豊前に響いた「円環」の妙なる音(サポーター 公演感想)

12月22日(日)のJ:COM 北九州芸術劇場に於けるNoism「円環」公演の為、北九州市小倉北区へ足を運んだ。

先日10月20日に開催され、金森穣さん・井関佐和子さんにも観ていただいた「坂口安吾生誕祭118 玉川奈々福 新作浪曲『桜の森の満開の下』口演」でお世話になった玉川奈々福さんと曲師・広沢美舟さん出演の「小沢昭一十三回忌追善公演 日本の翻弄芸」が20日(金)に浅草・木馬亭であったこともあり、羽田空港から北九州空港迄往復する旅程を選んだ。

21日(土)夕刻、クリスマスイルミネーションイベントで凄まじく賑わう小倉の街を歩き、北九州芸術劇場を下見がてら訪問。屋外のデジタルサイネージや、商業施設と一体となった館内そこかしこに掲示された「円環」のディスプレイに、芸術劇場の皆様の気合が見て取れた。

22日(日)は門司港駅から関門トンネル人道を目指し、山口県下関市に立ち寄った後、小倉へ戻る。「北九州市立松本清張記念館」や小倉城の展示など、国内外から街に訪れる人を「楽しませよう」とする姿勢が徹底している印象。新潟市も見倣ってほしいなぁ。

Noismサポーターズ事務局・fullmoonさんや、Noism制作・上杉さん、深作さん、関東から来場されたサポーターズの方にご挨拶しつつ、最前列の客席で16時の開演を待った。

幕開けとなる金森穣さんとNoism1メンバーによる『過ぎゆく時の中で』から、北九州芸術劇場の音響の見事さに気付く。John Adams『The Chairman Dances』の音ひと粒ひと粒が輝いて聴こえるようで、時の流れを押し留めようとしつつ、やがて時間の不可逆性を豊かに肯定するかのような金森さんと、若きNoismメンバーの疾走する舞踊と音楽の一体感に、いつしか涙が溢れていた。客席全体も見巧者と思しき方が多く、ピシリとした静寂に充ちた場内の空気が徐々に熱を帯び、舞踊を観る歓喜に包まれてゆく様が、確かに感じられた(お隣の方の静かにノッていく様子が実に心地よかった)。

近藤良平演出振付によるNoism1『にんげんしかく』では、樋浦瞳さんについて「北九州公演」ならではの改変があり、客席にも温かな笑いが起こった。緻密に舞台を構成しつつ、ダンサーの情感が溢れだす金森穣作品と対称的な近藤作品。一見自由奔放に見えて、細部や感情まで構成が徹底していることに、改めて気付く。

そしてNoism0井関佐和子さん・山田勇気さん、久々にNoismに帰ってきてくれた宮河愛一郎さん・中川賢さんという円熟の舞踊家による傑作『Suspended Garden - 宙吊りの庭』は、その研ぎ澄まされた美を、更に深化させていた。既にして古典のようなトン・タッ・アンさんの楽曲も、北九州芸術劇場の音響で改めて聴くと、重低音と舞踊家の身体のシンクロなど新たな発見に充ちている(音源の発売を強く希望します)。舞台で展開される映像にも、金森さんによる微細な変更が加わり、「求めようとして得られなかったもの」を巡る主題が、より切実に観る者の心を震わせた。そしてまさしく舞台一回ごとが一期一会であることを叩きつけてくるような4人の舞踊家の素晴らしさたるや。裂帛の気合、お互いの身体と反応し合うような動作の美しさ。ため息さえ憚られる舞台に、誇張無く「いのちがけ」で観客も向き合える至福を、しみじみと再確認し、カーテンコールでは「中川! 宮河! 山田! 井関!」とまたも大向うを掛けてしまった。客席には井関佐和子さんのご両親もおられ、金森さんにもご挨拶した後、会場を後にした。

翌23日(月)、小倉の街を軽く散歩した後、北九州空港行きのリムジンバスに乗っていたところ、途中のバス停から金森さん・井関さん・中川さんが乗り込んで来られたので、吃驚仰天(サンクトペテルブルク公演の帰りも同じ飛行機だったなぁ)。このブログ用に記念写真をお願いした(「おっかけですねぇ」と中川さん。飛行機では座席も前後だった)。羽田経由の旅程を組んだ故の偶然含め、また忘れられない旅となった北九州公演。ぜひまたNoismを招いていただきたいと、切に願う。

左から井関さん、中川さん、金森さん


久志田 渉(新潟・市民映画館鑑賞会副会長、安吾の会事務局長、舞踊家・井関佐和子を応援する会役員)

「豊前に響いた「円環」の妙なる音(サポーター 公演感想)」への4件のフィードバック

  1. 久志田さま
    ご寄稿ありがとうございました!
    北九州公演よかったですね!!✨
    まったくもう~、言うことなしで素晴らしかったです♪

    観客もgoodで、スタンディングの方が多くて嬉しかったです♡
    ↓この映像でやや右の方で大きく手をあげて拍手しているのが久志田さんで、まん中あたりが私です♪
    https://x.com/NoismPR/status/1870767347516289501

    私は新潟空港発着だったので、ステキな3名様の写真のような遭遇はありませんでしたが、終演後には井関さんのご両親と金森さんにお目にかかれてよかったです♪
    そして、例の↓コレ!
    新潟空港ロビーで行き帰り、実物を見ましたよ!
    https://x.com/NoismPR/status/1869626044703277531/photo/1

    久志田さんの掛け声を、びわ湖ホールでも楽しみにしています♪
    (fullmoon)

  2. 久志田 さま
    現地の雰囲気が伝わってくる感想、有難うございました。
    Noism Company Niigata、2024年の踊り納め、北九州のお客様を魅了し尽くした様子が読み取れました。

    そして、やはり、近藤さん演出振付のNoism1『にんげんしかく』には、「『北九州公演』ならではの改変」があったのですね。新潟公演でも、それに該当する部分一発で観客全員を味方につけてしまうような破壊力を感じていました。(全ツアーが終了したところで、ツアー各地のまとめを掲載したいと考えています。)

    さて、そんな「円環」トリプルビルのツアー、これからひと月強、間をおいて、2月の公演は滋賀、そして埼玉です。この先、まだまだ彫琢が施され、表現の深化が進むものと確信しております。皆さま、お見逃しなく。

    そして、久志田さんが「国内外から街に訪れる人を『楽しませよう』とする姿勢が徹底している印象」と書いた北九州市のPR姿勢には、その根底に、行政が自らの有する「文化資源」に自覚的であり、かつ、それを最大限大切にしながら、一体となって、発信に注力している様が窺えます。それこそ新潟市にも期待したい方向性です。
    その意味で、fullmoonさんが触れた新潟空港ロビーの掲示はずっと念願だったものです。
    https://noism-supporters-unofficial.info/supporters-blog/shin/16127/#comment-1852
    (上のコメントに書いた②のひとつです。)
    でも、まだまだそれで満足というのでもありません。更に、新潟市には、どんどん、街中に、街ぐるみで一体感のある発信のあり方を模索していって欲しいものです。
    (shin)

  3. fullmoonさま
    遠路お疲れさまでした。帰路の偶然含め、遠方でNoismに向き合う喜びを再確認する旅でした。
    滋賀公演が今から待ち遠しいです。地元の方の感動を壊さないよう掛け声するのも、また「いのちがけ」でして。

    shinさま
    早速のアップ、有難うございました。
    樋浦さんの「アレ」、私はある小倉ならではのものを予想しておりました。滋賀の予想もどうなるか。
    北九州の方々の「遠来の人を楽しませる」姿勢に感激しつつ、湊町・新潟が負けてどうするとも。旅の学びは大きいです

  4. 久志田さま
    コメント返信ありがとうございました!
    演者も観る者も「いのちがけ」ですね!
    さて、小倉ならではの「アレ」とは「ぬか炊き」でしょうか?
    楽しい旅でした♪
    (fullmoon)

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