☆『森優貴/金森穣 Double Bill』
新潟と埼玉で観た「森優貴/金森穣 Double Bill」は、様々な時間が、それらと不可分な色を散りばめつつ描出される刺激的な公演だった。
金森さんの『シネマトダンス』は『クロノスカイロス1』から。肌を透かせて横溢する若さをピンクが象徴し、「昨日」(=映像)と格闘しながら過ごされる「永遠」かと錯視される眩しい時間。やがて終焉の予兆が滲み、甘酸っぱい感傷の余韻を残した。

Photo : Kishin Shinoyama
『夏の名残のバラ』は、その身体に「Noismの歴史が刻まれている」井関さんの踊りと最奥に映される映像は勿論、録りつつ見せる山田さんの「所作」も舞踊以外の何物でもない重層的な作品。強弱様々にリフレインされるたったひとつの歌に乗せて、落日を思わせる照明のなか、赤と黒と金で描かれる舞踊家の今と昔日は涙腺を狙い撃ちにするだろう。

Photo : Kishin Shinoyama
色と同様に、シルエットが現実界の身体に不可分なものであるなら、金森さんのソロ『FratresⅡ』は、現実界を超え出たものにしか見えない。何色かを同定することが容易でない色味、身体と同調しないシルエット。しかし、そもそも色もシルエットも光が織りなす仮象でしかあり得ず、ならば、身体が突出する金森さんの舞踊は、それらを置き去りにしながら、舞踊の本質に降りていくものであり、神々しく映る他あるまい。

Photo : Kishin Shinoyama
森さん演出振付は『Farben』。冒頭からスタイリッシュで、耳も目も瞬時に虜となる他ない。自らの色を求めて走り出す者たち。過去と現在、そして未来。交錯し、折り重なる時間を、個々の舞踊家の個性(=色)もふんだんに取り込みながら、多彩な舞踊で次々に編み変えていくその作品は、どこを切っても、鍛錬された身体が集まってこそ踊られ得るものでしかない。

Photo : Kishin Shinoyama
今回の「Double Bill」、時間を共通項に、過去に立脚しながら、新色を添えつつ、未来を見晴るかすものだった点で、Noism第二章の幕開けを飾るに相応しい公演だったと言い切ろう。 (2020/01/26)
(shin)
shinさま
公演感想、どうもありがとうございました!
一つひとつの作品の光景が鮮やかに思い起こされます。
幸せな時代でした。
皆さま
前公演は、舞踊評論家 山野博大さんにご批評をいただき、その後、間隔は開きましたが、会員感想3篇をウェブ掲載いたしました。
お読みいただき ありがとうございました。
来週27,28日はいよいよプレビュー公演です。
そして9月6日はサラダ音楽祭です。
思いもよらないコロナ禍という異常事態が勃発し、すべての事象が変転してしまいました。
さまざまな公演が中止・延期となりました。
そんな中、紆余曲折や変更がありつつも、プレビュー公演、サラダ音楽祭が開催の運びとなり、大変うれしく存じます。
この喜びを胸に、上演作品をしっかりと鑑賞し、心に刻み付けたいと思います。
皆さま方も同様のお気持ちと存じます。
公演をご覧になられましたら、ご感想をお寄せいただけると幸甚です。
どうぞよろしくお願いいたします。
お待ちしております。
(fullmoon)