公開リハーサル2日目、金森さん「今回お見せできてよかった」

2020年6月14日(日)の新潟市はお昼頃から雨。しかし、あまり気温が上がらなかったため、不快感はさほどでもなかったのが救いでした。

そんななか、新潟在住の活動支援会員を対象とした公開リハーサルの2日目です。今日も取材クルーの姿が数多く見られ、前日と併せて、県内全てのテレビ局が大きな機材を抱えて劇場を訪れたように思います。

で、この日の感染予防措置ですが、検温機器の設置場所に前日からの変更点があり、まだまだ手探り状態にあるといった様子で、検温スタッフにとっても、この2日間の全てが「リハーサル」であったり、ある意味、「実証実験」でもあったりするのだろうと理解しました。

前日とは異なる動線の配置
「正常な体温です♪」
検温機器にそう言われない限り、
この先には進めません
この光景、初めての方には物々しく映りますよね
脇道に逸れますが、感染経路を追うためという
趣旨はホテル等の宿帳も同じと聞いています

この日もリハーサル開始時刻が近付くにつれ、静寂が場内を支配するようになり、その静けさがいつまでも続くかと感じられ始めた頃、15時を2分ほどまわっていたでしょうか、これまた音もなく、スルスルと緞帳が上がり、井関さんと山田さんの脚部から、体幹、そして顔が、順に、真横から見るかたちで、私たちの目に入ってきます。ためらうような、たゆたうような、求め合うような、そんなふたり。『Adagio Assai』(仮)です。見惚れるしかないふたり。映像との相互作用も、通り一遍のものではないため、目は舞踊家と映像の行き来を求められるなど、上品な刺激に満ちたものと言えます。緩やかな切なさが印象的な小品です。

そして、ある効果音が聞こえてくると、そのまま『Fratres III』に接続していくのも前日観た通りです。舞台中央奥、登場時点から既に金森さんの目、或いは表情は、「同志」を先導する者のそれにしか見えません。そこから始まる「祈り」と同義でしかないソロと群舞が創出する豊穣な時間。ブレることなく、自らコントロールできることのみに専心する愚直な潔さが観る度に胸を打ちます。

休憩後は、実験舞踊vol.2『春の祭典』。金森さんのこの新作で、ストラヴィンスキーの手になる変拍子や不協和音に合わせて、21の身体を通して可視化される世界は、バーバリズム(野蛮・未開)とは異なる、極めて今日的な主題の体系に収まるものと言えるでしょう。混沌としていながらも、(須長さん制作の椅子に代表されるような)直線的なシンプルさ、或いは明晰さも同居したものであり、照明の果たす役割が印象的な作品と言うに止めておきます。

全て終わった後、この日も「ブラボー!」の掛け声が飛ぶなど、目にした舞台が、もはや「公開リハーサル」の範疇で語られるものではないことは誰しもが共通して感じていた事柄に過ぎません。ただ、舞台両袖に様々な道具や資材の類いが隠されることなく、全て顕しにされていたことのみが、これが「リハーサル」であることを思い出させるくらいだった筈です。

最後の挨拶。この日の金森さんは笑顔で話されました。「ほとんど本番。今まで仕上ったもので、最上のものであり、何の出し惜しみもありません」と。更に続けて、「今、ここに彼らがいて、皆さんがいて、今、この日の実演を彼らがやって、今、この瞬間が非常に貴重だということです。この困難な社会を生きていくうえで、一助になれれば嬉しい。これからも精進していきます」とも。

金森さんがそう語り、一通り、挨拶も終わった感が伝わってきた頃合いで、金森さんの後方、一列に並んだ舞踊家たちの列の中央、井関さんがしきりに隣のジョフォアさんの腕を掴んで、前に押すような仕草を見せています。

そのタイミングで、金森さんが、「ジョフ(ジョフォア・ポプラヴスキーさん)は今シーズンで終わり。8月から、次のカンパニーが始まるので、7月で(Noismを)離れなきゃいけない」と告げるではないですか!「他にもいるんだけど…」と「悲報」の多くは語られなかったものの、ジョフォアさんについては、「今回お見せできてよかった」と言い、8月のプレビュー公演には出演しないことが明らかになりました。(涙)

前日とこの日、『春の祭典』の冒頭、ジョフォアさんの登場場面、大柄の体躯を小さく折りたたむことで表出された「可愛らしさ」が個人的にはツボだっただけに何ともショックな報せでした。

でも、彼がNoismのDNAとでも言うべきものを次なる場所に拡散してくれて、異なる場所にいるNoismファミリーとして踊り続けてくれることを期待したいと思います。そして、この先も長く、新潟のことを覚えていてくれたら嬉しいです。いつまでもみんなで応援していきましょう。

さて、実演は一旦終了ですが、今週の金曜日(6/19)にはシビウ国際演劇祭2020 online special edition にて、Noism1の『R.O.O.M.』がオンラインで配信されます。奇しくも、「実験舞踊」繋がりでもあり、あの野心作、久し振りに堪能したいと思います。配信はライヴ配信のみで、朝4;20からと、夕刻16:20からとのこと。詳しくはこちら、Noism Web Siteをご覧ください。

(shin)

「公開リハーサル2日目、金森さん「今回お見せできてよかった」」への5件のフィードバック

  1. 皆さま
    この2日間のレポに、「ブラボー」の掛け声があった旨、書きましたが、
    所謂「新しい生活様式」にあっては、「ブラボー」はなしで、拍手のみが望ましいのですか。詳しくは知りませんが、そうした記載が見られるオーケストラもあるみたいですけれど。そのあたり、詳しくご存知の方おられましたら、教えて下さい。
    まあ、私は大丈夫なんじゃないかと思うので、記事にて、あくまで自然に「ブラボー」について書いた訳なのですけれど…。(汗)
    (shin)

    1. 座席にかけてあったA3のペーパーに「場内でのご声援や大きな掛け声などはご遠慮いただけますと幸いです」と、ありましたね……。
      (今さがして見つけました)

  2. shinさま
    詳細レポありがとうございました!
    今回も素晴らしかったですね!!!
    2回も観ることができて幸せです。
    全身全霊の舞踊を堪能させていただきました。

    8月のプレビュー公演が発表されてうれしいです♪
    待ち遠しいです。

    踊る人と観る人と支える人。
    踊る人は観客の前で踊りたいだろうし、観る人はその姿を見たい。
    そしてそのことを支えるスタッフがいる。
    観る人は拍手だけでなく声援や掛け声も送りたいですよね。
    それは当たり前のことなのに、「新しい生活様式」とは、いったいどうしたことでしょう!?

    noiさんが書かれていたように、「お願い・諸注意」は各座席の A3のペーパーに書いてありましたし、事前(6/11)に 検温についてや、諸注意のお願いメールがスタッフから届いていました。

    なので「ブラボー」は無しなのかなと思っていましたが、初日もありましたし、2日目は私も(確信犯)・・・
    すみません・・・
    メールには、
    「私どもスタッフ一同も健康管理を徹底し、消毒を強化するなどの
    対策をした上で、みなさまのご来場をお待ちしております。」
    とありました。
    スタッフの皆さま、いつもありがとうございます。
    観客は全員マスクをしていましたし、ご配慮により座席も離れていましたし、どうぞお許しを。

    「新しい生活様式」は早く終了になってほしいものです。

    ところで、ジョフォアさんが今日で最後なのには驚きました。
    明るくて遠慮がなくて面白いキャラクターの方のようにお見受けし、Noismや新潟に馴染んでいたように感じていたので、とても残念です。
    ご活躍をお祈りいたします。

    今週、金曜はシビウ オンライン、『R.O.O.M.』ライブ配信ですね!
    楽しみです♪
    (fullmoon)

  3. noi さま
    fullmoon さま
    「ブラボー」問題について、
    早速のご教示、有難うございました。

    私の「A3」ペーパーにも書いてありました。(笑)
    私はいつも公演前にはもう浮ついてしまって、
    印刷物の文字に目を落としたりできないような人なので、
    困ったものです。場内では目は節穴化してしまうんです。

    でも、事前の注意事項メールにも記載がありました。(汗)
    そうなると、ただの粗忽者では済まされませんね。
    まったく、「新しい生活様式」への刷新ができておらず、
    依然として、「before Corona」のままだったという…。

    で、そんな心持ちで、
    ひょっとすると、将来、こんなことがあるかも、と、
    劇場での鑑賞デビューとなる子どもと親の会話を空想しました。
    親: 「昔、優れたパフォーマンスを観て感激した観客は、
        客席から舞台に向かって、『ブラボー!』と叫んだり
        していたんだよ」
    子: 「へえ、野蛮な時代だったんだね」
        …みたいな。(汗)

    前後左右(2m)間隔を空けて指定される席といい、
    「ブラボー!」の掛け声といい、
    正直、「新しい生活様式」にはまだまだ馴染めない部分も多いですが、次からは心して通いたいと思います。
    (shin)
     

  4. 皆さま
    昨日、『R.O.O.M.』の配信、ご覧になられましたか。
    私も何とか頑張って、4:20の回も、16:20の回も両方観ました。

    早朝と夕刻の2回、ノイズが耳につく無機質なネット空間に、
    あたかも30cm四方のグリッド(格子)が「ぱか~ん」と
    開くかのように、その動画が降りてきました。
    箱の中の有機体の蠢きを見詰める「実験」に、
    更に一歩引いたネット空間から目を凝らすことには、
    「入れ子構造」の趣も加わり、
    作品そのものの手触りと今回の視聴環境との間の親和性から、
    「実験」そのものが拡張されでもしたかのようで、誠に乙なものでした。
    で、そのような「観察」は、
    40数分後、あたかも井関さんが中央下のグリッドを閉じて消えていくように、配信も「ぱたん」と閉じられていきました。
    ディスプレイのこちら側に取り残される私…。

    もう、あっという間でしたが、
    時間を忘れて楽しみました。
    久し振りに観ることができて嬉しかったです。
    (shin)

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