『かぐや姫』東京楽日(10/22)、新たな「名作」が「大入」の客席を魅了し尽くす♪

2023年10月22日(日)朝、上野を目指して上越新幹線に乗ったとき、新潟の空は鈍色で、気温も低かったのですが、いくつもトンネルをくぐり、新潟を出てみると、雲ひとつない快晴が待ち構えていて、既に気分もあがっていました。

なるべく、各種SNSに溢れる前々日と前日の評判を遠ざけるようにしていたのですが、やはり、「絶賛」コメントって奴は容易に忍び寄ってくるものです。もう期待感しかありませんでした。

以下、ネタバレはありませんので、この先もお読み頂けたらと思います。

上野に着いてみると、この日は「上野恩賜公園開園150周年総合文化祭」というイヴェントの最終日ということもあり、晴天の下、様々なブースも設けられるなか、大勢の人たちが思い思い、存分にこのエリアでの時間を満喫するその賑やかで華やかな様子に、自然と溶け込む感じで開演までの時間を待ちました。

13時頃、入場待ちの列に並んで、時間通りの13:20に大ホールに入りました。真っ直ぐ進むと金森さんと井関さんがふたりで並んでお出迎えをしてくれていましたから、まずは笑顔でご挨拶。「楽しみにして来ました」と言うと、「大いに楽しんでください」と井関さん。その後、華やぐホワイエのあちこちを写真に収めている最中、おふたりの姿を振り返ってみると、そこで「即席撮影会」が始まっていましたので、「ならば」と引き返して、私も順番を待ちました。

「新潟でもいっぱい撮ってるじゃない」と金森さん。「でも、ブログ用に一枚お願いします」ってことで、おふたりの写真を撮らせていただきました。嬉しかったです♪

赤地に勘亭流の「大入」の文字が示す通り、大ホールの客席は5階席までびっしり観客で埋め尽くされていきました。その中に身を置いて、ワクワクする気持ちで幕があがるのを待ったような次第です。

開演。刷新された第1幕を観ました。「これは!」予想通り、そして評判通り、物凄いことになっていました。
「2年前の第1幕」において、金森さんの方が歩み寄った民話の持つどこか牧歌的な情緒はほぼ削ぎ落とされ、眼前に展開されるのはソリッドこの上ない、紛れもない金森ワールドです。炸裂する抽象性と象徴性や暗示。その美しい切れ味と言ったら、もう怖いくらいの、いつもの「あの」金森ワールド。そう言えば充分でしょう。45分間、ヒリヒリ、ゾクゾクいたしました。

続く第2幕は、第1幕刷新のきっかけとなり、前回驚きながら見詰めた序破急の文字通り「破」のパート。今回は落ち着いてじっくり観ることが出来ました。(でも、そう言うと少し妙ですよね。)そしてこちら第2幕にも第1幕ほどではありませんが、若干の変更があることに気付きました。あやふやで覚束ない記憶を辿っただけですが、「あの場面がなかったな」とか思いました。
鮮烈な色が提示されるなか、交錯するそれぞれの孤独、そして欲望。何か起きない訳がありません。

いよいよ、初めて観る第3幕。多くは語れません。前日のfullmoonさんのレポートにあった「バレエ・ブラン」の要素も濃厚で、(バレエに疎い私が言うのもなんですが、)全3幕中、もっともバレエっぽいパートと言えるかもしれません。更にそこには、金森さんの過去作を想起させられるような趣向もあったりして、密かにそうした楽しみ方も忍ばせておいて悪戯っぽく笑う金森さんを思い浮かべたりもしました。

そこからは圧倒的な群舞で魅せるパワープレイも決まりまくりで、その果てに待つラストシーン、やはりそこも見どころのひとつです。最後まで目が離せない案配になっているのですが、それは皆さんがドキドキしながら、ご自分の目で確かめてください。

終演後、満席の客席から響いた万雷の拍手と「ブラボー!」。それはカーテンコールが繰り返されるにつれて、更に一層の大音声となっていきます。やがて、あちこちで始まったスタンディング・オベーションはどんどん広がりを見せ、結果、5階席のてっぺんまで、場内のみんなが総立ちとなって拍手を送ることになっていました。それはまさに圧巻の光景そのもの。客席にそんな途方もない熱量を生み出してしまうほどの「名作」バレエ誕生の現場に居合わせることが出来た喜び。熱い感動に満たされて、できることはただひとつ力を込めて拍手するのみでした。

公演初日のブログでかずぼさんが書いてくれたように、この『かぐや姫』東京公演3日間は、文化庁助成による「劇場・音楽堂等の子供鑑賞体験支援事業」の対象とされ、「子ども無料招待」公演でもありました。会場から出ようとしていると、前方には、鑑賞を済ませた子どもたちを待つ多くの保護者たちの姿がありました。恐らく、恐らくですよ。恐らく、子どもたちは出迎えた保護者たち、その誰一人の想像も及ばないほどの芸術の深淵に身を浸す時間を経験したことでしょう。繰り返しますが、恐らくですよ。子どもたちの顔はどれも輝いていました。それは勿論、彼ら彼女たちだけではありませんでした。東京文化会館を出て、振り返ったとき、目に飛び込んできたどの顔も一様に笑顔でしたから。大人も子どもも例外なく。

私も容易には立ち去り難く、場内で見かけた知人が出て来るのを待って、ひとことでも言葉を交わさないではいられない心持ちになり、…。

そんな東京バレエ団×金森穣の名作『かぐや姫』は、このあと、12月3日(土)と4日(日)のりゅーとぴあ〈劇場〉に場所を移して降臨します。是非とも新たなバレエの「歴史」を目撃し、大きな感動にうち震えにいらしてください。新潟でお待ちしております。

(shin)

「『かぐや姫』東京楽日(10/22)、新たな「名作」が「大入」の客席を魅了し尽くす♪」への2件のフィードバック

  1. shinさま
    東京楽日のブログ、ありがとうございました!
    「大入」スゴイですね! 私も見たかった~
    金森さん井関さんの写真いいですね~
    お二人は1,2日目はホワイエにいらっしゃることはなかったと思いますが、初日の休憩時に客席脇の方にいらしたのでご挨拶できました。よかったです♪

    第1幕スッキリしましたね。 そのことについてはアフタートークでも話されていました。
    私は前の紙芝居的バージョンもわりと好きだったので、両方見られて得した気分です♪

    第2幕は確かに「あの部分」がなかったです。フランス語がステキだったのですが少し見にくかったかな。
    あの「動く壁」がいいですよね~ 「金森壁」ですかね。
    第3幕もまさしくその通りですね。
    観たばかりなのに、またもう観たいです。
    12月の新潟公演、ますます楽しみです♪
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      コメント有難うございました。
      ハイ、今すぐにでももう一度観たい気分です。
      頭のなかではドビュッシーが流れてますし。

      で、あの金森さんと井関さんの写真はあろうことか、実は「失敗写真」なのです。
      原因は私のスマホ…(涙)。
      カメラがなかなか起動しないこととか、シャッターが切れるまでに時間がかかることなんかがあり、あの時はそれがダブルで来てしまったのでした。
      漸く私の順番になり、まだ後ろにも列になって並んでいる状況でのダブルパンチです。
      上に書いたようなやりとりの流れから、井関さん、おどけて右手でピースをしてくれて、それを撮ろうとするも、「あれっ?あれっ?」なかなかシャッターが切れず…(汗)。
      ホントに残念で仕方ありません。
      でも、おふたりが(一応)写っているのでまだよかったのですけれど、スマホ、買い換えなきゃかなと。
      …そんな感じで…。
      (shin)

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