「纏うNoism」#07:樋浦瞳さん

メール取材日:2023/05/20(Sat.) & 06/01(Thur .)

去る2023年5月20日(土)&21日(日)の僅か2日間のみ屋外舞台にその姿を現したNoism0+Noism1『セレネ、あるいはマレビトの歌』。「黒部シアター2023 春」前沢ガーデン野外ステージのその初日の日付で、わざわざアンケートにお答えくださった樋浦瞳(あきら)さん。そこから「纏うNoism」第7回、樋浦さんの回のやりとりが動き出しました。画像もその前沢ガーデンで撮影して頂きましたし、サポーターズへの気配りをもちながら、黒部で踊っておられたのだと知ることの有難さといったらないでしょう。では、その「纏う」樋浦さんをお楽しみください。

「流行に夢中になってはだめ。ファッションにあなたを支配させてはだめ。その着こなしと生き方によって、あなたが誰で、どう見せたいかは自分で決めればいい」(ジャンニ・ヴェルサーチ)

それでは樋浦さんの「纏うNoism」始まりです。

纏う1: 稽古着の樋浦さん

 *おお、「あの」前沢ガーデン!裸足!野性味のあるご登場ですね。そしてもう一枚の方、木の陰から「ひょっこりはん」しているのはNoism1準メンバーの横山ひかりさん。そして左側に立つのはNoism2の春木有紗さん。ホントにいい雰囲気の写真ですね。

 樋浦さん「この写真は黒部の前沢ガーデンで撮影しました」

 *ですよね。実に素敵な場所でした。溶け込んでいますね、樋浦さんも、横山さんと春木さんも、ハイ。なにやら、「自然児」というか、自然の一部と化したというか、そんな雰囲気ですね。では、ここではまず稽古着一般についてお話しいただけますか。

 樋浦さん「稽古着は、リハーサル中の作品がどんな衣裳かによって半袖か、タンクトップか、短パンか、長ズボンか変わっていきます。
Noismではいつも黒い服の人が多いのですが、自分は黒い服を着ると緊張してしまうので、普段はあまり着ません」

 *そうなんですね。「黒」を避ける感じなのですね。で、この日のトップスはグレー。そのグレーっていうのは樋浦さんの好みの色なのですか。そして他に稽古着として着るのに好きな色とか、好きなブランドとかってありますか。

 樋浦さん「いちばん好きな色は藍色、紺色です。落ち着きます。スポーツ用品のブランドでは、アディダスの服が多い気がします」

 *なるほどです。短パン、紺色ですものね。樋浦さんが稽古着の色に求めるものは「落ち着き」、理解しました。

 *あと、この日は美しい野外の緑の上ということもあってのことでしょう、裸足ですが、お約束の「アレ」についてもお訊きします。普段の稽古で身につける靴下に好みなどはありますか。

 樋浦さん「最近はユニクロの靴下を履いています。たくさん色の展開があるので毎回選ぶのが楽しいです。あとはナイキの靴下も指が開いて踊りやすいです」

 *ユニクロで色を選ぶ楽しさ、よくわかります。それでも、いつも似たような色選んじゃうんですけどね、私の場合。あと、ナイキの靴下はそうなのですね。メモメモメモ。

纏う2: 樋浦さん思い出の舞台衣裳

 *これまでの舞踊人生で大事にしている衣裳と舞台の思い出を教えてください。

ん?この感じ…?

 樋浦さん「黒田育世さんの『ラストパイ』という作品との出会いは自分の人生の転機でした。衣裳は山口小夜子さんのデザインです」

 *おお、そうなのですね。『ラストパイ』は未見な私が、なにか見覚えみたいなものがあるように思ったのですが、それ、山口小夜子さん繋がりなのだと。基本、黒の装いに赤のラインが走る印象的なヴィジュアルから、米国のスティーリー・ダンによる傑作アルバム『彩(エイジャ)/Aja』(1977)、そのジャケットに写る山口小夜子さんの装いに通ずるものを感じたのでした。じっくり見較べるてみると結構違っているのですが、瞬時に浮かんだ印象です。まあ、それ自体、あくまでも寡聞な私の個人的なものに過ぎませんけれど。

 *話が逸れてしまいましたね。スミマセン。元に戻しまして、その転機となった『ラストパイ』についてのお話、もっと聞かせてください。

 樋浦さん「2018年のDance New Airという東京のダンスフェスティバルでのプログラムとして上演された際に出演しました。この作品は、2005年にNoism05が黒田育世さんに振付委嘱して製作されました。初演時は、穣さんや佐和子さんも踊られていました。
自分がこのとき担ったパートは、初演時は平原慎太郎さんが踊られていたところでした。衣裳も当時から同じものがずっと受け継がれているそうです。何回も床に倒れる振付があるので、左肘に緩衝材があてがわれているのが印象的でした」

 *なるほど、興味深いお話ですね。で、「転機」となったという点について、更にお願いします。

 樋浦さん「自分がこの作品と出会ったのは2017年で、その時は穣さんのパートを踊りました。当時は大学4年生で、もう踊ることはそろそろやめようと考えていました。
穣さんのパートは40分間絶えず踊り続けるので、身体が本当にもげそうになるのですが、この時自分の身体がまだまだもっともっと踊りたいと感じていることに気づいたのです。
本番を終えたあとに、いつも優しい笑顔で話す育世さんが、鋭い眼光で『踊りなさい』と言ってくれました。この時かけてもらった言葉は、今でも自分の舞踊人生を力強く支えてくれています。育世さんは自分の踊りの恩人です。
写真は2018年の公演のゲネプロ後に、誕生日を祝っていただいた時のものです」

 *なるほどです。それはまさしく「転機」ですね。樋浦さんの現在に繋がる重要な「鍵」を握る作品を踊る機会だったってことなのですね。更にそれに加えて、Noismとの「縁」をも感じるお話と受け取りましたが、その2017~18年頃、樋浦さんはNoismに関して、どのような思いをお持ちでしたか。

 樋浦さん「2018年は『NINA』の埼玉公演を観に行って、衝撃を受けました。その時は自分がNoismに入ることは全く考えていませんでした…。でも、元Noismのダンサーと海外のオーディションで出逢ったり、東京で出逢ったり、少なからず影響は受けていたと感じています」

 *導かれるべくして導かれて今に至っている。私たちにはそう思えますね、うん。そうそう。やはり「縁」ですよ、「縁」。

纏う3: 樋浦さんにとって印象深いNoismの衣裳

 *Noismの公演で最も印象に残っている衣裳とその舞台の思い出を教えてください。

 樋浦さん「『Fratres』の衣裳です。禊(みそぎ)へ向かう白装束のような、特別な儀式に向かっていく感じがします。Noismでの踊りはいつもものすごく緊張しますが、この衣装を着るときは特にビリビリとします」

 *はい、はい。わかります。「白」と「黒」、対極と言える見た目の色彩的な違いを超えて、内面的にと言うか、精神的にと言うか、通ずるものがありますよね。で、『Fratres』は樋浦さんにとって、基本、緊張するという「黒」ですから。でも、その「黒」を纏った「ビリビリ」の緊張状態を通過して、作品内世界へと越境し、憑依したりトランスしたりしていくのでしょうね。

 *Noism Web Siteへのリンクを貼ります。
 2019年の『Fratres I』、2020年の『Fratres III』の画像をどうぞ。

 *それこそ、前沢ガーデン野外ステージでの『セレネ、あるいはマレビトの歌』も、途中まで『Fratres』でしたけど、張り詰めた厳かさはあっても、特別、緊張の「ビリビリ」は感じませんでしたよ。

纏う4: 普段着の樋浦さん

凝ったローポジションからの撮影は
前回ご登場の…

 *この日のポイントと普段着のこだわりを教えてください。

 樋浦さん「普段着は、ゆったりとした服を着ていることが多い気がします。
新しい服を買うことが滅多にないので、稽古着も普段着も古着が多いのですが、このTシャツはH&Mで一目惚れして買ってしまいました。お気に入りです」

 *おお、盆栽のTシャツ!凡才の私ですが、何やら惹き付けられるものがありますねぇ。(笑)これ、相当エモイんじゃないでしょうか。添えられた「OBSERVATION(観察)」と「KNOWLEDGE(知識)」というふたつのワードも、描かれた盆栽の松が漂わせる佇まいを引き立てて、何だか意味深ですし!
そして、何より前沢ガーデン(と野外ステージ)というロケーションにピッタリではないですか。こちらのTシャツと前沢ガーデン野外ステージでの公演との間に何か関連はありますか。

 樋浦さん「あまり意識はしていなかったです…。半袖を昼間から着れるくらい暖かくなったので、嬉しくて着ていました」

 *そうなんですね。では、これはそもそものお話になるのでしょうが、古着はお好きと考えていいですか。

 樋浦さん「稽古着はすぐ汚れたり傷がついてしまったりするので、古着の方が気兼ねなく使えるのでよく利用します。あまり古着自体にこだわりが強くあるわけではありません」

 *ほお、そうなんですね、ほお。じゃあ、稽古着として着る古着に絞って、もう少し教えてください。

 樋浦さん「ダンサーの仲間や先輩から、着なくなった稽古着を譲り受けたりすることがあります。人の縁を感じたり、あの人の踊りすごかったなあとか、たまに思い出す時間は自分の支えになっているように感じます」

 *なるほど。そうした場合の古着って、単に古着というだけではなくて、繋がりや記憶も込みの稽古着ってことなのですね。いいお話しです♪

 *あと、これは服からは離れてしまうのですが、最後にもうひとつだけ。首から下げておられるお洒落なカメラについて教えてください。

 樋浦さん「FUJIFILMのX-E3というモデルのカメラです!最近中古で購入しました。レンズもとても気に入っています」

 *昔のフィルムカメラにあったようなボタンとかダイヤルが付いたレトロな感じのカメラなんですね。そして、撮影もカメラ任せのオート撮影機能ではなく、自ら設定を行うモデルのため、撮る人の個性が色濃く出るカメラなのだそうですね。その点、樋浦さんにピッタリかと。うん、お洒落です。カメラもそれをさりげなく首から下げた樋浦さんも♪
樋浦さん、どうも有難うございました。

樋浦さんからもサポーターズの皆さまにメッセージを頂いています。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「いつもあたたかいご支援をありがとうございます。
感染症への警戒も落ち着いてきましたので、みなさんと直接お会いしてお話しできる機会を心待ちにしております。
今後もみなさんへいい舞台をお届けできるよう、精進いたします」

…ということでした。以上、「纏うNoism」第7回、樋浦瞳さんの回はここまでです。樋浦さん、色々と有難うございました。

これまで、当ブログでご紹介してきた樋浦さんの他の記事も併せてご覧ください。

 「私がダンスを始めた頃」⑳(樋浦瞳さん)
 「ランチのNoism」#19(樋浦瞳さん)

今回の「纏うNoism」、いかがでしたでしょうか。では、また次回をどうぞお楽しみに♪

(shin)

Noism2札幌公演(4/19)(サポーター 公演感想)

☆Noism2札幌公演『金森穣振付Noismレパートリー』+『BOW!!!』

4/19(金)札幌文化芸術劇場hitaruへNoism2札幌公演を観に行きました。

今シーズンのNoism2を観るのは今回が初めて。新メンバーに久しぶりに男性メンバーが加わったのも楽しみです。

私は普段、遠征はしない派ですが(Noismを除く)、今回を見逃すと今季のNoism2メンバーを知らないままになってしまう可能性があるので思い切って遠征してみました。
北海道へは学生の時に合唱団の演奏旅行で訪れて以来2回目となります。航空会社のパックツアーで往復航空券・ホテルを安く手配できたので助かりました。

会場の札幌文化芸術劇場hitaruのクリエイティブスタジオは、りゅーとぴあのスタジオBと雰囲気が似ています。チェロのエンドピン跡があったので音楽でも利用されているようです。
開演を待つ観客の様子も、おしゃべりしている方もヒソヒソ声で周りに気を遣っている様子。皆さん総じて静かなのも新潟と似ているなあ、と感じました(両方とも寒い地域だから、ということもあるのでしょうか?)。

第1部は金森穣レパートリー。solo for 2は観たことがなかったので観ることができて嬉しかったです。抜粋でしたが、3つのストーリーが展開する演出が素敵でした。
続いてTraining Piece。池田亮二さんの音楽も相俟って、先日のR.O.O.M.を思い出しました。第1部終わった際、カーテンコールはありませんでしたが、拍手は鳴り続けていたのが印象に残ります。

休憩の後は第2部、平原慎太郎BOW!!!。Noism2で平原作品を観るのは「よるのち」に続いて2回目。今回のBOW!!!も強烈な印象を残す作品でした。各ダンサーには異なるキャラクターを与えられているようで、人間の欲が浮き彫りになるような印象を受けました。

アフタートークでは山田勇気さん、平原慎太郎さんお2人とも今日のパフォーマンスについて「良かった」とおっしゃっていました。新潟での5公演の経験、またある程度期間があったことでダンサーの中でイメージが深まったからではないか、とのことです。

私は新潟公演は観ていませんが、今回のパフォーマンスは第1部、第2部ともメンバーがいきいきと演じていて素晴らしかったと感じました。研修生カンパニーではありますが、Noismの名を背負って札幌で踊っているプライドも感じました。

また、アフタートークでは質問タイムも設けられていました。
「劇中の言葉をどう捉えれば良いか?」「Noismが初めて新潟で公演した時の観客の反応は?」「平原さんの頭の中をみてみたい!」など、
質問からは平原作品への驚きがあったように感じました。
(ちなみに、札幌ではコンテンポラリーダンスを生で観る機会は少ないようです。)

札幌文化芸術劇場hitaruは開館したばかりですが、バレエやダンスの企画を意欲的に開催していて、東京からみても気になる存在となりつつあります。
またNoismを招聘してどんどん盛り上がれば良いな、と期待しています。
(かずぼ)

「Noism2 初体験!」(サポーター 公演感想)

☆Noism2定期公演vol.10『金森穣振付Noismレパートリー』+『BOW!!!』

Noism2 初体験しました。ハートウォーミングな気持ちになりました。

Noism1は『カルメン』から観ていて、もうお馴染みなのですが、先日は『R.O.O.M.』の公開リハで「ん♪⁈」となり、公演は期待を裏切らず三回観ました。

公開リハ見たさに支援会員にもなった私。これは勢いでNoism2も観るか!

ということで足を運んでみた。
感動しました! 技術も年齢も若いけど、その時期にしか発散しないエネルギーを感じました。応援したい気持ちがフツフツと湧いて来て、ノイズム作品の最中はニコニコしてエールを送りながら観てました。ダンサー達に届いてたらいいなあ。

バッハの『solo for 2』ではクラシックが基礎にあってこそのコンテンポラリーというのをしっかり見せていました。『R.O.O.M.』のコンポーザーRyoji Ikeda(池田亮司)さんの『Training Piece』は好感の持てるリズミックなコンテで大好き。”フィジカル”ですね。(3/16アフタートークでTraining 「Place」 と言ってしまった …ごめんなさい)

Ryoji Ikeda『supercodex』

平原作品は力作力演よくやったと思います。いつも予備知識なしに観るのでBOWは挨拶(バウ)だと思ってました。が、違った。

ボウという音で連想されるもののカオスの世界。確かに若い暴力的なパワーを感じました。さすがラッパー。

観終わった後、これからも見守っていきたいと思った夜でした。札幌公演も頑張ってくださいね!
(たーしゃ)

Noism2定期公演vol.10、瑞々しい新潟公演3日間の舞台に幕

2019年3月17日(日)、この日のNoism2定期公演もマチソワ。そしていよいよ迎えた新潟公演の最終日。観るならやはりこの日ということで、チケットの動きも早かったようでした。

それを含めて、この3日間は、東京をはじめ、県外からのお客様も多数お見掛けしましたし、研修生カンパニーとしては大きな関心を寄せられた3日間だったと言えると思います。

そう、研修生カンパニーですから、専門的な目線からは課題もたくさんあるのだろうとは思います。しかし、一観客としましては、3日間という短い間でさえ、大きな進歩を見せて貰った、そういう気持ちの方が大きいです。
アフタートークで山田さんと金森さんが明かしたこと、それは『Noismレパートリー』のうち、『solo for 2』についてはオーディションが行われ、全員が全曲を踊っていたという今公演の裏話。「クリエイションの過程で、上がる子もいれば、下がる子もいた。今、舞台に立たせることが出来る子を選んで、曲も取捨選択をした」と山田さん。
また、『Training Piece』に関しても、敢えて、1年目のメンバーを使うことで、「戦って欲しい」(山田さん)という思いがあり、「競争原理」(金森さん)を持ち込んだとのこと。そうしたことが食らいついて踊る舞台の緊迫感に結実していたのでしょう。

「頑張れば出れる世界ではない。練習しても舞台に立てないことがあるのはプロも同じ。発表会ではない」(金森さん)という厳しさのなか、「完全な子はいなかった。パフォーマンスと身体の強さを基に、本番まで時間があるからと、可能性を信じてキャスティングした部分もある」と山田さんは語りました。(それに対して、「勇気は優しいから」とぼそっと突っ込んだ金森さん。)

このあと、Noism2としては、5月末のロシア(モスクワ)に招聘された劇的舞踊『カルメン』にも出番はあるのですが、それも全員ではなく、「出演者はオーディションで選ぶ。(モスクワには行かない)留守番メンバーも出てくる」とここでも敢えて厳しさを打ち出す金森さん。

しかし、この日、先ず、私たち観客の目を射たのは、『Noismレパートリー』を踊るNoism2メンバーたちの表情でした。なかに、紅潮した顔に自然な笑みが浮かぶさまを見たからです。勿論、表情と身体は別物ではありませんから、同時に、身体の動きも伸びやかで見違えるようでした。この公演期間中に自信を深めたのでしょう。課題も多いのでしょうが、どうなりたいのか、志と覚悟を持ち、まずは、オーディションの人選で金森芸術監督を困らせるようになって欲しいものです。大いに期待しております。

来月には、Noism2として初の県外公演である札幌公演(4/19&20)が控えています。平原さんと山田さんが北海道出身という縁もあって実現したものなのでしょう。
で、『BOW!!!』について金森さん、「ダンサーに負う部分が多い作品。何を感じ、自分のキャラクターをどう感じているか。それが見えてくる時があった。ちょっとずつ変わってきた。両作品とも実演の質を上げて、(札幌に)持っていきたい」と。山田さんも同じ思いでしょう。きっと彼女らと彼なら応えてくれると信じるものです。応援しております。

さてさて、今度は私たちです。上に触れた『カルメン』モスクワ公演に関しては、公開リハーサルが2度もたれるそうです。しかし、それを観るにはNoism支援会員になっていることが必要です。「是非観たい」ということなのでしょう、この日、アフタートークの後、ホワイエで支援会員となる手続きをしておられる方を数名目にしました。新潟市民による「評価と必要性」が問われる今、これまであまり目にしてこなかったダイレクトな反応、その光景を嬉しく思いました。

Noismの未来は、ある意味、私たちの手の中にあるのかもしれません。「Noismがある週末」を心ゆくまで堪能し、その最後にそんなことを思いました。皆さん、私たちの大切なNoismをご一緒に支えて参りましょう。
(shin)

Noism2定期公演、中日のマチソワで飛躍を見せる若き舞踊家♪

2019年3月16日(土)、Noism2定期公演vol.10の2日目にして中日のこの日は「マチソワ」の日。踊る側は大変なのでしょうが、観る側としては、一日浸って、どちらも観て「満喫」しまくることも可能な訳で、かく言う私もそのひとりだったりして、それはもう目一杯楽しませていただきました。

ソワレの後のアフタートークで、Noism2リハーサル監督の山田勇気さんは、この日の2公演、特にソワレを評して、「若いんだし、疲れとかじゃない。エネルギーが良い意味でも悪い意味でもかかっている状態で始まった。それを制御していくことが大事」と語り、金森さんも「そうだね」と応じていましたが、一観客として、この日のマチソワを、初めて、そして2回目、ということで続けて観た率直な感想を言うなら、2公演の間での変化は歴然で、動きが確信を深め、よりシャープなものとなり、迫力を増したパフォーマンスに変わり、随所で息をのみました。

更にアフタートークでの質問に絡めて書けば、平原作品『BOW!!!』を踊ることでメンバーに訪れた変化として、山田さんが「自分は素の彼女らと素の彼を知っているつもりだし、自分も自分を知っていると思っているだろうが、どちらも一面に過ぎない。平原作品を通して、新しいものが出てきたらそれを掴みたい」と全公演期間を通した語り方をしたあと、金森さんは「欠片は見えてきたりしているが、まだまだこれから。ちょっと何かを掴みかけている感じが見えるので、この本番の機会を利用して欲しい」と語っていました。

同時に、若々しく瑞々しい「素材感」もまたNoism2の魅力でもあります。金森さんが「舞踊家に委ねていてある種危険」で、「全体的にレベルの高いものが要求されている」作品と語った『BOW!!!』、クリエイションの間のコミュニケーションを通して「造形されたキャラクター」を踊るメンバー9人は、時に、平原作品寄りの姿を顕して頼もしかったり、時に、各々の若さが顔を覗かせて微笑ましかったりと、二極間の「拮抗」にたゆたう9つの身体として映じました。それは個々の変化の過程をつぶさに目撃することに他ならず、「今、このとき」にしか見られ得ない、究極の再現不可能性を纏った5公演を意味するものです。そんな魅力。

アフタートークの方から始めてしまいました。戻りましょう。

では、山田さん演出の、7人で踊られる「金森穣振付Noismレパートリー」です。山田さんが「えいっ」とか「良いのかなぁ」とか思いながら、今踊るメンバーに合わせて手を入れ、アジャストを施したこともあり、金森さんも「自分のオリジナルなのに、新鮮だった」(*註)と語ったレパートリーを踊る前半25分。カナール・ミラン・ハジメさんの動き出しから踊られ、門山楓さんがラストを締める『solo for 2』も、Noism定番の横一列から始まる『Training Piece』もそれぞれに美しく、これから更にNoism的身体性を身につけていくのだなと、まるで育ちゆく「わが子ら」を観ているかのような感覚が訪れてきます。(失礼)
また、椅子を使わない『solo for 2』+黒いレオタードで踊られる『Piece』は、前日の公演を観たfullmoonさんが書いたように、シックな「別の作品」と言う味わいもあります。レオタードの黒、その隙間から覗く肌の色、たったそれだけなのに、それが限りなくゴージャスに見えてきます。

休憩を挟んだ後半は平原さんの新作『BOW!!!』。休憩の途中から低く聞こえてくる怪しげな音楽。心の準備をしてお待ちください。怪しげなフランス語。嘲笑。青い照明。そして特権的な赤。これから観ることになる全てが疑わしい感じ。「平原ワールド」全開。或いは、「平原劇場」。
Noism2最年長となる門山さん制作で『羊たちの沈黙』を思わせるようなオブジェの下、門山さんを中心に据えた、瞬発力、爆発力が要求される50分間の舞台が進行していきます。何が起きたのか。金森さん×山田さんの前半とはまったく趣が異なります。それぞれが同じ黒を基調としながらも、全く「別の黒」を見ることになるでしょう。

「演出をするうえで、最も難しいのは、実演家の内面をいかに見抜いて引き出すか。それも熟練した実演家ではないので、本人たちも気付いていない未知なる『何か』を、ということになる」(金森さん)

既に本日は公演最終日。再びのマチソワ2公演。どうぞりゅーとぴあ・スタジオBへお越しください。「未知なる『何か』」を目撃するために。
(shin)

【註】「もとより、歴史上のいかなるマスターピースであっても、残された(映像)記録から振り起しをしていく際に、それを担う人のファクターがかかることは必定で、あたかも『伝言ゲーム』ででもあるかのように、(正確には)原形を留めていないものになってしまう」と金森さん。(アフタートークより 文責:shin)

Noism2公演初々しく開幕、「イエーイ!」♪

2019年3月15日(金)。
雨の新潟で、この日幕を上げたNoism2定期公演vol.10。
演目の時間は次の通りでした。

Noismレパートリー 25分
休憩15分
BOW!!! 50分 

先ずは金森穣振付Noismレパートリー(演出・山田勇気)。
『solo for 2』抜粋、に続いてすぐに『Training Piece』抜粋へ。
衣裳は黒でした。
金色の椅子ではなく、『Piece』はカラフルな衣裳でもないので、
何か違う作品を見ているよう。
でも、きっちりと正確に、清潔に仕上がっていて、
初々しくて好印象でした♪
「イエーイ!」という歓声が!

休憩を挟んで、後半の『BOW!!!』はまさに平原ワールド全開!
メンバーみんながんばりました!!
先日の公開リハで目にしたのは短かったため、
「?」が多く残りましたが、
この日観た本番はストーリーこそないものの、
何か物語を見ているようでした。
音楽CD(手作り)が限定15枚で売られていますよ(1,500円)。
で、即、1枚ゲット♪

アフタートークは『BOW!!!』に関するものが多かったです。
内容に触れることばかりなので、
そこは明日以降、shinさんにおまかせします。

冒頭は何を言っているのか?
アニメ声は?(門山楓さんで~す) 
リンゴの意図は? 等々・・・
恐らく明日も同じような質問が出るかと。

明日もますます過激に変わるかも。
明日、明後日はマチソワで、日に2公演。乞うご期待!
(fullmoon)

追伸:
7月の公演は『Mirroring Memoriesーそれは尊き光のごとく』(!)と
新作の『Fratres Ⅰ』(親族、兄弟、同士)とのこと。
速報仮チラシが折り込まれました!

地元紙3日連続の「Noism祭り」で迎えるNoism2定期公演vol.10

本日、2019年3月15日(金)付の「地元紙」新潟日報朝刊にもNoismを取り上げた記事が掲載されました。これで同紙は3日続けてその紙面にNoismの活字を躍らせた訳で、読者は、謂わば「Noism祭り」を楽しみながら、Noism2定期公演vol.10の初日を迎えることができた訳です。

文化面、「『Noism2』が新作」の見出しと「きょうから新潟で 振付家・平原さん演出」の袖見出しのもと、公開リハーサル時の写真入り記事です。

地元紙が示すこうした姿勢は、掌中の「宝」を巡って、市民の意識を醸成することに役立ち、検討さるべき「市民の評価と必要性」(中原市長)の側面でとても大きな意味をもつものと考えます。新潟日報さん、有難うございました。そしてこれからも発信、よろしくお願い致します。

さてさて、今日からの3日間・5公演です。記事にもある若い舞踊家の卵たちが培ってきた動きの質と若さ、そしてエネルギーはきっと目に眩しく映ずるものである筈です。近いところでは、昨夏、酷暑の屋外で演じられた特別公演『ゾーン』においても感動的な時間(「刹那」)に昇華されていたことを思い出します。

加えて、今公演、各日ともソワレの後には、金森さん×平原さん×山田さんによるアフタートークが予定されていて、そちらも興味深いものがありますよね。
ですから、皆さま、必見ですよ!とだけ。
(shin)

Noism2定期公演vol.10公開リハーサル&囲み取材に行ってきました♪

つい先日、感動の幕を下ろしたばかりのNoism1の公演から僅か3週間弱で始まるNoism2の定期公演vol.10。

3日後に初日を控えた2019年3月12日(火)15時半、公開されたリハーサルとそれに続く囲み取材の模様をお伝えします。

この日、見せて貰ったのは、ゲスト振付家の平原慎太郎さんの手になる新作『BOW!!!』、その導入部分の一部(15分強)。約5~6分のプロローグに続くというその場面は、「私の皮膚…、つややかな皮膚…、その下の肉…」と、内容とは不釣り合いなアニメ声が延々語るなか、上手前方、門山楓さんが踊りだすところから始まりました。中央奥には立てて置かれた長い卓、その陰から鈴木夢生さんが奇しく、そして妖しく顔を覗かせています。

唯一の男性メンバー、カナール・ミラン・ハジメさんを含め、全員が黒い衣裳をまとい、裸足。舞台も黒で、照明は仄暗く、不穏な雰囲気がこれでもかと漂ってきます。

平原さん×Noism2と言えば、即座に、2017年の『よるのち』に魅了された記憶が蘇るというもの。「洋館」(新潟県政記念館)を舞台に、全員うら若き女性メンバーだけで踊られたゴシックロマンスを思わせるそれは、本人たちが充分に意識しているとは言い難い滲み出るかのような未成熟なエロティシズムを、ある意味、確信犯的に撒き散らす野心作でした。

昨夏の初めからノート(プロット)の下拵えを開始し、11月末から制作にとりかかったという今回の新作。この日、その全体像を一「望」することはできませんでしたが、フォーク、ナイフ、皿、ワインボトル、卓、そして灯りといった小道具、不吉に耳に響く哄笑などによって想起させられたのは、ある種のカニバリスム。グリーナウェイ×ナイマン『コックと泥棒、その妻と愛人』、或いはシーゲル×イーストウッド『白い肌の異常な夜』のような張り詰めたおどろおどろしさ、いかがわしさ、或いは、禍々しさ。メンバーの瑞々しい若さと完全にミスマッチなところに妙にそそられます。
更には、リハを止めて、音楽の指示を出す平原さんの口からは、ここはロシア、ここではドイツ、更には「オスマントルコのイメージなんだ」とぽんぽん国名が飛び出してくるので、猥雑で混沌とした雰囲気は弥が上にも色濃くなっていきました。まさに平原さんの独壇場かもしれません。今作もまた「茫」然と見詰めることになるのでしょう。待ち遠しい。早く全「貌」が観たいところです。

囲み取材は16時からでした。
続けて、そこでのやりとりのなかからご紹介しましょう。
まずは、新作『BOW!!!』についてです。
「表現者・ダンサーとしての爆発力を見たいと思う。みんな、僕(平原さん)がやるような表現は経験がない筈。バイタリティで昇華していく、そのプロセスが作品となる」(平原さん)

「作品には明確なストーリーはない。例えば、キュビズムのように、様々な側面があり、多角的。『忘』、『暴』、『紡』、『某』、『棒』など、タイトルの『BOW!!!』(ボウ)に纏わる様々なイメージを紡いでいく。散りばめられたそれらを見つけに来るだけでも楽しい筈。溢れる若さには見応えがある」(平原さん)

「(いつもと違って)とまどう部分もあったかとは思うが、いろんなことを自分の動きにして晒すことができるか。これを通して何が起こるか。変化と覚悟に期待している」(山田勇気さん)

「前回の『よるのち』のときのNoism2とはちがい、定期公演も初めてなら、振付家とのクリエイションも初めてと、まっさらな状態。わからないものもどう成立させていくか。覚悟を決めて、晒していくことを要求している」(平原さん)

併せて踊られる「金森穣振付Noismレパートリー」(『solo for 2』及び『Training Piece』からの抜粋)について山田さんは、
「難易度は高いが、全てやってみて、取捨選択した。同じドリルをやってどれだけいけるか。最初は『踊れる』と思っても、高いハードルであることがわかるところから始まる。鍛錬と心の中の自由のバランスをどう踊るか」と。

外から見た「Noism」の存在について問われた平原さん、
「いい意味で異質。しかしこの形こそがまとも。国内で唯一、プロを養成し、プロが踊るカンパニーも、世界基準で見れば、ごく普通。芸術文化の水準を上げている存在」と。
そして研修生カンパニーNoism2があることも「奥行きですもんね」と平原さん。その言葉をもって囲み取材は締め括られました。

研修生カンパニーNoism2を観ることには、Noism1を観る時とは異なる楽しみがあります。なかでも最たるものは、公演期間中にグングン伸びていく若い表現力を目撃する楽しみです。5名の新顔も眩しい定期公演vol.10。きっと熱いステージが繰り広げられることでしょう。チケットは絶賛発売中。皆さんそれぞれに、「推し」の若手舞踊家の卵を見つけに来てください。

Noism2定期公演vol.10・新作『BOW!!!』(演出振付:平原慎太郎)と金森穣振付Noismレパートリー(演出:山田勇気)、公演は3月15日(金)~17日(日)で、全5公演。(@新潟市りゅーとぴあ・スタジオB)
出演はNoism2:門山楓、岩城美桜、森加奈、森川真央、鈴木夢生、池田穂乃香、カナール・ミラン・ハジメ、杉野可林、長澤マリーヤ、橋本礼美。
乞うご期待!
(shin)