「そうだったの?」でも「この時期があってこそ!」、そんな「Noism20年 井関佐和子、全作品を語る(12)」

前週末の11月22日(土)に、今度は金森さんが51回目のお誕生日を迎え、次週12月5日に(金)には『マレビトの歌』新潟・りゅーとぴあ公演の幕が上がるという、このタイミング、11月26日(水)にウェブ「dancedition」の連載「Noism20年 井関佐和子、全作品を語る」の第12回がアップされました。

今回、まず井関さんによって語られたのは、劇的舞踊『カルメン』(初演:2014年6月6日・新潟、神奈川、兵庫)です。SPAC(静岡県舞台芸術センター)の俳優・奥野晃士さんも出演され、「言葉」も用いられた異色作と呼べる作品でした。こちら、「Noism設立10周年記念作品」ですから、この連載が扱う「20年」も、中間点までやってきたことになります。

「入れ子構造」の語りが実に楽しい作品と言えますが、まず井関さんが明かしてくれた、台本を書く金森さんの速筆ぶりには驚きしかありませんでした。「えっ!」とか「なんと!」とかって具合に。そして井関さんパートの振付の様子にも興味深いものがありました。そんなふうにしてあの「カルメン」が見出されて、受肉していったのだなと。

しかし、鈴木忠志さんからの「ダメ出し」が続きます。「えっ!そうだったの?」あんなに楽しかったのに。そこから井関さんが語る舞台芸術の本質を、私たちも(ほんの少しですが)垣間見ることになる件(くだり)はまさに圧巻です。

続いて、「ASU-不可視への献身」の『Training Piece』『ASU』(初演:2014年12月19日・新潟、神奈川)が語られます。

『Training Piece』は、NoismバレエとNoismメソッドを目にすることが出来るという点で、当時、とても興味をそそられたのを覚えています。しかし、そこに「かなり辛いもの」があったとは!でも、読めば納得です。それはそうだな、と。

『ASU』、「不可視」の古代を舞踊を用いて再構成していこうとする意欲的で魅力的な作品です。使用された音楽、ボロット・バイルシェフ(実際、金森さんが会いに行ったとは驚き!)のCD『アルタイのカイ』ともども深く脳裏に刻みつけられています。

この頃、35歳の井関さんと40歳の金森さん。「夫婦揃って大変な時期」だったと振り返られています。とても生々しく。さきの鈴木忠志さんからの「ダメ出し」といい、「この時期があってこそ!」の「今」なのだなとの思いが込み上げて来ます。邪念も雑念もなしに、舞踊への「献身」の道を選んで、突き進んできたおふたりだからこそなのだと。それはそれで簡単なことではなかった筈です。その覚悟、その厳しさ、今は毎日のクラスの時間は絶対に削らないと、そう語られた裏に窺い知れるように思います。

今回はとても重量感のある深い内容で、何度も読み返してみる価値がある回と言えるでしょう。「Noism20年 井関佐和子、全作品を語る(12)」、是非、お読みください。

(shin)

夕方の新潟ローカル「BSN NEWS ゆうなび」、特集にて「ノイズム海外公演密着」を放送♪(2025/10/22)

この秋一番の冷え込みとなった2025年10月22日(水)でしたが、Noism界隈では熱を帯びた気持ちで夕方18:15からの新潟ローカル番組が待たれていたことは間違いないものと思われます。

10月9日(木)と10日(金)の二日間、スロベニア国立劇場での「ヴィザヴィ・ゴリツィア・ダンス・フェスティバル」の舞台に立ったNoismの面々。それを伝えた各種SNS、ある一枚の画像に、テレビカメラを構えるBSN坂井悠紀ディレクターの姿を認めた日以来、「いつか放送してくれる筈」との確信を抱いて過ごしてきたのでしたが、昨日(10月21日)になって、Noism公式が正式にこの日の「BSN NEWS ゆうなび」について告知してくれたのでした。

一地方テレビ局に過ぎないBSN新潟放送が海外公演に密着すること自体、驚くべきことかもしれませんが、敢えてそれをさせてしまうほど、Noism Company Niigataが成し遂げていることの「凄さ」が知れようと言うものでしょう。まさにシビックプライド、新潟の誇りです!

特集「Noism 6年ぶり海外公演に密着 新潟から世界へ 国境の街で喝采」は18:37からの約10分間。

まずは「日本から飛行機を乗り継いで十数時間」のスロベニア、その南西部に位置する街ノヴァ・ゴリツァの紹介から。その街は面積280平方km、人口32,012人。

今回、Noismの滞在期間は公演日を含む実質6日間。劇場入り初日(10/6)にはフェスティバル側が企画した「Noismメソッドワークショップ」があり、プロを含む地元のダンサー十数名が参加、金森さんと井関さんは講師を務める様子が流されました。

「私たちは日本人であり、私たちの伝統には、西洋文化と完全に反対の身体の使い方があります。だから私たちのカンパニーではその両方を組み合わせようとしています」(”Since we’re Japanese, and in our tradition, we have this way of using our bodies, completely opposite to the Western culture. So in our company, we try to combine both, you know.”)(金森さん)

「動きのトレーニングとその背景にある哲学を組み合わせることができて本当に素晴らしかった」(”So it was really nice for me to combine the training of the movement with the philosophy behind. So it was very cool.”)(ワークショップの参加者)

「興味は持ってくれたような気がする。ただもどかしくて。経験を重ねれば重ねるほどより教えづらくなっているよね。難しさがわかるから」(金森さん)
「わかるからね。うん」(井関さん)


…このあたりのことは先日の「さわさわ会」誕生会・懇親会でも金森さんは口にされていました。ほんの一度きりではダメなのだと。

ノヴァ・ゴリツァの歴史。第二次世界大戦後にイタリアと旧ユーゴスラビアの間に国境線が引かれ、イタリアの一部だったゴリツィアは2つに分断されてしまう。従来の市街地はイタリアに残され、スロベニア側の国境付近に計画都市として作られたのがノヴァ・ゴリツァ(=新しいゴリツィア)。両都市間を自由に行き来することが出来るようになったのは2007年だそう。

2019年に始まったこのダンス・フェスティバルは、「歴史が長きにわたって分断してきたものをダンスの力で再び結び付けられる」という考えから、そのふたつの街で開催されているもの。そして「劇場は重要な砦」とも。(同フェスティバル芸術監督ヴァルテル・ムラモル氏)

今年、このフェスティバルに参加したのは欧州を中心に20あまりのカンパニー。そのなかでアジアから招かれたのはNoismのみ。

「今回(の『マレビトの歌』)に関してはまだ劇場でやったことがないので、新潟でその時間を過ごさずに、いきなりここでやっているから大変は大変ですね」(金森さん)

Noismはこれまで11か国22都市で公演をしてきたが、新型ウイルスや国際情勢を背景に、海外からの公演依頼を受けることができず、今回、2019年の露モスクワ公演以来の海外公演となった。

「言語を用いると、その『意味』をどうしても捉えがちだし、でも(ダンスは)そこにある『身体』しかなくて、それこそ世界共通言語なのだろうと思う」(井関さん)

「(芸術とは)国境を無効化するもの。やすやすと飛び越えるもの。民族(*)・文化・宗教、それらを超越したものを探求する営みのことを芸術って言うんじゃないの」(金森さん)

『マレビトの歌』鑑賞後の観客の感想
「とても美しかったです」
「さまざまな感情が立ち上がりました」
「彼らが一体となっているところが気に入りました。一つの大きなもののように感じられました」

そして、「会場も本当に満員で、まさに本日のパフォーマンスを通じて、日本とスロベニアの方々が繋がったと思います」(駐スロベニア大使・吉田晶子氏)

「だいぶディテールが抜けていっているので、もう一度、休み明け、全部、一から動きに関しては締め直す。とはいえ無事に終わって良かったです。お疲れさん」、そうメンバーに話した金森さん。同じようなことは、これも「さわさわ会」の宴のときに聞いていましたが、全く妥協のないところはやはりいつものぶれない金森さんです。

12月の新潟と埼玉での「凱旋公演」も楽しみ過ぎますが、同時に、BSN坂井悠紀ディレクターには、Noismの新作ドキュメンタリーも期待したいところです。片道十数時間の移動プラス正味6日間の滞在を密着した訳ですし、この「10分間」でおしまいってことはないですよね。2021年に文化庁芸術祭賞テレビ・ドキュメンタリー部門で大賞を受賞した『芸術の価値~舞踊家金森穣 16年の闘い』、そしてドイツの「ワールドメディアフェスティバル2024」でドキュメンタリー部門(Documentaries: Arts and Culture)金賞受賞の『劇場にて-舞踊家 金森穣と新潟(英題:On Stage)』に続くものが見たいです、切実に♪坂井さん、そこんところ、ヨロシクってことで。

【註】民族(*): この日の「BSN NEWS ゆうなび」放送中の字幕には、「民俗」と出ましたが、それは明らかに「民族」の間違いであろうと思われますので、ここではその理解に基づいてご紹介させて貰っております。

(shin)

「dancedition」井関さんの連載第4回、様々な舞台で踊っていたNoism♪

2025年7月24日(木)、エンタメ性に富んだNPBマイナビオールスターゲーム2025第2戦を見終えてから、今度はこの日アップされたこちらを楽しみました。「dancedition」連載中の「Noism20年 井関佐和子、全作品を語る(4)」。

で、なんと!そして、なんと!サッカー!?アルビレックス新潟の試合前にも踊っていたりしたのですね!相手が横浜Fマリノスならば、金森さんの故郷・横浜のクラブですけれど、場所は「ホーム」ビッグスワンスタジアムですから、「アイシテルニイガタ」のチャントが谺したことでしょうね。とても珍しい機会だったかと。(2005年10月22日)

次いで、あの『NINA-物質化する生け贄』(初演:2005年11月25日)なのですね。鈴木忠志さんからの影響、Noismメソッドの誕生、そしてタイトルに纏わるお話、とても興味深く読みました。

「様々な舞台」、続いてはりゅーとぴあ〈能楽堂〉での「能楽堂公演」(初演:2006年2月16日)なのですね。金森さんの古い作品を上演したとのことで、『side in / side out - 1st part』、『untitled』、『Lento e Largo』、『Cantus』、『play 4:38』。とても貴重な機会だったことに相違ありませんね。

そして、井関さんが語ってくれた「お面」のお話、「身体の表情」や「面の表情」というところは、「なるほど」と頷きながら読みました。

その「Noism20年 井関佐和子、全作品を語る(4)」は下のリンクからもどうぞ。

これを書いている私にとって、Noismとの出会いはまだ先のことなので、井関さんが語るお話を文字で追いながら、イメージしてみるよりほかにないのですけれど、この後、コメント欄に、fullmoonさんも「全作品」を語ってくれる筈ですので、どうぞ併せてご覧ください。
では、fullmoonさん、よろしくお願いします。

(shin)

「革新を創り出すための伝統と継承」:井関佐和子さん出演・10/7「歌舞伎俳優十代目松本幸四郎トークショー ~疫禍に負けない文化の力〈新潟の舞踊文化と歌舞伎の魅力〉~」会員レポート

※月刊ウインド編集部、さわさわ会役員、Noismサポーターズ会員の、久志田渉さんがご寄稿くださいました。

 新潟日報主催の十代目松本幸四郎丈のトークショーに井関佐和子さんが出演すると知り、チケット発売日にメディアシップ内プレイガイドに並んだ。今や熱狂的Noismファンとして名が通りつつある私だが、実は12歳以来四半世紀となる「鬼平犯科帳」マニア。池波正太郎の影響で映画・演劇ファンとなり(シネ・ウインドに出入りする今も、池波が著書で触れた往年の名画を漁るように観たからこそ)、中村吉右衛門丈に憧れて歌舞伎座にも機会があれば足を運ぶ歌舞伎好きでもある。播磨屋びいきではあるが、その跡を継いで次期長谷川平蔵役に決まっている高麗屋・幸四郎丈(吉右衛門丈の甥にあたる。祖父・八世幸四郎は長谷川平蔵の風貌のモデルであり、初代を演じた)の姿を間近に観たいという思いがあった。


 第一部は鼎談「おどり・歌舞伎・NIIGATA」。早稲田大学演劇博物館招聘研究員・鈴木英一氏(常磐津和英太夫 新潟日報カルチャースクールの講師を務めたことが、このトークショー開催のきっかけとなった)の進行で、幸四郎丈、井関さん、七代目 市山七十郞さんが登壇。りゅーとぴあの印象から始まり、『越後獅子』といった新潟縁の古典舞踊など話題は多岐に渡った。井関さんが「人生で4回舞台で泣いたことがある。そのひとつが歌舞伎。憧れが強い」と語り、「その舞台に私が立っていたか気になって」と返す幸四郎丈に笑いが起こる(実際は片岡仁左衛門丈と坂東玉三郎丈の舞台だったとのこと)。


 印象深いのは井関さんが語るNoismメソッドやNoismバレエなど基礎訓練に興味津々な幸四郎丈の姿。西洋舞踊の「垂直」「天」を意識する性質と、「重力」を重視する東洋・和の舞踊を取り入れ、拮抗するエネルギーを感じるNoismならではの鍛練。「歌舞伎は配役されて初めて。『いつか演じたいから』と教わる機会は、まずない。その演目を通して教わることが稽古だから、ある部分だけを鍛練することはない」「(天と地、相反する力を意識することで)宙に浮いたりしませんか?」と幸四郎丈。ユーモアを交えつつも、真摯に問いかける眼差しがあった。


 Noismと日舞の共通性も興味深い。狐の面を付けた後頭部を正面にして舞う日本舞踊「うしろ面」と、黒衣の後頭部に付けた面を正面に演じるNoism作品。化粧や華美な衣装を付けずに舞う「素踊り」と、肌色のタイツだけで舞うNoism。「バレエなど他ジャンルの要素を取り入れて昇華する。真似るだけでは、本物に敵うわけがない」という幸四郎丈に、ミュージカルやシェイクスピア劇に挑んだ八代目・九代目幸四郎丈の姿が重なる。


 コロナ禍中も「劇場専属舞踊団」として舞踊に向き合えた「幸せ」を語り、「こうした形が日本中の劇場に広がってほしい」と願う井関さん。古町の花街が置かれた苦しさを指摘する七十郞さん。そして「歌舞伎座は昨年8月以来、公演を続けている。その賛否もあるだろうし、足が遠のいている方もいるだろう。だが『公演をする・しない』ではなく『する為にどうするか』を考えている。歩みを止めたくない」と強調した幸四郎丈。歌舞伎・日本舞踊・現代舞踊という「枠」など軽々と越えて、舞台に生きる三人それぞれの矜持が、溢れるようだった。 


 第二部は幸四郎丈と鈴木氏による「世界文化遺産・歌舞伎の魅力~歌舞伎の〈笑い〉について」。小柄ながら「勧進帳役者」と呼ばれる程に弁慶を当たり役とした七代目、柔和にテレビを見ていた姿が印象的ながら、白鸚襲名後二ヶ月後に亡くなった八代目、「直感の人」という印象に反し、膨大な蔵書から得た知識を詰め込んでいる父・九代目(当代松本白鸚)。歴代幸四郎について語る幸四郎丈の肉声は、歌舞伎ファンにとって感慨深い。渋谷で、コンテンポラリーダンサーと共作しているダンス公演の映像紹介や、歌舞伎ならではの笑い方指南、ザ・ドリフターズの元付き人・すわ親治の「ねこ車との社交ダンス」ネタを取り入れた公演など、濃密な話題の連続だった。


 終演後、さわさわ会会長の齋藤正行さん(シネ・ウインド代表)が「面白かったよ。コロナで公演が無ければ、歌舞伎役者は収入が無いんだね。だからそれぞれの家がプロダクションになり、芸を伝承するんだ」と呟き、「柳都会」で小林十市さんがベジャールからどのように指導されたかを熱心に尋ねる金森穣さんの姿を思い出していたことも印象に残る。伝統を絶やさず、観客に届けること。それを背骨に、新しいものを創造すること。Noismの本拠地で聞いた幸四郎丈の言葉を、じっくりと反芻したい。


(久志田渉)

10/7 山本能楽堂 「能とNoism」 会員レポート

サポーターズ会員の、のい(neuesach)さんが、「能とNoism」をレポートしてくださいました!
どうぞお読みください。
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先日、山本能楽堂にて開催された「能とノイズム」に行ってきました。(https://noism.jp/npe/noh_noism/

開催の経緯については、既にNoism公式ページ等々で触れられていますが、ルーマニア、シビウ国際演劇祭が契機となったものです。
以下、半ば覚書のような形ではありますが、一部内容をお伝えします。
雰囲気の断片でも伝われば幸いです。

Noismメソッド実演

冒頭、Noismを知っている方は挙手を……という呼びかけに応じて、客席過半数の手が上がり、安堵する金森さん。
金森さんは帰国後、いかに日本人であるかと痛感し、東西の舞踊について勉強し、”私”という身体のありようを追求していると述べられました。

そして、現代の弛緩した身体に、いかに緊張感を召還するかという実践として、Noismメソッドを作ったという説明のあと、実演が行われました。
まず、井関さんが、耳をたてる。
その様子を見て客席にどよめきが広がります。
そして、肩-肘と、逆のスパイラルを形成し、相反する方向性をひとつの身体に落とし込むことで、張りのある身体を提示してみせる。
Noismメソッドを通して、フォルムではなく構造を理解することが重要と語りながら、井関さんのポーズが次々に遷移していきます。

実演をしながらも金森さんは饒舌です。
“コンテンポラリーダンス”の広まりにより、専門性をもたない身体が舞台上にあらわれた。
このことによりコンテンポラリーすなわち何でもありという認識を産んでしまった。
日々トレーニングしなければ培えない身体を以って、これから50年100年経過する際の通過点としての文化のつなぎでありたい。

今回、能舞台でのデモンストレーションであるため、お二人とも白足袋を履いていました。
床に寝てもいいというところまでは事前に確認を取ってあり、井関さんが、横たわった姿勢から踵を支点にし、身体の垂直軸を保ったまま起き上がります。
支持する金森さんの手に、常とは違う身体の緊張が伝わったのか「滑るね?」と一言。

また「下、瓶(かめ)があるんですよね?」と山本さんに確認しながら、やや躊躇をもって、しかし床を強く踏む。
音の響きを確かめるような金森さんの表情が印象的でした。

■仕舞「高砂」「敦盛」「熊野(ゆや)」「殺生石」の実演

続いて、山本章弘さんらによる仕舞の実演が行われます。
強い独特な発音の謡、扇子の有/無と開/閉からなる表現の違い、泣く仕草でも(武士道の影響で)肘を張った所作となっていること、当たり前のように進行する一人二役、回転と跳躍という激しい動き等々、特徴的な仕舞が次々に演じられました。
短い時間ながらも、歴史が磨き上げた洗練がもたらした制約の中での、強靭な身体性と豊かな世界観を見せつけられました。

とはいえ、山本さんの語り口は柔らかです。
先程の泣く仕草を、「みなさんもやってみてください」と観客を巻き込み、一通り客席を見渡して「これでマスターできましたね、消費税が10%になったらやってみてください」、と日常を滑り込ませる融通無碍ぶりです。

■クロストーク

Noismメソッド、仕舞の実演を踏まえて、モデレーターに佐々木雅幸さんを迎えてクロストークが始まります。
(以下、敬称省略します)

山本:Noismメソッドを行う金森さん井関さんの姿を見ていて、舞台人としての絆を感じた。
身体能力のすごさがあった。

金森: 仕舞を初めて観た。
肘をはる動作は武士道に由来するというが、張るという点はNoismメソッドとも共通する。

佐々木:鈴木メソッド(※)でも能の動きを参照している。
(※バイオリンの方ではなく、鈴木忠志(SCOT)の提唱するメソッド)

金森 :動かない時の身体のありようの基礎を見出さなければならない。
私は西洋においてはベジャール、東洋においては鈴木忠志に衝撃をうけた。

佐々木:二人を越えてゆく?

金森:越えるというか、生き方、取り組み方、精神のあり様をみている。

佐々木:(実演をしながら言った)歴史性、つまりこれから50年100年経過する際の通過点であるというのは印象的だった。

山本: 我々は、先人が演じたものに無駄はないということを言う。
安易に変えるよりも伝えられたものを演じていくことが重要。
特に退場する時は気をつかう。
個人の気持ちはいれずフラットに演じるようにしている。

佐々木: すっと立つ、行間、余白から受け取れるものがある。
訓練ではなく経験によるものなのかもしれない。

山本:老女の役はハードルが高い。異性であるし、ふとしたところで普段が出てしまう。
少しひいたところから自分の姿を見ることを、離見の見とも言う。

佐々木:クラシックとの関係はどうか。
西洋では科学的・合理的・医学的なアプローチがあり、ルイ14世の庇護下でバレエのトレーニング方法が残った。
それに対し、東洋では河合隼雄がいうような暗黙知というか、言語化できない空洞の美、空間に対する認識がある。

金森: 能では、背面に鏡板がある奥深さがあり、神がいる。
一方、西洋では背面はコールドなのは対照的。

佐々木: 暗黙知と形式知のバランスがある。近年のダイバシティという概念があるが、何でもありとは違う。
コンテンポラリーが壊した何かを、改めて出すことは「守破離」に通じるのでは?

山本:能で一番難しいのは静止している演技。面をつけると距離感がルーズになる。
天狗がひどくゆっくり動く動作があるが、上空を飛行機が飛んでいるような距離感である。
これには何の説明もない、観客に媚びないということ。
獅子の役で板に飛び乗り10秒ほど静止する動作は非常に緊張する。
自分の身体はぐらぐらとしているのではないかと思えるが、そんなことはない。

金森:謡っている時の身体性、声を出すことによる変化は身体に及んでいる。
能での足踏みは、地霊を鎮めつつ、目にみえないものを喚起しているのではないか。
空間が、身体に先立って在るのは東洋的だといえる。
現代の身体は、何を失っているのか。
西洋なら半身アンドロイドはあると思う、東洋では成立しないのではないか。

佐々木: 西洋ではコロス(※)との分業が成立した。
(※古代ギリシャ劇の合唱隊のこと。劇の状況の説明や、語られなかった心情の補足をするなど、劇の進行を助けた。)
SPACの宮城聰のアプローチなどもある。
分離しないことが能の豊かさにあるのではないか。

山本:ある時、LED照明をいれ、実験的な試みとして藤本隆行
(dumb type)とコラボした。
光の色合いを暖色にするとか、時空を照明で表現していた。
能では、面自体が演出家といえる。

佐々木:オペラハウスで能の演目をみたことがあるが、舞台の作りの違いが大きい。
シビウでは能とNoismの関係について聞かれた。
西洋ならコラボして当たり前という認識だった。

金森:コラボレーションは好きではない。
企画者と当事者の温度差があり、合わないのでは。

山本: 過去に能のコラボの例をみたことがあるが、不自然でありどことなく笑えてしまった。
能楽者は不器用であり、ハードルが高い。

客席:
東西の舞踊について話を伺ってきたが、舞踏について言及がなかった。
劇作家太田省吾言うところの、作品の社会性と関連するのでは。

金森: 舞踏の土方巽の身体は非西洋的な身体である。
山海塾や大駱駝艦はあるが、振りきったものであったがゆえに浸透していかなかった。
舞踏はむしろ舞踊家ではなく鈴木忠司、寺山修司といった60年台の演劇人に継承された。
太田省吾については読み物でしか知らないが、社会性とは、了解されているものを拠り所にしている。
実は身体は社会性に非常に束縛されている。
また、舞踊がいかに社会性を獲得できるか考えている。

山本: 能の覚え方というのは、口伝、体験によるものが大きい。
たしなむというか、継続の要素があり堆積したものである。

金森:コラボをするならワークショップから取り組むのがいいかもしれない。

佐々木: りゅーとぴあとは柳、柳都に由来するもの。
これからの発展をみていきたい。

今回、Noismメソッド、仕舞の実演のみならず、予定調和にとどまらないトークと、非常に示唆に富んだ時間となりました。
今後も、舞台公演以外の展開も追わなねばならないと再認識した一日でした。

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のいさん、詳細レポート、どうもありがとうございました!

のいさんは、Noismに関するtogetterもしてくださっています。
こちらもどうぞご覧ください♪
https://togetter.com/id/neuesach

(fullmoon)

「ゲンロン利賀セミナーに参加してきました」

ゲンロン利賀セミナーに参加されたneuesachさんのレポートです♪

「去る9月10日~12日に渡り、富山県利賀芸術公園で開催された、ゲンロン利賀セミナー2016「幽霊的身体を表現する」に参加してきました。http://school.genron.co.jp/seminars/

金森氏によるプレゼンが行われた初日の模様を、かいつまんでご紹介します。

利賀芸術公園に到着し、昼食後にまず劇団SCOT舞台の稽古を見学しました。鈴木忠志氏の計らいにより、完成間近の「エレクトラ」と「かちかち山」の対照的な2作品の稽古を立て続けに鑑賞しました。演者のネイティブの言語で発声されることばの現前性と、身体が醸すエネルギーに圧倒されます。

稽古の見学後は「情報時代の身体表現」と題した講義が行われました。梅沢和木氏により、ネット上にある画像を集積して作られる作品の制作過程の様子が紹介されます。またビートマニアのプレイを交えたコントローラーの打鍵、タッチパネルの画面スワイプ、マウスクリックなどを例にとって、指先に集中する微細な身体感覚について述べられました。

続く金森穣氏のプレゼンは、スライド使用して、Noismの紹介から始まります。Noismのロゴが高嶺格氏によるデザインであることNoismとはNo-ism、即ち無主義であることなどが説明されました。

さらにセミナーのテーマである「幽霊的」という事に絡め、東京で公演を行わず、新潟という地方都市で活動していると中央の批評家などには顧みられない現状がある。つまり幽霊と見做されると言及されました。

その後「SHIKAKU」、「NINA」、「NamelessHands」の過去の作品がテーマを交えて紹介されてゆきます。

さらに、ダンスにおける「西洋」という幽霊に対し、模倣でもなく、対抗でもない実践の方法としてNoismメソッドが紹介され、井関佐和子さんをモデルにした実演が行われました。身体にハリを作り、内在しているベクトルの拮抗関係とそれが開放されたときのエネルギーが動作として可視化されます。(以前、国立新美術館講堂でご覧になった方もおられるかもしれませんが)床に横たわった状態から身体の軸を真っ直ぐにしたままスっと起き上がる様を目の当たりにし、会場からはどよめきが起こっていました。

両氏のプレゼンを受けて、梅沢、金森両氏を含めた登壇者(大澤真幸氏、佐々木敦氏、東浩紀氏)による討議が進んでいきました。討議の中で金森氏は、Noismメソッドは最初は皮膚感覚を意識することから始まること。自身がヨーロッパに行っていた時期は、自己批判をしている西洋を見てきたこと。日本において、お稽古文化としてのダンスを脱し、西洋の後追いでもなく、対立軸としてでもなく、人類がこれだけのものを創造したという専門的な身体表現を確立させたいと述べておられました。

Hisilicon K3

講義終了後は懇親会が催され、そこかしこで受講生に囲まれる講師の姿が見られました。このまま一日目が終わるかに思えたところで、平田オリザ氏が到着され、ワークショップの課題や作成の方法についての説明がホワイトボードに描きだされていきます。

緊張感を呼び覚まされながらも好奇心を充溢させていった初日の夜でした。

セミナー参加者などによるツイートのまとめはこちらからご覧になれます。http://togetter.com/li/1023920

(neuesach)  」

neuesachさん、どうもありがとうございました! 貴重な体験レポート、うれしいですね♪

さて、あさって24日(土)は鳥取(米子)でバヤデール大千秋楽、そしてその後すぐ、10月7日(金)は「愛と精霊の家」新潟公演です! 早いですね。どうぞお運びください。

24日(土)はNHK Eテレで、22:00-23:00、建築家 田根剛さんの対談番組もあります。

そして、9月30日(金)19:00-21:00、両公演に出演する俳優、おくぬ~こと、奥野晃士さんのリーディングイベントが新潟市古町6の「パルム」で開催予定です。詳細はまたこのブログでお知らせしますね。こちらもどうぞお楽しみに!  (fullmoon)