金森穣『闘う舞踊団』刊行記念 金森穣×大澤真幸(社会学者)トークイベントに行ってきました!

『Der Wanderer-さすらい人』世田谷公演の余韻も冷めやらぬ2月28日(火)、東京・青山ブックセンターで開催された金森さん・大澤さんのトークイベントに行ってきました♪

ほぼ満席の会場。黒のステキなジャケットで登壇の金森さん! あのプリーツは!?
そう、宮前義之さん(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)のデザインです!
(ちなみに次の、Noism0・1夏の公演「領域」https://noism.jp/npe/noism0noism1-ryoiki/ でのNoism0衣裳は宮前さんですよ♪)

世田谷公演の裏話があるかなと思いましたが、それは全く無くてちょっと残念。司会者はいないので、最初は大澤さんが進行役のような形で始まりました。
大澤さんの机には付箋がたくさん付いた『闘う舞踊団』が置いてあり、 金森さんも気になる様子でしたが、付箋箇所を開くわけでもなくお話が進みます。

トーク内容はとても書ききれませんので、だいたいの流れに沿って簡単にご紹介します。

大澤:
・金森さんは、劇場に専門家集団がいて世界に向けて芸術文化を発信したいと思っているのに、足を引っ張る人がいて苦労している。
・芸術活動は何のためにあるのか。金森さんには確信があるが、他者はピンと来ていない。
・スポーツは見ればわかるが、芸術はそうではないので受容する素地(文化的民度?)が必要。
・日常を超えた真実があるかどうか、世界が違って見えてくるのが芸術。
・芸術は感動。快いと感じるものだけではなく、不安をおぼえるようなものも含めた心が揺らぐ体験。

金森:
・時代によって世の中が芸術に求めるものが変化している。
・自分はかつては、既存のものを壊して新しいものを立ち上げたいと考えていた。それができないのは自分に力がないからと思っていたが、そうではない。
・自己否定ではなく、意識を少し変える。微細な意識変容で見えてくるものがある。
・少しずつ世界をずらしていく。

大澤: 舞踊芸術の価値は日本では伝わりにくいのではないか?

金森: そんなことはない。日本には海外の一流のものがたくさん来ていて、観客は目が肥えている。そういう見巧者の感性に肉薄できるかどうか。環境が整えば日本でもできる。

大澤・金森: 見たことによって心が豊かになるのが芸術の力であり価値。

大澤: 90年代は多分野の人たちが集まって話をすることが結構あったが、最近は専門分野に分かれてしまっている。金森さんはいろいろな分野の交点になるような触媒になれるのでは? しかも東京ではなく新潟で。

金森: 新潟では対談企画の「柳都会」をやっているが、それとはまた違うことと思う。既存の文化の体制を変えたい。
・問題意識として、自分の同世代は40代、50代になり、老いや老後のことを考え出している。しかし今からでは遅い。20代の頃から考えなければならない。そのためにもこの本を読んでほしい。

大澤: この本を読んで、金森さんが100年スパンで考えていることに驚いた。そして自分は最初の方をやると書いてあることに感動した。
・舞踊は普遍的、本質的なもの。言語の前に音楽やダンスがある。言葉により日本では能が発展し、後に西洋のものを輸入していくようにもなる。
・集団を率いるというのは羨ましい。

金森: 集団は大変。一人だと楽だろうなと思う。

大澤: 静岡県のSPAC芸術総監督・宮城聰さんの苦労はよく知っているが、金森さんは宮城さんより大変だと思う。

金森: そんなことはない。自分ができたことは環境があればみんなができる。行政の人にはいい人もいる。
・カンパニーの維持や金銭問題についてはベジャールやキリアンでさえ苦労していた。

*このあと大澤さんは、吉本隆明と高村光太郎がどのように戦争と関わったか、転向論について話され、日本のどこに問題があったのか。知識人は大衆から遊離、孤立し、その孤独感に耐えられなくて転向する等、お話がどうなるのかと思いましたが、最後にはぐっと引き寄せて、
「金森さんは、一般の感覚と西洋のものの間に何とか連絡をつけて日本の文化として定着させたいとしている」とまとめてくださいました。

大澤: 感染症やウクライナ、核など、世界が迷っているこの時代に、日本はただ世界の後に付いていくだけ。
・感受性に対して揺らぎを与える芸術こそが役に立つ。
・少しずつ物事の見方を変えていく。
・金森さんは劇場文化の困難な道を進んでいる。

金森: そんな大層なことではなく、ちょっとやり方や使いみちを変えれば実現できること。
・劇場はもっと別な使い方をした方がよい。劇場のあり方に自分の人生を賭けている。
・ヨーロッパにいた時も、帰国してからも自分は移民・アウトサイダーだが、日本も新潟もアウトサイダーをうまく活用できるかどうかがカギ。

大澤: アウトサイダーがどのように文化を豊かにするか。
・金森さんは思春期~青年期に日本にいなかったので、日本人として社会人にならなかったのがよかった。
・ムラ社会に取り込まれなくてよかった。

金森: 日本は島国だから。でも外来文化を受け入れるマレビト的な考え方もある。
・自分は運がいい。危機的な時に限って決定的なことが起こる。助けられるとやらなくちゃいけない。

*大澤さんが終始「金森さんがやってきたことは、苦労、不可能、困難、難しい」等々を連発するので、金森さんは「それを言うのをやめてほしい」とことごとく談判! 
その結果、「金森だからできた。ではなく、金森ができたのだから他の人もできる」という共通認識になりました。

金森: 誰でも楽勝!
・時間とお金を使って観るだけの価値があるものを提供するのが劇場。

*時間になって一応トークが終わり、質問コーナーでは、東洋性と西洋性との折り合いについて、つらかった時期の解決法、新体制について等の質問がありましたが、『闘う舞踊団』にも書かれていますのでどうぞお読みください。

Q: 国の文化政策の課題は?という質問に対して、
金森: 確かに他国と比べて国の芸術予算は少ない。
でも(東京は劇場が減ってきて、人口に対して劇場の数は多くはないが)、他の地域は劇場(ハコ)もあるし、補助金も出る。
ハコも予算もあるのだから、少し考え方を変えるだけでやっていけるのではないか。
国の芸術予算は無駄な支出が多いと思う。官僚の皆さんは頭がいいのだから、補助金の出し方も踏襲のみではなくて考え方を変えたらいいと思う。

お話はだいたい以上です。割愛だらけで申し訳ありません。
トーク内容は、本に書いてあることもたくさんありましたので、どうぞお読みくださいね♪

最後に金森さんのひとこと: 一人ひとりが唯一無二。わかり合えないのが大前提。

やはり苦労してますね~
おつかれさまでした♪

トークのあとはサイン会があり、井関さんの臨時サイン会もあったようですが、私は日帰り参加のため残念ですがトークのみで直帰しました。

会場では、東京の友人知人に会えましたし、夕(せき)書房の高松さん、金森さん、井関さん、山田さん、浅海さん、三好さん、糸川さんに挨拶できてよかったです♪

(fullmoon)