「ランチのNoism」#4:池ヶ谷奏さんの巻

メール取材日:2020/6/30(Tue.)

お待たせしました、「ランチのNoism」第4回。今回ご登場いただくのは池ヶ谷奏さん。Noism2に加わってから、今年で10年になる彼女。その間、ランチだって様々な変遷を経て、今日に至っておられる筈。そう考えると、とても興味深いものがありますよねぇ、彼女のお昼ごはん。ではでは、そろそろいってみますか。

♫ふぁいてぃん・ぴーす・あん・ろけんろぉぉぉ…♪

りゅーとぴあで公演に備える舞踊家のお昼ごはん、それが「ランチのNoism」!

皆さんの自然な笑顔が素敵過ぎます♪

 *おおっとぉ、いきなり、とびっきりチャーミングな笑顔で食事する池ヶ谷さん。その手にはあの「ねばねば」が入った白いプラ容器ですね。

1 今日のランチを簡単に説明してください。

 池ヶ谷さん「ご飯に塩昆布、野菜スープ、納豆です。日によってバラバラなのですが、今日は1番スタンダードなランチにしました」

塩昆布もありますし、納豆は単体で召し上がるようですね。

 *最初の画像で食べていたのはこちら。この日のお弁当ですね。

2 誰が作りましたか。普通、作るのにどれくらい時間をかけていますか。 (or 主にどこで買ってくるのですか。)

 池ヶ谷さん「基本的に自分で作ります。今日の野菜スープは、前日に家にあった野菜をお鍋に詰め込んだだけなので時間はかけていません。朝に温め直して、熱湯で温めた保温ポットに入れて持ってきます」

 *保温ポットも温めるんですね。それでお昼にあったかいスープをあったかいままで、美味しくいただけるんなら、その一手間、そのこだわりを惜しむことは出来ませんね。勉強になりました。で、なんでも、この日のスープ、「味付けは、玉ねぎをオリーブ油で炒めて、野菜と煮て、コンソメと塩胡椒のみで味付けしたシンプルなものです。辛いもの、苦いものなど刺激のあるものは嫌いなので、普通より薄味になります」とのこと。また、「好きな野菜はお芋とカボチャです!小松菜や玉ねぎ、人参は定番に使い、あとは余り物(今回はミニトマトやもやし、厚揚げ)など、その時々で変えて」作っているのだそうです。すると、組み合わせは無限かも。

3 ランチでいつも重視しているのはどんなことですか。

 池ヶ谷さん「Noism2の頃は公演前に痩せたい一心でキャベツの千切りにチーズを乗せたものだけを食べていたこともありました。今は納豆やサラダ、もずくなど、何かしら身体に良いものは一品用意します。通し練習など疲れるだろう日は、なるべく汁物にして流し込めるようにします」

 *「乙女」(池ヶ谷さん、今でもそうですが、)な心持ちから「プロ」の意識へ変化、って感じですかね。自分の身体が発する「声」を聴きながら過ごしてきた10年の月日は、内面も大きく変えたってことですね。

4 「これだけは外せない」というこだわりの品はありますか。

 池ヶ谷さん「ランチの包みは亀田縞(かめだじま)でできたUTOPIAの小さい風呂敷バッグを使っています。色味も可愛く、丈夫なので安心です。そしていつも、休憩で食べられるようにお菓子も忍ばせています。抹茶味の確率が高いです♪(…よく抹茶の新作が出るとジョフと情報交換しています)」

 *おっと、新潟のクリエイター・佐藤悠人さんのブランド「UTOPIA」アイテム登場。私も「UTOPIA」ユーザーだけにわかります、言ってること。ぬくもりが感じられて、いいんですよね。ですから、それって、ランチを包むには好適品かも。あと、そこから顔を覗かせているのは、「応仁の乱以来の衝撃!」っていうアレですね。

5 毎日、ランチで食べるものは大体決まっている方ですか。

 池ヶ谷さん「前日の疲れ具合や気分で変わります。帰ってから料理したいときはランチの分まで作りますし、コンビニの日もあれば、最近はりゅーとぴあ2Fに出来た『わたしの珈琲店』でホットサンドを食べたりもします」

 *「わたしの珈琲店」情報、キタァ! 私、ホットサンドとか、ナポリタンとか、美味しそうな画像満載のポスターに見とれてましたので、ますます気になるお店になっちゃいました。

こちらがその「わたしの珈琲店」♪

6 公演がある時とない時ではランチの内容を変えますか。どう変えますか。

 池ヶ谷さん「公演前は片手で食べられるおにぎりにして、ビデオチェックやメイクの準備をしながら食べたりします。あとは栄養ドリンクでドーピングです。先日の公開リハーサルの時は、たまにブームがくる高野豆腐を食べていました」 

 *やはり公演となると、文字通り、その舞台裏は大変なのですね。時間が惜しいは惜しいにしても、勿論、「ギャンブル好き」4代目サンドウィッチ侯爵の巷間伝わる逸話とは大違いな訳で。また、低カロリー・高たんぱくの栄養食品、高野豆腐を周期的に身体が欲するのも、舞踊家故かと。ところで、「ドーピング」って、なんかヤバいものじゃないですよね、なんて、民放のキャラ(刈上げ+蝶ネクタイ+半ズボンの)「キニシスギくん」みたいな言い方になってしまってスミマセン。(←今回も番組違いですね…。(汗))

7 いつもどなたと一緒に食べていますか。

 池ヶ谷さん「最近はカイ(・トミオカさん)、タイロン(・ロビンソンさん)と食べています」

 *最初の画像、一緒に良い笑顔で写ってましたもんね。仲良しグループなんですね。

8 主にどんなことを話しながら食べていますか。

 池ヶ谷さん「英語と日本語を教えあったり、文化の違いを話したり、”この動画見て〜”とシェアしたり、リハーサルとは別の話題で頭をリセットします」

 *ランチタイムを積極的に活用しているご様子。で、そんなふうにして、間仕切りを兼ねたホワイトボード記載の英単語集も増えていくのですね。Noism版「でる単」って感じですか。(「でる単」って、かなり古いんですけれど、ご存知ですかぁ?)

9 おかずの交換などしたりすることはありますか。

 池ヶ谷さん「美味しそうなおかずはレシピを教えてもらうこともあります。もずくや塩昆布、佃煮などは”何コレ?”と言われ、食べさせてみたりしたこともあります。日本の味を経験してもらえるのは嬉しいです」

 *「seaweed(海藻、直訳すると「海の雑草」)」の一種である「もずく」や「昆布」、外国の方の多くは大の苦手と承知しているのですが、反応はどうだったのでしょうか。ちょっと興味をそそられますけど…。

10 いつもおいしそうなお弁当を作ってくるのは誰ですか。 料理上手だと思うメンバーは誰ですか。

 池ヶ谷さん「先日、穣さん、さわさんのおうちでホームパーティーをしました。いつも持ち寄りで豪華なのですが、多国籍でみんな料理好きなのでどれも美味しかったです。セナ(井本星那さん)の作った春巻がお店で売っているかのように上手で美味しくて、『デパ地下か?』と疑われていました。(笑) よく作ってくるおにぎりもいつも美味しそうです」

 *おお、井本さんですか!彼女のランチも楽しみになりました、って、ハードル上げまくりでも迷惑じゃないですよね、井本さん。

こんな具合で、今回の「ランチのNoism」第4回・池ヶ谷さんの巻はおしまいです。どうもご馳走様でした。

でもでも、皆さま、その彼女がメッセージをお寄せくださってますので、お読みください。

■サポーターズの皆様へのメッセージ

「いつも私たち舞踊家を応援し、支えていただき、本当にありがとうございます!私は10年間走り続けたNoismを9月で離れます。これまで皆さんからいただいたエネルギーに助けられ、厳しくも幸せで有意義なNoism生活でした。コロナによって、こんなに踊ることを制限され、舞台がキャンセルされることがあるなんて想像もしていませんでした。それでも舞踊家たちはみんな己と勝負し、より良い舞台ができることを信じて進み続けています。今後は私もNoismを応援していく立場に変わります。舞踊家たちみんなをどうぞ支えてあげてください。 そして、残りのNoism生活も今まで以上に全力で駆け抜けます。最後までどうぞよろしくお願いします!」

…池ヶ谷さんがいなくなることから生じる寂しさ。それにも慣れていかなければなりませんが、それでも、否、それだけに、今回、「ランチのNoism」第4回・池ヶ谷さんの巻をお届けできて良かった、そう思っているところです。池ヶ谷さん、どうも有難うございました。そして、新天地での益々のご活躍をお祈りしております。

それでは今回はここまで。お相手は shin でした。

(shin)

予告あり!「近々すぐやります、インスタライブvol.3『留学時代(後編)』」とのこと♪

2020年8月1日(土)、21時から配信されたインスタライブvol.2はおふたりの「留学時代(前半)」。もうお話が盛り沢山で、一回では到底、時間が足りず、次回、後編の配信が予告されました。

で、予告された「留学時代(後編)」では、佐和子さんが髪をバッサリ切り、今の長さになったのはベジャールのときだというお話やら、同じくベジャールにまつわる、次のような謎の図についても語られるとのこと。

用意されたものの、語られずじまいだった謎過ぎる図…

「なんじゃ、こりゃあ?」(←別に「ジーパン刑事」故・松田優作風に読む必要もありませんけれど…、って、古っ!(笑))今回、辿り着かなかったものとして井関さんが取り出し、金森さんが「これ、ベジャールの…」と少し触れた途端、即座に井関さんが「ダメ、ダメ、今言っちゃダメ」と遮った謎の図。興味をかき立てられずにはいませんよね。その正体は?

… to be continued

今のところ、日時未定ですが、はっきりし次第、コメント欄にてお知らせするつもりです。楽しみに待ちましょう♪

なお、vol.2「留学時代(前半)」はこんな感じでした。ご参考まで。

(shin)

愈々、今夜!葉月劈頭に穣さん+佐和子さんインスタライブvol.2♪

愈々、今夜ですね。穣さんと佐和子さんのインスタライブの第2回♪

おふたりが17歳と16歳から始まる「留学時代」がテーマとのこと。単なる昔話にはとどまらず、「夢」を追い求める「若者」の実話として、様々な世代の人たちに興味深いお話が展開されること、間違いありませんね。今夜21時、必聴かと。

インスタの穣さんアカウントにはこちらの画像

そして佐和子さんの方にはこちらの画像

そして、トークが展開されるインスタのアカウントにはこんな素敵な画像も。トークにはこちらからもどうぞ。

只今、時刻は16時半過ぎ。あと、4時間半弱、「しばしお待ちを」って感じですかね。

(shin)

「舞踊に媒介された人の営為」(サポーター 公演感想)

☆『森優貴/金森穣 Double Bill』

 秒を刻む『クロノスカイロス1』、フーシャピンクの身体が軽やかに横切る。疾走は交錯し、その姿は後方のスクリーンに投影された。映像と鏡合わせのごとく対峙した身体は、躍動感を以て、映像は静止の瞬間の連続体であると思い出させた。高彩度の照明は幾度か全てを塗り替える。と、ふわと羽毛が落ちゆく。俊敏な身体を容した広い平面に高さが忍び込んでいた。降下時間とデジタルで刻まれゆく時間は対照的だ。だが、人が感受する時間の流れも一様ではない。

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『クロノスカイロス1』
Photo : Kishin Shinoyama

 哀切を帯びた歌声が響く『夏の名残のバラ』。スクリーン中の楽屋に女が居り、幕開け、女を追うレンズは男の手にあると知れる。一面の落ち葉は二人の足取りに翻り、ケーブルに曳かれた。女の身体は過去を追想する。街の残照のようなスリット状の光を受け、紅いドレスにドレープが連なる。寂しさを湛えながらも手の平はぱたぱた無邪気に鳴った。つと、地平が立ち上り、我々は傍観者として遠くにデュオを見、やがて客席を向いたレンズは人影を捉えない。女の目に映る光景はただ一つのものだ。

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『夏の名残のバラ』
Photo : Kishin Shinoyama

 黒衣の男は独り円形の明かりの下に在った。『FratresⅡ』、背後に相似形の巨大な影を伴い、男は両手を天に掲げる。深く腰を落とし地に迫る。ときに先んじ、また追随した影は男の生きられなかった側面だろうか。男は沈潜し、葛藤し、今を営む。ひとときの静止には彫像のごとき美しさが宿る。粒立つ光が注がれた。手首を返しては流れを受け続けた男は、静安をまとい歩み去った。

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『Fratres II』
Photo : Kishin Shinoyama

 白い眩惑に人影を見ながら『Farben』の幕が上がる。強い弦の音、天地を違えた机が出来事の緊張感を高めた。群舞に衣擦れを聞き、踊られる情動はそこここで離合集散する。額を外しゆき、桟橋を渡り、翻弄され、差し出した手に花を得た。紫色の花は、個の内奥と呼応していたのかもしれない。『森優貴/金森穣 Double Bill』に、恐るべき凝縮度の人間の営為を見た。

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『Farben』
Photo : Kishin Shinoyama

(のい)

「Noism2定期公演vol.11 Noismレパートリー感想」(サポーター 公演感想)

☆金森穣振付Noismレパートリー(Noism2定期公演vol.11より)

去年ノイズム2の公演を初めて観て、その初々しさに魅了されました。今年も研修生たちの成長を見ようと心待ちにしていましたが、期待を裏切らずハートウォーミングなひとときでした。

会場ロビーの演目表も見ず、プログラムはお手元用メガネを忘れたので読めず、幕が上がった。

ひとつの作品と疑いもせずに観ていた。面白い!身体もよく動いている。既視感はあるがなんという演目だったかなぁ。まあいいや。とにかく楽しもう。

操り人形、人間。どちらでもなさそうな物体。

休憩時にやっと三作品のオムニバスと分かった!思い込みってスゴイですね〜

『ホフマン』と『人形の家』は観てないのでそれはともかく、『NINA』もハッキリとは認識出来なかった。でも忘れるからこそ新鮮に感じられる、という事のいい例だな。

違和感なく最後まで楽しめたというのは、三作品を一つのトーンにまとめあげた山田監督の演出の力量ではないでしょうか?

『NINA』

赤い照明の下に四体の人体模型。肌色レオタードで動きがだんだんと生き物っぽく猿っぽくなって来る。既視感。

ベジャールの「春の祭典」

去年東京で、バレエ友達のおごりで東京バレエ団の春祭を観た。その後でNoism次の公演は春祭だって、と伝えたら彼女は「えっ?NINAが金森さんの春祭だと思ってた!」と言った。

なんだか納得。

最後に…

身長体型もバラバラな四体の彼女たちは涙が出るほど美しかった。

他のダンサー達もみんなキラキラ輝いてうつくしかった。

応援します。ありがとう

(たーしゃ)

SNSに新展開! 穣さん+佐和子さんインスタ共同アカウント始動♪

矢継ぎ早に繰り出される、まさにコンテンポラリー(同時代)な動き!

今度はインスタグラムに穣さんと佐和子さん共同アカウント始動の報。そして不定期にインスタライブが届けられるとのこと。楽しみが増えて、嬉しい限りですね。

そのインスタライブ、記念すべき第1回(vol.1)は来る7月25日(土)21:00からとのこと。テーマは「同業夫婦」だそう。先日、佐和子さんと小㞍さんのライブを満喫したばかりというのに、同じ週内に、今度もまた、恐らく高知から届けられる至福の時♪

皆さん、要チェックですからね。

(shin)

今度の日曜日は井関さん(with 小㞍さん)♪ @DaBY talk Live vol.6

日曜日が待ち遠しい!

今度の日曜日(2020/7/19)の夜21時、井関さんが登場するインスタLIVEの報が届きました。5月23日(土)金森さんの回の楽しい記憶もまだ新しいなか、今度は井関さんのお話が聴けます。お相手は前回同様、DaBYダンスエバンジェリスト・小㞍健太さん。楽しい予感しかありません。今回も Dance Base Yokohama のTwitterからのお知らせです。

必聴♪ 日曜日の夜の計画、見直しが必要かもしれませんね。

(shin)

Noism2定期公演vol.11楽日の余韻に浸る♪

2020年7月12日の新潟市は、時折、晴れ間が覗く曇天で、雨は小休止。湿度も低めで、案外過ごしやすい日曜日でした。昨日のソワレに続いて、この日が楽日のNoism2定期公演vol.11を観に行ってきました。

私は全4公演のうち、後半の2回を観たのですが、運良く、ダブルキャストの両方を観ることが出来ました。

『ホフマン物語』の「妻」役が前日ソワレの長澤さんから、この日は杉野さんに。

『人形の家』の「みゆき」役も、中村さんから橋本さんに、「黒衣」も坪田さんから中村さんに変わっていました。

それぞれの持ち味の違いが感じられて、嬉しかったです。

そのふたつ、回数を重ねることで、前日よりも滑らかな印象に映りました。

そして、暗転後、『Mirroring Memories』の場面転換の音楽が聞こえてきて、扇情的な「赤」の『NINA』に突入していきます。前日に観て、わかってはいても、ドキドキ鳥肌がたつ感じが襲ってきました。「これでラストだから、もう、むちゃむちゃやったれ!」みたいな気持ちで踊り切ろうという空気が感じられ、観ているこちらとしても、「頑張れ!頑張れ!」と心の中で声援を送りながら見詰めていました。そんな人、多かったと見えて、暗転後、絶妙なタイミングで思いを乗せた拍手が贈られることになりました。

15分の休憩を挟んで、山田さんの『黒い象/Black Elephant』。その「黒さ」が支配する45分間です。

自らの身体を隅々まで隈なく触れて、自己を認識することから始めて、他者或いは取り巻く世界を認識しようとする冒頭。そこからして既に断絶が待ち受けている気配が濃厚に漂います。

“Products”… ”cutting: a girl”…”少女”… ”cutting: three opinions”…”三つの言い分”… ”gossip”… ”in the dark”… ”Nobody”… ”in memory of”…、時折、暗示的な言葉が投影されるなか、いつ果てるともない音楽『On Time Out of Time』が立ち上げる、「現(うつつ)」の世界とは異質な時空で8人によるダンスは進行していきますが、焦点は容易には結ばれません。

象徴的な銀色の円柱と途中に一度挿入され、一瞬軽やかな雰囲気を連れてくる映画『Elephant Man』(ここにも象が!)からの音楽(『Pantomime』)とに、『2001年宇宙の旅』におけるモノリスとヨハン・シュトラウス『美しく青きドナウ』を連想したのは私だけでしょうか。

「そして私が知っているのは真実のほんの一部分だということにも気がつきませんでした」の台詞、そして叫び声。認識の限界或いは「不可知論」を思わせるような断片が続きますが、最後、リトアニアの賛美歌が小さく流れ出すなか、ひとり、取り出した「白い本(タブララサか?)」を円柱に立てかけると、一向に焦点を結ぶことのなかった認識の象徴とも呼ぶべき「黒い本」を愛おしむように抱きしめてじっとうずくまる人物…。暗転。

あらゆる認識もすべからく全体像に迫ることに躓き、その意味では、自分の視座からの解釈しか行い得ないというのに、認識すること/認識されることから逃れられない業を抱える私たちを慰撫するかのような優しさで締め括られるように感じました。

終演後、途切れることなく続く拍手。客電が点るまで、何度もカーテンコールが繰り返されるうちに、8人の表情が和らいでいったことをここに記しておきたいと思います。皆さん、本当にお疲れ様でした。

さて、次にNoismを目にする機会は、来月の「プレビュー公演」2 days♪ チケットは絶賛発売中です。お早めにお求めください。大きな感動が待つ舞台をどうぞお見逃しなく!

(shin)

Noism2定期公演vol.11中日ソワレを観に行く♪

前日の天気予報では雨が酷くなりそうだった2020年7月11日、土曜日の新潟市。雨は降ったりやんだり程度で、ひとまず安堵。この日の定期公演はマチソワの2公演。そのうち、ソワレ公演(18:00開演)の方を観に行きました。

入場から退場まで、幾重にも新型コロナウイルス感染症への予防措置がとられたりゅーとぴあは、この困難な時代に公演を打つことにおいて、いかなる油断もあってはならぬという意識がかたちをとったものでした。

共通ロビーからスタジオへのドア手前の
サーモカメラ曰く
「正常な体温です」
この方もカメラに収めていました
誰あろう、「芸術監督」さん♪

画像のデータで確認しますと、17:10のことです。芸術監督氏も同じ場所に立ち、管理体制の一端をカメラに収めていました。その様子をまたスマホで撮った画像を、直接、ご本人に許可を頂いて、掲載しています。「盗撮だね♪」と笑いながら、「いいですよ」と応じてくれた金森さん。有難うございます。

入場整理番号、10人ずつ検温してから
4階・スタジオBに進みます
場内で許可を得て撮りました。
隣とは3席、或いは2席とばした
「赤」の座席のみ着席可です

そうして進んだ場内で、山田勇気さんをお見かけしましたので、「やはり、『おめでとうございます』ですよね」とご挨拶すると、「そうですね。有難うございます」のお答え。

さて、前置きが長くなり過ぎました。この日の公演について記していきます。

最初の演目は、金森穣振付Noismレパートリー。昨日、及びこの日のマチネとは異なる別キャストだそうです。ダブルキャストなのですね。

見覚えのある衣裳、見覚えのあるメイク、そして聞き覚えのある音楽…、かつての名作にあり余る若さをぶつけて挑んでいくNoism2メンバーたち。今回、抜粋された場面は、どれも趣きをまったく異にする3つの場面。それらを一気に踊る訳ですから、彼ら、彼女たちにとっては、大きく飛躍するきっかけとなる筈です。

なかでも目を楽しませたのは、やはり最後に置かれた『NINA』でしょう。それも観る者の情動を激しく揺さぶり、昂ぶらせる、あの「赤」の場面です。これはもう敢闘賞もの、燃え尽きんばかりの頑張りに気分も上がりまくりでした。

15分の休憩を挟んで、プログラム後半は山田勇気さんの新作『黒い象/Black Elephant』です。

客電が落ちる前から聞こえ出す、海中、それも深海を思わせるような、たゆたうような、終わりを想像し得ない音楽のなか、照明はあるものの、暗く、黒く、不分明な舞台空間。それはいかに目を凝らそうとも、しかとは見えないような具合の色調。見ること、見えるものに疑いを抱かせるような案配とも。

「cutting(カット)」、裁断されて提示される場面の連続は、それらを繋ぐ糸、そんな「何か」を見つけようとすることを徹底して拒むかのようです。目の奥の脳を働かそうとするのではなく、目に徹して見詰めるのがよいでしょう。翻弄され続けるのみです。今回、それがテーマに適う態度というべきものかと思いました。若い8名が熱演する「決定不可能性」、魅力的です。

場内の席から、この舞台を目撃した観客を数えることはさして難しいことではありませんでした。スタジオBには35名の観客(と山田勇気さん)。収容人数の3分の1ということで設けられた上限人数マックスの観客はもれなく、「お値段以上」で、「この感動はプライスレス」とでも言うべき熱演を満喫したに違いありません。その人数からして、「耳をつんざく」とは言えぬまでも、惜しみない、心からの拍手が続いたのがその証拠です。

3日連続で、この日も200名を超えるコロナウイルス新規感染者が確認された東京。私たちを取り巻くネット環境の拡大・進展に、もうこの世界が「ボーダーレス」であるかのように感じていた私たちは、具体的な場所(トポス)の制約を受けることなく、どこにいても文化そのものにアクセス可能になったかのように錯覚してしまっていたのでしたが、具体的な身体は具体的な場所にしかあり得ず、人の移動、及び「対面」が不可避であること、「劇場」の、そのどうしようもなく不自由な性格は否定しようがないものだったことに改めて気付かされ、同時に、文化の東京一極集中は、文化そのものの中断を意味しかねない、相当に危うい事態だと思い知らされた気がします。日頃の稽古を含めて、東京から離れた場所、新潟市に拠点を置くからこそ行い得た公演、そうした側面を痛感したような次第です。

8人を追いかけて見詰める両目が歓喜に震える時間。私たちはこうした時間が好きなのでした。日本のアートシーンを考えたとき、この日の80分×2回において、間違いなく、新潟市は日本の中心にあった、そう言っても決して大袈裟ではないでしょう。居合わせる栄誉に浴した35名の至福。そんな思いに誘われるほど、久し振りに「劇場」で充実した時間に浸れたことを有り難く感じました。

若さの何たるかを観る機会となる今回の定期公演も、あと明日の一公演を残すのみで、チケットは既に完売。明日、ラストの公演をご覧になられる方は是非心ゆくまでご堪能ください。

(shin)

Noism2定期公演vol.11 初日!

*今も列島に甚大な被害をもたらし続けている「令和2年7月豪雨」。被災された方々に心よりお見舞いを申し上げますと同時に、一日も早く平穏な日常が戻ってきますようお祈り申し上げます。

2020年7月10日(金)19時のスタジオB。本来ならば、3月6,7,8日に開催されるはずだったNoism2公演。まずは本日、無事 初日が明けたことを喜びたいと思います。

とはいえ、観客はもちろんマスク着用+消毒・検温があり、座席はソーシャルディスタンスで予想以上の席数減(わずか35席)! たくさんの人に観てほしいのに…(涙)

開場前はいつも人で溢れるスタジオBのホワイエも、寂しいほどひっそりとしています… それにアフタートークも中止とのこと。残念です。

さて、開演! Noismレパートリーから、劇的舞踊『ホフマン物語』(2010年)より、『Nameless Handsー人形の家』(2008年)より、『NINA-物質化する生け贄』(2005年)より、が続けて上演されます。(20分)

目の前で躍動する眩しい身体に重なって、これらの作品を踊った何人ものメンバーたちの姿が思い出されます。

休憩15分の後は、山田勇気さんの新作『黒い象/Black Elephant』(45分)。この作品は、「私たちは何を見た/触れたのか」ということが主題になっているそうです。

ドキッとする幕開け。暗く深い闇の舞台でうごめくメンバーたち。観客は盲人になったかのようです。夢の中のような音楽(On Time Out of Time)が絶えず流れ、明るい音楽の中間部がありますが、静かに終わります。

惜しみない拍手! 『春の祭典』公開リハーサルにも出演したNoism2メンバー。一段と逞しさを増したようです♪ 4回公演もチケット完売です。座席数が少ないのが本当に残念です。 

明日からは 真打ち、shinさんが登場しますよ♪ どうぞお楽しみに!

(fullmoon)