Noism「春の祭典」埼玉公演の千秋楽へ行ってきました♪(サポーター 公演感想)

☆ストラヴィンスキー没後50年 Noism0+Noism1+Noism2『春の祭典』(2021/7/25@彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉)

青い空と白い雲というまさに夏真っ盛りの天気の中、Noism「春の祭典」埼玉公演の千秋楽へ行ってきました。

青空と夏の雲と「春の祭典」の大看板
大ホールへ向かう大階段
空が気になる日でした。

本日は新型ウイルス禍なしては大盛況で、1階席だけでは収まりきらず2階席も解放していました。
客席には東京バレエ団の方もいらっしゃったようです。11月に金森さん演出振付のバレエ「かぐや姫」が初演されますが、そちらも楽しみです。
Noismの客席はいつでもどこでも静かですが(何故?)、このような情勢下では安心感がありますね。

開始のベルからしばらくして客席が暗くなり「夏の名残のバラ」が始まりました。井関さんの美しい踊りも素敵ですが、アップで映し出される人形のような顔も強烈な印象があります。
この作品の着想は恒例の篠山紀信さんによるフォトコールのように思いますが、私はカメラマン(山田勇気さん)の佇まいが好きです。

「BOLERO 2020」は映像作品。これまで何回も観ていますが、大画面でみると視点が変わりますし、何より劇場のスピーカーで聴けるので音響が素晴らしいです(演奏者の咳まで録音されていることに気づきました)。
私自身も最近になりZOOM会議の機会が増え(会議メンバーが突然踊り出したら面白いだろうな)、と思いながら観ました。

すかさず幕が上がり「FratresⅢ」が始まります。「Fratres」シリーズはずっと観続けてきましたが、Ⅲになってやっと(これはベジャールの「ボレロ」だ)と思うようになりました。どうやら今ツアー以降の上演は未定のようですが、折々に上演してもらいたい作品です。

休憩の後は「春の祭典」。メンバー総出演の舞台はこれまでも劇的舞踊シリーズでありましたが、全員が一斉に舞台上で踊るのは初めてではないでしょうか。
金森さんが語る(音楽の可視化)、冒頭はそれぞれダンサーが楽器を分担している事がはっきり認識できますが、徐々にその分担ルールは緩やかになり、次第にひとつの音楽としての大きな動きと共にストーリー性を持って進んで行きます。
私自身は舞踊をしないせいか、舞踊を観る際に無意識に表情を追いがちになります。Noism版「春の祭典」は病人風メイクとボサボサの髪により、表情が分かり辛く、プレビュー公演時は正直面食らったのを覚えています。
一見すると見にくいことも現代を表すために敢えて用いているのでしょうし、実際ダンサー全員が「春の祭典」の住人になりきっていて圧巻でした。

カーテンコールでは鳴り止まない拍手と増えていくスタンディング。昨日は後ろの席で躊躇してしまいましたが、今日は私もピシッと立ち上がりました!
直前にみたオリンピック表彰式で、無観客のためその場にいる選手・関係者が一生懸命メダリストを称賛する姿に感銘を受け、私も良いものはきちんと称賛したいと思いました。

さあ、あとは札幌の大千秋楽を残すのみです。気になるメンバーの去就も明らかになっているかもしれません。私もワクチンの副反応次第ですが、可能な限り見届けたいと思います。

おまけ…与野本町駅構内にツバメの巣。乗降客や放送の音がすると「親が来た」と思って口をあけて鳴き始めます。

(かずぼ)

心に響くもの(サポーター 公演感想)

☆ストラヴィンスキー没後50年 Noism0+Noism1+Noism2『春の祭典』(2021/7/24@彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉)

私の初日となった、さいたま2日め。
タイトルは『春の祭典』だけど、4作品をたっぷりと。

どれも全くの初見ではないので、あの時はあんな印象を受けたなぁ…とか、あの時の自分はあんな状態だったなぁ…とか、うっすらと思い出しながら、ゆっくりと作品世界に入ってゆく感じ。

もう1年以上、多くの人たちが孤独と向きあい、胸に祈りをいだき続けている。
Noismの舞台も、様々な姿をした孤独と、祈りに満ちている。そして、(単純ではないけれど)希望もまた。
見る人によって、見る時によって、心に響くものは変わるだろう。

さいたま千秋楽は、私も千秋楽。
どうぞつつがなく。

(うどん)

劇場外のポスター
おまけ…与野本町駅前、真夏のお疲れ気味のバラ

「5-7月のNoism と私」(サポーター感想)

☆「市民のためのオープンクラス」・『春の祭典』新潟公演 ・ Noism Summer School2021

前シーズンのオープンクラスは申し込みに出遅れて受けられないクラスがあったので、今回はメール受付日に日付が変わると同時に送信した。我ながら大変な意気込みだ。

体験が経験に変わりつつあるのを実感しているのが、浅海侑加先生とNoism2メンバー総出の「Noismバレエ体験(初級)」だ。回数を重ねるとこちらも指導する方も慣れる。

参加者のカラーが毎回違うのもこのクラスの特徴。明らかにほとんどが経験者という時やら、いろんなレベル、バックグラウンドの人たち混在の時やら。

すばらしいと思うのは、回を追うごとにレッスン内容がどのレベルの人が来ても満足できる方向に行っている事。動きが複雑になりすぎないよう、長くなりすぎないようになっている。初心者はマネをしやすく、更にレベルアップしたい経験者は基本的なポーズ、動きに磨きをかけられる。 Noismバレエはクラシックが根底にあるが、基本となる腕の位置や角度などに違いがあるので、スタジオBに来たらこう動く!というのが身に付くまでどのくらいかかるやら…
出来るだけ長く通い続けて身体に染み込ませてカッコよく踊りたいものだ。

5/9初めてのバレエ中級。鳥羽絢美、西澤真耶先生。経験5年以上が対象なのでそれっぽいお姉さん方がほとんど。お手本になりそうな方の近くのバーにさりげなく陣取る。フロアになってからもコンクールに出そうな大きく踊る人の斜め後ろに位置取り。その人に頑張ってついて行った。
でも楽しかった!初級はNoismバレエの基本をキチンと身に付けたいのでポジション等に気を使うのだが、中級は「もうやったれ!」とばかり大きく踊り、ピルエットダブルも勢いで回る。

5月9日のレパートリー中級クラスは『BOLERO 2020』終盤のユニゾンでした。長さにすると1分ちょっとなのだがギッシリ詰まっているわ展開は速いわ…「踊ってみた」どころではない。「マネしてみた」にもならない。他の参加者さんたちは表現はともかく少なくともマネしてついていってるように見えたので気弱になってしまい、終わってからジョフォア先生に「今回は難しかった。ちょっと恥ずかしかっ…」言い終わる前に一喝「恥ずかしくない!!」反射的に「恥ずかしくない!恥ずかしくない!」と叫んだ私。

そうです。弟子が弱気になった時の迷いの無い師の一喝。これは大事です。勇気づけられました。これからも出来るだけ出席してコンテンポラリーに慣れたいです!

「今やったのはダンス以前のことなんです」
5月23日のからだワークショップの後で勇気先生とお話をした。
最初は自分の体をさすったり叩いたり、関節ごとに動かしたりして目覚めさせ、次は2人ひと組で向かい合って見覚えのあるあの動きを…

「これ、アレですよね?」「そう。アレです」先生と目で会話。『Adagio Assai』の冒頭の動き。相手と目を合わせ、自然に連動して動く。初対面の相手なのではじめはぎごちなかったりするが、だんだん角が取れて行く。仕掛けたり仕掛けられたりするうちにどっちがリードしているのか分からない状態まで行く。そしてより自由に動いて行く。
終盤は風に乗ってあちこち飛び回る。相手もどんどん変えて行ってその場の雰囲気に浸って自分を解放する。「無礼講」に近い感じである。

先生のクラスは最初から柔らかい空気が流れているのだが、終わる頃にはすっかりスタジオBが温かく練れた感じに出来上がっていました。
みんなお友達状態で、楽しかったですね!とあちらこちらで笑い合う。

マスクをしていてちょうど良かった。日本人は目を合わせるのが苦手だし気恥ずかしい。簡単には心を開けない。顔が全開だったらここまでたどり着けなかったのでは、と思う。かと言ってフルフェイス仮面をつけたとしたら、とてつも無くアヤシい雰囲気になるだろうし…
怪我の功名ならぬ、マスクの功名でした。

JAZZのジャムセッションに似ている。決め事をする時もしない時もある。まず誰かが動く。それに他の者が合わせて行き、進むに従ってリードする者が移り変わって行く。そして全体としてのグルーヴが形成されて行く。
その時の場所、メンバーの組み合わせ、お互いの技量そしてそれを測る能力等によって毎回違うものができる。一期一会。
もちろんこれは極めてうまく行ったケースです。いつもみんなが満足できるとは限りません。
楽器という道具を使うので、身一つでやる身体表現よりも自分をさらけ出しにくいかもしれない。

今回の私のオープンクラスは、6月に申し込んだ2クラスをキャンセルしなければなくなったので5/30のバレエ初級で最後となった。
ワクチン接種の副反応(と自分の中で確信している)の目まいが長引いたのだ。
何があるかわからないので皆様ご注意を!

Noismバレエ(中級)
撮影:遠藤龍
Noismレパートリー(中級)
撮影:遠藤龍

回復途上でフラつきながら行ったシネウインドのボレロ上映会と公開リハ。
そしてほぼ回復して待望の公演。今回は初めてツレアイを誘った。満を持して、と言う感じ。演目もベジャールゆかりの有名曲だし、「他の2曲もすごいよ!オススメだよ!」と推した。
とても感動しておりました。次回も行きたいそうです。良い意味でこなれて一般受けするようになったからだと思います。各演目、ストーリーが想像しやすいし、『春の祭典』のアグレッシブさが印象的だったそうです。

7/2は2人で行き、7/4千秋楽は1人で最前列で観た。
『夏の名残のバラ』寄り添って見える時もあるが、執拗に執拗にダンサー(女優にも見える)を追うカメラ。あり得ないような角度からも時には残酷に写し出す。冒頭の鏡に向かって舞台化粧するシーンと繋がる。デュエットではあるが、ソロのように思えた。カメラは己れを客観視する自分自身。プロフェッショナルはそれをしなければならない運命にある。孤高の存在。
『Fratres III』の金森さんにもそれを感じる。他の人々がフードで身を守るのに対し、生身で試練を受けるストイックさ。自分自身に対する厳しさが見える。それでなければ他に対して厳しく接することは出来ない。
『BOLERO 2020』最前列だと全体が非常に見にくいので、今までみてない部分にフォーカスして観ることが出来た。いつか機会があればクラスでメタメタだったユニゾン部分のリベンジをしたいものだ。
そして『春の祭典』毎回変わっていく演出に、作品は生き物だ!と実感した。進化し、よりわかりやすくなっていると思った。皆さんのテーピングと汗…カラダを張っているから観客は感動出来るのですね。音楽そのものもエキサイティング。今回特に印象的だったのが「金管楽器って野蛮だ。打楽器よりもバイオレンスだ!」スクラップアンドビルド。
いつもより更に熱い公演でした。

映像舞踊『BOLERO 2020』
撮影:篠山紀信

そして私にとって今シーズン最後のイベント、「サマースクール」
毎年行われる舞踊家のための集中講座。2年前は見学だけさせていただいたが、今年は選考が通り参加する事ができた。Noismメソッド、バレエ、レパートリーの3クラス×5日なのだが1クラスのみの受講も可という事なので、メソッドを7月7日と9日に受けることにした。市民のためのオープンクラスは基本「体験」なので、継続していくつもりであればやはり一番根底にあるメソッドをやらなければと思ったのだ。

Noism Summer School 2021
Noismメソッド
撮影:遠藤龍
Noism Summer School 2021
Noismバレエ
撮影:遠藤龍
Noism Summer School 2021
Noismレパートリー
撮影:遠藤龍

今まで作品を観続けて来たが、こういうのに基づいて作られていたのか!というのが少し分かった気がした。レパートリークラスで踊りの一部分をやるというのも楽しいし意味があるのだが、私は不器用なので、コンセプトや基本的な動きが身体に浸透しないと不完全なマネも出来ず終わってしまう可能性大なのだ。

今回メソッドをほんの少しかじっただけだが、これからもいろんなクラスを出来るだけ受けて、スタジオBにいる時はNoism3、いや4?…… Noism24くらいのレベルにはなりたいな。
『Fratres』の蹲踞の姿勢からの、正座からの、膝立ちからの一連の動き等々。本当に地味で有意義でキツ~いクラスであった。でも大きな収穫があった。オープンクラスのからだワークショップと繋がったのだ。

Noism Summer School 2021
Noismメソッドでの山田勇気さん
撮影:遠藤龍

山田勇気先生、
ありがとうございました!
他の先生方にも感謝です!
次のシーズンも楽しみにしています。

(たーしゃ)

『春の祭典』、感動の新潟公演楽日の締めは金森さん相手のサプライズ♪

*この度の東海や関東を襲った豪雨とそれに伴う水の被害に遭われた方々に心よりお見舞いを申し上げます。

2021年7月4日(日)、『春の祭典』本公演の新潟楽日は舞踊家たちの入魂の熱演により、本当に感動的な舞台を観ることが出来ました。

バルコニー席にも一部、観客を入れるなど、この日の劇場はほぼ満席。埋め尽くされた客席から湧き上がる感動を伝える拍手は音量が違っていました。発声が止められているなら、もう本気で叩くしかありませんものね。そして、本気で叩かなければ済まないような舞台が続いたのですから、当然と言えば当然だった訳ですが。

新潟での全3公演をすべて観たのですが、この日は、新潟での見納めという思いを抜きにしても、どの演目も、その演目の持ち味が際立つ見事な舞踊が展開され、それを見逃すまいと目を皿にして見詰めるうちに、涙腺が決壊しそうになったり、鳥肌が立ったり、気持ちを煽られたりと大忙しで、感情の振り幅の大きさに身を浸し、その時間を堪能しました。

ここからはタイトルに含ませた金森さん相手のサプライズについて書くことに致します。この日の観客は劇場に足を踏み入れた時点で、全員ある計画の「共犯者」となり、その時を待っていたことになります。正確には、入場時、手渡されたプログラム、チラシの束の、その一番上に一枚、見慣れない「紫」の紙片を目にしたときからです。

「紫」色の紙片は「confidential(極秘)」
(「紫」の再現性がいまいちでスミマセン。)

「黒幕」は紛れもなく芸術副監督。知らないのは金森さんただひとりらしく、みんなが「ぐる」という「ミッション」は、もう完全な「うっしっし」状態で、心が躍りました。

そして、やがて、最後の演目『春の祭典』が客席を大きな感動に包んで、その幕が下りる時が来ます。客席からは、いつもの如く、否、いつも以上に大きな拍手とスタンディングオベーションが舞台に贈られました。とりあえず、新潟の3公演を踊り終えた舞踊家たちは前日までとは違ったリラックスした表情を浮かべています。その列に金森さんと井本さんが加わるのもこれまで通りです。もう会場中の誰もが笑顔で手を叩いている図になり、カーテンコールが繰り返されていきます。その笑顔はいつしか、「へまをしてはいけない」と自らに言い聞かせつつ、今か今かと「実行」の合図を待つ「ほくそ笑み」の要素が大きくなっていった筈です。たったひとりを除いて。

あれは何という曲なのでしょう、遂に、祝祭感に満ちた晴れやかな音楽が流れてきました。観客は一斉に「紫」の紙を掲げ、舞台上の舞踊家は金森さんの方に向き直っての拍手に変わり、場内の全員による紫綬褒章受章を祝う時間となりました。全ての視線は金森さんひとりに集中します。上方からはキラキラした紙片が舞い落ちてきます。場内の誰もがそれ迄に倍する笑顔に変わりました。事態が飲み込めず、キョトンとし、いつになくキョロキョロするたったひとりを除いて。

「6歳で踊り始めた穣さん、46歳で紫綬褒章受章。おめでとうございます」マイクを握った井関さんから、コロナ禍で授章式が中止となった状況下、「みんなでお祝いを」と、このサプライズの趣旨が話されたのですが、さすがは「大人の事情」に強い井関さん、一緒に暮らしていても感づかれたりすることなしにこの時を迎えられたようです。

『Fratres』のように容赦なくではありませんが、キラキラする紙片が舞い落ち続けるなか、『春の祭典』第一部後半のようにメンズとガールズに分かれた舞踊家たち。メンズが金森さんの長躯を掲げて、その下で騎馬を組むと、舞台シモ手袖からはNoism2リハーサル監督・浅海侑加さんを担ぐガールズの騎馬が登場。浅海さんの両手には大きな花束が抱えられていて、大喝采のなか、金森さんに贈られました。

「こんなの、Noismを17年間引っ張ってきて初めて」、更に「一生の思い出になりました。その思い出を多くの皆さんと共有できて本当に幸せです。…このような大変な時期に、こんなにも劇場に来て貰って」と感謝の言葉を口にした金森さん。その場の雰囲気を「引退式みたい」と表したときには、会場中から大きな笑い声があがり、すかさず、「まだまだ踊りたいですし…」と続けると、更に万雷の拍手が贈られました。観客もひとり残らず、この「サプライズ」に加われたことを喜んだ筈です。

豪華4演目と、その後、コンプリートしたミッションに、劇場はこの上ないくらいの幸福な一体感に包まれていました。お陰で、通常なら、楽日の終演後には必ず抱く「Noismロス」とも無縁で帰路につくことができた程です。この日の観客も一生、このお祝いのことは忘れないだろう、そんな確信をもってりゅーとぴあを後にしたような次第です。

さあ、『春の祭典』本公演、次は7月下旬の埼玉公演(7/23~25)、札幌公演(7/31)です。同地のお客様、感動の4演目、満を持して登場です。期待MAXで、今暫くお待ちください。

(shin)

『春の祭典』完成形に新たに照明が追加され、見違えた新潟公演中日に思う

2021年7月3日、前日の衝撃の余韻を完全には鎮めきれないままの土曜日。気を許すと、口をついて出てくるのは、「いやぁ、凄かった」みたいな断片的な語彙のみで、それというのも、昨年のプレビュー公演で観ていたものとは迫力、訴求力に格段の違いがある『春の祭典』完成形を目にし、打ちのめされていたことによるものでした。で、連れ合いやNoism仲間には、戯れに、或いは、少しは気の利いたジョークのつもりで、「金森さん、また何か変えてきたりしてね」など軽口を叩きながら、新潟公演中日の公演を待っていたのでした。

開演前のホワイエでは、久し振りに見掛ける知人、友人のところに寄って行って挨拶を済ますと、その後、「凄かったですよ、昨日」など、いったい何人に言ったことでしょう。そう口にすることで、自らの期待値のハードルを上げていることも自覚しています。初めてでも、そうでなくても、金森さんとNoismの舞台に向き合うとき、油断などゆめゆめ許されることではないのです。常に「超えてくる」希有な存在なのですから。

そして、果たしてこの日も金森さんは『春の祭典』で仕掛けてきていました。前日とは明らかに違っていたのは照明でした。ある箇所に追加された照明は禍々しさたっぷりの色味で、一目見ただけで不安感を掻き立てられ、すっかり目に焼き付いてしまって、うなされそうなほどのインパクトを有していました。改めて、「追い求める人」金森さんに「これでよし」はないのだと念押しされたような塩梅でした。

そうした、終わりのない「改変」の可能性も含めて、複数回の鑑賞に耐える、否、一回では把握しきれない深み、或いは豊穣さ、それがNoism公演の魅力のひとつであることに異を唱える人はいないでしょう。要は、Noismに対して自分の人生からどれだけの時間を割り当てるか、ということに収斂する、生き方の選択(という表現が大袈裟に過ぎると言うのなら、時間の使い方)の問題なのです。深く、豊穣な芸術を相手にするのなら、たとえ一度の機会でも心に大きな何かが残ることは間違いありません。でも、そこからまた、何回でも浸りたくなって、自らの有限な時間を費やすことで、その都度、生々しい体験が約束されるのが芸術、それも優れた芸術なのではなかったでしょうか。(自らの人生からいくばくかの時間を削り出して、それを芸術に委ね、そのリターン大なるを期待して、裏切られず、豊かな時間を過ごし得ること。)Noismはその点で、間違いなく、そうした美質を備えた舞踊団なのだと言い切りたいと思います。新潟中日の公演でもまざまざ実感させられた事柄でした。

前日は3列目(最前列)中央の席から、この日は11列目中央から観たのですが、見え方の違いを堪能できました。複数回観るのでしたら、席を変えて観るのが良いですよね。楽しみ方が変わります。

で、この日も、最後のカーテンコール時、前日同様、金森さんと井本さんが加わった舞踊家たちに、割れんばかりの拍手とスタンディングオベーションが贈られ、舞台上からも客席に向けて拍手で応じる場面に出会えました。

有難いことに、明日、新潟公演楽日も観ることができそうです。ですから、今から、明日は何を発見できるだろうかと胸は大いに高鳴るのですが、同時に、もう既に、(一足も二足も早く、)明日を観終えて後の「Noismロス」も予感しちゃったりして、何やら複雑な心持ちに傾き始めたりもしています。まだ明日の公演があるというのに…。げにNoism、まったく困った存在なのです。

さあ、新潟公演も残すはあと1日のみ。まだご覧になってない方も、既にご覧になった方も、こぞって劇場へ!明日の皆さんの時間を費やす価値MAXの舞台がご覧になれますから。

(shin)

名作と話題作と感動作に衝撃作!待ちに待った『春の祭典』本公演は驚きの超弩級!

2021年7月2日(金)の新潟市は実に蒸し暑い一日でした。

6F旬彩柳葉亭から窓外を望む

りゅーとぴあに運ぶ私たちの心も待ちに待った期待値の高さから更に熱かった訳ですが、それを更に更に超えていってしまったのが、この日の『春の祭典』本公演初日の舞台。結論、もう、金森穣とNoism Company Niigata、ホントに恐るべしです。

もう既に、何も書かぬままに、上に「結論」としてしまいましたが、それは本心。この超弩級の舞台を見せつけられてしまったら、それを語ろうにも、言葉など如何に陳腐で空疎なものにならざるを得ないか、そんな圧倒的な事実に直面する以外ないからです。

ネタバレはなしに書きますが、それを完全に徹底しようとするなら、演目の順序を告げる上の画像も本来、明かすべきではないのでしょう。馥郁たる「名作」の至芸に胸を焦がし、異色の「話題作」の細部に見入り、崇高な「感動作」に涙腺を直撃され、ストラヴィンスキーがリアルに降臨したかのような「衝撃作」に組み伏せられる超弩級のプログラム。4作品の折り紙付きの素晴らしさのみならず、その「繋ぎ」の見事さにまで息を呑むことになるのは金森さんの美意識あればこそ。待っていました、劇場が産み落とすこの非日常の豊かさ。瞬きするのも惜しいほど、一瞬たりとも無駄にしたくない濃密な時間…。

…観ているあいだ、こちらの身体も途方もなく火照り、奇妙に汗ばんだことも書き記しておきます。

そして、最後の演目『春の祭典』が終わったとき、舞台上で、肩を上下させながら、大きく口を開けて、最大限、息を吸い込もうとする舞踊家たちの例外なく苦しそうな顔、また顔。観客の視線の「生け贄」と化し、全てを振り絞って踊った者たちにとっては、劇場内に響き渡る拍手が如何に大きかろうと、耳がそれを受容する以前に、身体は正直で、まずは酸素を欲しないではいられない、そんな感じが伝わる険しい表情たち。その苦悶が舞踊家の渾身を雄弁に物語り、拍手は更に大きなものになっていきます。やがて、ひとりまたひとりと漸くにして表情が緩み、そうしてカーテンコールを繰り返すうち、舞踊家たちの列に笑顔の金森さんが加わった訳ですから、スタンディングオベーションの波が広がっていったことに何の不思議さもあろう筈がありません。いつしか、踊った者と見詰めた者の間に一体感が生まれ、舞踊家たちも客席に向けて拍手を返してくれたとき、初日の多幸感は頂点に達しました…。

とにかく物凄い舞台です。浸って観ているあいだも、観終えてからも、私(たち)は劇場が提供するこんな非日常を待っていたのだと実感できました。その実感、今度はあなたも♪

ストラヴィンスキー没後50年 Noism0+Noism1+Noism2 『春の祭典』、この上なく贅沢で、もう「必見」以外の何物でもありません!

(shin)

『BOLERO 2020』特別上映と井関さんのトークを堪能♪ (@新潟市民映画館シネ・ウインド)

汗ばむような晴天の2021年6月5日(土)、期せずして同様に「2020」なる年号をその冠に据えた、さるスポーツイヴェントへの灯火運搬継走が実施された新潟市。交通規制の影響やら駐車場の混雑やらがあると嫌だなと思い、早々に万代界隈に入って迎えた新潟市民映画館シネ・ウインドでのNoism映像舞踊『BOLERO 2020』特別上映プラス井関さんのトークイヴェント。さしたる混乱もなく移動できてホッといたしました。

全席完売のこの日、トークの司会を担当される久志田渉さん(さわさわ会副会長)の「混雑を避けるために早めに発券を済ませて下さい」の言葉に従ってチケットを手にして入場時間を待っていると、続々見知った顔がやって来て、シネ・ウインドがりゅーとぴあと化したかのようで、いつものミニシアターとは異なる雰囲気に包まれていきました。

予告編上映なしで、定刻の17:30に、徐々に館内が暗くなると、Noism映像舞踊『BOLERO 2020』の上映が始まりました。そこからの16分弱、これまで幾度となく様々な端末で覗き込むようにして観てきた映像舞踊が、映画館のスクリーンに投影されてみると、まるで新鮮な体験そのものであることに驚きました。大きく映る分、誰を観るか、どこに目をやるかを選択しながら意識的に観る感覚もこれまでにないものでした。また、終盤、モノクロも混じってくる箇所では『ニューシネマ・パラダイス』(ジュゼッペ・トルナトーレ)クライマックスのモンタージュシーンのような趣を感じたのですが、それもこの日の新たな肌合いでした。あくまで個人的な感想ですけど…。

ラヴェルが作り出す高揚感の極みのうちに、上映が終わると、大きな拍手が沸き起こり、それは途切れることなくエンドクレジットの最後まで続きました。個人的に、映画のスクリーンに向かって拍手したのは『シン・ゴジラ』(庵野秀明)の「発声可能上映」のとき以来2度目のことでしたが、そこは「りゅーとぴあ化」したシネ・ウインドですから当然と言えば当然ですよね。

で、終映後、ほどなくして井関さんのトークイヴェントに移行しました。

以下、久志田さんの仕切りで井関さんが語った内容を中心に紹介していこうと思います。

『BOLERO 2020』のクリエイション: コロナ禍の昨年のこの時期作っていた。『春の祭典』公演がキャンセルとなり、ポッカリ空いた時間。舞踊家には踊り続ける必要があり、忘れられたらおしまいという思いもあった。突然作ることになり、『春の祭典』と同時進行で、2週間くらいで仕上げたもの。金森さんは数年前から「ボレロ、ボレロ」と言っていたこともあって、ベジャール版はあまり意識することもなかった。当初からそこにカメラがあり、他者の視線の象徴としてカメラは必然だった。

『BOLERO 2020』の撮影: 当初はメンバーの自宅で撮影する案だったが、メンバーが強く拒否。なかには「東京に住んでいます」などと見え透いた嘘をつく者(「香港人」!)まで出るほど。(笑)で、SWEET HOME STORE TOYANO店の協力を得て、撮影できることになったが、撮影できるのは定休日の1日かぎり。それも窓外からの自然光が変わってしまう19時には撮了する必要があった。9時に井関さんの撮影から始まり、一人あたりMAX45分でいかないと12人は撮れないタイトさ。みんな本当にパニックで、祈るような気持ちだったが、撮影を終えたメンバーがカメラの後ろでカウントを打したり協力して一発撮りを乗り切った。編集(遠藤龍さん)も大変だった筈。細かく音を覚えている必要があり、「第2のダンサー」と言える。

『BOLERO 2020』がもつ別の可能性: いつか生で観て欲しい。映っていないところでやっていることもあるので、一人ひとり全ての映像も観て欲しい。「きっと生でも…」、意味深な様子で大きく眉を動かしながらそう繰り返した井関さん。スタジオでも全員一緒に踊ったことがあるのだそうです。興味を掻き立てられずにはいられませんよね。

芸術選奨、「新潟発の舞踊家」: (受賞の感想を求められ、)遠い昔のような…。でも、びっくりした。こういうニュースって、何も考えていないぼーっとしている時に来るんだなと思った。故郷の高知にいたのが16年に対して、新潟で暮らし始めて17年。新潟という地方での活動を日本の舞台芸術の方々が「新潟発の舞踊家」と評価してくれたことが嬉しかった。この街、この舞踊団がなかったら、私はどこにいたんだろうと思う。このコロナの状況下、東京の舞踊家もウーバーイーツで食いつなぎ、踊るどころじゃないなか、改めて、専属舞踊団の意義を強く感じる。新潟の時間と場所が与えられていることから、言い訳は出来ない、最高のものを見せなければならない。

Noismのこれから: ①「『春の祭典』は研ぎ澄ますだけでなく、何か変わってくると思います」と井関さん。リハーサルでもカウントが変わっているし、細部の変化も20数人が合わさると大きな変化になる。「サプライズ・ヴァージョンです」と笑う井関さん。

②(Noismの精力的な活動予定に関して)「もっとあります。大人の事情で言えないんだけど、いっぱいあるんです」と微笑んだ井関さん。

③『夏の名残のバラ』は、金森さんが自身、「初の映像監督作品」とも位置づける作品。井関さん的には、4人と踊っているような作品で、その4人とは、山田さん、カメラさん、コードさん、枯れ葉さん。見た目の印象とは異なり、実に実験的な作品でもある。

映画館、そして劇場: 見知らぬ人と一緒に観る体験。その場所に行かないと味わえないエネルギーの通い合いがある。自由に非日常に触れることが出来るようになって欲しい。

…ここには書き切れないほど、多彩な内容が語られた充実のトークイヴェントも、やがて終わりの時間を迎えると、館内に再び大きな拍手が谺しました。

その後、ロビーでの井関さん関連書籍の販売に際して、サイン会も行われる由。私も「Noism井関佐和子 未知なる道」(平凡社)を改めて一冊求め、井関さんと金森さんおふたりにサインをして頂きました。

そして一緒に写真を撮って頂けないかとお願いすると、金森さんから「勿論」と快諾を頂き、そこからはもう入れ替わり立ち替わり、大撮影会の風情に。シネ・ウインドの入口付近は大盛り上がりを見せ、金森さんも「記者会見?」と笑うほど。これはもう嬉し過ぎる余禄♪そこで撮った写真のなかから数枚ご紹介します。

さて、もう残り一ヶ月を切った7月2日(金)に『春の祭典』りゅーとぴあ公演の幕が上がります。この日のトークでその日までのカウントダウン感も大きなものになりましたが、まずは、それまでにもっともっと映像舞踊『BOLERO 2020』を観倒したくなったような次第です。そんな人、私だけではない筈。こちらのリンクもご利用下さい。

『BOLERO 2020』特別上映レポートはここまでと致しますが、もう一枚、画像の追加です。司会を担当した久志田さん、司会のみならず、準備から大忙し、もう八面六臂の大活躍でしたので、その労を労いたく、こんな一枚を。久志田さん、色々ご苦労様でした。そして中身の濃い時間をどうも有難うございました。m(_ _)m

渾身の墨書!

また、『BOLERO 2020』に関しましては、当ブログ中、以下の記事も併せてご覧頂けましたら幸いです。

それでは。

(shin)

「ランチのNoism」#11:西澤真耶さんの巻

メール取材日:2021/5/26(Wed.)

新潟・市民映画館シネ・ウインドを会場とする井関さんのトークイヴェント付き映像舞踊『BOLERO 2020』特別上映(6/5)も一週間後に迫りました。チケットは好評発売中。もうお求めになられましたか。当ブログも更新に間が開いてしまいましたが、今回お届けする記事は前回に続き、こちらもご好評を頂いている「ランチのNoism」その11回目です。ご登場頂くのは西澤真耶さん。西澤さんと言えば、数ヶ月前に新潟のタウン誌「月刊にいがた」とそのWeb版「日刊にいがた」で、「自炊に目覚めた」としてお料理を学ぶ様子が紹介されていました。クッキングライフ nukunukuさんでのそのときの模様はこちらからどうぞ。で、今回は「その後の西澤さん」をお届けしようという訳です。お待たせしました。では、いってみましょうか。

♫ふぁいてぃん・ぴーす・あん・ろけんろぉぉぉ…♪

今日もりゅーとぴあ・スタジオBに舞踊家たちの昼がきた♪「ランチのNoism」!

*まずはランチのお写真から

「5月最終週メニュー」でしょうか

1 今日のランチを簡単に説明してください。

 西澤さん「今日はキャベツとソーセージのコンソメスープとセロリの漬物です。あと野菜ジュースです」

 *おお、これはまた少食のランチですね。あと、私など炭水化物なしでは食べた気がしないんですけれど、摂りたくなりませんかねぇ、炭水化物…。

2 誰が作りましたか。普通、作るのにどれくらい時間をかけていますか。

 西澤さん「offの日にまとめて作ります。作るのに1時間半くらいですかね」

 *「作り置き」派なんですね、西澤さん。お料理って、時間に追われながらやるのでなければ、凄くいい気分転換にもなりますし、目に見える達成感があって、offの日をゆったり過ごすのには適していたりもしますよね。楽しいですし。

3 ランチでいつも重視しているのはどんなことですか。

 西澤さん「量です。重くなりすぎないようにとササっと食べられて休憩の時間を長く取れるようにしています」

 *こちらの量ですと、決して重くなりすぎたりってことはなくて、逆に、軽すぎたりはしないかと心配しちゃったりするんですけれど…。(汗)あと、前回のスティーヴンさんも仰ってましたが、食後の時間を長く取ろうとするのは皆さん一緒なのですね。でも、またすぐに激しく動くことになるのだから、それって当たり前か。大変ですよね。失礼しました。

4 「これだけは外せない」というこだわりの品はありますか。

 西澤さん「ランチに限りませんが、1日のうちのどこか一食でお米を食べることですね。新潟はお米が美味しくて!!あと緑茶は欠かせません」

 *遂に炭水化物について触れられましたが、それも新潟のお米!そのこと自体、嬉しく思うものですが、もっとたくさん召し上がってもよいのでは、と思っちゃったりして。だって、ほっそりしてますもん、西澤さん。あと、緑茶、リラックス効果があったり、血糖値の上昇を抑えたりする優れものであるだけでなく、あの澄んだ緑、見た目にも美しくて、気分が上がりますよね。

5 毎日、ランチで食べるものは大体決まっている方ですか。それとも毎日変えようと考える方ですか。

 西澤さん「自分で作る時は1週間分の作り置きなので1週間は同じメニューです。
コンビニの場合はおにぎりとゆで卵です」

 *「作り置き」は食事の機能面を重視して食べる合理的なスタイルですよね。日々の稽古やリハーサルの合間に摂ることを考えれば、そうしたランチで充分な訳なのですね。それから、日々同じ物を食べることのメリットを歌舞伎俳優の市川海老蔵さんも口にしていました。曰く、体調管理がしやすいのだと。身体のコンディションに敏感であることが求められますからね。

 *で、西澤さんが他の日のランチ画像もご紹介くださいました。

ある日(1)

  西澤さん「卵焼き、ピーマンと竹輪のきんぴら、無限にんじんと冷凍のポテトです」

 *はいはい、ちゃんと作ってらっしゃいますねぇ。割と和のテイストのお料理ですね、こちら。そして、「無限にんじん」!所謂「無限ピーマン」みたいに「やめられない、とまらない」って感じで、やみつきになっちゃうヤツですよね。ぱっと見、既に美味しそうです♪

ある日(2)

  西澤さん「卵焼き、ピーマンの肉詰め、醤油ベースの鰹節入りの南瓜サラダです」

 *しっかりしたもの作ってますね。そしてこちらには白米付き!ごはんを目にして安心しましたって人、きっと私だけじゃない筈。

 *それにしましても、色々丁寧に教えてくださる西澤さん、やっぱり真面目で誠実な方だなと。心配りのあるご紹介、どうも有難うございます。

6 公演がある時とない時ではランチの内容を変えますか。どう変えますか。

 西澤さん「公演の時はコンビニメニューです。おにぎり1つとゆで卵1つ。公演前におにぎりを食べて、公演後にゆで卵を食べています。本番前は緊張してあまり食べられないのと、早く食べて、早く準備して、早く舞台に行って自分のペースで落ち着いて確認をしたいので手軽なのを食べています」

「公演の時はコンビニメニューです」

 *こちらも画像付き、有難うございます。そしてこちら、併せて食べても決して重すぎたりはしない感じですが、それでも、公演の前と後に召し上がってるんですね。公演前には重圧も大きいのだと察しますが、その重圧から解放された公演後にはもっとガッツリいきたくなりそうなものですけれど、私みたいな者は…。でも、そういう食べ方って千穐楽の後までお預けなんですよね、きっと。(汗)

7 いつもどなたと一緒に食べていますか。

 西澤さん(鳥羽)絢美さん(林田)海里さんです」

 *おっ、それって、過日のメンバー振付公演での『Flight From The City』のときの3人の名前がそのまま揃う訳ですね。林田さん演出振付の、おふたりが踊られたとてもリリカルな作品で、うっとりさせられたアレ。な~る。波長が合うんですね。また、ゆで卵では鳥羽さんと重なり、公演時の画像に写ってた「大きな鮭ハラミおにぎり」のチョイスは林田さんと重なってますし。

8 主にどんなことを話しながら食べていますか。

 西澤さん「改めて質問されると何話しているかな〜? あまり話していないのかもしれないです、みんな休憩の時間を大事にしているので」

 *with コロナで推奨される「黙食」の以前に、そのあたり、お答えはほぼ皆さん、共通している感じがします。午後に向けて身体を休めるのが最優先。そして踊っている最中に身体で会話しているプロの舞踊家たちであってみれば、自然なことなのでしょうね。

9 おかずの交換などしたりすることはありますか。

 西澤さん「海里さんはミカン、チャーリー(・リャン)さんはおやつをいつも分けてくれます。なのでチョコとかを持ってきた時はみんなに配っています」

 *ここでも with コロナってことで、おかずの交換はなくなっても、デザートみたいなものをあげたりするちょっとした気遣いは集団のなかでの潤滑油的機能を果たしているんですよね。

 *チャーリーさんがいつも分けてくれるおやつってどんなものなのか、興味を覚えたので、その点を訊ねてみました。すると、「チャーリー自身が持ってきたチョコとかクッキーとかナッツを分けてくれます」(西澤さん)とのことでした。配ったり、配られたり、「絵」が浮かんできますね。

ほぼ直角に腰を折って覗き込むジョフ
この日、視線の先には「野菜生活100」

10 いつもおいしそうなお弁当を作ってくるのは誰ですか。 料理上手だと思うメンバーは誰ですか。

 西澤さん「ゆかさん(=浅海侑加さん)です!ゆかさんの作ったケーキが大好きです!
あとりお(=三好綾音さん)も!りおから教えてもらったレシピを作ってランチに持ってくることもあります」

 *おお、西澤さんのお答え、気になったので、少し深掘りして訊いてみました。先ずは浅海さんのケーキってどんなケーキなのか訊ねたところ、「ゆかさんの紅茶のタルトとチョコタルトが絶品です。あとエクレアも!」(西澤さん)とのお答え。ぬおぉ~!絶品とな!なんと本格的な!ホント多才!驚きです、浅海さん!(←エクスクラメーションマーク、思わず連発しちゃいました。)

 *続いて、三好さんレシピについて訊いてみると、「りおから教えてもらったものは写真にある無限にんじんです。りおのお家でいただいた時に感動してご飯を何杯もおかわりしてしまいました(笑)」とのお答え。良い間柄であることに喜んだほか、「ご飯を何杯もおかわり」って件に漸くホッとしたりしてました。(笑)

 *そんな浅海さんと三好さん。ランチが気になるふたり浮上、…って感じですね。

 …はい、通常の「ランチのNoism」ですと、共通の質問はここまでなのですが、今回、西澤さんにはもうひとつ追加で訊ねてみました。冒頭にご紹介した雑誌とWebとに掲載されたお料理を学ばれた件に関してです。

11 以前、「月刊にいがた」で料理を教えて貰っている記事がありました。それ以後、料理についての意識に何か変化はありましたか。

 西澤さん「『月刊にいがた』の取材で教わってからお味噌のお出汁の大切さを知りました。今までは顆粒だしだったり、出汁入りのお味噌を使っていたのですが、煮干しからしっかりお出汁をとったお味噌汁が美味しすぎて!あれ以来お味噌汁を作る時は煮干しだったり海老だったりでお出汁をとって作っています。便利なものは増えていますが実際にある食材で手間暇かけて作るだけで美味しさが増して幸せな気分になり、食事は心身を健康に保つものなんだと実感しました」

 *手間暇かけて作られた「本物」の価値、それはNoismの舞台も同じですね。ですから、私たちもやみつきになって、「やめられない、とまらない」の「無限Noism」状態に置かれざるを得ない道理です。…いやあ、こんな素敵な答えが返ってくるなんて、いい質問しちゃったな、みたいな。ここまで西澤さん、色々とどうもご馳走様でした。

で、西澤さんからのメッセージも預かっていますよ。では、そちらをどうぞ。

サポーターズの皆さまへのメッセージ

「サポーターズの皆様、いつも応援してくださり、劇場に足を運んでくださりありがとうございます。皆様のお陰で私達の活動は支えられ、日々のリハーサルに集中することが出来ています。
また劇場でお会いできる日を楽しみにこれからも精進して参りますので応援よろしくお願いします」

前シーズンから続く閉塞感の否めない状況下にあって、内外、多方面に渡って存在感を示し続けてきたNoism Company Niigata。その17thシーズンもいよいよ佳境。まったく目が離せませんよね。見逃したら損をします、一緒に刮目して参りましょう。今回もお相手はshinでした。では、また。

(shin)

映像舞踊『BOLERO 2020』改訂版を楽しむ♪

来る6月5日に、新潟・市民映画館シネ・ウインドのスクリーンにて、井関さんのトークイベント付きでかかる予定を知り、そういえば、暫く観てなかったなぁなど思っていると、Noism official から「改訂版」公開などという告知が出されて、「えっ!?」ってなったのも事実。何の話かと言えば、勿論、映像舞踊『BOLERO 2020』のこと。

でも、同時に、「またやられちゃったな」とも思う。金森さんらしさ、或いは「金森イズム」は「紫綬褒章」受章前後でも変わる筈などなく、時間があれば、とことん作品に手を入れ続け、より「届く」ものを模索しようとするので、その都度、虚を突かれて、「またやられちゃったな」になる訳で。それは今回も。そんな「改訂版」。

で、久し振りに観てみました。

池ヶ谷奏さんとタイロン・ロビンソンさんの姿を観て、「ああ、やはり『2020』なのだ、これは。『2020』のメンバーが残してくれた作品なのだ」と懐かしさも込み上げてきたりして見詰めていると、…。

変わっている、12分割画面になる後半が随分。皆さん、ご自分の目(と記憶)でお確かめ頂ければと思いますが、少しだけ。

視線誘導がうまく働き、見やすくなったように思いますし、(私の記憶が確かなら)「えっ、こんなカットあった!?」というものが挿入されていたりしたうえに、その姿勢はラストにも及び、…。

金森さんのこれまでを思い出してみますと、『ロミジュリ(複)』では、度々、映像が差し替えられましたし、『バヤデール』においては何種類かのラストを目にしてきました。

で、この度の「改訂版」、私の場合、昨日からのレンタルですので、視聴期間は5月5日まで。「大型連休」の巣籠もりにはもってこい状態で、「不要不急」を慎みながら、繰り返し観て楽しむことになりますね、コレ。「200円は安過ぎです」ともう一度。皆さまも是非♪

過去の記事も併せてご覧頂けましたら幸いです。

2020/10/9 映像舞踊『BOLERO 2020』公開されました♪
2020/10/26 インスタライブvol.9は映像舞踊ボレロ裏話♪

(shin)

3/21 ホテルオークラ新潟「絶やさない、新潟のおもてなし Noism Company Niigata 応援しよう、ノイズム。その創造力と身体表現に浸る」会員レポート

※月刊ウインド編集部、さわさわ会役員、Noismサポーターズ会員の、久志田渉さんがご寄稿くださいました。

 ホテルオークラ新潟主催による、新潟の文化・芸術を応援しつつ、ホテルならではの食事を楽しもうという企画。新潟古町芸妓、合奏団「新潟ARS NOVA」に続く第3弾が、Noism Company Niigataを迎えて開催された。チケット販売開始から時間を経ずに満席となったが、幸運にもイベントの告知開始日に予約出来た為、最前列中央で鑑賞する機会を得た。

 開場前のホテルオークラ新潟4階コンチネンタルルーム前は、着飾った人々でにぎわう(りゅーとぴあ周辺でお会いするNoismファンよりも、ホテルオークラ新潟のご贔屓筋が圧倒的に多い印象。失礼を承知で書けば、話題の映画「あのこは貴族」ではないが、日頃過ごしているのとは別の世界に迷い込んだよう)。

 12時からは総料理長・小島淳氏によるフランス料理の午餐。フランス料理を食べつけないが、前菜の皿に彩られたビーツ・ターメリック・ハーブの三色ソースの美しさと旨さ、熱いパンに浸して食す「海老のビスク」、肉嫌いでもそのしっとりした歯応えに唸る牛肉ソテーなど、見た目と味まで心配りされたメニューを堪能(ついつい酒が進んでしまう)。

 13時半からは、いよいよNoismの公演。公演前にはNoism芸術監督・金森穣さんが登壇。世界レベルの舞踊に“和”の身体性を融合させて挑むNoismの精神と、ホテルオークラの創業者・大倉喜八郎の子息・喜七郎が提唱した「大和楽」を対比させ、この場で公演することの意義を強調。最前列の為、金森さんの足元が、語っている時まで左右に開いており、Noismメソッドが徹底していることに驚く(「市民のためのワークショップ」に参加したからこそ気付けたことかもしれない)。

 幕開けはNoism 2『新潟幻影』より「銀の吹雪」。各々一脚の箱椅子を持って登壇するNoism 2メンバー。センターの4人、バックの5人それぞれの献身と、邦楽の音色、照明の工夫とが噛み合い、宴席に新潟の雪景色が確かに現出する。池田穂乃香さんの伸びやかさ、カナール・ミラン・ハジメさんの落ち着きを特筆したい。

 続いてはNoism 1「Fratres I」。告知チラシにNoism 0の名が無く気になっていたが、やはりNoism 1メンバー(井本星那さんは欠場)のみによるアレンジがなされていた。後半のトークショーでもNoism 0メンバーが語っていたように、舞台袖から登壇するNoism 1メンバーの普段とは少し異なる緊張感が、客席にもビシビシと伝わるよう。センターを務めたのはジョフォア・ポブラヴスキーさん(昨年12月のオルガンコンサート以来の登板)。日頃の軽み・可笑しみのあるイメージとは異なるストイックさと、堂々たる身体を活かして舞台の要となっていたのが感動的だった。鳥羽絢美さん・西澤真耶さんの舞台を支える力強い美しさ、三好綾音さんの躍進、女性メンバーより人数の多い男性メンバーの存在感。「FratresⅡ」「FratresⅢ」を経ているからこそ、その祈りのような振付の共振、このシリーズを観てきた間のNoismや世界の困難が想起され、涙が零れる。

 三幕目は映像舞踊「BOLERO 2020」。昨年の配信開始以来初となる、大画面での上映だった。小さな画面で細部を見つめる喜びのある作品とはいえ、Zoomを思わせる分割された画面で複雑に交錯する舞踊と、孤立していた筈の舞踊家たちの動きが連鎖していくダイナミズムを大きなスクリーンで多くの人と共に観ることの味わいたるや。6月初めには、筆者がボランティアスタッフを務める新潟・市民映画館シネ・ウインドで、また7月のNoism本公演でも上映が予定されている為、ぜひ大画面で楽しむ「BOLERO」に期待していただきたい。

 そして締めくくりはNoism 0の金森穣さん、井関佐和子さん、山田勇気さんによるトークショー。冒頭、日頃とは全く違う環境での公演に臨んだNoismメンバーが発した緊張感について、「力量が問われる場」(金森さん)「スタジオBとは全く違う距離感。この緊張感を、舞台に活かしてほしい」(井関さん)と、エールを送った。

 芸術選奨文部科学大臣賞受賞について、「毎日『嘘じゃないの』と穣さんに聞き続けた」「自分のことよりも、Noism・りゅーとぴあや新潟の人々への感謝の気持ちが湧いた。そのことを再認識する受賞だった」と語る井関さんと、「この国のエラい人たちが、ようやくこの人(井関さん)の価値に気付いた」「舞踊家・井関佐和子を生み出したことは、自分が来てから新潟が成しえたことの三本の指に入る」という金森さんに、胸が熱くなった。

 当日配布されたパンフレットにはNoism全メンバーがそれぞれの「新潟の好きなもの・こと」が記されていたが(山田勇気さんが壇上でも強調された「北海道出身だが、新潟の魚の味は繊細。全然違う」という指摘も嬉しい)、司会者はあえて「新潟の厄介なこと」を質問。金森さんの「風や雪の中で、歴史的に身体に刻まれた忍耐強さが新潟の人にはある。それは凄く美しいことだが、新しいことを始めたり、世界に発信する時の瞬発力に繋がりにくいことが弱みとなる」という指摘には、新潟人として「正に」と唸らされた。

 今後への抱負として井関さんは「前へ進むだけではなく、(芸術選奨受賞を経て)自信を持ち、安心して掘り下げていこう」、山田さんは「今までは一歩一歩を大切に歩んできたが、より遠くを見ていこう」と語った。そして金森さんは、新潟の未来像として「素晴らしく、クリエイティブな街として世界に知られ、人が訪れ、また世界に人が出ていく街になるビジョンがある。新潟が金森穣を手放さなければ」とし、「いつまでも新潟で、より広く高く発信を続けたい。市民に広く知られる活動を展開しつつ、世界の頂に挑戦してゆく」と、その信念を強調した。

 サプライズとして井関佐和子さんの芸術選奨文部科学大臣賞受賞を祝し、「舞踊家・井関佐和子を応援する会 さわさわ会」代表・齋藤正行(新潟・市民映画館シネ・ウインド代表)が、さわさわ会&サポーターズからの花束を井関さんに贈呈。

 最後はNoism 0、1、2メンバー、浅海侑加Noism 2リハーサル監督も登壇しての記念撮影タイムを経て、プログラムは無事終了した。

 齋藤代表は「ホテルオークラファンの人がNoismを知って、公演を観に来てくれたら、嬉しいね」と語っていたが、広くNoismが新潟に暮らす多様な人々に親しまれる為の、新たな一歩となる時間だったように思う。

(久志田 渉)