夕方の新潟ローカル「BSN NEWS ゆうなび」、特集にて「ノイズム海外公演密着」を放送♪(2025/10/22)

この秋一番の冷え込みとなった2025年10月22日(水)でしたが、Noism界隈では熱を帯びた気持ちで夕方18:15からの新潟ローカル番組が待たれていたことは間違いないものと思われます。

10月9日(木)と10日(金)の二日間、スロベニア国立劇場での「ヴィザヴィ・ゴリツィア・ダンス・フェスティバル」の舞台に立ったNoismの面々。それを伝えた各種SNS、ある一枚の画像に、テレビカメラを構えるBSN坂井悠紀ディレクターの姿を認めた日以来、「いつか放送してくれる筈」との確信を抱いて過ごしてきたのでしたが、昨日(10月21日)になって、Noism公式が正式にこの日の「BSN NEWS ゆうなび」について告知してくれたのでした。

一地方テレビ局に過ぎないBSN新潟放送が海外公演に密着すること自体、驚くべきことかもしれませんが、敢えてそれをさせてしまうほど、Noism Company Niigataが成し遂げていることの「凄さ」が知れようと言うものでしょう。まさにシビックプライド、新潟の誇りです!

特集「Noism 6年ぶり海外公演に密着 新潟から世界へ 国境の街で喝采」は18:37からの約10分間。

まずは「日本から飛行機を乗り継いで十数時間」のスロベニア、その南西部に位置する街ノヴァ・ゴリツァの紹介から。その街は面積280平方km、人口32,012人。

今回、Noismの滞在期間は公演日を含む実質6日間。劇場入り初日(10/6)にはフェスティバル側が企画した「Noismメソッドワークショップ」があり、プロを含む地元のダンサー十数名が参加、金森さんと井関さんは講師を務める様子が流されました。

「私たちは日本人であり、私たちの伝統には、西洋文化と完全に反対の身体の使い方があります。だから私たちのカンパニーではその両方を組み合わせようとしています」(”Since we’re Japanese, and in our tradition, we have this way of using our bodies, completely opposite to the Western culture. So in our company, we try to combine both, you know.”)(金森さん)

「動きのトレーニングとその背景にある哲学を組み合わせることができて本当に素晴らしかった」(”So it was really nice for me to combine the training of the movement with the philosophy behind. So it was very cool.”)(ワークショップの参加者)

「興味は持ってくれたような気がする。ただもどかしくて。経験を重ねれば重ねるほどより教えづらくなっているよね。難しさがわかるから」(金森さん)
「わかるからね。うん」(井関さん)


…このあたりのことは先日の「さわさわ会」誕生会・懇親会でも金森さんは口にされていました。ほんの一度きりではダメなのだと。

ノヴァ・ゴリツァの歴史。第二次世界大戦後にイタリアと旧ユーゴスラビアの間に国境線が引かれ、イタリアの一部だったゴリツィアは2つに分断されてしまう。従来の市街地はイタリアに残され、スロベニア側の国境付近に計画都市として作られたのがノヴァ・ゴリツァ(=新しいゴリツィア)。両都市間を自由に行き来することが出来るようになったのは2007年だそう。

2019年に始まったこのダンス・フェスティバルは、「歴史が長きにわたって分断してきたものをダンスの力で再び結び付けられる」という考えから、そのふたつの街で開催されているもの。そして「劇場は重要な砦」とも。(同フェスティバル芸術監督ヴァルテル・ムラモル氏)

今年、このフェスティバルに参加したのは欧州を中心に20あまりのカンパニー。そのなかでアジアから招かれたのはNoismのみ。

「今回(の『マレビトの歌』)に関してはまだ劇場でやったことがないので、新潟でその時間を過ごさずに、いきなりここでやっているから大変は大変ですね」(金森さん)

Noismはこれまで11か国22都市で公演をしてきたが、新型ウイルスや国際情勢を背景に、海外からの公演依頼を受けることができず、今回、2019年の露モスクワ公演以来の海外公演となった。

「言語を用いると、その『意味』をどうしても捉えがちだし、でも(ダンスは)そこにある『身体』しかなくて、それこそ世界共通言語なのだろうと思う」(井関さん)

「(芸術とは)国境を無効化するもの。やすやすと飛び越えるもの。民族(*)・文化・宗教、それらを超越したものを探求する営みのことを芸術って言うんじゃないの」(金森さん)

『マレビトの歌』鑑賞後の観客の感想
「とても美しかったです」
「さまざまな感情が立ち上がりました」
「彼らが一体となっているところが気に入りました。一つの大きなもののように感じられました」

そして、「会場も本当に満員で、まさに本日のパフォーマンスを通じて、日本とスロベニアの方々が繋がったと思います」(駐スロベニア大使・吉田晶子氏)

「だいぶディテールが抜けていっているので、もう一度、休み明け、全部、一から動きに関しては締め直す。とはいえ無事に終わって良かったです。お疲れさん」、そうメンバーに話した金森さん。同じようなことは、これも「さわさわ会」の宴のときに聞いていましたが、全く妥協のないところはやはりいつものぶれない金森さんです。

12月の新潟と埼玉での「凱旋公演」も楽しみ過ぎますが、同時に、BSN坂井悠紀ディレクターには、Noismの新作ドキュメンタリーも期待したいところです。片道十数時間の移動プラス正味6日間の滞在を密着した訳ですし、この「10分間」でおしまいってことはないですよね。2021年に文化庁芸術祭賞テレビ・ドキュメンタリー部門で大賞を受賞した『芸術の価値~舞踊家金森穣 16年の闘い』、そしてドイツの「ワールドメディアフェスティバル2024」でドキュメンタリー部門(Documentaries: Arts and Culture)金賞受賞の『劇場にて-舞踊家 金森穣と新潟(英題:On Stage)』に続くものが見たいです、切実に♪坂井さん、そこんところ、ヨロシクってことで。

【註】民族(*): この日の「BSN NEWS ゆうなび」放送中の字幕には、「民俗」と出ましたが、それは明らかに「民族」の間違いであろうと思われますので、ここではその理解に基づいてご紹介させて貰っております。

(shin)

「きゃあ!あっちにもこっちにも♪」メディア登場ラッシュのNoismに嬉しい悲鳴♪

設立20周年の記念すべきシーズンのラスト、来週の「サラダ音楽祭」での『ボレロ』を前にして、このところのNoism Company Niigataはメディア登場ラッシュで、嬉しい悲鳴の「大渋滞」中♪

皆さんはそれら全てを追えているものと思いますが、こちらにもその「大渋滞」を纏めておきたいと思います。よろしければ、改めてご確認ください。

見逃し無料配信動画サービス「TVer」のTOKYO MX『アンコール!都響』#32 J.S.バッハ(マーラー編曲):管弦楽組曲より「序曲」「エア(アリア)」,ドヴォルザーク:スターバト・マーテル【配信期限あり・9/21(土)14:59まで】

2023年の「サラダ音楽祭」メインコンサートにおいて、J.S.バッハ(マーラー編曲)管弦楽曲より「エア(アリア)」を踊る金森さんと井関さんを観ることができます。
*8:15あたりで、メインコンサート映像の前説が始まり、おふたりのパフォーマンスについて、「その存在自体が美しい」「『美しい』の一言に尽きる」などと語られます。
*9:08頃より、今回の放送に向けての金森さんからのメッセージがあります。こちら、ご覧ください。


*10:06から「序曲」「アリア」が始まります。
*16:20頃、両袖から金森さんと井関さんが登場して「アリア」(17:47頃)に繋がっていきます。まさに「美しさの極み」です。配信終了まで何度も観ちゃいますよね。

NHK国際放送「ワールドジャパン」、「Direct Talk」での金森さんのインタビュー動画「Dancing into the Future」

15分に纏められたインタビュー自体、「稽古ism」Noismに関する奥深い内容が語られていて興味深いのは勿論ですが、途中にインサートされる欧州時代の若き金森さんの画像と動画はまさに「蔵出し」クラス!「喜びの舞」もので、必見です♪

③ 「新潟日報デジタルプラス」の連載記事(全4回)「新潟からの挑戦Noism(ノイズム)20年」です。
こちらでは、以下にX(旧twitter)「新潟日報ニュース」のポストへのリンクを貼らせていただきます。
【各記事の全文を読むためには、新潟日報パスポート(ID)の登録が必要となります。(新潟日報ご購読の方は無制限で利用できます。)】

〈1〉「国内初、そして唯一の公共劇場専属舞踊団…「りゅーとぴあ」から劇場文化をつくる」
〈2〉「財政難の新潟市が税金を投じる意義とは…存続問題浮上、文化的価値の評価は難しく」
〈3〉「地域に根ざした舞踊団になるには…アウトリーチやコラボに手応え、世代超えファン増やす」
〈4〉「金森穣さんが考える地方発信とは、井関佐和子さんの舞台への思いとは/インタビューで語る現在地」

Noismのこれまでを読み、新潟市のこれからを考える機会となる連載記事です。なかでも、「第4回」に出てくる新たなレジデンシャル制度における芸術監督の任期「1期5年、最大2期10年」という規定と金森さんの思いが気になるのは、この間ずっと変わりません。

…以上、今回は各メディアで「大渋滞」となっている昨今のNoism Comapny Niigataについて、「交通整理」を試みたつもりですが、「賞味期限」の早いもの(TVerの配信)から一つひとつ全てご覧頂きたいと思います。そして、更に支援に力を注いで参りましょう。

(shin)

NHK「ラジオ深夜便」インタビューに金森さん登場♪

皆さま、昨夜(2024年7月17日・水)はお聴きになられたものと思います。勿論、NHKが毎日放送している深夜番組「ラジオ深夜便」(アンカー:芳野潔)、その午後11時台後半、金森さん登場の「公共劇場専属舞踊団を20年」と題されたインタビューのことです。

こちらのインタビューですが、鈴木由美子ディレクターとオンラインで行われたものとのことで、約25分間の放送でした。

未だ「道半ば」とする金森さんのご意向と拝察しますが、聞き手から終始、「20周年おめでとうございます」のような言葉はなく、「前例のないことでしたので、あらゆる面で困難の連続でしたし、まあホント、あっという間に過ぎたっていうのが実感ですかねぇ」と語り出した金森さん。

その後、Noismの「20年」に発して、話は多岐に渡ります…。
・新潟市長交代期に(「幸か不幸か」(金森さん))政治的なトピックになってしまったNoism
・「日本初の公共劇場専属舞踊団」が意味するもの
・「新潟の文化」であることの理解の継続性
・舞踊や文化をめぐって、この国で変えるべきもの、可能性への献身
・「無理解の壁」との闘い、後世のための文化状況改革への闘い
・この国の文化状況を新潟から変えるための金森さんの闘い
・舞踊家たちの稽古への情熱
・芸術が社会に浸透していく循環の実現へ
・記念公演「Amomentof」に込めたもの、舞踊とは一瞬への献身
・消えてなくなること、残らないことの尊さ
・「時分の花」(世阿弥)を目の当たりにすることの醍醐味、一期一会、緊張感
・井関さんの20年間の献身、その身体に刻まれた記憶や注いできた情熱、舞踊への愛をマーラー交響曲第3番第6楽章『愛が私に語りかけるもの』を用いて作品化、未来に繋がれていく情熱、その刹那を共有して欲しい
・次週に迫る「東京公演」(←浦安にあるにも拘らず、「東京ディズニーリゾート」とされるテーマパークに似た、聞き手による「その」表現に、「『埼玉公演』でしょうが!」と思わず突っ込みを入れましたけれど)、「東京一極集中」(金森さん)の危うさ
・「劇場」とは(東京を介さずに)地方独自の文化を創造・発信する場所という理念
・金森さんの「私がダンスを始めた頃」、欧州で体感した社会と舞踊
・目指すもの: 舞踊芸術に従事する舞踊家の情熱・献身が社会のなかでうまく活用され、社会に還元され、この国の劇場文化が、地方が豊かになり、その劇場文化から創造されたもので平和に寄与したい(金森さん)
・舞踊家であること: その社会や他者にとっての価値、世界にとっての貢献、それを一人でも多くの後輩たちに伝えたい、可能性を見せてあげたい(金森さん)…

そんなこんなで、中身の濃い約25分間でした。

こちらのインタビューはNHKのネットラジオ「らじる☆らじる」にて、7月25日(木)午前0:00までの期間限定で配信中です。お聴きになりたい方はこちらからどうぞ。(金森さんへのインタビューは23:17頃から始まります。)

また、この日のやりとりに興味をお持ちになられた向きには金森さんの著書『闘う舞踊団』(夕(せき)書房:2023年)の一読をお勧めします。金森さんの信念と「闘い」の真実が余す所なく記されていて、読めば胸アツになること必至、必読の好著です。

さて、いよいよ「埼玉公演」3 DAYSも間近に迫って参りました。献身のさまを目撃し、刹那を共有すべく、是非、彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉へ♪お見逃しなく!

(shin)

Noism×鼓童「鬼」再演:「タタク」と「オドル」に耽溺した至福の新潟千穐楽

2023年12月17日(日)午前11時過ぎ、新潟市内にも雪が舞い始めて、「いやいやとうとう来たか」みたいな気分で、車を運転して白山公園駐車場を目指しました。その頃にはまだ駐車場も空いていたので、場所を選んで車を駐めることができて一安心。で、まずはりゅーとぴあの6Fに上がってみると、展望ラウンジから見えるのは横殴りの風雪だったりするもので、まったく「やれやれ」って感じな訳です。

そのまま、そのフロアにとどまり、旬彩 柳葉亭にて家族で食事(まぐろ漬け丼と柳御膳)をしたり、珈琲を飲んだりして過ごしていたのですが、こちらのお店も年末に閉店してしまうとのことで、「そうなると来年からは淋しくなるなぁ」とか思って、これまで以上に味わって頂いたような塩梅でした。いろんな思い出もあります。長い間どうもお世話になりました。

開場時刻が近付いてきたので、3Fに降りていきます。一昨日とか昨日とか、或いは一昨日も昨日も会った友人・知人も大勢集まって来ましたし、この日、久し振りにお会いする顔もありました。でも、その誰もが一様にこの午後の公演への期待から晴れやかな笑顔を浮かべていました。館外の悪天候などはもう関係ありません。

14:30、ホワイエへ進みます。物販コーナーにて、浮き星をふたつ(ミルクと黒糖ベース)買い足しました。

物販担当はNoism2 高田季歩さん(左)と村上莉瑚さん、
やはり笑顔が素敵です♪

この日も開演前のソワソワ気分のままに、原田さん直筆の楽譜を見たり、色々な人たちと色々な話をしたりしてから、客席につきました。

『お菊の結婚』25分間、そして休憩20分間を挟んでの『鬼』40分間。新潟公演千穐楽のこの日、心掛けたのは「タタク」と「オドル」に耽溺すること。耳に届く音と目に映ずる身体のみが立ち上げる異界に耽ること。

『お菊の結婚』。ストラヴィンスキーの『結婚』、その奇天烈な音や歌、一筋縄ではいかない込み入った展開をもはや「劇伴」かと思わせるほどまでに自家薬籠中の物として踊る(現・元)Noismメンバーたち。
蔑み、欲、閉塞感、排除、謀(はかりごと)、孤独、その果ての惨劇。しかしながら、動き的に、ほぼ人形振りで紡がれていく「悲劇」からはその悲劇性がそっくり抜け落ち、ちょこまか動く身体の滑らかさの印象から「愉しい」の感想こそ似つかわしいほどです。鮮やかな色に染まる襖の外連(けれん)もピタリはまっているうえ、ふたつの死の見せ方も見事の一語で、(二重の「人形性」に閉じ込められるお菊の末路はさておき、)安易な「ポリコレ(政治的正しさ)」を嘲笑うように躍動するヴィラン(悪役:殊に楼主一家の3人)たちのアナーキーさ加減にドキドキしまくりの演目です。

Noism×鼓童の『鬼』。原田敬子さん曰く「挑戦でしかない」音楽をもとに、「同時に」産み落とされる「タタク」と「オドル」を耳からと目からと取り込んで、献身の賜物として成し遂げられた「同時性」そのものでしかないパフォーマンスに驚き続ける時間。音だけでも、舞踊だけでも既に圧巻レベルなのですが、それが「同時に」来る訳です。それはそれは物凄いシンクロ振りで、それを今風に言えば、「鬼」シンクロとでもなるのでしょうから、ここにも「鬼」が顔を出す訳です。まさに極限のところで出会う「鬼」です。
今回の再演にあたって行われたラストシーンの変更も主題的な一貫性・統一性を高めているように感じます。(初演時のラストシーンにおいては無人の光景だけが広がっていました。)
そんなふうにまるで隙のない一作、耳を澄まし、瞠目する者が悉くその身体の深奥から揺さ振られるように感じるのも無理のないことでしょう。なかなか身体の震えがとまらず、本当に物凄いものを観た感がある新潟千穐楽の『鬼』でした。

この日も終演後に大喝采とスタンディングオベーションが起こったことに何の不思議もありませんでした。「名作」が発火しそうなほどの熱演で演じられたのですから、それらはとりもなおさず、観客側の気持ちの昂りと至福の表れでしかなかった訳です。

この2作品につきましては、初演時に観た際に、感じたところを当ブログに記しています。そちらもご覧頂けましたら幸いです。
*「初見参の地・鶴岡を席巻したNoism×鼓童『鬼』ツアー大千穐楽♪」(2022/07/31)
(こちら、入場時にお手許に渡されたなかの「Noism Supporters Information #9」にて触れさせて貰っているブログ記事になります。)

この日のアフタートークについても書き記しておきたいと思います。登場したのは、井関佐和子さん、三好綾音さん、坪田光さん(以上、Noism)、そして小松崎正吾さんと平田裕貴さん(以上、鼓童)でした。

☆『鬼』のテーマ「新潟」の印象
平田さん(鹿児島県生まれ): 冬、凄く色々な風が吹く。冷たい風、寒い風…。
坪田さん(兵庫県生まれ): 雲が分厚い。上から押されている感じが、『鬼』の洞窟のなかで踊っているような感じと重なる。
小松崎さん(福島県生まれ): 海。太平洋側で生まれたので、海のキレイさに驚いた。海産物も違っていて、色々魅力がある。荒れている表情の海やサンセットも印象深い。
三好さん(東京都生まれ): じゃあ山(笑)。海も山も同時に見られる。山にいながら日本海の風を感じられる。ちょっと暗い感じなのも、自分にフォーカスし、集中するのによい場所。
井関さん(高知県生まれ): 一番大事なのは自然の力。この作品に活かされている。昨日までと全然違って、今日は踊っていて、「新潟にいる」と感じた。お客さんが信じられない熱量と集中力とで見詰めてくれていて、「新潟」って出て来た。

★再演でパワーアップした部分
平田さん: 2回目ということで、お互いのタイム感がなんとなくわかってきた部分がある。どちらかが合わせるというのではなく、パッと出て来る感じになった。
井関さん: より刺激が大きくなってきている。毎日、音色が違う。

☆コラボレーションで大変だったこと
三好さん: 毎日違うから集中力が必要だが、総じて大変さより面白いが勝っている。
坪田さん: 人見知りするところ。いつもマイナスから始まる。
小松崎さん: 本当に幸せな毎日。もっと深まっていったら、どんな景色が見えるか楽しみ。(*小松崎さんは、約10年ほど前に鼓童で踊りをやることになったとき、Noismに来てNoismメソッド・Noismバレエを学んでいたことがあり、その意味では「三好さんの先輩」(井関さん)にあたるそう。昨年はタイミングが合わず、『鬼』不参加だったのをとても残念がっていたもの。)
平田さん: 大変だったこと忘れてしまっている。ただ、合わせることは大変。
井関さん: 大変なことを楽しいと感じる「変な人たち」が集まっているのが舞台人。鼓童が演奏する『鬼』は、自分の気持ちが入っているときは別だが、普通の状態で聴いていると衝撃的過ぎて、気がどうかしてしまいそう。通して聴かされたお客さんは大変だったろう。

★今晩食べたいものは
平田さん: 新潟市内の某店(E亭)のディナーBセット。担々麺のお店かと思っていたところ、常連の坪田さんから、お勧めは「油淋鶏のBセットだ!」と聞いた。(「ぎょうざが付いてくるのも大事なところ」と坪田さん。)
坪田さん: お肉。「うし」。
小松崎さん: あったかいご飯と味噌汁。ホテル生活が続いているので、あたたかい家庭料理が食べたい。(とそこで、坪田さん「E亭は玉子スープ」だと補足するが、ややあってから、この日は同店が定休日だと気付き、平田さんは崩れ落ち、全員大爆笑のオチがついた。)
三好さん: 「ぶたにく」。(「疲労回復のためだね」と井関さん。)
井関さん: わからない。

☆このあとの『鬼』ツアー(神奈川・岡山・熊本)、どういう意気込みで臨みたいか
平田さん: すぐに再演したい、した方がよいと思っていた。楽しみ。また再演したい。
坪田さん: 各地それぞれ別の作品になる感じがある。毎回、新しい衝撃があって楽しみ。
小松崎さん: ふたつの生命体がガシャッとひとつになる演目。各地で邪気を払えたらいいなと思う。毎回、「これが最後!」と思ってやっている。再演したいんですけど。
三好さん: ツアーといっても踊る回数は4回。昨日より超えたいという欲をもってやっている。やればやるほど、もっと先があると身体で感じている。行けるところまで行きたい。
井関さん: 世界ツアーをしたいというのが夢。「新潟」から生まれたこの作品を広げていきたい。確実にパワーアップしていくだろうし、また再演したい。

浮き星は4分の3をゲット。しかし、コンプには至らずでした。

…等々。最後はクラウドファンディングへの協力依頼と大晦日のジルベスターコンサートへの参加について、井関さんが言及し、拍手のうちに、この日のアフタートークは閉じられました。

さて、Noism×鼓童「鬼」再演ですが、絶賛のうちに新潟3daysを終えて、明けて新年に神奈川(1/13,14)→岡山(1/20)→熊本(1/25)とまわります。各地で「鬼」降臨をお待ちの皆さま、お待ちどおさまです。来年のことを言うと「鬼」が笑うといいますが、この『鬼』再演に向けた期待感から自然と笑顔になってしまうというのが、今の状況かと。圧倒される準備を整えて、いましばらくお待ちください。
その公演、JR東日本の新幹線搭載誌「トランヴェール」2023年6月号に私たちNoism サポーターズについて掲載していただいたときの、「感動は約束されています。期待値を高めて来てください」(私)、「本物の舞台が見られます。必ず心が動きます」(aco)、「Noismはあなたを裏切りません」(aqua)、「私が保障しますよ(笑)」(fullmoon)、それらに尽きます。どうぞお楽しみに♪

*追記: 「トランヴェール」2023年6月号に関しましては、こちらもご覧ください。
「2023年6月1日、JR東日本「トランヴェール」6月号にサポーターズ登場♪」(2023/06/01)
また、掲載していただいた「トランヴェール」の6月号そのものもバックナンバーとして、こちらからご覧いただけますので、そちらもどうぞ。

(shin)

 

Noism×鼓童「鬼」再演:2日続けて不定形で名状し難い情動に駆られた新潟公演中日

前日の超弩級の舞台、その余韻を引き摺ったまま迎えた2023年12月16日(土)、この日の「至上命題」は滞りなく「鬼」新潟公演中日の開演を迎えることでした。白山公園駐車場は混雑が予想されていたため、早め早めの行動で、りゅーとぴあを目指したのですが、師走の週末は「どこからこんなに車が湧いて出て来るんだ!?」状態で、やや気を揉ませられました。それでも、時間に余裕をもって動いたため、駐車場も「楽勝」で、落ち着いて、翻弄される準備を整える(?)ことが出来ました。

今日はまず、昨日のブログにあげそびれていた私たちNoismサポーターズUnofficial発行の「インフォメーション #9」(A4版・両面)からご紹介させていただきます。

入場の際にチケットを切って貰ったあとに手渡されるチラシたちのなかに折り込ませて頂いています。裏面掲載の「再演への思い」はとても興味深いものと言えます。是非、お読みください。また、この表(おもて)面にて使用のビジュアルからだけでも初演時との相違(追加されたもの)がふたつは見てとれます。これからご覧になる方はじっくり比較してみられるのも一興かと。

で、この日のホワイエに『鬼』を作曲された原田敬子さんのお姿を見つけたので、ご挨拶をしてから、少しお話する時間を得ました。昨年の京都以来のことで、嬉しく思いました。そのなかで、原田さんは今回、舞台と地続きとなっている新潟・りゅーとぴあ〈劇場〉の響きの良さについて触れられました。規模的にもちょうどよい大きさであるとも。その意味からも「新潟」をテーマとして、「新潟」を代表する2団体が共演する今作を「新潟」で観ることの意味は大きいと言えるでしょう。まさに新潟の誇りそのものです。

お話を伺ってから、展示されている『鬼』の楽譜(抜粋)を観たのですが、私がこの日、個人的に驚いたのは、その大層込み入った楽譜のなかのあるひとつの音符が赤ボールペンで丸く囲まれていて、脇に貼られた黄色い付箋に「きこえない」とあったことでした。まさに「鬼」のような耳の持ち主によって作られた楽曲なのだと再認識した次第です。

その後、中原八一新潟市長をお見かけしたりしましたし、物販コーナーで「浮き星」(私はピンク色の「いちごベース」にしました。)などを買ってから、客席に向かいました。「至上命題」クリアです。

この日の物販コーナーはNoism2 河村アズリさん(右)と春木有紗さん、
素敵な笑顔です♪

そこから観た2演目のもの凄さといったらありません!
まったく方向性を異にしながらも、観る者全てを不定形で名状し難い情動に駆られた状態に置いてしまう点で共通する2演目。その情動、安易に「感動」などと表現して事足りる類のものではないというのが実感です。身体の奥深いところをむんずと握られたうえ、力を込めて揺すぶられでもしたかのような感覚。それを体感するために何度も足を運びたくなるような舞台。それがNoism×鼓童「鬼」(再演)なのです。
『鬼』が終わると、この日もスタンディングオベーションが目立った客席!
舞台には大熱演を示した演者たちがいて、その場に身を置いて見詰めることができた、その幸福を表出するための唯一無二の振る舞いだったと言い切りましょう。

終演後はアフタートークです。この日はNoismから山田勇気さん(司会)、中尾洸太さん、そして庄島さくらさんが、鼓童さんからは木村佑太さんと渡辺ちひろさんが登場されました。今日も交わされたやりとりの一部をご紹介します。

☆新潟公演中日の感想
中尾さん(Noism): 2日目は身体が重いことも多いのだが、この日はギヤがあがっている感覚。逆にこれは危ないなと自制した。自由にやり過ぎて怒られないように。
渡辺さん(鼓童): 昨日以上に緊張した。初演時には幕が下りる5分くらい前まで、唾液が飲めない、呼吸が出来ないくらいに緊張していたのを思い出した。
さくらさん(Noism): 昨日は緊張して、高揚感でハイになっていたが、今日は色々なものが見えた。
木村さん(鼓童): 初日は勢いよくいけた。原田さんからのフィードバックがあって、気を付けてやろうと思ったら、鼓童としては緊張した感じのサウンドになった。

★鼓童にとっての楽曲『鬼』
渡辺さん: 難しい。例えば、3人でひとつのフレーズを完成させなければならない箇所なども多い。
木村さん: いつものコンビネーションが通用しない、いつもやらないような楽曲。

☆櫓の上に鼓童、下にNoismという配置について
渡辺さん: 凄く揺れる。ビートをとっているだけでグラグラする。
木村さん: 高所恐怖症なので、最初怖かった。演奏者は通常、ピットなどに入ったりするので、逆に上から踊りが見えるのは新鮮。舞台からエネルギーが伝わってくる。
さくらさん: 櫓の下にいたりする場面も多く、振動が内臓まで響いてくる。
中尾さん: 音源だとフラットに聞こえるが、生演奏の舞台では、位置によっては音が聞こえないなどもあって大変。
山田さん(Noism): 音なのだけれど、そこには人がいて、だから、はまった時には凄く気持ちいい。

★実演家として感じる初演時との違い
木村さん: 去年の実力では気付かなかった繋がりが多々あった。一回「寝かせた」ことで作品を深められている実感がある。
さくらさん: 初演時に鼓童さんと合わせたとき、大変だと感じたことが多かった。それが、今回、合わせてみたら、スッといって、大変さがなくなった感覚。スッと一緒に同じものを作ることができたように感じる。
渡辺さん: 去年は楽譜の読み込みが浅かったなと感じる。また、前回はギリギリでやっていたため、誰かが間違ったりすると、「オイッ!」という気持ちになるような、殺伐とした緊迫感があった。しかし、今回。穣さんから「バッキングにならないで欲しい」と言われたので、そうした空気感も大事だと。そういう意味で「鬼」って要るなと。
中尾さん: 本を再読するような感じ。例えば、『星の王子さま』を一回手放して、星のことなどを色々学んでまた向き合うような多角的な感覚。
山田さん: 今回は集団として闘っているような感じがする。

☆ダンサーがいる/いないによって演奏は変化するか
渡辺さん: 凄く変わる。いないときの練習は気の張り方が違う。動きはよく見ている。睨みつけるような感じで集中して。
木村さん: 普段は客席に向けての一方向で済むが、今回は舞台上にも僕たちの音を欲しがっている人がいて、そのベクトルの違いが一番大きい。普段より疲れる。やはり気の張り方が違う。

…等々。また、山田勇気さんはこの『鬼』で海外へ行くプランに関する質問に対して、まだ決まっていることはないとしながらも、前日、トルコからの視察があり、好感触だったことに触れたあと、この『鬼』を「ただの伝統芸能の紹介ではなく、インスピレーションを与えることが出来る演目」と語りました。激しく同意します。この日のアフタートークは最後、山田さんの「毎回、その時その時にしか出来ない舞台を作っている。また是非観に来て欲しい」という言葉で締め括られました。

舞台が発する熱量も増し増しできている、ここまでの新潟2公演ですが、早くも明日が新潟千穐楽となります。当然の如く、好評発売中のチケットですが、3階席ならまだお求め頂けるようです。観逃したらもう観られないかもしれませんし、何より、人生のなかの「いっとき」ではありますが、自分の裡に不定形で名状し難い情動を体感できる得難いひとときとなることは間違いありません。まさしく一期一会。
これを書いている今、窓の外からは寒そうな強い風がピューピュー打ちつける音が聞こえてきます。更に明日は「雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう」という山下達郎的天気の予報もあり、「冬将軍」到来に道路や駐車場も混雑するかもしれませんが、それらを超えて、是非、りゅーとぴあ〈劇場〉に集い、一緒に「鬼」相手に身を打ち震わせましょう!

(shin)

Noism×鼓童「鬼」再演:新潟公演初日、深化/進化した舞台に魅入られる喜び♪

2023年12月15日(金)、この日は朝から雨が間断なく降り続き、誰にとっても鬱陶しさが募る一日だったかと。そんななか、夕刻には「あの『鬼』」再演の舞台にまみえる予定があることがそんな一日の気分を変えてくれることは明らかでした、私(たち)にとっては。昨年あんなに魅了された「あの『鬼』」が、こんなにも早く再演されることで、また「あの感動」に浸れる、「あの『鬼』」に。

しかし、昨年の感動があるため、自然と「あの」という指示詞を冠してしまうような気持ちに、幾分か油断に似たものがあったことは認めざるを得ません。そうです。Noismと鼓童の舞台で目撃したものは、「再演」という言葉では充分に表象することが適わない深化及び進化だったからです。この日この場所で、まさに一期一会でしかない刹那そのものとしての舞台だったのでした。

最初の1音から淀みなく流れていく物語に身を任せるようにして視線を送る、その快感に満ちた『お菊の結婚』。そして、それとは全く趣を異にし、1音1音が立ち上げる異界に身を晒し続けるような時間の体験とも言える『鬼』。

約1年半を隔てた「再演」の舞台。「えぐみ」を増した25分間の『お菊の結婚』では、そのトップシーン、ゲストダンサーのジョフォア・ポプラヴスキーさん(元Noism1)が登場する場面が変更されていましたし、休憩後の『鬼』に至っては、(それは金森さんにあっては決して珍しいことではありませんが、)ラストシーンが昨年と違うものになっていました。そのほか、両作品には細部の変更も数多く見出されることでしょう。しかし、そうした変更以上に、この日、目に映じたものはと言えば、パフォーマンスの深化及び進化であり、結果、「かつて観たことがある」と言って済ませることなど到底できないレベルの舞台だったということになります。魅入られっ放しでした。

『鬼』が終わると、場内に熱く大きな拍手と「ブラボー!」の掛け声が響き、客電が点いてからでさえカーテンコールは幾度も繰り返されました。そのなかで、金森さんが、先日、急逝された衣裳担当の堂本教子さんに届けんとばかりに両手を天に向けて差し出して拍手を送ったその様子には胸にグッとくるものがあったことを書き記しておかねばならないでしょう。

その後、この日のアフタートークには金森さんと『鬼』の作曲者である原田敬子さんが登場して興味深いお話を聴かせてくれました。少し紹介を試みます。

☆金森さんからストラヴィンスキー『結婚』について問われて
原田さん: 極めて異色で挑戦的。ピアノに歌を混ざらせず、敢えてぶつけている。空虚な感じのする和音を多用。倍音が聞こえてくる。声の出し方も所謂「ベルカント(美しい歌)」ではない。
金森さん: 1923年初演なので、ちょうど100年前の曲。アタックでパッと切ってステイするシャープな人形振りが合いそうと思った。

★「『鬼』舞踊と打楽器アンサンブルのための」(2020-22)等々
原田さん: 金森さんからのオーダーは「太鼓を超越した響き」。こんなに早く再演できたことで、直接の継承がなされ、楽曲も成長する。演奏者に指示する際、共有できる言葉でイメージを伝えることも。(例:お墓を風がふーっと吹くような感じで、とか。)それ故、作曲家が生きている間にコミットしている初演者の存在は大事。それが伝わらなくなってしまった後世の人になると、歴史を学んでイメージして、想像力と実感をもって演奏することになる。
自分は「直感人間」。リサーチしてイメージが浮かんだのち、それを整理して楽譜におとすのに時間がかかる。
「作曲家」は「確信犯」。限りなく不可能に近いところを意図している。慣習的なものではないところを演奏者に要求っすることで、新しい世界が拓かれる。身体が変化するくらいでないと、響きは変化しないもの。
金森さん: 音楽でも舞踊でも、技術的な難しさは一昔前とは比較にならない。不可能に思われていたことも誰かによってできることが立証されると、みんなできるようになる。トップランナーは突き抜けて凄いのだが、後の者もついて行ける。チャレンジの質も変わってこざるを得ない。 

ざっと、そんなところだったでしょうか。
あと、ホワイエには原田さん手書きの「『鬼』舞踊と打楽器アンサンブルのための(2020-22)」楽譜(抜粋:冒頭部分と清音尼が鬼に変わる部分)が飾られています。鼓童メンバーを絶句させたというその超絶な細かさ、ガン見しておきたいものです。(撮影禁止です。)

さて、「鬼」再演、このあと新潟ではもう2公演あります。昨年の初演をご覧になられた方にも、今回初めてご覧になられる方にも、それぞれこの驚異の2演目に瞠目する豊かな時間が待ち受けています。それだけはもう間違いのないことと言い切りましょう。金森さんはクリエイションにおいて決して歩みを止めませんから、今回観るのが最上の舞台となります。つまり、観る側にとっては人生の豊かさの問題になろうかと。
心ゆくまでお楽しみください。

(shin)

Noism×鼓童「鬼」再演:視覚・聴覚障がい者/メディア向け公開リハーサルに参加しました(2023/12/08)

新潟市はこの日、鈍色の曇天。雪は落ちてこないながら、重苦しい冬の空の色そのもの。そんな空の下、「鬼」再演を翌週に控えて開催されたメディア向け公開リハーサルのため、りゅーとぴあを目指しました。視覚・聴覚に障がいを持つ方々と一緒に舞台に向かいます。館内のモニターにはNoism1メンバーによる「鬼」再演のPR動画が流されていて、見入りました。

開始時間の13時少し前に受付を済まると、劇場ホワイエに入りました。新潟のテレビ局からも3局が参加。公開リハーサル後の囲み取材に向けて準備に余念がありません。

そして昂ぶる気持ちのままに劇場内へと誘導され、開始時間を待ちました。この日、私たちが見せて貰ったのは、鼓童さんとの演目である『鬼』。その冒頭からの約20分間でした。
場内が暗転した後、静寂、そしてややあっての強打。昨年同様、そのトップシーンから既になす術なく絡め取られてしまうようでした。また、その後やってくる「総奏(トゥッティ)」の音圧といったら!あたかも場内の空気全体が異様な密度をもつ「塊」と化したりでもしたかのよう。劇場の椅子に身を置きながら、押し潰されそうなほどの圧を感じました。しかし/ですから、思ったのは、更にその音を至近距離にて浴びながら踊る身体たちのこと。それが如何ばかりかと。想像もつきかねますけれど…。目と耳を圧して迫ってくる本作はやはりもの凄い演目であると再認識した次第です。

13時20分頃、前半部分の通しでのリハーサル鑑賞は終了。そこから、金森さんからのフィードバックにより、照明や動きの音楽との同調性、位置の精緻な調整が始まりました。
ある箇所、カウントが定まっていない原田敬子さんの音楽にあって、演奏者と舞踊家とが(原田さん的にはOKなのか案じながらも)最上の実演を求めて、互いにじっくり時間をかけてやりとりを重ねる姿を目にして、そんなふうにして妥協を排して具現化されていく舞台作りに尊さの思いがこみ上げてくるのを禁じ得ませんでした。

囲み取材が始まったのは、予定段階では終了時間とされていた13時45分頃のことでした。ここでは、その取材時に金森さんと井関さんが語った内容を中心に、そのご紹介を試みます。

○『鬼』再演に関して
金森さん: Noism設立から19年の昨年。初めて新潟をテーマに作ったもので、新潟にある舞踊団として大事な作品。鼓童さんとの初めてのコラボレーションということもあり、早く再演したいと思っていたところ、井関さんが早めに決めてくれ、嬉しい限り。 
井関さん: この作品に関して、昨年は早々に完売となり、観られなかったという人も多くいた。再演は常々やりたいと考えている。新作において新しい出会いがあるのは勿論だが、再演にあっても、舞踊家、演奏家、演出振付家にとってたくさんの出会いがある。そうやって作品を練り上げていくことで「名作」となる。それは必然。この作品に限らず再演はやっていきたい。
金森さん: 演出家にとって(所謂)「再演」は一個もない。全て、今この瞬間に生まれている作品。実演芸術はホントに一期一会。今回、再演にあたって、より際立って収斂されてきた。舞踊家の身体の深度も全然違っている。(経済や文明の時間軸が発展や進化で語られるのに対して)「文化」とは蓄積であり、成熟である。それを味わえることも劇場文化の価値と言える。再演はまさにその貴重な機会。この一年半のなかで演出家として磨いてきたエッセンスが、そして舞踊家と演奏家の一年半の経験値が盛り込まれていて、あらゆる方向でパワーアップしていると言える。手応えは充分。新潟市の舞踊団であり、テーマは新潟。ひとりでも多くの新潟市民に観て欲しい。
井関さん: まだまだこれから進化(深化)できる。舞台に立って稽古できる環境があることを幸せに感じている。まだまだいける。今回、鼓童メンバーと話していても深度が違う。「この作品は新潟をテーマに、新潟の舞踊団と太鼓集団による作品。絶対に世界に持っていきたい」と話していた。その始まりとして、この再演がある。多くの人に観て欲しい。

その後、進行にあたったNoismスタッフの方から、①新潟での3公演にはいずれも終演後に30分のアフタートークが予定されていて、チケットがあればそれを聴くことができることと、②現在、Noism20周年記念事業に際して広報活動の強化のためのクラウドファンディングに取り組んでいることとが紹介されました。(「クラファン」、私も少額ですが、寄附させて頂きました。)そんな囲み取材が終了したのは13時55分でした。

待ちに待ったNoism×鼓童「鬼」再演。本当に深化(進化)が感じられる公演、いよいよ来週末の開演。「もう幾つ寝たら」とか数えることすら必要ないほどに迫ってきました。まだまだお席に余裕があります。こぞって、あの音に、あの舞踊に、あの世界観に身悶えしに行こうではありませんか。りゅーとぴあ〈劇場〉で深化(進化)した「鬼」を目撃してください。

(shin)
(photos by aqua & shin)

新潟から発信された、圧倒的普遍性(サポーター 公演感想)

2023年8月11日(金・祝)日本バレエ協会主催「令和5年度全国合同バレエの夕べ」金森穣演出振付『畔道にて~8つの小品』再演感想

2020年、金森穣さんが初めて新潟市洋舞踊協会の依頼を受けて創作した『畔道にて~8つの小品』初見時の感動は今も忘れられない。若き舞踊家たちが、所謂「稽古事」や「バレエ」の枠を越えた金森作品に出会い、作品を生き、その体験がやがて「何か」をもたらすだろう予感と、作品そのもののシンプルかつ力強い魅力。Noismが新潟という土地に根差して生まれた傑作という感を覚えたものだ。その『畔道にて』が、日本バレエ協会主催の「バレエの夕べ」で再演されるとあって、先日の「サラダ音楽祭」に続いて東京へ出向いた。


会場は初台の新国立劇場内中劇場。「新国」と言うと、井上ひさしの『紙屋町さくらホテル』や「東京裁判三部作」制作などで幼い頃に存在を知り、いつかは訪ねてみたい場所だった。Noismと新国立劇場との共同制作の経緯について、金森さんの著書『闘う舞踊団』(夕書房)で知り、愕然としたことも記憶に新しい。


8月11・13日の二日間に渡って開催される「バレエの夕べ」。11日は関東・中部・関西・東北・甲信越・東京の六支部の作品が上演された。ご家族連れやバレエ関係と思しき方々で会場は華やぐような賑わい。休憩中には金森さんや評論家・三浦雅士氏を見かけ、『畔道にて』のバレエミストレスを初演時に続いて務めた池ヶ谷奏さんにもお声がけいただいた。


甲信越支部は19時過ぎからの五番手。上演が進むにつれ、照明の美的センスと間断無く(拍手する間など無く)展開する金森演出と、新潟の若き舞踊家たちの演技に、客席の空気が変容してゆく。若い世代の「孤独」にこそ寄り添い、「友情」や「恋」を衒いなく見せる振付。そして『NINA』の一場面を想起させる深紅の照明の中、灯火を手にした16人の舞踊家たちが登場する『歌い、』のシークエンスでは、その美しさに会場が静まり、やがて感動が拡がっていくようだった。門山楓さん・山本莉鳳さんにNoism1メンバー(中尾洸太・坪田光・樋浦瞳・糸川祐希)が加わる『愛や、』の悲愴感、まだ幼い福山瑛未さんに井関佐和子さんが未来を託すように寄り添って舞う『夢を、』の連続に、涙腺が決壊し、アルビノーニの「オーボエ協奏曲」(向田邦子作「ドラマ人間模様『 あ・うん』」の水田家と門倉の団らんシーンで使用されていた)に乗っての希望に充ちた祈りを思わせる群舞『語る。』に至って、『畔道にて』は新潟から生まれた傑作に留まらず、世界中の様々な土地で懸命に生き、惑う若者たちの万感を映し出す普遍的な「名作」との感を強くした。
公演後の場内のどよめきや、ご家族連れのお父さんが「度肝を抜かれた」と漏らす声を漏れ聞けただけでも、新潟から応援に駆け付けた甲斐があった。

(久志田渉)

『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』公開リハーサル及び囲み取材に行ってきました♪

前日の寒さから一転、春の陽光が指して気持ちのよい2023年4月19日(水)、標記のメディア&活動支援会員向けの公開リハーサル(+囲み取材)に行ってきました。会場はりゅーとぴあ〈劇場〉でした。まずは公開リハーサル、時間は13:30から約30分間。

4/14のときと同様、この日も見せて貰ったのは、『Noism2定期公演vol.14』の方からでした。で、現在のNoism2メンバーは全員が女性ということもあるからでしょうか、Noism1からの出演もあります。さてさて、誰が出るのかはお楽しみに♪

劇場へ入っていくと既に舞台にはメンバーたちがいて、それを客席から見詰める地域活動部門芸術監督・山田勇気さんは、主に照明の具合をスタッフとやりとりしながら試しています。公演当日まで「ベスト」を求めて、まだまだ練り上げられていきそうです。Noism2リハーサル監督・浅海侑加さんはビデオ撮影の準備をしています。そうこうしているうちに、Noism1メンバーも何名か入ってきて舞台に目をやり始めました。

見学する私たちが揃った頃合いで、山田さん、「じゃあグループのところから『クロノス(カイロス1)』まで通していきましょう。照明も入れていきます」と指示を出すと、まず、客電が落ちて、次に舞台上も暗転。そこを経てからの明転で、「オール・バッハ・プログラム」この日の公開リハーサルが始まりました。

まずは『ZONE』より academic から。

続いて『complex』よりデュエット、『愛と精霊の家』より冒頭シーンです。

そして色鮮やかな『クロノスカイロス1』より。

スクリーンに映し出されるのは初演時のNoism1メンバーの姿。ですから、それに対しても若き舞踊家たちの「挑戦」が見てとれるような案配です。

その後、スクリーンの画像や照明の微調整が行われます。山田さんからスタッフに「真ん中へん、ジョフ(旧メンバー)のところ。(画像の)秒数を3秒追加。ゆっくり」とか、「追っかけで8秒くらいかけて消す。みんなの灯り」とか、もう秒単位でのテクニカルなブラッシュアップです。踊るメンバーに向けては、「はけ切りまで走り切りたい」や「幸せそうに走りたい」など、細部の重要性を伝えていきます。

そうこうしているうちに、14時になり、そこからは場所をホワイエに移して、山田さんと浅海さんへの囲み取材の時間です。

主なやりとりを簡単にご紹介します。

Q:見どころは?
 -山田さん:「見てもらったのはNoism2の定期公演の部分だったが、前半の方にはNoism1メンバーの振付公演(4作品)があり、今回、一緒にやることでボリュームがあり、若手の振付家と若手の舞踊家によるフレッシュなエネルギー溢れる公演になる」
 -浅海さん:「振付公演に出るメンバーは定期公演を踊るときとはまた違った面が見られるの楽しみがある。違う作品を踊ることで表現や身体性が変わる。違う強さ、違う表情、違う面が見られる」

Q:J.S.バッハの曲を用いたレパートリーとした理由は?
 -山田さん:
「統一感があってもいいのかなと。バッハはNoismらしいし、バッハの音楽のシンプルな強さと、研修生(Noism2)がやるべきシンプルに身体を鍛えていくことが合致する。また、『挑戦』として、あの音楽に向き合って貰いたかった。やってみたら、音楽ごとに違う表現があるし、音楽がシンプルで抽象的であるため、身体性にフォーカスする難しさがあり、トライして欲しいと思った」

Q:振付公演での作品作りについて何か制約はあったのか?
 -山田さん:
「特にない。ただ、公演が全体で90分くらいなので、(4作品なので)ひとり10分程度に」

Q:メンバー振付公演の作品順はそうやって決めたのか?
 -山田さん
「見てみて、終わったときにどういう感覚が残るかを考えて決めた。音楽の『流れ』も考慮した」

…山田さんと浅海さんへのこれも新鮮だった囲み取材はここまでです。
で、その後、Noismスタッフからなされた告知として、両日とも終演後のアフタートークには、山田さんと浅海さんに加えて、Noism1メンバーの振付家4名が登壇予定とのこと。更に新鮮かつ、色々な面で面白いお話が聞ける機会になりそうですね。
とにかく楽しみな公演2日間。チケットは只今、絶賛発売中。よいお席はお早めに!

で、この日は囲み取材のあとの時間を利用して、なんと東京から(!)私たちNoismサポーターズを取材したい(!!)とのお申し入れを受けていたのでした。
その取材ですが、JR東日本の新幹線車内サービス誌「トランヴェール」の編集ディレクター・籔下純子さんとおっしゃる方からのもの。新幹線で前の座席の背面、あの網ポケットに入っている旅の雑誌ですよね、「トランヴェール」。
その6月号が、新潟のダンスシーンを特集掲載する予定だそうで、新潟の様々な踊りやダンスのコンテンツに混じって、私たちサポーターズについても取り上げたいということなのでした。籔下さん、Noism公演をご覧になられた際に、私たちNoismサポーターズについても興味を持たれたとおっしゃっていました。
fullmoonさんを通じて、acoさん、aquaさんと私、4人でNoismの魅力について、目をハートにしながら小一時間、お話しさせて貰いました。どんな記事に纏めてくださるか今から楽しみです。籔下さん、どうも有難うございました。
皆さま、6月号、是非お手にとってご覧いただけたらと思います。(その「トランヴェール」は、表紙のQRコードを読み込むことで、現在、発行と同時に読めるのだそうです。(期間限定です。)また、1ヶ月後、次の号が出るタイミングになりますと、上のリンクから「バックナンバー」として読めるようになります。)

でも、まずは今週末(4/22土、23日)に迫った、様々に新しさや若さが溢れる『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』です。お見逃しなく!

(shin)
(photos by aqua & shin)

2023年春爛漫の4月吉日、金森さんと井関さんの祝宴 賑々しく開催さる♪

2023年4月2日、これ以上望めぬほど抜けるような青空の日曜日、新潟市護国神社の迎賓館TOKIWA ガーデンヴィラを会場に、金森さんの令和3年春の紫綬褒章受章+井関さんの令和2年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞と、金森さん初の書籍『闘う舞踊団』(夕書房)刊行をみんなでお祝いする祝賀会が、定員を超える81名の参加者を得て、誠に賑々しく開催されましたことをご報告させていただきます。

司会は「月刊ウインド」編集部、安吾の会事務局長、舞踊家・井関佐和子を応援する会 「さわさわ会」役員と多くの肩書きをもつ久志田渉さん。ご本人の言では「すべてアドリブ」とのことでしたが、淀みなく流れるようにこの喜ばしい宴を進行してくれました。

ここではこの日の祝宴の進行とお料理を主に写真によって、ごくごく簡単にご紹介させていただこうと思いますが、まずはこちらからご覧ください。

□額装された賞状 

□祝宴編

*開宴前: スクリーンに投影されたNoism Compnay Niigataの公演映像が参加者をお出迎え。

*金森さん・井関さんご入場

①開会のご挨拶: BSN会長 竹石松次さん(発起人)


②花束贈呈: 新潟市洋舞踊協会代表 若林美江さん(to 金森さん)とCHIBI UNITY会長 国友慎之助さん(to 井関さん)


③金森さんご挨拶


④井関さんご挨拶


⑤乾杯: 前新潟市長・新潟青陵学園理事長 篠田昭さん(発起人)


⑥メッセージ披露: 夕書房 高松夕佳さん (司会・久志田渉さん代読)
お寄せ頂いたメッセージの全文を掲載します。(少し見辛くて恐縮ですが、)是非お読みください。

【註】メッセージ中、「サポーターズによる年表サイト『Noism Database Unofficial』」とありますが、こちらはあおやぎさんによる「Noismの非公式データベース(個人のサイト)」を指すものです。左のリンク欄からもいけますが、こちらからもどうぞ。

⑦スピーチ: 公益財団法人 新潟市芸術文化振興財団理事長 徳永健一さん


⑧スピーチ: 新潟市洋舞踊協会 内堀照子さん

⑨スピーチ: お笑い集団NAMARA代表 江口歩さん

⑩スピーチ: 新潟古町芸妓 舞衣子さん

⑪スピーチ(飛び入り): Noism活動支援会員 藤浦光俊さん(愛知より参加)


⑫スピーチ: Noism Company Niigata地域活動部門芸術監督/Noism0 山田勇気さん→Noism2リハーサル監督/Noism1 浅海 侑加さんと出席Noism1メンバー(庄島さくらさん・庄島すみれさん・中尾洸太さん・糸川祐希さん・杉野可林さん)の紹介(自己紹介)


⑬閉会挨拶+一本締め: シネ・ウインド代表・安吾の会代表・「さわさわ会」代表 齋藤正行さん(発起人)

*閉宴後: ホワイエにて金森さんと井関さんによるサイン会が開かれました。

□お料理編(+αとしまして、Iテーブル画像も♪)

途中、歓談のあいだに、「新潟美人」(新潟の女性や企業による「新潟からキレイを発信する」ためのプロジェクト)さんからの祝電のご披露もありましたことを申し添えます。
で、会場の雰囲気も、時間を追うにつれて心地よく解けてきて、主役のおふたり金森さんと井関さんをはじめとして、そこここでNoismメンバーたちとの写真撮影が盛んに行われるようになってきます。私もその例に漏れず、何枚も一緒に写真を撮っていただけました。有難いことでした。

宴の冒頭、司会の久志田さんが紹介してくれましたように、折からこの日(4月2日)、新潟日報朝刊の読書欄に「豊饒な地方文化拓く試み」の見出しのもと、早稲田大学教授・秋野有紀さんによる『闘う舞踊団』の書評が掲載されました。(恐らく日にちを選んでこの日の掲載としたのだろう)新潟日報も洒落たことをやってくれるなぁと思ったような次第です。

それにしましても、「新潟の誇り」「新潟の宝」であるおふたりの慶事をこうしてみんなでわが事のように、心おきなくお祝いできる機会というのもこれまであるようでいてなかったので、会場にいた誰にとりましても、ホントに得難い感激の一日だったかと思います。

…以上、誠に大雑把なご報告となってしまいましたが、スパークリングワインによる乾杯から始まり、麦酒を経て、白&赤ワインと飲み継ぎまして、そのアルコールによるものだけではない「酩酊」を味わった宴のことですゆえ、何卒ご容赦いただきますようお願いいたします。

(shin)