。(←個人的な感想です。)

 *もっとラザニアに寄ってみますね。ズンっ!

ラザ~ニア・イン・ジプロック(←多分)

2 誰が作りましたか。普通、作るのにどれくらい時間をかけていますか。

 カイさん「私はいつも自分で用意しています。このラザニアは作るのには数時間かかりましたが、とても多くの量を作ったので、4日間も食べることができました」

 *クリスマスのときにも手を抜かないお料理を見せて貰いましたけれど、これもまた手の込んだ本格的なものなのでしょうね。とても美味しそうですし、何より、こうして出来上がるまでの調理をしている時間も大切に刻まれてきていることを窺わせますよね。

3 ランチでいつも重視しているのはどんなことですか。

 カイさん「納豆ともずくを食べることは私にとって、ひとつの「慣習」と言って良いものになりました。もずくには柔軟性に良い酢が含まれていますし、納豆が含むたんぱく質については言うまでもないでしょう。そしてメインディッシュは食べたいと思ったものを食べるようにしています!」

 *身体と心の双方に効くランチってことになるでしょうかね。さすがです、カイさん。 

4 「これだけは外せない」というこだわりの品はありますか。

 カイさん「納豆ともずくは毎日入っていますね」

 *外国籍の方じゃないみたいです。でも、そんな感覚が古いのかしら、って思いにも囚われますね。いいものはいいのです。そして、わかる人にはわかるのです、何につけ。

5 毎日、ランチで食べるものは大体決まっている方ですか。それとも毎日変えようと考える方ですか。

 カイさん「普通、一週間でふたつのメインディッシュを食べるかたちのランチになっています」

 *時間をかけても、美味しいものを、賢く作り置きして、賢く食べてらっしゃる、そんな姿勢、ライフスタイルとして素敵です。

6 公演がある時とない時ではランチの内容を変えますか。どう変えますか。

 カイさん「公演がある日は食事する時間が違ってきますから、大抵は、朝食をかなり多めに食べておいて、公演に向けて充分に消化されるよう、ランチは少し軽めにしています」

 *エネルギーの補給だけでなく、やはり、消化の側面も意識してるんですね。満腹か空腹かっていう「一次的欲求」レベルの大雑把な食べ方ではないってことですね、やっぱり。そりゃあ、そうかぁ。

7 いつもどなたと一緒に食べていますか。

 カイさん「誰とでも喜んで!最近では、私とスティーヴンジョフチャーリーリオ(=三好綾音さん)、カリン(=杉野可林さん)で同じテーブルについてますが、誰が来ても大歓迎です!」

8 主にどんなことを話しながら食べていますか。

 カイさん「ランチというのはみんなが話したいと思うあらゆることを話す機会と言えます。ですから、話されているのは『こんなこと』みたいに挙げることは不可能です」

 *いかにもカイさんらしいお答えというか。そしてウエルカムな性格なんですね。みんなとの時間を大事にしようとしている点、ナイスです、カイさん。

9 おかずの交換などしたりすることはありますか。誰とどんなものを交換しますか。

 カイさん「コロナの影響で、食べ物をシェアしないよう言われていますよね。でも、もし、自分で特に自信のもてるランチを作ったようなときには、誰か試してみたい人はいるか訊ねたりするでしょう」

 *本当に不自由な空気に覆われていて、閉塞感が強い昨今。嫌になっちゃいますよね。でも、辛抱するしかないですね。終息する日がやってくることを信じて、願って。

10 いつもおいしそうなお弁当を作ってくるのは誰ですか。料理上手だと思うメンバーは誰ですか。

 カイさん「あらゆる人のランチはその人独特なもので、その人自身を反映するものです。時間があって料理に興味がある人であるなら、料理を好まず、忙しい人とは全く異なるランチになるでしょう!筋肉を付けたいからと沢山食べる人もいるでしょうし、体重を減らしたいということでほとんど食べない人もいることでしょう。食べ物はこの世界の一人ひとりにとって、極めて重要なものと言えます」

 *これです、これです。これまた、いかにも深いですよね。昨年のクリスマスのときに感じた「哲学する料理人」カイさんの面目躍如たるものです。「食」への洞察に富むカイさん節、再び炸裂って感じで、我が身を振り返って、ただ食べてるだけだなって思わせられちゃいました。(汗)…そんな深みのあるカイさんの回もここらへんで。カイさん、どうもご馳走様でした。

カイさんからもメッセージを頂きましたので、どうぞ。

サポーターズの皆さまへのメッセージ

「ここNoismで過ごした3年間、サポーターズの皆さまに感謝します。皆さまが私と同じくらい、舞踊とNoismに対して情熱を有しているのは素晴らしいことです。ベストのパフォーマンスをお見せできるよう、私が常に力を尽くしていたことをご存知頂けていたら嬉しく思います。どうも有難うございました」

…今回、予定を変更してカイ・トミオカさんのレギュラー回をお送りしたのにはちょっと淋しい事情がありました。と言いますのも、メッセージからも読み取れますように、カイさん、先月(7月)末の札幌公演を最後にNoismを退団されたからです。
今も目に浮かぶのは、『春の祭典』において、下手(しもて)手前にたまるガールズに向かって上手(かみて)奥から寄ってくるボーイズの場面、開脚ジャンプを何度も何度も繰り出して迫ってきたその姿。あの高さ、あの連続ジャンプはまさに「ゴン攻め」の趣。目を見張りました。そしてそれだけでなく、もっともっと観ていたい舞踊家のひとりでした。また違う舞台で躍動する姿を楽しみにしております。カイさん、3年間、感動を有難うございました。
以前の「私がダンスを始めた頃」から、若き日の開脚ジャンプ画像を再掲しておきます。この頃のジャンプを支えていたものは納豆ともずくではなかったでしょうけれど…。

再掲のこのジャンプ、
コレがアレになった訳で、
時を隔てた代名詞ですね♪

今回はここまでです。次回は誰がどんなかたちで登場してくださいますでしょうか。お楽しみに。お相手はshinでした。それではまた。

(日本語訳+構成: shin)

Noism 1メンバー振付公演を観て(サポーター 公演感想)

☆Noism1メンバー振付公演(2021/3/28@りゅーとぴあ・スタジオB)

6年ぶりというメンバー振付公演、前回は Noism を観始める前だったようなので初めての体験でした。

様々なバックグラウンドを持った現役ダンサーによる、いま一番表現したいことを自分のキャスティングで創り上げる作品。音楽も衣装も。期待が高まります。いつものNoism とはひと味ちがう若々しい作品が観られるな、と思っていたらその通りでした。

2公演観たかったのですが1回だけだったので、今では細かいことは思い出せません。それはそれで良いのだと思います。公演を目指して創られた作品をその時の自分が観たのですから。当然その時から創り手も自分も変わって行きます。

観ている時はとても楽しく、エネルギーを感じました。来て良かったと思いました。全作品それぞれ違って興味深かったです。今の時代を反映して「多様性」が至る所にちりばめられていました。

自分の中でインパクトが強かったのは、スティーヴン•クィルダン作『3.2.1』で月光ソナタ(馬が疾走しているような)で踊られる粗暴とも言える2人のダンス。対照的なポアントかピンヒールを履いてるようなカナールさんの動きの美しさ。まさに適役。

短編ドラマを観ているようだった、中尾洸太作『”うしろの正面”』
「カプグラ症候群」こういう精神疾患があるというのは小説、マンガなどで知っていたが名前を聞くのは初めてだ。疾患と言うが、本当のところは正常なのかもしれないし、そこがコワいところ。
林田海里さん、ダンサー&アクターどちらも兼ね備えていて素晴らしかったです。大好きなヴァリシニコフの次に林田さんです!
突然流れる『The end of the world 』の感傷的で甘いメロディ。思い出したのは『Painted Desert 』で使用された『Mr. lonely 』
なんて事のない美しいロッカバラードの曲たちなのだが、使われ方によっては私は狂気を感じてしまう。多分、D.リンチのアブない映画『Blue Velvet 』で同題の曲が繰り返し流れていたせいだと思う。

創り手の背景が様々なら、受け手のバックグラウンドも多様です。客席の全員がそれぞれ違うことを考え、自分の中に落とし込んでいると思うと世界は限りなく広いと思う。みんな脳内に別々の世界を作り上げて観ているのだ。

林田さんの『Flight from the city 』
彼の表現したい「青さ、未熟さの残る情景」は女性2人によって踊られているが、想像するにこれはたまたまというか、メンバーの中でのキャスティングで鳥羽、西澤さんがイメージに合っていたからだと思う。もしかしたら青年2人のデュオだったかもしれない。
照明スタンドの使い方、特にラストの消えるタイミング、絶妙でした。余韻が漂い、しばらく動けませんでした。

最後に、ジョフォア•ポプラヴスキーさんの存在感。チャーリー•リャン作『The Eclipse 』の中のチャーリーさんとのデュオが印象的でした。そして彼の『On the Surface, there you lie 』はトリにふさわしい重厚感がありました。暴力を振るい続けてエスカレートして止められなくなる者、抵抗もせずされるがままになる者…
いろいろなものが心に入ってきた。

金森さんがプログラム序文に
「劇場専属舞踊団として、新潟から日本を代表する作品、舞踊家のみならず振付家も輩出する事が次のミッションであり新潟の文化的価値観の創出になる…」
というような事を書かれていました。

メンバーの更なる飛躍を期待します。
次の振付公演が楽しみです!

(たーしゃ)

何とも贅沢な7演目♪ Noism1メンバー振付公演、その最終公演を観る+α

2021年3月28日、小雨。Noism1メンバー振付公演は当初から予定されていた15時の回に加えて、12時の回が追加された日曜日。休憩を含めた公演時間が約100分であることから、演者は約1時間を挟んで、2公演を踊るというタフな日程でした。私は昨日に続いて、最終公演も観ることが出来ました。そして今思うのは、なんと贅沢な2日間だったのだろうということです。

昨日のブログに書いた知りたかった事柄につきましても、幸運にも訊くことができましたので、今日はそこから書き出すことに致します。まず、開演前のホワイエで、Noism1リハーサル監督/Noism0の山田勇気さんにお訊きしたのは、出演者はどう決めたのかということ。すると、演出振付を担当する者が使いたいメンバーを選んだのだという答えを得ました。続いて、創作はいつ頃から始まったのかという点については、幕間に、客席で一列後ろに座られていたNoism2リハーサル監督の浅海侑加さんに訊ねましたところ、「Noism0とNoism1の公演(「Duplex」)の前からちょこちょこと作っていた」と教えていただきました。ご参考まで。

それではここからは、7つの演目について、私の目にどう映じたか、どう感じたかなど記してみたいと思います。それらはどこまでも個人的なものですので、今回、ご覧になられた方からどう感じられたか、コメント欄に頂戴できましたら幸いです。

先ずは前半の4作品。

1『The Eclipse』(演出振付:チャーリー・リャン)
身に纏った白い衣裳から、古代ギリシアや古代ローマ、或いは神話的な世界観が横溢する作品。演者は女性2(鳥羽さんと西澤さん)、男性2(ジョフォアさんとチャーリーさん)。タイトルは日本語で「蝕」、古来、不吉とされてきた日蝕。演じるジョフォアさん繋がりで、フランス語的に解すると、太陽が男性名詞で、月は女性名詞。(因みに、ドイツ語では真逆になるのだが、今、それは措いておいてよかろう。)冒頭、月(鳥羽さん)を力強い両腕で吊り上げる太陽(ジョフォアさん)と、力なく四つん這いの太陽(チャーリーさん)に挑まんと進み出る月(西澤さん)、その対称から発し、様々にパワーバランスを遷移させながらも、最終的に、月が太陽を圧する様子「蝕」へと至る。最後、もがき苦しむことになるのは他でもなく、…。随所に登場する頭を押さえつける振りが印象的。また、『R.O.O.M.』を彷彿とさせる音楽も耳に残る。

2『life, time for a life time』(演出振付:カイ・トミオカ)
ゆったりしたピアノの調べからハードなジャズのドラムへ、更に、ボードビリアンとして立つ舞台を思わせる効果音や、極端に機械的にデフォルメされた雨だれの音(?)、そして艶やかな弦の響きへと音が移い、表情を変えるのに併せて、カイさんと渡部さんも脱ぎ着しながら、人生の異なる時間、あの時やらこの時やらを、ときに緩やかに、ときに激しく、あるときは神妙に、またあるときは諧謔味を帯びて通過していく。ラスト、床面で身体をくねらせて踊る渡部さんの片手に載せられた黄金色の丸皿、その安定振りへと収斂し、締め括られていくふたつの人生からの逸話。

3『3,2,1』(演出振付:スティーヴン・クィルダン)
向こう向きの池田さんと客席に向いたおかっぱ頭の樋浦さん。足を開き、やや腰を落とした姿勢で、ベートーヴェンの『月光』ソナタ第三楽章の激しいビートを刻む冒頭。その小気味良さ。ふたりの姿勢には『NINA』の趣も重なる。音楽が緩やかになると、長躯のカナール・ミラン・ハジメさんが、常に両手で両目を開きつつ、垂直軸を強調させながら登場。目に映じる3人の性別は終始、混沌としている。やがて、おかっぱのかつらは樋浦さんから池田さんに移り、衣裳も、何気ない生成りから、怪しく光を反射する縞模様を含むものに変わるだろう。それは性の多様性をグラデーションで象徴する「虹」を模したものか。

4『“うしろの正面”』(演出振付:中尾洸太)
椅子、仮面。明滅した挙げ句に消える明かり、暗転、プレイバックと両立不能なパラレルワールド。上着、仮面、ナイフ、血塗られた赤の照明。スキータ・デイヴィス『The End of the World』は、悲劇的にすれ違う男女(林田さんと杉野さん)の惨劇を予告する。冒頭の椅子は、事切れた女のむごたらしい亡骸を載せ、ついで、そこに何事もなかったかのように男が腰掛けると、明滅する明かりの下、何やらメモをとる、その姿の不気味さ…。禍々しい題材ながら、森優貴さんの『Das Zimmer』で性別違和を踊った林田さん、その「越境」する色気零れるターンには今回も見とれた。

15分の休憩を挟んで、後半。

5『Flight From The City』(演出振付:林田海里)
スタンド照明がひとつだけで、周囲は闇。鳥羽さん(黒に見える濃紺)と西澤さん(白)によって展開される禁断の「百合」世界。なんと蠱惑的なのだろう。2016年冬にNoism2で『ÉTUDE』を踊った中にいたふたりが更にその先を踊る。別離の予感に満ち、哀調を帯びた調べが繰り返されるうちに、徐々にノイズが入り込んでくると、もう心も身体も抑制が利かない。お互いを求め、身体が縺れ合う、その官能性。一度目に明かりを消した闇のなかで、声にならない叫びを発した鳥羽さんは、ラスト、唇を重ね合わせたのち、今度も再び自ら明かりを消す…。そこに至るまで、夢幻のように、行き場を持たない蒼い時が切なくも美しい。

6『Kol Nidrei』(演出振付:三好綾音)
伸ばした手はかわされ、支えた足は払われる。求めても得られない思い、預ける身体は受け止められることなく、地に伏すしかない。そして拒絶は反復される、幾度も。それでもなお、慈しみ、与える。与えつつ、求める。より大きな何かを。舞台中央奥に一筋束ねられた布はより大きな何かの象徴か。バラバラな衣裳の5人がその末端を手に取る。すると、布は広がり、白と黒、斑のグラデーションを示す。善悪、或いは清濁を併せ持つかのように。手を離すと、布はしぼみ、スポット照明があたるなか、ひとり舞台に残った三好さんの姿と一体化する。あたかも「希望」ででもあるかのように光る布だけが残る…。

7『On the surface, there you lie.』(演出振付:ジョフォア・ポプラヴスキー)
カイさんと中村さんのペアも、中尾さんも、細かい位置こそ違え、顔の左側に黒い痣をつけている。それは何かのトラウマの表象。青い光の下、表現される怖れと慄き、或いは意を決して向き合おうとする姿と逆にそれを押しとどめようとする振る舞い、葛藤。それら結果としての3人の「表層」がアクティング・エリアに交錯するうち、その外部に恐れと慄きの源泉である不可視の「対象」或いは「深層」が現出してくるさまは圧巻だった。ラスト、中村さんによるカイさんへの過剰な制止はもはや「制止」の身振りを遙かに逸脱し、自らのトラウマの投影として、見詰める目に痛々しく突き刺さるよりなかった。

以上、雑感でした。あくまで個人的な…。

7つの演目、全て見応えがありましたから、何と贅沢な公演だったことでしょう。追加公演を入れても、たった3回の上演とは勿体ない、勿体ない。まだまだ何回も観たい、そう思いました。ご覧になられた方は幸せでしたね。まさに至福の週末♪一方で、観る機会に恵まれなかった方も多くいらっしゃった訳ですから、機会を設けて、また見せて欲しい、心底そう思いました。

さて、こちらも昨日からの続きとなりますが、6F展望ラウンジの「RYUTOPIA INFO BOX」について、(またしても思わせぶりな)若干の補足です。

「舞踊」分野、Noism的には、この6つが展示されています。(因みに途中の「28番」は「演劇」分野の展示となります。)実際の展示品につきましてはご自分の目で直に見られるのがよいかと思います。悪しからず。

それでは今日はこのへんで失礼します。

(shin)

また違った魅力に浸る、Noism1メンバー振付公演(初日)♪+α

2021年3月27日の新潟市は、曇天で、兆す春もやや控えめ、暖かさもいまひとつといった土曜日。その17時、りゅーとぴあのスタジオBでNoism1メンバー振付公演の初日を観てきました。

久し振りのメンバー振付公演です。しかも早々に完売となってしまった今回の公演。Noism1メンバーのうち7名が振り付けた作品が観られるということ以外は何もわからず、どんな感じかと胸を躍らせてりゅーとぴあを目指しました。

公演の詳細は下の画像をご覧下さい。

7つの演目はそれぞれ10分内外の作品で、演出振付と出演は以下の通りです。

1『The Eclipse』演出振付:チャーリー・リャン、出演:ジョフォア・ポプラヴスキー、チャーリー・リャン、鳥羽絢美西澤真耶

2『life, time for a life time』演出振付:カイ・トミオカ、出演:カイ・トミオカ、渡部梨乃

3『3,2,1』演出振付:スティーヴン・クィルダン、出演:樋浦瞳、池田穂乃香、カナール・ミラン・ハジメ (*タイトルについてですが、冒頭、「さん、に、いち」という音声が聞こえました。)

4『“うしろの正面”』演出振付:中尾洸太、出演:林田海里、杉田可林

5『Flight From The City』演出振付:林田海里、出演:鳥羽絢美、西澤真耶

6『Kol Nidrei』演出振付:三好綾音、出演:スティーヴン・クィルダン、三好綾音、杉野可林、坪田光、土屋景衣子

7『On the surface, there you lie.』演出振付:ジョフォア・ポプラヴスキー、出演:カイ・トミオカ、中尾洸太、中村友美

全て観終えてまず感じたことは、最近、多方面で露出が増し、とみに注目を集めている感のあるNoismにあって、その本体の活動とは別に、これらを創作することはなかなか大変だったのではないかということでした。いったいいつ、どのくらいの時間をかけて創作されたものなのでしょうか。そして、出演者はどうやって決めたのかってこともちょっと訊いてみたいですね。

それぞれの作品が、演出振付にあたったメンバーの普段とはまた違った一面を見せてくれて、とても興味深かったですし、様々なテイストを具現化するダンサーたちの熱演はまったく見飽きることがなく、あっという間に観終えてしまった、そんな感じでした。

また、手にしたプログラムには、それぞれ作品毎に演出振付を担当したメンバーの言葉が掲載されていましたので、幕間に少し明るくなると、「次はどんな作品だろう」「誰が踊るのだろう」と、客席のどこからもプログラムを手に取る際に生じる、紙が擦れる音が聞こえてくるのも印象的でした。

7人のメンバーによる7つの作品。バラエティ豊かな力作・力演揃いで、必ずそのなかにあなたの好きな作品が見つかるでしょう。因みに、私の好みはと言えば、…おっと、今は内緒です。

明日は追加発売された公演とあわせて2公演の日。メンバーたちはさぞかし大変でしょうが、観客としては、期待値をあげにあげても、決して裏切られることなどないと保証しましょう。どうぞお楽しみに♪

*各作品について私が抱いた印象は翌3/28付けの記事をご覧下さい。

ところで、時間前にりゅーとぴあに着いたので、珈琲でも飲もうと、6F展望ラウンジ(旬彩・柳葉亭)にあがったら、嬉しい驚きがありました。りゅーとぴあを訪れたなら是非見て欲しいものがひとつ増えたと言いましょう。それは6F壁面に設置された「RYUTOPIA INFO BOX」というコーナーです。皆さん、ご存知でしたか。

「りゅーとぴあに眠る宝物を集めました」の言葉通り、「音楽」「古典」「演劇」「舞踊」、併せて30を超す、様々興味深い品々が展示されています。『Fratres』のあの場面がフィーチャーされた「舞踊」コーナーには、勿論、Noism関連の「お宝」が6つ並び、目を惹きます。

あれとかこれとか、ハンディな解説入りで展示されていますから、先ずは必見ですね。で、何が並んでいるかと言いますと、…おっと、ご自分の目でご覧になるのが一番ですね。お楽しみに♪

という訳で、今回のブログはまだまだ書かない方が良いものが多く、なんとも思わせぶりなものとなってしまいました。スミマセンです。(汗)+(笑)

(shin)

「ランチのNoism」番外編:カイ・トミオカさん「いつもの仲間と特別な日のお料理」の巻

メール取材日:2020/12/25(Fri.)

『Duplex』Noism0/Noism1新潟ロングラン公演が大好評の滑り出しを見せている今、ここでひとつ別の記事も投入したいと思います。有り難いことに、こちらも毎回ご好評を頂いております「ランチのNoism」です。

今回の「ランチのNoism」は特別な番外編でお送りします。いつものお昼ごはんじゃないんです。お料理が好きで、「ランチのNoism」への登場を楽しみにしてくださっていたと聞く「シェフ」カイ・トミオカさん(とスティーヴン・クィルダンさん)が「いつもの仲間」のために拵えた特別なお料理をお届けします。

コロナ禍にあって推奨されている「いつもの仲間と」の食事。普段からの感染予防もバッチリなNoismメンバー同士の節度ある食事ならノー・プロブレムですよね。

で、それがどう「特別」かって?日付からしてお察しの通りかと。

今回、まず、オープニングの音楽からして違います。では、いってみましょうか。

♫あ~いむ・どぅり~みん・おぶぁ・ほわ~いと・くりすます♪

前日の公演(オルガンコンサート)で大忙しだった舞踊家たちにもサンタさんはやって来る!「ランチのNoism」番外編。

*先ずはお料理の写真から♪

取り分けられたお料理の数々と…
ナイフとフォークじゃない!箸だ!

1 お料理について説明して下さい。

 カイさん「クリスマスの日に、Noismメンバーで一緒にその日を過ごしたいという人を招待しました。で、お料理は幾分、伝統的な英国のクリスマス・ディナーになっています。内容は、ローストビーフ、ローストチキン、ローストポテト、ヨークシャー・プディング、グレイビー、『ピッグズ・イン・ブランケッツ(毛布巻の豚)』(*後述)、ブリュッセルスプラウトとサラダでした」

 *英国のクリスマス・ディナーですか。食べたことはおろか、見たことも聞いたこともないものが次から次に…。(汗)

ヨークシャー・プディングですね。
自信の笑み♪

2 お料理にはどのくらいの時間がかかりましたか。

 カイさん「クリスマス・ディナーを作るとなると、いつもとても長い時間を要します。で、この日も丸一日かけて料理しました!英国では、たくさんを同時に調理できるオーブンを使うのが楽しいのですが、今回、日本ではうまく時間をやりくりするのが大変で、みんな一日がかりで食べることになりました」

 *洋の東西を問わず、たくさん食べる日であることに間違いはないようですね。

見るからにこだわりの「シェフ」、
切り分けも自己採点しながら?

3 今回、お料理するにあたって大事にしたことはどんなことですか。

 カイさん「私にとって大事だったこと…。2020年はコロナウイルスのため、家族や友人に会いに母国に戻ることが出来ませんでした。それは本当にキツいことでしたし、クリスマスの慣習をとても恋しく思いました。メンバーの多くも同じ状況でしたから、一緒にクリスマスを過ごすことは特別なことでした」

 *カイさんの美味しいお料理は胃袋ばかりじゃなく、心の隙間も埋めたんですね、きっと。

4 これだけは外せないというアイテムはありますか。

 カイさん「『ピッグズ・イン・ブランケッツ』がそうです。それはベーコンでソーセージを巻いて作る料理のことです。それからブリュッセルスプラウトも大好きです。でも、それを好む人はあまりいないかもしれません!私は牛タンと一緒に調理したのですが、美味しかったですよ」

 *おお、「肉 in 肉」って料理なんですね、「ピッグズ・イン・ブランケッツ」。私たちにとっては「アスパラのベーコン巻き」の方が一般的でしょうか。そして、ブリュッセルスプラウト!?芽キャベツと同じもの!?

5 今回のクリスマスのお料理に関してもう少し聞かせて下さい。

 カイさん「クリスマスに関しては誰もが好みがあるものです。チキンだったり、ターキーだったり、ビーフやポークだったり。家族で迎えるクリスマスでは、その家その家にしきたりがあり、それを破ったりはしないものです。でも、これが私が日本で作る初めてのクリスマス・ディナーなので、新しいしきたりをスタートさせようと決めてかかりました!」

 カイさん「私たちは前日(12/24)クリスマスイヴにはオルガンコンサートの舞台に立っていましたから、お料理の準備を早くから始めることは出来ませんでした。で、(翌日)クリスマスの朝に買い物をして、それから調理にかかったので、ストレスもありました。でも、結局はうまくいったので、頑張った甲斐がありました」

 カイさん「同じ英国人のスティーヴンも私もクリスマスが大好きなので、ふたりで何を調理するのか責任を分担することにして、私がローストビーフを、彼がローストチキンを作り、その他も分担しました。で、この日のクリスマスは、Noism1とNoism2からメンバー8人での食事となり、特別な機会になりました!」

こちら、スティーヴンさん作の
ローストチキンですね。
これまた本格的!

6 メンバーはどんなふうでしたか。

 カイさん「クリスマスで、一つひとつ別々に調理された料理たちを前にして、ワクワクするのは自分のお皿にとっていく時です。みんなでシェアするのですが、自分の好物はきまって余分にとろうとするものです」

 *ですよねぇ。(笑) そしてその一部始終を「ニンゲン観察バラエティ・モニタリング」、…って番組が違いますけど、きっと楽しいですよねぇ、観察するの。

7 他にどんなことをしましたか。

 カイさん「ゲームをしたり、クリスマス・プレゼントを開けたり、いっぱい食べて、うんと楽しみました!それがクリスマスというものですから」

 *おお、「ゲーム」、どんなことするのでしょうかねぇ。そして「クリ・プレ」!…って、縮めたりしないか。何でも短くするのは日本人の悪い癖。(笑)そうそう、みんなで「プレゼント交換」でもしたんでしょうかねぇ。楽しいですよね、「プレゼント交換」。中身が何かはさておき、「交換」すること自体がワクワクで。ところで、カイさんは何を貰ったんですかね。サポーターズとしては、そのあたり、突っ込んでみたくないですか、皆さん。…ってことで、うん、訊いちゃいましたよ。えっへん。

 そしたら、カイさん、こんなふうに説明してくれました。

 (a)プレゼントに関して: カイさん「2020年のクリスマスは、家族やパートナーのために時間を使うことは出来ませんでした。プレゼントしようと考えるには『クリエイティヴ』である必要があったからです。ガールフレンドからは「migrateful」(←【註】migrate(移住する)+grateful(感謝して)の造語かと)と呼ばれる慈善活動のギフトバウチャーが送られてきました。それは英国内の移民・難民シェフからお料理のレッスンが受けられるというものです。この活動には世界中から多くの人々が参加しているので、世界中のお料理についてのレッスンが受けられるのです」

 (b)今回、メンバーから貰ったプレゼントに関して: カイさん「Noismでは『シークレット・サンタ』と呼ばれるやりかたでプレゼントをやりとりします。全員がプレゼントする相手の名前を受け取り、上限1,000円で買ってくるのです。で、『シークレット』というのは、誰からのプレゼントか知らずに貰うからです。私はとても素敵なノートを貰って、凄く嬉しかったです」

 (c)クリスマスのゲームに関して: カイさん「英国のクリスマス時期によく行われるゲームに『after8s(アフターエイト)』というのがあります。『アフターエイト』というチョコレートがあるのですが、それを額に載せて、手を使うことなしに、口の中へと移動させなければならないっていうゲームです!様々な表情やらテクニックやらを見ることになるのでとても面白いのです」

【資料画像】(by shin)
アフターエイトチョコレート

 *「アフターエイト」っていうのは、「夜8時以降に、ゆったりとお菓子やリキュールを楽しむ英国の風習」なのだそうで、それに因むチョコレートはミントクリームをダークチョコで包んだおとな味の美味しいやつ♪「チョコミン党」の私、虜になりそうです!

 *おっと、そんなことより、こうして聞いてると、どれも根底に人間味ある「繋がり」が感じられるものばかりで、本場もんのクリスマスはこうなんだなと納得しちゃいました。浮かれてプレゼントをやりとりする日なんかではなく、社会や相手を思い、共に生きるための「想像力」を働かせて、みんなでその日をお祝いしようとする気持ち。伝わってきます。ジョン・レノン『Happy Xmas』とか佐野元春『Christmas Time in Blue』な感じ。見習わなくちゃって。そして、改めて、カイさんの「お料理熱」が高いこともわかりました。エプロン姿、さまになってますもんね、カイさん。素敵、素敵♪

FLOのケーキを覗き込む
「シェフ」

…ここいらで再びお料理に戻りましょう。

8 今回のお料理、作ってみての感想は…。

 カイさん「私たち(カイさんとスティーヴンさん)はとても良い仕事が出来たと思います。お料理も私たちに出来る限りの伝統的なものが仕上がりましたし、作っていて、とても楽しかったです。すぐまたもう一度作らなきゃと思っています、次のクリスマスが来る前に!」

 *改良に改良を加えて、次のクリスマスに備えるつもりなのでしょうかねぇ。カイさんには「次のクリスマス」にも報告して欲しいですね。そして、それだけじゃなく、通常の「ランチのNoism」にも再登板をお願いしたい気持ちでいっぱいです。皆さんも、カイさんの普段のランチ、興味ありますよね。カイさん、是非、覗かせてくださいね。

最後に、カイさんからもサポーターズの皆さまへのメッセージがございます。お読みください。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「Noismをご支援いただき、有難うございます。世界がこのパンデミックで格闘を繰り広げているさなか、皆さんはずっと私たちを支え続けて下さっています。公演も思うような回数は出来ない昨今ですが、じきに事態は収まるでしょう。私はそのときを楽しみにしています。そのとき皆さんとお会いすることを」

はい、「ランチのNoism」番外編もこれにておしまいです。お相手は今回も私、shinでした。それではまた。

(日本語訳+構成: shin)

Noismかく語る・2020春② - Noism1メンバー前編

前回、Noism03名からのメッセージをお届けしましたが、この度は、Noism1前編としまして、6名を掲載いたします。全国に「緊急事態宣言」が拡大し、緊張感が増した夜にあって、いっとき、少しでも不安や緊張が緩和されましたら幸いです。新作『春の祭典』に纏わる思い、コロナ禍に寄せる思い、是非ともお読みください。

池ヶ谷奏

いよいよNoism版『春の祭典』かとワクワクしています。スコアナンバーが200もある楽譜、はじめは暗号だらけで追うこともできず、楽譜の読める父にメールで尋ねたり必死でした。

今では「ここに16分休符があるから…」とか「5.5.3.5.4…」と電話番号のように変拍子を覚えたりして、聞こえる音以上に情報が増えました。リズムを理解することでより動きと一致してきたように思います。

新潟に来て10年目。

今は簡単に人と会えない・集まれない・触れ合えないという、舞踊の人間にとっては致命的な状況が広がっています。

誰もが不安で、未来は誰にも分かりません。私は今できることを全うし、そして勝手に10周年記念公演と思って、感謝も込めて全力で踊り切ることができるよう精進します。

Photo: Noriki Matsuzaki

(いけがやかな)

ジョフォア・ポプラヴスキー

『春の祭典』は私にとって常に踊ることが出来たらと願っていた作品でした! その音楽はエネルギーに満ち、その入り組んだ複雑さはダンサーと空間の間に信じ難い化学反応をもたらしてくれます。

私は穣さんがそれをどのようにして彼自身の芸術的な宝に仕立てていくかワクワクしながら目にしていて、自分がその一部となる機会に恵まれたことを幸福に思っています! 

(日本語訳:shin)

*ジョフォアさんによる元原稿(英語)はこちらです。

Le sacre has always been a piece I wished to be able to dance! The music is full of energy and its complexity brings incredible chemistry between dancers and space.

I’m so excited to see how Jo-san will make it his own art treasure and happy I have the chance to be part of it!

Photo: Noriki Matsuzaki

(フランス生まれ)

井本星那

今回のクリエーションでは音楽から思いを、動きへと、ひとつひとつ紡いで繋がっていくような、そんな感覚があります。

目まぐるしく世界が変化する中、人との繋がりが切れてしまわないように、思いやりの大切さに日々気付かされます。新潟の皆さまとまた繋がれる日を楽しみに、毎日稽古に取り組んでいます。

Photo: Noriki Matsuzaki

(いもとせな)

林田海里

役割を演奏されている楽器ごとに与えられる実験的な創作を、楽譜をなぞるのに苦戦しながら楽しんでいます。皆でこの『春の祭典』を奏でる様に踊りたいです。

Photo: Noriki Matsuzaki

(はやしだかいり)

チャーリー・リャン

今、世界中の誰もがとても疲弊していることは間違いのないことだと思います。コロナウイルスが原因で、あらゆるものが突然にキャンセルされたり、延期されたりしています。ただただ日々の生活や将来のことが心配でなりません。あらゆることが可能な限り早期に快方に向かうことを望んでいます。皆さんが私たちの公演を観に来てくださる日を心待ちにしております。 

(日本語訳:shin)

*チャーリーさんによる元原稿(英語)はこちらです。

I believe that everyone in world now is very exhausted recently. Because of coronavirus, everything was cancelled or suspended suddenly. Just being worried about our life or future. Hope everything will get better as soon as possible. I’m looking forward to everyone can come to watch our show.

Photo: Noriki Matsuzaki

(香港生まれ)

カイ・トミオカ

2020年の年頭から、Noismで私たちは新作公演『春の祭典』のクリエーションに集中して取り組んできました。これまでにも世界中で多くのカンパニーによる多くのヴァージョンとヴァリエーションが創られ、踊られてきました。そして私もこの象徴的な音楽の体験を楽しんできました。昨シーズン、私は『ラ・バヤデール -幻の国』と『カルメン』を踊りました。どちらも再演でしたが、Noism1、Noism2のダンサーたち、言うならばNoismファミリーが総出演する物語形式の大作でした。そして今度は、Noism1メンバーに加え、新たに立ち上げられたNoism0とともに新作のクリエーションの過程にいることはとても楽しい体験となっています。この『春の祭典』は、先に触れた2作のように必ずしもすっきりした物語を持つものではありませんが、抽象的な物語とストラヴィンスキーによる音楽の解釈との間に興味深いバランスが形作られることになります。私たちはカンパニーとして、時間をかけてこの作品のクリエーションにあたることを許され、とりわけ、コロナウイルスのために、今、世界中が体験しているこの不確かな期間にあってさえ、踊り続け、クリエーションを続けることができることをとても光栄に思っています。 

(日本語訳:shin)

*カイさんによる元原稿(英語)はこちらです。

From the start of the year of 2020, we at Noism have been focused on the creation of our new performance, ‘the rite of spring’. There have been many versions and variations of this piece created and danced by many companies all over the world, and I have enjoyed my experience thus far of this iconic score of music. Last season I performed in “La bayadere” and “Carmen”, both of which are full Length narrative works that were created previously involving the whole of the Noism family, dancers from Noism1 and Noism2.  It has been an enjoyable experience being part of a new creation process together with Noism1 and the newly formed Noism0. While not necessarily a straightforward narrative work like the previously mentioned works, ‘the rite of spring’ strikes an intriguing balance between an abstract narrative and an interpretation of the music by Stravinsky. We as a company are privileged to have this long period of time to create this work, and in this period of uncertainty the whole world is experiencing right now due to the coronavirus, we are very privileged to be able to continue dancing, crafting and creating as we are now. 

Photo: Noriki Matsuzaki

(イギリス生まれ)

連載3回目となる次回は、Noism1後編としまして、スティーヴンさん、タイロンさん、鳥羽さん、西澤さん、そして三好さん(準メンバー)を掲載いたします。引き続き、ご期待ください。

(shin)

*ポートレートのクレジットに誤りがございましたので、訂正させて頂きました。ここにお詫び申し上げます。

「私がダンスを始めた頃」⑧  カイ・トミオカ

私は今に至るダンスの旅を振り返って、私をここ、Noismというカンパニーへと導いた一連の出来事と決断をはっきりと認めることができます。

12歳の時、ロンドンの家の近くにあったローカルなスタジオでブレイクダンスとストリートダンスのクラスに入ったことを覚えています。ここからダンスへの私の愛情がスタートしたのです!もっとも、あまりうまく踊れた訳ではありませんでしたが。当時人気のダンス映画を何本も観ては、そんなふうな動きを身に付けたいと思ったものでした!

14歳になった頃、スタジオは、より汎用性のある動き、異なる種類の動きを身に付けさせようとボーイズ・バレエのクラスをスタートさせたのでした。私もやってみようと決心し、そうしてクラシックダンスへの情熱に火が付いたのでした。

そのときの私は自分が踊ることを大いに楽しんでいましたが、それでもあまり本気で捉えてはいなかったかもしれません。他の趣味、例えば、サッカーや陸上、或いは演技と並行して踊っていたものですから。

でも、1年後、サッカーをしているときに鎖骨を骨折してしまったのです。それは「ロンドン・チルドレンズ・バレエ」の大事なオーディションを逃すことを意味するものでした。私が楽しみにしていたオーディションだったのに…。自分がやりたいもの、自らを託したいものがどちらなのか選ばなければならないと悟ったのはこの時でした。体に要求されるものが違っていたからです。で、勿論、私はダンスを選びました。

翌年、その同じオーディションに晴れて挑むことができました。結果は合格!そのステージで演じた後、観に来ていた Central School of Balletの先生の目にとまったことから、そちらにてフルタイムで学ぶオファーをいただき、16歳で、プロになるためのダンスのトレーニングを始めて、あとは皆さんご存じのとおりです!

今振り返ってみると、それは多くの犠牲を払って成り立っていることがわかります。そんなに若いうちから大人のような難しい決断をすることは並大抵のことではありませんし、自分の時間の多くをダンスに割くということは若者ならやりたいと思う筈の多くを見送ることを意味するものでもありました。ダンスに専心することは生涯にわたる決断なのです。でも私はそれをいささかも変えるつもりはありません。

(日本語訳:shin)

以下はカイさんが書いた元原稿(英語)です。併せてご覧ください。

Kai Tomioka

I can look back on my dance journey so far and identify a chain of events and decisions that have led me to here to Noism dance company.

I remember at the age of 12 joining a breakdance and street dance class, at a local studios near to where I lived in London. This was where my love for dance started, even though I wasn’t very good! After watching popular dance films at the time I wanted to learn to move in those ways! When I was 14 they started a boys ballet at the studios, to try and encourage the dancers to become more versatile and move in different ways. I decided to give it a go and thus started my passion for classical dance. I was enjoying my dancing a lot but was still not taking it too seriously. I was dancing alongside my other hobbies, such as football, athletics and acting. But a year later, while playing football I broke my collar bone, which meant that I missed an important audition for a production called ‘London children’s ballet’. This was something I was very much looking forward to and this is when I realised I had to make the choice about what I wanted to do and to commit to one or the other, as the demand from the body is very different, and of course I chose dance.

The next year I was able to attend the audition again, and was successful! After taking part in this show, I was offered a full time place at central school of ballet after a teacher from the school had come to watch, so at 16 I began my professional dance training and then the rest is history!

Looking back on it now I can recognise that it took many sacrifices, and at such a young age it took a lot to make some mature and difficult decisions, spending much of my time dancing meant that I missed out on lots that you as a young person would want to do, committing to dance is a lifelong decision, but I wouldn’t change any of it.

(1995年イギリス生まれ)

*2021年7月退団