師走の幸福な週末、残す公演は今日の1公演ということで、朝からソワソワし通しだった2019年12月15日。寒くないと言えば嘘になってしまうのでしょうが、幸いなことに風もなく、前日あれほど身を震わせた寒さは和らぎ、誰もがこれくらいなら御の字と思っただろう、そんな日曜日。県外からのお客さんも多く詰めかけるなか、『Double Bill』新潟公演千穐楽の舞台を目に焼き付けてきました。
前の記事でご紹介していた、Noism2のメンバーが日替わりで立つ物販コーナー、この日はこんな感じでした。『ある船頭の話』ポスターの「赤」にも負けないくらい、華やぐ「Farben(色)」がありますよね。
アフタートークで金森さんが客席に向けて訊ねたところ、県外の方も大勢いらしていたのですが、その要因のひとつに金沢21世紀美術館が企画した高校生限定の「劇的!バスツアー」もありました。とても価値のある企画ですね、コレ。
鑑賞後のホワイエには、尊敬するサポーターズ仲間がツアー参加者にNoismメモパッドをプレゼントする一幕もありました。
「もっとおもしろい人生」にNoismが一緒にあることを、(折角この時期ですから、映画『スター・ウォーズ』風に、)”May Noism be with you!(Noismがともにあらんことを!)”と祈りたいと思います。
先を急ぎ過ぎました。話を公演に戻しましょう。この日の公演、一言で言えば、凄いものを観た、それに尽きます。気持ちや魂と不可分の身体が現前、或いは降臨していた、またはまったく逆に、何かが憑依した身体がそこにあった、そうとしか言えないようなパフォーマンスが続きました。圧倒された客席は水を打ったように静まり返り、終演後もその沈黙を破ることが憚られて、しばし拍手することさえ儘ならない状態になっていました。心底揺さぶられた人はみだりに音など発したりできないものなのですね。しかし、その呪縛から解き放たれたらもうその先は盛大な拍手、「ブラボー!」、そしてスタンディングオベーションが場内に広がっていったことは言うまでもありません。
先ずは金森さんの『シネマトダンス―3つの小品』。『クロノスカイロス1』、光輝溢れる「若さ」ととどまることなく刻まれていく「時間」。仲間、そして思い出。『夏の名残のバラ』、晩秋或いは初冬の夕陽が差し込む舞踊家の晩年。井関さんと山田さんによる極上の抒情。『FratresII』、人ならぬ身と化したか、圧倒的な舞踊の果てに「舞踊」そのものとして現前する金森さん。鬼気迫る、その超弩級の迫力が、場内を張り詰めた空気で包み、誰一人微動だにできない雰囲気の仕上げをしました。
休憩後に森さんの『Farben』、この並び順はこれ以上ないほど完璧なものと思い知ることになりました。張り詰めた緊張感を保ちつつ、各々の個性(「色」)が歌いだすことをもって完成する作品、それが森さんの『Farben』だからです。そしてそれをやり遂げた12人の舞踊家たち。初日のアフタートークで森さんが舞踊家とともに作品が「熟成していく」期待を語った通りの歩みを新潟公演千穐楽の舞台で示した12人。そのカーテンコール。解き放たれた舞踊家、解き放たれた客席、そこに溢れていたのは笑顔。それ以外の何物でもありませんでした。
(この日は、前日からの大幅な変更はなかったように見ました。蛇足でした。)
公演後のアフタートーク、金森さんとNoism1メンバーが壇上に勢揃いすると、とても色鮮やかで、今回の公演とぴったりに思えました。トークの全体から、多国籍度が増した今年のメンバー、感じ方の違いを身をもって知ったうえで、お互いに助け合っている様子が伝わってきました。
新メンバーのスティーヴンさんが、街中でも、カンパニー内でも誰もが親切で助かっている。困っているのは母国(英国)の友だちとコンタクトをとる際の時差であると語れば、タイロンさんは海に近い新潟市は故郷(豪州)と似ている。日本語が読めないので、常に誰かに訊かなければならない点で苦労していると話しました。また、Noismに入ったことに関しては、スティーヴンさんが、公演を通して共有することができる。もっと共有したい、もっと公演の機会があったらいいと語った一方、タイロンさんは、毎日、鍛錬できる流れがあって嬉しいとしながら、日本文化やルールなどが母国と異なる点には苦痛もあったりするとちょっぴり本音も覗かせました。
舞踊についてではありませんが、会場から母国・香港の状況について心境を訊ねられたチャーリーさん、知人が困難な目に遭っている状況に、言葉を絞り出すようにして、まず、”They’re fighting for the freedom.(彼らは自由のために戦っている)”と切り出し、続けて「世界中からの暖かい支援に感謝している」と述べたあと、「あなたが正しいと信じるなら、進むべきだ。どこかで誰かがあなたの信じることに気付いてくれるだろう」の言葉にその思いを込めました。冬休みには香港に帰るそうです。状況の好転を祈ります。
また、森作品を観て、メンバーに新たな発見があったか訊ねられた金森さんは「そんなにない。(森さんは)彼らの魅力を引き出して創作するスタイルをとった。しかし、私の方が彼らをよく知っているので」と答えました。
アフタートークからはもうひとつだけ。「金森さんと森さん、どちらが厳しいか」という会場からの質問を金森さん経由で突然ふられたのは鳥羽さん。少し困った様子で、「違った厳しさです」と答えて、会場から安堵の笑いを引き出していました。他にも興味深いやりとりも多かったのですが、ここではこのくらいにさせていただきます。悪しからずということで。
Noismが彩った師走の新潟市、3日間。その「Farben(色)」は私たちのなかに取り込まれて、忘れ得ぬ鮮やかな思い出となりました。
そのなりゆきはひと月強の後、新年1月17日~19日のさいたま市に引き継がれます。ご覧になられる方々、驚く用意をしてお待ちください。
(shin)
shinさま
3日間どうもありがとうございました!
公演はもちろん素晴らしかったですが、shinさんのブログも素晴らしいです!大感謝です!!
大盛況、大成功で新潟公演が無事終了してホッとしています。
次は来年1月の埼玉!
今から楽しみです♪
そして6月は『春の祭典』!
実験舞踊vol.2、Noism0,1,2総出演です!
そしてシリーズ完結編『FratresⅢ』!(Noism0,1)
ますます楽しみですね♪
その前に、3月はNoism2公演があります♪
その前に、明日から3日間、17日 県内高校ダンス部、18日 目の不自由な方たち、18日 市内若手舞踊家向け のワークショップが開催されるそうですね。
公演が終わったばかりなのに、市との契約内容実現に向けての早速の活動、素晴らしいことです!
Noism Company Niigata、ますます応援してまいりましょう!!
(fullmoon)
fullmoon さま
コメント、有難うございます。
圧倒的な公演でしたね。
それに突き動かされて力が入った文章になっていったようです。
あの雰囲気の一端でも伝わっていれば幸いです。
客席のリアクションも毎日別物でした。
ぐるり見回して見たところ、ほぼ満席に見えた楽日の客席、
幕が降りても、誰ひとり慌てて拍手せず、
それ故、そこに生まれる静寂。
あの張り詰め方には何か尋常ではないものがあり、
体がゾクッとしたのを覚えています。
その後訪れた堰を切ったような大喝采との間の落差と併せて、
今ふうに言えば、まさに「ネ申回」。
舞台芸術の醍醐味を満喫いたしました。
今後も活動目白押しのNoismですね。
課せられた「課題」に対して、
金森さんの半端ない意気込みを見るような思いです。
まさに「Noism第二章」。
そして、金森さんが『春の祭典』(6月)なら、
森優貴さんは『ボレロ』(8月・アーキタンツ)!
このふたつ、2020年のダンスシーンを席捲すること間違いありませんね。
いろいろ楽しみでなりません♪
(shin)
皆さま
12月27日(金)の夕刻、
新潟のローカル局BSNラジオ
『石塚かおりのゆうわく伝説』、
そのなかのゲストとの対談コーナー「さろんdeかおり」に金森さんが出演され、
パーソナリティの石塚さんと約25分間たっぷりとお話されましたが、お聞きになられたでしょうか。
(radikoでも聴取可能です。)
金森さんが今回の森優貴さんとの『Double Bill』に関して語った内容は
どれも興味深いものばかりでしたので、
そのあたりを中心に少しここでご紹介いたします。
まず、森さんに関して、「クリエイションのプロセス、稽古場での雰囲気、舞踊家に何を求めるか、照明・衣裳・美術、様々なものを選択して作品を創る過程で、ホントあらゆる文脈で私と違うなと私自身も驚きました」としました。
また、森さんの作品に寄せられた「賞賛」の多くが、「メンバーの個々の魅力を発揮していた」という類のものだったと紹介してくれたのですが、その切り口から更に一歩踏み込んで、「森さんは既に彼らが持っている魅力を発揮するのに長けていて、私は既に彼らが持っている魅力には興味がない」「自分自身にも言えることですけど、彼ら自身のなかにある潜在的な美とか彼らが今気付いていない彼らの可能性に如何に触れるかということが私にとっての創作なので」と、振付家の資質の相違について得心のいく説明をしてくれました。
そのうえで、金森さんはこう続けました。
「作品を観たときに、パッと目につく個々の良さが活かされていたのは森優貴さんの作品だし、Noismもこれからそういう作品を上演することで、Noismの良さを皆さんに提供できるというのは芸術監督として今回改めて確信を得たことなので、近いうちに森さんをまた呼びます」と仰っていました。
これは私たちにとって「朗報」ですね。そうやって、Noismとして新潟から発信される「舞踊の多様性」(金森さん)、ホントに楽しみです。
加えて、金森さん、新潟市については「私の人生のなかで一番思い入れのある街」だとし、「金森穣は新潟の舞踊家」「新潟が育んで、新潟がその可能性の扉を開いてくれている舞踊家」なのであって、それは井関さんも同じと仰り、
更に、多分にリップサービスもあるのでしょうが、「ここ(新潟)が我々を育て、ここが我々が挑戦することを許してくれた場所。(金森さんの)欧州での10年がどんどん色褪せてくるぐらい、新潟での15年が自分の中の『核』を成しつつある」とまで。
そして「世界の中から、『新潟って、なんか面白い街らしいよ。凄いクリエイティヴだし、アーティスティックだし』っていうふうになることが夢」とも。
もはや光栄しきりで、これはもうしっかり支えていく他ないじゃありませんか。(涙目)
以上、昨日放送された刺激溢れるラジオ番組からその一部をご紹介しました。
(shin)
shinさま
どうもありがとうございました!
気になりつつも聞くことができず・・・
ご紹介してくださって有り難いです♪
森さんとの相違に納得ですし、
新潟についてのお話がうれしいですね!!
ますます応援し、しっかりと支えてまいりましょう!
(fullmoon)