東京バレエ団『かぐや姫』東京公演を終えて(ひとまずの)「アフタートーク」的インスタライヴ♪

東京バレエ団×金森穣『かぐや姫』全3幕世界初演の東京公演(10/20~22)を終えて、2023年10月29日(日)の20時から(ひとまずの)「アフタートーク」的なインスタライヴが金森さんと井関さんのインスタアカウントで配信されました。このあと、新潟公演をご覧になられる方にとっては、「アフタートーク」ではなく、「ビフォートーク」となることから、ネタバレ等を気にされる向きもおありだったかもしれませんが、その心配もないやりとりだったかと思いますので、是非、アーカイヴにてご視聴頂きたいと思います。

かく言う私も、この日が日本シリーズ第2戦の日にあたっていたため、その時間帯には、こちらをリアルタイムでは視聴せず、(その前日とはうって変わって、悶々とした気分で)テレビの野球中継で試合の推移を見詰めておりました(汗)。その後、アーカイヴで視聴したのですが、楽しい気分になれたのは有難いことでした(笑)。

このブログでは、一区切りがつき、開放感たっぷりに『かぐや姫』という新作のグランド・バレエの創作を振り返ったおふたりのやりとりがどんなものだったか、以下に少しばかりですが、かいつまんでのご紹介を試みたいと思います。

☆金森さんが東京バレエ団芸術監督・斎藤友佳理さんと初めて会って食事しながらオファーを受けたのは5年位前(2018年)。その後、調整しつつ、題材を決めつつ、振り付けを始めたのは今から2年7ヶ月前。外部への「純クリエーション」はこれが初めて。50人超えの人数やスタジオの大きさに慣れるのに時間がかかった。最初は疲れた。第1幕振り付け時には金森さんは日記をつけていた。(←そうでした、そうでした。思い出しました。)

★東京バレエ団が目黒ということで、金森さんと井関さんの滞在先はずっと白金台(8回)だったのだが、最後の三週間だけは品川だった。品川の人の多さは凄かった。

☆第1幕をガラッと変更した。家具も曲線を増やしてモダンデザインに変えた。
【註】新潟では2021年11月に第1幕が上演されたのみである。

★照明の話。照明作りはまず第3幕から始めて、第1幕へ。しかし「ゲネ」に及んでも、第2幕の追加した場面の照明ができていなかった。それが仕上がったのは、「初日」の午前4:50頃のことだった。(清掃等が入る都合上、劇場が使えるのは最大午前5時まで、とのこと。)

☆照明の話(つづき)。照明はロジックではなく、イメージの世界。しかし、具体的に形にするための指示を出さなければならない。今回は空間が大きくてスタッフの人数も多かった。「全幕物をイチから全部照明を作る人はいない」(井関さん)「振付家で一番大変なことは、自ら納得し決断できるところまで、スタッフに付き合って貰うこと。多くの人を巻き込んで動いて貰い、それを背負うこと」(金森さん)

★「任せられなくて」照明を自分でやることで、間際になればなるほど、舞踊家たちとの時間が減ってしまわざるを得ないことに「申し訳ない」思いもある、と金森さん。それを受けて、「どこかで手放さなければならない。ギリギリまでやったら、その瞬間を本人たちが生きられるかどうか」との考えを示した井関さん。舞踊家も自立する必要がある。初日のパフォーマンスは緊張感とともにみんな確実な道を選んでいきがちとも。

☆新潟の舞台は狭いので、空間構成がどうなるのか。みんな並べるのか、入るのかどうか。取捨選択しないと「危ない」とも思う。

★今回のクリエーションについて、「ホントに勉強になった。イメージし得る身体の使い方、振付の可能性など今まで味わったことのない発見があった」と金森さん。一方、コンテとバレエが「違うもの」と思って『かぐや姫』をやられるとそれは違う。バレエのそこから先を一緒に見出していきたい。それだけにもっと踊り込んでいく再演の機会があって欲しい。

☆舞踊家たちがバレエ的な要素を含めつつ、「一線を越えようとしている」姿が面白かった、と井関さん。金森さんは、これまで、時代的にも、振付のスタイルを確立しようとしたことはない、と。しかし、今回の東京バレエ団との作業を通じて、よりバレエ的なものと向き合い始めて、「バレエ的な身体の型がありつつ、それを保持したまま、如何にただの形ではないところに行けるか。このプロセスで見つかっていったものがスタイルになりそうな漠然とした思いがある」(金森さん)

★「生オケ」での『かぐや姫』は編集の専門家を入れる必要があり、ハードルが高い。

☆「影姫」の配役について、沖香菜子さん・金子仁美さんともに「意外」と言われることも多かったが、金森さんと井関さんにとっては、全く意外でもなく、「それこそそうにしか見えなかった」と井関さん。

…主に、そんなところを以てこちらでのご紹介とさせていただきますが、なお、上の内容に続けて、ラストの7分程度(とりわけ最後の5分間でしょうか)、とても楽しいお話が聞けます。まだの方は大きな損をしていると言えそうな程ですから、是非お聞きください♪

そして、新潟ローカルの話にはなるのですが、折から、今日深夜には(正確には日付が変わって「明日」になりますが)、BSN新潟放送で『劇場にて』の再放送もあります。鼓童との『鬼』再演の舞台裏に密着取材したこの番組、まだご覧になっていない方はお見逃しなく、ですね。

では、今回はここまでということで。

(shin)

2022年大晦日、胸熱のBSNスペシャル「劇場にて」

新年明けましておめでとうございます。今年も一緒にNoismを応援して参りましょう。

さて、新潟県内在住のサポーターズの皆様は、前日、2022年の大晦日(15:30~)に放送された新潟放送開局70周年BSNスペシャル「劇場にて 舞踊家 金森穣と新潟」をご覧になられたことと思います。「『私のからだには新潟が宿っている』。活動18年、『Noism』金森穣は今なぜ『新潟』を踊るのか?『鼓童』との初共演にカメラが密着。地方と芸術、その核心に迫る。」として制作・放送された新ドキュメンタリー、本当に胸熱な内容でした。見る者、誰にとってもであるのは言うまでもないことですが、とりわけ、新潟市と市民にとっては。

更にその前日(12/30)に再放送された「芸術の価値 舞踊家 金森穣 16年の闘い」(令和2年度 文化庁芸術祭賞 大賞受賞:初回放送は2020/3/28)中に取り上げられていた「継続問題」のその後を扱うものでもあり、併せて見てみると、(市からの補助金も5,010万円から4,810万円へと、微妙に減じていましたけれど、)市側の要望に応えるべく、市民還元を推し進めつつ、同時に「新潟」をテーマに据えた『鬼』に取り組む金森さんの姿は、紛れもなく私たちにとってのシビックプライドそのものでした。

また、『鬼』のクリエイションから公演まで、(『鬼』に関するなら、トップシーンやラストシーンまで見られましたし、)時間をかけて取り上げてくれた今回のドキュメンタリーは本当に見どころ満載で、まさに「年末ジャンボ」と言ってさえ良い趣があるもので、私など、年末の大掃除モードとは明らかに異質な時空の「非日常」へと連れ去って貰いました。そんな人も多かった筈です。

当ブログでは、『鬼』のクリエイション中の様々な場面で発せられた金森さんの言葉から印象的なものを少し紹介していこうと思います。

―まずは今回、「新潟」をテーマとすることについて…

*18年たって、ようやくその核心に自ら踏み込んだっていう感じ。「アイディアとしての新潟」というのじゃないところにたどり着けそうだなという直感がそうさせたんじゃない?俺はただ「これだ!」と思うものしか作れない。なんで「これだ!」と思うのかはわからない。

-そのあたり、『鬼』の音楽を担当した原田敬子さんは「私は(新潟への)リスペクトじゃないかと思ってはいます。…どうでしょうか」と。

*新潟にはホントに感謝しかない。日本で舞踊家としてこの17年間活動してきたのは新潟があるからですから。

*舞踊家としての30代、40代をあるひとつのところで過ごすということは、もうそれはほぼ自分の人生を捧げるということに等しい訳です。そういう思いをもって新潟で活動してきました。

*極論、身体感覚として感じられないものは生み出せないんじゃない?俺にとっては「今ここにいる」っていう、「この身体でもっている」っていうことが全てなんだよね。それ以上でも以下でもないっていうかさぁ。

*舞台芸術って、そこに居合わせた人にしか届けられないものだから、少なからず居てくださった人たちに何らかの影響を与えている訳で、その影響がこの街をどういうふうに豊かにしていってくれるかなとか、変えていってくれるかなとかってさ、彼らの未来が、ということに思いを馳せることでしかさ、「今」に懸けられないんだよな。言ったら。

-山形・鶴岡市での『鬼』ツアー大千穐楽公演終了の様子に続けて、ナレーションの石橋静河さんの次の言葉に、喜びの「えっ!」と声が出てしまいました。「ほどなくして、Noismと鼓童の『鬼』は再演されることが決まった」

*やっていることの価値とか意義とかって言ったら、それはもう「新潟、凄いよね」ってことじゃない?で、まあ、敢えて俺が言ってる訳だけど。でも、もし叶うならば、数年後に海外ツアーとかなってくれば、ホントにそれは実現されるんだろうし、されると信じているから作ったし。でもこれもホントにもう始まりに過ぎないんだよね。これで終わりじゃないから。こっから始まる。

…とまあそんなところを抜き出してみました。

「芸術の価値」と重なる部分もありながら、この「劇場にて」は『鬼』に関して、舞台映像が流れる尺も長く、見ているだけで一気に客席に身を置いた2022年夏に連れて行かれ、ゾクゾクする気持ちが蘇ってきました。そこに番組終盤に至り、「再演決定」の報がもたらされるというビッグなおまけつきです!思わず、「石橋静河さん、有難う!」みたいなお門違いな感情も湧いてきたりして…。(笑)

私は職場絡みで声をかけられる人たちに今放送についてお知らせしておいたのですが、もし見ていてくれたならば、Noismの素晴らしさが伝わったものと確信するものです。『鬼』再演時には新たな観客となって劇場に足を運んでくれる筈です。そして金森さんのからだに宿る「新潟」!まさにシビックプライドをくすぐる胸熱のドキュメンタリーに仕上がっていたと思います。何とか、新潟県外の方々にも見て貰いたいものです。BSNさん、そこんとこヨロシク!です。

(shin)

「纏うNoism」#02:三好綾音さん

メール取材日:2022/12/15(Thur.)

今般の新潟県、北陸、東北地方南部ほか各地を襲う記録的な大雪被害に遭われている方々に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。

来年1月の『Der Wanderer -さすらい人』公演までまだ間があり、大晦日に放送予定のBSN新潟放送「劇場にて・舞踊家 金森穣と新潟」を楽しみに待つこの頃かと思いますが、それでも、少なからず「Noismロス」は否めない日々かと。そこで、連載企画「纏うNoism」の第2回・三好綾音さんの回をお送りします。

「好きなものがあるなら、いつも身につけなさい。そして、自分に似合うものを見つけなさい。それが素敵に見える秘訣です」(ヴィヴィアン・ウエストウッド)

それでは「纏う」三好さんとそれらに込められた思いなど、お楽しみいただきましょう。

纏う1: 稽古着の三好さん

来ましたァ!お約束の「???」

 *またしてもやってくれましたね。連載2回目にしてもはや「お約束」ででもあるかのような意表を突いた登場の仕方。もう嬉しくなっちゃいますね♪バランスボールを持ち上げる三好さんを、ボールごと持ち上げようとするかのような「神」の左手的な…。もう、お見事!しかありません。
 で、本題ですけれど、今日の稽古着のポイントについて教えてください。

  三好さん「今日のというか、私の稽古着は黒ばかりです。(笑)選ぶのが面倒なので…。 作品によってレオタードだったり、ショートパンツだったり、なるべく衣裳に近いもので練習するようにしていますが、基本はこれです。生地が薄いものが好みです」

 *なるほど。黒ずくめですね。でも、踊り易さもあってのことでしょうか、割と短めの上下を身に付けておられるので、境目に生じるラインがいいアクセントになっています。

纏う2: 三好さん思い出の舞台衣裳

 *これまでの舞踊人生で大事にしている衣裳と舞台の思い出を教えてください。

2022年・メンバー振付公演での三好さん
ピアノ演奏会で弾く中学生の三好さん

 三好さん「舞踊人生からははずれてしまうのですが、ステージ衣裳としてこの白のブラウスを紹介させてください。2022年の振付公演で着たものですが、元々は、演奏会用に中学生の頃買ってもらったものでした。シルクでできていて、袖のディティールや背中の形、全てが気に入っていて、これからも長く着たい一着です」

 *品があって、素敵なブラウス♪
そしてそれを大事にされている三好さん、とても素敵
モーツァルトのピアノ協奏曲第12番 K.414 (385p) を奏でる中学生の三好さん(凄っ!)と時を隔てて踊りで魅了する三好さん。それを繋ぐ雰囲気のある一着のブラウス。これはもう素敵で間違いなしかと♪

纏う3: 三好さんにとって印象深いNoismの衣裳

 *Noismの公演で最も印象に残っている衣裳とその舞台の思い出を教えてください。

 三好さん「『境界』の衣裳は最初に見たときの衝撃があったので、印象に残っています。あんなにカラフルで鮮やかな衣裳を見たことがなかったので、最初は『本当に…⁉』と思ったのですが、舞台の映像を見てみたらすごくきれいだったので感心しました。
自分だけの色を選んでデザインしてくださったのも嬉しかった衣裳です」

 *まず、『境界』公演での『Endless Opening』(演出振付:山田うん)の衣裳に関しては、Noismスタッフから情報を頂きましたので、ご紹介します。
「山田うんさんから、衣裳は飯嶋久美子さんにお願いしたいとスタッフに話がありました。うんさんと飯嶋さんの出会いは、東京オリンピック2020の閉会式だそうです。うんさんが振付、飯嶋さんが衣裳を担当されていました。
飯嶋さんは、舞踊の舞台の衣裳をデザイン・製作したのはNoism作品が初めてだったそうです。その後、Co.山田うんでも、舞台衣裳を担当されています」
(参考→https://www.kaat.jp/d/inc
…とのことでした。
 *その飯嶋さん、これまでに、きゃりーぱみゅぱみゅ、椎名林檎/東京事変、松任谷由実、ももいろクローバーZほかの衣裳も担当されてきた方なのだとか。マジ凄ッ!1974年、東京生まれ。様々なジャンルに活動の場を広げる著名なスタイリスト+衣裳デザイナーなのでした。これはもう知ってなきゃダメなお名前でしたね。ホント失礼しました。m(_ _)m

 *次いで、Noism Web Site へのリンクを貼ります。
 2021-22 Noism0/Noism1『境界』公演における『Endless Opening』(演出振付:山田うん、出演:Noism1)の画像です。

 *そう、これこれ。これは観る側にとっても「衝撃」そのものでした。見知ったいつもの「Noismらしさ」とはまるっきり違う!…というか。とりわけ、あのパステル調の色合い+ヒラヒラ+ふわふわを纏って踊るNoism1男性舞踊家たちにはそれまでの固定観念をぶっ壊されてしまったものです。もう粉々の散り散りだった訳ですよ、そのくらいの破壊力。(笑)

 *飯嶋さんが三好さんだけの「色」を定めるにあたっては、どんな経緯を辿ったのでしょうか。

 三好さん「山田うんさんがメンバーそれぞれのイメージを飯嶋さんに伝えてくださり、実際に衣裳合わせの時、真っ白のメッシュだけを着て、上のカラーの布をその場で仮止めして決めていきました」

 *あのオレンジと差し色のブルー(でしたよね?)はそうして決まっていったのですね。そりゃあワクワクする筈ですよね。なるほどです。

纏う4: 普段着の三好さん

前回の井本さんとほぼ同じ立ち位置ですが、この時期特有の華やぎが♪
ラストの1枚は一見「三好さん、どこ?」的ですけれど…

 *この日のポイントと普段着のこだわりを教えてください。

 三好さん「ポイントはマフラーでしょうか…?これも中学生の頃、母からお下がりでもらったもので、ウールでとてもあたたかいのでずっと使っています。(笑)私はシンプルな服が好きなので、赤はアクセントになりますし、重宝しています。普段着のこだわりは、手首とかウエスト、足首を出しがちです。(笑)全てを覆ってしまうと骨太なので、すごく大きく見えてしまうんです。それが嫌で自然とそうならない服を選んでいると思います」

 *先の思い出の衣裳やこの普段着に纏わるご説明から、衣類を長く大事に着られている印象を受けました。そのあたり、衣類に関して、三好さんはどのような思いをお持ちですか。

 三好さん「特別な考えはないのですが、母が若い頃に買っていたものは持ちが本当に良くて、状態も悪くならないし、今でも古く見えないので、私が新しく買うときも、ユニークなデザインとかよりは、いつの時代にも使えるような良いものを持っていきたいなと思います」

 *人柄が表れるんですよね、着る物には。そして、まさに三好さんらしさに溢れたお答えであるように感じました。

 *画像に戻ります。2022年師走、そしてもうすぐクリスマス。最後の2枚はさながら「Season’s Greetings」、この季節のご挨拶の趣ですね。そして、1枚がクリスマスツリーとの共演だとすると、ラストの1枚では、三好さん、てっぺんの星を見上げつつ、ツリーと一体化し、(と言っても、そこは勿論、近代童話劇シリーズvol.1『箱入り娘』(2015)の「欅父」上田尚弘さんのようではなく、)まさにクリスマスツリーを纏った感が漂う写真になっています。この連載企画の趣旨を充分過ぎるくらいわきまえて、今回の締め括りをつけてくださった三好さんには感謝しかありません。三好さん、どうも有難うございました。

三好さんからもサポーターズの皆さまにメッセージをお預かりしました。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「サポーターズの皆様。いつも温かい応援とご支援、本当にありがとうございます。今回は、新作の発表まで長い時間が空きましたが、その分期待していただいておりますでしょうか?十分皆様のご期待に応えられるよう準備してまいりますので、今しばらく楽しみにお待ちください。これからもよろしくお願いします」(三好綾音)

…「纏うNoism」の第2回、三好さんの回はここまでです。常に真摯で理知的な眼差しが印象に残る三好さん、ここでもその一端をお届けできているものと思います。三好さん、どうも有難うございました。

よろしければ、当ブログでご紹介してきた三好さんの他の記事も併せてご覧ください。

 「私がダンスを始めた頃」⑭(三好綾音さん) 
 「ランチのNoism」#12(三好綾音さん)

それでは、また次回も乞うご期待!ということで。

(shin)