「円環」トリプルビル、新潟公演中日も客席を魅了♪

12月14日(土)、新潟市界隈は冬っぽくはあっても、「円環」公演の時間帯には雪はおろか、雨も落ちてきてはいずに、その意味では大助かりだった訳ですが、「大動脈」新新バイパス上で2件の事故があったお陰で、開演時間(17時)までにりゅーとぴあに辿り着くことが出来るか、ホント冷や汗ものの移動となったのは私だけではなかったのではないでしょうか。何とか滑り込みセーフで事なきを得ましたけれど、もう気が気ではありませんでした。

ホワイエでは、前日撮影しないでしまった「物販」コーナーの写真を撮らせていただきたいと思っていましたから、まずはそこを押さえることが出来て、自分に課したミッションクリア、でめでたし、めでたしでした。(休憩時間には、本日お越しになられていた花角知事が20周年記念冊子をお買い求めになる場面に遭遇しました。やっぱり、アレいいですよ、お洒落そのもので。2,000円はマストバイのアイテムかと。)

入場時に手渡される公演パンフレットと各種チラシの束のなかには、私たち NoismサポーターズUnofficial 製作の「サポーターズ・インフォメーション」の第11号も含まれております。力を込めてつくっておりますので、是非ご覧いただき、仲間に加わっていただけたなら嬉しく思います。

移動のドキドキから解放され、落ち着きを取り戻して客席から見詰めた「円環」トリプルビルの新潟公演中日の舞台は、この日もまさに会心の出来栄え。すっかり心を鷲掴みにされてしまうことになります。

まだまだ先の長い公演日程に鑑み、3つの演目について詳述することは致しませんが、最初の演目、金森さん演出振付で、金森さん+Noism1の『過ぎゆく時の中で』と二つ目の近藤良平さん演出振付のNoism1『にんげんしかく』が肌合いを異にするように感じられるのは、ある意味、容易に頷けるにしても、最後の『Suspended Garden - 宙吊りの庭』がまた同じ金森作品でも、『過ぎゆく…』とは別種の風情を湛えた作品であることも一見して明らかでしょう。
そして、それと同時に、昨日も今日も見終えたときに感じたのは、そうした相異なる3作品が、不思議に繋がり合っているようだということでした。それこそ、まさに「円環」。舞踊の多様性と奥深さに同時に触れ得た気がした次第です。そのあたりのこと、皆さんはどうお感じになられたでしょうか。コメント欄に書き込みいただけたりしたら嬉しいです。

ここからはこの日の終演後に行われたアウタートークについて、かいつまんでご紹介していこうと思います。この日の登壇者は、三つ目の演目を踊られた井関佐和子さん、山田勇気さん、宮河愛一郎さんと中川賢さんでした。
踊り終えたばかりの4人が着替えてクールダウンするまでの間の「場つなぎ」として金森さんが登場して、そのまま進行を務めたのですが、今公演は、井関さんが方向性を定め、構成を決めるプロデューサー兼出演者であったことを再度、念押しされたことも併せて記しておきます。

Q:(井関さんに)今回、近藤良平さんを招聘した理由について
 -A(井関さん):「Noism1メンバーのことを常々考えている。何が足りていないか。彼らの現在の問題も良さも個性も、どの振付家が来ても出てしまうし、自分が見る限り、新しい発見はない。近藤さんをお呼びしたことで自ら気付いて貰う機会にして、成長して欲しいという思いがある」

Q:(宮河さん・中川さんに)久し振りにNoismの舞台に出て感じたこと
 -A(宮河さん):「リハーサルに時間をかけられる環境。とことん深めていく作業、久し振り」
 -A(中川さん):「流れていたところに、また違う流れという感じ」

Q:新潟での12月の公演は厳しい。11月にならないか?
 -A(井関さん):「確かに12月は自分たちも寒くて厳しい(笑)。今回もクリエイションが始まった頃は晴れた秋空だったのが曇り空になり、段々、『新潟』の空になってきた。検討してみます」

Q:新潟で美味しいと思う食べ物は?
 -A(山田さん):「刺身。自分は北海道生まれなのだが、新潟が一番美味しいと思う」
 -A(中川さん):「タレカツ」
 -A(宮河さん):「居酒屋しののめさんのとりカツ」
 -A(井関さん):「お米」

Q:ダンスを始めたきっかけは?
 -A(山田さん):「大学に入ってから。ダンス甲子園とか深夜番組でヒップホップが流行っていて、ストリートダンスをやっていたが、大学のダンス部では違うモダンダンスをやっていた」
 -A(中川さん):「姉が現代舞踊(モダンダンス)をやっていたことから」
 -A(宮河さん):「応援団に入っていたり、バレエやジャズダンスなどから。マイケル・ジャクソンとかダンス甲子園とかの頃」
 -A(井関さん)「3歳で踊り始めたので、記憶がない」

Q:舞台芸術を裏で支える人になりたい。求めていることは?
 -A(井関さん):「是非、ウチに。状況であったり、何が求められているかであったりを把握できること。機転が利いて、その瞬間を生きること」

Q:どうやって動きを合わせていたのか。呼吸?カウント?
 -A(宮河さん):「場所によって違う。カウントのところもあれば、デュエットは呼吸」
 -A(井関さん):「結構、カウントは決まっていたが、重要なところはカウントではなくなってきた。アン(=トン・タッ・アンさん)の音楽に呼吸を感じる」

Q:リノリウムに画像が映されるのは踊り難かったりしないか?
 -A(宮河さん):「テンションがあがるが、画像が動くと目印が動いて惑わされることも」
 -A(中川さん):「自分は踊り難くはない。テンションあがる」
 -A(山田さん):「デジタルの画像なので、細かいグリッドが見える。客席からは綺麗に見えるようになっている」
 -進行役・金森さん「そうなんだよね。客席からの見え方で作っている」

Q:海外公演、どの国で行いたいか?
 -A(井関さん):「スイス。自分がいたところであり、欧州でも違う国なので。そしてフランス。舞踊に厳しい国で、今、金森作品を持っていったら、どう感じて貰えるか興味がある。是非、連れて行ってください」

Q:お気に入りのポーズは?
 -A(山田さん):「手を繋いで斜め一列になるところ。深いプリエをする。頑張っているなぁと思って好き」
 -A(宮河さん):「佐和子(=井関さん)をリフトして止まるところ。うまく入ると気持ちいい。やってやるぞと」
 -A(中川さん):「ポーズではないが、4人が揃っているとき」
 -A(井関さん):「奥で全員集まって、顔を見るところが好きな瞬間。いい瞬間だなと」

Q:これまでの衣裳で、一番の好みは?
 -A(中川さん)「ISSEY MIYAKEとか白の全身タイツとか印象に残っている」
 -A(宮河さん)「『中国の不思議な役人』の布団。布団風ではなくて、めちゃめちゃ重かった」
 -A(山田さん):「今回のは凄く好き。違和感がない」
 -A(井関さん):「『夏の名残のバラ』の堂本教子さんによる赤いドレス」

Q:(宮河さん・中川さんに):久し振りに金森作品を踊っての感想
 -A(宮河さん):「今でもまだ信じられない。戻ってくることがあるとは思っていなかった。クリエイションが始まったときから笑いがとまらない。今でも本当なのか疑っているほど信じられない経験。心が追い付かないくらい嬉しい」
 -A(中川さん):「昔、自分は穣さんの作品に出たくてNoismに来た。その頃、メンバーにならなければ穣さんの作品は踊れなかったから。今、ひとりの中川賢として踊っている。メンバーだった自分がいてよかった」

Q:アンさんの素晴らしい音楽を踊っての感想
 -A(井関さん):「アンの音楽は導いてくれる。幾つものレイヤーがあって、その都度、耳に入ってくる音が違う。日本(新潟)に来てくれて、調整してくれた音はまた全く違って聞こえてきた」
 -A(宮河さん):「母の作るシチューが安心感あるのに似ている」
 -A(中川さん):「純粋にいい音楽だなと。最初のピアノの4つの音、もはや聴きたくなっちゃっている」
 -A(山田さん):「アンの音楽は変わっていない。聴いた瞬間、『ああ、アンだな』と思った」

Q:年齢による踊りの変化、どう感じているか?
 -A(山田さん):「色々経験を重ねて、見える部分増えたが、今回、同じ釜の飯を食ってきたこのメンバーで踊って、話さなくても、身体的にわかる。このメンバーでやることに安心感があり、広い心で舞台に立つことが出来た」
 -A(中川さん):「環境によって、果たすべき役割は違う。一緒に長くやってきたことは貴重」
 -A(宮河さん):「年をとることは嫌なことだと思ってきたが、ここ1、2年は違う。父が亡くなったり、怪我をしたりしたことがダブって見えてきた。経験を重ねることで見えるものも増えていて、年をとるのも悪いことではないなと」
 -A(井関さん):「(金森さんも含めて)5人の年齢を合わせると200歳を超える(笑)。舞台に立つ心持ちが変化した。ただ単純に『自分を見て欲しい』ではなくて、どう人と繋がっていくか。これから年をとっていくことが楽しみ。このふたり(宮河さんと中川さん)はずっと身体と向き合っているから呼んで欲しいと思った。年齢を重ねても進化出来る。自分自身に期待している」

最後に、金森さんから、新潟楽日は当日券の余裕もあり、もう一度観たいという方は是非に、とのお誘いなどがなされ、大きな拍手のなか、この日のアフタートークが締め括られました。

…大体、そんな感じでしたかね。以上、報告とさせて頂きます。

そしてこれを書いているのは、その新潟楽日の未明。半日後にはその舞台もほぼ最終盤に差し掛かっている筈、というそんな時間。本日が新潟で今公演を観る最後の機会。
皆さんも「円環」よろしく、素晴らし過ぎる「非日常」が待つりゅーとぴあ〈劇場〉への「円環」を企ててみませんか。Noismロスになる前にもう一度。
私?もちのろんです♪って、年を重ねた観客がここにもひとり。皆さんも是非♪

(shin)

なんという豊かさ!なんて素敵な宵!Noism0 / Noism1「円環」新潟公演初日♪

奇しくも、一般的には不吉とされる日にちと曜日の組み合わせであった12月13日(金)、新潟市のりゅーとぴあ〈劇場〉には、逆にこの日を待ちに待った者たちが18時をまわった頃から冷たい雨すら厭うことなく、続々集まってきました。

Noism0 / Noism1「円環」新潟公演初日、近藤良平さんを招聘してのこのトリプルビルは、国際活動部門芸術監督の井関さんが「自信をもってお届けする」と語ってきた豊かさで早くから評判を呼んでいましたが、なるほど、舞踊の多様性や奥深さを示す、まさに「目にご馳走」のラインナップと言えるものでした。

開演時間の19時を迎えます。まずはNosim0+Noism1『過ぎゆく時の中で』(約15分)。こちらは2021年のサラダ音楽祭で初演された作品の劇場版であり、新潟市初登場となる演目です。疾駆するかのようなジョン・アダムズの音楽(『The Chairman Dances』)に乗って、駆け足で、或いは、ゆっくりスローモーションのように、舞台を下手(しもて)から上手(かみて)へ、或いは、その逆に動いていく身体たちが未来への思いや、過去への追想を描き出し、「時」の流れが可視化されていきます。永遠の相のもとに…。
この作品でNoism1のメンバーと一緒に踊る金森さんの姿はこれまでに目にしてきたどの金森さんとも違う空気感を出していて、そこも見どころと言えるかと思います。

一回目の休憩は10分。それを挟んで、二つ目の演目は、かつての『箱入り娘』(2015)のメインビジュアルと相通じる感もある、近藤良平さん演出振付のNoism1『にんげんしかく』(約35分)です。さすがは近藤さん、奇抜!まさにその一語なのですが、そこは磨かれた身体性のNoism1メンバーたちのことですから、「ちょっと苦労させてみたかった」思いの近藤さんを相手に、「段ボールとの格闘日記」の末、もう充分「段ボール専門家(!)」といった風情を漲らせて舞台狭しと踊ります。ですから、無地の矩形で代替可能でしかない段ボールの一つひとつが、中や脇で踊る各メンバーの個性を帯びて見えてくる不思議な感覚にも出会いました。
観る者を武装解除させずにはいない内橋和久さんによるダクソフォンの音楽も相俟り、10人のそのとても楽しそうな様子が客席にも伝播していく、笑いに満ちた「生命賛歌」と言ってよい会心作です。

20分間の二回目の休憩ののち、三つ目の演目がNoism0『Suspended Garden - 宙吊りの庭』(約35分)、金森さん演出の新作で、元Noismの宮河愛一郎さんと中川賢さんが、井関さんと山田さんと一緒にトン・タッ・アンさんによるこの上なく繊細な響きの音楽を踊る、これもまた注目作品です。こちら、同じ金森作品でも、最初の『過ぎゆく時の中で』とは全く趣を異にし、息を呑むほど美しい作品で、その点では、『夏の名残のバラ』(2019)を彷彿とさせるものがありますし、登場するトルソーも、同『夏の名残のバラ』のカメラコード、『Near Far Here』(2021)のアクリル板がそうであったように、舞踊家と一緒に踊っているのを見ることになるでしょう。更に、そのトルソーと人形振りという点からも多くの過去作と呼び交わすものがあることは言うまでもありません。
そこに黒い衣裳の宮河さんには『ZAZA』(2013)の、中川さんの背中には『ラ・バヤデール - 幻の国』(2016)のそれぞれ記憶が回帰しました。(個人的な印象ですが。)瞬きするのさえ惜しいほど、それだけで「尊い」のですが、初めてふたりを観る方も心配ご無用、熟練の舞踊家が醸し出す色気は誰の目にも明らかでしょうから。

このトリプルビル、なんという豊かさであることでしょうか!3作品、それぞれ持ち味を異にするラインナップで、どの演目にも大きな拍手と「ブラボー!」の声が送られたことは言うまでもありません。

終演後、金森さんと近藤さんが登壇して、Noismスタッフ・上杉晴香さんによる手際のよい進行のもと、アフタートークが行われました。で、冒頭、その上杉さんから、動画ではなく、写真であるならば撮影して構わないと告げられたことも嬉しい事柄でした。
以下にこの日のやりとりから、おふたりの回答中心にまとめて少しご紹介します。

Q:『にんげんしかく』の段ボールについて
 -A(近藤さん):「燕三条で買ったもの。『何でこんなに買うんですか?』と訊かれたが、細かいサイズ指定をして買った」「自分の目の高さちょうどのところに小さな穴がふたつ開けてあって、そこから見ている」「箱の中に持ち手などはない。付けるのは邪道」「横に倒れるのは怖い。訓練が必要」「勿論、自分も入ってみた」
 -金森さん:「俺は(入ったことは)ないよ」
 -近藤さん:「でも、誰もいないところで、こっそり入ってたりして(笑)」「みなさんもMy段ボール用意して入ってみてください。いいですよ(笑)」

Q:コンドルズに振り付けるときとの違いは?
 -A(近藤さん):「基本的にはない。生き生きするその人なりの方法を探すのは同じ。調子に乗ってくるとダメだし、あんまり上手くなられるのも困る」

Q:コンドルズの次の新潟公演の予定は?
 -A(近藤さん):「コンドルズは今、28周年。来年が29周年。で、30年、やっぱりめでたいじゃないですか。そのときが一番かなあ」

Q:『にんげんしかく』のお題にある「88%星」にはどこかの国のイメージあるのか?
 -A(近藤さん):「架空の星。星新一に出てくるような。衣裳は、お題にある『一張羅』という投げ掛けにより、段ボールを被ることもまだ知らされていなかった頃、まさか舞台で着ることになるとは思わずにメンバーが描いたデザイン画によるもの。絵はあまり上手くなかったものの、それが結構な精度で出来上がってきた」
*このあたりを巡っては、公演プログラムにこの度のプロダクションについての情報も沢山掲載されていますので、鑑賞前に目を通されておくのもいいですね。(私はしませんでしたけれど…(汗)

Q:『にんげんしかく』にはNoism旗揚げ時の『SHIKAKU』への意識あったか?
 -A(近藤さん):「自分のなかで途中で浮かんできてびっくりした。同じようなこと考えてるんだなと」

Q:(近藤さんに)Noismを振り付けたことについて
 -A(近藤さん):「金森さんのしっかり線を引く作り方、ちょっとだけ憧れる。イメージはあるが、そんなふうに作れない。でも、似ている部分はある。男の子だし(笑)」
 -金森さん:「えっ、そこ?」
 -進行・上杉さん:「聞こえてきたメンバーの話として、近藤さんは奔放なようでいて、凄くストイック。自由が如何に難しいか感じたと」

Q:舞踊家を目指す者として、若いうちに経験すべきことは?
 -A(近藤さん):「無謀なこと。む・ぼ・う」
 -A(金森さん):「出来るだけ色々なことを自分の肌で体験すること」

Q:一緒に創作をしたい団体あるか?
 -A(近藤さん):「団体ではなくて、動物に振り付けたい。概念変えなきゃいけないけど」
 -A(金森さん):「特に団体はない。Noismがもっと豊かになって、色々なことが出来るようになればということしか考えていない」

Q:『Suspended Garden - 宙吊りの庭』の振り付けについて
 -A(金森さん):「(『NINA』は振付が先行だったが、)今回は曲が先行。アンさんは4人のことをよく知っているから、聴きながらインスピレーションを得て、振り付けた。観念の他者がいることで、あり得たかもしれない未来やあり得たかもしれない過去を生きるものに」

Q:金森さんが取材協力した恩田陸さんの小説『spring(スプリング)』と創作について
 -A(金森さん):「難しい質問。でも、恩田さんのフィクションだから、『ああ、そうそう』ってところもあるし、『率直に言うと、そうじゃないんだけど』ってところもある。舞台芸術には、舞踊の当事者だからこそ不思議だなという感覚がある。また、本を読んでいろんなイメージをしながら観ていることについても、舞台芸術って良いものだなと思う」
 -進行・上杉さん:「恩田さんは今日は来られていないが、よく観に来てくれては、新潟に泊まってお酒や美味しいものを楽しんでいかれる」
 -金森さん:「チョコを差し入れしてくれる」


…と、そんな感じでしたでしょうか。

で、ここで、個人的な内容で恐縮なのですが、ちょっとだけ書かせて貰いたいことがありまして。それは、今回の「円環」トリプルビル中、金森さんの新作『Suspended Garden - 宙吊りの庭』の音楽を担当されたトン・タッ・アンさんについてです。
ワタクシ、随分前にアンさんとは、(台湾在住ということで、直接お会いしたことも、お話ししたこともないのですが、)某SNSで「友だち」になり、時折、コメントをやりとりさせて頂いておりました。
で、今回のプロダクションに関して、アンさんが、Noismの20周年記念冊子に関するポストをされた際に、恐れ多くも、コメント欄に「できればサインを頂きたい」旨の気持ちを綴ったところ、「喜んで!」と返信があり、ワクワクが倍増どころではないことになってしまい、この日を迎えていたのでした。
開演前のホワイエに姿を現したアンさんに初めてお会いして、「二回目の休憩の際に」ということになり、(初めて)お話しも出来て、勿論、サインもいただき、一緒に写真を撮っていただいたうえ、更には「終わったら飲んだりしながら話そう」まで言っていただき、(そこに関しましては、あまりにも身に余るお誘いであり、丁重にご辞退申し上げましたが、)もう気さくで腰が低く、魅力的なお人柄にすっかりノックアウトされてしまったような次第でした。リアル「天使」じゃないですか、こんなのって。そんな具合です。


長くなってましたね、すみません。いい加減、少し「公」の方向に戻します。
で、話をするなか、休憩後の演目での自作曲について、「You can swim in the music.(音楽を聴きながら泳げるよ)」との言葉。泳ぎました、泳ぎましたとも、はい。実に気持ちよく。
終演後に、その旨も伝えつつ、「まだ夢見心地だ」など、また少しやりとりするなかで、「think I will need some time to come down again.(落ち着くには少し時間が必要だね)」、そして更に「and I was so overwhelmed by people’s reaction. It was wonderful!(私は観客のリアクションに圧倒された。素晴らしかった)」の言葉が届くに至り、その「観客」のひとりとしてとても嬉しい気持ちになりました。なんて素敵な宵だったことでしょうか!

アンさんしかり、近藤さんしかり、勿論、金森さんと井関さんも、そして宮河さん、中川さんに山田さん、更にNoismメンバーみんなが、舞台芸術のために、この新潟の地に降臨した「天使」、そんなふうに映った魅惑的過ぎる新潟公演初日でした。

新潟ではそんな「天使」たちを目撃する機会はもう2公演。その境地、是非ともご体感ください。

(shin)



「新潟県文化祭2024」こども文化芸術体験ステージ(2024/11/23)、Noism2に胸熱!

2024年11月23日(土)勤労感謝の日、十日町市の越後妻有文化ホール「段十ろう」を会場に開催された「新潟県文化祭2024」こども文化芸術体験ステージに、午前午後2回、Noism2が登場し、「未来を担うこどもたちが舞台公演を通じて豊かな感性や創造性などを育み、文化芸術に興味・関心を持つきっかけになってほしい…」と設けられた機会において、その溌剌としたパフォーマンスで観客からの温かみのある大きな拍手を浴びました。

私が観に駆けつけたのは14時開演の第2部(推奨年齢:中学生以上)。霰が落ちてきたり、時折、篠突く雨も寒々しい、かと思えば、陽が差す時間帯もあったりという、冬を前にした忙しい天候のなか、車で高速道路を走り、一路、十日町市を目指したような次第です。

2017年にオープンしたという越後妻有文化ホール「段十ろう」。今回が初めて訪れた建物でしたが、十日町の中心市街地に位置する、なかなか綺麗な複合施設でした。

13時15分に開場。「新潟県文化祭」ということもあり、ホワイエには新潟県産木材を紹介するコーナーが設けられていて、木琴やら色々な玩具、それに木製スピーカーほかが並べられており、木を使って仕上げられた段十ろうの内装によくマッチしていました。

そして、開演時間の14時になります。緞帳の手前、上手(かみて)と下手(しもて)両側から、Noism2ダンサーの9人が現れ、横一列となるが早いか、心臓の鼓動、心拍音が聞こえてくると、それに合わせてビートを刻み始める9人。黒いジャケットに黒いパンツ姿。緞帳が上がってから繰り出されたクールでソリッドに絡んでいくスピーディーなダンスは、先ずは名刺代わりのご挨拶。そのスタイリッシュな幕開けで、もう、つかみはOKです。そんなふうにはじまったこの日の舞台。

次いで、地域活動部門芸術監督・山田勇気さんとNoism2リハーサル監督・浅海侑加さんがステージ下手に現れてご挨拶。そこから、浅海さんから『砕波』が紹介されました。その内容をかいつまんで記しますと、港町・新潟市が開港150周年を迎えたのを機に、Noism芸術総監督・金森穣さんが、佐渡の太鼓芸能集団・鼓童の楽曲に振り付けた作品であり、Noism2メンバーは波の動きを踊り、それを通して、波の様々な感情を表現するとのこと。「激しく荒れ狂う海。怒っている波、泣いている波、笑っている波…」(浅海さん)

8人のダンサーによって、日本海の様々な波、その感情が身体と音楽とで可視化されていくさまを目撃する私たち観客は、一人残らず、言葉を用いない舞踊の何たるか、それを身を以て感得していくという豊かな時間を享受したのでした。更に、子どもたちを含めて、Noismを初めて観るという人も多かったのだろう客席。『砕波』のラスト、舞台上の動きが止まってから、場内に響いた温かい拍手には舞踊への驚きといったものが聞き取れるように感じられました。

次の演目にいく前に、再び山田さんが舞台に現れると、スクリーンを用いて、国内唯一の公共劇場専属舞踊団である「新潟のダンス集団Noism(Noism Company Niigata)」を簡潔に紹介していきました。

そのなかで、私が観た午後の部では、江川瑞菜さん(愛知県出身)、与儀直希さん(米・ロサンゼルス出身)、高田季歩さん(兵庫県出身)、四位初音さん(宮崎県出身)の4人も舞台にあがり、山田さんからの質問に、ひとりひとつずつ答えていくことを通して、Noism2というカンパニーの横顔が伝わってきました。それらもご紹介しましょう。

*Q:Noism2の生活はどんなふうか? → A:四位さん「朝9時のNoismバレエ、Noismメソッドに始まり、途中に休憩を挟んで、18時まで舞踊に向き合う日々」
*Q:どうして踊りを始めたのか? → A:高田さん「身体を動かすのが好きで、3歳でクラシックバレエを、小学校6年生のときにコンテンポラリーダンスを始めた。コンテンポラリーダンスの全身で表現することに惹かれた」
*Q:踊りの魅力とは? → A:与儀さん「踊りの表現が人生経験が深まっていくのと同時に深まっていくこと。そして人と繋がるきっかけになること」
*Q:辞めたくなったことはないか? → A:江川さん「思いつかないが、怪我をしたとき、前のように踊れない日々は辛かった。踊ることが好きなのでワクワクしている」

出前公演やアウトリーチを通して「舞踊の種を植える」Noism2。自分の夢を叶えるために稽古に打ち込む研修生カンパニー。そしてホーム・りゅーとぴあで「くらす」「つくる」「(文化を)そだてる」Noism Company Niigata、と。

Noism2メンバーの9人
新メンバー3人をアップで

時刻は14:30、今度は浅海さんによる『火の鳥』の紹介です。2011年に金森さんがNoism2のためのオリジナル作品として振り付けた作品で、「今を生きる子どもたちに向けたメッセージ」が込められている。それはシンパシー(共感・共鳴)、心の動き。そして次のように、あらすじも紹介されました。
*少年: 自分の殻に閉じ籠もり、闇やネガティヴなエネルギーに囲まれている。
*火の鳥: 少年を強く優しいエネルギーにより、殻の外へ連れ出す。
*黒衣(若者たち): 嫉妬にかられ、火の鳥に襲いかかる。
 → 痛めつけられた火の鳥は火が消えてしまうことに。
 → 少年の流す涙によって、若者たちの心に何かが起こっていく…
…「それを観て聴いて感じて欲しい」(浅海さん)

この日の舞台、「少年」は髙橋和花さん、「火の鳥」は矢部真衣さんが、そして6人の「若者たち」がストラヴィンスキーの楽曲に乗って躍動しました。この演目、とてもエモーショナルで、Noism入門にはもってこい、まさにお誂え向きとも言えるものなのでしょうが、いつ観ても、鳥肌もので、心を激しく揺さぶられてしまいます。それはこの日も同様でした。Noism2メンバーたちの熱演に対して、場内からは今度は熱い思いが込められた拍手が長く長く続きました。
この『火の鳥』ですが、来春3月のNoism2定期公演vol.16(2025/03/08&09)でも踊られることが告知されています。この同じメンバーで更に進化・深化した『火の鳥』が今から楽しみです。

Noism2のメンバーの皆さん、山田さん、浅海さん、胸熱で素敵な舞台を有難うございました。この日観た子どもたちも、大人たちも、みんな新潟(市)にはNoism Company Niigataという世界に誇るべきカンパニーがあることをはっきり認識し、「文化」というものを心ゆくまで堪能したものと思います。冬枯れの景色のなか、そんな高揚する気持ちのままに帰路につきました。

なお、この日の舞台の模様は、後日、編集したものがYouTube(新潟ステージチャンネル)にアップされる予定とのことでした。本日、ご覧になられなかった方はそちらをお待ちください。

(shin)


「円環」記者発表に行ってきました♪

2024年11月13日(水)11:00 – 12:00、秋晴れの新潟市。りゅーとぴあスタジオAで、「円環」記者発表が開催されました。


登壇者は、井関佐和子さん(Noism国際活動部門芸術監督)、金森穣さん(演出振付家、舞踊家)Noism芸術総監督、近藤良平さん(振付家、ダンサー)彩の国さいたま芸術劇場芸術監督、コンドルズ主宰、の3名です。
井関さん、近藤さん、金森さんの順でお話があり、そのあと会場参加者の質問、オンライン参加者の質問と続き、最後に写真撮影です。司会はNoism広報の谷内紫乃さん。

●井関さんのお話:
・「円環」は3作品の総合タイトルであり、20周年イヤーにふさわしいプログラムと思う。
・近藤さんをお呼びしたのはNoism1メンバーのため。近藤さんは「ダンサーはダンサーを演じることがある」と話されていたことがあり、自分でも知らないうちに行動が「ダンサー」になっていたりする。メンバーは自分自身と向き合い、近藤さんと一緒に感情の旅を楽しんでほしい。
・Noism0+今回のゲストは皆40歳を過ぎている。若手育成を担う年代でもあるが、円熟の力を発揮できる年代でもある。舞踊に限らず40代以上の人たちがますます活動的になっていくといいと思う。
・『過ぎゆく時の中で』では、私は出演せず、穣さんとNoism1メンバーが踊ります。(!!)(←金森さんは山田勇気さんが踊った役のようです)

●近藤良平さんのお話:
・19年ぶりだが、Noismは変わらずにいる、在る、という感じで、自分も「帰ってきたな~」と思っている。
・今、段ボールにハマっていて『にんげんしかく』は、段ボールと人が関わる作品になる。
・メンバーとは最近会い、今、クリエーション中で、刺激をもらっている。困るくらいやる気がある。身体に真面目に取り組んでいる。この作品では自分を磨くというよりは、作品に溶け込んでもらえればと思う。
・作品は段ボールを使った、段ボールとの作品なので、不思議な珍しい作品になると思う。ケガをしないで段ボールと格闘してほしい。

●金森さんのお話:
・『過ぎゆく時の中で』は2021年、サラダ音楽祭での作品。このころ、コロナ明けで外国人メンバーが一斉に帰国した。集団と個人、どちらかとなったら個人を選ぶ。コロナという特別な状況下とは言え、無常なる集団性を感じた。と同時に集団性の尊さを感じた。
メンバーは通り過ぎていく。これまでに156名。この事業の価値を信じてくれる関係者がいてNoismは継続できてきた。長い時の流れの中で今がある。 
Noism1メンバーと間近で踊るのは初めてだと思う。井関も言っていたが、育成と同時に円熟した力を還元し、共有することで若いメンバーに届けられるものがある。
・Noism0新作『Suspended Garden-宙吊りの庭』は、あまり考えず、皆が集まってから創ったが、8日間であっという間にできた。それはゲストの身体性が前と変わっていなかったから。若い人や外部振付だと求める身体性から教えるので時間がかかる。(トン・タッ・)アンの音楽を含め、6人でこれから深めていきたい。
・『Suspended Garden-宙吊りの庭』とは、「劇場」が(も)メタファー。近藤さん的に言うと「段ボールの箱の中」。現実とは違う宙吊りの庭に舞踊家が集い、別れていく。(それは劇場だけではない)

お話は以上でこのあと質疑応答です。
ちなみに取材メディアは、NHK、BSN、TeNY、新潟日報、朝日新聞、月刊にいがた。
オンライン質問は、バレエチャンネル、チャコット、東北新社、埼玉新聞、ダンスマガジン。
と、錚々たるメディア陣で、Noism創設時とは隔世の感で感涙もの。。。
よくぞここまで大きく育ってくれました。(お母さんはうれしい、的)

ということで、たくさんの質問があり、とてもご紹介しきれません。いくつか。

●井関さん:
-Noism0新作で舞踊家としての実感は?
・『Suspended Garden-宙吊りの庭』で、十数年ぶりに宮河、中川に触れた。最初に触れる時、どう感じるのか、怖い・恥ずかしいという気持ちがあった。それは彼らも同じだったと言っていた。
しかし、触れた瞬間から、「あの時と同じ」、「変わらないものがある」と感じた。
20代の頃と感覚は変わらない。それぞれの「くせ」や、それに対して自分がどう思うかまで同じで、とても貴重だった。

-近藤さんの作品とNoism1の身体性について
・近藤さんの作品とNoism0のダブルビルでもよかったのだが、トリプルにしたのは、Noism1メンバーに多面的なものを自覚してほしいと思ったのと、観客の皆様にもNoism1の身体性の違いを見てほしいと思ったから。

●近藤さん:
-Noismへの思いは?
・Noismが20年続いている。続けている。存在している。知られていく。知られている。
ぐっと熱く、深くやりたい。
・Noism1メンバーはすごく踊れる方たち。自分の振りを5秒で取り込み再現する。取り込みがダントツに早い。自分は30分たつと自分の振りを忘れるので教えてもらっている。

-近藤さんにとって舞踊とは?
・模索しているが、解答は出ないと思う。舞踊というよりは、ダンス、踊る、舞う、と考えている。
特別なものではなく、自分としては「日常的」で身近なもの。日常の中にたくさんのものがあり、それがダンスになる。

-『にんげんしかく』の音楽は?
・内橋和久さんの音楽で、ダクソフォンという不思議な楽器を使った不思議な音。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E6%A9%8B%E5%92%8C%E4%B9%85

●金森さん:
-音楽は録音?
・『過ぎゆく時の中で』はサラダ音楽祭とは違い録音。ただ舞台は広く使えるので「劇場版スペシャル」になる。
・『Suspended Garden-宙吊りの庭』も録音。楽譜に書けるような音楽ではないが、メロディーがあり情感豊か。外界からふわっと聞こえてくる映画音楽のような。

-Noism1メンバーと踊ってみて
・若手と円熟では情報の量と質が違う。一緒に踊らなければ伝えられないものがある一方、こちらもメンバーの奔放な情報に刺激を受けている。
舞踊に限らず、若手と円熟の両輪を回していかなければならない。

-Noism0+ゲストについて
・一瞬をいかに生きるか。人間って何だろう。友情?友愛? 時を経て再び会う。
変らないもの、変わらないことへの愛。

お話たくさん。濃い記者発表でした!
ほか詳細、ぜひどうぞ!
▼公演詳細ページ
https://noism.jp/noism0-noism1-enkan/
▼公演プレスリリース
https://noism.jp/pressrelease_enkan_2024/

なお、メディア・活動支援会員対象の公開リハーサルは12/5(木)の予定だそうです。

「円環」公演、ますます楽しみです!!!

(fullmoon)

◎以下に、Noism公式から提供を受けたこの日の記者発表画像(15枚)を追加掲載します。是非、ご覧ください。

FM-NIIGATA「NAMARA MIX」に井関さん登場♪(2024/11/05)

ホント急に気温が下がった2024年11月5日(火)、その夜のFM-NIIGATAのラジオ番組に、こちらは予定通り、井関さんが登場されました。それは、「NAMARAがにいがたをかき混ぜる」番組「NAMARA MIX」(毎週火曜日19:00~20:55)

「新潟お笑い集団NAMARAによるNAMARAのラジオ!様々なゲストやコーナーをNAMARAがMIX! 出来上がりは誰にも分からないけれど、もしかしたらスゴイものが生まれるかもしれない番組!」だそうで、その第136回放送の中の、「NAMARA MIX 30分1本勝負」(20:14頃~)というコーナーに事前収録での出演でした。

「新潟で何かに立ち向かう挑戦者をお呼びして、本音で意見を交わし合う」というそのコーナーで、井関さんはこの日の「青コーナー」の「挑戦者」として招かれたのでした。

この日の放送では、開始のゴングとともに、ふたりのパーソナリティ(江口歩さんとオダニハジメさん)とのやりとりで多岐にわたるお話しを聞くことが出来ました。少しだけそのご紹介を試みたいと思います。

*新潟市に日本で唯一の公立劇場専属舞踊団Noism Company Niigata。その凄さは伝わっているか?
*欧州の劇場におけるプロの舞踊家。給料を貰って踊って、40歳になると生涯、年金の支給がある。
*Noism20周年記念公演「Amomentof」。井関さん、25歳が45歳に。でも、考えると一瞬だった。
*各地方独自のものを創っていくべき。従来の舞踊部門の予算の使い途を変えることでNoismは始まった。
*国際活動部門芸術監督: Noism0とNoism1の芸術監督という割り振り。
*新潟市のインバウンドとNoism。新潟市に利用して欲しい。東京を介さずに海外から新潟市にNoismを観に来てくれるようになることが夢。
*「元気のある地方都市は、行政・経済人がアートや芸術家に力を入れている」(江口さん)
*新潟市からの補助金のほか、国からの助成金を得て、更に協賛を募っての運営。それでも年齢が若いメンバーはかつかつの暮らし。給料を上げてあげたい。
*3歳から踊ってきた。身体の使い方が変わってきて、「50(歳)が全盛期かな」(井関さん) 動きの意味がわかってくる。身体と精神の一致。

---ジョン・アダムス『ザ・チェアマンダンス』(Noismレパートリー『過ぎゆく時の中で』使用曲)が(一部)オンエアされる。---

*「円環」トリプルビル: 近藤さん演出振付の『にんげんしかく』。(井関さん、2005年には近藤良平さんのコントをやっている。)宮河愛一郎さん、中川賢さんもゲストで出演し、井関さんと山田勇気さんと踊る『Suspended Garden』。Noismレパートリー『過ぎゆく時の中で』。
*振付家のスタイル: 精密なカウントで事細かに振り付ける金森さん。ダンサーに「やってみて」って言って、「ああ、いいね、それ」ってする可能性もあるのが近藤さん。
*バレエを基礎にしていて、「モダン・バレエ」「モダン・ダンス」のようなNoism。基礎が必要。基礎があれば自由にやってもきまってくる。
*Noismメソッド: やることが決まっていて、それにのっとって、自分の身体を見つけていく作業。トレーニングで意識を身体に入れていく。
*感覚は自分のもの。感覚は共有できない。それが舞台と繋がってくる。
*Noismの30周年は?: 「もっとお客さんが来て、新潟市がもっと盛り上がって、世界とダイレクトに通じているようになるために、今、どう動いていくか…。それがあと10年くらいで出来たら最高」(井関さん)

終了の合図のゴングが鳴り、NAMARA代表・江口さんの総括: Noismを知らないということを、まだ観ていない人たちはいずれ後悔する日がくると思う。是非、生の目撃者に。

…といったところでしたでしょうか。聴いた人たちはみんな、もうリアルにKOされてしまって、12月からの「円環」トリプルビルへの期待に胸を踊らせることになった筈です。よいお席はお早めにどうぞ。
以上、ご報告とさせて頂きます。

(shin)


「アース・セレブレーション2024」2日目【特別フリンジ】鼓童✕Noism2に行ってきました!

8/17(土)、少し雲がかかることもありますが、今日も概ね晴れのよいお天気。
本日の特別フリンジは15時半から15分間のみの貴重な公演です。

14時頃、会場の三角公園に着きましたがカンカン照りでキビシイ〜
しかし、14時半を過ぎるとやや曇ってきて、ステージの上も暗雲が! 雨が降る感じではないので、このまま曇っていてくれるとありがたいな〜♪

フリンジ出演の前の団体が終わり、観客の移動があったので、その隙になんとか最前列の席を確保!
最前列は陽が当たって焦げる熱さでしたが、曇ったのでラッキーでした♪

15時頃、早くも出演者がやってきました!「Noism2の母」モンちゃさんもご子息と登場♪

Noism2メンバーと鼓童さんたちが早めに来たのは、なんと、その場でリハーサルというか、場当たりをするため。
特別サービスではありませんが、うれしいですね〜♪

司会は昨日に引き続き、鼓童の木村佑太さん。
今日もインタビューがあるので、まずはその並び方から。
そのあと鼓童さんと共演する曲の場当たりと続きます。
リハーサルなので浅海侑加さんも指導に入ります。貴重シーンですね♪
とはいえ、リハはササッと終わってしまいました。。

しばし待つ間に空は晴れ・・・
カンカン照りの夏空の下、明るく公演が始まりました!
まずは『砕波』!
鼓童の曲で、金森さんの振付です。


昨日のあゆす会館でも観ましたが、なんとまあ、全く別物です! いったいどうなっているのでしょう!?
今日の方がノリがいいようですが、屋内と屋外では雰囲気が違いすぎてビックリしました!
音楽はCDでしたが、最後の方が少し短縮されたバージョンでした。
ブラボー!!

そのあと、木村佑太さんによるインタビューです。今日は少し砕けた質問をしたいと言っていた木村さんですが、砕けた質問にも真面目な答えのメンバーに苦笑するしかない木村さんでした。2年目の4名がインタビューに応えました♪

最後の曲は鼓童さんとのコラボです。おなじみの『紫』!
鼓童の曲で、山田勇気さんの振付です。


この作品は去年も一昨年もフリンジ公演で踊られました。明るく楽しい楽曲ですが、ゆく夏を惜しむような哀調を帯びた響きも感じられます。
この『紫』は配信&アーカイブがあるようですので、ぜひご覧くださいね!
(→こちらからどうぞ。6分半強の動画となります。)

『紫』が華々しく終了して拍手喝采!!
全員で写真撮影です♪
すばらしい舞台をどうもありがとう!
河村アズリさんと川添愛美莉さんはこの公演が最後になります(涙)。
これからも新しい道で前に進んでいってくださいね!

今シーズンのNoism2、全公演無事終了しました♪
浅海侑加さん、メンバーの皆さん、おつかれさまでした!

さて、次(今週末)は利賀でNoism0+Noism1『めまい』ですよ〜✨
Noismの夏は、まだまだ続きます!
次は利賀でお会いしましょう♪

(fullmoon)

「アース・セレブレーション2024」鼓童研修生✕Noism2 に行ってきました!

8/16(金)、晴れて朝から気温が高い中、佐渡汽船ジェットフォイルに乗って、まずは両津へ!


アース・セレブレーションは小木で開催されます。両津から小木へ、私は路線バス移動で、遠路はるばる、なかなかですよ〜(^_^;)

Noism2を追いかけて、鼓童共演 連続3年!
本日の会場は、あゆす会館。初めての屋内会場で、体育館のような施設です。冷房が効いていてよかった!


「Noism2の母」モンちゃさんと開場前に落ち合い(モンちゃさんはご実家から小木航路)、2人で最前列ほぼ中央をゲット!
暑い中30分並んだ甲斐がありました。前方はゴザ敷で後方は椅子席。あっという間に超満員です。
録画録音・写真撮影禁止とのことなので、写真は開演前の様子を撮りました。


鼓童公式の方で生配信&アーカイブを残すというお話でしたので、どうぞご覧くださいね♪
(→そのアーカイブ、約29分です。こちらからどうぞ。)

13時30分、いよいよ開演。司会は鼓童の木村佑太さん。
オープニングは、鼓童研修2年生の6名による「うねり」という曲。太鼓の音はやはりスゴイ迫力です!
演奏が終わると自己紹介&司会者によるインタビュー♪
そのあとは、2年生による新作「チャンカ」。冬の思い出の曲だそうですが、ますますのド迫力に拍手喝采!
そして、研修所 所長のガンさんが登場し、心温まるお話の数々を話してくださいました。

そのあといよいよNoism2、11名が登場!
黒い衣裳に身を包み、踊るは『砕波』! 音楽は鼓童のCDです。
『砕波』はこれまでにも何度か見ていますが、その度に踊り手もシチュエーションも違うので、いつもとても新鮮です。今回も今のNoism2らしさが出ているなあと思いました。皆さん仲が良さそうですね♪
『砕波』のあとは、Noism2リハーサル監督 浅海侑加さんが登場♪
Noismの紹介やNoism2への思いを話されました。「今だからこそできる経験を、今後の人生に繋げていってほしい」というお話にメンバーへの愛を感じました。
それからNoism2メンバーの自己紹介があり、引き続きメンバーによるNoism紹介が2,3人ずつのメンバーに分かれて手際よく行われました♪ りゅーとぴあのこと、毎日の練習スケジュールやNoismメソッド・バレエ、アウトリーチ、WS、定期公演、20周年公演、そしてアース・セレブレーションのこと等々、とてもうまくまとめて、実演も交え、次々に紹介してくれました♪

そして最後は研修生同士のコラボレーション、鼓童の曲に山田勇気さんが振付をした『屋台囃子』です! いよっ、待ってました!
昨夏の三角公園フリンジ会場での熱演が思い出されましたが、それに負けない熱い舞踊に心震えました。
鼓童さん、ありがとう。こうやってNoism2の舞も受け継がれていくのだなあと思いました。

終わったあとは全員そろってのコラボ感想。楽しかった、豪華だった、緊張した、調和がとれた、音と踊りが一緒になれた、等々、胸の鼓動がさめやらぬ感激の感想でした。モンちゃさん、感涙!

終演後は観客を出口でお見送りまでしてくれて、ホント、うれしい楽しい研修生コラボ公演でした♪

明日は三角公園フリンジ会場で鼓童正メンバーとのコラボです!
楽しみです♪

(fullmoon)

そして挑戦はつづく:Noism2定期公演vol.15千穐楽

2024年3月3日(日)、前夜から降った雪は、もうこの時期(「桃の節句」)ですから、ほぼ予期し得なかったほど迄に自動車のルーフに積もっていたのですが、それも徐々に寒気が緩むにつれて、溶けていってくれて、ホッと胸を撫で下ろしました。
この日、Noism2定期公演vol.15も「マチソワ」の2公演。で、他にもりゅーとぴあでのイヴェントが目白押しだったため、「マチネ」の頃には既に駐車場が激混みの満車状態になっていたようでした。幸い、私が「ソワレ」を観に行くときには、駐車場はかなり空いていて、その意味でも重ねてホッとしたような次第です。

そして18時、千穐楽の最終公演の幕があがりました。「Noismレパートリー」のはじまりです。繰り出される電子音のシャープなビート、そしてビート。この日のこの時間、スタジオBの舞台に立った13人は揃って、全5公演のラストの舞台を、それぞれの体内からあらん限りのエネルギーを引っ張り出し、それを発散させ、生命力を漲らせて、躍動感たっぷりにビートと一体化して踊っていきます。その姿は前日の「ソワレ」とも格段に違っていました。
ひとつ、彼らの足を例に書きます。それが私たちの身体の下方、二股に割れるありふれた下肢には見えて来ずに、ある時は鞭のようなしなやかさを備えた、またある時は一切の動きを拒絶するかのような、そんな何か新種の身体部位に見え、単にビートに乗った動きを可視化して示すためだけの(実用性が云々されることなどない)「道具」といったあり方で目に映じる、そんな瞬間に出会ったのです。そのとき、目にしたものは、私たちが自分たちの身体として、当然に、その使い方を知る身体とは全く別物の、まさに「Noism的な」張りのある身体です。メタモルフォーゼ、紛れもなく。そのことにとても興奮しました。
ですから、ラストの『R.O.O.M.』からの抜粋に至って、「生贄」の一語を思い浮かべることになりました。観客の見詰める目にとっての13人の「生贄」。それは「Noism的な」語彙に属するもののひとつです。上方に両手を伸ばして静止した13人のシルエットを祝福したい気持ちになりました。

休憩後は中尾さん振付演出の『水槽の中の仮面』です。見終えたとき、これで見納めかと思うと残念な気持ちになりました。不穏にして、美しく、激しくて、優しく、一貫して瑞々しくて、リリシズム溢れる…そんな作品、そしてそれを踊るメンバーたち。
前日のアフタートークに急遽、登壇した振付家が語ったところによれば、ダンサーに示された振りは「予め決めることをせず、その場で一緒に音楽を聴きながら、その場で作られていった」とのこと。とするなら、作られた振りそのものには、その場の空気感のみならず、必ずやそのダンサーの個性(やそのダンサーへの期待)も反映されていたことになる筈で、であるならば、『水槽の中の仮面』は、間違いなく、それ自体、振付家から12人のダンサーたちへの「贈り物」という性格を持つ作品であることは言を俟たないでしょう。
例えて言えば、大きめサイズながら、フルオーダーで誂えられた洋服(人はそれを「宝物」と呼ぶだろう)が、徐々に身体に馴染んできているのに、(否、逆に、少しずつその洋服が似合うようになって、「映える」ようになってきているのに、そう言うべきか、)もう見納めなのか、そんな塩梅だった訳です。

中尾さん作品終演後、観客全員が大きな拍手を贈り、スタンディングオベーションを捧げる人々も見られました。実に幸福な時間でした。

スタジオBは速攻、「ばらし」が入るため、この日のアフタートークはホワイエで行われました。その様子もご紹介しましょう。

*感想・今の気持ち
中尾さん: 次の作品を早く作りたい。純粋に次を新しくゼロから作りたい。それはご飯を食べたいと思う気持ちに似ている。
山田さん: 今回の作品、満足していますか。
中尾さん: 彼女たちが見せてくれた景色に満足している部分もあるが、もっと出来たかなぁという部分もある。しかし、一期一会。貴重なものになった。
山田さん: 今の洸太と今のメンバーでしか出来ないものだった。

*中尾さん作品の衣裳について
中尾さん: 裏表、前後で着ている。作品が出来上がってから、衣裳さんにイメージや色をざっくり伝えて作って貰った。衣裳が届いてみると、「S」とか「A」みたいな墨のような文字が入っていてびっくりした。

*「Noismレパートリー」に関して
山田さん: 今回、金森さんの初期の作品で電子音楽による、シャープで張りのある踊りのものから選んだ。キャスティングは難しいのだが、彼ら自身もわかっていない彼らがいるので、これをやらせた方がいいな、とか考えてキャスティングした。

*中尾さんが好きなジブリ作品ほか、映画に関して(←初日のアフタートークのなかで、「宮崎駿」という名前に言及があったことから)
中尾さん: 『風立ちぬ』『天空の城ラピュタ』『紅の豚』。穣さんには「っぽいなぁ」と言われた。ひとつのシーンが好きになって、作品が好きになるということがあり、この3作品にはそういうシーンが多い。
山田さん: 自分は『紅の豚』と『崖の上のポニョ』。絵と勢いが好み。自分にも「絵が好きで」っていう作品がある。「長くて」、絶対寝てしまうんだけど。(それはアッバス・キアロスタミ『そして人生はつづく』だそう。)
山田さん: 洸太の作品には、ただ舞踊からだけじゃない動きを感じたりする。映画からの影響はあるか。
中尾さん: 映画からの影響の自覚はない。絵や音楽の影響が大きい。それもシンプルなものに惹かれる。草原に一本の木とか。

*一年目のメンバーに関して
山田さん: 今回、フランス、アメリカ、台湾から新潟市に移り住んだメンバーがいる。Noismという環境だけでも大変なのに、相当大変だったろうが、無事に今日を終えて、ホッとしている。雪や地震もあって、本当にびっくりして、不安だったことだろうが、踊りにしか逃げ場はない。踊りに集中して乗り越えてくれた。

*今の中尾さんにとって踊ること、振り付けること
中尾さん: 今は作る方に気持ちが向かっている。このクリエイションから公演の期間中、踊りたい欲がどんどん溜まってきているのを感じるが、ギリギリ作りたい気持ちが強い。


*水槽の中に仮面を入れる意味は
中尾さん: 水槽は、ある種の枠だったり、ひいて見ると惑星だったり。女性、球体、赤ちゃんが生まれるお腹のなかだったり。「生前(=生まれる前)」と思って作り始めた。
今だから話すと、仮面をつけている側が「心」で、心を制するようにいるのが「脳」。犬を連れたり、相手を踏んだりは「脳」が「心」を制している動き。バランスがとれているのか、いないのか。
仮面を枠の中に押し込んで、生まれる前に僕らの「心」ができ、ひとりの人が生まれる…。

…と、そんなお話だったかと。

「新しい振付家のデビューに立ち会えて嬉しかった」と山田さん。最後に、「20周年記念公演『Amomentof』に来てください」の一言で楽日のアフタートークは締め括られ、同時に、刺激的なまでの3日間の「目撃」は幕となりました。

たとえ、この日の高揚感がどんなに大きかったにせよ、ひとつ確かなこと。B’zではありませんが、(彼らの)ゴールはここじゃない。むしろ、まだ始まったばかり。そして挑戦はつづく。応援するこちらも楽しみはつづく…。
そんなことを思いながら、りゅーとぴあを後にしました。

(shin)

Noism2定期公演vol.15:「舞踊家として悩む中日」(中尾さん)を体験した13人とそれを見詰めた観客

2024年3月2日(土)の新潟市は、雪は舞うは、道路は凍りつくはで、まさに冬に逆戻りでもしたかのような一日。3月だというのに。
前日に幕があがっていたNoism2定期公演vol.15は、この日、14時からと18時からの2公演がある「マチソワ」の日だったのですが、その両方の舞台を目撃してきました。そう、まさに「目撃」の一日でした。

まずは踊られた2つの演目に関して、感じた事柄を書くことから始めようと思います。

最初は金森さんの振付で、山田さんによる構成の「Noismレパートリー」からです。今回は電子音やノイズの中で踊られる作品(『R.O.O.M.』『sense-datum』『no・mad・ic project – 7 fragments in memory』)からの抜粋なのですが、最初の一音が響いたその一瞬から、極めて「Noism的な」と言う他ない動きへの、13人の挑戦が始まることになります。それは、舞踊家が苦しければ苦しいほど、観客は気分があがってくるといった嗜虐的な時間です。しかし、エッジの効いた早いビートに乗るだけでは不充分であり、更に、その向こうに、踊る舞踊家その人でしかないものが見えてこなければなりません。課せられたそんな極めて高いハードルに対して、多くの視線を浴びるなか、アドレナリンを出しつつも、「離見の見」をもちつつ挑んでいく時間の体験です。大きな成長に繋がる機会と言える訳です。「Noismレパートリー」には、13人全員が各自の「今」を超え出ようと格闘する姿が溢れていて、見詰めていると胸に迫ってくるものがあります。
この日の2公演を観ての感想としては、2年目の5人の動きに、やはり一日の長があり、安定した「Noismらしさ」が強く感じられたと記しておきます。そして、なかでも春木有紗さんに目が惹きつけられたことも。場を圧する空気感において群を抜いていたように感じました。

休憩後は、Noism1の中尾洸太さん振付演出の新作『水槽の中の仮面』です。30分の作品を振付るのは初めてとのことですが、主に6組のデュオのフォーマットを用いて、中尾さんらしいリリカルさを基調にしながら、描かれていく2者間の隔たりに、ある種の不穏さが色濃く漂うアレゴリカルな(隠喩的な)作品と映りました。現在の世界情勢などが、否応なしに、反映されているといった感じも受けますが、「隔たり」を扱うこの作品自体は、踊り込まれることによって、様々な受け取り方を許すものになり得るように感じました。踊る側の深度が増すことによって、中尾さんの当初のイメージを超えていくだろう可能性をそこここに感じながら観たような次第です。(同時に、これも否応なく、「水槽」と「仮面」についての思索に誘われています、今。)また、使用楽曲のシューベルト『死と乙女』もそれが描く死と安息を「隔たり」繋がりで捉えようとすると、今作に奥行きを与えてくれるものがあると言えるでしょう。様々な点で、たくさんの「開口部」を持つ作品であると思いました。
いずれにしましても、今回が本格的な振付デビューとなる中尾さんが、Noism2メンバーの「今」に向き合うかたちで作られた本作、必見ですね。

2つの演目を公演中日の2時の回と6時の回に観た訳ですが、2回を併せて、そんなことを感じました。

その後のアフタートークについてもかいつまんで記します。この日の登壇者としてアナウンスされていたのは、地域活動部門芸術監督・山田勇気さんとNoism2リハーサル監督・浅海侑加さんでしたが、途中、質問への回答上の要請から、場内にいた中尾洸太さんも加わることになりました。

*メンバーが悩んだり、苦しんだりしているときの声掛け
浅海さん: 【今回のクリエイションにおいては】(じっくり考えてから)「洸太(=中尾洸太さん)を真似してみて。洸太も音楽を聴いて動きを作っているので」とか言ったりした。
【普通に悩んだり苦しんだりしているときには】経験する時間を感じて欲しい。その気持ちを感じることも経験だから。
山田さん: 経験が浅いし、難しい部分。簡単な答えはない。今日の舞台もひとつの経験。

*今回、苦労したところは
浅海さん: 洸太の作品は新作で、過去に踊った人の手本がないので、ゼロから作り上げなければならない。洸太の作品なので、稽古をみていて、自分が思うことだけになっていって、違ってしまっては嫌なので。どこまで伝えたらいいか。
山田さん: 「レパートリー」には過去の振付があって、難易度が高くても崩せない。そこにもっていって、自分が踊る意味を見出させること。

*中日の舞台(2公演)に関して
山田さん: 昨日、初日があけて、今日は2公演。初日はエネルギーを解放させたのだが、中日の昼の部(2時の回)は持っていき方が難しかった。しかし、夜の部(6時の回)には、修正して、違った面が見られた。「レパートリー」に関しては、どちらも色々な「点(=箇所)」でいい人、光る人が違った。洸太の作品は、全体の色が毎回違ってきていて、どこへ落ち着くのかなぁと。
浅海さん: ここまで3回全部違う。洸太の作品は毎回印象が変わるが、今回は「人間」というものを感じた。彼らが経験している姿を見て、人生の一部だとか、「今」だとかいうふうに。言語化できない気持ち、したくない気持ちになった。

*身体のケア・回復方法
山田さん: 個人に委ねられている。その準備もひとつの経験。自分の身体を知って、ルーティーンを確立していく。

*中尾さんのメンバーの選び方
中尾さん: 選び方はインスピレーション。曲を決めてあるので、そこから思い浮かぶ人のを選んだ。そして、自分は振りを決めていかずに、その人がいる場で音楽を聴いて、振りを決めていった。(曲 → ダンサー → 振り、の順。)

*中尾さんが苦労したこと
中尾さん: 『鬼』の公演前に急ピッチに振り付けたものが、『鬼』公演の1ヶ月をおいたら、不安な気持ちになってしまった。どう見えているのか精査し切れないままだったので、「過去(1ヶ月前)」に考えて出したものが「これでよかったかなぁ」と不安に。
『鬼』が終わって、再開したとき、「1回通しで見せてくれ」と言って、「今」の自分を重ねていく前に、「過去」の自分を再確認して始めた。

*中日の舞台の印象
山田さん: 彼ら自身と自分の向き合い方を考えて見てしまった。これからどうしようかと。
中尾さん: 気分によって、波が激しいなと。自分も気分によって変わるタイプなのでわかる。「中日」は舞踊家にとって、どう持っていったらいいか悩む日。2時の回は「うーん、あんまりだなぁ」と思ったが、6時の回は「その体験を体験たらしめている」と思った。昇華して、伝え方も変わった。(その体験を)次に使えている。
浅海さん: 2時の回と6時の回とでは全然違っていた。稽古監督としては、踊りの部分での見せ方とか言いたいことは結構あるけれど。

*中尾さん作品の衣裳に関して(←衣裳の着方の違いに気付いたという会場からの声を受けて)
中尾さん: 表と裏で着ている。最初に出した衣裳案は、「Aライン」の白で、立体的にふわっと、というもの。その後、そこに黒いライン(線)も欲しいと思ったが、その下を黒にして、透ける感じにした。表と裏にして着ることで、パターンを増やさなくて済んだ。どっちが表、裏を着るかは純粋に見た目で決めた。

と、そんな感じでご紹介とさせて頂きます。

さて、これを書いているうちに日付も変わってしまいましたので、Noism2定期公演vol.15も本日(楽日)の2公演を残すのみとなりました。まだ、夜の回はお求め頂ける様子です。日々「体験」し、「経験」を増していく13人の若者。是非、彼らの「今」の格闘を目撃しにいらしてください。それはそのまま、観客としても、きっと心動かされずにはいられない時間の「経験」になるでしょうから。

(shin)



Noism2定期公演vol.15 活動支援会員対象公開リハーサルを見てきました♪

2024年2月24日(土)、気温もそこまで低くはなく、季節は確実に動いているなぁと感じさせられるような三連休の中日、りゅーとぴあ〈スタジオB〉に赴き、標記Noism2定期公演vol.15に向けた活動支援会員対象公開リハーサル(12:00~13:00)を見てきました。

3日前のメディア向け公開リハーサルは、中尾洸太さんの新作『水槽の中の仮面』のリハーサル風景だったのですが、この日は、1時間枠を2分割して、前半は山田勇気さんが指導する「金森穣振付Noismレパートリー作品」の様子を、後半は中尾さん作品について見せて貰いました。

正午。その「金森穣振付Noismレパートリー」からです。山田さんの「それじゃあいきましょうか、3曲。3曲続けて」の言葉から始まりました。村上莉湖さんが両腕を拡げて上手(かみて)に伏せると、聞き覚えのあるノイズ然とした音楽が聞こえてきます。まずは『R.O.O.M.』から。(今回は天井から落ちてきたりはしなさそうです。)次いで、『sense-datum』へと進んでいくのを見ることになりました。

山田さんは椅子に腰掛けたまま、Noism2メンバーたちの動きを細大漏らさず、逐一目で追い続けますが、時折、音楽に合わせて腕(そして掌や指)を動かすその後ろ姿には、あたかも、自らがその一本の腕へと収斂し、その腕が追い求められ得る限りの理想の動きでその時々の一音一音を踊っているかのような風情が認められたほどです。

一旦、「3曲」を通し終えたところで、音楽を止めた山田さん。『R.O.O.M.』から動きのブラッシュアップが始まります。
「最初のポジションにきもちエネルギーが欲しい。張りを見せていく」
「それだと動きが消えちゃうんだよね」
「しっかりダウン。(重心が)常に下にあるんだから、大きくは飛べない筈」
伏せている姿に対して、または、足を回す動きについて、或いは、身体を回転させたその後に関して、そのひとつひとつに、山田さんから丁寧に細かなチェックが入り、若き研修生たちがそれに向き合っていきます。それらを通して、その場に居合わせた私たちにも「レパートリー」とは単になぞられるものでは済まず、同じ精神性の共有を求めてくるものなのだという当然過ぎる事実が(わかってはいたつもりでしたが、)ビンビン伝わってきました。

12:30。「じゃあ、ここまでで、次、洸太作品」という山田さんの声がかかり、後半の『水槽の中の仮面』リハに移りました。この日のメンバーは仮面はない代わりに、恐らく、衣裳と思われるものをその上半身に纏っています。

この日の中尾さんは、山田さんとは異なり、共にリノリウムの上にいて、音楽を都度止めながら、動きを練り上げていきました。
「音楽が“のぺーっ”と聞こえちゃう。音楽は壁紙じゃないんだから」
「イメージが自分だけで完結している。自分の呼吸感をまわりに伝播させていくこと。そして、まわりはそれを受け止めないと」
「(動きの)弱いところは弱くして欲しい。そして、強いところも、なんでそれが強く見えるのか、その本質的なところが大事」
中尾さんによって研修生たちにかけられる言葉、そして同時に示される実演、そのどちらにも、先日の囲み取材の折に、中尾さんが強く実感したと語った「僕の当たり前が当たり前じゃない」という意識が見てとれました。動きを磨くことで、作品のヴィジョンの共有も進んでいくのでしょう。

前半の山田さん、後半の中尾さん、その都度、ふたりによるチェックが入った後は、それぞれ、みんな動きが違ってきます。その様子をつぶさに目撃すること、それは活動支援会員にとって本当に大きな「特典」と言えるでしょう。この日、私たちが息を殺して見詰めたものは、向上心に溢れる若い13人の研修生たちによる挑戦と格闘のドキュメントと呼んで間違いないものだったからです。そしてその先に、来週末の公演「本番」を位置付けて待つ日々に格別な楽しさが宿った、そうも言い添えたいと思います。(皆さんも是非、活動支援会員の仲間入りをしてみませんか。)

来る弥生3月初、若竹の如く、ぐんぐん成長を続けるNoism2メンバーによる定期公演です。くれぐれもお見逃しなく!

(shin)