瞬きするのも忘れて瞠目したNoism0 / Noism1「領域」新潟公演中日♪

前日の雨からも湿気からも解放されてはいても、文月朔日らしからぬ中途半端な気温などは、今度はどこかもの寂しくもあり、人とは随分勝手なものだななどと思うような一日、2023年7月1日(土)。

Noism0 / Noism1「領域」新潟公演の中日。前日に引き続き、2演目の舞台を堪能してきました。初日は全体を一望する席(11列目)でしたが、この日は最前列(3列目)から舞踊家たちの身体をガン見。瞬きするのも忘れて瞠目したため、ドライアイ状態になるも、そこは我慢。捩れる身体に翻る衣裳、上気した顔や迸る汗の粒などを大いに楽しみました。

舞踊演目の始まりと終わりや、更には舞台の正面性にさえ疑問を投げかけるかのような側面を宿しながら、金森さんと井関さん、ふたつの身体がともに領域を侵犯し合い、果てに渾然一体となった「じょうさわさん」を立ちあげつつ、落下を続ける古米のごとく弛みなく、舞踊を生きてみせる『Silentium』。

対して、舞台の正面性にこだわり、ソリッドでクールな格好良さにこだわり、編まれては解かれていく様々な関係性が、目まぐるしいがまでの舞踊の連打として、アクティングエリア上のあちこちに現れるのを目で追うことの快感に満ちた『Floating Field』、その愉悦。

ふたつの演目、この日も大いに満喫させていただきました。

終演後は金森さんと井関さんによるアフタートークがありました。やりとりは主に『Silentium』に関するものでした。かいつまんでのご紹介を試みたいと思います。

Q: 1対1の創作、逃げ場がなくて苦しくはなかったか?
 -井関さん: 黒部での野外公演後の一ヶ月、私にとっては地獄でした。
 -金森さん: 逃げ場要る?
 -井関さん: 要らないんですけど、ホントに逃げ場がない状況なので…。
 -金森さん: 劇場出たら、だらっとしてるじゃない。(笑)
 -井関さん: ふたりで創作する大変さ、目の前の人に向き合うしかない。公演前の一週間でやっと何かを見つけ始めた。
 -金森さん: よかったね。
 -井関さん: ハイ。
 

Q: 二見さんの作品、そして踊るメンバーを見てどう思ったか?
 -金森さん:  格好いいダンス、うまいなぁって感じ。 空間処理や、動く身体がどっちに流れて、重心がどう動いて…とか。 踊るメンバー、ガンバレ!
 -井関さん: 二見さんは素晴らしいダンサー。それを吸収しようとしている。いい関係だなと。しかし、舞台はその人が、その人の人生がそのまま出てしまう。その意味では、まだまだ若いなぁと思った。同時にまだまだ先がある。これからが楽しみ。
 -金森さん: ぶち壊せ!

Q: 衣裳のオーダーはどういう感じだったのか?
 -金森さん: 音楽を聴いてもらって、あの衣裳が来た。「何じゃあ、これ!?」びっくり、たまげた。もとは一枚の布。剥がして破いていく過程を見た。
 -井関さん: ホント狂ってますよね、興奮した。(笑)

Q: かけがえのないパートナーと踊ってどう思ったか?
 -金森さん: 特にない。もうあの時間は消えていて、言わば死んでしまっている。あれをご覧いただけてよかったなと。
 -井関さん: 皮膚から出てくる「ことば」凄い。滅茶苦茶出てきて、もの凄く速く「会話」している。踊っていて、(美しい意味じゃなくて、)導かれている。その「会話」が楽しい。

Q: あの金色はホントの金箔か?
 -金森さん: 箔押ししているが、本物ではない。
Q: 剥がれたりしないか?
 -金森さん: ちょっとずつ剥がれてきているが、いっぱい洗濯してくださいとも言われている。
Q: 汗とか大丈夫なのか?
 -金森さん: 着ていると暑いが、見た目以上に動き易い。但し、大事な皮膚が覆われているので大変。いつも以上に集中しないと。

Q: アルヴォ・ペルトの音楽を選んだのは何故か?
 -金森さん: 黒部での創作でペルトを聴き漁っていたら、「見えてきた」から。他に音楽を聴いていたら「降ってきた」のが、お米や壁。あの壁は『Der Wanderer-さすらい人』の壁。どちらも使い回し。(笑)

Q: 今回の照明について。
 -金森さん: 今回の照明のキューはペルトの繰り返される音楽に基づいて16回とまず決めてかかった。通常は30分で大体100キューに届くところ、今回は極端に少ない。みんなに「絶対に嘘」と言われたが。(笑) いつもは身体を起点として合う照明を作っていくのだが、今回は音楽に合わせて照明を入れていくことにしたもので、いつもの逆コースと言える。あと、最初に緞帳が閉まるのもそう、逆。
「振り」も音なしで作ったが、それは大変だった。踊っていて、いつも同じではない。ふたりで「この瞬間、ちょっと遅れているね」とかやっている。

Q: 井関さんの髪の色がさっき黒かったのに、今は金色だが…
 -井関さん: 衣裳の宮前(義之)さんが、「ふたりとも黒髪がいい」と言ってきたので、踊るときにはスプレーで黒くしている。終わったら、筋肉を落ち着かせるために水で冷やすのだが、そのとき、黒も落としている。落としておかないと大変なんで。

Q: 蝋燭の炎も印象的だが、使うと決めたのはあの金の衣裳が来てからか?
 -金森さん: 生の火、降り続けるもの、大きなものが降ってくることなどは衣裳が来る前から決めていた。あの金色の衣裳、宮前くんも音楽に共振したのだろう。

ざっと、こんな感じでこの日のアフタートークの報告とさせていただきます。

で、いよいよ明日がNoism Company Niigata、今シーズン最後の新潟公演となります。来シーズンには『鬼』再演など注目の公演も組まれていますが、まずは、明日です。もとい、書いているうちに日付が変わっていましたね。本日です。新潟公演楽日のりゅーとぴあ〈劇場〉の客席を大勢で埋めて、おのおのの熱い視線を舞台に注ぎたいものです。お初にご覧になる方も、二度目、或いは三度目の方も揃って熱演を目撃しに参りましょう。贅沢この上ない公演ですゆえ、見逃すのは大損ですよ。

(shin)

「瞬きするのも忘れて瞠目したNoism0 / Noism1「領域」新潟公演中日♪」への2件のフィードバック

  1. shinさま
    ブログアップありがとうございます!
    2日目も素晴らしかったですね!
    私の席はshinさんと逆で、初日が最前列、2日目は10列目でした。
    10列というのは私にとってはかなり後方なのですが、全体が見渡せてとてもよかったです♪
    とは言え、特に『Floating Field』は、動きが縦横無尽同時多発なので、目が忙しかったです。
    中間部は何となくロマンチックですね♡

    そして『Silentium』。ペルトの音楽に惑わされますが、なんと激しく情熱的な踊りなのでしょう!
    二人で踊り続けるという「続ける」に納得しました。
    あれは凄い! キツイですよね。
    って、初日は何を見ていたのかという感じですが、あまりにも美しくてキツさが感じられないんですよね。観ていて陶然としてしまい、あれよあれよと言う間に時は過ぎていく・・・
    今日も重力等、全く感じませんでしたが、2度目なので少しは正気になったのかな。shinさん同様ガン見いたしました。

    そして、じょうさわさんのアフタートーク、面白かったですね!
    いろいろと謎が解けてよかったです。

    初日は「うわぁ~!」で終始し、2日目は少し慣れ、さてこれからじっくり、というところで早くも楽日。やはり東京公演も見なくちゃですね♪
    でもまずは本日、最終日を堪能いたしましょう。
    皆さま、初めてでも何度目でも見逃すのは大損ですよ。
    ぜひぜひ会場にお運びくださいね!
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      早速のコメント、有難うございます。
      『Silentium』に関して、踊り「続ける」が持つ意味合いはあの演目の肝ですよね。「かけがえのないパートナーと…」と問うた質問が、ともすれば、情緒的で上滑りな答えを求める類いの質問に堕しがちなところ、金森さんは鋭く見抜きましたからね。
      ですから、「これまで共に闘ってきた同志と…」と言い換えつつ、舞台上の20分足らずは、既に消えてしまった(死んでしまった)刹那であって、「ご覧いただけてよかった」としながらも、その前も、その後も共に踊り「続ける」ことは変わることなく揺るがない。その「一端」だけがあの作品に纏めあげられたに過ぎないのだと、そんなふうに理解しております。ですから、苦しくない作品ではだめなのでしょう。
      井関さんも、(上にご紹介した通り)「舞台にはその舞踊家の人生がそのまま出てしまう」とも言っていますし。
      この中日のカーテンコールで、最初に緞帳があがったとき、大きく息を吸い込む井関さんの両頬が印象的でした。おっしゃる通り、ペルトの麻薬的なリフレインはこの作品に関する限り、かなり曲者ですね。

      そうですね、重力も。「じょうさわさん」からは全く感じ取れませんよね。でも、落下し続ける古米は「これでもか」とばかりに、常に重力を顕しにしていた訳で。
      fullmoonさんとも共通の東京の友人は、あの金色の衣裳はそう見れば、宇宙服のようにも見えたし、月や火星の表面でのダンスのようにも見えたと、ふたりが示した「無重力」振りを言い表してくれて、その通りだなと思いましたが、「ん?はて?米は落下していたしなぁ」とも思い、どう捉えてみようかと、まさに馥郁たる多義性が立ち現れてくる巧妙な仕掛けのなかに放り込まれたこの身を楽しんでいるところです。

      かたや、『Floating Field』。井関さんも山田さんも登場しない、純粋にNoism1のための作品は、浅海さんという新たな「核」を得て、舞踊家全員のその迸る若さが魅力的ですよね。不定形振りが様々に浮遊して進行していくさまは、(井関さん的な立ち位置の方を除いて、)見詰める私たちの目に眩しく映ずるものがあります。(『Silentium』の「金色」に劣らず。)

      『Silentium』、『Floating Field』、そのどちらも出演する舞踊家の「今」を目撃(し、その先を幻視)することになる演目であり、まさに「今」必見の2作品かと。
      皆さま、本日、くれぐれもお見逃しなく!
      (shin)

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