にいがた市民大学特別講座
にいがた文化の音霊『劇場専属舞踊団・Noism Company Niigataの挑戦』
2022年2月2日(水)18:30~20:30 会場:りゅーとぴあ能楽堂
話し手 金森 穣 聞き手 久志田 渉
2/2は寒いながらも、「晴れ」と言えるラッキーなお天気♪
「まん延防止等重点措置」適用中につき、会場は休館のクロスパルからりゅーとぴあ能楽堂に変更。座席は2席置きで、ゆったりお話を聴くことができました。
まずは作品映像、『R.O.O.M.』『鏡の中の鏡』『Mirroring Memories』『Fratres I』が抜粋で4分間ほど流れ、いよいよお二人が登壇します。能楽堂なのでお二人は足袋、そしてマスク。小テーブルの上にはマイク、水のペットボトル、アクリル板。
講座の前半はこれまでの振り返り、と言いつつも未来の話もあり、久志田さんの名調子で次から次へと話題が繰り出されます。かいつまんでご紹介します。
金森さん(話し手):
・2004年のNoism設立から18年。新潟に続く公立舞踊団は相変わらずできない。
・劇場の認識や在りようが日本とヨーロッパでは違う。日本は、市民が使う場所、東京のものが見られる所。ヨーロッパは、創作の専門家たちが文化発信をする所であり、市民はその作品を見に行く。
・新潟から発信し続けて18年経ったが、100年はかかる。まだまだこれからと信じている。
久志田さん(聞き手):
-2008年に初めてNoismを観た。それまではダンスは遠い存在だった。その後は各地の公演や、海外までも足を運ぶほどになった。
金森さん:
・新潟の文化として、新潟に根付いて残せるものは何か。
・たとえ自分が素晴らしいクリエーションをして、世界に発信したとしても、それが毎作品 成功するわけではない。作品依存のみでは文化として継続できない。
・ではどうするか。そのために基礎となるNoismメソッドがある。
・作品になる前の、舞踊家の身体の質が重要。
・メンバーが入れ替わっても継承され、持続可能であり、育まれていくのが身体文化。
・作品の芸術性と、身体の質を高めるメソッドトレーニングの両輪があってこそ、文化として継続していける。
・様々な身体表現、舞台芸術が総合的に学べる学校を設立したい。
・モダンダンスやバレエが日本に入ってきてから120年になる。
・海外のバレエは国によって様式が違うが、日本ではどうか?
・NoismにはNoismバレエもある。能などの日本独自の伝統的なものと、西洋のものとのハイブリッドを創って、日本の舞踊文化に貢献したい。それを新潟からやりたい。
久志田さん:
-モスクワで『カルメン』をやった時、客席の熱気がすごかった。拍手や笑いが起こり観客が喜んでいた。
金森さん:
・モスクワの観客こそ見巧者。バレエの本場でもあり、カルメンなんてわんさか観ている。それと勝負しなければならない(身体的にも)。
・Noismの『カルメン』はバレエに似ているけど異なる。自国にないもの、オリジナリティを求められる。
久志田さん:
-金森さんの作品にはアッと驚かされるが、鈴木忠志さんの影響もあるのか?
金森さん:
・静岡に劇場専属の演劇集団(SPAC)があり、舞踊団もでき(今は無い)、2004年にシンポジウムがあり、その時に鈴木忠志さんを知った。
・鈴木さんの「鈴木メソッド」で役者がトレーニングをしていた。
・そのあとに鈴木作品の舞台を見たのだが、身体性の強さに驚いた。衝撃的だった。
・鈴木さんは静岡で劇場専属事業等を成したが、地方によって事情はそれぞれ違う。静岡のやり方がそのまま新潟に合うわけではない。新潟は新潟で独自に築いていかなければならない。
久志田さん:
-新潟について思うことは?
金森さん:
・15歳の時、東京で通っていたバレエ団の関係で、新潟のバレエ教室の発表会に呼ばれて出たことがある。でもほとんど覚えていない。
・新潟に来る契機となったミュージカル『家なき子』に出たのは20年以上前。その時から新潟市の印象はそれほど変わっていない。住みやすいと思う(街の変貌には驚くが)。
・湊町であり、その昔は新潟から大陸に出て行ったものであるが、今は大陸ではなく東京を見ている。
・大陸に目を向けてはどうか。対岸の国々との関係性がよくなれば自分ももっとポジティブになれるのだが。
・2020年の新潟市洋舞踊協会との記念合同公演で『畦道にて~8つの小品』を上演した。最初の稽古では先生たちも見ているし、みんなすごく緊張していた。でも稽古が進むにつれて、だんだん伸び伸びと楽しそうになっていき、最後には先生もみんなも喜んでくれた。
・今までと違うものを受け入れるのは怖いと思う。でも受け入れることにより世界が広がる。
・そのことが心に残り、そこから繋がっていき花開くかもしれない大事なものがある。
・しかしそれは目に見えず、数値化できない。
久志田さん:
-金森さんはコミュニケーション能力、言語化能力がすばらしいが。
金森さん:
・海外では、何も言わないということは、存在していないと同じ。言ってくれなきゃわからないという文化。自分も必要に迫られて話すようになった。
・海外で舞踊家を目指す者は小さい時から訓練され、数多くの公演を見て育っている。自分はルードラに行く前は、踊ってはいても舞台鑑賞の機会は少なかった。ルードラの皆が当たり前に見てきた作品を自分は見ていない。だから教養が追い付かない。
・海外にいたときも、帰国後も、舞台を見たり、本を読んだり、いろいろ学習した。
・Noismに外国人のメンバーが多くいたとき、彼らはよく喋った。しかし日本人は何も言わなくても心で思っていることがある。そのことは逆に彼らにとっては驚きであり異文化だった。
・新潟に来て、市役所の人と話すことが多くなり、自分の考えをわかってもらうにはどう話せばいいのか考えた。それも必要に迫られてのこと。相手の言語で話すことを学習した。
・・・書ききれませんが、ここまでで約1時間。10分休憩して後半へ。
まず、先頃発表された、9月からの新活動体制についての説明がありました。
気になる芸術監督の上限10年については、人がフルに活動できるのが30年間として、10年後はまだ28年なので、制度が変わってほしい気持ちもあるという、嬉しい意向をお聞きしました♪
それから、国際的な舞台芸術の学校設立について、「自分はベジャールの恩恵を受けている。舞踊の垣根を超え、世界的視座の文化に貢献できる、Noismが築いた学校が新潟市にあり、そこに世界各国から選ばれた若者が集う。そして卒業して世界で活躍するって素晴らしいこと」と夢を語りました。
それはあながち夢でもありません。今東京で活動・活躍している舞踊家はNoism出身者が多数という実績があるのですから。
久志田さん:
-ルーマニアに行き、シビウ国際演劇祭で『マッチ売りの話』を公演したとき、市民応援団(4名)が日本から来たということでインタビューを受けた。その後、シビウの芸術監督が来日し、「日本には、新潟にNoismという素晴らしい舞踊団がある」という話をしてくれて嬉しかった。
金森さん:
・本当に有り難いこと。褒めてくれるのは海外の人たちや東京などで、新潟以外が多い(苦笑)。
金森さんは、新レジデンシャル制度について、「新潟市の文化政策として」制度化したと評価し、今後新潟市がNoismをどのように活用していくのか期待していると話されました。
時間は早くも20時となり講座は一旦終了。このあと20時半まで、質問シートによる質問タイムなのですが、いささか長くなりましたので、続きはまた後日にしたいと存じます。
どうぞお楽しみに♪
(fullmoon)
fullmoon さま
詳細なレポート、どうも有難うございました。
聞き手の久志田さんも触れておられる金森さんの言語化能力。それが遺憾なく発揮された明晰な話し振りが(この日も)場内にいる一人ひとりに届いていく様子が手に取るようにわかります。
そしてまだこの続きがあるのだとか、楽しみにしております。
恨めしいのはコロナ禍。この日の新潟県内の新規感染者は未曾有の700人。私も申し込んでいたのですが、仕事柄、「人が集まる場所」へ出向くことは自重せざるを得ず、それはそれは残念至極でした。
(「座席は2席置き」というこの日の感染防止対策は安心感もあったことでしょうが、更に言えば、事前の案内の段階から「利用できる座席を制限しています」で済ますのではなく、「対策」の具体を告知していくことも「New Normal」の一部として、この先求められるのではないかと思います。)
そんなやりきれなさを癒やしてくれるようなレポートには感謝しかありません。fullmoonさん、残りの質問タイム部分も期待しております。
(shin)
shinさま
コメントありがとうございました!
本当はshinさんがこのレポートを書くはずだったのに、本当にコロナ禍が恨めしいです。
当日はBSN新潟放送が取材に来ていて、坂井ディレクターにお会いしました。
篠田元市長ご夫妻もいらしていました。
講座では、篠田元市長とのやりとりのお話も少しあり、舞台から客席が見えるのかなあと思いました。
質問は意外にたくさんあって、記述に難儀しそうです。
本編も書ききれない所があり、書き足したい思いです。
メモを取っていたのですが、最後はボールペンのインクが無くなってしまいました。
(fullmoon)
fullmoonさま
的確なまとめに、感謝しております。金森さんの貪欲に文化を吸収した過去(若いメンバーにも貪欲に食らいついてほしいという思い)、数値やお金では計り得ないNoismの価値などなど、聞き手としても贅沢な時間が甦るようです(振り返りは苦手という金森さんに「あっという間だった」と言っていただけたのは、有難かったです)。
本当に書ききれないくらい、金森さんの言葉聞き応えがありましたよね。私も「月刊ウインド」用に、昨日の話を反芻しております
(久志田)
久志田さま
聞き手役、おつかれさまでした!
名司会、ありがとうございました♪
コメントもありがとうございます。
書ききれない上に、迫力、熱量ある金森さんの言葉を伝える筆力も無く、恐縮しております。
久志田さんには、私の文章に間違いはないかお尋ねしなくてはと思っていたところです。よろしくお願いいたします。
ある程度の打ち合わせはあるにしても、金森さんは対話をしていく中で、どんどん閃いて話が進んでいく感じがしました。
あらかじめ決められたことを話すだけというのは、あまり好きではないのかもしれませんね。
対応する久志田さんは大変だったのではないかと思いますが、久志田さんも結構アドリブが入っていたようですし、とても面白かったです。
緊迫感のある心地よいライヴ講座でした♪
「月刊ウインド」の記事を楽しみにしています。
(fullmoon)
あのやり取り、流れは軽く打合せましたが、ほとんどアドリブです。楽屋でも金森さんとお話していましたが、そこから話題が膨らんだりして、自分の中で想定していた質問よりも、即興で尋ねたり、時間進行を気にしたり、と。楽しくも真剣勝負でした
そうだったのですね!
ほぼアドリブとは驚きです。
進行も予定時間とぴったりでしたし、さすがですね!
皆さま
今回の講座につきまして、質問等の続きを書く予定でしたが、
聞き手役の久志田さんが、質問を含め詳細を書いてくださることになりました♪
ブログ掲載は3月中になると思います。
月刊ウインドの記事と併せて、どうぞ楽しみにお待ちください。
(fullmoon)
皆さま
fullmoonさんがコメントを入れてくださいましたように、
この講座の詳細につきましては、改めて久志田さんのまとめにて、
本ブログ上でご紹介することとなり、鋭意、準備中です。
準備稿(初稿)を拝見しましたが、もう物凄い!
何がって、ブログの常識を蹴散らし、踏みつけるかのような、(笑)
怒濤の2万3千字超え(!)ド迫力のボリュームで、
細大漏らさず、お伝えしようというのですから、
これはもう軽く事件と言ってもよいかと。
それに向き合う覚悟とともに、今暫く、楽しみにお待ちください。
(shin)