1/25(木)『鬼』再演 大千穐楽、熊本公演に行ってきました!

2024年1月25日、日本中を寒波が覆う中、なぜか雪が少なく晴れ間も見える新潟市から、「鬼」を追いかけて最終の地、「火の国」熊本へ!
前日に新幹線の架線事故があったりして心配しましたが、既に通常運行しており、安心して東京へ、そして羽田空港へと向かいました。
熊本行きの飛行機は修学旅行を終えて熊本に帰る生徒たちで大混雑! そんな中、サポーター仲間のかずぼさんに遭遇♪同じ飛行機でしたが、この便の出発がなんと30分遅れに! ヒヤヒヤしましたが、熊本空港到着後は直行で会場に向かい、18時30分に無事、市民会館シアーズホーム夢ホールに到着しました♪

熊本城
夢ホール
夢ホール
左に熊本城、右は加藤清正公の像です

入場すると、ロビーに作曲家の原田敬子さんがいらしたので、かずぼさんと一緒にご挨拶しました♪ 原田さんは岡山からそのまま熊本にいらしたそうです。 会場の大ホールはかなり古い建物だそうで、音響はイチから手直ししたそうですが、なかなか手強かったとのこと。でも、音響も演奏も舞踊もご満足いただいているご様子でよかったです。
かずぼさんは合唱をされているのですが、大学時代に、なんと原田さんの超絶難度の合唱曲の直接指導を受けたことがあるそうで、そのお話をすると原田さんの方がすごく驚いて、お二人で盛り上がっていました♪

さて、今日の席は最前列のほぼ中央です。かずぼさんは2階席だそうです。
ステージが高く、見上げる感じになるかと思いましたが、実際はそうでもなくてよかったです♪
『お菊の結婚』無しで『鬼』からすぐ始まるって、もしかして初めて!?
何とも不思議な気持ちで幕開けを迎えます。
櫓の上に控える鼓童さんと太鼓群の威容に観客から声なき嘆声が漏れます。
そして清音尼、役行者が登場。清音尼の後ろに女性陣が続きます。
そして、一撃!!

そこからは夢か幻か。
この世のものとは思えぬ舞と音との響演乱舞が繰り広げられ、見事としか言いようがありません。
何度見てもますます素晴らしい✨
しかし、それも今日で見納め・・・

最後、戯れるように踊る鬼二人と、鬼の形相の役行者が入り乱れるように躍り合う中、空からは金か、銀か、雪か、キラキラと美しく降ってきます。
鬼を見送る役行者。彼の胸には何が去来しているのでしょうか。
余韻を残して幕は下りました。

15分の休憩後、金森さんの進行で、鼓童代表の船橋裕一郎さんとの「アフタートーク」ならぬ、「ミドルトーク」です。
お二人は同郷で同年であること。
2004年から親交があり、その頃は鼓童では新人だった船橋さんが今は代表であること。
Noismにとって熊本は初めてだった一方、九州は太鼓が盛んなので鼓童さんは何度か熊本に来ていること。
ここで金森さんが観客に質問しました。
「このような舞踊を見るのは初めての方」という問いかけに結構な挙手がありました。
「鼓童さんを知っている方」という質問にも挙手が多かったです。
「『鬼』では濃密なクリエーション、コラボレーションができてよかった」(お二人)
「初演時のピリピリ感からは考えられないほど溶けあってきた。親交も楽しく、嬉しい。
原田さんのおかげで鼓童が現代音楽に挑戦できて確実に次のステップになった」(船橋さん)
「また一緒にコラボしたい」(お二人)
その時は今度は鼓童さんがNoismを呼んでくれるそうです。
鼓童さんは2月からヨーロッパツアーで2ヶ月間各地を回ります。その時に『鬼』の紹介もしてくれるそうです。
金森さんは、「世界でやるなら近々にしてね。そうじゃないと踊られなくなるから」と言って笑いを誘っていました♪

トークは短くて、10分足らずでした。
このあと、金森さんが「鼓童さんの芸の振り幅がすごい」と言っていたスペシャルパフォーマンスが始まります。

鼓童特別演奏

櫓のセットはそのままで、櫓を使ったり、前の方に各種太鼓をだして演奏したり、笛や歌もあり多様で楽しめました。
「大太鼓」では船橋さんが登場し、力強い演奏で場を圧倒しました。
迫力溢れる演奏に拍手喝采!

華やかな太鼓に送られて賑やかに終了した大千穐楽。
次は世界で。近々に!

終演後、21時前でした

(fullmoon)

Noism×鼓童『鬼』メディア向け公開リハーサルに出掛けてきました♪

朝降った雨が空気中の湿度と化して身に纏わり付くようなじっとりとした暑さのもととなっている、そんな2022年6月23日(木)の13時。Noism×鼓童『鬼』のメディア向け公開リハーサルを観にりゅーとぴあの劇場まで出掛けてきました。

ホワイエの窓際に座って、劇場内に通されるのを待つ間、中の様子を確かめようとしたスタッフが少し扉を開けた瞬間、フォルテッシモの打音が音圧を伴って周囲を浸してしまうようなことがあり、これから物凄いものを体感することになるとの思いを抱きました。

予定時間を少し過ぎて、劇場内に通され、舞台に目をやると、先刻、大音量を発した太鼓をはじめ、楽器は全て鼓童の奏者ともども桟敷の上にあり、Noismメンバーはいつもの床の上にいました。奏でる者は踊る者に目をやる必要があり、かつ、踊る者のアクティングエリアを確保しようとするなら、これは必然の配置かと思われます。その美しき威容。踊る者たちは奏でる者たちが発する音(と音圧と)を頭上から浴びるかたちで踊ることになるでしょう。(『お菊の結婚』との間の舞台転換はどうなるのだろう。そこは当日のお楽しみですね。)

この日の公開リハーサルの前半では、「劇場入りして3日目」(金森さん)ということもあり、まずは太鼓の位置を調整することから始まり、次いで、演奏と踊りを合わせることにじっくり時間をかけながら、綿密のうえにも綿密に、ある「暗転」のタイミングを探ってる様子に目と耳とを凝らしました。口調はいつになく柔らかい金森さんと、更に穏やかな話し振りの鼓童・石塚充さんが客席から舞台上に言葉掛けを行いながら、「ピタリ」のその一瞬を探っていきます。その場面、太鼓の音が始まるタイミングは決まっていても、その後、叩かれる回数が一定ではないらしく、照明のキーのタイミングが掴み難いようでした。

全編にわたって、太鼓と舞踊の間に根源的に横たわる「共約不可能性」とでも呼ぶべきものを超えた「ピタリ」の一瞬を探ろうという双方からの挑戦ですから、容易な筈はありません。初日を迎えるまでブラッシュアップを続けていくことでしょう。そして、これまで観てきたNoismの舞台から明らかなことがひとつあるとすれば、私たちはその果ての達成に身震いするだろうということです。そのときが楽しみでなりません。

予定では終了時間と目されていた13:30、金森さんの「Bを頭からいってみましょうか」の言葉で、作品を一部見せて貰いました。そう、ほんの一部のみでしたが、見惚れました。

その後、13:40頃よりホワイエにて、金森さんと石塚さんへの囲み取材に移りました。少しですが、以下にご紹介を試みます。

*初共演に関して
金森さん: 過去にも鼓童との共演の話はあったが、実現に至らなかった。しかし、「いずれ、いずれ」と思っていたところ、昨年、鼓童の新代表・船橋裕一郎さんとの対談をきっかけに打診をし、快諾を得たもの。
石塚さん: (金森さん・船橋さん・石塚さん)3人とも同世代。共演したいと思っていた。新代表のもと、鼓童の体制や音楽性も変わっていくなかで、打診を受け、「今なら良い共演ができる」と思った。

*和太鼓の生演奏で踊ることに関して
金森さん: 単純に波動が違う。西洋の打楽器とも振動のレベルが違う。身体に強烈に響いてくる楽器。舞踊家はそれを力に変えたり、逆にそれを引っ張り出すような身体だったり、今まで味わったことのない感覚を味わっている。
実演家としては共演者が増えることで密度も濃くなり、単純に楽しい。

*Noismが踊るところで演奏することに関して
石塚さん: ただ音楽を奏でているのとは異なり、自分たちの音に反応して動く生命体が前にいることに、音に入るエネルギーや熱が変わっている感じがする。
曲自体が難しいのだが、それを曲だけで演奏していたときよりも、Noismが入ってからの方が曲に輪郭や命が込められて演奏しやすくなった実感がある。

*今公演の見所は
金森さん: 後にも先にもNoismと鼓童の共演。日本中探しても、このレベルのクオリティで舞台芸術を作っているところはそうはない。それがここ新潟で生まれている。それ以上の見所があるとは思えない。それが新潟の魅力であって欲しいし、それを全国各地、世界に届けたい。
石塚さん: 鼓童とNoism両者が音を出し、動いている空間が贅沢。その空間に身を投じに来て欲しい。

*原田敬子さんの音楽の難しさ
金森さん: 要するに決まってない。何回これやって、何小節行ったら終わりって決まってない。それを奏者たちがその瞬間に選んでいっている。即興性が含まれた楽曲に何とか合わせようとしているのが今の段階。
石塚さん: 今回、使っている楽器数は30以上で凄く多いうえ、細かく厳密な指定がなされている。

*新たな発見について
石塚さん: Noismの皆さんは自分たちの音楽を自分たち以上に聴いているというのがあって、自分たちの音楽でありながら、自分たちが意識していなかったところに命があることを知り、自分たちが持っている譜面が豊かなものに見えてきたことがある。
金森さん: 劇場入りした日に久し振りに鼓童さんの生音聴いたときに、「あれ、こんな感じだっけな?」と感じた。翌日はまた全然違っていて、「なんか音変わりましたよね」と訊いたところ、「自分たちが空間に慣れるように、楽器もその空間における響きに慣れるし、劇場の舞台構造(空間)も、その音を受け慣れる」との答えを得て、その視点を面白いと思った。じっくり時間をかけられる専属舞踊団としての強みを存分に発揮できるものと思う。

様々に興味深かったおふたりの囲み取材が終わったタイミングで、Noismスタッフから新潟3公演のチケット追加発売についてのお知らせがありました。
発売されるのは若干枚のみということですが、6月25日(土)11時よりオンラインもしくは電話にて受付が始まるとの告知がなされ、詳細はNoismの公式サイトにて発表とのことです。チケットの動きが「鬼」速かったためについ買いそびれてしまわれたという方、この機会にお求めください。

期待値がもろ「鬼」Maxに押し上げられたこの日のメディア向け公開リハーサルについてかいつまんでのご紹介でした。このあとは活動支援会員対象の公開リハーサル(6/25・土)後にまたレポートしようと思います。ではでは。

(shin)

2022年7月Noism×鼓童公演に向けて、『鬼』特設サイト設けらる♪

きたる7月、Noism Company Niigataと鼓童という、世界に向けて本県のパフォーミングアーツを牽引する「新潟ツートップ」が本格的に初共演します。双方の本拠地である新潟を皮切りに、埼玉、京都、愛知、山形と巡るツアーですが、募るその期待感の「受け皿」として、この度、強力な特設サイトがオープンしました。

こちら、もうご覧のことかと存じますが、内容「鬼」充実で、読み応え満点なうえ、更に以前の金森さんと鼓童・船橋裕一郎さんの「代表対談」動画も見ることが出来ます。2020年7月に配信されたこちらの動画に関しては、本ブログでも取り上げております(「金森さん×「鼓童」船橋裕一郎代表オンライン対談@鼓童YouTubeチャンネル」)が、そのなかで、金森さんが「オレ、せっかちだから」としながら、「そのへんの制作の人」に訴えた「2022年の春夏でお願いしま~す」の共演が実現するのがズバリ2022年7月!さすがはこれまで数々の開かずの扉をこじ開けてきた「有言実行の人」金森さんですね。

作曲家・原田敬子氏による新曲でNoism×鼓童により新たに創作される『鬼』。原田さんと言えば、富山・利賀村で上演されたNoism0『speed/ still/ silence』(@第9回シアター・オリンピックス:2019)の音楽に立ちこめる不穏な濃密さの印象が記憶に新しいところです。そして同時上演されるのはディアギレフ生誕150周年記念・Noism版ストラヴィンスキー作曲『結婚』。こちらのバレエ・カンタータも打楽器と歌を中心とした特異な組み合わせの楽曲ですし、出るのは鬼か蛇か、今から両作に溢れるだろう豊穣なリズムに乗って展開される「異形」の舞踊を妄想しております。

この新作2本立てダブルビル公演は、最初の速報チラシによる告知以来、ワクワク感しかなかった訳ですが、この特設サイトを見ることで、更にそのワクワク感は加速し、身悶えするまでに至ること必至です。まだご覧になってない方は是非とっぷりご堪能ください。

(shin)

金森さん×「鼓童」船橋裕一郎代表オンライン対談@鼓童YouTubeチャンネル

新潟のアートシーンを背負うふたつのグループの代表による対談が実現しました。勿論、ひとりは我らが金森さん。そのお相手、もうおひとりは佐渡を拠点にこちらもワールドワイドな活動を展開してきた太鼓集団「鼓童」代表の船橋裕一郎さん。

対談のテーマは「新たな時代における芸術・文化の役割と可能性」。

「with Corona」時代、即ち、「3密」要素を退けつつ活動していくことを余儀なくされる「新しい生活様式」或いは「新しい日常」にあって、これまで東京という「中心」ではなく、新潟という所謂「周縁」で活動を展開してきたふたつのグループの代表ふたりのお話は、東京の「中心」性を異化し、その「中心」自体を書き換えるようなことも起こし得る、「周縁」が持つ動的なダイナミズムに満ちていて、もしかしたら、「この先」の舞台芸術を志向するうえでのアドバンテージとなりそうなものすら感じられるようでした。

30分弱にわたって展開された穏やかにして熱いオンライン対談「新潟から世界へ Noism×鼓童・代表対談」は、こちらからどうぞ。お話は以下のように進行していきます。

  • 2006年ぶりですね: 13年前の金森さんによるワークショップ
  • お互いのグループについて: お互いの変遷、代表としての思い
  • 若いメンバーの力: 「こういう時期だからこそ」のアイディア、「集団にとって必要なこと」、異なる年齢層・世代、或いは多国籍の豊かさ
  • 積み重ねての今: 継続(鼓童は来年40周年を迎える)、「いきなりそこには行けない」
  • 新型コロナウイルスの影響: 欧州ツアーの中断(鼓童)
  • 鼓童ヨーロッパツアーへの影響: 主催者側からのキャンセル
  • Noismへの影響は: 延期の判断と「どんな形であれ見せたい」思い、「できることをやるしかない」「なんとしても踊る場所を設けたい」
  • 鼓童の自宅待機: 世の中の状況も見ながら、初めて「音も出さずに過ごした一ヶ月半」稽古もやめてみた
  • 自宅待機期間~ここ最近の活動: 当たり前だった「叩いてこその筋肉」再認識、自分と向き合うことの気付き
  • この期間に得たもの: 「bright side」「怪我の功名」「自分の内側を見つめる良い機会」
  • やはり自宅だけでは…: 精神を含めた全身運動、複合的な連動、「広い空間で、空間を認識した上で、身体を大きく、空間的に使うこと」(Noism)「アンサンブル=他人(ひと)の音をどう聴くか、反応し合うこと」「お客さんがいる中でどういう反響・共鳴があるか」(鼓童)
  • (再び)新型コロナウイルスの影響: 「いつまでこれが続くのか」このなかで何ができるのか知恵を絞る必要がある
  • 今年のアース・セレブレーションは無観客&オンライン配信(鼓童): 様々なチャンネル・新しいチャレンジ
  • 動画配信と生の舞台(Noism): 生の舞台の何割減とはならない強度で「映像化するからこそできること」「ライヴとは違う舞踊の面白さ」を目指す配信用の舞踊作品を創作中。同時に「生の醍醐味」その普遍性も追求(Noism・鼓童)
  • Noismと鼓童で作品作りましょう: 「近い将来」(金森さん)、船一本で往来可能な「地の利を活かしたコラボレーション」(船橋さん)→新しい可能性、2022年春夏に何かが起こる?
  • パフォーマーの交換留学します?: 船橋さん提起→金森さん「お互い厳しくするという大前提で 。帰ってきたときに『ああ、ここで良かった』って思えるくらい厳しくするっていう前提で、送り合おうか」(笑)
  • ロベール・ルパージュさんとの新作〈NOVA〉(鼓童): 踏まえてきた40年の歴史と斬新さ
  • エア握手
  • 新潟から発信: 「プロフェッショナルなカンパニーとして、一緒に何か作り上げていく」(船橋さん)
  • 劇場文化の可能性: 「まだまだ日本の劇場文化には可能性がある」「一石を投じ続けて16年。という感じ」そして、新潟が理解してくれたこと、「新潟がその日本の可能性をある種証明している」(金森さん)
  • 活動を続けていくということ: 「支援のありがたみを感じる機会でもあった」「新潟に、ここまで志もあって、レベルの高いカンパニー(Noism)があることが心強い」(船橋さん)「有難うございま~す」(金森さん)

全編29分03秒。終始、寛いだ雰囲気で進行するお話は、聞きどころ満載です。是非お楽しみください♪

(shin)