「皆さんのお陰でいい舞台になった」(山田さん)の言葉で終演♪『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』

2023年4月23日(日)、前日に幕が開いた『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』ですが、2日間の日程のため、早くもこの日、終演を迎えることになりました。開演時間は15:00。りゅーとぴあ界隈は同時刻に他のイヴェントも重なっていたため、早くからNoism公式が駐車場の混雑予想を発していたほど。車を駐めるのにやきもきした方も多かったのではないでしょうか。

かく言う私ははじめからりゅーとぴあ駐車場を諦めて、近隣の駐車場狙いで動き、りゅーとぴあへ向かう道すがら、The Coffee Tableさんでカフェラテを求めて、美味しく「暖」を得ながら歩いたような案配でした。そうです。この日もくっきり晴れてはいたのですが、風が冷たい一日だったのです。

カフェラテを飲みきる頃には、既に開場時間となっており、あの作品たちにもう一度向き合う準備を自分のなかで徐々に徐々に進めていきました。チケットを切って貰ってホワイエに進むと、まず目に飛び込んできたのが物販コーナーに立つ庄島姉妹の姿であり、そこで振り返ると今度はプログラムの展示コーナーには三好さんと横山さんの姿を認めることになりました。なんと豪華なスタッフであることでしょう!そのまま放置できる筈もなく、お願いして写真を撮らせていただきました。多幸感、多幸感♪どうも有難うございました。

そんなこんなで開演時間を迎えて、この日も前日同様、『Noism1メンバー振付公演2023』から幕があがりました。それからの4作品について、前回のブログには書けなかった事柄を思い付くままに記録しておこうと思います。

糸川祐希さん振付作品『Ananta』。「円環」を意識させる端正な印象の作品。斜めにかぶいて立つ姿がいつまでも残像として残り、傾いた身体の軸を上方に伸ばしてみると、幻視される直線上の一点で交わることになる身体ポジションの把捉も影響あるかと。ラストの暗転直前、互いに視線を交わらせる様子にもグッとくるものが。

坪田光さん振付作品『あなたへ』。最初は繰り出されるビートに乗って、やがて、祈りにも聞こえる不鮮明な人声のなか、自らの身体を差し出す舞踊家ひとり。天とおぼしき上方から、そして正面方向から受け取った何かをその身に入れてなおも差し出す。そうして見出されるだろう自分にとっての真実を手にせんがため。

樋浦瞳さん振付作品『器』。前回も書いた斜めのアクティング・ラインへの拘りを再確認。コッポラ『地獄の黙示録』のヘリのプロペラ音にも似て、デフォルメされた回転系のノイズのなか、時折、周期的に現れる金属開閉時のようなノイズにおののきつつも「今」に向き合うふたり(或いは「2匹」)、休む間もなく。

中尾洸太さん振付作品『自転・公転』。弦とピアノのゆるやかな楽音のなか、ひとりがいまひとりに見捨てられて踊る。次いで、もうひとりの側でもその同じ状況が反復される。そこを経過したのち、二者の関係性は更新され、自らを超え出たその先で、相手を見出して、新たな関係性と邂逅し、刷新されたひとりとひとり。

…そんな事柄を、私は感じました。ご覧になられたあなたはどう感じましたか。コメント欄にてお書きいただけましたら嬉しく思います。いずれにしましても、四者四様の刺激に満ちた作品たちだったと感じました。

そこから、15分間の休憩を挟んで、ほぼ16:00、後半の『Noism2定期公演vol.14』部へと移行していきました。初日ブログのコメント欄にて、fullmoonさんが正しく指摘してくださった、金森さんの振付の「強靭さ」に改めて打たれることになりました。集められたピース、その一つひとつの魅力的なことといったら!でも、その「進行」或いは「展開」は前回のブログをご覧いただくこととして、今回は詳細には立ち入らないでおきます。

但し、どうしても書かねばならぬことがあります。22時間前の(前日の)パフォーマンス(そしてそれ自体は全然悪いものではなかったのですが、)からみて、圧倒的な訴求力を加えて踊られていったということを特筆しておかなければならないでしょう。わずか22時間を隔てて、ほんの一度、舞台上で踊ったことで手にした自信と確信を身中に、「今のこのときを逃してなるものか!」とばかり、それぞれのその可能性を押し広げんと、それぞれに未踏の領域に踏み込んで踊ってみせたのが、この日のNoism2のメンバー9人だったと言わねばなりますまい。ラストの『クロノスカイロス1』を踊り終え、いまだ息の荒い9人(とNoism1メンバー4人)に対して繰り返されたカーテンコール、その度毎に、スタンディングオベーションの人数が増えていったのです。その場面、客席と舞台の間に生じ、やがて〈劇場〉内を覆い尽くすに至ったもの。9人の献身の果てにもたらされた非日常の感動、それに浸ることの幸福感。恐らく、舞踊家も観客も誰ひとりとしてこの日、このとき、それぞれの心が示した振幅の大きさを忘れることはないでしょう。確信をもってそう言い切りたいと思います。涙腺直撃の、素晴らしい2日目の(最終)公演でした。

その後はやはり前日と同様、アフタートークが持たれました。その際のやりとりについてもかいつまんで簡潔にご紹介しましょう。この日は質問シートが多く、それに基づいてのアフタートークでした。

Q01: Noism2は現在、メンバーは女性だけ。難しいことは?
 -浅海さん:
 「組みもの」など、男性がいて初めてできる表現もあるので、そこは淋しい。常に募集している。

Q02: Noism2からNoism1にあがるときの変化はどんなものか?
 -糸川さん:
 (金森)穣さんとのクリエイションが出来ることが一番大きい。
 -坪田さん: 出来ること自体はNoism2のときから変わらない。Noism2だったときも学ぼうと思えば学べると思っていた。
 -山田さん: やはり環境が異なる。本人が意識していなくても変わっていることもある。

Q03: 【山田さんと浅海さんに対して】それぞれの振付作品をみた感想は?
 -浅海さん:
 それぞれの性格がそのまま作品に出ていると思った。
   糸川さん作品は、動きの組み合わせ、音楽の選び方、4人の配置。
   坪田さん作品は、そのまんま勢いよく踊って表現していた。
   樋浦さん作品は、彼が描く絵と似ていると思った。
    ちょっとジブリのような。水の流れというより水の泡のような。
   中尾さん作品は、動き、流れ、構成、良さが詰まっていた。
    振りをつくるのがしっかり見えていて良いなと思った。
 -山田さん: みんな一緒で、自分の問題意識から出発して、社会や世界へと問題意識を広げていけるといいと思う。よく出来ていた。次、何をするのか気になる。

Q04: 「タイトル」の理由は?
 -糸川さん:
 「アナンタ」とはサンスクリット語で「永遠」、そしてインド神話では原初の蛇にして神。まず、音楽から決めて広げていったとき、途中で「永遠」への疑問が湧いた。
 -坪田さん: 「あなたへ」。年配の人は誰しも迷いがあっただろうし、懐メロみたいだったり、若い人には今はつらいかもしれないが、先に光があるかもとか、応援ソングみたいだったり。未来の「自分」にむけた手紙のような作品をと。
 -樋浦さん: 「器」。入れ物に対して、入るものがあり、出ていくけれど、残るものがある。身体は器だなと。過ぎていくことで悲しいこともあるが、中に入れて変化していく器としての身体を思った。
 -中尾さん: 「自転・公転」。人間関係の比喩が一番大きい。外からみれば、変わらず回っているが、中のことはわからない。一生変わらない世界線、軌道を舞台上に載せてみたらどうなるかなぁと思った。

Q05: 女性メンバーは「振付」はしないのか?
 -山田さん:
 予定段階では女性メンバーもいた。是非、今度はやって欲しい。

Q06: 【山田さんと浅海さんに対して】昨日から今日にかけて、メンバーにどう声を掛けたか?
 -浅海さん:
 何も声は掛けてない気がする。
 -山田さん: 今日の本番前、見詰め合っているのを目撃した。
 -浅海さん: 舞台に出るとき、「いってらっしゃい」って言う。
 -山田さん: 直前に声を掛けるのは難しい。でも何か言っておきたいと思って、昨日は「これが最後だと思ってやって欲しい」と言い、今日は今日で「昨日から今日、自動的に踊れる訳ではない。初演のつもりでやって欲しい」と言った。

…と、まあそんな感じでしたでしょうか。で、アフタートークの最後に山田さん、『領域』の公演チラシを手に、明日明後日からダンスカンパニーカレイドスコープを主宰する二見一幸さんと一緒のクリエイションが始まる予定だと話し、続けて、同公演では浅海さんも久し振りに踊ると言ったところで、場内から大きな拍手が起こりました。見られるのですね、浅海さんの踊り。嬉しいです。

で、山田さん、最後の最後、客席に向かってこう言って締め括ってくださいました。「(公演が終わってしまい、)ちょっと淋しいですが、皆さんのお陰でいい舞台になりました。どうも有難うございました」と。しかし、それはこちらの台詞です。「振付家・舞踊家をはじめ、今公演に関わった皆さん、どうも有難うございました。そしてお疲れ様でした」と心より。

大きな感動(と同時に、小さくはない淋しさ)を胸に帰路につきましたが、それ故、ホントに次回の公演が楽しみでなりません。そうですよね、皆さん。ではまた公演会場でお会いしましょう。今日のところはこのへんで。

(shin)

『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』初日を観てきました♪

陽は差しているのに肌寒い2023年4月22日(土)の新潟市でしたが、夕刻のりゅーとぴあ〈劇場〉だけは、舞踊家と振付家の情熱が身体の発する熱となって客席に届き、観る者も全員、それに呼応して熱い眼差しを注ぎ返す空間と化し、そこだけ周囲より高温となる「ヒートアイランド現象」が出来してでもいるかのようでした。その「熱源」の正体は、言うまでもなく、「挑戦」の2文字が相応しい公演『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』に他なりません。

開場時間の16:30になり、ホワイエに進むと、この度のNoism2定期公演に取り上げられたNoismレパートリーに関するポスターやプログラムの展示があったほか、設置されたモニターには過去の舞台動画が流されていて、訪れた者の足を止める仕掛けが幾重にも施されていました。それはまさしくNoismの歩みを概観させると同時に、重ねられた年月に相応しい華のあるレイアウトだったと思います。

やがて開演時間の17:00が迫り、客席に降りていきました。まずは『Noism1メンバー振付公演2023』からのスタートです。
客電が落ちた後、黒い緞帳に白い文字で作品タイトルに加えて、演出振付家と出演者の名が暫し投影されると、その緞帳もあがって…、というのが作品毎に4度あり、4人の若き振付家の作品を観ました。

皮切りは、糸川祐希さんの『Ananta』(出演:兼述育見さん、土屋景衣子さん、渡部梨乃さん、太田菜月さん)。「アナンタ」とは、インド神話に登場する地底界の最深部にて世界を支える原初の蛇で、自らの尾をくわえて輪のかたちになっており、「無際限」や「永遠」を象徴する存在(蛇神)なのだそう。プログラムには「『ウロボロスの蛇』のよう」とあります。寒々しい風の音を思わせる坂本龍一『レヴェナント:蘇えりし者』のテーマのなか、歩み出た4人。その後、Alva Notoの(否が応でも、『R.O.O.M.』を思い起こさせる)途切れ途切れのノイズの間に細切れのように踊る、身体性を前面に打ち出したソリッドな作品と言えようかと思います。

次いで、坪田光さん自作自演、単独で踊る『あなたへ』。自らの身体ひとつで全てを引き受けて立とうとし、孤独のうちに内心の苦悩に向き合い、迷いながらも、自らにとっての真実を求めて身を捧げんとする一途さに溢れた作品と受け取りました。

3番目は樋浦瞳さんの『器』(出演:樋浦瞳さん、兼述育見さん)。ふたりの息はぴったりなのですが、終始、上手(かみて)奥から下手(しもて)手前への斜めのラインを使って、殆ど客席に正対することなしに踊っていくため、ついぞ、安定を見ることなく、現在が不断に更新されていくかのような印象の作品です。(それが方法的なものなのか、或いは、例えばオブセッションのように作家性に根差したものなのか興味深いところです。)

最後に踊られるのは、中尾洸太さんの『自転・公転』(出演:中尾洸太さん、渡部梨乃さん)。まずはふたつのソロ(渡部さん→中尾さん)から入り、ついでふたりが流麗に、スタイリッシュにデュエットを踊っていきます。他者を、翻って、自分を捉えようとする営みででもあるかのように。

17:45頃から15分間の休憩に入り、その後、『Noism2定期公演vol.14』として再開されました。そこからは金森さんの演出振付で、山田勇気さんによる構成のNoismレパートリー「Bachプログラム」です。(まだ、1年目のメンバーは充分に把握できておりませんので、抜けもございます。そのあたり申し訳ありませんが、ご容赦いただくとともに、記載に間違いがある場合にはお知らせくださいますようお願いします。)

まずは『ZONE』より「academic」で幕があがり、Noism2の9人全員で踊られました。いきなり、バッハの音楽が金森さんの美意識で透徹されて可視化され、観客に差し出されるのですが、それはまた、これを踊ってこそのNoismといった風情もあるので、全員、緊張感もあったでしょうが、幸先のよいスタートを切った感がありました。そこから兼述さんと土屋さんふたりの踊りを経て、『no・mad・ic・project』より。上手(かみて)手前に椅子を1脚運んできて、腰掛けた高田季歩さんが上方からのピンスポットを浴びてひとりで踊ります。続いては『Nameless Hands-人形の家』の人形振りと黒衣の番です。黒衣に操られる人形は太田さんと村上莉瑚さん。人形ゆえにまばたきもできません。(4/15「オープンスタジオ」の際からすると、黒衣はまず3人が河村アズリさん・佐藤萌子さん・春木有紗さんで、そのパート最後に村上さんを下げるために出てくるもうひとりが高田さんかと思われますが、顔も身体も覆い、「見えない約束」の黒衣ゆえにしかとはわかりません。)不穏さは更に増して、『Phychic 3.11』(渡部さん・土屋さん)へいきます。直視するのだに恐ろしく、耳を塞いでなんとかやりそごそうとする以外ありません。(こちらの黒衣も同様に、兼述さんかと思われますが、確かかと言われれば、それも…。)
そこから一旦、暗転を経て、『ZONE』「academic」(太田さん・河村さん・春木さんに加えて、Noism1から中尾さん・坪田さん・樋浦さんも参加します。)、後半も品位ある美しさから始まります。続いて、雰囲気もそのままに『Complex』よりデュエット(村上さん・Noism1糸川さん)です。その後は『愛と精霊の家』より冒頭のシーン(兼述さんのソロ)が続き、ラスト、クライマックスの『クロノスカイロス1』を9人が力いっぱいに疾走し、踊ります。このときの9人の表情は(本当はめちゃくちゃ苦しいのでしょうが、)明るい笑顔になっていて、残りの体力を全て振り絞って踊り切っていく若い9つの身体が、ホントに清々しく、目に眩しく映りました。

何より、3年目から1年目のメンバーまで、ひとりの例外もなく、みんなNoismの一員たらんとして、誠実にNoismの動きを身体に落とし込もうとしてきたことが見詰める両目から入ってきて、胸が熱くなりました。過去から繋がってきたものがきっと未来へも繋がっていく、そんなロマンを感じさせるパフォーマンスだったからです。

終演後に緞帳があがると、まずはNoism2の9人が横一列に並んでいました。拍手。ついで、Noism1からの男性舞踊家と4人がその前に並ぶとまた拍手。そして、その4人がふたりとふたりに分かれてNoism2メンバーの横に移動してからは更に大きな拍手に変わり、それはもういつ果てるともなく続き、カーテンコールが何度も何度も繰り返されました。

それから、久し振りのアフタートークです。久し振りとは言っても、金森さんも井関さんもおられず、山田さんと浅海さん、そして振付を行ったNoism1メンバー4人によるアフタートークですから、かなり新鮮な感じがしました。その折のやりとりから少しご紹介しましょう。

Q01: 特に変化したメンバーは?
 -浅海さん:
 1年目のメンバー。このステージは思った以上に大きかったと感じた筈だが、広さを把握してきて、空間認識が見えてきた。
 -山田さん: 1年目のメンバーは成長が見え易い。2、3年目となると伸び悩んだりしがちだが、自分の踊りを見つけてくれたかなと思う。

Q02: 振付公演の出演者はどうやって選んだのか?
 -糸川さん:
 音楽から得たインスピレーションでの作品作りだったが、そのときの想像のなかにいたメンバーを直感で。自分のやりたいことを理解してくれるメンバーを。
 -坪田さん: 去年は8人という大人数の作品で、周囲から「よかった」と言われたことが不服だった。自分に試練を与えるつもりで自分ひとりで踊ろうと思った。
 -樋浦さん: 兼述(さん)とふたり。たたかっている2匹という感じ。自分がイメージしていないところまでたたかってくれる人を。
 -中尾さん: 金森さんからも同じこと訊かれたのだが、渡部さん。やったことのない人とやってみたかった。ほか、男性はみんな忙しそうだったから、自分を選んだ。

Q03: 【山田さんから糸川さんへ】初めて作ってみてどうだった?
 -糸川さん:
 去年、坪田さんの作品に出て、作品作りに興味を持った。自分ではない人にやって欲しいことを伝えるのは難しかったし、どう返してくれるか、やりとりが難しかった。でも、それを通して、自分がやりたいものが見えた。

Q04: 山田さんは何故『クロノスカイロス1』を選んだのか?
 -山田さん:
 あの映像で踊ることで、違う次元に行けるんじゃないかと思った。先輩と拮抗して存在して、でも時間は過ぎていく、踊りは消えていくことに。

Q05: 日々気をつけていることを教えてください。
 -糸川さん:
 トレーニング。今、筋トレに夢中。男性らしい筋肉つけたい。
 -坪田さん: 日々変わることを目標に毎日やっている。知らない自分に出会いたいと思いながら。
 -樋浦さん: その瞬間はその瞬間にしか来ない。上手くやりたいとかではなく、「今」を味わい尽くすこと。
 -中尾さん: 「じょうさわさん(=金森さん&井関さん)」より上手くなるとしか考えていない。

Q06: 【山田さんから4人へ】現在、41歳の自分の世代では、コンテンポラリーダンスは盛んだった。ベジャールとか「大きな振付家」がいた世代だった。みんなの世代で、みんなにとって影響を受けた特別な振付家・アーティストは誰か?
 -糸川さん:
 ウィリアム・フォーサイス。かっこいい。自分の美意識に反応する作品を作っている。
 -坪田さん: いっぱいいる。でも、遠くの振付家より、金森さんや山田さんとやった経験が深層心理に入ってきている。
 -樋浦さん: 新潟生まれなので、金森さん。大きな影響を受けてコンテを始めた。あと、彫刻家のイサム・ノグチ。
 -中尾さん: イリ・キリアン。4年前に観て、コンテやりたいと思った。他には椎名林檎。彼女の世界観、存在感、舞台。

Q06b: 【山田さんから樋浦さんへ】(影響を受けたのが金森さんという)その割には違う。オリジナリティがあるのかなと思うけど。どういうところから作っているのかな。
  -樋浦さん: 作っていて、「音楽って何なのだろう?」と思った。金森さんのクリエイションを経て思うのは、自分はこの音楽を理解しようと思うよりは、自分のなかのリズムを優先させがちなのかなと思う。違うからこそ魅力的に感じるのかなと。
  -山田さん: うん、そうだね。

…と、こんな感じだったでしょうか。どちらの公演もまだまだ一度観ただけですので、雑な書き方になってしまってます。スミマセン。とは言うものの、それらを観る機会も今日のもう一度限りです。目を皿にして何も零さずに観たいとは思っているのですが、そんなこと到底無理な話で。でも、「挑戦」しかないですよね。今日もう一日、浸って楽しんできたいと思います。

「挑戦 躍動 Noism」

当日券もあるとのことですから、皆さまもお誘い合わせの上、お越しください。きっと、よい日曜日になること請け合いです!(キッパリ)

(shin)

 

『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』公開リハーサル及び囲み取材に行ってきました♪

前日の寒さから一転、春の陽光が指して気持ちのよい2023年4月19日(水)、標記のメディア&活動支援会員向けの公開リハーサル(+囲み取材)に行ってきました。会場はりゅーとぴあ〈劇場〉でした。まずは公開リハーサル、時間は13:30から約30分間。

4/14のときと同様、この日も見せて貰ったのは、『Noism2定期公演vol.14』の方からでした。で、現在のNoism2メンバーは全員が女性ということもあるからでしょうか、Noism1からの出演もあります。さてさて、誰が出るのかはお楽しみに♪

劇場へ入っていくと既に舞台にはメンバーたちがいて、それを客席から見詰める地域活動部門芸術監督・山田勇気さんは、主に照明の具合をスタッフとやりとりしながら試しています。公演当日まで「ベスト」を求めて、まだまだ練り上げられていきそうです。Noism2リハーサル監督・浅海侑加さんはビデオ撮影の準備をしています。そうこうしているうちに、Noism1メンバーも何名か入ってきて舞台に目をやり始めました。

見学する私たちが揃った頃合いで、山田さん、「じゃあグループのところから『クロノス(カイロス1)』まで通していきましょう。照明も入れていきます」と指示を出すと、まず、客電が落ちて、次に舞台上も暗転。そこを経てからの明転で、「オール・バッハ・プログラム」この日の公開リハーサルが始まりました。

まずは『ZONE』より academic から。

続いて『complex』よりデュエット、『愛と精霊の家』より冒頭シーンです。

そして色鮮やかな『クロノスカイロス1』より。

スクリーンに映し出されるのは初演時のNoism1メンバーの姿。ですから、それに対しても若き舞踊家たちの「挑戦」が見てとれるような案配です。

その後、スクリーンの画像や照明の微調整が行われます。山田さんからスタッフに「真ん中へん、ジョフ(旧メンバー)のところ。(画像の)秒数を3秒追加。ゆっくり」とか、「追っかけで8秒くらいかけて消す。みんなの灯り」とか、もう秒単位でのテクニカルなブラッシュアップです。踊るメンバーに向けては、「はけ切りまで走り切りたい」や「幸せそうに走りたい」など、細部の重要性を伝えていきます。

そうこうしているうちに、14時になり、そこからは場所をホワイエに移して、山田さんと浅海さんへの囲み取材の時間です。

主なやりとりを簡単にご紹介します。

Q:見どころは?
 -山田さん:「見てもらったのはNoism2の定期公演の部分だったが、前半の方にはNoism1メンバーの振付公演(4作品)があり、今回、一緒にやることでボリュームがあり、若手の振付家と若手の舞踊家によるフレッシュなエネルギー溢れる公演になる」
 -浅海さん:「振付公演に出るメンバーは定期公演を踊るときとはまた違った面が見られるの楽しみがある。違う作品を踊ることで表現や身体性が変わる。違う強さ、違う表情、違う面が見られる」

Q:J.S.バッハの曲を用いたレパートリーとした理由は?
 -山田さん:
「統一感があってもいいのかなと。バッハはNoismらしいし、バッハの音楽のシンプルな強さと、研修生(Noism2)がやるべきシンプルに身体を鍛えていくことが合致する。また、『挑戦』として、あの音楽に向き合って貰いたかった。やってみたら、音楽ごとに違う表現があるし、音楽がシンプルで抽象的であるため、身体性にフォーカスする難しさがあり、トライして欲しいと思った」

Q:振付公演での作品作りについて何か制約はあったのか?
 -山田さん:
「特にない。ただ、公演が全体で90分くらいなので、(4作品なので)ひとり10分程度に」

Q:メンバー振付公演の作品順はそうやって決めたのか?
 -山田さん
「見てみて、終わったときにどういう感覚が残るかを考えて決めた。音楽の『流れ』も考慮した」

…山田さんと浅海さんへのこれも新鮮だった囲み取材はここまでです。
で、その後、Noismスタッフからなされた告知として、両日とも終演後のアフタートークには、山田さんと浅海さんに加えて、Noism1メンバーの振付家4名が登壇予定とのこと。更に新鮮かつ、色々な面で面白いお話が聞ける機会になりそうですね。
とにかく楽しみな公演2日間。チケットは只今、絶賛発売中。よいお席はお早めに!

で、この日は囲み取材のあとの時間を利用して、なんと東京から(!)私たちNoismサポーターズを取材したい(!!)とのお申し入れを受けていたのでした。
その取材ですが、JR東日本の新幹線車内サービス誌「トランヴェール」の編集ディレクター・籔下純子さんとおっしゃる方からのもの。新幹線で前の座席の背面、あの網ポケットに入っている旅の雑誌ですよね、「トランヴェール」。
その6月号が、新潟のダンスシーンを特集掲載する予定だそうで、新潟の様々な踊りやダンスのコンテンツに混じって、私たちサポーターズについても取り上げたいということなのでした。籔下さん、Noism公演をご覧になられた際に、私たちNoismサポーターズについても興味を持たれたとおっしゃっていました。
fullmoonさんを通じて、acoさん、aquaさんと私、4人でNoismの魅力について、目をハートにしながら小一時間、お話しさせて貰いました。どんな記事に纏めてくださるか今から楽しみです。籔下さん、どうも有難うございました。
皆さま、6月号、是非お手にとってご覧いただけたらと思います。(その「トランヴェール」は、表紙のQRコードを読み込むことで、現在、発行と同時に読めるのだそうです。(期間限定です。)また、1ヶ月後、次の号が出るタイミングになりますと、上のリンクから「バックナンバー」として読めるようになります。)

でも、まずは今週末(4/22土、23日)に迫った、様々に新しさや若さが溢れる『Noism2定期公演vol.14+Noメンバーメンバー振付公演2023』です。お見逃しなく!

(shin)
(photos by aqua & shin)

Noismオープンスタジオ(リハーサル公開)に行ってきました♪

2023年4月15日、薄曇りの暖かな土曜日♪
古町や白山祭りの賑やかな人出を抜けて、りゅーとぴあに向かうと、そこにも賑わいが!
りゅーとぴあでは、今日(4/15)明日(4/16)「アート・ミックス・ジャパン」が開催され、野外での公演もあり、屋内外ともたくさんの人! りゅーとぴあ内は出店も出ていて華やいでいました♪

そんな本日、行われた「Noismオープンスタジオ」とは!?
公式ホームページよると、
「G7財務大臣・中央銀行総裁会議が新潟で開催されることを記念して、アート・ミックス・ジャパン2023の開催に合わせ、Noismのスタジオを特別に公開します。
4月22日(土)・23日(日)に予定している「Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023」で上演する作品のリハーサル風景を、予約不要でご覧いただけます。
この機会にぜひNoismのスタジオにもお立ち寄りいただき、間近に迫る公演に向けた創作の様子をご覧ください。
アート・ミックス・ジャパン2023連携 -G7新潟財務大臣・中央銀行総裁会議開催記念-」
とのことでした。

リハーサル公開は14:15~ですが、受付開始の14時にスタジオBに入場。
用意されていた席は間もなく満席となりました♪

■「Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023」上演予定作品
☆Noism1 メンバー振付公演 2023
・中尾洸太 振付作品
・坪田光 振付作品
・樋浦瞳 振付作品
・糸川祐希 振付作品

★Noism2 定期公演 vol.14
演出振付:金森穣
構成:山田勇気
稽古監督:浅海侑加
・『ZONE―陽炎 稲妻 水の月』より「academic」(2009 年)
・『no・mad・ic・project―7fragments in memory』(2005 年)より
・『Complex~旧作と新作の融合による』(2021 年)より
・能楽堂公演『play 4:38』(2006 年)より
・『Phychic 3.11』(2011 年)より
・『Nameless Hands―人形の家』(2008 年)より
・『愛と精霊の家』(2015 年)より
・『クロノスカイロス 1』(2019 年)より

以上の中から、この日は、Noism2 定期公演 vol.14の、
・『Nameless Hands―人形の家』(2008 年)より
・『Phychic 3.11』(2011 年)より
を見せていただきました!

○『Nameless Hands―人形の家』(2008 年)より
バッハの無伴奏チェロ組曲、と言えばアレです!
かつての山田勇気さん&中野綾子さん、中川賢さん&真下恵さん・・・
人形2体と黒子たちによる名場面が彷彿としてきます♪

今日、じっくり稽古をするところを見たら、難しいんですね~~
驚きました!
その難しい作品をNoism2の1,2年生6名が踊ります。
乞うご期待!

□『Phychic 3.11』(2011 年)より
この時は3年生3名が踊りました。
さすがは3年生!うまさと貫禄が違いますね!

この2作品だけでもすごいのに、たくさんの上演作品で大変と思いますが楽しみです!
指導は山田勇気さんと浅海侑加さん♪ 丁寧な指導に見入ってしまいました。
皆さん、がんばってください!

19日には劇場でメディア向け&活動支援会員向け公開リハ―サルがあります。
そして本番は、22,23日!もう来週ですね!
ぜひどうぞご来場ください!
若々しいエネルギーをご堪能くださいね♪

(fullmoon)

演劇公演に行ったら…

庭劇団ペニノ新潟公演「笑顔の砦」作・演出:タニノクロウ
9月3日(土)18:00の回@りゅーとぴあ劇場 

アフタートークのゲストとして金森さんが登壇する回なので行ってきました♪
そしたらなんと折込配布チラシの中にこのようなものが!

Noism Company Niigata 冬公演 仮チラシ更新!
『Der Wanderer ーさすらい人』
演出振付:金森穣 音楽:シューベルト歌曲 
出演:Noism0、Noism1

速報!Noism Company Niigata 冬公演チラシ♪

「一人ひとりのメンバーソロから構成する」最新作。
そして、日程詳細も♪
どうぞご予定ください。
楽しみですね!

さて、肝心の演劇公演、なんというか、舞台セットを含め、徹底したリアリズムに驚きました。アフタートークでは金森さんも「人の家の中をリアルに見ているような」と話されました。それもそのはず、出演者はセットの中に住み込んで稽古していたのだそうです!
特に取り立てて何も起こらない他者の日常生活を傍観しているうちに、徐々に没入していったという金森さん。そのきっかけは、「二つの部屋のそれぞれの主人が一人だけになった時、自他の境界が崩れたところに惹かれた」とのこと。精神のリアルが提示されて面白かったそうです。さすが金森さん。

ほかにもタニノさんの面白変人ぶりがわかるビックリするようなお話がたくさんあり(そのお話を引き出す金森さんの方が司会者のよう)楽しい20分間でした♪
金森さんとタニノさんは全くの初対面で、打ち合わせも無く、終演後に舞台袖で会ったのが初顔合わせだそうですよ。
終了後、山田勇気さん、浅海侑加さんほか、Noism1・2メンバー数名、お見かけしました♪

(fullmoon)

Noism Company Niigata新体制 就任記者会見 開催♪

雨の一日となった、2022年9月1日。
Noism Company Niigataの新たなシーズン(19thシーズン)が始まりました!
シーズン開始にあたり、金森穣 芸術総監督、井関佐和子 国際活動部門芸術監督、山田勇気 地域活動部門芸術監督の就任記者会見が行われました。

2022年9月1日(木)15:00-15:45@りゅーとぴあ能楽堂ホワイエ
登壇者:
金森穣(Noism Company Niigata 芸術総監督)
井関佐和子(Noism Company Niigata 国際活動部門芸術監督)
山田勇気(Noism Company Niigata 地域活動部門芸術監督)
19thシーズンNoism Company Niigataメンバー全員

金森さん、井関さん、山田さんの順に就任の抱負を話されました。
金森さんは、
「2部門制になり、国際部門と地域部門を二人に任せることで、Noismは更に飛躍できると思う。何かあれば相談は受けるが、基本は任せて、自分は俯瞰して見ていきたい。井関にはNoism0,1を任せ、山田にはNoism2を一任する。現在、すでに二人が選んだメンバーになっている。
自分はレジデンシャル制度を成熟させていきたい。大きな視座に立って、Noismを導いていきたい」と話されました。

井関さんは、
「国際部門というと海外関係と思われがちだが、国内外という意味であり、初年度は内側の充実を図っていきたい。新潟からNoismのことを言葉と身体で発信していく。
先シーズンは鼓童と共演して新潟・東京圏以外の地域でも公演し、それぞれの地域の人たちの感じ方を味わった。Noismを知らない人たちにもNoismを知ってもらえるように届けていきたい」と話され、井関さんからNoism1メンバーの紹介がありました。

続いて山田さんは、まず先にNoism2メンバーを紹介してから、
「これまでもやってきたが、より一層、地域に貢献する活動を集中してやる。まずは小学校へのアウトリーチを増やして充実させたい。そしてオープンクラスを担当するので、Noismが培ってきた身体知を広めたい。皆さんには観るだけではなく体験してほしい。
そして研修生カンパニーであるNoism2を担当する。メンバーは夢と理想を持ってここに来るが、現実にぶつかり自分自身と向き合わざるを得ない。技術的なことだけでなく身も心も成長してほしい。2、3年で研修を終えそれぞれの道に進んで行く。一瞬の夢に賭けるメンバーを応援してほしい。地域の人たちに愛される集団になってほしい」と話されました。

以下は質疑応答からの抜粋です。
金森:レジデンシャル制度は、新潟市の行政が文化政策として芸術活動を担う、劇場文化の新しい形。これまで日本には前例が無い。行政と財団とNoismが地域の文化を担う。3者で相談しながら、5年以内に、他の地域にも取り入れられる汎用性のある制度にしていきたい。それはかなりハードルが高いことだが、それだけに献身する意義がある。

井関:市と財団とNoismの3者は対等である。その中のひとつであるNoism内側の体制を強化していきたい。舞踊家は自覚と責任とプライドを持ってほしい。Noism1がどのくらい実力をつけていけるかが勝負。
個人的には公演では、芸術監督ではなく一舞踊家として踊る。芸術監督としてこんなふうに出なくてもいいように、Noism1メンバーに前に出てほしい。いずれ引き継ぎたい。

山田:劇場に舞踊家がいることによって、いろいろ役にたつことができる。皆さんからも声を掛けてほしい。以前、市の人から海岸清掃を依頼されたとき、「こんなことを頼んでもいいんですか?」という雰囲気だった。もちろんできないこともあるが、こちらが思いつかないようなこともあるので、なんでも提案してほしい。地域のいろいろな人たちと繋がっていきたい。

金森:公演は海外からのオファーもある。コロナがもう少し落ち着いたら新潟の外に出たい。地域と、地球の裏側の両方で活躍する舞踊団が新潟にある。それは素晴らしいこと。私だけの夢や妄想ではなく、市民の皆さんと共有したい。

★メンバーのひと言(皆さん、恵まれた環境と応援に感謝していました)
Noism1
井本星那 Sena IMOTO:Noismとしての自覚を持ってやっていきたい。
三好綾音 Rio MIYOSHI:クオリティの高い公演を届けられるように精進する。
中尾洸太 Kota NAKAO:観に来てほしい。高みを目指し、伝えられることを増やしたい。
庄島さくら Sakura SHOJIMA:Noismらしく、且つ自分らしく踊りたい。
庄島すみれ Sumire SHOJIMA:たくさんの人に公演を観に来てほしい。
坪田光 Hikaru TSUBOTA:責任とプライドを持って邁進していけるように努力する。
樋浦瞳 Akira HIURA:新潟市出身で中3の時、Noismを観た。憧れの場所にいる。市民に興味を持ってもらえるように、身体でがんばって伝えていきたい。
杉野可林 Karin SUGINO(都合により欠席)
糸川祐希 Yuki ITOKAWA:プロの自覚を持ってがんばっていきたい。
凖メンバー
横山ひかり Hikari YOKOYAMA:舞踊の力を届けられるように精進したい。

Noism2リハーサル監督・Noism1
浅海侑加 Yuka ASAUMI:Noism2メンバーと一緒に活動していく。新たなことにチャレンジしたい。
(浅海さんはNoism1メンバーとして公演に出演することもあります)

Noism2
兼述育見 Ikumi KANENOBU:心も身体も成長したい。
土屋景衣子 Keiko TSUCHIYA:自覚と責任を持ってがんばる。
渡部梨乃 Rino WATABE:自分と向き合い、闘い、精進する。視野を広く持ち、市民と繋がり、いい踊りと思われるようにしたい。
太田菜月 Natsuki OTA:ひとつでも多くのことを学びたい。
河村アズリ Azuri KAWAMURA:心と身体を強くしたい。
佐藤萌子 Moeko SATO:自分と向き合って、上を目指したい。
高田季歩 Kiho TAKADA:目の前にあることに一つひとつ取組み、精進していきたい。
村上莉瑚 Riko MURAKAMI:心身の中から伝わるような表現ができるように努力したい。

新たな決意の新生Noism Company Niigata。まさにシビックプライド!
ますます応援して参りましょう!

(fullmoon)
(photos by aqua)

大学生たちが見たNoism『境界』⑤(公演感想)

Noism0/Noism1『境界』の世界

 2021年12月26日の東京芸術劇場で上演されたダンスカンパニーNoism Company Niigataの『境界』を鑑賞した。これは二幕の構成で、一幕はゲスト振付家に山田うんさんを迎え、Noism1メンバーが踊っている。二幕ではNoism芸術監督金森穣さん演出振付でダンサー井関佐和子さん、山田勇気さんと共にNoism0の作品として構成されている。

 一幕Noism1の演目、タイトルは『Endless Opening』。1楽章「風のような姿 花のような香り」、2楽章「誰かに手を伸ばしたくなる」、3楽章「この大海原に誕生の祝福」、4楽章「種子 突風に乗って つと」で構成されている。最初に9人のダンサーがそれぞれ色とりどりのレオタードを着て、柔らかい風になびいて舞うオーガンジーの羽織を身にまとって登場する。ダンサーの息づかい、地面の擦れる音が聞こえるような静かな空間の中で舞い踊る姿はまさに花のように美しかった。体が動いた後にオーガンジーの羽織もその軌道を追ってついていく。その止まることなく永遠に続く様子が春の喜びを感じられるような情景であった。そこからまた誰もいない静かな空間になる。小道具を一人一つ持ってダンサーが現れるが、私はこれをベッドだと捉えた。ここでは人間、生命の生まれを踊りで表現していると感じた。上からのスポットライトを浴びて、その光に向かっていくように手足を伸ばしていく。それぞれ違う動きで起き上がり、最後に羽織を脱ぎすて、人としての成長を表わしているのではないかと考える。静かな世界から一変し、早い曲調の楽曲が流れる。2人、3人ずつの踊りでは、お互いの空気感を感じながら息の合ったダンスを繰り広げていった。人数が増え、最後の総踊り、一糸乱れぬ美しいダンスは見ている人の心に幸福感を感じさせるほどで、幸せを得ることができた。

 二幕Noism0『Near Far Here』。一幕とは変わってバロック音楽の中、薄暗い空間の中でピンスポットがあたる。ここでは生と死がテーマになっており、その境界を表現していた。決して激しく踊り狂う訳ではなく、その劇場の空間を自分の体で吸収し、丁寧に舞っている。すると下手(しもて)に影を映すスクリーンのようなものが降りてくる。今見えている世界と影の世界、お互いが全く同じ動きでシンクロしている。影の世界に最初は一人しかいないと思わせていたが、そこから分離し、もう一人いることがわかる。そして真っ白の衣装を身に纏う女性が、見える世界に現れる。重力を感じさせないリフト、アクリル板を使ったパドドゥ、三人での踊りは身体全体からエネルギーが溢れていることを感じさせる。しかし激しく乱雑に踊るのではなく、まるで美術作品を見ているようなゆっくりと濃い絡みであった。そして最後に舞台上、客席にも降ってくる赤色の花びらは、この生と死の境界がある世界の儚さや脆さをその空間で表現していると感じた。

 Noism0/Noism1 『境界』を鑑賞し、コロナ禍で人とのつながりが一時は途絶え、孤独な時間を多く過ごしていた日々があったことを思い出した。人との間に壁があると寂しいもので、それだけで距離が離れているように感じられる。コロナ禍で制限しなければならないことが多くあり、その中でも大切な家族、友人と過ごす時間はかけがえのないものであり、その有難さを改めて考えなければいけないと思った。この作品で見た人の生まれる感動、生と死の境界は儚くありながらも美しい。そして先がどうなるかはわからないが、きっと明るい未来が待っている、そう感じさせるその空間は幻想のような世界観で温かかった。

(米原花桜)

 皆さま、ここまで、桜美林大学 芸術文化学群 演劇・ダンス専修にて稲田奈緒美さん(舞踊研究・評論)の指導のもと、「舞踊作品研究B」という科目を学ぶ学生さん5人による5本のレポートを5日連続でご紹介して参りましたが、如何だったでしょうか。
 瑞々しい感性で綴られた5つの瑞々しい文章をこうして続けてご紹介できたことはとても喜ばしいことでした。Noism Company Niigataを「生で」観るのは初めてという人も多かったようですが、今回のレポート執筆が、5人の(そしてそれ以外の多くの)学生さんたちにとって、Noism Company Niigataとの良き「出会い」となり、このあとも継続して接し続けて貰えたら、そう願っています。
 なお、掲載したそれぞれの文章は読みやすさに照らして、文意を変えない範囲で若干の修正を施した箇所があることもここにお断りしておきます。その点、悪しからずご了承ください。

 書くことで初めて見えてくるものがあります。また、書くことは自らをさらけ出す事であるとも言えるでしょう。
 対象のなかにただならぬものを見出し、対象と格闘しながら、なにがしかの文章を書くという行為は、対象に従属する受け身の行為に収まらぬ、極めて創造的な行為にも転じ得るものです。そして、書かれた文章が、それを読む者と繋がり、触発・刺激していくこと、その豊かさを知る者が文章を書き続けるのでしょう。今回、文章を掲載した5人にとって、そんな豊かさに繋がるきっかけを、ここに提供することが出来ていたなら望外の喜びです。また書いてください。 (shin)

大学生たちが見たNoism『境界』④(公演感想)

舞踊作品研究批評課題 Noism Company Niigata <境界>
2021.12.26観劇 @東京芸術劇場(プレイハウス)

はじめに
 私は12月26日、日本初の公共劇場専属舞踊団である、Noismの『境界』を観劇した。Noismには、プロフェッショナル選抜メンバーによるNoism0、プロフェッショナルカンパニーNoism1、研修生カンパニーNoism2の3つの集団がある。この度の公演は、2019年冬公演に次いで、ゲスト振付家を迎えて行われたダブルビル公演であり、Noism0をNoismの芸術監督である金森穣が、Noism1をゲストである山田うんが、それぞれ「境界」を共通のテーマとして振付した。

第一章
 まず、Noism1山田うん振付の『Endless Opening』が始まった。幕が開き、そこに広がっていたのは、舞台美術もない、照明もシンプルでフラットな白い世界であった。Noism1は男性4名女性5名計9名でダンスが展開された。衣裳は全員、色がバラバラで、しかしパステルカラーの半透明な羽織にはっきりとした色のレオタードを着用していることは共通していた。ダンサーは次々と出てきて踊り始めた。時には3~4人の小グループでそれぞれ踊るシーンがあった。踊っている中で、カウントを一個ずらし時差を持たせて踊ったり、小グループメンバーが離脱・参加したりと、常に同じメンバーでは踊っていないところが複雑にできていた。それに対して群舞のシーンでは半透明な羽織が良い効果を出していた。山田うんはインタビューの際、「花束をお渡ししたい」という言葉を語った。まさに花と思わせるような衣裳がダンサーを綺麗に彩っていた。ダンスの世界では当たり前なのかもしれないが、9人もダンサーがいるのにも関わらず、足音が全くしないことがダンスを学んでいる私にとって、とても印象的で、よく鍛え上げられていると感じた。このシーンでは群と個で踊るシーンや小グループで踊るシーンがあり、そこの間に境界があるというように見えた。
 途中、ついにベッドのような小道具が出てきた。円形に回り、どんどん増えていく、そして舞台に規則的に並べられた。ベッドに座ったり、寝たり、立ったり、様々な手法で踊られていた。車輪がついている不安定なベッドの上で踊ったり、隠れるシーンでは全くはみ出ることなく隠れたり、ダンサーの稽古時の努力を感じた。ベッドが並んだ時、前からの照明により、後ろの白い壁に柵ができたように見えた。ダンサーがベッドと共に後ろに向かうシーンでは地平線に歩いていくような、境界に向かっていくような、テーマを提示しているようだった。照明がシンプルに作られており、ダンサーの邪魔をしないよう工夫されていると感じた。身体がよく見え、ダンサーが最大限に身体を使い、花を表現していたと感じた。

第二章
 次に、Noism0金森穣の『Near Far Here』が始まった。幕開き、そこに広がっていたのは舞台美術がないのは先ほどの作品と共通していたが、照明が暗く、同じ舞台と思えない黒い世界が広がっていた。副芸術監督である井関佐和子が白い高貴な衣裳を着ており、照明が彼女を当てては消え、当てては消えを様々な場所で行い、井関が瞬間移動しているように見えた。金森穣とNoism1リハーサル監督である山田勇気のふたりが黒い衣裳で同様の演出で舞台に現れた。見ていて、先ほどのグループより踊りの感じや熟練度や経験に違いを感じ、さすが選抜メンバーだと感じた。舞台上方から木の枠が下りてきた。普段の生活感覚からしてみればただの木枠だが、この舞台では鏡に見えた。前から照明が来ていて、背景に影が一致していて「鏡」感を出していたと感じた。鏡の先と今立っている場所とが木枠によって境界を表現しているのだなと感じた。木枠が上がって次に白いスクリーンが下りてきた。スクリーンには事前に撮られた影の映像と実際に今光で当たっている影が映し出された。影同士が踊り、ダンサーと影、現実世界と影の世界、映像の自分と今の自分、スクリーンを境界として色々考えることができた。次にガラスの板と共に、ペアで踊るシーンでは、ペアで踊るにも手や足以外でも物でつながることができることを提示していた。ガラスの板という境界、その境界をうまく操りながら踊るというのがとても印象的だった。最終シーンでは舞台一面が赤くなっていて、上から赤いバラのようなものが降ってきて、一つ境界の先の世界のイメージがあったと感じた。歩いているだけなのに音響の効果やその世界に鳥肌が立った。

まとめ
 山田うんと金森穣が同じテーマで作品を作ったのを見て、照明がシンプルだったり凝っていたり、舞台が白かったり黒かったり、衣裳がカラーだったりモノクロだったり、演出が正反対と言ってもよいくらい違うのに、どちらも『境界』という作品として出来上がっており、様々な表現ができるダンスの多様性を感じた。

(田中来夢)

大学生たちが見たNoism『境界』③(公演感想)

様々な境界

はじめに
 「境界」はあらゆるところに存在する。今回 Noism の『境界』という作品を鑑賞してそれを多くの場面で感じた。ダンサーの踊りはもちろん、照明や様々な舞台装置を駆使した素晴らしい演出。それらから表される物語性や演出家の意図に注目していく。

第一章
 まず山田うんさん振り付けの『Endless Opening』についてだ。最初に目に入ったのはひらひらとした花びらのようにも鳥の羽のようにも見える衣装。衣装はピンクや水色など、淡い色が多く使われており、女性らしいという固定概念に当てはまるようなものだった。その中で男性ダンサーも女性と共に踊っており、女性と全く同じ衣装を着ていたのが印象に残っている。男性らしさと女性らしさの概念をはっきりと分けないジェンダーレスという現代だからこその衣装構成だと感じた。ダンサーそれぞれが優雅ながらもパワフルに動き、唯一無二のダンスを生み出していた。
 最も興味深く感じたのが作品の後半、自らのひらひらした袖を外し、ベッドのようなものに置いて舞台に下がってくる幕の中へと消えていくシーンだ。舞台上にいるダンサーではなく、背景に映し出される影に自然と目がいってしまうような演出と無音の中でダンサーが後ろに向かって歩いていくシーンは、特に凄い技術を見ているわけではないのに見入ってしまった。自ら取った袖をどこかに置いてきたダンサー達は弾けるように踊る。そこに幕という物理的な境界によって生と死の見えない境界線が描かれていると感じた。

第二章
 次に観劇した金森穣振さん振り付けの『Near Far Here』は言葉にするのは難しく、とても神秘的な作品だ。Noismはたとえ何もない空間だとしても、場面展開が早く、ダンサーの技術と共に、見ていて目が離せなくなってしまうのが一つの特徴だと思う。今回の作品もシンプルな額縁やスクリーンがあるだけなのに、そこで繰り広げられる沢山の物語が次々と見えてくる。そんな洗練されたこの作品には様々な境界が存在する。私には本物と偽りの境界、またどこからが境界かが段々とわからなくなっていく不思議さを作品の中に感じた。例えば、スクリーンに映し出された三人のダンサーとそのスクリーンの前で踊るもう一組の三人のダンサー。言い換えれば、実際にそこにいる本物とスクリーンの向こう側にいるように見える偽り。最初は互いに違う動きをしているのだが、段々と動きがリンクしていき、しまいには一人がスクリーンの中に入ってしまう。そこにスクリーンを挟んだ一つの境界があると感じた。最も印象的だったのはラストだ。舞台一面に真っ赤な花が散りばめられていた演出だった。美しさに見惚れていると、観客席にも赤い花が降ってきた。舞台と客席の間にも一つの境界があると考えると、花が降ってくる光景はまるで客席も舞台と化しているようだった。だからこの境界がなくなったとき、私は何か大きな境界がなくなった気がして不思議さを覚えた。またダンサーが舞台から降ってくる花に驚いている私たちをただ立ち尽くして見るというのも面白い光景だった。ダンサーと同じ空気を吸い、同じ空間にいることを自覚させられたような感覚だった。

まとめ
 今回初めてNoismの作品を生で観劇して、固定概念に囚われない演出が凄く新鮮で、自分にとって参考になった。一つの小物や小さな動き、衣装が少し変わるだけで、そこから多くの物語が始まっていくのを目の当たりにし、表現の可能性は無限だと感じた。

(三田ひかる)

大学生たちが見たNoism『境界』②(公演感想)

様々な『境界』の世界

 「境界」を共通ワードとした山田うん演出振付のNoism1『Endless Opening』、金森穣演出振付のNoism0『Near Far Here』の2本立てで構成された公演。

 『Endless Opening』は何もない無機質な空間に、明かりが入り、音が入り、そして、動きが入る。カラフルでひらひらとした衣装が、この無機質な空間に映える。踊りが進んでいくと、ベッドのようなものが次々と出てくる。そこで踊った後、また何もない真っ白な空間で踊り出す。集団になったり、個々での動きだったり、また衣装も相俟って演者たちは鳥を表しているのではないかと感じた。ベッドの上でスポットライトが当てられ踊る姿は、それぞれの死や苦しみのようなものに見えた。上着を脱ぎ自らベッドを暗闇の中に運び、真っ白な空間で踊りだした。暗闇は自分の命の終わりで、真っ白な空間は死の世界、又は新たな命の世界なのではないかと感じた。
 私はこのように解釈したが、「観客の皆様にそっと寄り添う、時間の花束のような舞踊をお届けできたら、境界という不確かな美を感じていただけたら幸いです」という山田うんが実際に表したものは、「喪失感や虚無感を優しく撫でる光のカーテン」である。この解説を読んだ後、作品を思い返すと、何もない空間が演者によって段々と色付けられていく時間でもあったと感じた。一つ残念に思う点は、ベッドを運んでくる音だ。演出の一部であるのかもしれないが、運んできた時の「ギギッ」という音はあまり良いとは思わなかった。

 『Near Far Here』は常に異世界のような空間にいる感覚があった。少しずつ変わっていく空間。上から四角い枠のようなものが降りてきて、演者が踊る。ただの枠がまるで鏡のように見える演者の動きや、後ろに映る影が1つから2つへ、大と小の動きが幻想的である。照明による影からスクリーンを使った影へと変わり、スクリーンに映る影と実際の影の融合は、現実と映像の境界にある空間を作っている。また影から人物へ、影の時と同じようにスクリーンと実際の人物の境界。幕が閉じ、会場に響く重低音。優しく明るいメロディーが鳴り、幕が開くと、あたり一面真っ赤な花びらの空間になり、客席にも頭上から花びらが降ってくる演出であった。最初に幕が開いた瞬間、何か凄いものが始まるのではないかと感じたのが率直な感想だ。袖幕を取っ払い、照明は剥き出し、上には色々なものが吊られていて、『Endless Opening』とは全く違う空間があった。
 金森穣はこの作品を「近くて、遠い、此処」と表している。此処とは何処なのか、言葉にはできない此処の空間、時間があったと感じた。スクリーンを使うという考えは、現代社会を簡潔に表していると思う。スクリーンが映しだす現実と虚実、実際に演者が動く現実が融合されて、「境界」というワードが当てはまる作品であると感じた。

 2本の作品を観て、「境界」というワードによって、観た人の解釈は様々なものになるのではないかと感じた。コンテンポラリーダンスは、表現の方法が多様である。多様である故に、作る人によって独特な表現で作られる為、受け取る人の解釈も様々であると思う。「境界」というワードがあるだけで、それぞれの作品に隠された「境界」の空間を感じ取ることができるのもコンテンポラリーダンスの面白さであり、それぞれの作品の面白さを感じ取れた公演であったと感じた。

(中川怜菜)