昨年初秋の新潟、一夜限りで上演されたNoism0『愛と精霊の家』が、第23回BeSeTo演劇祭・新潟における日本からの演目として、2016年10月7日(金)新潟・りゅーとぴあ劇場の舞台に戻ってきました。再演、そして或いは「reunion(再会)」。
日に日に秋の気配が濃くなる新潟、開演時間前のホワイエには遠方からのお客様も多かったと見え、あちらこちらで、久し振りの再会に驚き、笑顔を浮かべて喜び合う姿が見られました。—–「再会」。Noismが紡ぐ縁は見事に「劇場」の役割を具現化していて、その場に身を置くだけで既に幸福感に満たされるようでした。
そして開演、赤と黒と椅子と白いトルソー。瞬間の暗転ののち、そこに舞踊家と俳優の姿を嘘のように目にしてしまえば、たちどころに心を鷲づかみにされ、虜になるより他ありません。
13ヶ月前のあの一夜の「幻」が再び降臨してきます。あとは酔いしれるだけで充分。なにしろこれは「約束された幸福」に過ぎないのです。
あたかも碁盤の目のように、天井一面に方形を描いて吊された夥しい数のペンダントライトは、全体として見事な均整がとれているばかりか、ひとつひとつが切っ先を下にしたその鋭利なプロポーションで豪華さと同時にある種の不吉さをも醸し出します。その下で、網膜に長く残像を残す金森さんのダンスに圧倒され、奥野さんのイヨネスコ『椅子』からの台詞にいつともどことも知れない時空に誘い出され、振り付け家・山田さんパートのミラー/ハーフミラーで繰り広げられる夢幻に浸り、下りてきたペンダントライトに檻のように囲まれるなか、小㞍さんとの間に純粋な愛と悲しみを可視化されては、心はもう大忙し。観る者は徹頭徹尾翻弄されっ放しな訳です。そして「無垢」という言葉が似つかわしい風情で、強ばりなく、人形、舞踊家、妻、母になれない女を完璧に踊り倒す井関さんからは、4人のパートナーへの強い信頼が、リスペクトが溢れていました。
椅子が想起させずにはおかない「存在」と「不在」を介して、ラストの「Under the marron tree」へ。 机と椅子と赤と黒、そして金。4人の男たちの追憶、井関さんが右手の人差し指で表す数字「1」への憧憬。まったくもって豪華な締め括りです。瞬きするのさえ惜しい、まさに心酔の60分間でした。アフタートークで「今日は本当に気持ちよかった」と語った井関さん。舞台上で私たちが目にしたものもまさしく演者の「reunion」の果実であったのでしょう。
終演後も、立ち去りがたく感じたお客様が大勢いらっしゃいました。私たちも同様。次なるNoism公演での「reunion」を約して漸く帰路につけたような塩梅です。
この二日後には、来年1月からのNoism1の新作・近代童話劇シリーズvol.2『マッチ売りの話』+『passacaglia』(タイトル仮)の稽古が始まるとのことでしたし、12月には、Noism2定期公演『火の鳥』(金森さん振付・再演)と『ÉTUDE』(山田さん振付・新作)の同時上演も控えています。また、会場でお会いしましょう。 (shin)