『新潟はシュツットガルトになるか?』再掲載

2026年5月29日、りゅーとぴあ公式サイト「RYUTOPIA Log」に掲載された『新潟はシュツットガルトになるか?』は、その後閲覧できない状態となりました。
本記事について執筆者に確認したところ、本文の再掲載のご了解をいただきました。掲載にあたっては関係各所へ連絡を行っています。

本稿は、Noism Company Niigataをめぐる2026年当時の状況や、それに向き合った一職員の思考を伝える記録の一つとして、後日の参照に資することを目的に掲載するものです。
その目的から、写真等を除き、執筆された原文のまま掲載します。
以下、本文です。

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新潟はシュツットガルトになるか?

シュツットガルトとは何か

「新潟はシュツットガルトになるか?」これは、批評家の三浦雅士さんがNoism CompanyNiigataの20周年記念冊子に公演の評をご寄稿いただいた際につけられたタイトルです。

『ジョン‧クランコ バレエの革命児』

先日、新潟‧市民映画館「シネ‧ウインド」で上映中の『ジョン‧クランコ バレエの革命児』を見てきました。来週(2026年6月5日)まで上映予定ですのでみなさまもぜひご覧ください。

ジョン‧クランコはドイツの地方都市、シュツットガルトのバレエ団を世界有数のバレエ団に育て、『ロミオとジュリエット』『オネーギン』『じゃじゃ馬馴らし』といった数々の名作を生み出した振付家です。映画では、クランコが小さなカンパニーに居場所を見つけ、カンパニーの中で劇場支配人、ダンサー、スタッフはじめ、様々な人々とぶつかりあい、傷つけあいながら、芸術家として情熱と信念を持って、「シュツットガルトの奇跡」と呼ばれる成功を収める様子が描かれていました。

また、映画では触れられていませんが、ジョン‧ノイマイヤー、イリ‧キリアン、ウィリアム‧フォーサイス、そしてウヴェ‧ショルツといった大物振付家たちが、クランコの影響を受け、このシュツットガルト‧バレエ団から巣立っていきました。

私がクランコの作品で最初に出会ったのは『ロミオとジュリエット』。映画の中でもロミオの友人であるマキューシオの死、ロミオとジュリエットのバルコニーのシーンの振付が描かれていましたが、それは「人間とは何か」「生きるとは何か」を問いかけ、生き急ぐ若者の愚かさ、切なさを見事に描いています。その劇的で、美しい作品は、クランコが亡くなった今も世界中のバレエ団で上演されています。

シュツットガルトは20世紀バレエにおいて、新潟は21世紀バレエにおいて

三浦雅士さんは、金森穣の『かぐや姫』とNoism20周年記念公演「Amomentof」での2作品を物語バレエと抽象バレエの新展開になっていると評しつつ、寄稿文の最後をこのように結んでいます。「シュツットガルトは20世紀バレエにおいて燦然と輝いている。いずれ新潟が21世紀バレエにおいて燦然と輝くことになるだろうと、私は信じている。」

この寄稿文をいただいてから2年。りゅーとぴあの劇場専属舞踊団‧Noism Company Niigataは存続の岐路にいます。『ジョン‧クランコ バレエの革命児』の上映も現在のNoismの状況を憂い、Noismを応援するために、シネ‧ウインドのみなさんが企画してくださいました。

Noismとしても、コロナ禍や国際情勢の関係でなかなか実現できなかった6年ぶりの海外公演で成功を収め、金森穣の次世代の振付家の育成にも取り組み、その萌芽が見え始めている最中での現在の状況。新潟はシュツットガルトのように奇跡を起こせるのか、起こせないのか。新潟が、りゅーとぴあがNoismを失くしてしまうというのはどういうことなのか。あらためて、みなさまとともに考えていければと思います。

この記事を書いた人 施設・利用課 B

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本文、以上です。

(NoismサポーターズUnofficial事務局一同)

「地方文化の確立について」考える傑作 Noismメンバーをお招きしての『ジョン・クランコ バレエの革命児』試写会レポート(サポーター レポート)

シネ・ウインドにて5月16日(土)〜6月5日(金)上映の『ジョン・クランコ バレエの革命児』のNoism Company Niigata・Noismサポーターズの皆さんに向けた試写会を、5月12日(火)に開催した。ドイツの地方都市シュトゥットガルトの公立劇場専属バレエ団を、世界有数の存在に高めた伝説的振付家ジョン・クランコ(1927〜73)の生涯を描く本作。上映企画時から、Noismの皆さんと、日本唯一の「劇場専属舞踊団」を擁する新潟に暮らす人たちに広く観ていただきたいと願い、今回の試写会を企画した。
16時からの上映を前にNoismメンバーがシネ・ウインドに集まり、ウインド有志で作成した6月からの『私は海をだきしめていたい』巨大ポスターを前に記念撮影。金森さん・井関さん始めメンバーは折々にウインドで映画を観てくださるが、全員がこの場に集う光景には、感慨無量だった。


事前に作品を鑑賞していた私も、皆さんと上映に臨んだが、舞踊映画を超えた本作の力に打ちのめされ、幾度も落涙した。ドイツの地方都市に世界各地からの舞踊家が集い切磋琢磨しつつ、圧倒的な舞台芸術を創造する過程。日本と比して戦争犯罪に向き合っているとされるドイツにもあった歴史修正や差別への怒りを作品に込めるクランコの姿(南アフリカ出身かつユダヤ系である彼の背景もしっかりと描写される)。そして、現役の「シュツットガルト・バレエ団」メンバーが、マルシア・ハイデ始め当時のメンバーを演じ、息遣いや情感まで見せきる舞台シーンの迫真に、この時代に広く届いてほしい傑作映画との思いを再確認した。クランコの「形をなぞるな。舞台を生きろ」という檄や、音楽と心体表現への「祈り」に通じる情熱、マルシア・ハイデ役であるエリサ・バデネスが全身で体現する舞踊家の矜持など、バレエを観たことのない人にも届くであろう。

上映後、熱のこもった場内からは自然と拍手が起こった。世界に誇る舞踊団を擁する新潟に於いてNoismに起こっている苦難に思いを馳せつつも、それを超える舞台芸術の豊かさを皆さんと噛み締めるようだった(不勉強故、クランコが金森さんの恩師イリ・キリアンの恩師であることを、上映後に知った)。

『ジョン・クランコ バレエの革命児』シネ・ウインド上映は5月16日(土)〜6月5日(金)まで。坂口安吾がアジア太平洋戦争直後に書いた檄文「地方文化の確立について」を思わせる本作を、新潟に暮らす皆さまにこそご覧いただきたい。Noismがあるこの街の意味を考えるためにも。

久志田渉(「月刊ウインド編集部」)