『R.O.O.M.』/『鏡~』第2クール、快調な滑り出し♪(新潟公演4日目)

第1クール3日間から、中3日のインターバルをおいて迎える第2クールの4日間は、
期間中、最もバラエティに富んだ日程になっています。
お仕事の関係上、平日の方が観に来やすいという方々を念頭に組まれたもので、
木・金、そして日・月という4日間なのです。

そのクール初日・2019年1月31日(木)、みたびスタジオBに出向き、
『R.O.O.M.』/『鏡の中の鏡』を観てきました。
わかっていたこととは言え、ワタシ的には「なんと!」の木曜日な訳で、
仕事帰りのため、観ているうちに、うっかり意識が飛んでしまったら…、
そんな心配が頭をかすめ、「身体を甘やかしてはならぬ」とばかり、
敢えて腰にかかる負荷を求めて、(初日と同じ)最前列の席を選んで腰を下ろしました。
この日の客席には、元メンバーの真下恵さん、チェン・リンイさん、
そして、Noism2とのクリエーションで新潟入りしている平原慎太郎さんの姿もあり、
私たちと一緒に「矩形」を見つめていたことも書き記しておきます。

で、結果、「意識が飛ぶかも」なんてことは杞憂に過ぎず、ド迫力の熱演を満喫しました。
例えば、『R.O.O.M.』、12人が横一列に並ぶ場面では、「近っ!」ってな具合で、
彼らが揺り動かした空気がこちらの身体にまでビシバシ届いてきましたし、
汗の雫さえ飛んできそうでした。
そして例えば、『鏡の中の鏡』、井関さんの、或いは、金森さんの苦悩が
まるで自分のものであるかのように感じられるほどでした。

金森さん、やりましたね。第1クールの最終日にも飾られていたのでしょうか、毎日芸術賞の賞状。誇らしいです、実に。

そして、金森さん、やってくれましたね、『R.O.O.M.』。休演期間を挟んで、第1クールを観たときにはなかった、とても印象的な「映像」がこの日は追加されていたのです。

そうきたか!ならば、この後も変わる可能性は否定できない訳で、第3クール、第4クール、そして吉祥寺シアターと度毎に観なきゃ気が済まなくなるじゃありませんか。(汗)

とりあえず、第1クールをご覧になった方は、少なくとももう一度はご覧になった方がよろしいかと。

舞踊家一人ひとりの動きがこなれてきて、一層の確信に満ちて展開される、楽しさが実に半端ない『R.O.O.M.』。衣裳も女性と男性で色が異なるだけでなく、よく見ると、描かれたペイントも一様ではないことがわかりました。

他方、哀切ここに極まれり、もう凄みさえ感じさせずにはおかないくらいの深い境地で魅せる『鏡の中の鏡』。救いはあるのか。ふたりの視線からは一瞬たりと目が離せません。


この2作、新潟の寒い冬に震える身体を、
内側から、それもそれぞれに全く別の角度から温めてくれるかのようです。
その証拠に、この舞台を観終えた人は例外なく、少し積もった雪さえものともしない幸福そのものといった表情を浮かべているのですから。
ならば、敢えて言いましょう。それはまさしく「舞台の奇跡」、或いは、「奇跡の舞台」と。
はたまた、日常を活性化する劇場の非日常、その力とも。
そんなの大袈裟だとか思ってませんか。ホントなんだなぁ、これが。
見逃したらアカンやろ。(←何故、大阪弁?)
是非、このもの凄い2本立て公演を堪能しに来てください。きっと震えがきますから。
りゅーとぴあ・スタジオBがあなたをお待ちしております。
(shin)

世界と対峙する『R.O.O.M.』/『鏡~』新潟公演2日目

日本時間の2019年1月26日(土)の夕方は、多くの耳目が熱い南半球・豪州のメルボルン界隈にも注がれていたと思われますが、ほぼそれと同じ時刻、雪の降る新潟市のりゅーとぴあ・スタジオBでも、私たちの誇りである舞踊家たちが世界と対峙して、同様に相当熱かった訳です。

前日、初日を迎えた公演で圧倒され、「またすぐ観なきゃ」となり、当日券売り場に一番乗りで並んでいると、私を駆り立ててそういう心境にした張本人の金森さんが飲み物のカップ片手に向かい側のエレベーターに乗り込もうと通りかかりました。で、目が合い、私を認めると、笑顔で、空いたもう片方の手を振ってくれる金森さん。私も会釈を返しましたが、心の中では「あなたが呼び寄せたんでしょ。」と言いながら、その「特典」を嬉しく頂きました。

そして午後4時、無事、当日券も買えました。…安堵。

この日の雪については、少し遡ります。
前日まではまったくなかった雪ですが、日付が変わってから降り出し、
それから後はもう断続的に降り続いたため、
公演が始まる頃にはりゅーとぴあ付近は10センチ弱の積雪となっていたでしょうか。
そんななか、入場を待つホワイエでは、
快晴の東京・関東圏から、恐らくは「川端康成気分」でお越しの方々ともお会いし、
Noismが繋ぐ縁を楽しむひとときも持ちました。

開演。まずは『R.O.O.M.』から。
前日、初見では驚きっ放しのうちに過ぎた時間になんとか食らいつこうとしてみます。

金森さんが「舞踊家に法則性を与え、同じ法則に従って次の舞踊家が反復する」(1/23新潟日報朝刊)と語り、
Noism1メンバーの西岡ひなのさんが「物語がなく、身体とこの空間でのロジック、とても複雑ですが一つの規則性があります」(Noismサポーターズ(unofficial)会報・35号)と紹介してくれた、
「法則性」或いは「規則性」に少しでも迫りたかったからです。
前日は最前列から観たので、この日は全体を引いて観ることを考えて、
後ろから2列目の席を選んで鑑賞しました。

結果、やはり舞踊言語に不案内な身にとっては荷が重く、まったく歯が立たずに、
「脳内で疑似体験する」(金森さん・上掲紙)だけに留まってしまったのですが、
それでもその「疑似体験」を今回も堪能しました。

中断し、「脱臼」させられる連続。
その不連続の連なりは、微細に動きながら、(部分の総和ではない全体として)新たなゲシュタルト相を生成していくようですし、
そのことはとりもなおさず、一見、「箱」のなかの純粋なミクロを標榜するように見せながらも、常に不可視の「箱」外部を想起させずには措かない訳で、
とてもスリリングな視覚体験と言えるでしょう。
それにしても、観ているだけで充分楽しいのですけれど、
同時に、「目に徹して見る」、
ただそれだけのことが途方もなく難しいことなのだと改めて気付かせられもする、
そんな作品です。

15分の休憩を挟んで、井関さんと金森さんが踊る『鏡の中の鏡』です。『R.O.O.M.』でも踊った井関さんがこちらも踊ること、ただそれだけでも驚きな訳ですけれど。

この作品は『R.O.O.M.』と「合わせ鏡」的な性格を有するものと言えるでしょう。苦悩する二人の人間の姿からのアプローチで紡がれていきます。(個人的に殊更新鮮に映るのは、いつも確信に満ちている金森さんが苦悩する様子です。あまり目にしませんよね。)

苦悩、絶望の果ての…、そこから先は書けません。ただ、片時も目を離さぬようにとだけ。

どちらの作品にも、長く続く盛大な拍手と「ブラボー!」の声が飛んだことも書き記しておきます。
個人的な事柄ですが、「昨日の今日」で観に来てよかったと思いました。
新潟は残り11公演、まだまだ観るチャンスはありますし、
たとえ、前売り完売だったとしても、
この日の私のように、当日券が発売されることもあります。
とても深い境地を見せてくれる2作品、まだの方は是非一度。既に楽しまれた方はまたもう一度。その時々の楽しみ方がきっとある公演です。是非、お越しください。

この日、公演の間、雪はそれほど降っていなかったとみえましたが、
時間的には気温が下がり、公演後には路面凍結もありました。
ただ濡れているようにしか見えない、怖い怖い「ブラックアイスバーン」状態の路面を
注意のうえにも注意しながら車を運転して帰路につきました。

…この日の小屋がはねてから、ちょうど2時間後。
放たれた力強いサーヴィスが、
相手ラケットによって正確にヒットされることなく、
リターンされるべき黄色の球体がコート外に弾んだとき、
世界と対峙していた日本人女性・大坂なおみ選手が全米OPに続いて、全豪OPも制し、
同時に女子テニス世界ランキング1位に登り詰めることで、
日本テニス界の歴史に新たな輝かしい1頁が刻まれる瞬間を目にしたのでした。

そんな日本人として感じる誇らしさの「二重奏」のうちに、
2019年1月26日という1日は過ぎていきました。
(shin)

Noism1新作世界初演(初日)、手もなく蹂躙されるその至福

「雪」の予報は出ているものの、まったくその白いものが落ちてくる気配のない新潟市の2019年1月25日(金)午後7時。待ちに待ったNoism新作公演、その世界初演初日の幕が上がり、『R.O.O.M.』50分+『鏡の中の鏡』20分、まさに金森さんが仕掛けた通り、手もなく蹂躙され尽くしたというか、何というか…、感情の振り子が両極に大きく振られてしまったというか…、もう心ゆくまで堪能しました、そう言う以外なさそうです。

スタジオBへの入り口の脇には、
先日、井関さんが受賞されたニムラ舞踊賞の賞状とトロフィーが、
そしてその横には、丁度、この日が授賞式だった金森さん受賞の毎日芸術賞を伝えるパネルが並べられていました。(画像は井関さんのものだけです。悪しからず。)
それを横目にいざスタジオBへ。

期待感を募らせた観客たち。場内暗転。ノイズめいた音楽。
先ずは『R.O.O.M.』の幕開けです。
やがて目に飛び込んできたのは、奥、両脇、天井の4面に正方形の銀色がびっしり張り詰められ、光の反射具合から繊細な市松模様を描いて見える「箱」。ただ「箱」、その内側。それが今回50分間にわたって、何が起きるか、目を凝らして眺める「実験スペース」です。

そして、「えっ! えええっ!!」(絶句)

既に冒頭からやられてしまい、その後も次々やられまくりでした。
見たこともない光景、そして反対に、どこかで、何かの映画で見たことがあるような既視感を覚える光景。
いずれにしても、メンバーの身体を使って、可視化・形象化しようとする何たる強靭な意志であることか、金森さん。

身体?肉体?---否、私が目にしたように思うのは身体的でも、肉体的でもなく、
まったくの別物です。
しかし、たとえそれが単に私ひとりの個人的な印象であれ、
今はまだ初日を終えたばかりですし、
そのあたり、詳しく書くことは差し控えることに致します。

更に、ほぼシーン毎に色味の変わる照明の美しさはどう書いたらいいのでしょうか。
そんな12シーン、引きずり込まれるように観ました。

終演後は、愉悦の拍手喝采と「ブラボー!」の声がスタジオ内を満たしました。
続く15分間の休憩中、観客はひとりの例外もなく興奮を隠し切れない様子でした。

そして後半、遂に『鏡の中の鏡』がそのヴェールを脱ぐ時が来ました。
同じ「箱」を使って演じらるとは知らされていましたが、まったく同一ということはなく、タイトルにもある鏡や照明など、いくつかの細部はこの作品に合わせての仕様に変えられていました。
金森さんのソロ→井関さんのソロ→デュエットという構成で、色濃い不安感と孤独、そして…、お二人でなければなし得ない世界を現出させていました。
金森さんがひく心理学者・ユングの用語であるアニマとアニムスと今作のタイトルに含まれた二つ目の「鏡」とが繋がる世界観とみました。
またしても大きな拍手と飛び交う「ブラボー!」が木霊したことは言うまでもありません。

ほんの15分の休憩を挟んで、感情を両極に大きく振られる2作とは! 

ホント物凄い公演でした。これは絶対見逃したら損です。「もっと観たい!」 

新潟最初の3日間は前売り完売で、この期間、私が買っていたのは今日だけだったのですが、明日、公演1時間前に若干枚売り出される当日券を求めて並ぼうかとマジで考え始めたような次第です。

「掛け値なしに面白いから絶対観て!」、自信をもってそう言いたい、
否、大声で触れて回りたい2作。
明日1/26(土)は17:00開演、
明後日1/27(日)は15:00開演。
期待値のハードルは上げるだけ上げておいても、上げ過ぎということがない筈です。
乞うご期待!
(shin)

NoismサポーターズUnofficial会報35号 発行

開幕目前!Noism1新作公演に合わせて、サポーターズ会報35号を発行し、
会員の皆様に発送いたしました。
各公演でも折込配布予定です。
どうぞ、ご来場いただき、お手にとってご覧ください。

会報35号、表紙もSo Cool!

公演直前につき、ワクワクドキドキ、そわそわのし通しで、
只今、毎回恒例の「そわそわ会」絶賛開催中です!(笑)
(fullmoon)

『R.O.O.M.』メディア向け 公開リハーサルを観てきました!

寒いながらも青空が見える、1月18日(金)、新潟市内に雪は全くありません。
先日の会員向け公開リハーサルに続き、メディア向け公開リハーサルを観てきました。

会場のスタジオBにはテレビカメラが3台。
新聞、雑誌等の記者さんたちもたくさん来ていました。
予定ではリハ公開は30分でしたが、なんと、通しで見せてくれるとのこと!
ちなみに今回は、『R.O.O.M.』45分、休憩15分、『鏡の中の鏡』20分の、
80分の公演となります。
舞台装置の箱(ROOM)は、天井や脇がふさがれ、先日の会員リハの時より、
かなり整いましたが、照明はまだです。

「始めましょう」という金森さんの声で、リハーサル開始!
会員リハの時より、ますます磨きがかかっています。

1番目の男性パートは、シャンユーさん以外は新メンバー。
2番目の女性パートは、よく見知っているメンバーなので、
『NINA』やロミジュリ、バヤデール、他、
彼女たちの出演場面がチラチラ脳裏をかすめます。

3番目は井関さんとジョフォアさんのデュエット。井関さんは無重力状態の軟体動物のようです。映画「2001年宇宙の旅」のようなイメージを持ちました。

しかし、やや平静でいられたのはここまで。
このあと次々と繰り広げられる、目まぐるしく、見たこともない凄い動きの連続シーンに、
目も心も奪われて、放心、陶然・・・
あっと気づいて、あと9つのシーンがあるのだと思い、なんとかメモを取ったのですが、
メモなんか取りたくなかったですね~
洪水のような身体の動きの量に、ただただ翻弄されていたかったです。
メモを取ったと言っても、ここで内容を書くようなことはしませんので、ご安心くださいね~
本番をぜひぜひお楽しみに。どうぞご期待ください!
素晴らしいですよ~!!

井関さんのポワント姿、よかった~♪
女性陣はポワントと靴下の両方で魅せますよ~
池ヶ谷さん、キレキレでした~
ロミジュリとはまた違った情報量の多さと、
ボレロのように盛り上がっていくノイズ音楽に、
観る者はノックアウトされることでしょう。

驚きの公開リハーサルの後は、金森さん囲み取材です。
金森さん自身、通しを見たのは、なんと、今日が初めてだそうで、
手応えを感じているようでした♪

以下に金森さんが話されたなかから少しご紹介しますと、…
・箱(ROOM)という制約された空間の中で創作し、新しい動きを実験、発見したい。
・『SHIKAKU』に通底するような実験的作品。初心に帰りたい。
  『NINA』に代わるような普遍的作品を創りたい。
・『R.O.O.M.』は物語性は全くなく、理数的、科学的に人間を捉えた。
・新潟市に限らず、財政難はどこも同じ。何が必要なのか、選択が問われている。
・新市長とはまだお会いしていない。お話ししたいと思っている。
・舞台装置は箱型だが、客席はフラットではなく雛段になる。
・公演後半の『鏡の中の鏡』は、箱の中で私と佐和子が踊る。
 … というようなお話でした。

プレスリリースもご覧ください。

https://noism.jp/wp2015/wp-content/uploads/e695f0f8bc62ae8aaeb8782277825ffe.pdf

本公演を、どうぞお見逃しなく!

新潟公演は、最初の3日間はチケット完売ですが、
1/31(木)~2/16(土)お席に余裕があります。
チケット情報:https://noism.jp/tks_room/

 お誘い合わせて、ぜひ何度もご覧くださいね!
(fullmoon)
(撮影:aqua)

実験舞踊vol.1『R.O.O.M.』公開リハを観てきました♪

曇天なのか小雨混じりなのか俄に判然としないような2019年1月13日(日)、
新しい年の「Noism初め」として、
実験舞踊vol.1『R.O.O.M』公開リハーサルを観てきました。

会場のスタジオBへ足を運んで、入場を待っていると、
Noismスタッフの方からNHKの取材カメラが入るとのお話し。
前々日の毎日新聞、前日の読売新聞、そしてこの日のNHKと
メディアに取り上げられることが続き、
Noism界隈の潮目がいい感じに変わってきたと嬉しさが込み上げてきました。

予定されていた12:30を少し回った頃、スタジオBに設けられた席へと通されました。目の前には客席側のみ開け放たれていながらも、上方を含め、他の5面が区切られた「箱」状の舞台がありました。それはまるで、映画の横縦比2.35:1と横長のシネマスコープサイズの銀幕のよう。「銀幕」、そう、いみじくも、「箱」の内側5面はいずれも銀色のホイル(のようなもの)が張り巡らされています。その「箱」のなか、上手側にひとり板付きのシャンユーさんの姿。

「さあ、始めましょうか」金森さんの声がかかると、
電気的なノイズのような音楽が耳に届き始め、
陸上競技・短距離走のクラウチングスタート然とした姿勢から動き出すシャンユーさん。
そこに一人、また一人と加わり、5人の男性舞踊家のパートです。
音楽同様、彼らの動きも先を見通すには難しいものがあります。
メンズ5名が履いているのはグレーの靴下。銀色の内側に馴染むかのようなグレーは、
電気的な接点のようでもあります。(あくまで個人的な印象です。)
伸び切らない5つの身体が見せるのは、くねくね絡み合うような複雑な動き。

次は、女性舞踊家のパート。
上手側の壁の下から入って来るのは浅海さん、そして鳥羽さん。
やがてレディースは6人に。
彼女たちは揃ってポワントシューズを履いています。
「くねくね」はありながらも、「コツンコツン」と床を響かせ、直線的に身体を上方へと伸ばそうとする動きが含まれている点に、メンズとの違いも見えます。

続いて3つ目のシーンは井関さんと男性舞踊家・ジョフォアさんのデュエット。
ここでの二人はメンズと同じグレーの「靴下」組です。
「そう来たか!」このパートは前ふたつとは趣を異にする驚きの動きが目を奪うでしょう。
詳しくは書きません。ただ、私の目にはキューブリックの「或る作品」を彷彿とさせるものがあったと記すに留めます。
一体何のことやらですよね。
ご自分の目で本番を観て驚き、浸って堪能してください。

この日の公開リハ、デバイスの不具合から音楽にノイズが混じるトラブルがあり、
2度ほど中断をしながら、3つのパートを見せていただきました。
(もっとも、見ている私たちにはノイズか否かはよくわからずに進行していった訳ですが。)
その後は、金森さんによる舞踊の大手術。舞踊家それぞれが示した動きに対して、
「身体の各パートが独立して喋って欲しい!」、
或いは反対に「四肢+頭で『五肢』同時に!」等々、
金森さんの鋭い「メス」が各所で振るわれ、
一人ひとりの動きが別物に作り変えられていく過程をつぶさに見つめました。

私たちと一緒に公開リハを見守ったのが、元メンバーの宮河愛一郎さん。流れる音楽の不具合に対処する金森さんがその姿に気付いたときには「なんでそんなところにいるの?」、そして井関さんとのデュエットにおけるジョシュアさんの動きの修正に余念がないときにあっても「懐かしいだろ?」と声をかけられるなど、お二人が過ごした時間の厚みが伝わってくるようでした。

私たちサポーターズに囲まれる宮河さんの図
公開リハ終了後、
サポーターズに囲まれる宮河さんの図

この日は、『R.O.O.M』の全12シーンのうち、3シーンを拝見したあと、
最後に客席からのリクエストに応えるかたちで、
金森さんから新しいメンバーを紹介して頂き、
13:40頃、公開リハは締め括られました。

「まだ新潟のチケットはあります。
一度観ただけではわからないので」と金森さん。
理解しようとする視線を送るのではなく、
何より、次々繰り出されてくる「くねくね」などを
虚心に見つめているだけで、
目はこれまで出会ったことのない楽しみに出会える筈、
そんな作品として仕上がってくるのだろうことに違いはなさそうです。
ですから、私たちの側もひとつ鑑賞スタイルの「実験」などしてみる
というのは如何でしょうか。
「観ること」の新しい地平が開けることになるかもしれません。

東京公演は既に前売り完売ですが、
金森さんの言葉通り、新潟公演は最初の3日間(1/25~1/27)を除いて
まだお席に余裕はあります。
一度ならず何度か通ってみる価値のある作品であると確信できました。
皆さん、複数回の鑑賞は如何なものでしょうか。
きっと豊かな体験となることでしょう。ご検討ください。
(shin)

金森さん、第60回毎日芸術賞 受賞!

明けましておめでとうございます!
今年もご一緒に、金森穣Noismをますます応援してまいりましょう!

新年早々の吉報!
金森さんが第60回毎日芸術賞を受賞!!
おめでとうございます!!
https://mainichi.jp/articles/20190101/ddm/001/040/097000c

井関さんのニムラ舞踊賞受賞に続いての快挙!
春から縁起がいいですね~♪

そして今年のNoismスケジュールが一挙に発表されました!

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Noism1 実験舞踊vol.1『R.O.O.M.』/『鏡の中の鏡』

新潟公演: 1月25日(金)- 2月17日(日)※全13回 
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
(1月25,26,27日 前売完売)

東京公演: 2月21日(木)- 2月24日(日)※全5回
会場:吉祥寺シアター(前売完売)

◆Noism2定期公演vol.10
3月15日(金)- 17日(日)※全5回
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館

◆柳都会 vol.20 近藤一弥×金森穣
―グラフィックデザイナーの創造的知性
3月24日(日)15:00-17:00
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館

◆Noism2札幌公演
4月19日(金)- 20日(土)※全2回
会場:札幌文化芸術劇場 hitaru

チェーホフ国際演劇祭2019
Noism劇的舞踊『カルメン』ロシア・モスクワ公演
5月29日(水)- 31日(金)
会場:Helikon Opera

シビウ国際演劇祭2019
Noism1実験舞踊vol.1『R.O.O.M.』/『鏡の中の鏡』
ルーマニア・シビウ公演(予定)

6月中旬

◆Noism新作(予定)
新潟公演:7月19日(金)- 21日(日)
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸文化会館

東京公演:7月27日(土)- 28日(日)
会場:目黒パーシモンホール

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2度目となる、ルーマニア・シビウ公演や、7月のNoism1新作公演も!
9月には富山県でのシアター・オリンピックス招聘公演も予定されています。
亥年にふさわしい大活躍ですね!
私たちも、はりきって応援していきましょう♪

*閑話休題*

新年恒例、砂丘館での特別展示。
mikkyoz 013

Noism映像担当、遠藤龍さんの新作映像+音響作品(le)
mikkyoz(le+遠藤龍)13回目となる展示です。

開催期間:2019年 1月16日(水)~1月27日(日)
開館時間:9時~21時 (※1/16(水)~1/20(日)は9時~18時)
会場/砂丘館ギャラリー(蔵)
定休日:月曜日 
料金:観覧無料
主催:砂丘館
https://www.sakyukan.jp/2018/12/7197

こちらもどうぞお運びください♪

(fullmoon)

会員特典 Noism1実験舞踊vol.1『R.O.O.M.』公開リハーサルのご案内

新潟公演チケット好評発売中!

Noism1実験舞踊vol.1『R.O.O.M.』
公演詳細:https://noism.jp/npe/n1_room_spiegel/

★公開リハーサルのご案内です。

日時:2019年1月13日(日) 12:30~13:30
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈スタジオB〉
対象:Noism活動支援会員、および本公演チケットを購入済のNoismサポーターズ会員
定員:50名

*受付開始は12:20~です。恐れ入りますが時間までは2階共通ロビーにてお待ちください。
*スペースの関係上リハーサル開始後はご入場いただくことができません。予めご了承くださいますようお願い申し上げます。
*サポーターズ会員の方は、受付時にお名前とチケットの提示をお願いいたします。

お申し込み:お問い合わせフォーム、もしくは090-8615-9942にご連絡ください。

申込締切:2019年1月10日(木)

※定員になり次第、〆切とさせていただきますので、どうぞお早めにお申し込みください。

皆様のお申し込みをお待ちしております!
(fullmoon)

興味津々、家具デザイナー・須長檀さんをお招きした「柳都会」vol.19に耳傾ける

2018年12月2日(日)、心配された天気は上々。
気温もそれほど下がらず、「冬の一日」にしては過ごしやすかったでしょうか。
師走最初の日曜日のりゅーとぴあでは様々な催し物があり、駐車場は軒並み「満車」の表示。

そんななか、私たちのお目当ては勿論、14:30からの柳都会。
今回はNoismの作品で美術を担当して、極めて印象深い仕事をされている須長檀さんのお話が聞けるとあって、
皆さん、混雑を物ともせず、楽しみに集まってこられている様子が窺えました。
また、この日は、先に露国・サンクトペテルブルクに『ラ・バヤデール』を観に行かれた「幸福な方々」との久し振りの対面の機会ともなり、入場を待つホワイエでは、そのときのお話が聞こえてきていました。

開始10分前に、スタジオBへの入場が始まり、
予定時間ちょうどに、お待ちかねの「柳都会」は始まりました。
お二人のために用意された席の前には、須長さんがこれまでNoism作品のために制作された
椅子が3種(『solo for 2』、『ZAZA』及び『ロミオとジュリエットたち』、『NINA』)と
テーブル(『ロミオとジュリエットたち』)とが並べられ、
その向こうに座ったお二人のやりとりをお聞きしました。

大きなテーマはふたつ。
北欧と日本、そして日常と非日常。
全体的には、まず須長さんがお話をし、それを聞いた金森さんが様々な質問をぶつけては、
須長さんが言葉を選びながら答える。
すると、またその答えに金森さんがツッコミを入れ、
また須長さんが答えて、といった具合で、
20年来の親友という関係性を基に、
金森さんが繰り出す様々な質問を通して、
須長さんのプロフィールが立体的に立ち上がってくるといった感じで進行していきました。
主に攻める金森さん、主に困る須長さん、お二人とも本当に楽しそうでした。
ここでは、以下にそうしたなかから一部紹介を試みようと思います。

北欧と日本
☆スウェーデンのデザイン: 1880年代迄のデザイン史には「グスタビアンスタイル」と呼ばれる王侯貴族のためのデザインのみ。
女性解放運動家のエレン・ケイ(1849-1926)が登場し、女性的視点を取り入れ、生活に即した日常的なデザインを提唱。「生活者のデザイン」を重視。
★日本のデザイン: 浮世絵が「ジャポニズム」として輸出され、もてはやされる状況を危惧。
土着的な民芸品を高く評価し、「用の美」を唱えて、民藝運動を展開した柳宗悦(1889-1961)や
その実子で、前回(1964)の東京五輪・聖火トーチやバタフライ・スツール等で有名な柳宗理(1915-2011)の無意識のデザインが呼応する。
手から生まれるデザイン。それは量は質に転化する「反復」の点で、舞踊にも重なり合うものと言える。(蛇足ですが、我が家でも、柳宗理氏の片手鍋と薬缶を使っているのですが、手にすっと馴染む、使い勝手の良さには実に気持ちいいものがあります。)
☆北欧と日本の地政学的親和性: アニミズム的心性と「森」。
北欧が誇るガラス作品制作において、火は絶やすことができない。→その点でも「森」の国であることが重要。
また、「森」との関連からよい刃物が不可欠で、それが家具作りを後押しした。
一方の日本: 「森」(森林率)は世界第2位に位置する。

無意識・無作為
☆『NINA』の赤い皮の椅子「ウワバミ」*: 基本的に、スチールパイプの構造体に濡れた皮を被せる作業に無駄な作為は一切介在せず、10%程度縮んで固まっただけ。
ネジも一切使用していない。素材が形の決定性をもっているだけの作品。(現在は金森さんの私物なのだそうです。)
須長さん「どうしてこれを使ってくれたのですか?」
金森さん「皮膚の緊張感を感じる。身体の張りとエネルギーを要する椅子。知的なレベルの理解とそれを越える美しさ。そして時間が止まって見えること。『舞踊とは何ですか?』には『この椅子です』と答えられる、そんな椅子。普通に座れるが、身体を休ませることを許さない椅子。」
*「ウワバミ」のネーミングは、サン=テグジュペリ『星の王子さま』に登場する「ゾウをこなしている」ヘビに由来するとのこと。
★『ZAZA』の正立方体+アクリル板の椅子: 常に壊れるんじゃないかという感じがつきまとい、楽に座ることの出来ない椅子。正立方体のため、垂直方向にも、水平方向にも綺麗に並ぶ。(金森さん)
☆正立方体が歪んだかたちのテーブル: 『ZAZA』では使われず、『ロミジュリ(複)』で登場。歪みを特徴としながらも、ただ一方向、「正立方体」に見える角度がある。世界の見え方の喩。
★軽井沢のアトリエ「RATTA RATTARR」: 4つの「ART」のアナグラム。「うさぎのダンス」のようでもあり。
「唐突の美」: 淡い期待とすれ違いの繰り返しの狭間に唐突に現れる美をつかまえる。
障碍者(無意識・無作為)と支援員(他者の目)の二人でひとつの作品を作るスタイル。
パウル・クレー(1879-1940)は、制作の際、自分の中に他者の目を持つことを心掛けたという。
天才でなくとも、二人でなら可能になる。「ART」の再構成。予想外のものが返ってくる、発見の喜びがある。
ストップをかけずに感覚的に作る者(障碍者)+舵取りをする者(支援員)。極力舵取りをしなかった製品がよく売れる傾向がある。
それに対して、「個人の内的なプロセスでも可能ではないか」として、大きな差異を認めず、
「そこに座って観ているだけで、ワァッ!となるものを創っていかなければならない。」とするのは金森さん。

無関心
☆「棚がなくなる」: 現代は物質が情報化される時代。家具自体がなくなる、或いはシェアされる流れにある。
→所有欲や親密性も新しい姿に書き換えられざるを得ず、そのことに怖さと楽しみの両方がある。
世代を越えて使われる家具: 修理、愛着。他者にまつわるイマジネーションの問題。

無防備
★Noismを観ること: 圧倒的な情報量に晒されること。ある時から、舞台に対して無防備な状態で向き合うことにした。
混沌とした状態で観終えて、その後の道すがらから、観た舞台の再構築化を楽しむ。それが大事。
Noism以外では、このようなことは体験したことがない。
そうした再構築化が可能となるのは、一人の作家(金森さん)の作品をずっと見続けてきたことによるもの。
繰り返して何度も観てきたので、根底に流れているものにも気付けることはあるのだろう。
☆『solo for 2』の傾いた椅子: 非日常。この上なく身体を必要とする自立しない椅子。同時に、「片足が折れている」ことのメタファー。
驚くほど軽量であるうえ、美しく設えられた八角形のビスを外すと、バラすこともできるという優れもの。そのビスに代表されるように、客席からは見えない細かな部分まで手が込んでいる。
→舞台上で実演家が感じるクオリティは還元されて客席に伝わる。(金森さん)
公演時、舞踊家が椅子を離れると、椅子も逆方向にパタッと倒れたのが、「椅子が踊っている」ように見え、感動した。最も好きな椅子。(須長さん)

強度のあるデザイン
★「美しいものを作るためには誰かのために作らなきゃならないよ」: 行き詰まりを感じていた頃、金森さんからかけられたこの言葉にハッとした。(但し、金森さんは「そんなこと言った記憶はない」と言うので、真偽のほどは不明ながら。)
デザインの強度: 「切望」を相手にするデザイン。自分のためではなく、他者のためのデザインであること。舞台の仕事も良いトレーニングとなった。

これからのデザイン
☆AIの可能性: 売れるものを作るためにはAIに優位性あり。また、スタディの結果、奇抜さでもAIが勝る可能性がある。(人間らしいエラーすらスタディされてしまいかねないのだから。)
何故、AIに抗うのか?→物を作る喜びを探しているだけかもしれない。(須長さん)
現代のリアクションとこの先のリアクションが異なるのは当然だろう。知性が問われる。
現在の主潮は「対AI」的感覚だが、そのうち「対人間」的なものになる時が来るかもしれない。
「人間とは何か?」: 舞踊芸術として常に向き合っているテーマ。(金森さん)
いい意味でも悪い意味でも変わっていかざるを得ないだろう。面白いじゃない。(金森さん・須長さん)

そんなふうに時空を縦横に行き来しながら、創作というものの神髄を感じさせてくれた、
本当に濃密な2時間でした。
途中に一度、「トイレのための小休憩」(金森さん)という10分休憩がとられたのですが、
その間も、多くの方がトイレに行くことなど後回しにして、須長さんの作られた椅子とテーブルを見て、触って、持ち上げたりする姿が見られ、すっかりお二人のお話の虜になってしまっていたようでした。
それはまさに私のことでもあり、到底見るだけでは済まず、すべて触って、それでも足りずに持ち上げてみてを繰り返し、ほぼ10分間ずっと、それらの感触を実際に自分の手で確かめて過ごしました。

そんな今回の「柳都会」も最終盤に至って、
須長さんに向けて「実際にその椅子は買えるんですか?」との質問が出たのですが、
それに対しては、「家具デザイナーですから」と言うのみで、否定はされませんでしたから、
もしどうしても欲しいという方は、須長さんに相談してみられたらよろしいかと思います。

須長檀さん、物腰の柔らかい、穏やかな方でした。
問うこと及び考えること、その愉悦に満ち、とても刺激的だった「柳都会」は予定通り、16:30にお開きとなり、
その後、金森さんたちは足早に、同じりゅーとぴあ内のコンサートホールへ、17:00開演の東京交響楽団の公演を聴きに行かれました。
「Liebestod」や「タンホイザー」序曲など、予てより金森さんが興味を寄せるワーグナーの楽曲が並んだプログラム。
この日のワーグナー受信がいつか金森さんをしてどんなアウトプットを成さしめるのか、
そんな日のことを夢想しながら帰路につきました。

【追記】この日は、Noism新作『R.O.O.M.』&『鏡の中の鏡』東京・吉祥寺シアター公演のチケット発売日でもあり、私も無事に2公演のチケットを押さえることができました。
須長さんは、金森さんからの依頼を受け、この新作のために新たな制作をされているとのこと。
奥深いお話しを伺い、これまで以上に須長さんの仕事を注視していきたいと思いました。
新作、そうした意味からも期待大です。
(shin)