「纏うNoism」#07:樋浦瞳さん

メール取材日:2023/05/20(Sat.) & 06/01(Thur .)

去る2023年5月20日(土)&21日(日)の僅か2日間のみ屋外舞台にその姿を現したNoism0+Noism1『セレネ、あるいはマレビトの歌』。「黒部シアター2023 春」前沢ガーデン野外ステージのその初日の日付で、わざわざアンケートにお答えくださった樋浦瞳(あきら)さん。そこから「纏うNoism」第7回、樋浦さんの回のやりとりが動き出しました。画像もその前沢ガーデンで撮影して頂きましたし、サポーターズへの気配りをもちながら、黒部で踊っておられたのだと知ることの有難さといったらないでしょう。では、その「纏う」樋浦さんをお楽しみください。

「流行に夢中になってはだめ。ファッションにあなたを支配させてはだめ。その着こなしと生き方によって、あなたが誰で、どう見せたいかは自分で決めればいい」(ジャンニ・ヴェルサーチ)

それでは樋浦さんの「纏うNoism」始まりです。

纏う1: 稽古着の樋浦さん

 *おお、「あの」前沢ガーデン!裸足!野性味のあるご登場ですね。そしてもう一枚の方、木の陰から「ひょっこりはん」しているのはNoism1準メンバーの横山ひかりさん。そして左側に立つのはNoism2の春木有紗さん。ホントにいい雰囲気の写真ですね。

 樋浦さん「この写真は黒部の前沢ガーデンで撮影しました」

 *ですよね。実に素敵な場所でした。溶け込んでいますね、樋浦さんも、横山さんと春木さんも、ハイ。なにやら、「自然児」というか、自然の一部と化したというか、そんな雰囲気ですね。では、ここではまず稽古着一般についてお話しいただけますか。

 樋浦さん「稽古着は、リハーサル中の作品がどんな衣裳かによって半袖か、タンクトップか、短パンか、長ズボンか変わっていきます。
Noismではいつも黒い服の人が多いのですが、自分は黒い服を着ると緊張してしまうので、普段はあまり着ません」

 *そうなんですね。「黒」を避ける感じなのですね。で、この日のトップスはグレー。そのグレーっていうのは樋浦さんの好みの色なのですか。そして他に稽古着として着るのに好きな色とか、好きなブランドとかってありますか。

 樋浦さん「いちばん好きな色は藍色、紺色です。落ち着きます。スポーツ用品のブランドでは、アディダスの服が多い気がします」

 *なるほどです。短パン、紺色ですものね。樋浦さんが稽古着の色に求めるものは「落ち着き」、理解しました。

 *あと、この日は美しい野外の緑の上ということもあってのことでしょう、裸足ですが、お約束の「アレ」についてもお訊きします。普段の稽古で身につける靴下に好みなどはありますか。

 樋浦さん「最近はユニクロの靴下を履いています。たくさん色の展開があるので毎回選ぶのが楽しいです。あとはナイキの靴下も指が開いて踊りやすいです」

 *ユニクロで色を選ぶ楽しさ、よくわかります。それでも、いつも似たような色選んじゃうんですけどね、私の場合。あと、ナイキの靴下はそうなのですね。メモメモメモ。

纏う2: 樋浦さん思い出の舞台衣裳

 *これまでの舞踊人生で大事にしている衣裳と舞台の思い出を教えてください。

ん?この感じ…?

 樋浦さん「黒田育世さんの『ラストパイ』という作品との出会いは自分の人生の転機でした。衣裳は山口小夜子さんのデザインです」

 *おお、そうなのですね。『ラストパイ』は未見な私が、なにか見覚えみたいなものがあるように思ったのですが、それ、山口小夜子さん繋がりなのだと。基本、黒の装いに赤のラインが走る印象的なヴィジュアルから、米国のスティーリー・ダンによる傑作アルバム『彩(エイジャ)/Aja』(1977)、そのジャケットに写る山口小夜子さんの装いに通ずるものを感じたのでした。じっくり見較べるてみると結構違っているのですが、瞬時に浮かんだ印象です。まあ、それ自体、あくまでも寡聞な私の個人的なものに過ぎませんけれど。

 *話が逸れてしまいましたね。スミマセン。元に戻しまして、その転機となった『ラストパイ』についてのお話、もっと聞かせてください。

 樋浦さん「2018年のDance New Airという東京のダンスフェスティバルでのプログラムとして上演された際に出演しました。この作品は、2005年にNoism05が黒田育世さんに振付委嘱して製作されました。初演時は、穣さんや佐和子さんも踊られていました。
自分がこのとき担ったパートは、初演時は平原慎太郎さんが踊られていたところでした。衣裳も当時から同じものがずっと受け継がれているそうです。何回も床に倒れる振付があるので、左肘に緩衝材があてがわれているのが印象的でした」

 *なるほど、興味深いお話ですね。で、「転機」となったという点について、更にお願いします。

 樋浦さん「自分がこの作品と出会ったのは2017年で、その時は穣さんのパートを踊りました。当時は大学4年生で、もう踊ることはそろそろやめようと考えていました。
穣さんのパートは40分間絶えず踊り続けるので、身体が本当にもげそうになるのですが、この時自分の身体がまだまだもっともっと踊りたいと感じていることに気づいたのです。
本番を終えたあとに、いつも優しい笑顔で話す育世さんが、鋭い眼光で『踊りなさい』と言ってくれました。この時かけてもらった言葉は、今でも自分の舞踊人生を力強く支えてくれています。育世さんは自分の踊りの恩人です。
写真は2018年の公演のゲネプロ後に、誕生日を祝っていただいた時のものです」

 *なるほどです。それはまさしく「転機」ですね。樋浦さんの現在に繋がる重要な「鍵」を握る作品を踊る機会だったってことなのですね。更にそれに加えて、Noismとの「縁」をも感じるお話と受け取りましたが、その2017~18年頃、樋浦さんはNoismに関して、どのような思いをお持ちでしたか。

 樋浦さん「2018年は『NINA』の埼玉公演を観に行って、衝撃を受けました。その時は自分がNoismに入ることは全く考えていませんでした…。でも、元Noismのダンサーと海外のオーディションで出逢ったり、東京で出逢ったり、少なからず影響は受けていたと感じています」

 *導かれるべくして導かれて今に至っている。私たちにはそう思えますね、うん。そうそう。やはり「縁」ですよ、「縁」。

纏う3: 樋浦さんにとって印象深いNoismの衣裳

 *Noismの公演で最も印象に残っている衣裳とその舞台の思い出を教えてください。

 樋浦さん「『Fratres』の衣裳です。禊(みそぎ)へ向かう白装束のような、特別な儀式に向かっていく感じがします。Noismでの踊りはいつもものすごく緊張しますが、この衣装を着るときは特にビリビリとします」

 *はい、はい。わかります。「白」と「黒」、対極と言える見た目の色彩的な違いを超えて、内面的にと言うか、精神的にと言うか、通ずるものがありますよね。で、『Fratres』は樋浦さんにとって、基本、緊張するという「黒」ですから。でも、その「黒」を纏った「ビリビリ」の緊張状態を通過して、作品内世界へと越境し、憑依したりトランスしたりしていくのでしょうね。

 *Noism Web Siteへのリンクを貼ります。
 2019年の『Fratres I』、2020年の『Fratres III』の画像をどうぞ。

 *それこそ、前沢ガーデン野外ステージでの『セレネ、あるいはマレビトの歌』も、途中まで『Fratres』でしたけど、張り詰めた厳かさはあっても、特別、緊張の「ビリビリ」は感じませんでしたよ。

纏う4: 普段着の樋浦さん

凝ったローポジションからの撮影は
前回ご登場の…

 *この日のポイントと普段着のこだわりを教えてください。

 樋浦さん「普段着は、ゆったりとした服を着ていることが多い気がします。
新しい服を買うことが滅多にないので、稽古着も普段着も古着が多いのですが、このTシャツはH&Mで一目惚れして買ってしまいました。お気に入りです」

 *おお、盆栽のTシャツ!凡才の私ですが、何やら惹き付けられるものがありますねぇ。(笑)これ、相当エモイんじゃないでしょうか。添えられた「OBSERVATION(観察)」と「KNOWLEDGE(知識)」というふたつのワードも、描かれた盆栽の松が漂わせる佇まいを引き立てて、何だか意味深ですし!
そして、何より前沢ガーデン(と野外ステージ)というロケーションにピッタリではないですか。こちらのTシャツと前沢ガーデン野外ステージでの公演との間に何か関連はありますか。

 樋浦さん「あまり意識はしていなかったです…。半袖を昼間から着れるくらい暖かくなったので、嬉しくて着ていました」

 *そうなんですね。では、これはそもそものお話になるのでしょうが、古着はお好きと考えていいですか。

 樋浦さん「稽古着はすぐ汚れたり傷がついてしまったりするので、古着の方が気兼ねなく使えるのでよく利用します。あまり古着自体にこだわりが強くあるわけではありません」

 *ほお、そうなんですね、ほお。じゃあ、稽古着として着る古着に絞って、もう少し教えてください。

 樋浦さん「ダンサーの仲間や先輩から、着なくなった稽古着を譲り受けたりすることがあります。人の縁を感じたり、あの人の踊りすごかったなあとか、たまに思い出す時間は自分の支えになっているように感じます」

 *なるほど。そうした場合の古着って、単に古着というだけではなくて、繋がりや記憶も込みの稽古着ってことなのですね。いいお話しです♪

 *あと、これは服からは離れてしまうのですが、最後にもうひとつだけ。首から下げておられるお洒落なカメラについて教えてください。

 樋浦さん「FUJIFILMのX-E3というモデルのカメラです!最近中古で購入しました。レンズもとても気に入っています」

 *昔のフィルムカメラにあったようなボタンとかダイヤルが付いたレトロな感じのカメラなんですね。そして、撮影もカメラ任せのオート撮影機能ではなく、自ら設定を行うモデルのため、撮る人の個性が色濃く出るカメラなのだそうですね。その点、樋浦さんにピッタリかと。うん、お洒落です。カメラもそれをさりげなく首から下げた樋浦さんも♪
樋浦さん、どうも有難うございました。

樋浦さんからもサポーターズの皆さまにメッセージを頂いています。

■サポーターズの皆さまへのメッセージ

「いつもあたたかいご支援をありがとうございます。
感染症への警戒も落ち着いてきましたので、みなさんと直接お会いしてお話しできる機会を心待ちにしております。
今後もみなさんへいい舞台をお届けできるよう、精進いたします」

…ということでした。以上、「纏うNoism」第7回、樋浦瞳さんの回はここまでです。樋浦さん、色々と有難うございました。

これまで、当ブログでご紹介してきた樋浦さんの他の記事も併せてご覧ください。

 「私がダンスを始めた頃」⑳(樋浦瞳さん)
 「ランチのNoism」#19(樋浦瞳さん)

今回の「纏うNoism」、いかがでしたでしょうか。では、また次回をどうぞお楽しみに♪

(shin)

「皆さんのお陰でいい舞台になった」(山田さん)の言葉で終演♪『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』

2023年4月23日(日)、前日に幕が開いた『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』ですが、2日間の日程のため、早くもこの日、終演を迎えることになりました。開演時間は15:00。りゅーとぴあ界隈は同時刻に他のイヴェントも重なっていたため、早くからNoism公式が駐車場の混雑予想を発していたほど。車を駐めるのにやきもきした方も多かったのではないでしょうか。

かく言う私ははじめからりゅーとぴあ駐車場を諦めて、近隣の駐車場狙いで動き、りゅーとぴあへ向かう道すがら、The Coffee Tableさんでカフェラテを求めて、美味しく「暖」を得ながら歩いたような案配でした。そうです。この日もくっきり晴れてはいたのですが、風が冷たい一日だったのです。

カフェラテを飲みきる頃には、既に開場時間となっており、あの作品たちにもう一度向き合う準備を自分のなかで徐々に徐々に進めていきました。チケットを切って貰ってホワイエに進むと、まず目に飛び込んできたのが物販コーナーに立つ庄島姉妹の姿であり、そこで振り返ると今度はプログラムの展示コーナーには三好さんと横山さんの姿を認めることになりました。なんと豪華なスタッフであることでしょう!そのまま放置できる筈もなく、お願いして写真を撮らせていただきました。多幸感、多幸感♪どうも有難うございました。

そんなこんなで開演時間を迎えて、この日も前日同様、『Noism1メンバー振付公演2023』から幕があがりました。それからの4作品について、前回のブログには書けなかった事柄を思い付くままに記録しておこうと思います。

糸川祐希さん振付作品『Ananta』。「円環」を意識させる端正な印象の作品。斜めにかぶいて立つ姿がいつまでも残像として残り、傾いた身体の軸を上方に伸ばしてみると、幻視される直線上の一点で交わることになる身体ポジションの把捉も影響あるかと。ラストの暗転直前、互いに視線を交わらせる様子にもグッとくるものが。

坪田光さん振付作品『あなたへ』。最初は繰り出されるビートに乗って、やがて、祈りにも聞こえる不鮮明な人声のなか、自らの身体を差し出す舞踊家ひとり。天とおぼしき上方から、そして正面方向から受け取った何かをその身に入れてなおも差し出す。そうして見出されるだろう自分にとっての真実を手にせんがため。

樋浦瞳さん振付作品『器』。前回も書いた斜めのアクティング・ラインへの拘りを再確認。コッポラ『地獄の黙示録』のヘリのプロペラ音にも似て、デフォルメされた回転系のノイズのなか、時折、周期的に現れる金属開閉時のようなノイズにおののきつつも「今」に向き合うふたり(或いは「2匹」)、休む間もなく。

中尾洸太さん振付作品『自転・公転』。弦とピアノのゆるやかな楽音のなか、ひとりがいまひとりに見捨てられて踊る。次いで、もうひとりの側でもその同じ状況が反復される。そこを経過したのち、二者の関係性は更新され、自らを超え出たその先で、相手を見出して、新たな関係性と邂逅し、刷新されたひとりとひとり。

…そんな事柄を、私は感じました。ご覧になられたあなたはどう感じましたか。コメント欄にてお書きいただけましたら嬉しく思います。いずれにしましても、四者四様の刺激に満ちた作品たちだったと感じました。

そこから、15分間の休憩を挟んで、ほぼ16:00、後半の『Noism2定期公演vol.14』部へと移行していきました。初日ブログのコメント欄にて、fullmoonさんが正しく指摘してくださった、金森さんの振付の「強靭さ」に改めて打たれることになりました。集められたピース、その一つひとつの魅力的なことといったら!でも、その「進行」或いは「展開」は前回のブログをご覧いただくこととして、今回は詳細には立ち入らないでおきます。

但し、どうしても書かねばならぬことがあります。22時間前の(前日の)パフォーマンス(そしてそれ自体は全然悪いものではなかったのですが、)からみて、圧倒的な訴求力を加えて踊られていったということを特筆しておかなければならないでしょう。わずか22時間を隔てて、ほんの一度、舞台上で踊ったことで手にした自信と確信を身中に、「今のこのときを逃してなるものか!」とばかり、それぞれのその可能性を押し広げんと、それぞれに未踏の領域に踏み込んで踊ってみせたのが、この日のNoism2のメンバー9人だったと言わねばなりますまい。ラストの『クロノスカイロス1』を踊り終え、いまだ息の荒い9人(とNoism1メンバー4人)に対して繰り返されたカーテンコール、その度毎に、スタンディングオベーションの人数が増えていったのです。その場面、客席と舞台の間に生じ、やがて〈劇場〉内を覆い尽くすに至ったもの。9人の献身の果てにもたらされた非日常の感動、それに浸ることの幸福感。恐らく、舞踊家も観客も誰ひとりとしてこの日、このとき、それぞれの心が示した振幅の大きさを忘れることはないでしょう。確信をもってそう言い切りたいと思います。涙腺直撃の、素晴らしい2日目の(最終)公演でした。

その後はやはり前日と同様、アフタートークが持たれました。その際のやりとりについてもかいつまんで簡潔にご紹介しましょう。この日は質問シートが多く、それに基づいてのアフタートークでした。

Q01: Noism2は現在、メンバーは女性だけ。難しいことは?
 -浅海さん:
 「組みもの」など、男性がいて初めてできる表現もあるので、そこは淋しい。常に募集している。

Q02: Noism2からNoism1にあがるときの変化はどんなものか?
 -糸川さん:
 (金森)穣さんとのクリエイションが出来ることが一番大きい。
 -坪田さん: 出来ること自体はNoism2のときから変わらない。Noism2だったときも学ぼうと思えば学べると思っていた。
 -山田さん: やはり環境が異なる。本人が意識していなくても変わっていることもある。

Q03: 【山田さんと浅海さんに対して】それぞれの振付作品をみた感想は?
 -浅海さん:
 それぞれの性格がそのまま作品に出ていると思った。
   糸川さん作品は、動きの組み合わせ、音楽の選び方、4人の配置。
   坪田さん作品は、そのまんま勢いよく踊って表現していた。
   樋浦さん作品は、彼が描く絵と似ていると思った。
    ちょっとジブリのような。水の流れというより水の泡のような。
   中尾さん作品は、動き、流れ、構成、良さが詰まっていた。
    振りをつくるのがしっかり見えていて良いなと思った。
 -山田さん: みんな一緒で、自分の問題意識から出発して、社会や世界へと問題意識を広げていけるといいと思う。よく出来ていた。次、何をするのか気になる。

Q04: 「タイトル」の理由は?
 -糸川さん:
 「アナンタ」とはサンスクリット語で「永遠」、そしてインド神話では原初の蛇にして神。まず、音楽から決めて広げていったとき、途中で「永遠」への疑問が湧いた。
 -坪田さん: 「あなたへ」。年配の人は誰しも迷いがあっただろうし、懐メロみたいだったり、若い人には今はつらいかもしれないが、先に光があるかもとか、応援ソングみたいだったり。未来の「自分」にむけた手紙のような作品をと。
 -樋浦さん: 「器」。入れ物に対して、入るものがあり、出ていくけれど、残るものがある。身体は器だなと。過ぎていくことで悲しいこともあるが、中に入れて変化していく器としての身体を思った。
 -中尾さん: 「自転・公転」。人間関係の比喩が一番大きい。外からみれば、変わらず回っているが、中のことはわからない。一生変わらない世界線、軌道を舞台上に載せてみたらどうなるかなぁと思った。

Q05: 女性メンバーは「振付」はしないのか?
 -山田さん:
 予定段階では女性メンバーもいた。是非、今度はやって欲しい。

Q06: 【山田さんと浅海さんに対して】昨日から今日にかけて、メンバーにどう声を掛けたか?
 -浅海さん:
 何も声は掛けてない気がする。
 -山田さん: 今日の本番前、見詰め合っているのを目撃した。
 -浅海さん: 舞台に出るとき、「いってらっしゃい」って言う。
 -山田さん: 直前に声を掛けるのは難しい。でも何か言っておきたいと思って、昨日は「これが最後だと思ってやって欲しい」と言い、今日は今日で「昨日から今日、自動的に踊れる訳ではない。初演のつもりでやって欲しい」と言った。

…と、まあそんな感じでしたでしょうか。で、アフタートークの最後に山田さん、『領域』の公演チラシを手に、明日明後日からダンスカンパニーカレイドスコープを主宰する二見一幸さんと一緒のクリエイションが始まる予定だと話し、続けて、同公演では浅海さんも久し振りに踊ると言ったところで、場内から大きな拍手が起こりました。見られるのですね、浅海さんの踊り。嬉しいです。

で、山田さん、最後の最後、客席に向かってこう言って締め括ってくださいました。「(公演が終わってしまい、)ちょっと淋しいですが、皆さんのお陰でいい舞台になりました。どうも有難うございました」と。しかし、それはこちらの台詞です。「振付家・舞踊家をはじめ、今公演に関わった皆さん、どうも有難うございました。そしてお疲れ様でした」と心より。

大きな感動(と同時に、小さくはない淋しさ)を胸に帰路につきましたが、それ故、ホントに次回の公演が楽しみでなりません。そうですよね、皆さん。ではまた公演会場でお会いしましょう。今日のところはこのへんで。

(shin)

『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』初日を観てきました♪

陽は差しているのに肌寒い2023年4月22日(土)の新潟市でしたが、夕刻のりゅーとぴあ〈劇場〉だけは、舞踊家と振付家の情熱が身体の発する熱となって客席に届き、観る者も全員、それに呼応して熱い眼差しを注ぎ返す空間と化し、そこだけ周囲より高温となる「ヒートアイランド現象」が出来してでもいるかのようでした。その「熱源」の正体は、言うまでもなく、「挑戦」の2文字が相応しい公演『Noism2定期公演vol.14+Noism1メンバー振付公演2023』に他なりません。

開場時間の16:30になり、ホワイエに進むと、この度のNoism2定期公演に取り上げられたNoismレパートリーに関するポスターやプログラムの展示があったほか、設置されたモニターには過去の舞台動画が流されていて、訪れた者の足を止める仕掛けが幾重にも施されていました。それはまさしくNoismの歩みを概観させると同時に、重ねられた年月に相応しい華のあるレイアウトだったと思います。

やがて開演時間の17:00が迫り、客席に降りていきました。まずは『Noism1メンバー振付公演2023』からのスタートです。
客電が落ちた後、黒い緞帳に白い文字で作品タイトルに加えて、演出振付家と出演者の名が暫し投影されると、その緞帳もあがって…、というのが作品毎に4度あり、4人の若き振付家の作品を観ました。

皮切りは、糸川祐希さんの『Ananta』(出演:兼述育見さん、土屋景衣子さん、渡部梨乃さん、太田菜月さん)。「アナンタ」とは、インド神話に登場する地底界の最深部にて世界を支える原初の蛇で、自らの尾をくわえて輪のかたちになっており、「無際限」や「永遠」を象徴する存在(蛇神)なのだそう。プログラムには「『ウロボロスの蛇』のよう」とあります。寒々しい風の音を思わせる坂本龍一『レヴェナント:蘇えりし者』のテーマのなか、歩み出た4人。その後、Alva Notoの(否が応でも、『R.O.O.M.』を思い起こさせる)途切れ途切れのノイズの間に細切れのように踊る、身体性を前面に打ち出したソリッドな作品と言えようかと思います。

次いで、坪田光さん自作自演、単独で踊る『あなたへ』。自らの身体ひとつで全てを引き受けて立とうとし、孤独のうちに内心の苦悩に向き合い、迷いながらも、自らにとっての真実を求めて身を捧げんとする一途さに溢れた作品と受け取りました。

3番目は樋浦瞳さんの『器』(出演:樋浦瞳さん、兼述育見さん)。ふたりの息はぴったりなのですが、終始、上手(かみて)奥から下手(しもて)手前への斜めのラインを使って、殆ど客席に正対することなしに踊っていくため、ついぞ、安定を見ることなく、現在が不断に更新されていくかのような印象の作品です。(それが方法的なものなのか、或いは、例えばオブセッションのように作家性に根差したものなのか興味深いところです。)

最後に踊られるのは、中尾洸太さんの『自転・公転』(出演:中尾洸太さん、渡部梨乃さん)。まずはふたつのソロ(渡部さん→中尾さん)から入り、ついでふたりが流麗に、スタイリッシュにデュエットを踊っていきます。他者を、翻って、自分を捉えようとする営みででもあるかのように。

17:45頃から15分間の休憩に入り、その後、『Noism2定期公演vol.14』として再開されました。そこからは金森さんの演出振付で、山田勇気さんによる構成のNoismレパートリー「Bachプログラム」です。(まだ、1年目のメンバーは充分に把握できておりませんので、抜けもございます。そのあたり申し訳ありませんが、ご容赦いただくとともに、記載に間違いがある場合にはお知らせくださいますようお願いします。)

まずは『ZONE』より「academic」で幕があがり、Noism2の9人全員で踊られました。いきなり、バッハの音楽が金森さんの美意識で透徹されて可視化され、観客に差し出されるのですが、それはまた、これを踊ってこそのNoismといった風情もあるので、全員、緊張感もあったでしょうが、幸先のよいスタートを切った感がありました。そこから兼述さんと土屋さんふたりの踊りを経て、『no・mad・ic・project』より。上手(かみて)手前に椅子を1脚運んできて、腰掛けた高田季歩さんが上方からのピンスポットを浴びてひとりで踊ります。続いては『Nameless Hands-人形の家』の人形振りと黒衣の番です。黒衣に操られる人形は太田さんと村上莉瑚さん。人形ゆえにまばたきもできません。(4/15「オープンスタジオ」の際からすると、黒衣はまず3人が河村アズリさん・佐藤萌子さん・春木有紗さんで、そのパート最後に村上さんを下げるために出てくるもうひとりが高田さんかと思われますが、顔も身体も覆い、「見えない約束」の黒衣ゆえにしかとはわかりません。)不穏さは更に増して、『Phychic 3.11』(渡部さん・土屋さん)へいきます。直視するのだに恐ろしく、耳を塞いでなんとかやりそごそうとする以外ありません。(こちらの黒衣も同様に、兼述さんかと思われますが、確かかと言われれば、それも…。)
そこから一旦、暗転を経て、『ZONE』「academic」(太田さん・河村さん・春木さんに加えて、Noism1から中尾さん・坪田さん・樋浦さんも参加します。)、後半も品位ある美しさから始まります。続いて、雰囲気もそのままに『Complex』よりデュエット(村上さん・Noism1糸川さん)です。その後は『愛と精霊の家』より冒頭のシーン(兼述さんのソロ)が続き、ラスト、クライマックスの『クロノスカイロス1』を9人が力いっぱいに疾走し、踊ります。このときの9人の表情は(本当はめちゃくちゃ苦しいのでしょうが、)明るい笑顔になっていて、残りの体力を全て振り絞って踊り切っていく若い9つの身体が、ホントに清々しく、目に眩しく映りました。

何より、3年目から1年目のメンバーまで、ひとりの例外もなく、みんなNoismの一員たらんとして、誠実にNoismの動きを身体に落とし込もうとしてきたことが見詰める両目から入ってきて、胸が熱くなりました。過去から繋がってきたものがきっと未来へも繋がっていく、そんなロマンを感じさせるパフォーマンスだったからです。

終演後に緞帳があがると、まずはNoism2の9人が横一列に並んでいました。拍手。ついで、Noism1からの男性舞踊家と4人がその前に並ぶとまた拍手。そして、その4人がふたりとふたりに分かれてNoism2メンバーの横に移動してからは更に大きな拍手に変わり、それはもういつ果てるともなく続き、カーテンコールが何度も何度も繰り返されました。

それから、久し振りのアフタートークです。久し振りとは言っても、金森さんも井関さんもおられず、山田さんと浅海さん、そして振付を行ったNoism1メンバー4人によるアフタートークですから、かなり新鮮な感じがしました。その折のやりとりから少しご紹介しましょう。

Q01: 特に変化したメンバーは?
 -浅海さん:
 1年目のメンバー。このステージは思った以上に大きかったと感じた筈だが、広さを把握してきて、空間認識が見えてきた。
 -山田さん: 1年目のメンバーは成長が見え易い。2、3年目となると伸び悩んだりしがちだが、自分の踊りを見つけてくれたかなと思う。

Q02: 振付公演の出演者はどうやって選んだのか?
 -糸川さん:
 音楽から得たインスピレーションでの作品作りだったが、そのときの想像のなかにいたメンバーを直感で。自分のやりたいことを理解してくれるメンバーを。
 -坪田さん: 去年は8人という大人数の作品で、周囲から「よかった」と言われたことが不服だった。自分に試練を与えるつもりで自分ひとりで踊ろうと思った。
 -樋浦さん: 兼述(さん)とふたり。たたかっている2匹という感じ。自分がイメージしていないところまでたたかってくれる人を。
 -中尾さん: 金森さんからも同じこと訊かれたのだが、渡部さん。やったことのない人とやってみたかった。ほか、男性はみんな忙しそうだったから、自分を選んだ。

Q03: 【山田さんから糸川さんへ】初めて作ってみてどうだった?
 -糸川さん:
 去年、坪田さんの作品に出て、作品作りに興味を持った。自分ではない人にやって欲しいことを伝えるのは難しかったし、どう返してくれるか、やりとりが難しかった。でも、それを通して、自分がやりたいものが見えた。

Q04: 山田さんは何故『クロノスカイロス1』を選んだのか?
 -山田さん:
 あの映像で踊ることで、違う次元に行けるんじゃないかと思った。先輩と拮抗して存在して、でも時間は過ぎていく、踊りは消えていくことに。

Q05: 日々気をつけていることを教えてください。
 -糸川さん:
 トレーニング。今、筋トレに夢中。男性らしい筋肉つけたい。
 -坪田さん: 日々変わることを目標に毎日やっている。知らない自分に出会いたいと思いながら。
 -樋浦さん: その瞬間はその瞬間にしか来ない。上手くやりたいとかではなく、「今」を味わい尽くすこと。
 -中尾さん: 「じょうさわさん(=金森さん&井関さん)」より上手くなるとしか考えていない。

Q06: 【山田さんから4人へ】現在、41歳の自分の世代では、コンテンポラリーダンスは盛んだった。ベジャールとか「大きな振付家」がいた世代だった。みんなの世代で、みんなにとって影響を受けた特別な振付家・アーティストは誰か?
 -糸川さん:
 ウィリアム・フォーサイス。かっこいい。自分の美意識に反応する作品を作っている。
 -坪田さん: いっぱいいる。でも、遠くの振付家より、金森さんや山田さんとやった経験が深層心理に入ってきている。
 -樋浦さん: 新潟生まれなので、金森さん。大きな影響を受けてコンテを始めた。あと、彫刻家のイサム・ノグチ。
 -中尾さん: イリ・キリアン。4年前に観て、コンテやりたいと思った。他には椎名林檎。彼女の世界観、存在感、舞台。

Q06b: 【山田さんから樋浦さんへ】(影響を受けたのが金森さんという)その割には違う。オリジナリティがあるのかなと思うけど。どういうところから作っているのかな。
  -樋浦さん: 作っていて、「音楽って何なのだろう?」と思った。金森さんのクリエイションを経て思うのは、自分はこの音楽を理解しようと思うよりは、自分のなかのリズムを優先させがちなのかなと思う。違うからこそ魅力的に感じるのかなと。
  -山田さん: うん、そうだね。

…と、こんな感じだったでしょうか。どちらの公演もまだまだ一度観ただけですので、雑な書き方になってしまってます。スミマセン。とは言うものの、それらを観る機会も今日のもう一度限りです。目を皿にして何も零さずに観たいとは思っているのですが、そんなこと到底無理な話で。でも、「挑戦」しかないですよね。今日もう一日、浸って楽しんできたいと思います。

「挑戦 躍動 Noism」

当日券もあるとのことですから、皆さまもお誘い合わせの上、お越しください。きっと、よい日曜日になること請け合いです!(キッパリ)

(shin)

 

「ランチのNoism」#19:樋浦瞳さんの巻

メール取材日:2022/5/20(Fri.)

今回、現Noism1メンバーのトリを飾るかたちでご紹介しますランチは地元・新潟出身の樋浦瞳(あきら)さん。で、このところのあの「流れ」(?)は今回も途切れることなく続くのでしょうか。そんな興味も持ちながら覗いてみたいと思います。

♫ふぁいてぃん・ぴーす・あん・ろけんろぉぉぉ…♪

地元で躍動する若き舞踊家にりゅーとぴあの昼が来た!「ランチのNoism」♪

*まずはランチのお写真から。

またしても中央でツヤツヤ光るのはあの「物体」!

 *やはりあの「流れ」は途切れていませんでした!で、この画像に占めるその位置、これがホントの「玉座」なのかもしれませんね。(笑)そして、それこそがツボとちゃんと心得て、両の掌でのご紹介とは!…樋浦さん、ニクいです。

1 今日のランチを簡単に説明してください。

 樋浦さん「揚げ茄子のお味噌汁、納豆、友美さん(=中村友美さん)のゆで卵の黄身です」

 *「ランチのNoism」第17回・坪田光さんの巻に端を発するあの「物体」を巡る「流れ」、…確か、近くにいたときとか、話し合いが持たれたりしてとかで、中村さんから樋浦さんに「それ」が移動するというお話でしたよね。でも、中村さんによれば、主な移動先は坪田さんだった筈。もし、この日、「それ」が樋浦さんのところに来ていなかったなら、お味噌汁と納豆だけだったってことですか。少な過ぎじゃありませんか、それ。

 -ゆで卵、自分で持って来ようと思ったりはしませんか。

 樋浦さん「卵は夜によく食べるので、昼間は自分では用意していないですね。でもたまに貰えると贅沢な気持ちになって嬉しいです」

 *それ、わかります。その気持ち。この日は「ランチのNoism」取材日ってことで、坪田さんが譲ってくれたのかもしれませんね。うん、きっと、そうだ。

 -じゃあ、納豆についても訊かなきゃじゃないですか。納豆はよく混ぜる派ですか。それともあまり混ぜない派ですか。(←何て質問だ?と自分でツッコむ、ツッコむ。)

 樋浦さん「そんなに混ぜ方にこだわりはありませんが、ぼーっとしているとずっと混ぜ続けてることがあります」(笑)

 *私はあまり混ぜない派なので、樋浦さんはどうかなぁと、つい訊いちゃいました。(汗)

 2 誰が作りましたか。普通、作るのにどれくらい時間をかけていますか。(or 主にどこで買ってくるのですか。)

 樋浦さん「お昼は平日は作ってはいません。お味噌汁はフリーズドライのものを買います。家の近くの清水フードか、原信で購入します」

 *この響き、休日は違うってことじゃないですか。だから、訊いちゃいましたよ、休日のこと。そしたら、…

 樋浦さん「休日は大量に食べたいので、野菜もお肉もどっさり使って料理します。この前のオフは甘いものが食べたくて、オレオを使ってチーズケーキを作りました。計算しませんでしたが、とんでもないカロリーだったと思います…」

 *で、そのとき作られたオレオのチーズケーキ画像も送ってくださいましたので、ご覧ください。

樋浦さん作オレオのチーズケーキ♪

 *樋浦さん、どうも有難うございます♪

3 ランチでいつも重視しているのはどんなことですか。

 樋浦さん「お昼休憩は気持ちを切り替えてほっとひと息つくことを大切にしています。 温かいものを飲むと心が落ち着きます」

何を思う?
そんなコギト・エルゴ・スム的画像

 *な~る。食べることや食べるものに力点が置かれていないんですね、樋浦さんのランチタイム。その点はよく伝わってくるのです。くるのですけれども、それにしても、量が少ないんじゃないかと思う訳で。(個人の感想です。)

 -あと、樋浦さんにとって、心を落ち着かせる効果がある「温かいもの」とはどんな飲み物ですか。

 樋浦さん「昼間はコーヒーですね。洸太くん(=中尾洸太さん)と一緒に自販機へ散歩するときもあります。たまに県民会館の自販機でカフェオレやココアを買ったりもしますね」

4 「これだけは外せない」というこだわりの品はありますか。

 樋浦さん「星那さん(=井本星那さん)から誕生日にいただいたお椀は欠かせません!木が優しい色で、形もかわいいお椀なのです」

 *確かに1枚目のランチ画像中、木目(もくめ)もフォルムも美しく、目を惹く素敵な器があるなぁと。えっ、嘘だって?あの「物体」しか見てなかったじゃないかって?そ、そんなことありません。ちゃんと見てましたって、ハイ。(汗)センス、いいなぁって、ハイ。(汗)ああいうの、欲しいなって、ハイ。(汗)

5 毎日、ランチで食べるものは大体決まっている方ですか。それとも毎日変えようと考える方ですか。

 樋浦さん「食べるものは大体一緒ですが、お味噌汁の具は毎日違うものを選びます。 あとは日によってナッツやビスケットなどを食べます。固いものをガリガリ噛んでいる時間が好きです」

 *「固いものをガリガリ…」の時間が好きとは!そっち方面のお答えはこれまで誰からも聞かれなかった類いのものですね。そのあたり、樋浦さん独特の感性が表われていると感じましたが、「それもありかも」とも思いました。

6 公演がある時とない時ではランチの内容を変えますか。どう変えますか。

 樋浦さん「公演の時は普段のものに加えて、お菓子を食べたりします。いただいた差し入れもたくさん食べてしまいます。ありがとうございます!」

 *やっぱり、余計にパワー要るでしょうからね、公演の時には。お菓子っていうの、わかりますね。そして、最後のエクスクラメーション・マーク(感嘆符)付きの「ありがとうございます!」、きっと効果絶大だと思いますよ。人の心の掴み方、心得てらっしゃいますね、樋浦さん。

7 いつもどなたと一緒に食べていますか。

 樋浦さん「最近はジョフさん(=ジョフォア・ポプラヴスキーさん)、友美さん(=中村友美さん)、光くん(=坪田光さん)と一緒に食べています」

坪田さん撮影なのでしょうかね。
いかにも仲良さそうです。

8 主にどんなことを話しながら食べていますか。

 樋浦さん「ジョフさんの家のウサギがかわいい話を聞いたり、光くんと美味しそうなごはんや甘いもののお店の話をします。今度一緒にクレープ食べ放題のお店に行く予定です!」

 *若い頃って、面白いくらい沢山食べられたりしますよね。で、食べた後、もの凄く苦しくなるっていうのも必須の経験かと。若い頃しか出来ないし。でも、クレープって、あのホイップクリームを考えると、ハードル高そうですから、「俺の胃袋は宇宙だ」って決め台詞を吐くフードファイター化が必要ですね、きっと。(って、草彅剛さん主演のドラマ『フードファイト』(2000)というのがありました。←古っ。(汗))

9 おかずの交換などしたりすることはありますか。誰とどんなものを交換しますか。

 樋浦さん「たまに友美さんからゆで卵の黄身や、バナナをもらいます。 ジョフさんがいつも美味しそうなお菓子をもっているので、たまに恵んでもらいます」

 *そうなんだ。ジョフォアさん、ちょっと意外ですけど。ふ~む、そうなんですね、美味しそうなお菓子を持っているジョフォアさん。そのあたりを訊ねてみましたら、…

 樋浦さん「新作のグミやキャンディをよくもらいます。この間、家へ遊びに行ったときはジョフが作ったバナナケーキをもらいました!美味しかったです」

 *グミは前回の中村友美さんの回でも登場してきた品でしたね。メンバー内での人気が高いお菓子とお見受けしました。

10 いつもおいしそうなお弁当を作ってくるのは誰ですか。料理上手だと思うメンバーは誰ですか。

 樋浦さん「光くんは家でパンやシュークリームを密かに作っていますが、まだ持ってきてくれていないので今後をとても楽しみにしています。
侑加さん(=浅海侑加さん)の作るティラミスはとても美味しいです!!」

 *樋浦さんの願い、坪田さんに届きますように。一緒にお祈りしています。
そして、浅海さん、キタァ!実は、来月の「ランチのNoism」に登場してくださるのが、現Noism2リハーサル監督の浅海さんで、その回を以て、この連載企画はしばしお休みとなります。そんな大トリの浅海さんランチが楽しみになる発言、樋浦さんからいただきました。それも含めまして、樋浦さん、どうもご馳走様でした。

今回も最後は樋浦さんからのメッセージで締め括りましょう。

■サポーターズの皆様へのメッセージ

「いつもあたたかいご声援をありがとうございます。本番のとき以外でも、劇場でお会いした際に声をかけていただけることがとても嬉しいです。今後も一生懸命、稽古に励みます」

りゅーとぴあ2Fにて

そう言って頂けると、お声がけすることも迷惑ではないのだなとわかり、安心できます。樋浦さん、どうも有難うございました。ってことで、今回はここまで。
で、メンバーが一巡する次回は当面のラストってことになりますから、ちょっと淋しい気持ちもありますが、まあそれはそれとして、是非楽しみに待っていてください。今回もお相手はshinでした。それではまた。

(shin)

金森マジックを受け継ぐ、若き舞踊家たち(サポーター 公演感想)

Noism1メンバー振付公演2022〈2022/2/6(Sun.)15:00〉

昨日にも増して寒さが厳しかった2月6日の新潟市。りゅーとびあ・劇場でのメンバー振付公演千秋楽は、やはりその熱量で、観客の身体を深々と温める公演となった。

公演は前半3作品、休憩15分を挟んでの後半2作品、 約90分。

1作目は樋浦瞳演出振付「Four Falling Flowing Filaments」(出演:三好綾音、中村友美、兼述育見、渡部梨乃)。冒頭、舞台上手から下手方向へ、振り子のように大きく揺れ動く照明によって、一気に舞台へと引き込まれる。3~4mほどの鉄パイプを駆使してのダンスや、反復される動きの連なりなど、樋浦さんの演出力が光る。若き4人の女性舞踊家各々の引き締まった肉体美が醸す健康的なエロス、ダイナミックさと軽やかさが同居する動きの連鎖(鉄パイプを滑り落ちる振りの楽しさ)。舞踊を観る醍醐味と演出のケレンが、見事に炸裂した。中村友美さんのニュアンス豊かな表情含めた表現力、兼述育見さんの伸びやかな身体を活かした働きを特筆したい。

2作目は三好綾音演出振付「French suite #5」(出演:井本星那、庄島さくら、庄島すみれ)。3人の女性舞踊家が無音で、ピシリと動きを合わせてゆく静謐の美。白地の衣装含め、東京バレエ団によるイリ・キリアン「ドリーム・タイム」を連想する、夢のように愛おしい一瞬。そして、バッハの旋律に載って展開する庄島すみれさんのソロ→パ・ド・トロワの、躍動感と矛盾なく立ち現れる穏やかな余韻。井本星那さんと庄島姉妹が織りなす調和も相まって、バッハの楽曲に真摯に向き合った三好演出を味わう。

3作目は坪田光演出振付「Nyx」-「Eris」-(出演:ジョフォア・ポプラヴスキー、杉野可林、横山ひかり、兼述育見、土屋景衣子、渡部梨乃、糸川祐希、太田菜月)。スモークと照明のコントラストが鮮烈な舞台から滲み出してくる黒衣の群れ。苦悶する彼・彼女たちからは、否応なく「現在」を生きる苦悩が浮かび上がる。一転、ドラムスの激しいビートにのって展開する群舞では、若き舞踊家たちが劇場の広々とした空間を縦横に駆け、跳躍し、観る者を圧倒する。ジョフォアさんの堂々たる体躯を活かしたダンスはもちろん、杉野可林さん、兼述育見さん始め、ダンサーの若々しい息吹の連なりに、アジアや韓国の伝統芸能を連想し、高揚感を覚えた。

休憩後の4作目は中尾洸太演出振付「ひふみよ」(出演:井本星那、杉野可林、横山ひかり、青木愛美、西川瑚子)。暗闇を蠢く井本さんの背後で、まるで天地を支えるように立つ4人の舞踊家(内3人は逆立ち)。グレゴリア聖歌は、何処か日本の声明を思わせ、5人のダンサーの衣装が日常的な色彩だからこそ、より深々と「日常の祈り」を連想する。舞台後方に開かれた空間から飛び降りてゆく4人と、微かな光を求めて前進する井本さんとの対比が印象的なラスト含め、やはり「現在」を意識させられる一作。

そしてトリを飾る5作目はジョフォア・ポプラヴスキー演出振付「Being there」(出演:中村友美、樋浦瞳)。劇場の大空間を使いつつ、敢えて二人の舞踊家によるパ・ド・ドゥに挑んだジョフォア演出は、高らかに愛を謳い上げることの出来ない「現代」を舞踊によって昇華する、痛切な美に充ちた作品として結実した。暗闇を多用し、互いを求めつつ、磁石のように引き離されてゆく二人(男女や肉親・恋愛といった狭義に留まらない豊かなニュアンスを伴って)。僅かな照明の元で手を伸ばそうとして、触れることが出来ず、影絵のように暗闇を彷徨う中村さんと樋浦さん。音楽の転調も相まって、二人が劇場を駆けつつ舞い踊るシークエンスでは、涙が溢れた。幕切れをブラッシュアップすれば、Noismのレパートリーたりえる傑作と思う。

全5作いずれも、劇場の広さに挑みつつ、見事に観客を驚かせ、高揚へと導く 「ケレン味」と真摯さが同居していた。魔術的な演出を見せる芸術監督・金森穣さんの精神が、若き舞踊家たちの中に脈々と受け継がれていることを強く認識させられた。一朝一夕には生まれえない Noism Company Niigata、その18年の蓄積が、若き舞踊家たちを羽ばたかせているのだ、と思う。

(久志田渉)

激しく胸射つ若き舞踊家たちの創意(サポーター 公演感想)

Noism1メンバー振付公演2022〈2022/2/5(Sat.)17:00〉

厳しい寒さに見舞われつつも、予報ほどの降雪とはならなかった2月5日の新潟市。 Noism1メンバー振付公演2022初日に駆けつけた友人知己始め観客は、皆凍えた様子で劇場に集まったが、公演後には、その身体の奥から沸き上がる高揚が滲むようだった。明日の楽日を前に、詳細や演者の配置は記載を避けるが、劇場の広々とした空間を如何に活用し、音楽・照明・演出とダンサーの身体で、観客の胸に刻まれる「何か」を生み出そうとするメンバー五人の創意が充ち溢れるような公演だった。 まるで通奏低音のように、「東洋の美」や「祈り」が各作品から香ったことも印象深い。

ダイナミックかつ軽やかな動きの連鎖と、女性ダンサー4名の健康的なエロスが炸裂する樋浦瞳作品。静謐さと愛らしさとが調和を見せる三好綾音作品。暗闇から鮮やかに展開する切れ味が見事な坪田光作品。彫像のように美しいダンサーたちの動きと、演出のケレンに唸る中尾洸太作品。そして、失礼を承知で書けば、そのイメージを裏切り、ストイックな迄の悲愴感と演出の妙で、息を呑む舞台空間を創り上げたジョフォア・ポブラヴスキー作品。 どの演目かは避けるが、中村友美さんの活躍、中村さんと樋浦さんのデュオの美、 Noism2メンバーの堂々たる存在感は特筆したい。各作品の妙味が連なり、終演後2度目のカーテンコールでは、思わずスタンディングオベーションしてしまった。

客席移動も可能との案内もあり、感染対策も万全なりゅーとぴあ。 Noism1の若き舞踊家たち渾身の舞台をどうか見逃さないでいただきたい。明日15時からの千秋楽の盛況を祈りたい。

(久志田渉)

「私がダンスを始めた頃」⑳ 樋浦瞳

 小さい頃から、じっとしていることが苦手でした。暇さえあれば兄と妹と、犬と猫と、ひたすら走り回っていました。

 私が踊りを始めたのは、母が近所のモダンダンス教室に連れていってくれたことがきっかけです。その教室では、小さい子のクラスは先生と遊ぶことが主な内容でした。ボール遊び、バドミントン、フラフープ、大縄跳び、マットと平均台でアスレチックを作って跳び越えたり、床にチョークで好きな模様をかいてケンケンパをしたり……。

 様々な遊びの中でも一番楽しかったのが、変身遊びでした。先生が言ったお題に次々変身していくのですが、私は「カエル」や「うさぎ」や「カンガルー」と言われると、顔を輝かせて狂ったように跳びまわっていたそうです。この身体の歓びが、私が踊る原点だと思います。

 その後、大学進学のために地元の新潟から関東へ移り、筑波大学の舞踊研究室で学びました。そこで様々な身体表現の在り方を知り、日本における芸術と社会との関わり方について、問題意識をもつようになりました。
 その頃から自分が舞踊とどのように関わっていきたいのか考えるようになりました。
 研究者や教師の道へ進む友人が多かったのですが、人生で元気に身体を動かせる時間は限られているので、まずは自分自身が踊ることでどこまでいけるのか挑戦してみようと思い立ちました。

 踊っているときは何にでもなれて、どこへでも行けて、何者でもなくなれて、どこでもない場所へ行けます。
 これが、自分が舞踊に惹かれ続ける理由です。
 舞台の上から、作品とお客さんを無限に旅へ連れていける踊り手になりたいです。

(ひうらあきら・1995年新潟県生まれ)