『Duplex』埼玉公演3日目ソワレ(2/27)感想(サポーター 公演感想)

☆Noism0 / Noism1 『Duplex』(2021/2/27@彩の国さいたま芸術劇場〈小ホール〉)

一昨日に続き、「Noism0 /Noism1『Duplex』」埼玉公演3日目を観ました。 いつもですと、土曜日は合唱団の練習があるのですが、非常事態宣言で中止となり、幸いにも埼玉公演2回目を観ることができました。

最初は、森優貴さん「Das Zimmer」です。「群像劇」ですが、断章ごとに異なるダンサーにスポットがあたり、それぞれ見せ場があるのは観客として嬉しいですね。

先日はこの密室空間を「洋館」と書きましたが、今回は学校生活のように感じました。衣装も制服のようにも見えますし。

男女ペアの「ハグ」が印象的でした。密着せず持ち上げていないのに女性が浮いています。不思議な美しさがありました。

ラストの渡部さんのソロは、これまで周囲に合わせていた彼女が、自立し、もがきつつも前に歩もうとしています。井本さんの代演で相当なプレッシャーを感じていたかもしれませんが、見事でした。

「残影の庭」については、初演の京都公演と新潟・埼玉公演を観て気づいたことについて書きます。

まず、京都の初演を観た時は「あまり踊らないなあ!」というのが第一印象でした。それが新潟・埼玉公演では、静寂な世界観はそのままに踊りに満ちていて、その感じ方の違いに驚きました!

どうしてでしょうか。

第一に京都では「秋庭歌一具」のうち「秋庭歌」が雅楽のみだった、のがあると思います。舞踊家のいない舞台(庭)が「不在感」「残影感」を醸し出しますが、舞踊のみの公演でどうするのだろう?という疑問もありました。まさかの曲ごとカットには驚きました。

また、京都では共演した伶楽舎の影響も大きいです。雅楽は演奏家の立ち居振る舞いが「静」そのもの。武満徹の曲でさえも空間が動かない印象がありました。観客にも少なからず影響を与えていると思います。

舞台装置についても書きます。

新潟・埼玉公演では壁に備え付けだった灯篭は、京都公演では天井からぶら下がり、上下に可動式でした。 雅楽と舞踊の結界のようでもあり、また逆に極彩色の雅楽と淡色のNoismを結びつける効果もあったと思います。

新潟・埼玉公演でひらひらと落ちてきた落葉は、京都公演ではバサッと落ちてきたのも印象的でした。ベジャール「M」の桜吹雪と落ち方が一緒のようにみえました。

この落葉については、第一部の最後の曲目で声明を唱う僧侶たちが「散華(さんげ)」を巻いたのもあり、Noismの落葉が「散華」のようだったのも奇跡的でした(果たして金森さんは狙っていたのでしょうか?)

以上、思いついたままにつらつらと書いてしまい、非常に読みにくい文章になってしまいました。 何かしら公演や作品を感じる手助けになれば幸いです。

(かずぼ)

『Duplex』埼玉公演 大千穐楽(2/28)に行ってきました!

2021年2月28日。新潟も埼玉も春らしくていいお天気! 久しぶりの埼玉公演。関東にお住まいの友人知人、会員さんたちにたくさん会えました♪

さて、新潟公演の開場は15分前ですが、埼玉は30分前。 3番のチケットをゲットしていたので、早めに会場に行って順番を待ちます。 今回の埼玉公演は、いつも数回観る私には珍しく、今日1日だけの鑑賞。しかも楽日ですし、やはり最前列ですよね。 まん中上手寄りの希望の席に座れました♪

森優貴さん『Das Zimmer』が始まります。Noism1井本さんの代わりにNoism2の渡部梨乃さんが出演するそうなので期待が高まります。 とは言え、実はちょっと心配していたのですが杞憂でした。とてもよかったです! しっとりと落ち着いていて、でも初々しくて。 森さんが求めていた「ノーブル」という雰囲気にぴったりだったと思います。 渡部さんプロフィール:https://noism.jp/about/member/?person=8742

『Das Zimmer』は演劇的でミステリアスです。メンバーは皆、難しい役柄を自分のものにして踊っていたと思います。

休憩後は、金森穣さん『残影の庭―Traces Garden』。Noism0の3名が舞います。 これはもう「神」!! 美しい!!  見る者は法悦に身を委ね、ただただ呆然とするのみです。

素晴らしい大千穐楽でした。 皆々様、ロングラン公演おつかれさまでした! ブラボー!!!!!

※埼玉公演には速報チラシが折り込まれていました♪

  • Noism2定期公演vol.12: 4月22,23,24日 りゅーとぴあ劇場
  • Noism0,1,2『春の祭典』: 7月2,3,4日 りゅーとぴあ劇場             
  • 同: 7月23,24,25日 さいたま芸術劇場

3月もイベントや公演が次々と続きますよ♪ インスタライヴもあるかも。 目が離せませんね!

(fullmoon)

『Duplex』埼玉公演初日(2/25)を観ました♪(サポーター 公演感想)

☆Noism0 / Noism1 『Duplex』(2021/2/25@彩の国さいたま芸術劇場〈小ホール〉)

彩の国さいたま芸術劇場小ホールで開催された「Noism0 / Noism1『Duplex』」初日公演を観ました。与野本町の劇場に来るのは昨年1月の「森優貴/金森穣Double Bill」公演以来となります。

全5公演すべてが前売りの段階でチケット完売!新型ウイルスの影響により客席数が制限されているとはいえ、2月はダンス公演が非常に多い時期ですからチケット完売は喜ばしいことです。

最初に森優貴さんの作品「Das Zimmer」がNoism1メンバーにより上演されます。ちなみに出演者変更によりNoism1の井本さんとジョフォアさんは今回オンステせず、Noism1準メンバーの2人(杉野さん、樋浦さん)とNoism2メンバーの渡部さんが踊りました。

「Das Zimmer(=部屋)」と題されたこの作品、メンバーはレトロ風ながら洗練されたかっこいい洋装に身を包んでいます。制作段階で「密室群像劇」との言葉を目にしたこともあり、何らかの事情で外に出られない密室(嵐で閉じ込められた洋館や難破中の豪華客船内など)の中で起こる濃厚な人間模様を見ているようです。江戸川乱歩のミステリー小説の世界を想像しました。

ショパン・ラフマニノフの小曲とともに恋愛や軋轢のドラマを展開します。恋愛もどうやら一筋縄ではいかなさそうで「人物相関図」が欲しくなります。ただしドラマは暗転により突然終わり、普段見慣れているダンスとは違い(ノってきたと思ったら突然切られる)というはぐらかされた感覚もあります。森さんの解説には「外してみる」ことを試みた、とあるので意図されたものだと思います。

休憩をはさみ、金森穣さんの作品「残影の庭―Traces Garden」がNoism0の3人により上演されました。森さんが「部屋」ならば金森さんは「庭」。空間をテーマとする2作品が重なったのも楽しいです。

「残影の庭―Traces Garden」では武満徹の雅楽「秋庭歌一具」が使われていますが、タイトル曲「秋庭歌」は使用されていません。どうしてだろうか、と思い「秋庭歌」の曲についてウィキペディアで検索してみると、「『秋庭歌』は初演の際に舞がつけられていた」とあります。もしかしたら金森さんが初演の舞を尊重して新たに振付しなかったのかもしれませんし、この曲を外すことが「残影」そのもの、という意図なのかもしれません。

舞台はまるで日本の古典芸能のようです。人間が羽衣のような衣装を身に纏うことで精霊としての本性を現す、というのは古典芸能そのもの。3人の精霊が秋の庭で舞い遊ぶさまは、まるで既に伝承されている故事を見ているようです。

途中、古木やその魂(曲中で雅楽が「木魂」という小グループに分かれることに掛けているのかもしれません)も現れ、井関さんの精霊と踊るのも楽しいです。 落葉し精霊が去ったのち、再び羽衣を着た金森さんが現れますが、この金森さんは精霊ではなく「木魂」だったのかもしれません。

ちなみに、私が最近大好きなテレビ番組「ヒロシのぼっちキャンプ」では、ぼっちキャンプを楽しんだヒロシさんが場所を元に戻してからパッと画面から消えエンディングとなります。画面が風景だけになることで「(キャンプを楽しんでいた)ヒロシさんの残影」が強く印象に残ります。「残影」について考えていたら、この映像がふいに思い出されました。

上演は日曜日まで続きます。土曜日には新潟公演にもなかった1日2公演もありますし、怪我や感染がなく最後まで無事公演が成功して終えられるよう見守りたいと思います。

(かずぼ)

『Duplex』新潟楽日、スタジオBは感動のスタンディングオベーション締め♪

2021年2月11日(木)、「建国記念の日」の新潟市・りゅーとぴあは、音楽では高嶋ちさ子さん(12人のヴァイオリニスト)あり、演劇なら吉田鋼太郎さん×柿澤勇人さん(『スルース ~探偵~』)あり、そして新潟お笑い集団NAMARAまでありと、駐車場も(吉田鋼太郎さんに因むなら)「所さん!大変ですよ」状態で、動かない車列にハラハラした方も多かった模様。かく言う私もUターンして、付近の駐車場を利用することに切り替えて、事なきを得たクチでした。

そんな『Duplex』新潟ロングラン公演楽日のホワイエは、(新潟では)見納めとなる舞台に高まる期待感が、顔という顔から間違いなく窺えました。この日が初めての人も、そうでない人も、あと数分で「約束された感動」に浸れるという高揚感を漂わせていなかった人など皆無でしたね。

4回目の鑑賞となるこの日は、頭を動かすことなしに、そのまま舞台全てを視野に収められる、これまでで一番引いた席(中央ブロックの後ろから2列目)を選んで腰掛けて、開演を待ちました。

いつも通りに開演時間を3分ほどまわった頃、森さんの『Das Zimmer』の幕が上がります。仄暗さのなか、青年期の5×5(+1)の男女によって描かれる群像劇は、(個人的には)やはり「束の間」とか「かりそめ」とか「儚さ」、或いは「喪失」とか「不在」とか「違和」などの類いの語彙が自然と浮かんでくるスタイリッシュな舞踊作品で、欧州の雰囲気が濃厚に立ちこめる35分間は、この日に至って、滑らかさとダイナミックさを増し、切なさという情緒を堪能しました。

休憩を挟んでの『残影の庭~Traces Garden』、情趣は一変しますが、こちらもこの上なくスタイリッシュです。それを「日本古来の」と言ってしまいたくなるものの、事はそう簡単ではなく、現代音楽と現代舞踊によって象徴的な手法で可視化された「日本らしさ」です。その古くて新しいさまが色鮮やかに観る者の目を射ることでしょう。初秋から晩秋まで、兆しては移ろっていく毎年の奇跡にうっとりとするのみ。武満徹×Noism0の自然頌。この「日本らしさ」、海外にも持って行って欲しいなぁと思うものです。

この日、「楽日」のスタジオB。どちらの演目も終演後にはスタンディングオベーションで応えた客席。このご時世でなければ「ブラボー!」も乱れ飛んだのでしょうが、その代わりに、僅か50人のものとは思えないほどの大きな拍手がいつまでも谺したカーテンコールは、演者にとっても、観客にとっても、至福の時間だったと言い切りたいと思います。

客席を大きな感動で包んだ新潟でのロングラン、全12公演。この勢いは埼玉に引き継がれます。埼玉でご覧になられる皆さま、お待たせしました。濃密な35分と35分に、普段とは全く異なる時間感覚をお楽しみ頂ける筈。圧倒されて、言葉を失う体験が待っています。乞うご期待ですよ!そして、まだまだ観たいですし、まだまだ観たい人は多くいらっしゃいますし、「凱旋公演」激しくキボンヌです♪

(shin)

心を鷲掴みにされ、身体は熱を帯びた新潟公演9日目の『Duplex』

例年より一日早い節分と立春を経た週末、2021年2月6日(土)の新潟市は、前日早朝の物凄い路面凍結が嘘のように、穏やかな日差しに恵まれ、暦の上のみの春から、日々、その「兆し」が大きくなっていることを実感できる一日でした。

そんな午後、りゅーとぴあ・スタジオBへ、『Duplex』の新潟公演9日目を観に行ってきました。都合3回目の鑑賞でした。有難いことです。

過去2回は、全体を視野に収めることが出来るほぼ中央部の席から観ていたのですが、この日は連れ合いが「最前列で観よう」と言うので、その言葉に従って、首振り覚悟で、一番前の席を選んで腰掛けました。複数回観るのなら、やはり、一度はその選択はアリですね。森さんの『Das Zimmer』では、あたかも「部屋」の一員ででもあるかのように、願えども得られない繋がりに身悶えし、「不在」に身を焦がす、その切なさを共有しましたし、更に、金森さんの『残影の庭』にあっては、3人の腕の産毛さえ視認でき、空気の震えまで伝播してくる近さはもう「圧巻」の一言で、一瞬にしてあたりを浸してしまう武満徹の「一にして全」の楽音とフォルテッシモで迫ってくる無音を全身で浴びることと相俟って、心を鷲掴みにされる時間を堪能しました。両作品とも、これまでの少し引いた席から視線を送っていたときとはまったく別物の見え方でした。

『Das Zimmer』の情緒たっぷりのピアノは誰だろう。ショパンなど、勝手に、無責任極まりなくも、「ホロヴィッツ」などという名前を思い浮かべたりするのですが、まったく根拠もないことでして、どなたか詳しい方からのご教示を賜りたいところです。宜しくお願い致します。m(_ _)m

『残影の庭』は、「耳を澄ますこと」と「目を凝らすこと」により、繰り返される季節の移ろいに、そしてその変化の「兆し」に、「奇跡」を感得する深みに打たれずにはいられません。また、この日は山田勇気さんの浮かべる表情が、金森さんとのデュオのときと、井関さんとのデュエットのときとでは全く異なることに目が反応しました。

どちらの作品に対しても、腕がだるくなるくらいに、少しでも大きな拍手を送りたいと思わずにはいられませんでした。その後、出口付近で手指消毒をして帰ろうと、検温機能付きの機器に両手をかざすと、いきなりピー音が鳴り、「37.7℃」と表示されて、ちょっと焦ることに。しかし、「そんな筈はない」と、慌てて隣のサーモグラフィーカメラに移動し、今度は額で測定させると「36.4℃」という数値を出してくれたので、ホッと胸を撫で下ろしました。なるほど、この公演の「熱さ」は、間接的に、検温機器にも伝わっていた訳でして(←ホントか?)、「ブラボー!」と叫べない今、先刻の精一杯の拍手が演者にその熱量を伝えてくれていたら嬉しいと思いながら、帰路につきました。

『Duplex』新潟ロングラン公演も残すところ、あと3公演となりましたが、楽日前日の2月10日(水)(19:00~)の公演は、11:00より若干の当日券販売があるとのこと。(りゅーとぴあ2Fインフォメーションでの販売。)「争奪戦」が繰り広げられるかもですけれど、諦めていた方には「吉報」と言えるのではないでしょうか。チャレンジあるのみです。もしでしたら、ご検討ください。

(shin)

『Duplex』新潟公演第2クール2日目(公演5日目)を観る♪

新潟市の2021年1月30日(土)は、週頭からの予報では前日からの「暴風雪」が続くとされた日。しかし、開けてみれば、時折、真横から雪を伴った強風が吹き付けたりすることはあるものの、そんな人をいたぶるような荒れた時間は割りに短く、積雪も、酷い路面の凍結もなく終始し、安堵することになりました。

「もし荒れた天気だったら嫌だな」など思いながら迎えた『Duplex』新潟公演第2クール2日目(公演5日目)でしたが、まあ、それも杞憂に終わり、「舞台を楽しむだけ」という気持ちで客席に着けたのはラッキーでした。

また、開演前と終演後には、久し振りに会う方々とも、適度な距離を保ちながら、言葉を交わすことができ、「ワクワク」と「うっとり」が増幅するのを楽しみました。

前週の金曜日に初日の公演を観てから、この日が2回目の鑑賞。やや余裕ももちながら視線を送っていたつもりでしたが、瞬きも忘れて凝視したりしていたらしく、ドライアイ気味になり、目をショボつかせることしきり。そして驚きの場面と知っていても、またしても驚いてしまったり、「2度目だというのに」とそれこそ驚きでした。

次に2作を観た個人的な印象を若干記したいと思います。心に浮かんだよしなし事を、ネタバレを避けつつ書き付けるつもりですが、お読みになりたくない向きは、*****と*****の間を読み飛ばしてください。

*****

森優貴さんのNoism1『Das Zimmer』。冒頭から張り詰めた空気は不穏そのもの。10人(+1人)の内面を表象する色濃い影。交わらない視線、一様でない表情。ときに翻り、ときにたくし上げられるスカートの裾、その性的(sexual)なimplication(暗示)。対する大仰な男性らしさ(musculine)の誇示。注ぎ、注がれる品定めの視線。性別(gender)への違和(SOGI)。かりそめでこれ見よがしの交歓。喪失(語られることのない)と過去の呪縛、震え…。この部屋を照らす光源はどこに見出せるのでしょう。重ねられていくfragileな(脆い)断章に、ラフマニノフとショパンは似合い過ぎです。

金森さんのNoism0『残影の庭~Traces Garden』。こちらは勿論、「はじめに武満徹の音楽ありき」の舞踊。武満本人が使った表現で言えば、「沈黙と測りあえる」音、或いは極めて沈黙と親和性の高い音が、ぽつん空間に落ちるや、一瞬にしてあたりを浸してしまうかのような彼の音楽を可視化した美しさが際立つ作品は、徹底して耳を澄まさんとする意志に貫かれた端正な作品でもあります。また、目に鮮やかな黄色と赤から、それぞれカロテノイド(黄)、アントシアニン(赤)と自然界の植物色素を連想させられたのも武満ゆえかと感じられました。

*****

どちらも最初に観たときよりも、強く胸に迫ってくるものがありました。複数回観る幸福に浸りながらも、同時に、より多くの人に観て貰いたいという気持ちもあり、その意味では複雑な部分もあります。やむを得ないこととは言え、50人とは少な過ぎ、勿体なさ過ぎです。それだけに凱旋公演であるとか、「生」が無理なら、配信であるとか、なにか機会を作って頂けないものかと思ったりもします。そんなプラチナチケットの公演、これからご覧になられる方はご堪能ください。

(shin)

「ランチのNoism」番外編:カイ・トミオカさん「いつもの仲間と特別な日のお料理」の巻

メール取材日:2020/12/25(Fri.)

『Duplex』Noism0/Noism1新潟ロングラン公演が大好評の滑り出しを見せている今、ここでひとつ別の記事も投入したいと思います。有り難いことに、こちらも毎回ご好評を頂いております「ランチのNoism」です。

今回の「ランチのNoism」は特別な番外編でお送りします。いつものお昼ごはんじゃないんです。お料理が好きで、「ランチのNoism」への登場を楽しみにしてくださっていたと聞く「シェフ」カイ・トミオカさん(とスティーヴン・クィルダンさん)が「いつもの仲間」のために拵えた特別なお料理をお届けします。

コロナ禍にあって推奨されている「いつもの仲間と」の食事。普段からの感染予防もバッチリなNoismメンバー同士の節度ある食事ならノー・プロブレムですよね。

で、それがどう「特別」かって?日付からしてお察しの通りかと。

今回、まず、オープニングの音楽からして違います。では、いってみましょうか。

♫あ~いむ・どぅり~みん・おぶぁ・ほわ~いと・くりすます♪

前日の公演(オルガンコンサート)で大忙しだった舞踊家たちにもサンタさんはやって来る!「ランチのNoism」番外編。

*先ずはお料理の写真から♪

取り分けられたお料理の数々と…
ナイフとフォークじゃない!箸だ!

1 お料理について説明して下さい。

 カイさん「クリスマスの日に、Noismメンバーで一緒にその日を過ごしたいという人を招待しました。で、お料理は幾分、伝統的な英国のクリスマス・ディナーになっています。内容は、ローストビーフ、ローストチキン、ローストポテト、ヨークシャー・プディング、グレイビー、『ピッグズ・イン・ブランケッツ(毛布巻の豚)』(*後述)、ブリュッセルスプラウトとサラダでした」

 *英国のクリスマス・ディナーですか。食べたことはおろか、見たことも聞いたこともないものが次から次に…。(汗)

ヨークシャー・プディングですね。
自信の笑み♪

2 お料理にはどのくらいの時間がかかりましたか。

 カイさん「クリスマス・ディナーを作るとなると、いつもとても長い時間を要します。で、この日も丸一日かけて料理しました!英国では、たくさんを同時に調理できるオーブンを使うのが楽しいのですが、今回、日本ではうまく時間をやりくりするのが大変で、みんな一日がかりで食べることになりました」

 *洋の東西を問わず、たくさん食べる日であることに間違いはないようですね。

見るからにこだわりの「シェフ」、
切り分けも自己採点しながら?

3 今回、お料理するにあたって大事にしたことはどんなことですか。

 カイさん「私にとって大事だったこと…。2020年はコロナウイルスのため、家族や友人に会いに母国に戻ることが出来ませんでした。それは本当にキツいことでしたし、クリスマスの慣習をとても恋しく思いました。メンバーの多くも同じ状況でしたから、一緒にクリスマスを過ごすことは特別なことでした」

 *カイさんの美味しいお料理は胃袋ばかりじゃなく、心の隙間も埋めたんですね、きっと。

4 これだけは外せないというアイテムはありますか。

 カイさん「『ピッグズ・イン・ブランケッツ』がそうです。それはベーコンでソーセージを巻いて作る料理のことです。それからブリュッセルスプラウトも大好きです。でも、それを好む人はあまりいないかもしれません!私は牛タンと一緒に調理したのですが、美味しかったですよ」

 *おお、「肉 in 肉」って料理なんですね、「ピッグズ・イン・ブランケッツ」。私たちにとっては「アスパラのベーコン巻き」の方が一般的でしょうか。そして、ブリュッセルスプラウト!?芽キャベツと同じもの!?

5 今回のクリスマスのお料理に関してもう少し聞かせて下さい。

 カイさん「クリスマスに関しては誰もが好みがあるものです。チキンだったり、ターキーだったり、ビーフやポークだったり。家族で迎えるクリスマスでは、その家その家にしきたりがあり、それを破ったりはしないものです。でも、これが私が日本で作る初めてのクリスマス・ディナーなので、新しいしきたりをスタートさせようと決めてかかりました!」

 カイさん「私たちは前日(12/24)クリスマスイヴにはオルガンコンサートの舞台に立っていましたから、お料理の準備を早くから始めることは出来ませんでした。で、(翌日)クリスマスの朝に買い物をして、それから調理にかかったので、ストレスもありました。でも、結局はうまくいったので、頑張った甲斐がありました」

 カイさん「同じ英国人のスティーヴンも私もクリスマスが大好きなので、ふたりで何を調理するのか責任を分担することにして、私がローストビーフを、彼がローストチキンを作り、その他も分担しました。で、この日のクリスマスは、Noism1とNoism2からメンバー8人での食事となり、特別な機会になりました!」

こちら、スティーヴンさん作の
ローストチキンですね。
これまた本格的!

6 メンバーはどんなふうでしたか。

 カイさん「クリスマスで、一つひとつ別々に調理された料理たちを前にして、ワクワクするのは自分のお皿にとっていく時です。みんなでシェアするのですが、自分の好物はきまって余分にとろうとするものです」

 *ですよねぇ。(笑) そしてその一部始終を「ニンゲン観察バラエティ・モニタリング」、…って番組が違いますけど、きっと楽しいですよねぇ、観察するの。

7 他にどんなことをしましたか。

 カイさん「ゲームをしたり、クリスマス・プレゼントを開けたり、いっぱい食べて、うんと楽しみました!それがクリスマスというものですから」

 *おお、「ゲーム」、どんなことするのでしょうかねぇ。そして「クリ・プレ」!…って、縮めたりしないか。何でも短くするのは日本人の悪い癖。(笑)そうそう、みんなで「プレゼント交換」でもしたんでしょうかねぇ。楽しいですよね、「プレゼント交換」。中身が何かはさておき、「交換」すること自体がワクワクで。ところで、カイさんは何を貰ったんですかね。サポーターズとしては、そのあたり、突っ込んでみたくないですか、皆さん。…ってことで、うん、訊いちゃいましたよ。えっへん。

 そしたら、カイさん、こんなふうに説明してくれました。

 (a)プレゼントに関して: カイさん「2020年のクリスマスは、家族やパートナーのために時間を使うことは出来ませんでした。プレゼントしようと考えるには『クリエイティヴ』である必要があったからです。ガールフレンドからは「migrateful」(←【註】migrate(移住する)+grateful(感謝して)の造語かと)と呼ばれる慈善活動のギフトバウチャーが送られてきました。それは英国内の移民・難民シェフからお料理のレッスンが受けられるというものです。この活動には世界中から多くの人々が参加しているので、世界中のお料理についてのレッスンが受けられるのです」

 (b)今回、メンバーから貰ったプレゼントに関して: カイさん「Noismでは『シークレット・サンタ』と呼ばれるやりかたでプレゼントをやりとりします。全員がプレゼントする相手の名前を受け取り、上限1,000円で買ってくるのです。で、『シークレット』というのは、誰からのプレゼントか知らずに貰うからです。私はとても素敵なノートを貰って、凄く嬉しかったです」

 (c)クリスマスのゲームに関して: カイさん「英国のクリスマス時期によく行われるゲームに『after8s(アフターエイト)』というのがあります。『アフターエイト』というチョコレートがあるのですが、それを額に載せて、手を使うことなしに、口の中へと移動させなければならないっていうゲームです!様々な表情やらテクニックやらを見ることになるのでとても面白いのです」

【資料画像】(by shin)
アフターエイトチョコレート

 *「アフターエイト」っていうのは、「夜8時以降に、ゆったりとお菓子やリキュールを楽しむ英国の風習」なのだそうで、それに因むチョコレートはミントクリームをダークチョコで包んだおとな味の美味しいやつ♪「チョコミン党」の私、虜になりそうです!

 *おっと、そんなことより、こうして聞いてると、どれも根底に人間味ある「繋がり」が感じられるものばかりで、本場もんのクリスマスはこうなんだなと納得しちゃいました。浮かれてプレゼントをやりとりする日なんかではなく、社会や相手を思い、共に生きるための「想像力」を働かせて、みんなでその日をお祝いしようとする気持ち。伝わってきます。ジョン・レノン『Happy Xmas』とか佐野元春『Christmas Time in Blue』な感じ。見習わなくちゃって。そして、改めて、カイさんの「お料理熱」が高いこともわかりました。エプロン姿、さまになってますもんね、カイさん。素敵、素敵♪

FLOのケーキを覗き込む
「シェフ」

…ここいらで再びお料理に戻りましょう。

8 今回のお料理、作ってみての感想は…。

 カイさん「私たち(カイさんとスティーヴンさん)はとても良い仕事が出来たと思います。お料理も私たちに出来る限りの伝統的なものが仕上がりましたし、作っていて、とても楽しかったです。すぐまたもう一度作らなきゃと思っています、次のクリスマスが来る前に!」

 *改良に改良を加えて、次のクリスマスに備えるつもりなのでしょうかねぇ。カイさんには「次のクリスマス」にも報告して欲しいですね。そして、それだけじゃなく、通常の「ランチのNoism」にも再登板をお願いしたい気持ちでいっぱいです。皆さんも、カイさんの普段のランチ、興味ありますよね。カイさん、是非、覗かせてくださいね。

最後に、カイさんからもサポーターズの皆さまへのメッセージがございます。お読みください。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「Noismをご支援いただき、有難うございます。世界がこのパンデミックで格闘を繰り広げているさなか、皆さんはずっと私たちを支え続けて下さっています。公演も思うような回数は出来ない昨今ですが、じきに事態は収まるでしょう。私はそのときを楽しみにしています。そのとき皆さんとお会いすることを」

はい、「ランチのNoism」番外編もこれにておしまいです。お相手は今回も私、shinでした。それではまた。

(日本語訳+構成: shin)

『Duplex』新潟公演、ロングラン初日の幕が上がる♪

2020年1月22日(金)の新潟市、宙から降ってくるのは雪ではなく雨。それでも道路脇に高く固く積まれた雪の壁を融かすほどの雨量ではありません。正直、物足りない雨という感じでした。

しかしながら、18時半頃、りゅーとぴあ2Fの東玄関(新潟市音楽文化会館側)を入ったところに(距離を意識しつつ)集まってきた顔たちはどれも晴れ晴れとした笑顔ばかり。そう、この日は『Duplex』Noism0/Noism1新潟公演の初日。りゅーとぴあで全12公演、チケットはすべて「sold out」のロングランがスタートする日。皆さん、胸躍らせて駆けつけて来た訳です。

「密」を生み出さないために、4FのスタジオBへ上がっていくのも、券面に印刷された入場整理番号により、10人刻みで案内されます。勿論、一人ひとり、マスクの着用、検温に手指消毒等の感染拡大防止に向けた高い意識が求められることは言うまでもありません。私たちは自分たちが愛する芸術を守る責務もあるのです。

ところで、この2日前の1月20日(水)には、BSN新潟放送製作のドキュメンタリー「芸術の価値 舞踊家金森穣16年の闘い」が第75回文化庁芸術祭賞テレビ・ドキュメンタリー部門で大賞を受賞したことを記念して、同局が夜7時というゴールデンタイムでの再放送をしたばかりでした。それは通常ですと、新潟ローカルの人気番組『水曜見ナイト』の放送枠でもありましたから、多くの方がご覧になり、これまでにないくらいNoismへの関心が高まったと見え、放送後、りゅーとぴあの仁多見支配人のもとには「何故、チケットが手に入らないのか」との声が多数寄せられていると聞きました。しかし、「密」を避ける配慮から、座席が千鳥に割り振られたスタジオB公演の席数は、当初から各回ジャスト50席。それはそれで致し方のないことですが、これを機に私たちは一層強くNoismを待望しなければなりません。

で、公演についてですが、まだ初日を終えたばかりですので、多くは書きますまい。ネタバレもなしで、ごくごく簡単に。

Noism1が踊る森優貴さんの『Das Zimmer』と金森さん×Noism0の『残影の庭~Traces Garden』を併せて観るということが如何に贅沢なことであるかだけは書いておかねばなりません。この2作、ほとんど何から何まで異なる2作と言えるでしょう。世界初演『Das Zimmer』の35分と、先日の京都公演とも異なるという新潟ヴァージョンの『残影の庭~Traces Garden』35分。尺まで一緒なのに、休憩を挟んだだけで、同じ席にいながらにして、現出するまったく異なる時空に身を置く自分を体感することでしょう。その驚異に息をのむ私たち、僅か50人!

僅か50人で、その2作をすぐ目の前で息を詰めて見詰めることの興奮!その時間を贅沢と言わずして何と言えば良いのでしょうか。

その贅沢。そもそも劇場専属舞踊団というNoism Company Niigataの在りようが、「今」、この極めて困難な状況下でのロングラン公演を可能にしていることも忘れてはならない事実です。心身共に縮こまって、萎縮したようにして過ごす他なくなってしまった不自由な日常に穴を穿ち、大いなる解放が、非日常の感動がもたらされる35分×2であることに間違いはありません。

さあ、新潟公演の幕は上がりました。運良くチケットを手にされた方、圧倒される準備はできていますか。弛まぬ舞踊への献身が産み落とす果実を目撃し、心が共振する時間をお楽しみください。

(shin)

穂の国とよはし芸術劇場PLATへいきました♪(サポーター 公演感想)

☆実験舞踊vol.2『春の祭典』/『Fratres III』プレビュー公演(『Adagio Assai』含む)(@穂の国とよはし芸術劇場PLAT)

2020年12月12日(土)、Noism Company Niigata「春の祭典/FratresⅢ」を観に、穂の国とよはし芸術劇場PLATへ行きました。

豊橋駅から見た
「とよはし芸術劇場PLAT」。
駅から専用通路で直結しています。

豊橋は「愛・地球博」の際に乗り換えで駅を利用しただけで、街を訪れるのは初めてです。また、とよはし芸術劇場PLATについては、知り合いがこの劇場の特色でもあるアーティスト・イン・レジデンスで滞在制作活動をしたことがあり、「劇場スタッフが親切で市民とも交流できて良い環境だった」という話を聞いて、いつか来てみたいと思っていました。

豊橋には路面電車(豊橋鉄道)が走っています。

劇場に到着すると、地元の方に混じり、東京や新潟でよくお見かけする方々もいらっしゃいます。また、りゅーとぴあの仁多見支配人もロビーでにこやかに応対されていました。

とよはし芸術劇場PLATの主ホールは客席が傾斜に配置され舞台との距離が近く、舞台の高さがあまり高くない(椅子の座面の高さ程度)のが特徴と思います。それと客席がコンパクトな割に天井が高いです。ダンスや演劇にとても良い環境のように感じました。

当日のタイムスケジュール。

各演目の印象を簡単に述べます。「Adagio Assai」は、照明の効果で、井関さん山田さんの舞踊がより際立ってみえました。8月のプレビュー、9月のサラダ音楽祭と3回目の鑑賞ですが、よくよくみるとお二人の踊りはなかなか噛み合わず(もちろん意図的)、ただ別れのストーリーという受け取りではすまないようです。

「FratresⅢ」は「Adagio Assai」の暗転から続けて上演されました。中央でもがき苦しむ金森さんと、高い緊張状態が伝わる群舞。観る方も緊張感MAXのところで「※」が落ちてきます。これには毎回はっとさせられます。先日観たベジャール「M」の大量の桜吹雪が落ちて散るシーンが蘇り、あの時も同様の衝撃・感動でした。そしてふと思ったのが、サラダ音楽祭での「FratresⅢ」の名演は、都響との共演もさることながら、「※」の演出がない分、通常よりも出し気味にしていたのかな、と。

「春の祭典」は8月のプレビュー公演で観た際は全容が把握できず(いろいろ見落としているのでは)と思いましたが、再び観ることで前より深く感じることができました。数ある「春の祭典」の中でも、生け贄を選ぶ(というか押しつける)過程が陰湿で、いじめ問題のように、弱者をターゲットにすることで自分を守ろうとする希薄な集団性を思います。今回は新メンバーも加わり、この難曲を見事に演じていて素晴らしかったです。(準メンバーの樋浦さんが出演されていなかったのは残念でした。)

終演後は、会場中、大きな拍手でダンサーをたたえます。止まないカーテンコールにこたえ、客席から金森さんが登場しました。金森さんの着ているTシャツの背中にはかわいいイラストが描かれていました!(金森さんと井関さんでしょうか?)

終演後はすっかり暗くなっていました。
駅前にきれいなイルミネーションが!

「集団性」の難しさ、尊さ、危うさ、といったテーマが込められた今回のプレビュー公演。本公演ではどのように変化するのでしょうか(演る方も観る方も)。とても楽しみです。

(かずぼ)

揮発しゆく『春の祭典』(サポーター 公演感想)

☆実験舞踊vol.2『春の祭典』プレビュー公演(@りゅーとぴあ)

Noism Company Niigataの作品を見る時、今日的な状況に照応させて観てしまいがちなのは何故だろう。 公共空間でしか目にしないような長い椅子は白く、一人掛けの椅子の連結により作られていた。所在なさそうに、しかしそこに座らねばならないかのように一人、また一人と登場する。のっぺりと塗られた白い顔。纏われた白いシャツの身幅は広く、身体のラインを拾わない。膝上まで素足の身体が正面を向いて一列に座ると、没個性化した衣装ゆえに体格差という個性に目が向く。余剰の布は身体に遅延して皺を形成し、時に照明を半透過させた。

このNoism版『春の祭典』は、音の構造から舞踊を作る実験舞踊であり、ひとりの舞踊家がひとつの楽器を担う。しかし楽器の射影に留まらず、音楽と舞踊の相互作用により空間は充溢していく。図形楽譜という記譜法があるが、さらに三次元に拡張したコレオグラフィックノーテーションとも言うべきであろうか。楽譜は椅子の背の5本の線にも象徴されていた。

椅子は一直線に置かれて境界を成し、またランダムに置かれ、積み上げれられ、檻になり、円陣を形づくった。分断は随所にあり、翳りがちな表情の群衆の畏怖や脅威はざわめき、エコーチェンバー的に増幅していくようだった。奥から射す光に導かれる者、そうでない者。おそるおそる踏み出した者もあった。間断のない収縮と弛緩がなす震え、硬直的な身体、開かれたままの手のひらは不安な情動を接ぎ木したようでもあった。

『春の祭典』
撮影:村井勇

自己省察的表現は抑制的なトーンをもたらし、だが突如として野性的なものにも変容する。変容は不意に訪れ、揮発する。それは我々の裡にもあるものだ。舞踊は時間軸をもった揮発性芸術であり、それゆえいつかの私の感情をなぞるのかもしれない。『春の祭典』は美しさと、現在のアクチュアリティに満ちた刺激的な作品だった。

(のい)