世田谷『Der Wanderer-さすらい人』、穿たれた開口が深淵となり、直截に生と隣り合う舞台(東京公演中日)

2023年2月25日(土)、前日のfullmoonさんによる『Der Wanderer-さすらい人』東京公演初日レポを読み、どこがどう変わっているのだろうかと尽きせぬ興味を抱いて、新潟から新幹線に乗り、世田谷パブリックシアターを目指しました。

三軒茶屋駅すぐの劇場には迷うことなく着き、チケットを切って貰って、趣のあるロビーに進むと、正面に新潟からの遠征組がいて、手を振ってくれていました。そこにはfullmoonさんの姿もあり、笑みを浮かべています。前日の舞台については口にしませんし、こちらも訊きません。しかし、その笑みは「楽しみにしていてね」と雄弁でした。

その後、更に新潟や東京の友人も着き、さして広さはないロビーが大勢の人で埋まってきます。その雰囲気は、入場整理番号順に並んだ新潟公演とは明らかに異なるものでした。客席への入場案内を待ちながら、公演についての話題は敢えて避けつつNoismサポーターズ仲間で四方山話をしていたところ、柱の背後から、「こんにちは」とひとりの若い女性が私たちに声をかけてきてくれました。女性はすぐ続けて「西澤です」と名乗ってくださいましたが、声に振り向いた私たちにはそれは不要でした。元Noism1の西澤真耶さんの笑顔!嬉しいサプライズです。少しお話しができましたし、私など、一緒に写真も撮って貰いましたから、嬉し過ぎました。

そうこうしていると、遂に入場案内があり、ロビーのみんなも階段を上がり、客席へと移動していきます。その踊り場には金森さんが(お父様と話しながら)立っていましたから、近づいて行って挨拶する人もいます。その後、入口付近に場所を移した金森さんに、今度は私たちも近付いて行き、揃って手を振ると、金森さんも笑顔で手を振り返してくれましたので、満たされた思いで各々客席に向かうことができました。

客席に足を踏み入れるとすぐ、舞台上に新潟公演のときとの違いをまずひとつ認めました。「ということは…」、それは導入部分の演出が異なるということを意味します。ここでも開演を告げるベルはなく、客電もそのままに世田谷『Der Wanderer-さすらい人』が滑り出します、いかにもゆっくりと。あの効果音が聞こえてくるのはそれからのことです。で、ややあって、漸く舞台上のもうひとつの違いをはっきり認識しました。黒い矩形。「やはりそうだったのか!」この日の私は2階席の最前列を選んでいましたから、舞台との距離から、しかと視認するには若干時間を要したような按配でした。

そこからは、少し見下ろす具合にして、舞台全体の「画」の推移を楽しみました。照明はよりエモーショナルに、豊かさを増して、一段と劇的になって、作品を推し進めていきます。

「メメント・モリ」(死を忘れるな)。穿たれた開口は象徴(シンボル)であることを超えて、より直截に生と隣り合う深淵として可視化され、迫り出してきています。愛をめぐる孤独。満たされぬ思い。それ故のさすらいと、紛れもなくその舞台であるところの人生。そして…。シューベルトのクリエイティヴィティと金森さんのそれとが拮抗することで立ち現れてくる70分間の深みに心は揺さぶられ続けるほかありません。

ラストシーン。その情感。「そのままお客さんを帰す訳にはいかない」(金森さん)とは語られているものの、それは、近いところでは『Near Far Here』のラストなどとも呼び交わし、金森さんのクリエイティヴィティの根幹にあるものが表出されているもので間違いありません。今回もまさに極上の余韻…。

終演。ロビーに『闘う舞踊団』の夕書房・高松さんの姿を見つけたので、fullmoonさんの傍らで一言だけご挨拶をさせて頂くと、「ああ、新潟の…」と思い出して頂けて、これも良かったなと思いながら、時間のこともあり、急ぎ、ホテルに向かいました。(fullmoonさん、すみませんでした。)

少し個人的な事柄も含む書き方になるのですが、ご容赦ください。つい先日、還暦を迎えて、「ここまで色々あったなぁ」とか思ったりする気持ちと今回の『Der Wanderer-さすらい人』とが交錯するようなところがあったりして、私の人生のこの時期に豊かな色合いを添えて貰えたことに、とても嬉しい気持ちに浸れています。そしてそんなふうな事って、様々大勢の人たちの身の上にも起こっているのだろうなと思うとそれもまた悪くないなとも。遠くにオレンジ色の東京タワー、美しい夜景を望むホテルのラウンジに家族3人。心地良く酔っていたのはジントニックなどアルコールの作用によるものだけではなかった筈です…。

そんな奇跡のような舞台『Der Wanderer-さすらい人』も遂に大千穐楽を迎えます。もう目にする機会はただ一度のみ。必見です。お見逃しなく!

(shin)

「ランチのNoism」#11:西澤真耶さんの巻

メール取材日:2021/5/26(Wed.)

新潟・市民映画館シネ・ウインドを会場とする井関さんのトークイヴェント付き映像舞踊『BOLERO 2020』特別上映(6/5)も一週間後に迫りました。チケットは好評発売中。もうお求めになられましたか。当ブログも更新に間が開いてしまいましたが、今回お届けする記事は前回に続き、こちらもご好評を頂いている「ランチのNoism」その11回目です。ご登場頂くのは西澤真耶さん。西澤さんと言えば、数ヶ月前に新潟のタウン誌「月刊にいがた」とそのWeb版「日刊にいがた」で、「自炊に目覚めた」としてお料理を学ぶ様子が紹介されていました。クッキングライフ nukunukuさんでのそのときの模様はこちらからどうぞ。で、今回は「その後の西澤さん」をお届けしようという訳です。お待たせしました。では、いってみましょうか。

♫ふぁいてぃん・ぴーす・あん・ろけんろぉぉぉ…♪

今日もりゅーとぴあ・スタジオBに舞踊家たちの昼がきた♪「ランチのNoism」!

*まずはランチのお写真から

「5月最終週メニュー」でしょうか

1 今日のランチを簡単に説明してください。

 西澤さん「今日はキャベツとソーセージのコンソメスープとセロリの漬物です。あと野菜ジュースです」

 *おお、これはまた少食のランチですね。あと、私など炭水化物なしでは食べた気がしないんですけれど、摂りたくなりませんかねぇ、炭水化物…。

2 誰が作りましたか。普通、作るのにどれくらい時間をかけていますか。

 西澤さん「offの日にまとめて作ります。作るのに1時間半くらいですかね」

 *「作り置き」派なんですね、西澤さん。お料理って、時間に追われながらやるのでなければ、凄くいい気分転換にもなりますし、目に見える達成感があって、offの日をゆったり過ごすのには適していたりもしますよね。楽しいですし。

3 ランチでいつも重視しているのはどんなことですか。

 西澤さん「量です。重くなりすぎないようにとササっと食べられて休憩の時間を長く取れるようにしています」

 *こちらの量ですと、決して重くなりすぎたりってことはなくて、逆に、軽すぎたりはしないかと心配しちゃったりするんですけれど…。(汗)あと、前回のスティーヴンさんも仰ってましたが、食後の時間を長く取ろうとするのは皆さん一緒なのですね。でも、またすぐに激しく動くことになるのだから、それって当たり前か。大変ですよね。失礼しました。

4 「これだけは外せない」というこだわりの品はありますか。

 西澤さん「ランチに限りませんが、1日のうちのどこか一食でお米を食べることですね。新潟はお米が美味しくて!!あと緑茶は欠かせません」

 *遂に炭水化物について触れられましたが、それも新潟のお米!そのこと自体、嬉しく思うものですが、もっとたくさん召し上がってもよいのでは、と思っちゃったりして。だって、ほっそりしてますもん、西澤さん。あと、緑茶、リラックス効果があったり、血糖値の上昇を抑えたりする優れものであるだけでなく、あの澄んだ緑、見た目にも美しくて、気分が上がりますよね。

5 毎日、ランチで食べるものは大体決まっている方ですか。それとも毎日変えようと考える方ですか。

 西澤さん「自分で作る時は1週間分の作り置きなので1週間は同じメニューです。
コンビニの場合はおにぎりとゆで卵です」

 *「作り置き」は食事の機能面を重視して食べる合理的なスタイルですよね。日々の稽古やリハーサルの合間に摂ることを考えれば、そうしたランチで充分な訳なのですね。それから、日々同じ物を食べることのメリットを歌舞伎俳優の市川海老蔵さんも口にしていました。曰く、体調管理がしやすいのだと。身体のコンディションに敏感であることが求められますからね。

 *で、西澤さんが他の日のランチ画像もご紹介くださいました。

ある日(1)

  西澤さん「卵焼き、ピーマンと竹輪のきんぴら、無限にんじんと冷凍のポテトです」

 *はいはい、ちゃんと作ってらっしゃいますねぇ。割と和のテイストのお料理ですね、こちら。そして、「無限にんじん」!所謂「無限ピーマン」みたいに「やめられない、とまらない」って感じで、やみつきになっちゃうヤツですよね。ぱっと見、既に美味しそうです♪

ある日(2)

  西澤さん「卵焼き、ピーマンの肉詰め、醤油ベースの鰹節入りの南瓜サラダです」

 *しっかりしたもの作ってますね。そしてこちらには白米付き!ごはんを目にして安心しましたって人、きっと私だけじゃない筈。

 *それにしましても、色々丁寧に教えてくださる西澤さん、やっぱり真面目で誠実な方だなと。心配りのあるご紹介、どうも有難うございます。

6 公演がある時とない時ではランチの内容を変えますか。どう変えますか。

 西澤さん「公演の時はコンビニメニューです。おにぎり1つとゆで卵1つ。公演前におにぎりを食べて、公演後にゆで卵を食べています。本番前は緊張してあまり食べられないのと、早く食べて、早く準備して、早く舞台に行って自分のペースで落ち着いて確認をしたいので手軽なのを食べています」

「公演の時はコンビニメニューです」

 *こちらも画像付き、有難うございます。そしてこちら、併せて食べても決して重すぎたりはしない感じですが、それでも、公演の前と後に召し上がってるんですね。公演前には重圧も大きいのだと察しますが、その重圧から解放された公演後にはもっとガッツリいきたくなりそうなものですけれど、私みたいな者は…。でも、そういう食べ方って千穐楽の後までお預けなんですよね、きっと。(汗)

7 いつもどなたと一緒に食べていますか。

 西澤さん(鳥羽)絢美さん(林田)海里さんです」

 *おっ、それって、過日のメンバー振付公演での『Flight From The City』のときの3人の名前がそのまま揃う訳ですね。林田さん演出振付の、おふたりが踊られたとてもリリカルな作品で、うっとりさせられたアレ。な~る。波長が合うんですね。また、ゆで卵では鳥羽さんと重なり、公演時の画像に写ってた「大きな鮭ハラミおにぎり」のチョイスは林田さんと重なってますし。

8 主にどんなことを話しながら食べていますか。

 西澤さん「改めて質問されると何話しているかな〜? あまり話していないのかもしれないです、みんな休憩の時間を大事にしているので」

 *with コロナで推奨される「黙食」の以前に、そのあたり、お答えはほぼ皆さん、共通している感じがします。午後に向けて身体を休めるのが最優先。そして踊っている最中に身体で会話しているプロの舞踊家たちであってみれば、自然なことなのでしょうね。

9 おかずの交換などしたりすることはありますか。

 西澤さん「海里さんはミカン、チャーリー(・リャン)さんはおやつをいつも分けてくれます。なのでチョコとかを持ってきた時はみんなに配っています」

 *ここでも with コロナってことで、おかずの交換はなくなっても、デザートみたいなものをあげたりするちょっとした気遣いは集団のなかでの潤滑油的機能を果たしているんですよね。

 *チャーリーさんがいつも分けてくれるおやつってどんなものなのか、興味を覚えたので、その点を訊ねてみました。すると、「チャーリー自身が持ってきたチョコとかクッキーとかナッツを分けてくれます」(西澤さん)とのことでした。配ったり、配られたり、「絵」が浮かんできますね。

ほぼ直角に腰を折って覗き込むジョフ
この日、視線の先には「野菜生活100」

10 いつもおいしそうなお弁当を作ってくるのは誰ですか。 料理上手だと思うメンバーは誰ですか。

 西澤さん「ゆかさん(=浅海侑加さん)です!ゆかさんの作ったケーキが大好きです!
あとりお(=三好綾音さん)も!りおから教えてもらったレシピを作ってランチに持ってくることもあります」

 *おお、西澤さんのお答え、気になったので、少し深掘りして訊いてみました。先ずは浅海さんのケーキってどんなケーキなのか訊ねたところ、「ゆかさんの紅茶のタルトとチョコタルトが絶品です。あとエクレアも!」(西澤さん)とのお答え。ぬおぉ~!絶品とな!なんと本格的な!ホント多才!驚きです、浅海さん!(←エクスクラメーションマーク、思わず連発しちゃいました。)

 *続いて、三好さんレシピについて訊いてみると、「りおから教えてもらったものは写真にある無限にんじんです。りおのお家でいただいた時に感動してご飯を何杯もおかわりしてしまいました(笑)」とのお答え。良い間柄であることに喜んだほか、「ご飯を何杯もおかわり」って件に漸くホッとしたりしてました。(笑)

 *そんな浅海さんと三好さん。ランチが気になるふたり浮上、…って感じですね。

 …はい、通常の「ランチのNoism」ですと、共通の質問はここまでなのですが、今回、西澤さんにはもうひとつ追加で訊ねてみました。冒頭にご紹介した雑誌とWebとに掲載されたお料理を学ばれた件に関してです。

11 以前、「月刊にいがた」で料理を教えて貰っている記事がありました。それ以後、料理についての意識に何か変化はありましたか。

 西澤さん「『月刊にいがた』の取材で教わってからお味噌のお出汁の大切さを知りました。今までは顆粒だしだったり、出汁入りのお味噌を使っていたのですが、煮干しからしっかりお出汁をとったお味噌汁が美味しすぎて!あれ以来お味噌汁を作る時は煮干しだったり海老だったりでお出汁をとって作っています。便利なものは増えていますが実際にある食材で手間暇かけて作るだけで美味しさが増して幸せな気分になり、食事は心身を健康に保つものなんだと実感しました」

 *手間暇かけて作られた「本物」の価値、それはNoismの舞台も同じですね。ですから、私たちもやみつきになって、「やめられない、とまらない」の「無限Noism」状態に置かれざるを得ない道理です。…いやあ、こんな素敵な答えが返ってくるなんて、いい質問しちゃったな、みたいな。ここまで西澤さん、色々とどうもご馳走様でした。

で、西澤さんからのメッセージも預かっていますよ。では、そちらをどうぞ。

サポーターズの皆さまへのメッセージ

「サポーターズの皆様、いつも応援してくださり、劇場に足を運んでくださりありがとうございます。皆様のお陰で私達の活動は支えられ、日々のリハーサルに集中することが出来ています。
また劇場でお会いできる日を楽しみにこれからも精進して参りますので応援よろしくお願いします」

前シーズンから続く閉塞感の否めない状況下にあって、内外、多方面に渡って存在感を示し続けてきたNoism Company Niigata。その17thシーズンもいよいよ佳境。まったく目が離せませんよね。見逃したら損をします、一緒に刮目して参りましょう。今回もお相手はshinでした。では、また。

(shin)

Noismかく語る・2020春③ - Noism1メンバー後編

あらゆるものが遠のき、見慣れた日常が一変してしまった感のある日々。未曾有の春の災厄の向こう、まだ見ぬ光輝に満ちたNoism版『春の祭典』へと私たちを誘ってくれるNoismから届いた言葉。3回目となる今回は、Noism1メンバーの後半というかたちで、5人をお読み頂きます。

スティーヴン・クィルダン

現在、私たちは『春の祭典』のリハーサルとクリエーションのさなかにいます。これはとても面白く複雑に込み入った音楽です。実際、私は以前にマーク・ボールドウィン(Artistic Director of Rambert Dance Company:2002-2018)によるヴァージョンを踊ったことがあります。偶然にも元Noismダンサーの浅海侑加さんとも一緒に踊りました。何年も前のことですが。

それから再びこの曲に戻ってきて、異なる解釈を体感することはとても面白いことです。音楽に合わせて強度をもって動くことは楽しいことです。その瞬間、大きな絵の中のほんの小さな一部になるのみです。私はその絵がどう仕上がるのか知りたくてなりません。更に、観客の皆さんがこの作品から何を得るのかも知りたくてなりません。現時点で、踊る私の目に映ずるものからはそれらはまったく想像もつきません。深く作品の中に入り込むことで、私に見えるものは画されてしまうからです。

また、『Fratres III』も踊ります。こちらに関しては、私たちは素材を学び始めたような、それでいて、常に未知のものででもあるかのような、そんな感じがします。他のメンバーは『Fratres I』を踊っていますが、私は出ていませんし、最善を望む気持ちです。

最後に、今、世界は奇妙な時間の中にあります。英国を離れて、封鎖された街の人々、友人、家族や仲間を見ながら、世界の反対側にいる自分が今も活動できていることには憂鬱な気分もつきまといます。それは芸術について数多く自問することにもなりましたが、一方で、寛大にも多くのものがオンラインで共有されている現状には心温まるものがあります。 

(日本語訳:shin)

*スティーヴンさんによる元原稿(英語)はこちらです。

Currently we are in the rehearsals and creation of the rite of spring. This is a very interesting and complicated piece of music.

Actually I previously danced a version of Rite of Spring by Mark Baldwin. This happen to be with Yuka-san(ex noism dancer), many years ago.

It is very interesting to then come back to the music and feel the different interpretations.

It is fun to be working intensely with the music.  At the moment I am but a small part in the big picture. I am curious as to how that picture will be. I am also curious about what the audience will get from the piece. I really have no idea at the moment from my perspective. Being so inside a piece can create this perspective.

Also we will do Frates III, which I have some sense of as we have begun learning some material but it will also be new. Whilst others were in Frates I before, I was not. I hope for the best.

Ultimately this is a strange time in the world. Being from the UK, seeing people, friends, family and colleagues in lockdown whilst I am on the other side of the world still working has been melancholic. It has made me question a lot about the arts but seeing so much being shared online so generously has warmed my heart.

Photo: Noriki Matsuzaki

(イギリス生まれ)

タイロン・ロビンソン

今、この時期にあって、芸術を支えることはかつてないほど重要なことになっています。土地の文化、そして過去と未来は、その土地の人々が創り出す芸術やパフォーマンスによって形作られる性質のものだからです。ですから、Noismの作品が作り続けられるのなら、その土地の、そして同胞の支えが必要なのです。ダンサー、実演家、或いは芸術家としての私たちが目指すものは、私たちのクリエーションを共同体にもたらし、私たちの情熱を一般の人々と共有することです。芸術とはあらゆる人を迎え入れる家族のようなものです。そして、私はいつかNoismがダンスと共同体の連結を成し遂げ得るカンパニーになることを願うものです。コロナウイルスによるパンデミックが過去のものとなったとき、全ての人を再び結びつける役割を果たすものは芸術でしょう。ですから、皆さん、どうか芸術を支えてください。今、芸術を死なせないでください。どうか宜しくお願いします。 

(日本語訳:shin)

*タイロンさんによる元原稿(英語)はこちらです。

Now during this time, it is more important than ever to support the arts. A county’s culture, both past and future is heavily shaped by art and performance that its people create. So if the work of Noism is to continue it needs the support of its county and its fellow countrymen. As dancers, performers and artists our goal is to bring our creations to the community and to share our passion with the public. The arts are like a family that welcomes everyone and I hope Noism will some day be the company that can bring dance and the community together. When the COVID-19 pandemic passes it will be the arts that will reunite everyone, so to everyone please support the arts, and don’t let it die now. Kindest Regards

Photo: Noriki Matsuzaki

(オーストラリア生まれ)

鳥羽絢美

様々なカンパニーや振付家によって使われ、創られ、踊られてきた『春の祭典』。そんな楽曲にNoismメンバーとして挑むことができること、嬉しく思うと共にとても身の引き締まる思いです。皆様に届けられる日を心待ちにしながら、日々稽古に励みます

Photo: Noriki Matsuzaki

(とばあやみ)

⑩ 西澤真耶

「『春の祭典』のクリエーション」穣さんはじめNoism0+1+2の22名が“音“をテーマに真摯に向き合っているこの作品がこの先本番までにどのように仕上がっていくのか、そして本番を重ねどこまで進化していくのか、私達にもわからない。まさに実験舞踊…?

Photo: Noriki Matsuzaki

(にしざわまや)

三好綾音

ストラヴィンスキーの音楽は、一瞬眉を潜めてしまうけれど、しばらく経つと虜になっていて、気がつくと嵐が去った後、騒いだ血の感覚だけが残っている様な。そんな感じがたまりません。しかし、この曲が書き下ろされた当時のダンサー達はどんなに戸惑っただろうと、リハーサル中はそんな苦労も想像します。(笑) 音楽史、舞踊史共に大きなインパクトを残してきた『春の祭典』で新たな創作に関わる機会に恵まれ、とても光栄に思います。是非、楽しみにしていてください。

Photo: Noriki Matsuzaki

(みよしりお)

さてさて、連載最終回の次回は、フレッシュなNoism2のメンバーをお届けします。森加奈さん、池田穂乃香さん、カナール・ミラン・ハジメさん、 杉野可林さん、長澤マリーヤさん、橋本礼美さん、坪田光さん、そして中村友美さんと、ドド~ンと一挙に8名を掲載いたします。どうぞお楽しみに。

(shin)

「私がダンスを始めた頃」⑪  西澤真耶

私が舞踊の世界に入るきっかけとなったのは4歳の時の出来事です。ある日突然、友達から「一緒にバレエやらない?」と誘われて、「うん、やる!」と二つ返事で答えたのがはじまりです。

バレエなんて見たこともなければ聞いたこともなく、何も知らないまま、近所の文化センターで開かれている講座の1つ『子供バレエ教室』に友達と応募しました。しかし応募人数が多かった為に抽選になってしまい、そこで私だけが入ることに。

バレエについての情報が何もないまま教室の扉を開けたのですが、身体が硬くて、音痴で、振り覚えの悪い私にはとても辛く、すぐにでも辞めたいと思っていました。ですが、負けず嫌いの私は自分に出来ないことがあるのが気に入らなくて、誰にも見られないところで自主練をしていたのです。(家族にも見られないように隠れていました。)

練習の甲斐があり徐々にできるものが増えてくると、バレエの先生はすぐに気づいて褒めて下さるので、それが嬉しくて、バレエは辞めずに続けてこられました。

小学校4年生の時、バレエの先生が出演している舞台を観に行きました。『くるみ割り人形』でした。客席に座って舞台を観たのはこの時が初めてで、キラキラした衣裳や舞台の華やかさにも感動したのですが、私の目を釘付けにしたのはダンサーの美しい身体でした。この時の感動から私のバレエへの想いは変わり、後に11年経って今の仕事に繋がりました。

“美しい身体”これは今でも私の目標です。 これからもずっと自身の身体を用いて追求していきたいと思います。

(にしざわまや・1997年東京都生まれ)

*2021年7月退団