再演の「鬼」ツアー、神奈川公演初日(2024/01/13)♪

2024年1月13日(土)、Noism×鼓童「鬼」再演のツアーはこの日、KAAT神奈川芸術劇場でその初日を迎えました。この度の再演のツアーは前年訪れなかった土地を巡るものです。その皮切りに立ち会いたいとの思いで、朝、雪が降りだす前の新潟から横浜を目指しました。途中、三条を過ぎたあたりから案の定、窓外は雪。関東も昼過ぎには雪になるとの予報でしたから、雪の一日を覚悟していましたが、トンネルを抜けたら、あっけらかんと青空が広がっていたので、正直なところ、やや拍子抜けしたりする気持ちもありました。しかし、その後、ぽつりぽつり雨が落ちてきましたから、本格的に崩れる前に、KAATへと急いで移動したような次第です。

KAATに入ると、吹き抜けの下、アトリウムに、前年7月の「柳都会」(Vol.27)にご登場され、刺激的なお話を聴かせてくれた栗川治さんの姿を目に留めましたので、ご挨拶。栗川さん、新潟での公演は都合がつかず、今回、横浜での用向きに合わせてご覧になるのだと。で、大晦日のジルベスターコンサートでもお見かけした旨伝えると、興奮の面持ちで、Noismの『Bolero』はもとより、亀井聖矢さんのピアノが凄かったと話されたので、激しく同意しながら「2週間前」の感動を噛み締めたりさせて貰いました。

そんなこんなで、開場時間を迎えると、公演会場の〈ホール〉へと上がりました。メインロビーへと進み、トイレなどをすませていると、今度は原田敬子さんの姿が目に入ってきました。如何にも偉丈夫の黒コート姿の男性と一緒にこちら、奥の方へと歩んで来られます。前年の初演時にも「最上の音をお届けするために」とほぼ全会場に足を運んでおられた原田さん。この再演にあたっても、新潟でお話できましたし、「今回も」と、またここでもご挨拶をして少しお話出来ました。原田さんが仰るには、会場によって、音の響き方が異なるのは当然としても、こちらは少し大変だったのだとか。そんな話をしてくださった後、原田さんが件の黒コートの男性のことを「御大」と言い表して、そちらに戻って行かれるに及んで初めて、その男性が誰かを認識し、瞬時に凍りつくことに。そうです、その男性は誰あろう鈴木忠志さんだったのでした。金森さんも師と仰ぐまさに「御大」。不調法で失礼なことをやらかしてしまったような訳です。凹みました。(汗)

「うわあ!」とか思いながら、少しテンパった気分で買い求めた席につくと、私たち家族の2列前には鈴木さん!更に横を見ると、私の3つ右の席には原田さん!これもまた「うわあ!」です。いつも以上に緊張しつつ、開演を待つことになりました。

16時を少しまわって、波の音が聞こえてくると、『お菊の結婚』の始まりです。ストラヴィンスキーのバレエ・カンタータ『結婚』、その炸裂する変拍子とともに滑り出すほぼ人形振りによるコスチューム・プレイの見事さに、(しくじった)我を忘れてのめり込むことが出来ました。この日、これまでよりやや後方の席から見詰めた舞台は照明全体を、ある種の落ち着きのうちに観ることを可能にしてくれたと言えます。一例を挙げるならば、今まで気付かなかったのか、それとも、金森さんが今回変えてきたのか、そのあたりは定かではありませんが、中央奥、襖の向こうに印象深い赤を認めたりした場面などを挙げることが出来ます。そんな細部への目線を楽しみながらも、同時に、不謹慎な(と言ってもよいだろう)諧謔味に浸りながら、するすると見せられていくことのえも言われぬ快感はこの日も変わりません。何度観ても唸るばかりです。

呆気にとられながらあのラストシーンを見詰めたとおぼしき客席は、緞帳が完全に下り切るまで水を打ったように静まり返っていましたが、その後、一斉に大きな拍手を送ることになりました。

休憩になると、なんと、横の方から原田さんが「音、どうでしたか」などと訊いてきてくださったのですが、それは高い音が強く聞こえることを気にされてのことで、素人の耳には特段感じるようなこともなかったのですが、、休憩後の『鬼』に関しては、少しわかるようにも思いました。まさに一期一会の舞台な訳ですね。

(また、休憩中の通路には宮前義之さんの姿もありました。書き残しておきます。…以前にはご挨拶したこともあったのですが、この日は流石にもう無理でした。)

で、『鬼』です。客電が消えて、緞帳があがり、鼓童メンバーが控える櫓が顕しになると、そのキリリと引き締まった光景に対して、客席から一斉に息を呑むような気配が感じられました。前年から繰り返して観てきたこの超弩級の作品も、私にとっては、この日が見納め、「鬼」納めです。目に焼き付けるように観ました。鼓童が発する音圧を受け止めながら、舞踊家の献身に見入る時間も最後になるのですから、一挙手一投足も見落とせはしません。そんな覚悟で見詰めた次第です。繋がりも(漸く)クリアにわかってきた感がありましたし、この日も、妖艶さ溢れる姿態から妖気漂う様まで、振り幅の広い、目にご馳走と言うほかない場面がこれでもかと続きました。初めて観たときの驚きとは別種の、その力強い構成力と実演の質への驚きを抱きながら全編を追って、まさに最終盤に差し掛かったとき、目を疑うことになりました。動きが、演出・振付が明らかに違っている!またしても!!ラストのシークエンスを大きく変えてきたのです、金森さん、またしても!!!再演のラストシーンは初演のときとは違っていましたが、この日、そこに至るまでのシークエンスにも大きな変化が生じていたのでした。これからはこれで行くのでしょうか。それとも、まだまだ変更の余地があって、これも「神奈川ヴァージョン」なのでしょうか。いずれにしても、私にとっては「鬼」納めの舞台でしたから、この後のことについては、レポートや報告を待つよりほかにありません。やはり一期一会なのですよね。

「このあと、舞台はどうなっていくのだろうか」若干後ろ髪を引かれる思いを抱きつつ、客席を後にしました。最後に原田さんと「音の聞こえ方」についてお話出来たらなどとも思いましたが、原田さんは鈴木さんたちと一緒におられます。同じ轍は踏めませんから、サポーターズ仲間たちと一緒に外に出ました。すると、強い横殴りの風に煽られた雨が時折、霙(みぞれ)になったりするなど、待っていたのは寒々しい冬の天気でした。帰りの新幹線のこともあり、東海道線に遅れが生じたりされては困るので、まずは横浜へ、そしてその先、上野へと急ぐことで締め括られた私の2024年Noism始めでした。

そうそう、この日の『鬼』に関しては、最後、緞帳が下り切る少し前から、拍手が鳴り始めたのでしたが、きっと、もうそれ以上我慢し切れなかったものと理解できます。そんな訳で、この日、一緒に客席で見詰めた観客のなかから、今取り組まれているクラウドファンディングへの協力者が多数出ることを信じて、否、確信して、新潟への帰路に就いたような塩梅でした。

(shin)

Noism×鼓童「鬼」再演:「タタク」と「オドル」に耽溺した至福の新潟千穐楽

2023年12月17日(日)午前11時過ぎ、新潟市内にも雪が舞い始めて、「いやいやとうとう来たか」みたいな気分で、車を運転して白山公園駐車場を目指しました。その頃にはまだ駐車場も空いていたので、場所を選んで車を駐めることができて一安心。で、まずはりゅーとぴあの6Fに上がってみると、展望ラウンジから見えるのは横殴りの風雪だったりするもので、まったく「やれやれ」って感じな訳です。

そのまま、そのフロアにとどまり、旬彩 柳葉亭にて家族で食事(まぐろ漬け丼と柳御膳)をしたり、珈琲を飲んだりして過ごしていたのですが、こちらのお店も年末に閉店してしまうとのことで、「そうなると来年からは淋しくなるなぁ」とか思って、これまで以上に味わって頂いたような塩梅でした。いろんな思い出もあります。長い間どうもお世話になりました。

開場時刻が近付いてきたので、3Fに降りていきます。一昨日とか昨日とか、或いは一昨日も昨日も会った友人・知人も大勢集まって来ましたし、この日、久し振りにお会いする顔もありました。でも、その誰もが一様にこの午後の公演への期待から晴れやかな笑顔を浮かべていました。館外の悪天候などはもう関係ありません。

14:30、ホワイエへ進みます。物販コーナーにて、浮き星をふたつ(ミルクと黒糖ベース)買い足しました。

物販担当はNoism2 高田 季歩さん(左)と村上 莉瑚さん、
やはり笑顔が素敵です♪

この日も開演前のソワソワ気分のままに、原田さん直筆の楽譜を見たり、色々な人たちと色々な話をしたりしてから、客席につきました。

『お菊の結婚』25分間、そして休憩20分間を挟んでの『鬼』40分間。新潟公演千穐楽のこの日、心掛けたのは「タタク」と「オドル」に耽溺すること。耳に届く音と目に映ずる身体のみが立ち上げる異界に耽ること。

『お菊の結婚』。ストラヴィンスキーの『結婚』、その奇天烈な音や歌、一筋縄ではいかない込み入った展開をもはや「劇伴」かと思わせるほどまでに自家薬籠中の物として踊る(現・元)Noismメンバーたち。
蔑み、欲、閉塞感、排除、謀(はかりごと)、孤独、その果ての惨劇。しかしながら、動き的に、ほぼ人形振りで紡がれていく「悲劇」からはその悲劇性がそっくり抜け落ち、ちょこまか動く身体の滑らかさの印象から「愉しい」の感想こそ似つかわしいほどです。鮮やかな色に染まる襖の外連(けれん)もピタリはまっているうえ、ふたつの死の見せ方も見事の一語で、(二重の「人形性」に閉じ込められるお菊の末路はさておき、)安易な「ポリコレ(政治的正しさ)」を嘲笑うように躍動するヴィラン(悪役:殊に楼主一家の3人)たちのアナーキーさ加減にドキドキしまくりの演目です。

Noism×鼓童の『鬼』。原田敬子さん曰く「挑戦でしかない」音楽をもとに、「同時に」産み落とされる「タタク」と「オドル」を耳からと目からと取り込んで、献身の賜物として成し遂げられた「同時性」そのものでしかないパフォーマンスに驚き続ける時間。音だけでも、舞踊だけでも既に圧巻レベルなのですが、それが「同時に」来る訳です。それはそれは物凄いシンクロ振りで、それを今風に言えば、「鬼」シンクロとでもなるのでしょうから、ここにも「鬼」が顔を出す訳です。まさに極限のところで出会う「鬼」です。
今回の再演にあたって行われたラストシーンの変更も主題的な一貫性・統一性を高めているように感じます。(初演時のラストシーンにおいては無人の光景だけが広がっていました。)
そんなふうにまるで隙のない一作、耳を澄まし、瞠目する者が悉くその身体の深奥から揺さ振られるように感じるのも無理のないことでしょう。なかなか身体の震えがとまらず、本当に物凄いものを観た感がある新潟千穐楽の『鬼』でした。

この日も終演後に大喝采とスタンディングオベーションが起こったことに何の不思議もありませんでした。「名作」が発火しそうなほどの熱演で演じられたのですから、それらはとりもなおさず、観客側の気持ちの昂りと至福の表れでしかなかった訳です。

この2作品につきましては、初演時に観た際に、感じたところを当ブログに記しています。そちらもご覧頂けましたら幸いです。
*「初見参の地・鶴岡を席巻したNoism×鼓童『鬼』ツアー大千穐楽♪」(2022/07/31)
(こちら、入場時にお手許に渡されたなかの「Noism Supporters Information #9」にて触れさせて貰っているブログ記事になります。)

この日のアフタートークについても書き記しておきたいと思います。登場したのは、井関佐和子さん、三好綾音さん、坪田光さん(以上、Noism)、そして小松崎正吾さんと平田裕貴さん(以上、鼓童)でした。

☆『鬼』のテーマ「新潟」の印象
平田さん(鹿児島県生まれ): 冬、凄く色々な風が吹く。冷たい風、寒い風…。
坪田さん(兵庫県生まれ): 雲が分厚い。上から押されている感じが、『鬼』の洞窟のなかで踊っているような感じと重なる。
小松崎さん(福島県生まれ): 海。太平洋側で生まれたので、海のキレイさに驚いた。海産物も違っていて、色々魅力がある。荒れている表情の海やサンセットも印象深い。
三好さん(東京都生まれ): じゃあ山(笑)。海も山も同時に見られる。山にいながら日本海の風を感じられる。ちょっと暗い感じなのも、自分にフォーカスし、集中するのによい場所。
井関さん(高知県生まれ): 一番大事なのは自然の力。この作品に活かされている。昨日までと全然違って、今日は踊っていて、「新潟にいる」と感じた。お客さんが信じられない熱量と集中力とで見詰めてくれていて、「新潟」って出て来た。

★再演でパワーアップした部分
平田さん: 2回目ということで、お互いのタイム感がなんとなくわかってきた部分がある。どちらかが合わせるというのではなく、パッと出て来る感じになった。
井関さん: より刺激が大きくなってきている。毎日、音色が違う。

☆コラボレーションで大変だったこと
三好さん: 毎日違うから集中力が必要だが、総じて大変さより面白いが勝っている。
坪田さん: 人見知りするところ。いつもマイナスから始まる。
小松崎さん: 本当に幸せな毎日。もっと深まっていったら、どんな景色が見えるか楽しみ。(*小松崎さんは、約10年ほど前に鼓童で踊りをやることになったとき、Noismに来てNoismメソッド・Noismバレエを学んでいたことがあり、その意味では「三好さんの先輩」(井関さん)にあたるそう。昨年はタイミングが合わず、『鬼』不参加だったのをとても残念がっていたもの。)
平田さん: 大変だったこと忘れてしまっている。ただ、合わせることは大変。
井関さん: 大変なことを楽しいと感じる「変な人たち」が集まっているのが舞台人。鼓童が演奏する『鬼』は、自分の気持ちが入っているときは別だが、普通の状態で聴いていると衝撃的過ぎて、気がどうかしてしまいそう。通して聴かされたお客さんは大変だったろう。

★今晩食べたいものは
平田さん: 新潟市内の某店(E亭)のディナーBセット。担々麺のお店かと思っていたところ、常連の坪田さんから、お勧めは「油淋鶏のBセットだ!」と聞いた。(「ぎょうざが付いてくるのも大事なところ」と坪田さん。)
坪田さん: お肉。「うし」。
小松崎さん: あったかいご飯と味噌汁。ホテル生活が続いているので、あたたかい家庭料理が食べたい。(とそこで、坪田さん「E亭は玉子スープ」だと補足するが、ややあってから、この日は同店が定休日だと気付き、平田さんは崩れ落ち、全員大爆笑のオチがついた。)
三好さん: 「ぶたにく」。(「疲労回復のためだね」と井関さん。)
井関さん: わからない。

☆このあとの『鬼』ツアー(神奈川・岡山・熊本)、どういう意気込みで臨みたいか
平田さん: すぐに再演したい、した方がよいと思っていた。楽しみ。また再演したい。
坪田さん: 各地それぞれ別の作品になる感じがある。毎回、新しい衝撃があって楽しみ。
小松崎さん: ふたつの生命体がガシャッとひとつになる演目。各地で邪気を払えたらいいなと思う。毎回、「これが最後!」と思ってやっている。再演したいんですけど。
三好さん: ツアーといっても踊る回数は4回。昨日より超えたいという欲をもってやっている。やればやるほど、もっと先があると身体で感じている。行けるところまで行きたい。
井関さん: 世界ツアーをしたいというのが夢。「新潟」から生まれたこの作品を広げていきたい。確実にパワーアップしていくだろうし、また再演したい。

浮き星は4分の3をゲット。しかし、コンプには至らずでした。

…等々。最後はクラウドファンディングへの協力依頼と大晦日のジルベスターコンサートへの参加について、井関さんが言及し、拍手のうちに、この日のアフタートークは閉じられました。

さて、Noism×鼓童「鬼」再演ですが、絶賛のうちに新潟3daysを終えて、明けて新年に神奈川(1/13,14)→岡山(1/20)→熊本(1/25)とまわります。各地で「鬼」降臨をお待ちの皆さま、お待ちどおさまです。来年のことを言うと「鬼」が笑うといいますが、この『鬼』再演に向けた期待感から自然と笑顔になってしまうというのが、今の状況かと。圧倒される準備を整えて、いましばらくお待ちください。
その公演、JR東日本の新幹線搭載誌「トランヴェール」2023年6月号に私たちNoism サポーターズについて掲載していただいたときの、「感動は約束されています。期待値を高めて来てください」(私)、「本物の舞台が見られます。必ず心が動きます」(aco)、「Noismはあなたを裏切りません」(aqua)、「私が保障しますよ(笑)」(fullmoon)、それらに尽きます。どうぞお楽しみに♪

*追記: 「トランヴェール」2023年6月号に関しましては、こちらもご覧ください。
「2023年6月1日、JR東日本「トランヴェール」6月号にサポーターズ登場♪」(2023/06/01)
また、掲載していただいた「トランヴェール」の6月号そのものもバックナンバーとして、こちらからご覧いただけますので、そちらもどうぞ。

(shin)

 

Noism×鼓童「鬼」再演:新潟公演初日、深化/進化した舞台に魅入られる喜び♪

2023年12月15日(金)、この日は朝から雨が間断なく降り続き、誰にとっても鬱陶しさが募る一日だったかと。そんななか、夕刻には「あの『鬼』」再演の舞台にまみえる予定があることがそんな一日の気分を変えてくれることは明らかでした、私(たち)にとっては。昨年あんなに魅了された「あの『鬼』」が、こんなにも早く再演されることで、また「あの感動」に浸れる、「あの『鬼』」に。

しかし、昨年の感動があるため、自然と「あの」という指示詞を冠してしまうような気持ちに、幾分か油断に似たものがあったことは認めざるを得ません。そうです。Noismと鼓童の舞台で目撃したものは、「再演」という言葉では充分に表象することが適わない深化及び進化だったからです。この日この場所で、まさに一期一会でしかない刹那そのものとしての舞台だったのでした。

最初の1音から淀みなく流れていく物語に身を任せるようにして視線を送る、その快感に満ちた『お菊の結婚』。そして、それとは全く趣を異にし、1音1音が立ち上げる異界に身を晒し続けるような時間の体験とも言える『鬼』。

約1年半を隔てた「再演」の舞台。「えぐみ」を増した25分間の『お菊の結婚』では、そのトップシーン、ゲストダンサーのジョフォア・ポプラヴスキーさん(元Noism1)が登場する場面が変更されていましたし、休憩後の『鬼』に至っては、(それは金森さんにあっては決して珍しいことではありませんが、)ラストシーンが昨年と違うものになっていました。そのほか、両作品には細部の変更も数多く見出されることでしょう。しかし、そうした変更以上に、この日、目に映じたものはと言えば、パフォーマンスの深化及び進化であり、結果、「かつて観たことがある」と言って済ませることなど到底できないレベルの舞台だったということになります。魅入られっ放しでした。

『鬼』が終わると、場内に熱く大きな拍手と「ブラボー!」の掛け声が響き、客電が点いてからでさえカーテンコールは幾度も繰り返されました。そのなかで、金森さんが、先日、急逝された衣裳担当の堂本教子さんに届けんとばかりに両手を天に向けて差し出して拍手を送ったその様子には胸にグッとくるものがあったことを書き記しておかねばならないでしょう。

その後、この日のアフタートークには金森さんと『鬼』の作曲者である原田敬子さんが登場して興味深いお話を聴かせてくれました。少し紹介を試みます。

☆金森さんからストラヴィンスキー『結婚』について問われて
原田さん: 極めて異色で挑戦的。ピアノに歌を混ざらせず、敢えてぶつけている。空虚な感じのする和音を多用。倍音が聞こえてくる。声の出し方も所謂「ベルカント(美しい歌)」ではない。
金森さん: 1923年初演なので、ちょうど100年前の曲。アタックでパッと切ってステイするシャープな人形振りが合いそうと思った。

★「『鬼』舞踊と打楽器アンサンブルのための」(2020-22)等々
原田さん: 金森さんからのオーダーは「太鼓を超越した響き」。こんなに早く再演できたことで、直接の継承がなされ、楽曲も成長する。演奏者に指示する際、共有できる言葉でイメージを伝えることも。(例:お墓を風がふーっと吹くような感じで、とか。)それ故、作曲家が生きている間にコミットしている初演者の存在は大事。それが伝わらなくなってしまった後世の人になると、歴史を学んでイメージして、想像力と実感をもって演奏することになる。
自分は「直感人間」。リサーチしてイメージが浮かんだのち、それを整理して楽譜におとすのに時間がかかる。
「作曲家」は「確信犯」。限りなく不可能に近いところを意図している。慣習的なものではないところを演奏者に要求っすることで、新しい世界が拓かれる。身体が変化するくらいでないと、響きは変化しないもの。
金森さん: 音楽でも舞踊でも、技術的な難しさは一昔前とは比較にならない。不可能に思われていたことも誰かによってできることが立証されると、みんなできるようになる。トップランナーは突き抜けて凄いのだが、後の者もついて行ける。チャレンジの質も変わってこざるを得ない。 

ざっと、そんなところだったでしょうか。
あと、ホワイエには原田さん手書きの「『鬼』舞踊と打楽器アンサンブルのための(2020-22)」楽譜(抜粋:冒頭部分と清音尼が鬼に変わる部分)が飾られています。鼓童メンバーを絶句させたというその超絶な細かさ、ガン見しておきたいものです。(撮影禁止です。)

さて、「鬼」再演、このあと新潟ではもう2公演あります。昨年の初演をご覧になられた方にも、今回初めてご覧になられる方にも、それぞれこの驚異の2演目に瞠目する豊かな時間が待ち受けています。それだけはもう間違いのないことと言い切りましょう。金森さんはクリエイションにおいて決して歩みを止めませんから、今回観るのが最上の舞台となります。つまり、観る側にとっては人生の豊かさの問題になろうかと。
心ゆくまでお楽しみください。

(shin)

『鬼』5都市ツアーを熱く回顧したインスタライヴ♪

東北、北陸ほか、この度の豪雨被害に遭われた方々に対しまして心よりお見舞い申し上げます。

2022年8月3日(水)20時半、金森さんと井関さんが、先月1ヶ月間、都合5都市をまわったNoism×鼓童『鬼』ツアーを終えて、アフタートーク的意味合いのインスタライヴを(おやつなしに)行いました。おふたりのインスタアカウントからアーカイヴ(これを書いている時点では一時的に消えてしまっているようですが、)で観ることができますが、こちらでもかいつまんで、極々簡単にご紹介して参ります。

(※アーカイヴ、復活してますね。めでたし、めでたしってことで♪)

☆2004年『black ice』(6都市)以来の長期ツアー: 場所を変えながら、躍り込める。それで気付くことも多い。鼓童と一緒で「一期一会」感も強かった。

★クリエイション: ストラヴィンスキー『結婚』の方から始めていて、楽曲(『鬼』)が届いたのは1月終わりから2月頭の頃。オリジナル音楽での創作も2007年『PLAY 2 PLAY』以来と久し振り。「新曲の方が自分のものになる。穣さんが新しい曲に向き合うときは面白い。事前準備ない、台本ない。(音色が)自分が選ぶっていうものばかりじゃない」(井関さん)「既存の音楽は『恋愛結婚』、オリジナル音楽は『お見合い結婚』だから、結構、ハイリスク」(金森さん)

☆音楽家・原田敬子さん: 「2年前に利賀で一緒に創作(『still / speed / silence』)していて、音楽の作り方、美意識等、少しは知っているが、鼓童の太鼓にとお願いした今回は全く未知だった」と金森さん。聴き込む金森さんの傍ら、井関さんは「自分のなかで先入観が生まれてしまうから」と敢えて暫く聴かなかった。ここ数年は「固まっちゃうから」稽古に入る前は聴かないようにしているとも。

★楽曲『鬼』: 「どこも解り易くない。来た順番も結構バラバラだった」(井関さん)「色々組み替えていいと言われていて、一曲の中でも3分割して配置したりした」*(金森さん)「見えないものと向き合う感。金森穣への挑戦状だとすぐわかった。これ、どうやって踊るんだろうと思った」(井関さん)「音が少ないと思った。無音、静寂が滅茶滅茶多かった。音が鳴ってないときの緊張感がデフォルトなんだなとわかったから、無音を身体化する、無音の時間をどう構成するかが肝になると思った。始まり方は結構悩んだ。無音がデフォルトなら、最初の1音が鳴るまでが肝になってくるから色々試した」(金森さん)
*註: 楽曲的に一番長くてリズムが明白な一曲(F)を3分割して配置したと言う。作品全体の構成は、「E(冒頭・ほんの1分ほど)→F1(リズムが明白・男性のシーン)→B(赤い女性たち、遊郭のシーン)→F2(「夢覚めて」男性のシーン)→A(鬼登場~鬼逃げる)→D(大鬼を召喚してしまった3人のシーン)→F3」とのこと。

☆鼓童の生演奏について: 「全部、『生』かと思いきや録音の部分もある」と井関さん。それが「最初は録音だけで、途中から録音と生声が混じる、声の部分」と明かしてくれました。また、ツアーには、原田さんと一緒に仕事をされている音響デザイナー・野中正行さんが帯同してくれ、彼によるPA(音響機器)を介した音だったこと、世界最高峰のマイクのことやロームシアター京都の「音」が凄く良かったこと等も話されました。

★音楽を舞踊化し、空間化すること: 選択肢はごまんとあるが、どこかの段階で「これじゃなきゃダメ」ってなる。もう揺るがなくなり、そうするための音になってくるのがベスト。今回、『鬼』に関しては納得していると金森さん。

☆井関さんが感じたこと: 「井関佐和子」が「井関佐和子」を超え始めたな、やっと始まったなと思った。元来、決して「憑依」型ではなく、常に冷静な自分がいる。その冷静な自分がハンドリングできない自分。「そこまで行くんだ」と客観的に見ている自分がいるんだけど、それを止めることも出来ないし、止めようとも思わない。冷静な自分がビックリした。その超え方が今回初めて見えて、凄く面白かった。自分の理性よりも、ある種の動物的な勘みたいな、えも言われぬものが存在してしまう、と言えば良いかな。

★鼓童の生音楽から: 「指揮者がいない。みんな指揮者を見て、その絶対的に制御する人が出した音に対して踊っているのとは違う。鼓童の7人も要所で舞踊家を見ている。お互いを見ながら、お互いを感じながらという緊張感。鼓童一人ひとりの演奏が、実演家の憑依をどう促せるか、どう掴めるか、それが彼らに懸かっているという緊張感が凄い」「『身体が生きなきゃ』ってなるとき、堪らない」(金森さん)

☆今回の『鬼』の魅力は「映え」ではない。(井関さん)

…その後、質問コーナーもあり、「時間制限が1時間を超えても大丈夫になった」(井関さん)から、と全く終了する気配を見せないまま展開されたこの日のトークでしたが、しかし、開始からやはり1時間したところで、突然、「バツッ!」と終了してしまい、「えっ!?」となっていたところ、その後、おもむろに再開されると、ツアーのもうひとつの演目『お菊の結婚』にも触れられ、「『結婚』は歌だから、『春の祭典』よりも難しかった」(井関さん)という予想外の感想が聞かれるなど、約7分間のコーダ部が追加されたかのように嬉しいサプライズで締め括られていったこの日のインスタライヴでした。

是非、(「復活」予定と告知されている)アーカイヴにてご覧ください。

(shin)

初見参の地・鶴岡を席巻したNoism×鼓童『鬼』ツアー大千穐楽♪

2022年7月30日(土)、この年の文月、各地を魅了し尽くしてきたNoism×鼓童『鬼』公演が、初見参の地・(灼熱の)山形は荘銀タクト鶴岡にて、賑々しくその大千穐楽を迎えました。

妹島和世(せじまかずよ)さんによる、至る所に「波」を思わせるデザインが取り込まれたコンセプチュアルな建物(←個人の感想です)は、どのホールにも似ていないもので、そこにいるだけでちょっと非日常の雰囲気が伝わってきます。大ホールに足を踏み入れると、目に飛び込んでくる千住博さんが描いた緞帳(『水神』)も目を奪うものがありますし、座席の配置が既にかなり個性的です。

また、和装の方も少なからずおられ、観客の雰囲気にも肌合いの違いが感じられたように思います。そんな初訪問のホールで、今季最後の舞台、Noism×鼓童『鬼』公演を観てきました。

まずは開演前のホワイエから。エントランス脇に原田敬子さんの姿を認めましたので、合流していたfullmoonさんと一緒に(ご迷惑も顧みず)ご挨拶に。この日も少しお話しさせていただきました。鼓童の演奏は新潟の初日から素晴らしかったが、ますます凄くなってきていると原田さん。「(太鼓)破れなきゃいいですけど」などとジョークも交えてくださるものですから、ここは訊くしかないと、アレについて訊ねてみました。勿論、クッキングシートについてです。ご紹介します。
Q:「クッキングシートは毎回、新しいものを使っているのでしょうか」
  -「あっ、摩耗ってことですよね。そこは鼓童さんたちがどうされているか、お任せしています」(原田さん)
…そして、特にメーカーの指定はないとのことでした。(笑)
Q:「クッキングシートのアイディアはどのようにして浮かんだのですか」 
  -「ワイヤーとかも色々試してみたんですけど。で、ドイツにいた頃のサンドイッチを包む紙はどうかと思って。『これだ!』となったのがクッキングシートでした」(原田さん)
本当に色々親切に教えてくださった原田さん、「新潟、スゴイですね」とも。この度もどうも有難うございました。その後、入口付近に展示されていた『鬼』譜面のコピー、まじまじと眺めてから席に向かいました。

逆光ですが、コラボTシャツ
S,M,L全サイズ揃ってました

16時、開演。『お菊の結婚』。波の音、襖と海兵将校(ジョフォア・ポプラヴスキーさん)。お菊(井関さん)に向けて伸ばされた右手はその目的を達し得ません。厳かな雰囲気かと思いきや、ストラヴィンスキーが流れ出し、1音目から、そうした受容は裏切られ、そこからはもうどんどん加速していく毒ある諧謔味のジェットコースターにでも乗った己を見出すかのようです。また、全体的には「和」テイストでありながら、遊女4人(三好綾音さん・庄島すみれさん・中村友美さん・杉野可林さん)の衣裳や醸し出す風情はそれを越え出て、日本とも中国とも知れず、「日本って中国のなかにあるんでしょ」みたいな西洋から日本へ注がれる眼差し、その関心の薄さや侮蔑を一目で伝えてくるかのように感じられます。

人形振り。西洋人ピエールの目に映る小柄な日本人のぎこちない動きが誇張されているだけでなく、ラストの悲劇に至る迄、一貫して己の意思と無関係に扱われるお菊の存在そのものが、全体の人形振りの中で、二重に人形として表現されています。

個人的には、終盤、喜色満面な紫の「鬼」と化す井本星那さん、「young and innocent(若くて無邪気)」な糸川祐希さんがツボなのですが、中毒性のあるこの演目、全員の動きが一様に素晴らしいことで、その酷薄さにゾッとすることは言うまでもありません。

幕が下り切る少し前から大きな拍手が送られて、休憩になると一斉にざわついた客席。場内は、今さっきまで観ていた舞台によって引き起こされた興奮に覆われていたと言ってよい状況だったかと思われます。 

そして休憩後、『鬼』。静寂に摺り足。そこに最初の太鼓の連打がもたらされると、この日も場内のそこここから、虚を衝かれて声が漏れるのが聞えてきました。一瞬にして、休憩前とは違うことを納得させられた様子が感じられます。

この日の私の席は少し上の方でしたから、ほとんど目を上下させずとも、鼓童もNoismも視野に入ってきましたし、繰り返し観てきましたので、少し余裕もありで、これまで以上に鼓童にも視線を送ることができました。(クッキングシート、興味深く見詰めました。)それにしましても、「音が聞えてくる」という表現に滑り込むまどろっこしいタイムラグなどは皆無で、一瞬にして場内に音が満ちたり、はたまた次の瞬間には静寂に取って代わられたりする鼓童の入魂の演奏に、終始、全身が粟立つようでした。

鬼。人が尋常ならざる強度に晒されたとき、内面の恐れ(或いは畏れ)が投影されることで出会う異形。そう見るならば、それはもともと正邪など定め得ないものに過ぎません。清音尼がその身のうちに既に同居させていて、それとの間を行き来したり、女たちも、男たちも自身そう変わっていくことが何の不思議もない、鬼。そのあたり、創作段階における原田さんのリサーチと金森さんのスタディとが絡み合って初めて像を結び、可視化される「あわい」のような存在と言えるかと思います。ひとり役行者(山田勇気さん)だけがそれを対象として認識しようとしますが、ここでも清音尼(井関さん)に向けて伸ばされた右手はその目的を達し得ません。鬼出電入の鬼(金森さん)がその手を掴んで押しとどめるからです。直視しようする目は悉く覆われますし、見るべき存在ではなく、身を以て出会うべき存在ということでしょう。

また、役行者を中心とする冒頭すぐのユニゾンのシークエンスがそっくりリプライズ(反復)されることで、鬼を巡る役行者と周囲との関係性の変化が暗示を超えるリアリティをもって示されるところなど、何度観てもハッとさせられる見事さです。(鼓童が繰り出す耳を圧する分厚い音と暗転とがそのリプライズを可能とする契機を作っています。)

ラスト、あたかも眩しさに目を細め、魅入られたように、おぞましい笑みを浮かべる役行者、その視線の先には絡み合う男女の鬼。途切れ途切れに耳に達する鐘の音、緩やかに舞う金色。やがて無人となるも、鬼気森然たる趣を残したままに幕が下ります。

こちらも拍手は幕が下り切る少し手前から始まり、その後、場内に大音量で谺しました。ツアー最後、繰り返されるカーテンコールには、応じるスタンディングオベーションがあちらこちらに。(勿論、私も。)ステージも客席もみんな笑顔のうちに、『鬼』もとうとう見納めとなりました。

客席を出ると、新潟から来ていたテレビ局・BSNのクルーが鑑賞後のお客さんにインタビューをしている脇で、再び、『鬼』の楽譜のコピーにしばし見入ってから、新潟からのサポーターズ仲間と一緒に会場を後にしました。

それにしても、「感染爆発」とも言える新型コロナ第7波の渦中のツアーにあって、演者及びスタッフの誰一人として体調を崩すことなく、予定された全ての公演が無事に行われたことを心から喜びたいと思います。おしまいに、場内で叫べなかったひと言をここで。「ブラボー!Noism!」「ブラボー!鼓童!」サイコーでした♪

(shin)

愛知に『鬼』降臨!(2022/7/23)

7月23日(土)、鬼に会いに名古屋に行ってきました!
本日の会場、愛知県芸術劇場 大ホールは、美術館とも一体となった、愛知県芸術文化センターの広々とした複合施設の中にあります。

地下には大きな画面で『鬼』トレーラーが!
2階の案内所にも♪

今日は大入りで、4階席他の追加席を販売とのことで、とても嬉しいです!

15時15分 開場、コラボグッズは3種類。
物販の脇には、原田さんの『鬼』の譜面コピー2枚が掲示されていましたが、これは撮影不可で残念!
サポーターズ・インフォメーションと、さわさわ会vol.8は置きチラシです♪

いよいよ16時開演!
私はいつも1、2階で観ていますが、今日は珍しく3階席です。
少し遠く感じますが、音響も照明も素晴らしい!
『お菊の結婚』は熟達の極み♪主役の井関さん、ジョフォアさんはもちろん、山田勇気さん、井本星那さん、光っています。
続く『鬼』は、何度聴いても、鼓童さんの初打音に衝撃!
客席からも、嘆声が漏れます。
そして全メンバー渾身の演舞!圧倒されます。更に井関さんの優美さ、妖しさ、山田勇気さんの熱演、そして山田さん、井関さん、金森さんの3者の絡み、クライマックスの全員の踊り、息もつかせぬ勢いの盛り上がりのあとの静けさ。
金森さん、井関さんの踊りはアクロバティック超絶技巧なのに、あの優雅さは一体何なのでしょう!?

幕が下りきるほんの少し前に大きな拍手が起こり、カーテンコールが続きます。
今回も素晴らしい舞台!
無事終演し、嬉しい限りです♪

終演後、コラボグッズは浮き星と佐渡番茶がSold Out、Tシャツも残り少ないようです♪

そして来週は早くも大千穐楽、山形公演です。鬼とお別れするのは寂しいです・・・
会場の荘銀タクト鶴岡で別れを惜しみたいと存じます。
(fullmoon)

山鉾巡行の日の千年の都に「スゴイ新潟」を示したNoism×鼓童『鬼』京都公演

2022年7月17日(日)の京都は、3年振りに祇園祭山鉾巡行(前祭)が戻って来た日。14万人超の人出が通りを埋めたと聞きました。伝統行事の再開が大いに人心を惹きつけたことは間違いありません。そしてこの日、新潟という「鄙(ひな)」から上洛した2団体がロームシアター京都を舞台に80分間に渡って人心を激しく揺さ振ったことも記しておかねばなりません。そのNoism×鼓童『鬼』京都公演、終演後の客席は見渡す限り、一様に上気した顔ばかりで、そのままそこからは、この日の音楽と舞踊とが、千年の都に伝承されてきた「鬼」とは性格を異にする異形を示し得たことがわかろうかというものです。

先を急ぎ過ぎました。

開演前のホワイエへと戻ります。物販コーナーでの売行きも好調そのもので、その品薄状態が今公演の注目度或いは満足度の高さを示しています。

その他、個人的には、またまた音楽の原田敬子さんと(少しですが)お話しをしたり、新潟からのサポーター仲間、京都のサポーター仲間ともやりとりしたりしながら、開演時間を待ちました。

3階席まで入った観客の様子はどことなしに「ホーム」新潟とも関東圏とも少し異なる雰囲気があるように感じました。(どこがと明瞭には言い難いのですが、少し寛ぎが感じられると言いますか、そんな感じですかね…。)

そして16時を少し回って、最初の演目『お菊の結婚』の始まりを告げるあのSEが聞こえてきて、客電が落ちます。この日もそこからの25分間はもう怒涛の人形振りが目を奪いました。人形たちの「無表情」のなか、最終盤に至り、相好を崩すあの人こそ、この演目にあっての「鬼」と言えるかと思いますが、愛知と山形でご覧になる方々がおられますので、はっきりとは書かずにおきます。一気呵成に踊られ、紡がれていく演目は眼福であり、かつ衝撃でもあると言いましょう。

そして15分の休憩後、『お菊の結婚』が初Noismだったりした向きには、続く演目『鬼』の冒頭ほんの一瞬で脳天を撃ち抜かれたように感じられた筈です。先刻形作られたばかりのNoism理解がいとも簡単に崩れ去ることになる訳ですから。

そこには鼓童の打音も大きな役割を果たしていました。冒頭の連打が、客席から不意を打たれたことによる驚きの発声を引き出したのです。同時に、関西圏のお客さんは「反応がダイレクト」という印象を持ちました。

そこからは金森さん曰く「音が良い」ロームシアター京都で、鼓童が繰り出す様々な音たち(それらは巡演を重ねることで、更に確信に満ち、深化が感じられます。この日は「サッ」や「スッ」が剣呑な殺気を伴って迫ってきました。)が炸裂し、結界が解かれ、人と異形が行き来する把捉が容易ではない時空が立ち現れました。その音をNoism Company Niigataが、同時に、身体で可視化していきます。それは容易に「悪鬼」として対象化できないような「鬼」ですが、見詰める両の目には確かな像を結び、そのありようが説得力を以て感得されていきます。もしかしたら千年の都にも姿を現さなかった類の鬼のありようが。それはあたかも「結界」が解かれるように、都が「鄙(ひな)」によって活性化される時空だったとも言えようかと思います。換言するなら、千年の都に対して侮ることの出来ない「スゴイ新潟」が示された、とも言えるでしょう。

ラストに至り、既に客席は拍手を送りたくてうずうずしているかのようでした。若干早めに響いた拍手も、場内に満ち満ちたそのうずうずに呑まれて静寂へと回収され、やがて一斉に割れんばかりの大きな拍手が沸き起こりました。そこから先、鳴り止まない拍手と、それに応えて繰り返されたカーテンコール(この日も客電が点って後も続きました)が辿り着く先はスタンディングオベーションしかありません。それも極めて自然な成り行きとしての。

で、冒頭に書いた通り、客席に、上気した顔ばかりが溢れるのを見ることになったのでした。密を避けるため、一斉退場は奨励されないのですが、そうではなく、公演の余韻に浸っていると思しき人たちが多かったように感じました。耳に入ってきたのは、「凄かった」や「面白かった」ばかりでしたから。

ホワイエに出てからの光景も同様です。物販コーナーにはお目当ての品を求めようとする人たちが並び、この日用意されたコラボTシャツが全サイズsold outになっていましたし、公演ポスターの前には、そのビジュアルを背景に写真撮影をしようとする人が笑顔でその順番を待っていました。Noismと鼓童によって心地よく圧倒された人たちが如何に多かったことかが窺えます。

立ち去り難い人たち、私もそのひとりでした。サポーターズ仲間や浅海侑加さんのお母様(わざわざ「まぜまぜくん」をいくつもお持ちくださいました。有難うございました。)とお話をしたり、中村友美さんとジョフォアさんに感激を伝えたり、「おめでとう♪」を言ったりしていました。その中村さんもそうですが、Noismには関西出身メンバーも多く、井本星那さん、杉野可林さんが身内や友人の方々と話す姿なども見られました。

そんなふうにして京都公演の幕はおりました。大好評のNoism×鼓童『鬼』ですが、あとは愛知と山形を残すのみとなりました。両会場でご覧になられる方々、あと少しです。どうぞお楽しみに♪

(shin)

「新潟はスゴイ」を見せつけた興奮の『鬼』埼玉公演楽日♪

2022年7月10日(日)、大きなワクワクを抱え、今公演のNoismと鼓童ダブルネーム入りTシャツを着込んで、真夏の新潟から真夏の埼玉へ向かいました。一昨日、埼玉公演初日を観たfullmoonさんのレポートに「舞台美術に変更アリ!?」などとあったものですから、『ROMEO & JULIETS』の映像差し替えの例に見るまでもなく、常にブラッシュアップの手を止めない金森さんのこと、どう変わっているのか、もう興味は募る一方でした。

そして、更に、個人的な事柄ではありますが、もうひとつ別の角度、音楽の原田敬子さんへの興味も日毎に大きなものになってきていました。
今公演の特設サイトで見られる「Noism×鼓童『鬼』Trailer原田敬子さんver.」において、「楽器或いは声で実演するための音楽」への拘りを語る原田さん。続けて、「人間の、演奏する人たちの身体を媒体として、音を媒体として、人間の身体と、それをコントロールする脳、精神の可能性を限界まで拓いていく」と自らの音楽を語っておられます。音楽の素養のない身にとっては、それら語られた言葉を、単なる語義を超えて、それが表わす深い部分までまるごと理解することなどできよう筈もありませんでした。新潟での3公演を観たことで、更に原田さんの音楽について知りたいと思うようになり、CDを求めて耳を傾ける日々が続きました。

お昼少し過ぎに大宮に連れて行ってくれる新幹線、移動中の座席では、原田さんの旧譜『響きあう隔たり』のライナーノーツを熟読して備えました。同ライナーノーツのなかに、彼女が折に触れて繰り返す「演奏の瞬間における演奏者の内的状態」という自身の志向性に関して、今公演に繋がるヒントとなるものを見つけたからです。
原田さんは語ります。「私のいう内的状態とは感情的なものではなく、拍の数え方・呼吸の仕方・音の聴き方等、演奏に不可欠な実際面での技術である。新しい音楽というものに、何か役割があるとすれば、それはこれまでの習慣だけではなく、少しでも新たなアイデアが加えられ、奏者のイマジネーションを刺激しつつ、実はそれを実現するための技術の部分に挑戦するというポジティヴな未来志向性を、身体を通して聴き手に提示することかも知れない」(CD『響きあう隔たり』ライナーノーツより)
この言葉、「音楽」に纏わる語を「舞踊」関連に置き換えて、名前を伏して示したならば、金森さんが言ったものと捉えてもおかしくない言葉たちではないでしょうか。まあ、優れた芸術家は通じ合うものと言ってしまえばそれまでですけれど、この度のコラボレーションの必然性が見えてくるように思えたのでした。

公演の詳細は書けないからといっても、前置きが長くなり過ぎました。

入場時間になり、ホワイエまで足を運ぶと、そこにはNoismスタッフ上杉さんと話す小林十市さんの姿があり、周囲に光輝を放っていました。それから、芸術監督の近藤良平さんに、評論家の乗越たかおさんもおられました。また、劇的舞踊で参加されていた俳優の奥野晃士や元Noism1メンバー・鳥羽絢美さんとは、それぞれ少しお話しすることができました。この日は関東地区での千穐楽でしたから、華やかさが際立っていたと言えます。
また、この日の物販コーナーでは、缶入りの浮き星に加えて、Noism×鼓童TシャツのSサイズも売り切れとなっていたことも記しておきます。こうしたことからも今公演が多くの方の心に届いているものとわかります。

開演時間が来ます。先ずは『お菊の結婚』です。ストラヴィンスキーの音楽に操られるようにして動く人形振りですが、動きは細部にわたって確信に満ち、練度が増しています。蔑みの眼差しで見詰められたオリエンタリズムのなか、拡大していく「歪み」が招来するものは…。淀みなく展開しながらも、「おもしろうて、やがて…」のような味わいは繰り返し観ても飽きることはありません。

休憩後は『鬼』です。緞帳があがり、櫓が顕わしになっただけで、ザワッとして、一瞬にして心を持って行かれてしまうのはいつもの通りです。そこから40分間、透徹した美意識が支配する演目です。fullmoonさんが触れた、ある場面での「舞台美術の変更」も、禍々しい効果を上げていました。
この演目、原田さんによる音楽を(1)鼓童が演奏し、(2)それを、或いはそれに合わせてNoismが踊るという、ある意味「2段階」を想定するのが普通の感覚なのでしょうが、鼓童の音とNoismの舞踊の間にはいささかも空隙などはなく、してみると、その当たり前のように成し遂げられた同調性が高いコラボレーションは、敢えて言えば、原田さんの楽譜を、(1)鼓童が演奏すると同時に、(1)金森さんもNoismを「演奏」しているかのような錯覚をきたすほどです。(無論、金森さんの演出振付を不当に矮小化しようというのでは毛頭ありません。)この演目、カウントで成立するものではないのですから、人間業とは思えない途方もないレベルの実演であることはいくら強調しても足りないほどです。「聴くこと」の重要性は原田さんが常に唱える事柄ですが、それが鍵を握る「共演」であることは言うまでもないでしょう。Noismと鼓童、恐ろしいほどに「新潟はスゴイ」(金森さん)を見せつけた興奮の埼玉楽日だったと思います。

終演後のカーテンコールでは、鳴り止まない拍手に、大勢のスタンディングオベーションが加わり、感動を介して、会場がひとつになった感がありました。繰り返されたカーテンコールはfullmoonさんがレポートしてくれた前日同様、客電が点いてからも続き、客席は温かい笑顔で応じました。そのときの多幸感たるやそうそう味わえるものではありませんでした。

今日は原田さんを中心に書いてきましたが、原田さん繋がりで、個人的なことをひとつ記して終わりにしようと思います。先日の「1.8倍」云々の件がありましたので、お見かけしたら、再びご挨拶せねばとの強い気持ちをもって埼玉入りした部分もありました。すると、開演前、この日も座席表付近で原田さんの姿を認めましたので、お声掛けしました。で、様々に感謝を告げようとするのですが、やはり緊張してしまい、この日も頭は真っ白に。にも拘わらず、笑顔で対して頂き、不躾なお願いでしたが、CDにサインも頂きました。感謝しかありません。その後、fullmoonさんと一緒に再度ご挨拶することもできました。

原田さん、度々突然お邪魔することになり、失礼しました。と同時に、重ね重ね有難うございました。この日も音楽を起点とする実演に圧倒されました。

諸々の高揚感のうちに、新幹線に乗って新潟へ戻ってきた訳ですが、ツアーはこの日でふたつ目の会場を終え、次は一週間後(7/17・日)の京都です。関西のお客様、お待ちどおさまでした。お待ちになられた分も、たっぷりとお楽しみください。

(shin)

『鬼』埼玉公演2日目に行ってきました!

7/9(土)埼玉公演、中日となりました。さい芸の最寄り駅、大宮から埼京線で2駅目の与野本町は、駅前に広い遊歩道的な、与野本町駅前公園アートストリートエリアがあり、バラがたくさん植えられています♪まだまだ咲いていますよ。明日も暑い最中にはなりますが、公演の行き帰りにどうぞご覧ください♪

鼓童アース・セレブレーションのポスター。
山田勇気さんワークショップとNoism2と鼓童のコラボレーションがあります♪

さて、本日2日目の公演も、まさに圧巻でした!!
どちらの演目も凄い、凄い、凄すぎる!素晴らしすぎて、ああだこうだとアレコレくどくど書きたいのですが書けません。。
ネタバレを避けるという意味あいもありますが、言語化能力が不足しております。申し訳ありません💦
未見の方は、ぜひご自身で体験、体感、ビックリ仰天、大感動していただければと存じます。

さて、初日にご紹介した、さわさわ会の会報誌ですが、私が今日会場に到着した時には、すでに残り3部。そのあと、あっという間に無くなってしまいました〜
入手ご希望の方は、ぜひどうぞ、さわさわ会にご入会ください。お送りいたします。ご一緒に井関佐和子さんを応援しましょう!
このあとの公演では、京都、山形は折り込み配布。愛知は積み置きとなります。

「さわさわ会」ご入会もご検討ください♪ m(_ _)m

Noismサポーターズのインフォメーションも同様です♪
インフォメーションには、金森監督からの3通りのメッセージや、shinさんによる公演期待文、hohosan製作のNoism応援グッズ紹介等が載っていますよ♪こちらもぜひお読み&ご入会くださいね!

早いもので、埼玉公演も明日が楽日となりました。体調を整え、暑さに負けず、『鬼』公演に挑んでください。
そして、お待たせしました。明日は真打ちshinさんが登場します!
乞うご期待♪
(fullmoon)

『鬼』埼玉公演 初日に行ってきました!

7/8(金)、新潟も埼玉も暑いですが、夕方6時頃ともなると、気温も下がり、涼しい風もそよそよと〜♪
彩の国さいたま芸術劇場に到着すると、そこにはBSN新潟放送のヒーロー、坂井悠紀ディレクターが〜♪

会場ロビーには、プログラムセット、さわさわ会の新会報誌♡、そして物販コーナー。


物販は缶入り浮き星が早くも売り切れ!
東京の知人友人に挨拶していると間もなく開演。
チャイムが鳴ってから、そこそこの人数の観客が入場してきました。電車が遅れたのだそうです。皆さん間に合ってよかった!

『お菊の結婚』、ピエールの登場は、ステージの高さがあるので、舞台袖からでした。
ホント、コミカルなのに怖い演目ですが、照明がきれいですね〜♪
流れるように動きが進んで行きます。
続く『鬼』はガラッと雰囲気が変わります。
舞台美術に変更アリ!?
井関さんの鬼がますます禍々しいです!
この演目も本当に凄いですよね!!
鼓童さんの音も大迫力です!

大拍手で無事終演♪
ブラボーを言っちゃいけないそうですが、後ろの方から2、3回聞こえましたよ!

今回も素晴らしい公演でした♪
原田敬子さんのお姿もチラッとお見かけしました。
安倍元総理の衝撃のニュースがありましたが、公演は明日あさってと続きます。
どうぞお運びくださいね♪


(fullmoon)