金森穣『闘う舞踊団』刊行記念 金森穣×大澤真幸(社会学者)トークイベントに行ってきました!

『Der Wanderer-さすらい人』世田谷公演の余韻も冷めやらぬ2月28日(火)、東京・青山ブックセンターで開催された金森さん・大澤さんのトークイベントに行ってきました♪

ほぼ満席の会場。黒のステキなジャケットで登壇の金森さん! あのプリーツは!?
そう、宮前義之さん(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)のデザインです!
(ちなみに次の、Noism0・1夏の公演「領域」https://noism.jp/npe/noism0noism1-ryoiki/ でのNoism0衣裳は宮前さんですよ♪)

世田谷公演の裏話があるかなと思いましたが、それは全く無くてちょっと残念。司会者はいないので、最初は大澤さんが進行役のような形で始まりました。
大澤さんの机には付箋がたくさん付いた『闘う舞踊団』が置いてあり、 金森さんも気になる様子でしたが、付箋箇所を開くわけでもなくお話が進みます。

トーク内容はとても書ききれませんので、だいたいの流れに沿って簡単にご紹介します。

大澤:
・金森さんは、劇場に専門家集団がいて世界に向けて芸術文化を発信したいと思っているのに、足を引っ張る人がいて苦労している。
・芸術活動は何のためにあるのか。金森さんには確信があるが、他者はピンと来ていない。
・スポーツは見ればわかるが、芸術はそうではないので受容する素地(文化的民度?)が必要。
・日常を超えた真実があるかどうか、世界が違って見えてくるのが芸術。
・芸術は感動。快いと感じるものだけではなく、不安をおぼえるようなものも含めた心が揺らぐ体験。

金森:
・時代によって世の中が芸術に求めるものが変化している。
・自分はかつては、既存のものを壊して新しいものを立ち上げたいと考えていた。それができないのは自分に力がないからと思っていたが、そうではない。
・自己否定ではなく、意識を少し変える。微細な意識変容で見えてくるものがある。
・少しずつ世界をずらしていく。

大澤: 舞踊芸術の価値は日本では伝わりにくいのではないか?

金森: そんなことはない。日本には海外の一流のものがたくさん来ていて、観客は目が肥えている。そういう見巧者の感性に肉薄できるかどうか。環境が整えば日本でもできる。

大澤・金森: 見たことによって心が豊かになるのが芸術の力であり価値。

大澤: 90年代は多分野の人たちが集まって話をすることが結構あったが、最近は専門分野に分かれてしまっている。金森さんはいろいろな分野の交点になるような触媒になれるのでは? しかも東京ではなく新潟で。

金森: 新潟では対談企画の「柳都会」をやっているが、それとはまた違うことと思う。既存の文化の体制を変えたい。
・問題意識として、自分の同世代は40代、50代になり、老いや老後のことを考え出している。しかし今からでは遅い。20代の頃から考えなければならない。そのためにもこの本を読んでほしい。

大澤: この本を読んで、金森さんが100年スパンで考えていることに驚いた。そして自分は最初の方をやると書いてあることに感動した。
・舞踊は普遍的、本質的なもの。言語の前に音楽やダンスがある。言葉により日本では能が発展し、後に西洋のものを輸入していくようにもなる。
・集団を率いるというのは羨ましい。

金森: 集団は大変。一人だと楽だろうなと思う。

大澤: 静岡県のSPAC芸術総監督・宮城聰さんの苦労はよく知っているが、金森さんは宮城さんより大変だと思う。

金森: そんなことはない。自分ができたことは環境があればみんなができる。行政の人にはいい人もいる。
・カンパニーの維持や金銭問題についてはベジャールやキリアンでさえ苦労していた。

*このあと大澤さんは、吉本隆明と高村光太郎がどのように戦争と関わったか、転向論について話され、日本のどこに問題があったのか。知識人は大衆から遊離、孤立し、その孤独感に耐えられなくて転向する等、お話がどうなるのかと思いましたが、最後にはぐっと引き寄せて、
「金森さんは、一般の感覚と西洋のものの間に何とか連絡をつけて日本の文化として定着させたいとしている」とまとめてくださいました。

大澤: 感染症やウクライナ、核など、世界が迷っているこの時代に、日本はただ世界の後に付いていくだけ。
・感受性に対して揺らぎを与える芸術こそが役に立つ。
・少しずつ物事の見方を変えていく。
・金森さんは劇場文化の困難な道を進んでいる。

金森: そんな大層なことではなく、ちょっとやり方や使いみちを変えれば実現できること。
・劇場はもっと別な使い方をした方がよい。劇場のあり方に自分の人生を賭けている。
・ヨーロッパにいた時も、帰国してからも自分は移民・アウトサイダーだが、日本も新潟もアウトサイダーをうまく活用できるかどうかがカギ。

大澤: アウトサイダーがどのように文化を豊かにするか。
・金森さんは思春期~青年期に日本にいなかったので、日本人として社会人にならなかったのがよかった。
・ムラ社会に取り込まれなくてよかった。

金森: 日本は島国だから。でも外来文化を受け入れるマレビト的な考え方もある。
・自分は運がいい。危機的な時に限って決定的なことが起こる。助けられるとやらなくちゃいけない。

*大澤さんが終始「金森さんがやってきたことは、苦労、不可能、困難、難しい」等々を連発するので、金森さんは「それを言うのをやめてほしい」とことごとく談判! 
その結果、「金森だからできた。ではなく、金森ができたのだから他の人もできる」という共通認識になりました。

金森: 誰でも楽勝!
・時間とお金を使って観るだけの価値があるものを提供するのが劇場。

*時間になって一応トークが終わり、質問コーナーでは、東洋性と西洋性との折り合いについて、つらかった時期の解決法、新体制について等の質問がありましたが、『闘う舞踊団』にも書かれていますのでどうぞお読みください。

Q: 国の文化政策の課題は?という質問に対して、
金森: 確かに他国と比べて国の芸術予算は少ない。
でも(東京は劇場が減ってきて、人口に対して劇場の数は多くはないが)、他の地域は劇場(ハコ)もあるし、補助金も出る。
ハコも予算もあるのだから、少し考え方を変えるだけでやっていけるのではないか。
国の芸術予算は無駄な支出が多いと思う。官僚の皆さんは頭がいいのだから、補助金の出し方も踏襲のみではなくて考え方を変えたらいいと思う。

お話はだいたい以上です。割愛だらけで申し訳ありません。
トーク内容は、本に書いてあることもたくさんありましたので、どうぞお読みくださいね♪

最後に金森さんのひとこと: 一人ひとりが唯一無二。わかり合えないのが大前提。

やはり苦労してますね~
おつかれさまでした♪

トークのあとはサイン会があり、井関さんの臨時サイン会もあったようですが、私は日帰り参加のため残念ですがトークのみで直帰しました。

会場では、東京の友人知人に会えましたし、夕(せき)書房の高松さん、金森さん、井関さん、山田さん、浅海さん、三好さん、糸川さんに挨拶できてよかったです♪

(fullmoon)

世田谷『Der Wanderer-さすらい人』、穿たれた開口が深淵となり、直截に生と隣り合う舞台(東京公演中日)

2023年2月25日(土)、前日のfullmoonさんによる『Der Wanderer-さすらい人』東京公演初日レポを読み、どこがどう変わっているのだろうかと尽きせぬ興味を抱いて、新潟から新幹線に乗り、世田谷パブリックシアターを目指しました。

三軒茶屋駅すぐの劇場には迷うことなく着き、チケットを切って貰って、趣のあるロビーに進むと、正面に新潟からの遠征組がいて、手を振ってくれていました。そこにはfullmoonさんの姿もあり、笑みを浮かべています。前日の舞台については口にしませんし、こちらも訊きません。しかし、その笑みは「楽しみにしていてね」と雄弁でした。

その後、更に新潟や東京の友人も着き、さして広さはないロビーが大勢の人で埋まってきます。その雰囲気は、入場整理番号順に並んだ新潟公演とは明らかに異なるものでした。客席への入場案内を待ちながら、公演についての話題は敢えて避けつつNoismサポーターズ仲間で四方山話をしていたところ、柱の背後から、「こんにちは」とひとりの若い女性が私たちに声をかけてきてくれました。女性はすぐ続けて「西澤です」と名乗ってくださいましたが、声に振り向いた私たちにはそれは不要でした。元Noism1の西澤真耶さんの笑顔!嬉しいサプライズです。少しお話しができましたし、私など、一緒に写真も撮って貰いましたから、嬉し過ぎました。

そうこうしていると、遂に入場案内があり、ロビーのみんなも階段を上がり、客席へと移動していきます。その踊り場には金森さんが(お父様と話しながら)立っていましたから、近づいて行って挨拶する人もいます。その後、入口付近に場所を移した金森さんに、今度は私たちも近付いて行き、揃って手を振ると、金森さんも笑顔で手を振り返してくれましたので、満たされた思いで各々客席に向かうことができました。

客席に足を踏み入れるとすぐ、舞台上に新潟公演のときとの違いをまずひとつ認めました。「ということは…」、それは導入部分の演出が異なるということを意味します。ここでも開演を告げるベルはなく、客電もそのままに世田谷『Der Wanderer-さすらい人』が滑り出します、いかにもゆっくりと。あの効果音が聞こえてくるのはそれからのことです。で、ややあって、漸く舞台上のもうひとつの違いをはっきり認識しました。黒い矩形。「やはりそうだったのか!」この日の私は2階席の最前列を選んでいましたから、舞台との距離から、しかと視認するには若干時間を要したような按配でした。

そこからは、少し見下ろす具合にして、舞台全体の「画」の推移を楽しみました。照明はよりエモーショナルに、豊かさを増して、一段と劇的になって、作品を推し進めていきます。

「メメント・モリ」(死を忘れるな)。穿たれた開口は象徴(シンボル)であることを超えて、より直截に生と隣り合う深淵として可視化され、迫り出してきています。愛をめぐる孤独。満たされぬ思い。それ故のさすらいと、紛れもなくその舞台であるところの人生。そして…。シューベルトのクリエイティヴィティと金森さんのそれとが拮抗することで立ち現れてくる70分間の深みに心は揺さぶられ続けるほかありません。

ラストシーン。その情感。「そのままお客さんを帰す訳にはいかない」(金森さん)とは語られているものの、それは、近いところでは『Near Far Here』のラストなどとも呼び交わし、金森さんのクリエイティヴィティの根幹にあるものが表出されているもので間違いありません。今回もまさに極上の余韻…。

終演。ロビーに『闘う舞踊団』の夕書房・高松さんの姿を見つけたので、fullmoonさんの傍らで一言だけご挨拶をさせて頂くと、「ああ、新潟の…」と思い出して頂けて、これも良かったなと思いながら、時間のこともあり、急ぎ、ホテルに向かいました。(fullmoonさん、すみませんでした。)

少し個人的な事柄も含む書き方になるのですが、ご容赦ください。つい先日、還暦を迎えて、「ここまで色々あったなぁ」とか思ったりする気持ちと今回の『Der Wanderer-さすらい人』とが交錯するようなところがあったりして、私の人生のこの時期に豊かな色合いを添えて貰えたことに、とても嬉しい気持ちに浸れています。そしてそんなふうな事って、様々大勢の人たちの身の上にも起こっているのだろうなと思うとそれもまた悪くないなとも。遠くにオレンジ色の東京タワー、美しい夜景を望むホテルのラウンジに家族3人。心地良く酔っていたのはジントニックなどアルコールの作用によるものだけではなかった筈です…。

そんな奇跡のような舞台『Der Wanderer-さすらい人』も遂に大千穐楽を迎えます。もう目にする機会はただ一度のみ。必見です。お見逃しなく!

(shin)

感動の世田谷パブリックシアター♪『Der Wanderer-さすらい人』東京公演 初日に行ってきました!

2023年2月24日(金)、新潟公演終了から3週間、東京公演初日の世田谷パブリックシアターに行ってきました!
これほど進境著しいとは驚きです!
まさしく感動の舞台✨

いろいろなところが変わっていました。
明日以降ご覧になる方はどうぞお楽しみに♪
素晴らしいですよ✨

会場では金森さん、Noismスタッフが出迎えしてくださり、また、東京や新潟の知人にもたくさん会えて嬉しかったです♪
明日も楽しみです!
東京公演、お見逃しなく!

(fullmoon)

速報!金森さん・井関さんの祝賀会 in 新潟(2023/04/02)のお知らせ♪

■金森穣 受章・井関佐和子 受賞・金森穣『闘う舞踊団』刊行記念 祝賀会 開催決定!
(金森穣 令和3年春の紫綬褒章受章・井関佐和子 令和2年度 芸術選奨文部科学大臣賞受賞)
 *** 参加申込受付開始! ***

速報!
『Der Wanderer-さすらい人』世田谷公演の幕があがる日に、またひとつ胸ときめくお知らせがあります♪
コロナ禍で延期となっていた、金森さん受章+井関さん受賞のお祝いと、金森さん初の書籍『闘う舞踊団』(夕書房)刊行のお祝いを兼ねての祝賀会が以下の通り開催される運びとなりました!

日時: 2023年4月2日(日)12:00開宴(11:30受付開始)
会場: 護国神社 迎賓館TOKIWA ガーデンヴィラ(新潟市中央区西船見町5932-300) https://www.g-tokiwa.com/
迎賓館TOKIWA ガーデンヴィラ (g-tokiwa.com)
会費: 12,000円(食事・飲物・書籍『闘う舞踊団』・サービス料 ・税込)
定員: 80名(要申し込み)
お申し込み先: 次のいずれかからどうぞ。
*シネ・ウインド
    TEL:025-243-5530 / FAX: 025-243-5603
    メール: wind19851207@icloud.com (斎藤)
*NoismサポーターズUnofficial ・「さわさわ会」
    TEL・ショートメール: 090-8615-9942(越野)
    メール: https://noism-supporters-unofficial.info/contact/
申込締切: 3月23日(木)

主催(発起人): 竹石松次(BSN会長)、篠田昭(前新潟市長)、斎藤正行(シネ・ウインド代表、安吾の会代表、「さわさわ会」代表)
共催: NoismサポーターズUnofficial、舞踊家 井関佐和子を応援する会「さわさわ会」
協力: りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館、迎賓館TOKIWA 、シネ・ウインド、夕(せき)書房

(*護国神社は金森さんと井関さんが結婚式を挙げた神社です♪)

祝賀会のチラシです。(3/17追加)

以下からダウンロードいただけます。(3/14追加)

どなたでもお申し込みいただけます!
ご一緒にお祝いし、共に楽しいひとときを過ごしましょう♪
皆様のご来場を心よりお待ちしております。

(fullmoon)

身体から零れてくる「沈黙の言語」に心揺さぶられ通しの約70分、『Der Wanderer-さすらい人』新潟千穐楽♪

遂にこの日が来た/来てしまった…。
2023年2月4日(土)は『Der Wanderer-さすらい人』新潟全11回公演の千穐楽の日。公演の初日から連日、深化と進化を重ねてきた舞台、その一区切りとなるのがこの日です。観たい、是非にでも!そういう思いと同時に、まだ先送りしておきたい、そんな思いも同居する胸のうちはなかなかに複雑なものがありました。この日の開演前には見知ったサポーターズ仲間の面々とも多数お会いしたのですが、その誰からも例外なく似たような思いを感じたものです。それもまた、語らず秘しておこうとするにも拘わらず、零れ落ちてしまう観客の側の「沈黙の言語」だったのでしょう。

そんなふうな思いを胸に、この日はまた最前列に腰掛けて、開演を待ちました。楽日のざわつく場内も、あの効果音とともに静寂に入り込みます。構成の美は私たちが愛して止まない「金森」印ですから、何も構えることなしに、すっかり身を委ねて、誘われるまま、それだけでもう充分な訳です。贅沢なこと、この上ありません。

21曲のシューベルト、それを踊る11人の舞踊家。表情や目と目線、指先や足先、静止の「間」も含めた一挙手一投足…。もう瞬きするさえ惜しいような、濃密で美しい、渾身にして圧巻のパフォーマンスが展開されていきました。

新潟楽日のこの日、11人が示した70分弱の「顕身」。観る者としては耳に届く歌曲を背景にもうひとつ、舞台上、踊る身体から豊かに零れてくる「沈黙の言語」を前に、見詰める両の目さえ、あたかももうふたつの耳と化したかのようにして、それを「聞き逃すまい」と見詰めて、受け止めることで、心を強く大きく揺さぶられるといった類い稀なる時間に浸り切りました。

その至福。うまく語れる者などいよう筈もありませんから、終演後のホワイエでは、感動で頬を紅潮させたサポーターズ仲間が集まってさえ、誰も多くを語ろうとしなかったことなどごくごく当然のことであったに過ぎません。

そのホワイエ。金森さんの書籍販売の列に(またしても)並んで、これまでの○冊に加えてもう一冊求めたのは、観た者が受け取る大きな感動、それをまだ知らぬ職場の同僚(一緒に同じ仕事に携わってきていて、幸い本好きでもある)への「遣い物」にしようという思いから。そして、もうひとつ実行に移したのは2Fへ降りたところでの所謂「出待ち」。まず、庄島姉妹、そして井本さんと少しお話ができ、「ホントに素敵でした♪」と感動の大きさを直接伝えつつ、少しお話しもできたのは嬉しいことでした。

そんなふうに待つこと、約40分。見上げたエレベーターのなかにいよいよ黒と白のダウンを着たおふたりの姿を認めます。降りて来られたのは金森さんと井関さん。ご挨拶をしてから、この日求めた『闘う舞踊団』にもサインをいただくことができました。金森さんには「えっ、まだあるの?」と笑われながら、井関さんがしっかりと本を支えてくれるなか、「日付も入れようか。今日は何日?」といただいたサイン。そんなやりとりもあるので、「遣い物」には以前の○冊のなかの一冊をあてて、これは自分の分とします。金森さん、井関さん、お疲れのところ、どうも有難うございました。

約3週間後の世田谷パブリックシアターでの公演にむけて、金森さんたちは2週間後に東京に入るのだそうです。また異なる舞台での上演に際して、その「場」に応じた深化を極めんとすることはもはや必定の金森さんとNoism。世田谷での公演をご覧になられる予定の皆さま、期待してあともう少しお待ちください。「新生」Noism Company Niigataの第一章『Der Wanderer-さすらい人』は紛れもない名作ですゆえ。

(shin)

まさに陶酔境♪シューベルト×Noism『Der Wanderer-さすらい人』新潟公演、折り返しの6日目

2023年1月28日(土)15時からの『Der Wanderer-さすらい人』公演は、新潟での全11公演のちょうど折り返し点。評判が評判を呼んで、この日もチケットはソールドアウト。「10年に一度」クラスの寒波が残した置き土産の雪があってさえ、開演前のりゅーとぴあ・スタジオB界隈には期待感が熱気となって感じられるようでした。

この日は催し物も重なっていて、駐車場の混雑も予想されていましたが、そこに拍車をかけたのが、その「置き土産」。道幅だけでなく、駐車スペースさえ狭められていたようで、かなり早い時間帯から駐車場に入ろうとする車列は伸びることはあっても、一向に前に進んでいかない状態になっていました。かく言う私も13時半には駐車場の入り口付近まで来ていたのですが、そこから入庫が見通せず、早々に諦めてUターンし、他の駐車場に向かって、ことなきを得たくらいです。(汗)
(*明日1/29(日)も駐車場は混雑が予想されています。お車の方はお早めに!)

全席「ソールドアウト」のため、入場前には「満席の予定です」とアナウンスされたこの日の客席でしたが、見たところ、ざっと10数席の空席を残したまま、開演時間の15時を迎えてしまいました。その後、途中入場される方もおられましたが、恐らく駐車場が原因ではなかったかと。だとしたら、その無念さは如何ばかりか、察するに余りあるものがありました。

それくらい、この日の舞踊家たちのパフォーマンスには観る者を揺さぶるものがありました。シューベルトの歌曲の深い味わいにNoism Company Niigataの舞踊家たちの身体が掛け合わされることで現出したのはまさに陶酔境。若き日の愛と孤独は前半。避けられない孤独、死の訪れの後半。そしてラスト、…。そう、どこをとっても、見どころ満載の豊穣さ。数日前にも観ていたのですが、この日の舞踊家たちはあたかも熟成されて旨みを増した酒のよう。さらりとしていてコクがある吟醸酒のような口当たり。もうホントに酔いしれました。

当初、この日のチケットは買っていなかったのですが、後に金森さんのサイン会が組まれたことを知り、「どうせサインを貰いに来るのだろうし」と買い足したのでした。ですから、入場整理番号もホントに終わりの方で、「ならば」と最後列を狙って腰掛けて観たのですが、さすがはスタジオ公演、それでも近い、近い。更に照明の美しさを目一杯堪能できました。どこの席も全て「良席」です。

そして個人的には、この日は3回目の鑑賞だったのですが、初めて太田菜月さん(Noism2)の出演回にあたりました。『狩人』のソロも、『トゥーレの王』での三好さんとのデュオも、杉野可林さんとはまったく異なるテイストで、両方を観る機会に恵まれた贅沢を噛み締めて観ました。

終演後のホワイエでは金森さんの書籍販売とサイン会(2回目)が待っていました。嬉しくない筈がありません。

ワタクシ、色々な事情があり、公演初日からこの日まで、併せて○冊も購入させて貰い、その全てにサインを頂くことができました。更にお願いしたら、次のような写真まで撮らせて貰いました。もう完全に舞い上がっちゃってましたよね。(金森さん、どうも有難うございました。m(_ _)m)

更に、その後、2Fクローク前のスペースまで移動して、fullmoonさんとお話ししていると、えっ!金森さんと井関さんが通りかかるじゃないですかっ!さすがはNoismの「ホーム」りゅーとぴあ!ご挨拶はしたものの、そこからは、またしても舞い上がってしまって何を喋ったんだか思い出せない始末。ただ、ひとつ覚えているのは、おふたりから「気をつけて帰ってくださいね」など言われちゃったこと。もう諸々贅沢な至福の土曜日だった訳です。

新潟公演はこの先、平日の2/2(木)と2/3(金)のみ若干チケットが買えるようですから、まだ観ていない方も、もっと観たい方も、ご予定をやりくりのうえ、是非この陶酔に心ゆくまで浸って頂きたいと思います。

【追記】この記事へのコメント欄に、fullmoonさんによる翌 1/29(日)新潟7日目公演についての報告もありますので、よろしければご覧ください。

(shin)

今回、金森さんが目指す「詩と音楽に三つ巴で拮抗するもの」を目撃する観客の喜び♪(『Der Wanderer-さすらい人』新潟公演3日目・アフタートークあり)

2023年1月22日(日)、一時、鈍色の空から雪片が舞い落ちる時間帯もありましたが、案じられたほどの降雪にはならず、『Der Wanderer-さすらい人』新潟公演3日目は、この日もチケット完売で、無事、その開演時間(15:00)を迎えることができました。

一時の荒れ模様も…
数分後には…

この日は初日と同じキャストで、シューベルトの歌曲21曲によって構成された「70分(正味60分強でしょうか)」の演目が紡ぎ上げられていきました。この日も私は演者の呼吸音すらダイレクトに届く最前列に腰を下ろし、11人による「さすらい」をおのが全身で受け止めるように見詰めました。

演者がバトンを受け渡すようにして入れ替わりながら、今回の見どころとされるそれぞれのソロが踊られていくのですが、勿論、複数人で踊る場面も拘りの演出振付が施されており、刮目を要することは言うまでもありません。つまり、70分間、様々に注視して臨むべき演目と言えるでしょう。

新潟全11回公演のうち、「第1クール」最終日のこの日は、11人の舞踊家たちの伸びやかさが増していたように見ました。世界初演の舞台は順調な滑り出しを示したと感じます。

終演後、客席はほぼ全員が残ったままに、「丸3年振り」(金森さん)となるアフタートークが開催されました。そのことをまず喜びたいと思います。私たちに向き合って腰掛けた金森さんと井関さんが柔和な表情を浮かべ、ユーモアを交えながら、質問に答えてくださいましたし、客席も「この日を待ってました」とばかり、例外なく、20分間の「アディショナルタイム」を満喫していました。
では、井関さんの「Noism国際活動部門芸術監督の井関佐和子です。こちらはいつもの金森穣さんです」で始まった、その折のやりとりからかいつまんでご紹介いたします。

Q:全体のテーマは?
-A(金森さん):愛です。何故、人はさすらうのか。他者に対する愛、そしてそれを超えて、自分が輝ける場所を求めてさすらう。そして愛に付随するものとしての孤独と死。シューベルトの700曲を超える歌曲を聴いて、音楽家の魂のなかに聞き取った。

Q:パンフレットの表紙のメンバーの表情はどういう表情なのか?
-A(井関さん):まずはメンバー一人ひとりの表情がわかるもの。「色々な顔であって欲しい」と穣さん。そこからデザイナーさんが選んだ。
-A(金森さん):証明写真や遺影みたいにはなりたくなかった。(笑)多様性があったらいいね、と。
-A(井関さん):何考えているのかわからないのがいいね、と。(笑)

Q:歌曲のソリスト(歌手)についてはどう選んだのか?
-A(金森さん):メンバー一人ひとりを思い浮かべながら、色々な録音から選んだ。そして、実際に踊るのを見て、合わないとなったら、また探した。
-A(井関さん):同じ曲なのに、あんなに違う作品に聞こえるのが面白かった。自分も一度、男性の声でやってみたら、全然違うな、となった。(笑)

Q:赤いバラが頻繁に使われているが、思い入れがあってのことか?
-A(金森さん):他の色は考えなかった。意外と色々考えてそうに見えますよね。(笑)イメージしてみたら、そこにあったバラが赤かった。

Q:手応え、印象、課題について。
-A(金森さん):作品は出来上がると見守るしかない。彼らが一期一会で色々なものを見出して欲しい。生き切って欲しい。それを届けて欲しい。
-A(井関さん):「ひとりで立つ」のは足が一歩も出ないくらい今でも怖い。普通ではない危機感を感じて、「怖いと思って欲しい」と言った。慣れにならないように、怖い思いをしていって欲しい。

Q:21曲を選曲した理由は?
-A(金森さん):振付家としてインスピレーションが湧くもの、そして、彼らが踊っている姿が見えたものを選んだ。加えて、「イブニング公演」全体を通してのリズムも考慮しながら、パズルのようにして嵌めていった。そして、今のNoism0とNoism1にしか出来ないものを、と考えた。

Q:「ソロ」の構成に込めた思いは?
-A(金森さん):これからのNoismに何が大切か考えたとき、一人ひとりがお客様を呼べるようになること、一人で立てるような個々人がここ新潟で活動しているのが夢。

Q:歌曲の内容との関連は?
-A(金森さん):関係性はあるが、一義的なものではない。詩と音楽と三つ巴、四つ巴になり、拮抗するものを目指している。
-A(井関さん):今回、メンバーに歌詞の日本語訳を渡したのは珍しいことだった。
-A(金森さん・井関さん):「大人の事情」から、その日本語訳を示すことは出来ない。色々探してみて欲しい。

Q:演出振付されたものを踊るとき、個々のダンサーが担う責任範囲として、「表現」はどう生まれてくるのか?
-A(井関さん):演出の世界観・時間の流れ・振付の意図を理解して、作家を超えたものを返すのが至上命題。与えられた言葉や示された動きではなく、作家の大脳に働きかけること。頭の奥に何が潜んでいるのか、それを探り、奥へと入り込んでいく作業が楽しい。
-A(金森さん):方程式は何もない。作家と実演家がそうした相手を見つけること、それをベジャールさんは「愛」と呼んだ。

Q:木工美術の近藤正樹さんとの出会いは?
-A(金森さん):8年前、『カルメン』のとき、友人夫妻を介して知り合った。美術をお願いすると、いつも面白がってくれる。
-A(井関さん):いつも想像を超えてきてくれる。

…と、そんなところでしたでしょうか。


最後に、この度、夕書房さんから刊行された金森さんの著作『闘う舞踊団』について触れられると、「何を目指しているか」が分かって貰える筈、と金森さん。私は(一度目)読了しましたが、まったくその通りと思いました。必読の好著ですので、是非お買い求めください。
(これは個人的な事柄ではありますが、私、光栄にも、終演後のホワイエにて、本日の公演に足を運ばれていた「ひとり出版」夕書房・高松夕佳さんその人にご挨拶したうえ、この本の素晴らしさと受け取った自身の感激について直接お伝えすることが出来ました。とても嬉しいひとときでした。)

更にもうひとつ。今週の水曜日と木曜日にはまだまだ席に余裕があるため、是非お越しください、と金森さん&井関さん。新生Noism Company Niigataの船出、或いは意欲的な「さすらい」を是非お見逃しなく♪

【追記】この記事へのコメント欄に、fullmoonさんによる 1/25(水)公演および 1/26(木)公演+2回目のアフタートークについての報告もありますので、よろしければご覧ください。

(shin)




目を釘付けにされ、心は掻きむしられ…『Der Wanderer-さすらい人』新潟公演初日

2023年1月20日(金)、この日から強い寒気が流れ込むとされ、大荒れ予報が出ていた新潟。雪は落ちてこなかったものの、夕方からは風雨が強まり、シューベルト『魔王』よろしく、嵐のなか疾走する「ト短調」気分が濃厚に漂うなか、車でりゅーとぴあを目指しました。

新生Noism Company Niigataによる『Der Wanderer-さすらい人』。世界初演となる新潟公演初日のチケットは早くから「完売」。新しい年の「Noism初め」を待ち焦がれていた人が如何に多かったか分かろうというものです。

入場整理番号順にスタジオBに進むと、この日、私は最前列の席を選び、腰を下ろしたのですが、緞帳がなく、現しのままの四角く区切られたアクティングエリア内には既にむこう向きに立つ井関さんの不動の姿がありました。全ての客席が埋まったのは19時を数分まわった頃。やがて場内が暗くなり、同時に効果音が高まると、それは始まりました。

そこからはもう、深遠なシューベルトの歌曲に浸り、これまでのNoismには見当たらなかった類いのソロの舞踊の連打に目を釘付けにされるだけでした。愛が踊られる前半も、その甘美さというより、心を、胸を掻きむしられるような満たされざる気持ちの切なさが横溢しています。そして後半は死が最前面に押し出され、不穏な禍々しさが際立ちます。そして待ち受けるラストのあの味わい。70分の新作をあっという間に見終えました。詳しくは書けませんが、もう必見です。

終演後のホワイエでは金森さんの『闘う舞踊団』(夕書房)をはじめとする書籍販売のコーナーが設けられていて、多くの方が列を作って買い求めていました。私も2冊買いました。明日は一日、読書三昧を決め込むつもりで、そんな土曜日も楽しみでなりません。勿論、サイン会にはまた並びます。

帰宅してからは、金森さん+東京バレエ団の『かぐや姫』第2幕ほか(上野の森バレエホリデイ2023)のチケットもゲットして、もう色々に嬉しいことづくめの金曜日でした。

新体制に移行したNoism Company Niigataによる第一作目『Der Wanderer-さすらい人』70分、それを見詰める者も、一人ひとり「人生」をさすらうことでしょう。そしてそのさすらいの果てにどこに連れて行かれることになるのか、是非その目で受け止めてください。チケットは絶賛発売中。「完売」の回もありますので、お早めに。

【追記】この記事へのコメント欄に、fullmoonさんによる 1/21(土)新潟2日目公演についての報告もありますので、よろしければご覧ください。

(shin)