「柳都会」Vol.27 栗川治×山田勇気(2023/7/23)を聴いてきました♪

2023年7月23日(日)、暑い日が続く文月下旬、日曜日の夕方、スタジオBを会場にNoism地域活動部門芸術監督・山田勇気さんが初めてホストを務めるかたちで開催された「柳都会」vol.27を聴いてきました。

山田さんの「柳都会」デビューとなる今回のゲストは栗川治さん(立命館大学大学院先端総合学術研究科博士課程ほか)。視覚障がいを持つ栗川さんは、2019年から続く「視覚障がい者のためのからだワークショップ」に初回から参加し、山田さんと共に、同ワークショップの充実・発展に多大な寄与をしながら、普通に、一観客として、本番の公演にも足を運ばれておられます。

栗川さんには、いったいどんな世界が「みえている」のか。打合せ、メール、ワークショップ、公演を通して重ねてきたやり取りを手掛かりに、参加者の皆さんとも一緒に身体や芸術についてイメージを膨らませ、思索を深めます。

Noism Web Site より

申し込みの動きも早く、定員に達して迎えたこの日の会場。参加者は全員、おふたりによる大いに刺激的な対談を堪能しました。

障がいのある人も障がいのない人と同様に、普通の生活を送るべきであり、双方、社会生活を共にするべきとする「ノーマライゼイション(Normalization)」の考え方に基づいた社会参加を行い、サッカー観戦などにも出向く栗川さん。観客4万人のビッグスワンでは、ゴールを外したときや決めたときをはじめ、その場の雰囲気、臨場感に、「見えていないんだけど、その場に身を置いているだけで楽しい」と語り、聞いているし、感じているし、「見ている」だけではない(視覚優位ではない)「五感で開く可能性」に関して、「視覚障がい者のためのからだワークショップ」のこれまでを紹介することを中心に、山田さんと示唆に富む対談を聞かせてくれました。ここでは、かいつまんでそのやりとりのご紹介を試みようと思います。

(1)ワークショップ1回目(2019年12月18日): 手のひら合わせ→相手を感じて動く/踊りになっていく
・この時期は、Noism存続問題で大変だった時期と重なり、一層の地域貢献が求められていた。
・サッカー観戦と異なり、声を出せない劇場の性格から、いきなりの舞踊鑑賞は課題も多い。互いに理解し合う必要があった。
・栗川さん「実際に舞踊家の身体に触ってみてくださいと言われ、全身を触りまくった」
・山田さん「手が求めている。手が目である。触りにきているその勢いに頭が真っ白になった」
・栗川さん「肌と肌の触れ合いのなかで一緒に動いていくことに大きな意味がある。視覚障がい者に対する一般的な鑑賞サポートの在り方が、(1)オーディオガイドによる『ことば』を使った説明、(2)事前事後に組まれる『タッチツアー』と呼ばれる大道具や小道具を触る機会の提供だったりするなか、『ことば』に依らないで、ダンスを感じて、体験することを目指すもので、『とてもよかった』。『ことば』は理解するには優れたツールであるが、ダンスを鑑賞するには、足りないし、場合によっては害になり得る。本来、『ことば』では表現出来ない筈のものを『ことば』に還元してはダメ」

(2)ワークショップ2回目(2020年12月19日): Noismの作品『春の祭典』を踊ってみる
・実際の舞台を経験して貰えないかが出発点。
・『春の祭典』の冒頭部、椅子に座って、踵で床をリズミカルに踏み落とす。(2グループで違うリズムで)
・また、『夏の名残のバラ』の音楽に合わせて、身体で相手を感じて、繋がり、踊った。
・栗川さん「金森さんが『ダンスによる音楽や物語の可視化』と言ったものを、再不可視化したとき、何が残るかを楽しみにして本番の公演を観に来た。音、重量感、拍手、米の音や振動、息遣い等、触れるように感じることが出来た。体験したものが始まる瞬間には『来たー!」という嬉しさがあり、身体が覚えているものは一緒に動いて踊っているように感じた。しかし、映像作品(映像舞踊『BOLERO 2020』)には何も感じなかった」 
・栗川さん「視覚的には『見る』とは網膜に映すことを意味するが、網膜を介さなくても頭にイメージが浮かべば『見た』ことになるのではないか。何らかのかたちで外界をキャッチすることが『見る』ではないか」
・山田さん「踊っているとき、まだ見えないものやこれからの動き等、半分はイメージの中にいる。そういう時間軸のなかで踊っている。
・栗川さん「目で『見る』というのはほんの一部に過ぎない。視覚は強烈な感覚であるだけに人を惑わすこともある」
・山田さん「そのことは舞踊の本質と関係ある。いろんな要素が絡み合って、いい舞踊となる」

(3)ワークショップ3回目(2022年3月12日): Noismの作品『Nameless Hands - 人形の家』を踊ってみる
・栗川さんから「物語、ストーリー、Noismの世界観を感じたい」とのリクエストを受けて実施。
・山田さん「『ことば』だけでなく、身体で直接、伝え導いて振り付けることは出来ないかと考え、人形浄瑠璃にヒントを得た、黒衣による人形振りの作品を選んだ」
・栗川さん「本当に後ろから抱きかかえられて、人形となり、それが踊りになっていくのは面白かった」
・山田さん「最後はアラベスク、足を上げる動きまでいった」

(4)ワークショップ4回目(2022年12月17日): 『Der Wanderer - さすらい人』を踊ってみた
・スタジオBに設えられた本番の舞台で、空間も共有し、本番の曲を踊るに至った。
・更にワークショップの終わりには、車座になってのディスカッションの時間が初めて設けられ、感想や疑問を出し合った。
・栗川さん「本番も観に来たが、スタジオBでは、(劇場ほど大きい空間ではないので、)空気を切って動く動きまでを全身で感じることが出来た。また、歌曲の歌詞も貰っていたので、点訳したものに触りながら鑑賞することが出来た。リハーサルでは倒れて死んでいる筈がハアハアしていたのが、本番ではピタッと息を止めていた」(笑)
・山田さん「栗川さんが来ているときの本番では、踊りが『やかましくなる』。(笑)そこにいる人にどうしたら何かが届けられるか、届けたいと思うから」

(5)『Floating Field』 声の踊り: 新たな試み、その映像の紹介
・山田さん「舞台上のあちこちで展開される、抽象的で踊りそのもののような作品『Floating Field』。それを踊っている映像に、演出振付・二見一幸さんの許可を得て、Noism2のメンバーたちによって、『シュッ』『ダッ』『ドンドン』などの声(一種のオノマトペ)をインプロ(即興)でかぶせて録音してみた」
・栗川さん「割といいかもしれない。可能性があるかもしれない。意味のある『ことば』よりもスピード感やきざみがあって、動きに近い。例えば、リヒャルト・ワーグナーは楽劇を創るにあたって、キャラクターの音形を『ライトモチーフ』として予め設定しておいて、それを用いて構築していくスタイルをとった。また、これはこれで現代音楽としても面白いんじゃないか」

*会場からの質問01: ワークショップといった体験なしに、実際の舞台を見ることは可能か?
 -栗川さん: 「領域」ダブルビル公演は体験なしに観た。金森さんと井関さんの『Silentium』はとても静かな作品だったので、ステージの気配を感じ取るハードルは高かったが、『Floating Field』の方は動きが激しいので感じ易かった。

*会場からの質問02: ダンスという非日常の体験を経て、日常の何かが変わったようなことはあるか?
 -栗川さん: 便秘気味だったが、「ピョンピョン」とか「ブルブル」とか、身体を大きく動かしたり、細かく動かしたりして、便通がよくなった。内臓にもいいのでは。Noismのお陰かなと。(笑)

*会場からの質問03: 視覚障がい者のためのからだワークショップ、ひとつの舞台のように見えた。見学できないか?
 -山田さん: 人数が多くなると大変なところもあるが、今後、目が見える人と一緒にやることなどもあっていいかもしれない。

…と、そんな感じだったでしょうか。一緒によりよいものを目指して、模索し、工夫に工夫を重ねて、「視覚障がい者のためのからだワークショップ」をアップグレードしてきたおふたり。「柳都会」の終わりにあたり、山田さんが「ワークショップで出会えた人たちに感謝します。踊りが広がり、身体感覚が深くなった」と語れば、栗川さんは「一緒に芸術を創っていきたい」と応じました。

手探りで始められたのだろう「ワークショップ」が僅か4回で大きな進歩を遂げてきたことに驚きを隠せません。

そして、何より、山田さんのみならず、金森さんも井関さんも常々、ワークショップに出られる視覚障がい者の方たちの感覚が、「本当に踊れる舞踊家のようだ」と語っている、その一端を垣間見ることができて、多くの学びを得ることが出来ましたし、今回の「柳都会」のおふたりのやりとりの中心にあった『見る』ことや、逆に、やや旗色の悪い趣だった『ことば』の働きについて、更なる思索に誘われる刺激に満ちた時間となりました。そうした空気感だけでも伝えることができたら幸いです。それではこのへんで今回の「柳都会」レポートを終わりとさせて頂きます。

(shin)


「纏うNoism」#09:糸川祐希さん

メール取材日:2023/07/20(Thur) & 07/22(Sat.)

Noism Company Niigataの19th シーズンのラストを飾るNoism0 / Noism1「領域」ダブルビル公演も大盛況のうちにその幕をおろし、季節は真夏。それも災害級に熱い夏。皆様、どうかご自愛ください。エアコンの効いた屋内でお読み頂くにはもってこいかということで、(勿論、どこでお読み頂いてもいい訳で、場所の制約を加えるつもりはありませんが、)ここに「纏うNoism」の第9回、糸川祐希さんの回をお届けします。どうぞごゆるりとお楽しみください。

「スタイルとは、言葉を使わずに自分が何者かを伝える方法」(レイチェル・ゾー)

それでは「纏うNoism」、糸川さんのご登場です。

纏う1: 稽古着の糸川さん

ザ・シンプル!
「何も足さない、何も引かない」って感じですね♪

 *全く奇を衒ったところのないスタイルと表情ですね、糸川さん。リラックスした立ち姿で。ええっと、この日の稽古着について教えてください。

 糸川さん「最近、トップスは肩から腕のラインが見えるのでユニクロのタンクトップをよく着ています。パンツもユニクロの物で、ストレッチが効いていてお気に入りです。黒が好きなので身の回りの物全般、黒を選びがちです。また靴下もユニクロで、踊りやすくて気に入っているのでまとめ買いしています」

 *おおっと、糸川さんはユニクロのヘヴィーユーザーなのですね。しかも、おっしゃる通りの全身黒ずくめ。海外の映画にでも登場しそうな「NINJA」の風情もあります。ニンニン、と。

 *ではまず、タンクトップについて伺います。「肩から腕のラインが見える」という着用の理由を話されましたが、それは「誰に」見えるということなのでしょうか。

 糸川さん「自分がクラスやリハで筋肉の使い方などを視認出来るように着ています。また、最近筋トレを始めたので日々の変化が見えるとモチベーションに繋がります」

 *なるほど。そうですよね。メンバー内で筋肉美を競い合っている訳ではありませんものね。変な訊き方になってしまいましたが、日々自分の身体に向き合う舞踊家らしいお答えに納得です。

 *次いで、もう靴下についても触れて貰っちゃってますが、敢えて突っ込みますね。ユニクロの靴下のどんな点が踊りやすいと感じられるのでしょうか。

 糸川さん「踊る時は薄めの靴下が踊りやすいと感じるので、程よく薄いユニクロの靴下を愛用しています」

 *そうですか。坪田さん、樋浦さんに続いてのユニクロ・ソックス派。わかりました。

纏う2: 糸川さん思い出の舞台衣裳

 *これまでの舞踊人生で大事にしている衣裳と舞台の思い出について教えてください。

おっ、これってきっとチャイコフスキーの「アレ」ですよね。

 糸川さん「Noismに入団する前、最後の発表会で踊った『白鳥の湖』の王子の衣裳です。
この発表会に出る時にはもう入団が決まっていたので、バレエ衣裳を着るのはもう最後かなと感慨深く思ったのを覚えています」

 *やはり、そうですよね。アレですよね、うん。糸川さん、後方にお立ちですけれど、「稽古着」画像とは全く趣の異なる、凛々しい、リアル「王子」立ちかと。スラッと高身長で。でも、そうしますと、お直しなんかも必要だったのではありませんか、「王子」の衣裳。

 糸川さん「確かウエストが緩くて、詰めてもらった記憶があります」

 *そうでしょうとも、そうでしょうとも。スラッで、シュッですものね。

 *ええっと、これは直接、衣裳とは関係ない質問になるのですが、この発表会のとき既に、周囲にNoismに入団されることを話されていたのでしょうか。それともこの後に話されたのでしょうか。

 糸川さん「本番の時には既に周りに報告していたので、『最後の王子だね』と先生にも言われてました」

 *他にはどんなリアクションがあったりしましたか。

 糸川さん「驚いて、みんな『おめでとう』と言ってくれました」

 *「王子」を送り出すのですから淋しさもあったでしょうが、それ以上にモチベーションにはなったでしょうね、確実に。

纏う3: 糸川さんにとって印象深いNoismの衣裳

 *Noismの公演で最も印象に残っている衣裳とその舞台の思い出を教えてください。

 糸川さん「『Der Wanderer ―さすらい人』の衣裳です。
最初、衣裳を見たときはピンクのシャツと紫のパンツという派手さに苦笑いしてしまいましたが、長い公演期間を経てだんだん愛着が湧いてきて、とても思い出に残っています。
穣さんが自分にソロを振り付けてくださったことや、全14回という公演回数の多さなど初めての経験尽くしで、この舞台に立った経験は深く自分の中に刻み込まれています」

 *ですよね。「ピンクのシャツと紫のパンツ」、見ていてもインパクト大でした。で、その衣裳で踊られた際の金森さんによる振付には若さが溢れていました。しかし、『セレナーデ』からの後半では、衣裳がお好みの「黒」(と白)に変わり、振付も大人っぽいものになりました。そのあたりの変化についてはどのように感じましたか。

 糸川さん「衣裳が変化することで気持ち的にその役柄に入り込みやすくなると感じました。ただ一つの作品の中で様々な役柄を演じ分けることはとても難しく、自分の中に課題として残りました」

 *なるほど、なるほど。そうですよね、うん。あの作品での金森さんの振付は、一人格としての連続性を保ちながらも、同時に、ピンクと紫の『ヤング・アンド・イノセント』から、なんなら『魔王』にでもなってしまうような変化というか、大跳躍みたいなものが仕掛けられていましたものね。でも、どちらも素敵でした。あと、糸川さん、きつくて苦しい踊りになればなるほど、表情に「笑み」みたいなものが浮かぶことにも気付きましたよ。そこも「M」っぽくてツボでした。(笑)

 *Noism Web Siteへのリンクを貼ります。
2023年『Der Wanderer - さすらい人』画像で、「衝撃」のピンクと紫ほかをご覧ください。見ているだけで、シューベルトの歌曲が甦ってきますから。

纏う4: 普段着の糸川さん

こうして見ると「がたい」の良さが際立ちますね♪

 *この日のポイントと普段着のこだわりを教えてください。

 糸川さん「夏は全体的にゆったりしたものを着ることが多いです。
最近購入したリカバリーサンダルが歩きやすくてとても気に入っています」

 *ゆったり何気なさがいい感じですが、まずはそのリカバリーサンダルについてお訊きします。その「疲労回復効果」などは如何ですか。「個人の感想です」レベルで構いませんので、教えてください。

 糸川さん「疲労回復効果はよく分かりませんが、歩く感触がフワフワしててとても気持ちいいです」

 *気持ちいいいんだ、フワフワ。な~るほど。足の心地よさ、大事ですよね。酷使しますものね。

 *次いで、今度はTシャツについて伺います。左胸のワンポイントのデザインが何とも「いい味」を出しています。何の図柄なのでしょうか。また、同じ図柄がバックプリントされていたりするのですか。

 糸川さん「フランク・ロイド・ライトというアメリカの建築家の名前が書いてあります。バックプリントはこんな感じになっています」

このバックプリントは…!!

 *あ、ご親切にどうも有難うございます。これって確かフランク・ロイド・ライトによるステンドグラスのデザインですよね。よくは知らないのですけれど。う~ん、目を惹くのには訳がありますね、うん。ところで、彼が語った有名な言葉にはこんなのもあります。「あなたが本当にそうだと信じることは常に起こります。そして信念がそれを起こさせるのです」舞踊に献身されている糸川さんにピッタリかと。

 *脱線しましたね。戻します。そのTシャツと黒のキャップはどちらかのブランドの品なのでしょうか。そのあたりお訊きします。

 糸川さん「Tシャツは beauty&youth の物で、キャップはポロラルフローレンです。どちらもとても気に入ってます」

 *メモメモメモメモ。皆さん、ここはメモですよ、メモ。もしくはすぐに検索。はい。
糸川さん、どうも有難うございました。

糸川さんからもサポーターズの皆さまにメッセージを頂いています。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「いつもあたたかい応援をしてくださり本当にありがとうございます。
皆様により良い舞台をお見せできるよう、舞踊家として日々精進していきます。
これからもよろしくお願いいたします」

こちらこそ、よろしくお願いいたします。で、ええっと、これは個人的な事柄になるのですが、『領域』新潟公演の楽日、終演後のりゅーとぴあ1F出口付近で偶然、糸川さんに遭遇したときのことを思い出します。外で待っておられたお母様をわざわざお呼びくださり、ご紹介くださった礼儀正しい好青年の「糸くん」。この度もそうした気遣いが溢れていました。誰からも愛されずにはいない人柄、とても魅力的です。重ねて諸々有難うございました。

ということで、「纏うNoism」第9回、糸川祐希さんの回はここまでとなります。

これまで、当ブログでご紹介した糸川さんの次の記事も併せてご覧ください。

 「私がダンスを始めた頃」#22(糸川祐希さん)

糸川さんにも、前回の杉野さん同様、この先、「ランチのNoism」(現在休載中)にもご登場頂きたいと思っております。その際はどうぞ宜しくお願いします。

今回の「纏うNoism」糸川さんの回、如何でしたでしょう。では、また次回をお楽しみに♪

(shin)

 

「纏うNoism」#08:杉野可林さん

メール取材日:2023/06/19(Mon.) & 06/21(Wed.)

翌週末にダブルビルのNoism0 / Noism1「領域」公演が迫り、準備に余念がない頃かと思われますが、その最中、杉野可林さんとのやりとりをさせて頂き、ここに「纏うNoism」の第8回をお送りする運びとなりました。ホント有難いことです。先の『Der Wanderer -さすらい人』での胸を打つ感動的な踊りの記憶も新しい杉野さん。今回は様々に「纏う」杉野さんを拝見して参りましょう。

「ファッションで最も難しいのは、そのロゴで知られることではなく、そのシルエットで知られることだ」(ジャンバティスタ・ヴァリ)

それでは「纏うNoism」杉野さんの回、始まりです。

纏う1: 稽古着の杉野さん

おおっとぉ、まさかの横倒し!
手は90°、足は30°、頭は40°くらいでしょうか、コレ。

 *このスタイルも今までにないもので、まずは登場の仕方にも気を遣っていただき、有難うございます。では、この日の稽古着について教えてください。

 杉野さん「このTシャツはユニクロで購入したもので、数年前から気に入って着続けています。胸元にアポロチョコのイラストが描いてあるのと、生地が薄くすっきりとしているところが好きです」

 *おお、ユニクロのコラボTシャツ!侮れませんよね。で、杉野さんのチョイスは可愛いピンクに可愛いアポロが3つ♪で、アポロ、明治(製菓)が1969年から製造販売しているロングセラーの名作チョコレート菓子ですよね、言わずと知れた。
 「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」(アームストロング船長)で有名な米国による人類初の月面着陸。そのアポロ11号の司令船を模したフォルムで、着陸のすぐ後に発売されたお菓子、アポロ。
 この頃のお菓子のネーミングって社会事象を取り込んだもの多いみたいですよね。1965年発売開始の源氏パイ(三立製菓)がNHKの大河ドラマ『源義経』にあやかったものだったりとか。
 おっと、のっけから話が逸れまくりでスミマセン。戻します。ユニクロのコラボTシャツにはマンガの有名キャラクターなども取り上げられたりしていますが、他には何かお持ちですか。

 杉野さん「あとはユニクロのTシャツは一枚も持っていません。(笑) 他のTシャツはNoismTシャツやご当地Tシャツなどを着ています」

 *なるほど。NoismのTシャツも種類豊富ですしね。私も毎日、色んな過去ものをとっかえひっかえ着ています。あと、ピンク、お似合いですけれど、杉野さんのお好きな色なのですか。

 杉野さん「ピンクは一番好きな色です! 昔から好きで、今もストレッチポールやタオル、イヤホンなどがピンク色です」

 *あの画像見てわかります、わかりますとも。好きな色って、気分を上げてくれますからね。そんな様子が伝わってくる画像ですよね。私もピンクとか赤とか好きですけど、それとは無関係に、いい画像だなと。

 *ついで、稽古着に関して「お約束」の質問です。お好みの靴下などありますか。お気に入りポイントも教えてください。

 杉野さん「リハ用の靴下は全部無印良品のものを使用しています。適度に薄くて足先が綺麗に見えるかなと思って履いてます。色は様々で、ピンクや緑なども履いています」

 *杉野さんはこれまで被りのない無印良品派。靴下ひとつとっても好みは色々なんですね。人それぞれ。無印良品の靴下、今度試してみなきゃって思ってます。世界が注目する「ブランド」ですしね、「MUJI」。

纏う2: 杉野さん思い出の舞台衣裳

 *これまでの舞踊人生で大事にしている衣裳と舞台の思い出を教えてください。

 杉野さん「2021年に開催された『Dance Dance Dance @YOKOHAMA』でNoismと小林十市さんの共演の時に着た衣裳です。まさか同じ空間でリハーサルをするだなんて夢にも思っていませんでした。写真は衣裳合わせのオフショットとして十市さんに撮影していただきました!」

 Noism Company Niigata × 小林十市『A JOURNEY ~記憶の中の記憶へ』ですね。素敵なワンピースですよね。この衣裳自体の思い出やお気に入りポイントなども教えてください。

 杉野さん「お気に入りポイントは裾のフリルとリボンの可愛さです。あとスカートがしっかりとしていて、回ったりするとふわっと広がって少しお姫様みたいな気分になれます!」(笑)

 *上の2枚はどちらも十市さん撮影なのですか。宝物の写真ですね。
それと、「どうして訊かないんだ?」と怒られる前にお訊きしますが、ご一緒にリハーサルをされた時の十市さんはどんな風だったか教えてください。

 杉野さん「目線の向け方や動き方などふとした瞬間もとてもオーラがあり、思わず見とれてしまっていました。(笑) 休憩中では気さくに話しかけてくださったのでとても嬉しかったです」

 *でしょうとも、でしょうとも。気が付くと一ファンに戻っちゃってる瞬間があったりしたのでしょうね。凄く貴重な体験をされましたね。「憧れていると超えられない」(大谷翔平)なんて言える人はごくごく僅かで…。(笑)うん、やっぱり普通に「羨ましい体験」の範疇ですね、それ。うん。そうです。そうそう。

纏う3: 杉野さんにとって印象深いNoismの衣裳

 *Noismの公演で最も印象に残っている衣裳とその舞台の思い出を教えてください。

 杉野さん「『春の祭典』の衣裳です。Noismに入って初めての穣さんとのクリエイションだったことと、楽譜を片手に振りを創っていくというのが驚きでした。本公演前にはリノリウムに皆で色を付けていったのも思い出に残っています」

 *楽譜を片手のクリエイションとは驚きですね。楽譜は皆さん読めるのでしょうか。あと、そもそも、これまでに他にも楽譜を片手のクリエイションというのはあったりしましたか。

 杉野さん「楽譜を読むのも高校生以来で、クリエイション中に楽譜を使用するのは人生で初めてのことでした。
 読んでいて分からない部分があった時は音楽をやっていたりおちゃん(=三好綾音さん)に、皆聞いたりしていました」

 *Noism Web Siteへのリンクを貼ります。
 2021年の『春の祭典』の画像をどうぞ。

そうそう、あのリノリウム。前年のプレビュー公演のときには「白」だったものが生命力の爆発を思わせる着色がされていたのでした。その色塗り、杉野さんは主にどんな場所にどんな色を塗ったのでしょうか。

 杉野さん「どこに色を塗ったかはあまり覚えていません。(笑) 一発勝負だったので皆で相談しながら思い切って色を入れてました」

 *ですよね。愚問でした。相談しながらも、勢いのままに、って感じだったのでしょうね。うん、うん。

纏う4: 普段着の杉野さん

 *この日のポイントと普段着のこだわりを教えてください。

 杉野さん「この花柄のシャツは叔母が昔着ていたのをおさがりでもらいました。
冬はシンプルなものが多いですが、夏は柄物をよく着ています。特に花柄が好みです」

 *上品な花柄のシャツですね。おさがりとは!素材はシルクですか。それとも…。

 杉野さん「シルクです!」

 *そうですか。やはり。着心地もよいのでしょうね。しっかり着こなしておられますね。素敵な帽子も含めて、全体が「絵」になっていますね。キャスケット帽でしょうか。帽子はよくかぶられるのですか。帽子についても教えてください。

 杉野さん「ロングヘアーだった時はあまりかぶっていなかったのですが、髪を短く切ってから帽子をかぶるのもアリかもしれないと思い始めました。今持っているのはキャップとキャスケットです」

 *ホントよく似合ってますね。他の帽子をかぶっているところも見たいです。

 *あと、「冬はシンプル」とのことですが、冬のお洋服の色目は黒中心だったりするのですか。

 杉野さん「色はそんなに気にしてはいないですが、冬だと柄物は少なくて一色のみのモノが多いです」

 *なるほどです。で、大阪生まれの杉野さんにとって新潟の冬はどんな感じでしょうか。

 杉野さん「私の地元はほとんど雪が降らなくて、積もっても1~2センチほどだったので、オーディションで初めて訪れた時に駐車場に集められた雪の山を見て衝撃を受けました」

 *ですよね、もろ衝撃だったことでしょう。でも、今はその「雪国」の一市民ということですからね。人間は順応する生き物なのですね。もうそんな雪もすっかり楽しめるようになっているものと思います。
杉野さん、どうも有難うございました。

杉野さんからもサポーターズの皆さまにメッセージを頂いています。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「日頃からの応援、誠にありがとうございます。皆様からの声援が本当に励みになっております。
より良い舞台をお届けできるよう日々精進してまいりますので、これからもどうぞよろしくお願いします」

こちらこそ、「領域」公演を控えた忙しい時期にどうも有難うございました。『Floating Field』での躍動、楽しみにしております。といったところで、「纏うNoism」第8回、杉野可林さんの回はここまでとなります。

これまで、当ブログでご紹介した杉野さんの次の記事も併せてご覧ください。

 「私がダンスを始めた頃」#21(杉野可林さん)

杉野さんには、今後、いずれかのタイミングで、現在、休載中の「ランチのNoism」にもご登場頂きたいと思っておりますので、その際はどうぞ宜しくお願いします。

ということで、今回の「纏うNoism」杉野さんの回、いかがでしたでしょうか。では、また次回をお楽しみに♪

(shin)

金森穣の著書『闘う舞踊団』、『Der Wanderer—さすらい人』東京公演( Noism0 / Noism1 )

吉田 香(編集者・ライター)

金森穣が2023年2月1日に著書『闘う舞踊団』を上梓した。2004年4月に日本初の公立劇場専属の舞踊団としてNoismが発足してから現在までの“闘い”を赤裸々に語っている。それは、金森個人やNoism、あるいは新潟市に限った苦労話ではなく、日本全体で考えなくてはならない劇場文化についての問題である。海外では、劇場が舞踊団を丸ごと抱え、スタッフの賃金、社会保障、環境等を提供する「劇場専属の舞踊団」は一般的だが、Noism発足から19年経った現在でも日本にはNoism以外にない。貴重な経験を書籍としてシェアしてくれた金森の勇気に感謝したい。

新潟市の劇場「りゅーとぴあ」を拠点とし、市のサポートを受けて活動できるのは非常に恵まれた環境だが、設立当初は更衣室さえなく、りゅーとぴあ側にNoismの担当者が一人もいないなど、ゼロからの立ち上げだった。その後、3年ごとの更新を繰り返し、2018年にはNoismの存続の是非が新潟市長選挙の争点にまでなった。存続が決まってほっとしたのも束の間、コロナ禍に突入である。そんな中、2021年10月に新潟市が新しいレジデンシャル制度を発表した。これにより芸術監督の任期が1期3年から5年に延長、最長で2期10年となった。そして、井関佐和子がNoism0とNoism1を率いる国際活動部門の芸術監督に、山田勇気が研修生カンパニーであるNoism2を率い、若手舞踊家の育成や市民へのアウトリーチ活動を行う地域活動部門の芸術監督に就任。金森は、全体を統括する芸術総監督となった。

この新しいレジデンシャル制度をどう捉えればよいのか、正直言ってよく分からない。これまでの3年という細切れの更新では新しいことに取り組み難かっただろう。その意味では、芸術監督の任期が1期5年になったのは喜ばしいが、最長10年という期限はどうなのか。金森はともすれば独裁的と捉えられてしまうが、その圧倒的な創作の才能と強力なリーダーシップでNoismを率い、作品は国内外で高い評価を受け、2021年には紫綬褒章を受章するまでになった。10年後にNoismはどうなるのか。もし別の団体がりゅーとぴあの専属になったとして10年という期限はどうなのか、疑問は尽きない。しかし、新潟市と(りゅーとぴあを運営・管理する)新潟市芸術文化振興財団が、これまで金森に任せきりで、場当たり的に対応してきたことを振り返って、制度に落とし込もうとする姿勢は間違いなく進歩だろう(本来は設立当初に決めておくべきことだったが)。筆者は、金森がもっと創作活動に集中できる環境にならないものか、そうした環境で創った作品を観たいと常々思って来た。金森自身や井関は、著書やインタビューなどで“Noism=金森穣”からの脱却を抱負として語っている。金森の美意識やメソッドが透徹した世界観を舞台に現出させるには、常に緊張感が必要だろうが、井関と山田にも監督という肩書が付いたことであるし、金森一人の肩にのしかかっていた重荷を少しでもおろして、アーティスト金森穣の新たなステージに進むことを期待している。

さて、Noism新体制での初の公演が『Der Wanderer—さすらい人』だった。この節目で金森が選んだのは、フランツ・シューベルトの21の歌曲で、メンバーは、井関、山田、そして二人よりもずっと若い9人の舞踊家。愛と死をテーマに全員にソロパートを作るというものだ。金森がシューベルトの全ての歌曲を聴いて、メンバーそれぞれに合った曲を選出した。ソロについて金森は作品のDirector’s noteに次のように書いている。

Noismの強みは何をおいても集団性である。朝から晩まで集団活動をする事ができる場所を有し、独自の訓練法を有し、その活動に100%集中することを可能にする生活保障を得ている集団は、この国には他にないからである。しかし強みは時として弱みとなる。集団としての強度は帰属意識や連帯意識を生むけれど、代わりに個人の自立、責任や覚悟を抱く機会を奪いかねない。集団の力と個人の力、そのバランス。その取り方が集団の独自性を規定するし、その成熟こそが集団の成熟を意味する。ならばその方法の一環として、メンバー一人ひとりにソロを作ろう。そう思った。(中略)一人ひとりがソロで立てるだけの力量を有した個人の集合としての集団。それが新生Noismのめざす集団性であるということである。

舞台前方と後方に赤い薔薇が1本ずつ横一列に床に刺さっている。カミテ後方にドアがあり、白いドレスの井関が現れる。井関は『彼女の肖像』『影法師(ドッペルゲンガー)』をメインで踊り、この世の者ではない存在のようだ。トランクを持った旅人のような山田がシモテ前方に座り、皆を見守る。山田は『鴉』『さすらい人の夜の歌』を踊り、作品のタイトル“さすらい人”を体現している存在だ。前半は愛、後半は死にテーマが変わる。愛と生命の象徴である薔薇の列を境界として、ダンサー達がその前方、あるいは後方に倒れて行くことで死を表している。

『糸を紡ぐグレートヒェン』や『トゥーレの王』など、女性二人のデュオは、業や情念を感じさせる力強いものだった。『魔王』は、若い男性三人が、恐怖におののき、お互いにしがみつくようにリフトを繰り返す。これぞ金森という緊張感と繊細さが共存する振付で、公演の白眉だった。

観客に背中を向けて立ち、片足を頭の上まで高く上げる、それだけで多くを語る圧倒的な存在感の井関、新たな役職そのままに若手を見守るような包容力を擁し、作品全体を貫く「さすらい人」の寂寥感を漂わせる山田。このNoism0の二人とその他のメンバーのギャップは大きい。特に男性陣は、前半の、時にロマンティックに、時にユーモアを交えて軽い調子で愛を語る場面では幼さが目立った。

ソロに関しても若手は、金森の言う「一人ひとりがソロで立てる」ようになるには時間が掛かりそうだ。しかし、このタイミングでこのチャレンジを課すのは絶妙であるし、日々集団で活動する彼らにとって、非常に良い経験になったに違いない。そして、金森が自身の為にソロを作ってくれたいう事実を噛みしめていたことだろう。

通常、Noism1やNoism2との創作の場合、振付を生み出すことよりも、それを実践するための身体の使い方を教える方に、膨大な時間と熱量が必要になる。その繰り返しが、設立からいままでのクリエーションだった。Noismにおける私の創作活動は常に、芸術活動であると同時に教育活動であったのだ。(中略)だから育てた舞踊家が去っていくとき感じるのは、「傷ついた」というような感傷よりも、高いクリエイティビティの実現がまた遠のいてしまうことに対する、徒労感だ。(『闘う舞踊団』)

地方の劇場専属舞踊団ならではの苦悩だろう。井関が、山田が、そして金森が、共に対等に踊り、共にカンパニーを運営して行くことができる舞踊家が育つことを心待ちにしている。

(2023/02/24 19:00 世田谷パブリックシアター)

PROFILE | よしだ かおる
3歳から16歳までクラシックバレエを学ぶ。ニューヨーク市立大学にて文化人類学を専攻するかたわら、バイリンガルのフリーペーパー『New York Dance Fax』(後の『The Arts Cure』)で舞踊批評や特集記事の執筆、翻訳を手がける。修士課程終了後、2004年に帰国。以降、雑誌や新聞の記事や広告のライティングと編集業務を行っている。『The Dance Times(ダンス・タイムズ)』運営メンバー。

「纏うNoism」#05:庄島すみれさん

メール取材日:2023/3/22(Wed.)&3/28(Tue.)

各方面、年度末・年度はじめのバタバタ時期かと思いますが、ご好評を頂いておりますこの連載をお届けできることを嬉しく思います。前回の庄島さくらさんからバトンを引き継いでご登場頂くのは双子の庄島シスターズのお姉さん・庄島すみれさんです。おふたりの「纒う」事情が今回で一層明瞭になるものと思います。「忙中閑あり」。いっとき、ゆるりとお楽しみください。

「ファッションは買うことができますが、スタイルはあなたが有するものです。そのスタイルの鍵となるのは、自分が何者なのかを学ぶことであり、それには何年もかかります。そして、そのスタイルを構築するための手引書などありません。そこには自己表現力と、何より態度がすべてとなるのです」(アイリス・アプフェル)

それではさっそく拝見いたしましょう。

纏う1:稽古着のすみれさん

稽古後のストレッチ画像ですかね
…リラックスした雰囲気です

 *落ち着いた色合いでまとめておられますね。この日の稽古着についてご説明願います。

 すみれさん「ユニクロのフリースが暖かいので気に入ってよく着ています!フリースの下には鼓童さんと共演した『鬼』のTシャツを着ています」

 *おおおっ!Noism×鼓童の新潟ツートップのダブルネームTシャツ!私も数枚求めましたよ。いいですよね、アレ。そしてユニクロのフリースですか。侮れませんよね、ユニクロ。でも、それも含めて色柄抑えめの稽古着がお好みなのでしょうか。そのあたり、どうですか。

 すみれさん「稽古着は黒や紺などが多いです。特に気付くと全身紺だったりします。レオタードは色んな色を持ってるので明るい色も着ています!なんとなくその日の気分で選んでいます」

 *そうなんですね。では、この連載のこのところの流れで靴下についてお訊きします。(笑)稽古の際に履く靴下はさくらさん同様、やはり adidas が多かったりするのでしょうか。

 すみれさん「私もadidasが多いです。まとめ買いして2人で分けて使っています!」

 *なるほど、なるほど。まったく理に適っているかと。

纏う2: すみれさん思い出の舞台衣裳

 *これまでの舞踊人生で大事にしている衣裳と舞台の思い出を教えてください。

華やかで煌びやかな「ふたり」
…同じ衣裳ですね…(汗)

 すみれさん「思い出の衣裳は沢山あって、選ぶのが難しいのですが、スロバキアのバレエ団で踊っていた『ドン・キホーテ』の衣裳は大事にしている思い出の衣裳の一つです!」 

 *おおっとぉ、きました。煌びやかで艶やかな衣裳!しかも、またまたの『ドン・キホーテ』!これで『纏うNoism』連載「3連チャン」ですね。やっぱり刺さる作品であり、衣裳なんですね。踊る側にとっても。
 *写真の『ドン・キホーテ』についていくつか伺いますが、まずは踊られた役名を教えてください。

 すみれさん「キトリの友人役です」

 *バジル(床屋)の恋人で宿屋の娘キトリの友人ですね。ところで、写真に写っているのはすみれさんとさくらさんですよね。どちらがすみれさんですか。そして、ふたりで一緒に同じ衣裳で出ていたのでしょうか。

 すみれさん「キトリの友人役は2人いて、さくらと2人で踊っていました!左下がさくらで右上がすみれです!」

 *息もぴったりの友人ふたりだったことでしょうね。そのときの舞台での思い出も教えてください。

 すみれさん「この『ドン・キホーテ』の舞台は私にとって思い出深い作品です!キトリの友人役を踊りたいと思っていたので踊るのが決まった時は嬉しかったです!ロシア人振付家の振り付けで、凄くテクニカルな事が沢山あって大変だったのですが、この『ドン・キホーテ』を踊った事で成長出来た気がします。初演が終わった時のあの達成感は忘れられません!」

 *「踊りたい」と思っていた気持ちがビンビン伝わってくる、よい表情を捉えた写真ですね。うん。そしておふたりともパッと咲いた2輪の花のようでとても美しいです。うん、うん。

纏う3: すみれさんにとって印象深いNoismの衣裳

 *Noismの公演で最も印象に残っている衣裳とその舞台の思い出を教えてください。

 すみれさん「それぞれの衣裳に思い入れがありますが、最近だと『Der Wanderer-さすらい人』の衣裳がとても印象に残っています。女性陣は皆違う色で、衣裳の花柄も、私と妹のさくらは同じ柄でしたが、他のメンバーは違う柄で、作品もそれぞれのソロがあって、個性が出ていたと思います!」

 *そうでしたね。それぞれメンバーの個性の違いが前面に出ていましたし、更に前半と後半とで、全く異なる心情を可視化することになるといった構成で、とても見応えある作品でした。何度も足を運んで観ましたが、観る度に唸ったものです。

 *Noism Web Site へのリンクを貼ります。
 2023年の『Der Wanderer-さすらい人』画像です。ご覧ください。

 *また観たいですね、『Der Wanderer-さすらい人』。すぐにでも♪

纏う4: 普段着のすみれさん

「スタイル」があります、すみれさんの「スタイル」♪

 *この日のポイントと普段着のこだわりを教えてください。

 すみれさん「まだ肌寒いので暖かい服を着ています!コートと中に着ているジャケットは母からのおさがりです。特に中に着ている赤いジャケットは母が私の歳より若い時からスキーをする時に着ていて、オーストリアのGEIGERというブランドのもので凄く暖かくて気に入っています!」

 *GEIGER(ガイガー社) ですか。ワタクシ、寡聞にして知らず、ですから調べてみました。すると、1906年創業の老舗で、創業以来100年以上に渡り、チロリアンの基本を取り入れながらも 現代のファッションシーンにマッチする服作りを行っているブランド、なのだと。そんなチロリアンジャケット、高品質で古びないデザインの逸品なんですね。
 *そして、そして、またまた「お母様からのおさがり」ということではありませんか。そのコートとジャケットですが、さくらさんとも共有されているのでしょうか。それとも、すみれさんが占有している2品なのでしょうか。

 すみれさん「お母さんからのおさがりの服は、さくらと共有して着ています!他の服も私が買った服をさくらが着たりもしますし、逆にさくらが買った服を私が着たりします」

 *うむ、うむ。そうすると、自分が着たときの様子をさくらさんの姿で目にするような感じも(また、その逆も)あるのかと。まあ、双子になったことがないので、想像してみるだけですけれど。(笑)そして蛇足ですが、普段、着ている物からおふたりを見分けることは困難だということもわかりました。(汗)
 *ではでは、着たいときが重なったりした際は、どうされているのでしょうか。早い者勝ちとか、「着る!」と言った者勝ちとかなのでしょうか。そのあたりを教えてください。

 すみれさん「もし着たいときが重なってしまったら、他の服を着ようかなとなります。お互い絶対この服!というこだわりは無いので、大体譲り合いになります」

 *なるほど。そうなのですね。喧嘩や争いごとにはならないと。何を着ても素敵ですものね、おふたりとも。ホント、おふたりの仲の良さやお母様との関係性などが伝わってきました。どうも有難うございました。

すみれさんからもサポーターズの皆さまにメッセージを頂きました。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「いつもNoismを応援してくださり、ありがとうございます!サポーターズの皆様の応援が励みになっております。また劇場でお会いできるのを楽しみにしています。これからもよろしくお願いします!」

…以上、「纏うNoism」第5回、前回のさくらさんに引き続き、庄島すみれさんの回をお届けしました。すみれさん、改めて有難うございました。

当ブログでご紹介してきたすみれさんの他の記事も併せてご覧ください。

 「私がダンスを始めた頃」⑰(庄島すみれさん)
 「ランチのNoism」#16(庄島すみれさん)

という訳で、今回の「纏うNoism」はここまでです。お楽しみいただけましたら幸いです。次回もまた乞うご期待ということで♪
ではでは。

(shin)

胸熱の感動に涙腺は崩壊!『Der Wanderer-さすらい人』大千穐楽@世田谷パブリックシアター(サポーター 公演感想)

2023年2月26日(日)午後、前日に続いて三軒茶屋の世田谷パブリックシアターまで『Der Wanderer-さすらい人』の大千穐楽を観に行きました。

控え目に言っても「傑作」や「名作」と呼ばれるべき公演でしたから、この公演中心の2日間を過ごしたような次第です。何しろ70分間のこのクオリティ、いつでも観られると思ったら大間違いなレベルなので、至極当然ななりゆきに過ぎなかった訳ですが。

その舞台。この世田谷パブリックシアターで迎えた大千穐楽の舞台。シューベルトの歌曲、金森さんの演出振付、舞踊家の「顕身」、それらが渾然一体となった稀有な時間に浸り、もう胸熱の感動に涙腺は崩壊しまくりで、マスクの下はぐしょぐしょ状態に。そこだけは若干不快ながらも、類い稀なる爽やかな優しさを全身で受け止めて気持ちはいつになく昂揚するのみでした。

前半。他に関心が赴くことなく、求めて与えず、そればかりか徒に他を弄んだり、世界の中心に自分だけを見ようとするかのようにして、余りにも利己的に愛を求めようとする振る舞いの帰結として、孤独に直面します。その若さが横溢するさまは現メンバーの年格好とも重なるもので、幾分、戯画的な味付けもなされていて、微笑ましく映じたりするほどです。同時に、自らの思いを伝えんがために薔薇を手折ることも厭わない残酷な側面も同居させていますが、いかにもその点には無関心な様子から始まり、6曲目「ミューズの子」の中尾さんに至っては薔薇は投げ捨てられさえするほどです。

その残酷さですが、まず、7曲目「至福」の後半に至り、自己嫌悪とともに樋浦さんによって見出されると、続く8曲目「狩人」で愛憎入り乱れる荒々しさの頂点を経過したのちの杉野さんによってはっきりと自覚されることになります。

そうして導入されたある種の「転調」は、9曲目「月の夕暮れ」の三好さんへと引き継がれ、「シューベルト」山田勇気さんの傍ら、彼女は4本の薔薇を植えることになります。

10曲目「ナイチンゲールに寄せて」でひとり自らの愛情を大事に抱く井本さんを経て、山田さんが傍らの4本の薔薇を見詰めていると、山田さんの「分身」のような4人の「シューベルツ」が導き入れられます。11曲目「セレナーデ」は薔薇の赤と衣裳の黒のコントラストがこのうえなく美しいパートであり、4本と4人、それぞれの「生命」が咲き誇るかのようです。

後半。12曲目「彼女の肖像」を踊る井関さんが運び入れるのは何やら不穏な空気であり、13曲目「鴉」の山田さんを含めて、「死」の気配が兆し始めます。そこからはもう怒濤の展開で、その孤独の究極の形態が美しく踊られて、可視化或いは形象化されていきます。踊られるのはもう若さとは真逆に位置するものであり、まったく別物の空気感を醸し出してくる身体、その「顕身」振りには驚きを禁じ得ません。彼ら(の多く)は若かったのではないのか。

14曲目「糸を紡ぐグレートヒェン」の庄島さくらさん・すみれさんの鏡とドッペルゲンガーぶりにしろ、15曲目「魔王」の糸川さん・坪田さん・樋浦さんを巡る運命が行き着く先にしろ、はたまた、16曲目「死と乙女」の井本さん・糸川さんの切ない情緒であれ、17曲目「月に寄せて」の中尾さん・樋浦さんから18曲目「トゥーレの王」の三好さん・杉野さんに続く胸ふたがれるような満たされなさであれ、金森さんが繰り出す見せ場の連打であり、舞踊家がそれに全身で応えていきます。その際立つ悲劇的な美しさには恍惚となるほかありません。

それを締めるのがやはりNoism0のふたり。山田さんの19曲目「さすらい人の夜の歌」から井関さん(と山田さん)の20曲目「影法師」に至る風格は絶品です。息絶えんとする山田さん、そのとき、目を覆う井関さん。死は直視し難いものであることに間違いはありません。しかし…。

終曲「夜と夢」、11名の舞踊家がそれぞれ5本の薔薇を胸に舞台上に回帰してきます。それぞれ中空に視線をやり、何かに目を止めたのち、横一列をつくると、頭を垂れて、無言の「有難う」とでも言うかのように。そして揃って後退りしながら、1本ずつ1本ずつ、胸に抱いていた赤い赤い薔薇を舞台に立てていきます。それはそれぞれが生きてきた舞台としての11の人生を、最後の最後に肯定しようとする振る舞いであり、そのことに観る者も慰撫され、感極まるのだと断言したいと思います。

暗転を経て、再び照らされた舞台は無人となっていて、赤い薔薇で形作られた格子状の矩形のみが残されています。11人×5本で、都合55本の薔薇。その色彩は、死の象徴たる黒い矩形を遥かに凌駕するインパクトをもって私たちの目に飛び込んでくるでしょう。

暗転のところから始まった、客席からの鳴りやまぬ拍手は、一見、舞台上にそれを捧げる対象を欠いてしまっているように見えるかもしれませんが、それこそラストに金森さんが舞踊家たちの「顕身」を通して示したかったどこまでも人生を肯定しようとする姿勢が金森さんをして、そこに身を置いた全員に共有される「場」そのものに対して拍手が注がれることを選択させたものと見ても強ち間違いとは言えないのだろう。赤い薔薇が描く生命力を感じさせる矩形からはそんなふうに感じられてならないのです、私には。

圧倒的な余韻を残した『Der Wanderer-さすらい人』。絶対に再演して欲しい作品のリストに挙げられる「傑作」、「名作」であることに異を唱える者はいない筈です。皆さんはどうご覧になられましたか。コメント欄などにお寄せ頂けましたら幸いです。

そして、この出演を最後に退団される井本さんに対して、これまでたくさんの感動を頂いたお礼をここに書き記したいと思います。どうも有難うございました。今作においても本当に素敵でした。また踊る井本さんを観ることが出来ますことを願っています。

この日のブログ、最後を締め括る写真はかつてのNoismメンバーが多数集結した大千穐楽終演後に撮らせて貰った画像です。ちょっとピントが甘いのですが、慌てて撮ったためです。ご容赦ください。(汗)

(shin)

世田谷『Der Wanderer-さすらい人』、穿たれた開口が深淵となり、直截に生と隣り合う舞台(東京公演中日)

2023年2月25日(土)、前日のfullmoonさんによる『Der Wanderer-さすらい人』東京公演初日レポを読み、どこがどう変わっているのだろうかと尽きせぬ興味を抱いて、新潟から新幹線に乗り、世田谷パブリックシアターを目指しました。

三軒茶屋駅すぐの劇場には迷うことなく着き、チケットを切って貰って、趣のあるロビーに進むと、正面に新潟からの遠征組がいて、手を振ってくれていました。そこにはfullmoonさんの姿もあり、笑みを浮かべています。前日の舞台については口にしませんし、こちらも訊きません。しかし、その笑みは「楽しみにしていてね」と雄弁でした。

その後、更に新潟や東京の友人も着き、さして広さはないロビーが大勢の人で埋まってきます。その雰囲気は、入場整理番号順に並んだ新潟公演とは明らかに異なるものでした。客席への入場案内を待ちながら、公演についての話題は敢えて避けつつNoismサポーターズ仲間で四方山話をしていたところ、柱の背後から、「こんにちは」とひとりの若い女性が私たちに声をかけてきてくれました。女性はすぐ続けて「西澤です」と名乗ってくださいましたが、声に振り向いた私たちにはそれは不要でした。元Noism1の西澤真耶さんの笑顔!嬉しいサプライズです。少しお話しができましたし、私など、一緒に写真も撮って貰いましたから、嬉し過ぎました。

そうこうしていると、遂に入場案内があり、ロビーのみんなも階段を上がり、客席へと移動していきます。その踊り場には金森さんが(お父様と話しながら)立っていましたから、近づいて行って挨拶する人もいます。その後、入口付近に場所を移した金森さんに、今度は私たちも近付いて行き、揃って手を振ると、金森さんも笑顔で手を振り返してくれましたので、満たされた思いで各々客席に向かうことができました。

客席に足を踏み入れるとすぐ、舞台上に新潟公演のときとの違いをまずひとつ認めました。「ということは…」、それは導入部分の演出が異なるということを意味します。ここでも開演を告げるベルはなく、客電もそのままに世田谷『Der Wanderer-さすらい人』が滑り出します、いかにもゆっくりと。あの効果音が聞こえてくるのはそれからのことです。で、ややあって、漸く舞台上のもうひとつの違いをはっきり認識しました。黒い矩形。「やはりそうだったのか!」この日の私は2階席の最前列を選んでいましたから、舞台との距離から、しかと視認するには若干時間を要したような按配でした。

そこからは、少し見下ろす具合にして、舞台全体の「画」の推移を楽しみました。照明はよりエモーショナルに、豊かさを増して、一段と劇的になって、作品を推し進めていきます。

「メメント・モリ」(死を忘れるな)。穿たれた開口は象徴(シンボル)であることを超えて、より直截に生と隣り合う深淵として可視化され、迫り出してきています。愛をめぐる孤独。満たされぬ思い。それ故のさすらいと、紛れもなくその舞台であるところの人生。そして…。シューベルトのクリエイティヴィティと金森さんのそれとが拮抗することで立ち現れてくる70分間の深みに心は揺さぶられ続けるほかありません。

ラストシーン。その情感。「そのままお客さんを帰す訳にはいかない」(金森さん)とは語られているものの、それは、近いところでは『Near Far Here』のラストなどとも呼び交わし、金森さんのクリエイティヴィティの根幹にあるものが表出されているもので間違いありません。今回もまさに極上の余韻…。

終演。ロビーに『闘う舞踊団』の夕書房・高松さんの姿を見つけたので、fullmoonさんの傍らで一言だけご挨拶をさせて頂くと、「ああ、新潟の…」と思い出して頂けて、これも良かったなと思いながら、時間のこともあり、急ぎ、ホテルに向かいました。(fullmoonさん、すみませんでした。)

少し個人的な事柄も含む書き方になるのですが、ご容赦ください。つい先日、還暦を迎えて、「ここまで色々あったなぁ」とか思ったりする気持ちと今回の『Der Wanderer-さすらい人』とが交錯するようなところがあったりして、私の人生のこの時期に豊かな色合いを添えて貰えたことに、とても嬉しい気持ちに浸れています。そしてそんなふうな事って、様々大勢の人たちの身の上にも起こっているのだろうなと思うとそれもまた悪くないなとも。遠くにオレンジ色の東京タワー、美しい夜景を望むホテルのラウンジに家族3人。心地良く酔っていたのはジントニックなどアルコールの作用によるものだけではなかった筈です…。

そんな奇跡のような舞台『Der Wanderer-さすらい人』も遂に大千穐楽を迎えます。もう目にする機会はただ一度のみ。必見です。お見逃しなく!

(shin)

感動の世田谷パブリックシアター♪『Der Wanderer-さすらい人』東京公演 初日に行ってきました!

2023年2月24日(金)、新潟公演終了から3週間、東京公演初日の世田谷パブリックシアターに行ってきました!
これほど進境著しいとは驚きです!
まさしく感動の舞台✨

いろいろなところが変わっていました。
明日以降ご覧になる方はどうぞお楽しみに♪
素晴らしいですよ✨

会場では金森さん、Noismスタッフが出迎えしてくださり、また、東京や新潟の知人にもたくさん会えて嬉しかったです♪
明日も楽しみです!
東京公演、お見逃しなく!

(fullmoon)

身体から零れてくる「沈黙の言語」に心揺さぶられ通しの約70分、『Der Wanderer-さすらい人』新潟千穐楽♪

遂にこの日が来た/来てしまった…。
2023年2月4日(土)は『Der Wanderer-さすらい人』新潟全11回公演の千穐楽の日。公演の初日から連日、深化と進化を重ねてきた舞台、その一区切りとなるのがこの日です。観たい、是非にでも!そういう思いと同時に、まだ先送りしておきたい、そんな思いも同居する胸のうちはなかなかに複雑なものがありました。この日の開演前には見知ったサポーターズ仲間の面々とも多数お会いしたのですが、その誰からも例外なく似たような思いを感じたものです。それもまた、語らず秘しておこうとするにも拘わらず、零れ落ちてしまう観客の側の「沈黙の言語」だったのでしょう。

そんなふうな思いを胸に、この日はまた最前列に腰掛けて、開演を待ちました。楽日のざわつく場内も、あの効果音とともに静寂に入り込みます。構成の美は私たちが愛して止まない「金森」印ですから、何も構えることなしに、すっかり身を委ねて、誘われるまま、それだけでもう充分な訳です。贅沢なこと、この上ありません。

21曲のシューベルト、それを踊る11人の舞踊家。表情や目と目線、指先や足先、静止の「間」も含めた一挙手一投足…。もう瞬きするさえ惜しいような、濃密で美しい、渾身にして圧巻のパフォーマンスが展開されていきました。

新潟楽日のこの日、11人が示した70分弱の「顕身」。観る者としては耳に届く歌曲を背景にもうひとつ、舞台上、踊る身体から豊かに零れてくる「沈黙の言語」を前に、見詰める両の目さえ、あたかももうふたつの耳と化したかのようにして、それを「聞き逃すまい」と見詰めて、受け止めることで、心を強く大きく揺さぶられるといった類い稀なる時間に浸り切りました。

その至福。うまく語れる者などいよう筈もありませんから、終演後のホワイエでは、感動で頬を紅潮させたサポーターズ仲間が集まってさえ、誰も多くを語ろうとしなかったことなどごくごく当然のことであったに過ぎません。

そのホワイエ。金森さんの書籍販売の列に(またしても)並んで、これまでの○冊に加えてもう一冊求めたのは、観た者が受け取る大きな感動、それをまだ知らぬ職場の同僚(一緒に同じ仕事に携わってきていて、幸い本好きでもある)への「遣い物」にしようという思いから。そして、もうひとつ実行に移したのは2Fへ降りたところでの所謂「出待ち」。まず、庄島姉妹、そして井本さんと少しお話ができ、「ホントに素敵でした♪」と感動の大きさを直接伝えつつ、少しお話しもできたのは嬉しいことでした。

そんなふうに待つこと、約40分。見上げたエレベーターのなかにいよいよ黒と白のダウンを着たおふたりの姿を認めます。降りて来られたのは金森さんと井関さん。ご挨拶をしてから、この日求めた『闘う舞踊団』にもサインをいただくことができました。金森さんには「えっ、まだあるの?」と笑われながら、井関さんがしっかりと本を支えてくれるなか、「日付も入れようか。今日は何日?」といただいたサイン。そんなやりとりもあるので、「遣い物」には以前の○冊のなかの一冊をあてて、これは自分の分とします。金森さん、井関さん、お疲れのところ、どうも有難うございました。

約3週間後の世田谷パブリックシアターでの公演にむけて、金森さんたちは2週間後に東京に入るのだそうです。また異なる舞台での上演に際して、その「場」に応じた深化を極めんとすることはもはや必定の金森さんとNoism。世田谷での公演をご覧になられる予定の皆さま、期待してあともう少しお待ちください。「新生」Noism Company Niigataの第一章『Der Wanderer-さすらい人』は紛れもない名作ですゆえ。

(shin)

豊かな情感に身を委ね、清らな感動に至る『Der Wanderer-さすらい人』新潟公演9日目♪

2023年2月2日(木)、『Der Wanderer-さすらい人』新潟公演9日目。この日は平日ということもあり、すぽっとエアポケットに嵌まりでもしたかのように、残席を残したままで公演当日を迎えておりました。雪や寒気の予報もあったりで、私自身も見送るつもりでいたのでしたが、観たい気持ちが強くなってきて、随分迷った挙げ句、やはり「観られるのに観ないのはもったいない」と、「Noism>雪+凍結」の揺るぎない不等式気分になり、半日休みをとって、13時半頃に当日券を求めました。(入場整理番号は59、60。)

そこから19時の開演までまだ時間があるので、一旦帰宅して出直したのですが、この日がU25リピート鑑賞の日だったことから、市内の高校ダンス部の生徒たちも多数足を運び、無事この日も「満席が予定されています」のアナウンスがなされるに至りました。めでたしめでたし♪

この日は上手(かみて)側の最後列で、fullmoonさんの隣に腰掛けて、5回目の鑑賞に臨みました。鑑賞を重ねてきたことで、細かなところに目を配る余裕も生まれ、作品全体の情緒を楽しみました。

金森さんが、霊感(インスピレーション)を掻き立てられたシューベルトの21の歌曲を選んで、各舞踊家にソロを振り付けた訳ですが、そのそれぞれのパートが見ものであるだけでなく、その構成の妙が光る作品となっていることに驚きます。集められた素材(楽曲)はもともとのコンテクスト(文脈)を離れてバラバラなものである筈ですし、振付もそれぞれ歌詞を逐一なぞるものではありません。しかし、金森さんの創作は、各曲に聴き取ったシューベルトの「魂」を拠り所にして、歌詞と舞踊、その2者が寄り添い、拮抗し、そして止揚(アウフヘーベン)されて、馥郁たる「第3の表現」を立ち上げるに至っているのだと思われます。それはまさにシューベルト歌曲が有する可能性、その中心で行われた極めて創造的な営為と言えるものでしょう。

豊かな情感が各場面を越えて、引き継がれ、木霊し合い、増幅されていきます。その果てに訪れるラストのシークエンスに、なにゆえあれほど感動するのでしょうか。その問いへの私自身の考えはありますが、この後も公演は続きますし、まだここでは記さずにおきます。皆さんも個々に考えるところがある筈ですし、後日、感想など色々話し合ったりしたいものです。(コメントも寄せていただけたら幸いです。)

さて今回、ここでは、作品『Der Wanderer―さすらい人』に使用された歌曲とソロ(或いはメイン)で踊る舞踊家を記して、これからご覧になられる方の鑑賞に供したいと思います。

1.さすらい人: 全員
2.蝶々: 糸川祐希さん
3.野ばら: 庄島すみれさん
4.憩いのない恋: 坪田光さん
5.愛の歌: 庄島さくらさん
6.ミューズの子: 中尾洸太さん
7.至福: 樋浦瞳さん
8.狩人: 杉野可林さん(太田菜月さん)
9.月の夕暮れ: 三好綾音さん
10.ナイチンゲールに寄せて: 井本星那さん
11.セレナーデ: 中尾洸太さん・坪田光さん・樋浦瞳さん・糸川祐希さん
12.彼女の肖像: 井関佐和子さん
13.鴉: 山田勇気さん
14.糸を紡ぐグレートヒェン: 庄島さくらさん・庄島すみれさん
15.魔王: 坪田光さん・樋浦瞳さん・糸川祐希さん
16.死と乙女: 井本星那さん・糸川祐希さん
17.月に寄せて: 中尾洸太さん・樋浦瞳さん
18.トゥーレの王: 三好綾音さん・杉野可林さん(太田菜月さん)
19.さすらい人の夜の歌: 山田勇気さん
20.影法師: 井関佐和子さん
21.夜と夢: 全員
*9曲目と10曲目はパンフレット記載の曲順から変更になっています。

終演後の新潟市ですが、幸い降雪はなく、凍結もさして酷くなかったため、清らな感動のままに、ホッと胸を撫で下ろしながら家路につきました。

いよいよ、新潟公演も残すところ2公演(両日とも完売)のみ。その後、2月24日(金)から26日(日)は東京・世田谷パブリックシアターでの3公演が待っています。初見の方もリピートされる方もどうぞお楽しみに♪

【追記】コメント欄には、fullmoonさんによる翌2/3(金)新潟10日目公演及び同日終演後に開催されたアフタートーク(4回目)についての報告もあります。よろしければご覧ください。

(shin)