「金森さん、マジすか!?」衝撃の『春の祭典』活動支援会員対象公開リハーサル!

2021年6月26日(土)の新潟市は日差しが強く、気温も上昇し、梅雨などどこへやら、もう「夏」の到来を思わせるような一日でした。

蒼天の下のりゅーとぴあ屋上庭園

行ってきました、活動支援会員対象の公開リハーサル。入場時間14:30を念頭にりゅーとぴあの劇場入口付近へ。やがて、「暑いですね」「ホントに」そんなふうに言いながら、いつもの面々が、気温以上の期待の高まりをその身体から発散させつつ集まってきます。

この日の公開リハーサル、予定された時間は15時から16時までの1時間。そうなると、「尺」からいっても『春の祭典』を見せて貰うことになりそうなのは確実。先日のメディア向け公開リハーサル後の囲み取材で、金森さんは「作品の終わらせ方が変わりました」と言っていたことを受けて、「でも、さすがにラストは見せないですよね。『ハイ、今日はここまで』って」「ですよね。こちらも本番で観るのを楽しみにしていたいし」そんな会話を交わしながら、ドキドキしながら入場の案内を待ちました。

この日も2階席から見せて貰ったのですが、遠目から、まず、一目見て感じた「ん、違う?」横一直線に並べられた21脚の椅子の見え方が今までと違っています。少しして違っている点に気付きました。そういえば、2日前の取材時に「ここから美術的にも変わったりする」って言ってましたっけ、金森さん。

そして15時。なんの前触れもなく、舞台下手袖から井関さんが姿を現しました。この日は2日前と違って、マスクなし。もう本番モードの21人。そこに血潮をたぎらすようなストラヴィンスキーによる圧倒的な楽音が降ってくると、上からも扇情的な照明が落ちてきて、そこからはもう、瞬きするのも惜しいくらいの舞台が展開されていきました。その圧巻の密度たるや、リハーサルとは思えないほどでした。

そうして目を吸い付けられるようにして見詰めているあいだに、どんどんストラヴィンスキーの音楽は進行していきます。やがて、金森さんの「ストップ!」がかかるまでと…。

しかし、しかし、しか~し、いつもの席に座る金森さんからは止めようという気配は微塵も感じられません。やがて、「これは最後までいくな」そう思うようになり、その通り、コロナ禍の状況が「必然」と感じさせた新しい「ラスト」まで観てしまうことになるのです。ホント、予期せぬ「マジすか!?」的展開には驚くほかありませんでした。

ですが、すぐ、こうも思いました。「ラストを観ていようが、いまいが、大した差はない。ただ実演の精度を上げるのみ。そう金森さんは考えているのだ」と。太っ腹というか、肝が据わっているというか、恐るべし金森さん。

もともと昨年、プレビュー公演を経ているのであってみれば、本来、今年の本公演は「再演」にも似た位置付け(*註)だった訳ですし、「ラスト」に至るまでの一瞬一瞬、21人の舞踊家の身体が切り出す「刹那」の美を見詰めてきた目にとって、「ラスト」がどうかなど、占める比重もさしたるものではあるまいと。それどころか、この日、「ラスト」を観て、知ってしまってさえ、更に期待が募るのは、Noismがこれまで舞台上から見せてきてくれた「刹那」が真実なればこそ。もっと言えば、「ラスト」を観てしまったことで、金森さんの揺るぎない信念に触れ、身震いのようなものを感じた事実をこそ書き記しておかねばと思った次第です。常に「超えてくる」のが、金森さんとNoismですから。

*註:金森さんは自身のtwitterで、明確に「再演ではなく初演」と言い切っております。そうだとすれば、なおのこと、この日、惜しげもなく「ラスト」まで通して見せてくれたことの背景に作品全体を通しての強い自信を感じようというものです。

音楽が止んだとき、呆気にとられて、控えめな拍手しかできなかった私たちは口々に「凄い」と漏らすのみ。そのあちこちから聞こえる「凄い」という言葉を拾って、「凄いね」と当然のように笑む金森さん。「詰めるとこ、もうちょっと詰めて、言いたいところはこういうところなので…。ひとりでも多くの方に観て頂いて」と自信のほどを窺わせました。そして続けて、「今日(の公開リハ)は1時間でしたっけ。このあと、ダメ出しも観ていってください」とも。

そうして舞台上、様々な調整の様子を見詰めるうち、予定の16時を少し回った頃になり、スタッフから丁重に退席を促されると、舞台上の舞踊家たちが全員動きを止めて、こちらに向き直り、笑顔で私たちに視線を送ってくれているではありませんか。いやはや、何とも贅沢この上ない公開リハーサルでした。

そんな「完成形」のNoism版『春の祭典』を含む、全4作品を堪能できる贅沢すぎる公演は来週金曜日(7/2)から。圧倒的な舞台に完膚なきまでに蹂躙される準備を整えつつ待つのがよろしいかと。もう、「これ見逃したら後悔しますよ」レベルのもの凄さです。よいお席はお早めにお求め下さい。

(shin)

「「金森さん、マジすか!?」衝撃の『春の祭典』活動支援会員対象公開リハーサル!」への2件のフィードバック

  1. shinさま
    おおー!!
    そうだったのか〜!!
    見に行かれず残念無念!!

    迫力満点の文章に妄想が膨らむばかりです。
    やはり「超えてくる」のですね!
    本番まであと6日!
    体調を整えて、驚愕、感嘆、震撼の時を待つことといたしましょう。
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      リアクション、有難うございます。
      もうみんなノックアウトされてしまったのなんのって…。
      「完成形」は昨年のプレビュー公演時の『春の祭典』とは別物という新鮮な印象を持ち、驚きました。
      それこそ終始、新作を観ているかのような気持ちでドキドキしながら視線を送っていた感覚です。
      とりわけ、リノリウム、三方(否、緞帳の代わりを含む四方)の幕、照明の果たす役割の大きさを痛感させられた次第です。
      そうして生まれてくるストラヴィンスキーの音楽との一体感、或いは、金森さんが目指した可視化されたストラヴィンスキーの音楽に心地よく酔いしれた気が致します。言い換えるなら、ストラヴィンスキーの楽音一つひとつが血流にのって体内を経巡るかのような圧倒的な高揚感のうちにスルスル観終えたような感じ、とでもなりましょうか。もう、終始、心臓がバクバクいっていたのでした。
      また、例えば、『ロミジュリ(複)』の公演期間中に何度も映像を差し替えた金森さん、今回は、(昨年来見慣れた)2日前の椅子を、ある一部、この日までの間に変えてきていましたから、そこもお楽しみに。冒頭からまるで印象が違って見えました。
      まだまだ追い詰めて初日を迎えるつもりの金森さんとNoismには、「これでよし」はないのですね。期待が膨らむ所以であり、「何度も観なきゃ」ってなる所以でもあります。
      今年の『春の祭典』が初めてっていう方は勿論ですが、昨年の公演を観た方には是非とも「完成形」を観に来て欲しいと思います。それこそ、豊穣な視覚体験が約束されていますから。
      (shin)

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