何とも贅沢な7演目♪ Noism1メンバー振付公演、その最終公演を観る+α

2021年3月28日、小雨。Noism1メンバー振付公演は当初から予定されていた15時の回に加えて、12時の回が追加された日曜日。休憩を含めた公演時間が約100分であることから、演者は約1時間を挟んで、2公演を踊るというタフな日程でした。私は昨日に続いて、最終公演も観ることが出来ました。そして今思うのは、なんと贅沢な2日間だったのだろうということです。

昨日のブログに書いた知りたかった事柄につきましても、幸運にも訊くことができましたので、今日はそこから書き出すことに致します。まず、開演前のホワイエで、Noism1リハーサル監督/Noism0の山田勇気さんにお訊きしたのは、出演者はどう決めたのかということ。すると、演出振付を担当する者が使いたいメンバーを選んだのだという答えを得ました。続いて、創作はいつ頃から始まったのかという点については、幕間に、客席で一列後ろに座られていたNoism2リハーサル監督の浅海侑加さんに訊ねましたところ、「Noism0とNoism1の公演(「Duplex」)の前からちょこちょこと作っていた」と教えていただきました。ご参考まで。

それではここからは、7つの演目について、私の目にどう映じたか、どう感じたかなど記してみたいと思います。それらはどこまでも個人的なものですので、今回、ご覧になられた方からどう感じられたか、コメント欄に頂戴できましたら幸いです。

先ずは前半の4作品。

1『The Eclipse』(演出振付:チャーリー・リャン)
身に纏った白い衣裳から、古代ギリシアや古代ローマ、或いは神話的な世界観が横溢する作品。演者は女性2(鳥羽さんと西澤さん)、男性2(ジョフォアさんとチャーリーさん)。タイトルは日本語で「蝕」、古来、不吉とされてきた日蝕。演じるジョフォアさん繋がりで、フランス語的に解すると、太陽が男性名詞で、月は女性名詞。(因みに、ドイツ語では真逆になるのだが、今、それは措いておいてよかろう。)冒頭、月(鳥羽さん)を力強い両腕で吊り上げる太陽(ジョフォアさん)と、力なく四つん這いの太陽(チャーリーさん)に挑まんと進み出る月(西澤さん)、その対称から発し、様々にパワーバランスを遷移させながらも、最終的に、月が太陽を圧する様子「蝕」へと至る。最後、もがき苦しむことになるのは他でもなく、…。随所に登場する頭を押さえつける振りが印象的。また、『R.O.O.M.』を彷彿とさせる音楽も耳に残る。

2『life, time for a life time』(演出振付:カイ・トミオカ)
ゆったりしたピアノの調べからハードなジャズのドラムへ、更に、ボードビリアンとして立つ舞台を思わせる効果音や、極端に機械的にデフォルメされた雨だれの音(?)、そして艶やかな弦の響きへと音が移い、表情を変えるのに併せて、カイさんと渡部さんも脱ぎ着しながら、人生の異なる時間、あの時やらこの時やらを、ときに緩やかに、ときに激しく、あるときは神妙に、またあるときは諧謔味を帯びて通過していく。ラスト、床面で身体をくねらせて踊る渡部さんの片手に載せられた黄金色の丸皿、その安定振りへと収斂し、締め括られていくふたつの人生からの逸話。

3『3,2,1』(演出振付:スティーヴン・クィルダン)
向こう向きの池田さんと客席に向いたおかっぱ頭の樋浦さん。足を開き、やや腰を落とした姿勢で、ベートーヴェンの『月光』ソナタ第三楽章の激しいビートを刻む冒頭。その小気味良さ。ふたりの姿勢には『NINA』の趣も重なる。音楽が緩やかになると、長躯のカナール・ミラン・ハジメさんが、常に両手で両目を開きつつ、垂直軸を強調させながら登場。目に映じる3人の性別は終始、混沌としている。やがて、おかっぱのかつらは樋浦さんから池田さんに移り、衣裳も、何気ない生成りから、怪しく光を反射する縞模様を含むものに変わるだろう。それは性の多様性をグラデーションで象徴する「虹」を模したものか。

4『“うしろの正面”』(演出振付:中尾洸太)
椅子、仮面。明滅した挙げ句に消える明かり、暗転、プレイバックと両立不能なパラレルワールド。上着、仮面、ナイフ、血塗られた赤の照明。スキータ・デイヴィス『The End of the World』は、悲劇的にすれ違う男女(林田さんと杉野さん)の惨劇を予告する。冒頭の椅子は、事切れた女のむごたらしい亡骸を載せ、ついで、そこに何事もなかったかのように男が腰掛けると、明滅する明かりの下、何やらメモをとる、その姿の不気味さ…。禍々しい題材ながら、森優貴さんの『Das Zimmer』で性別違和を踊った林田さん、その「越境」する色気零れるターンには今回も見とれた。

15分の休憩を挟んで、後半。

5『Flight From The City』(演出振付:林田海里)
スタンド照明がひとつだけで、周囲は闇。鳥羽さん(黒に見える濃紺)と西澤さん(白)によって展開される禁断の「百合」世界。なんと蠱惑的なのだろう。2016年冬にNoism2で『ÉTUDE』を踊った中にいたふたりが更にその先を踊る。別離の予感に満ち、哀調を帯びた調べが繰り返されるうちに、徐々にノイズが入り込んでくると、もう心も身体も抑制が利かない。お互いを求め、身体が縺れ合う、その官能性。一度目に明かりを消した闇のなかで、声にならない叫びを発した鳥羽さんは、ラスト、唇を重ね合わせたのち、今度も再び自ら明かりを消す…。そこに至るまで、夢幻のように、行き場を持たない蒼い時が切なくも美しい。

6『Kol Nidrei』(演出振付:三好綾音)
伸ばした手はかわされ、支えた足は払われる。求めても得られない思い、預ける身体は受け止められることなく、地に伏すしかない。そして拒絶は反復される、幾度も。それでもなお、慈しみ、与える。与えつつ、求める。より大きな何かを。舞台中央奥に一筋束ねられた布はより大きな何かの象徴か。バラバラな衣裳の5人がその末端を手に取る。すると、布は広がり、白と黒、斑のグラデーションを示す。善悪、或いは清濁を併せ持つかのように。手を離すと、布はしぼみ、スポット照明があたるなか、ひとり舞台に残った三好さんの姿と一体化する。あたかも「希望」ででもあるかのように光る布だけが残る…。

7『On the surface, there you lie.』(演出振付:ジョフォア・ポプラヴスキー)
カイさんと中村さんのペアも、中尾さんも、細かい位置こそ違え、顔の左側に黒い痣をつけている。それは何かのトラウマの表象。青い光の下、表現される怖れと慄き、或いは意を決して向き合おうとする姿と逆にそれを押しとどめようとする振る舞い、葛藤。それら結果としての3人の「表層」がアクティング・エリアに交錯するうち、その外部に恐れと慄きの源泉である不可視の「対象」或いは「深層」が現出してくるさまは圧巻だった。ラスト、中村さんによるカイさんへの過剰な制止はもはや「制止」の身振りを遙かに逸脱し、自らのトラウマの投影として、見詰める目に痛々しく突き刺さるよりなかった。

以上、雑感でした。あくまで個人的な…。

7つの演目、全て見応えがありましたから、何と贅沢な公演だったことでしょう。追加公演を入れても、たった3回の上演とは勿体ない、勿体ない。まだまだ何回も観たい、そう思いました。ご覧になられた方は幸せでしたね。まさに至福の週末♪一方で、観る機会に恵まれなかった方も多くいらっしゃった訳ですから、機会を設けて、また見せて欲しい、心底そう思いました。

さて、こちらも昨日からの続きとなりますが、6F展望ラウンジの「RYUTOPIA INFO BOX」について、(またしても思わせぶりな)若干の補足です。

「舞踊」分野、Noism的には、この6つが展示されています。(因みに途中の「28番」は「演劇」分野の展示となります。)実際の展示品につきましてはご自分の目で直に見られるのがよいかと思います。悪しからず。

それでは今日はこのへんで失礼します。

(shin)

また違った魅力に浸る、Noism1メンバー振付公演(初日)♪+α

2021年3月27日の新潟市は、曇天で、兆す春もやや控えめ、暖かさもいまひとつといった土曜日。その17時、りゅーとぴあのスタジオBでNoism1メンバー振付公演の初日を観てきました。

久し振りのメンバー振付公演です。しかも早々に完売となってしまった今回の公演。Noism1メンバーのうち7名が振り付けた作品が観られるということ以外は何もわからず、どんな感じかと胸を躍らせてりゅーとぴあを目指しました。

公演の詳細は下の画像をご覧下さい。

7つの演目はそれぞれ10分内外の作品で、演出振付と出演は以下の通りです。

1『The Eclipse』演出振付:チャーリー・リャン、出演:ジョフォア・ポプラヴスキー、チャーリー・リャン、鳥羽絢美西澤真耶

2『life, time for a life time』演出振付:カイ・トミオカ、出演:カイ・トミオカ、渡部梨乃

3『3,2,1』演出振付:スティーヴン・クィルダン、出演:樋浦瞳、池田穂乃香、カナール・ミラン・ハジメ (*タイトルについてですが、冒頭、「さん、に、いち」という音声が聞こえました。)

4『“うしろの正面”』演出振付:中尾洸太、出演:林田海里、杉田可林

5『Flight From The City』演出振付:林田海里、出演:鳥羽絢美、西澤真耶

6『Kol Nidrei』演出振付:三好綾音、出演:スティーヴン・クィルダン、三好綾音、杉野可林、坪田光、土屋景衣子

7『On the surface, there you lie.』演出振付:ジョフォア・ポプラヴスキー、出演:カイ・トミオカ、中尾洸太、中村友美

全て観終えてまず感じたことは、最近、多方面で露出が増し、とみに注目を集めている感のあるNoismにあって、その本体の活動とは別に、これらを創作することはなかなか大変だったのではないかということでした。いったいいつ、どのくらいの時間をかけて創作されたものなのでしょうか。そして、出演者はどうやって決めたのかってこともちょっと訊いてみたいですね。

それぞれの作品が、演出振付にあたったメンバーの普段とはまた違った一面を見せてくれて、とても興味深かったですし、様々なテイストを具現化するダンサーたちの熱演はまったく見飽きることがなく、あっという間に観終えてしまった、そんな感じでした。

また、手にしたプログラムには、それぞれ作品毎に演出振付を担当したメンバーの言葉が掲載されていましたので、幕間に少し明るくなると、「次はどんな作品だろう」「誰が踊るのだろう」と、客席のどこからもプログラムを手に取る際に生じる、紙が擦れる音が聞こえてくるのも印象的でした。

7人のメンバーによる7つの作品。バラエティ豊かな力作・力演揃いで、必ずそのなかにあなたの好きな作品が見つかるでしょう。因みに、私の好みはと言えば、…おっと、今は内緒です。

明日は追加発売された公演とあわせて2公演の日。メンバーたちはさぞかし大変でしょうが、観客としては、期待値をあげにあげても、決して裏切られることなどないと保証しましょう。どうぞお楽しみに♪

*各作品について私が抱いた印象は翌3/28付けの記事をご覧下さい。

ところで、時間前にりゅーとぴあに着いたので、珈琲でも飲もうと、6F展望ラウンジ(旬彩・柳葉亭)にあがったら、嬉しい驚きがありました。りゅーとぴあを訪れたなら是非見て欲しいものがひとつ増えたと言いましょう。それは6F壁面に設置された「RYUTOPIA INFO BOX」というコーナーです。皆さん、ご存知でしたか。

「りゅーとぴあに眠る宝物を集めました」の言葉通り、「音楽」「古典」「演劇」「舞踊」、併せて30を超す、様々興味深い品々が展示されています。『Fratres』のあの場面がフィーチャーされた「舞踊」コーナーには、勿論、Noism関連の「お宝」が6つ並び、目を惹きます。

あれとかこれとか、ハンディな解説入りで展示されていますから、先ずは必見ですね。で、何が並んでいるかと言いますと、…おっと、ご自分の目でご覧になるのが一番ですね。お楽しみに♪

という訳で、今回のブログはまだまだ書かない方が良いものが多く、なんとも思わせぶりなものとなってしまいました。スミマセンです。(汗)+(笑)

(shin)