インスタライヴで語られたNoism的「夏の思い出2022」

2022年9月25日(日)、2度目の3連休最後の日に金森さんと井関さんによるインスタライヴが配信され、Noism的に「てんこ盛り」状態だった今年の「夏の思い出」が振り返られました。アーカイヴが残されていますが、こちらでもごくごくかいつまんでご紹介を試みます。

☆「NHKバレエの饗宴」に関して
・中村祥子さんからの依頼によるもの。新潟でのクリエイションは2回。初日(3月?4月?)、パートナーの厚地康雄さんは(井関さんに源を発する噂を耳にしてか)大緊張。2回目にはもう出来上がっていて、「意外とサクッと出来た」(金森さん)
・舞台上での緊張感。「終わって舞台に走って行ったら、ふたりとも死にそうになってたもんね。ホントに怖かったんだろうなと思って」(井関さん)
1公演のみで収録のためのカメラが入る。「その瞬間を味わいたいのに、『これが残る』とかって考えてしまって」(井関さん)
・「あのふたりだから出来た」(井関さん)「本番、もうふたりしかいない。何が起こってもお互い助け合って、お互い委ねて、引っ張っていくしかない。その関係性がパ・ド・ドゥって良いよなぁって」(金森さん)
・「次世代の若い子たち、これから日本のバレエ界とか欧州でも活躍していくだろう子たちの『今』と直接話す機会もあったし良かった」(金森さん)

☆「聖地」利賀村に関して
・3年振りに行った利賀芸術公園(富山県南砺市利賀村)。作品を観るだけではなく、「心の師匠」鈴木忠志さんと話して、ドオーンとふたりで仰け反るような言葉を貰った。「この国に帰ってきて鈴木さんがいらっしゃったこと、鈴木さんがこれまでにやってこられたこと、その全てをこの国で実現できるんだということがどれほど勇気を与えてくれたか計り知れないし、今なお、鈴木さんが利賀でやられている活動、何より舞台芸術、作品を観たときに得られる感動、刺激、影響」(金森さん)「言葉で言えない。あの空間に入った瞬間、皮膚レベルで圧倒的な違いを感じる。刺激っていう言葉以外見つからない」(井関さん)「強めの、過剰なね」(金森さん)「過剰な刺激」(井関さん)
・来月(10月)、黒部市の野外劇場でのSCOT公演を初めてNoism1、Noism2みんなで観に行くことになった。「彼らが行きたいと言って、みんながまとまって、それが結果、全員だったってのが何より」(金森さん)
・「また絶対に踊りたい」(井関さん)「踊らせたい」(金森さん)「踊りましょ」(井関さん)

☆「SaLaD音楽祭2022」に関して
・『Sostenuto』:都響からいくつか候補が示された中からラフマニノフを選んだ。3月、『鬼』の創作中に、「歩いて」と言って井関さんに歩いて貰った金森さん、「OK!見えた。じゃあ5月まで」と。→『鬼』が固まってきた5月くらいに創作着手。
・クリスチャン・ツィメルマン(Pf.)・小澤征爾指揮・ボストン交響楽団のCDで創作したが、生演奏がどう来ようが、それによって作品が破綻しないように考えていたとして、「万が一、凄く遅く演奏されてもこれなら大丈夫。速くなったとしてもこれなら大丈夫」(金森さん)
・そのツィメルマンのCDも素晴らしいが、生には勝てないと口を揃えたおふたり。「生で聴いた瞬間にその世界に入っちゃう」(井関さん)「Noismと一緒に作るという感覚を持ってくれていて、その思いがそこにあるだけで唯一無二」(金森さん)「その瞬間しかできない。消えちゃうがゆえに美しさは半端ない」(井関さん)「音楽はデフォルトが無音。必ず静寂に向かう。静寂への向かい方が音楽の肝。それを感じるためには生じゃなきゃダメ。録音は時間的に定められている」と生演奏の醍醐味を語る金森さん。「このコラボレーションは続けていきたい」とおふたり、もうちょっとだけ舞台を拡げて欲しいという気持ちも共通。

☆新体制、新シーズン
・国際活動部門芸術監督・井関さん:「まだまだそこまでやれている実感はないが、役割分担もあるので、思ってたより大丈夫」「今はメンバーに伝えたいことを何のフィルターも通さずに話せるのが良いこと」(井関さん)「メンバーもこの体制になって、素直に聞けるようになったと思う。今は彼らの芸術活動の責任を担う芸術監督として言ってくれていると彼らも思える。見てると良い関係性だなと」(金森さん)

☆『Andante』の金森さん・井関さんヴァージョンを観る可能性は…
・「あれは彼らのために作ったものなので、彼らが踊っていくものなのですが」(井関さん)「できますよ、できますけど、100%無理なのが全身タイツで出るのは無理。多分、皆さんからも悲鳴が出るんじゃないかと。あれはやっぱり厚地くんの身体を以てして観られる、彼の身体という『作品』があるから」(金森さん)「踊りたいと思わないし、向き合い方が違う。彼らのために作って、彼らが美しく見えるようにやっているから」(井関さん)「期待には応えられない。皆さんの『あのふたりが踊ったら』という妄想がベストだと思う。それを超える実演は出来ない気がする」(金森さん)

等々…。ほか、夏を越えて次々壊れるおふたりの家電製品を巡る話も楽しくて、ホント笑えますし、新作に関する話や「兄ちゃん」小林十市さんについての話もあります。まだご覧になられていない方はこちらのリンクからアーカイヴでどうぞ。

(shin)

「SaLaD音楽祭2022」メインコンサートで魅せたNoism♪

*西日本各地で猛威を振るい、北上を続ける台風14号。被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。

Twitterで金森(穣)さんの従兄弟の金森大輔さんが防災の観点からのツイートを多数続けて発信してくれている状況下でもあり、「行けるのだろうか?」「大丈夫なのか?」「見送るべきではないのか?」と不安な気持ちは否めませんでしたが、タイミング的に新潟・東京間の往復ならギリギリ何とかなりそうと、2022年9月19日(月)、東京は池袋の東京芸術劇場での「SaLaD音楽祭」メインコンサートを観に行ってきました。

時折、思い出したように激しく雨が路面を叩きつけていましたが、池袋駅から地下通路で繋がる東京芸術劇場は、傘の出番もなく、大助かりでした。

15時、コンサートホール。都響の楽団員が揃い、矢部達哉さんによるチューニングに続き、指揮の大野和士さんが姿を見せると、次いで上手側からNoism Company Niigata の7人が歩み出て来ました。順に樋浦瞳さん、糸川祐希さん、三好綾音さん、中尾洸太さん(センター)、井本星那さん、坪田光さん、杉野可林さんで、公開リハ初日とは樋浦さんと糸川さんのポジションが入れ替わっていました。ペルトの音楽による『Fratres I』横一列ヴァージョンです。都響による演奏はCD音源と較べても、弦の音が遥かに繊細に響き、その楽音を背中から受けて踊る面々の様子はいずれも最高度の集中を示して余りあるものでした。

ペルトの『Fratres ~ 弦楽と打楽器のための』に金森さんが振り付けた作品は、これまで、順に『Fratres III』まで観てきていますが、ここでその始原とも呼ぶべき『Fratres I』を、それも金森さんが踊らず、極めてシンプルな(一切のごまかしが利かぬ)横一列で観ることには、観る側にも初見時の緊張を思い出させられるものがあったと言いましょう。冒頭から暫く、上からの照明は踊る7人の顔を判然とさせず、黒い衣裳を纏った匿名性のなか、7人がNoism Company Niigataの「同士」であることのバトンを託されて踊る峻厳極まりない様子には瞬きすることさえ憚られました。

踊り終えて、下手側に引っ込んだ後、盛大な拍手のなか、大野さんに促されて再び姿を見せた7人。緊張から解き放たれ、安堵した表情を見たことで、こちらも頬が緩みました。それほどの厳しい空気感を作り出した11分間の舞踊だったと言えます。

その後、都響による華やかなウェーバー:歌劇『オベロン』序曲を挟んで、15時30分になると、再び、Noismのダンスを伴う、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番第2楽章です。金森さんが振り付けた舞踊作品としてのタイトルは『Sostenuto』。同曲の発想記号からの命名です。

舞台の準備段階から、通常のピアノ協奏曲のときと異なり、指揮者の大野さんに正対してピアニストの江口玲さんが演奏するかたちでピアノが配置されたのが先ず印象的でした。先の『Fratres I』同様、オーケストラの手前でNoismが踊るのですが、その姿を捉えながら演奏する必要があってのことでしょう。

死、喪失、悲しみ、絶望…、そうしたものの果てに「音が保持され」、光や希望が見出され、人と人の時間が、或いは彼岸と此岸とが繋がれるに至る叙情的な作品『Sostenuto』、その世界初演。白い衣裳、白みがかった照明。井関佐和子さん、山田勇気さん、井本さん、三好さん、中尾さん、庄島さくらさん、庄島すみれさん、坪田さん、樋浦さんの9人によって踊られました。人ひとりが不在となることに胸が締め付けられつつ進み、最後に光や希望が見出され、思いが繋がるとき、涙腺は崩壊せざるを得ません。これまで幾度となく聴き、「ロシア的」と解してきたラフマニノフによる旋律が、この舞踊を想起することなしには聴けなくなってしまった感すら否めない胸に迫る濃密な叙情性。こちらも時間にすると11分ほどの小品ながら、忘れ難い印象を残す作品です。この先、いずれかの公演時にこの度と同じ完全な形での(再)上演が望まれます。

Noismの舞踊は僅か「11分×2」という短さながら、台風への不安を抑えて行った甲斐のあるこの度の「SaLaD音楽祭2022」でした。幸い、帰りの新幹線も無事運行しており、安全に帰宅できましたし。

この度の公演会場でも、Noismサポーターズの数名とお会いできましたし、開演前、そして途中休憩と終演後にも、浅海侑加さん(と彼女のお母様)にばったり出くわし、その都度、ちょっとずつお話しすることができ、何よりご結婚の祝いを直接お伝えできました。で、浅海さんからは「これを終えると、メンバーは明日(9/20)から一週間お休み」とお聞きしました。18thシーズンから19thシーズンへの移行期は色々とイヴェントが目白押しでメンバーはとても忙しかったことに改めて気づかされました。充分な期間とは言えないかもしれませんが、一週間ゆっくりして、再び新シーズンに臨んで欲しいと思いました。

(shin)

「SaLaD音楽祭」活動支援会員対象公開リハーサル初日(9/10・土)を観てきました♪

夏が舞い戻ってきたような感があり、強い日差しに汗ばむ2022年9月10日(土)の新潟市。りゅーとぴあのスタジオBまで、活動支援会員を対象とする「SaLaD音楽祭」にむけた公開リハーサル(初日)を観に行ってきました。

シーズンが改まり、メンバーも入れ替わったNoism Company Niigata。
(Noismボードの入れ替えも進んでいます。まだ完了していませんが…。)

9/19のメインコンサートにて、ペルトの『Fratres』とラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の第2楽章を東京都交響楽団の生演奏で踊るNoismですが、果たしてどんな面子で踊られるのか、興味津々でない者などいなかった筈です。

2分弱進んでいたスタジオBの時計が13:02を示す頃、つまりほぼ予定されていた時間通りに公開リハーサルは始まりました。

最初の演目『Fratres』(13:00~13:10)から。あの黒い衣裳を纏って、スタジオB内の上手側から一列に歩み出たのは、順に、糸川祐希さん、樋浦瞳さん、三好綾音さん、中尾洸太さん(センター)、井本星那さん、坪田光さん、杉野可林さんの7人。本番の狭いアクティング・エリアを考慮した「横一(列)ヴァージョン」(金森さん)です。
これまでも何度も観てきた作品ですが、間近で観ることで、手や足の動き、身体のバランスの推移などをガン見することができ、それはそれはこの上ない目のご馳走であり、ホントに興奮しながら見詰めていました。
あと、本番でも「降るもの」はないでしょうし、足をドンドンと踏みならす場面は演出が変更されていたことを記しておきたいと思います。

着替えを挟んで、もうひとつの演目・ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番より第2楽章(13:15~13:30)です。今度は先刻までと打って変わって、全員が白い衣裳に身を包んでいます。踊るのは、井関佐和子さん、山田勇気さん、井本さん、三好さん、中尾さん、庄島さくらさん、庄島すみれさん、坪田さん、樋浦さんの9人です。こちらは完全な新作で、この曲を都響から提案を受けてすぐ、「見えた」と金森さん。「丁度、バレエの恩師が亡くなった直後だったことで、思いを馳せながら創作した」のだそうです。見覚えのある小道具が効果的に用いられ、生と死、喪失の哀切と受け継がれていく思いが可視化されていきます。

体制も刷新されたNoism Company Niigataの19thシーズン、その劈頭の舞台「SaLaD音楽祭」。自らの、或いはNoismの活動を「文化、芸術を残していく闘い。願わくば、数十年後、例えば、ここが改修されていたりとかしても、その時代の舞踊家が躍動していて欲しい」と語った金森さん。「このふたつを持っていってきます」の言葉に力が込められていたのを聞き逃した者はいなかったでしょう。大きな拍手が送られましたから。

明日の日曜日、もう一日、公開リハーサルはあります。ご覧になられる方はどうぞお楽しみに♪そして「SaLaD音楽祭」メインコンサートでの本番の舞台のチケットをお持ちの方も期待値を上げて上げてお持ちください。

(shin)