サラダ音楽祭メインコンサートのNoism in 2021(サポーター 公演感想)

☆『過ぎゆく時の中で』(ジョン・アダムズ:ザ・チェアマン・ダンス)/『Under the marron tree』(マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調より第4楽章アダージェット)

***九州・中国地方をはじめ、今も続く大雨、その被害にあわれている多くの方々に対し、心よりお見舞い申し上げます。***

 今日(2021/8/13)はこれまでの暑さからは信じられないほど涼しく、雨が降ったり止んだりの一日でしたが、東京芸術劇場で開催されたサラダ音楽祭メインコンサートに行ってきました。

頭上注意!
東京芸術劇場前の広場はハトがたくさん
小雨が降ったり止んだりの天気

 サラダ音楽祭は東京都交響楽団が毎年豪華ゲストと共に送るスペシャルなコンサートで、昨年に続きNoism Company Niigataが出演しました。吉野直子さんのハープ、新国立劇場合唱団の合唱、小林厚子さんの独唱、そして何より都響の演奏が素晴らしかったのですが、今回はこのブログの趣旨としてNoismが出演した2演目(2曲)について書きたいと思います。

当日(2021/8/13)のプログラム

 まずジョン・アダムズ『ザ・チェアマン・ダンス』。コンサート最初に演奏されました。
黒いレオタード姿のNoism1による群舞と帽子を被った黒スーツの男(山田勇気さん)。軽快な曲に合わせてメンバーが舞台に次々と出現しては踊り、また颯爽と駆け抜けていきます。黒い帽子の男はその様子を見つつ時折絡みます。
プログラム解説を読むと、この曲はニクソン大統領の中国訪問(チェアマン=毛沢東)が題材となっているそうです。もしかしたら黒スーツの男はニクソンなのかもしれません。中盤のややゆったりした音楽になると、井関さんとジョフォアさんによる社交ダンス(風)もありました。これは江青と毛沢東のダンスでしょうか。

 金森さんがつけた『過ぎゆく時の中で』というタイトルのごとく、あっという間に駆け抜けていきました。走馬灯をみるとは本来こういうことかもしれません。
演奏終了後にはカーテンコールもあり、Noismの皆さんに客席から沢山の拍手が送られました。何人かのメンバーにとってはNoismとしてラストステージとなる訳ですが、今回は感傷に浸る隙すらありませんでした。これも時が過ぎてから湧き上がってくるものなのかもしれません。

 次にマーラーの「アダージェット」。前半プログラムの最後に演奏されました。舞台上には大きな黒テーブルと2脚の椅子。演奏が始まると井関さんがテーブル下から現れ少女のように踊り戯れます。
『Under the marron tree』は金森さんの初めての作品ですが、その後の作品に通じる「孤独」「不在」が既に感じられます。
私はこの作品を「青山バレエフェスティバルLast Show」と Noism0『愛と精霊の家』の初演・再演で観ることができました。Noismを観続けていく中で、折々に原点となる作品に再会できるのはとても嬉しいことです。

 演奏後にはこちらも割れんばかりの拍手。カーテンコールも3回ほどあったでしょうか。井関さんも笑顔で拍手に応えます。

 困難な状況の中で無事開催されたサラダ音楽祭。まったく油断できない厳しい状況が続きますが、感染しない・させないよう十分注意しつつ劇場に通い続けたいと思った夕べのひと時でした。

(かずぼ)

活動支援会員対象の「サラダ音楽祭」公開リハーサル(2日目)を観てきました♪

2021年8月6日(金)、スマホでチェックしたネットのニュースで「39.2℃」「危険な暑さ」と報じられたのは新潟市秋葉区。りゅーとぴあがある中央区は幾分かはましといえども、ひなたに駐車していた車に乗り込むと、外気温は46℃を表示しているなど、もうどうかしちゃった感のある殺人的な暑さのなか、活動支援会員対象「サラダ音楽祭」公開リハーサル(2日目)を観てきました。

この度の公開リハーサルは当初、この金曜日だけの予定でしたが、申し込まれた支援会員が多かったため、すぐに前日の木曜日分が追加されたのでした。その2日目。

巨大スポーツイヴェント開催に伴い、国民のあいだに「安心バイアス」が拡がり、新規陽性者数も右肩上がりに増加していくなか、「緊急事態宣言」下にある東京都へ赴くのは躊躇われますから、多くの方にとって、この機会はかなり貴重なものと捉えられていたのでしょう。

スタッフが付き添うかたちでの検温と手指消毒を済ませても、予定時間までは「スタジオB」のある4Fではなく、2Fロビーで入場の案内を待つというのも、これまでになく、慎重のうえにも慎重な対応でした。で、一旦、案内されてみると、今度は、そのまま「スタジオB」まで進みます。これもホワイエでの歓談を徹底して避けようとする意図によるものです。

そうやって、みんながスタジオ内の壁沿いに用意された椅子に腰をかけると、金森さんの合図でリハーサルが始まりました。まずは11人が踊る演目の一部です。みんな感染予防のマスクをつけ、見覚えのある衣裳を纏った11人(女性5人、男性6人)。その衣裳について、「本番の衣裳ですか」と金森さんに尋ねてみましたところ、「そうです。使い回しで~す。予算もかけられないので」とのことで、同時に、何の衣裳だったのか、ふたつの作品名も教えて頂きましたが、今はそれは伏せておきます。本番をご覧になられる方は当日、脳内検索をかけてヒットする作品名は何か、お楽しみ頂きたいと思います。男女10人があるひとつの作品からのもので、ひとり山田勇気さんだけは他の作品からの衣裳を纏って踊ります、とだけ。

こちら、かなり激しい動きを求められる演目のようで、袖に引っ込んだタイミングでは、(というのも、スタジオBには袖がなく、全て顕わしになっていますから、)腰に手をあて、息もあがりがちになっている姿も見られました。限られた狭いアクティング・エリアのなか、生オケで踊るのはホントに大変だろうことは一目瞭然です。しかし、いつもの金森さんの言葉を借りれば、「舞踊家が苦しければ苦しいほど、観客は喜ぶ」のでしょう。そんな舞踊家たちの動きから召喚された記憶は『クロノスカイロス1』、衣裳の色味こそ異なりますが。

そして井関さんひとりが踊る演目の方に移りました。本番では、ハープの協奏曲(約15分)を間に挟んで踊られるとのことですが、情緒も一転、まったく趣を異にする時間が楽しめる筈です。この日のリハーサルからだけでもそれは疑い得ないことと確信致しました。

約30分の公開リハーサルの最後にあたって、メンバーを呼び集めて挨拶するなか、「劇場が開いている以上、我々舞踊家としては、充分に配慮しながら、出来ることをやっていくことで、これからも世界に向けた発信を続けていきます」と金森さん。常に歩みを止めない姿勢には胸が熱くなります。「これからも引き続き、ご支援宜しくお願い致します」の言葉に、恐らく、その場にいた全員が心のなかで「勿論です」と返していたのではなかったでしょうか。その気持ちの籠もった拍手がスタジオBに響いていました。

「サラダ音楽祭」本番まで残すところ一週間。これからも一切妥協することなく、実演の精度を極限まで上げながら、当日の舞台を迎えるのでしょう。ご覧になられる方、感染状況、健康状態ほか、本当に気を遣うことと思いますが、その分も、忘れられない舞台になること間違いありません。ご堪能ください。

(shin)