3ヶ月半振りのインスタライヴで話された『結婚』と『鬼』♪

2022年5月15日(日)20時、前回から3ヶ月半振りとなるインスタライヴが配信され、Day Offの宵の寛いだ雰囲気のなか、主に、来る公演の演目である『結婚』(正式タイトルは『お菊の結婚』となる模様)と『鬼』についての前情報が披露されました。詳細はおふたりのインスタアカウントに保存されたアーカイヴにてご覧頂きたいと思いますが、こちらでも、ごくごくかいつまんでご紹介を致します。

途中、金森さんは大変お気に入りの様子の米粉のエクレア(フランス語で「稲妻」を意味するお菓子は、金曜日に「電撃的に」告知され、次回公演について語られることとなったこの日のインスタライヴの性格と呼応していなくもありません。)を頬張りながらの配信でした。

ふたつの演目のうち、まず着手されたのはストラヴィンスキーの音楽『結婚』の方で、歌詞に合わせて踊られる約23分の作品。(22分58秒くらい?)
3月から振り写ししつつ創作されるも、『春の祭典』よりも難しく、1日1分という感じで進み、昨日初めて通したとのこと。井関さんによれば「脳内的に(情報量的に)は40分は軽くある」ほどの作品と。
「展開が早く、ちょっとコミカル」「ビシッとくると思っちゃうと、『えっ?』となって、『面白かった』で良かったの?」ってなるような「笑って貰って良い」作品。(井関さん)「金森作品にしては珍しくコミカル」「コケティッシュ」、人形的な身体性で、感覚的には『Nameless Hands』の系譜ながら、『箱入り娘』のような路線とは違い、話がコミカルなのではなく、物凄く速くてコンプレックスな動きがコミカルに映ると金森さん。(井関さんは「首」の扱い方から人形振りのコツを解説してくださいました。)
ピエール・ロティ(仏・1850-1923)の『お菊さん』、旅行記的、外からの目で見た日本、その文化・風土。それを基に「楼閣」が人形的に見えるという設定で創作。衣裳面では、山田勇気さんの衣裳に付けられた「紋」には特別な含意があり、注意して観て欲しいとのこと。

公演の上演時間は、『結婚』が23分、転換で15~20分、『鬼』が40分弱になる予定とのこと。

そして『鬼』。原田さんからのメールでテーマが「鬼」と知らされたとき、思考・趣味等、別次元にあり、次元が変わる刺激に満ちていて、「挑戦状的な感じがいいな」と思ったと井関さん。「楽していたのでは出てこない熱量が喚起される」と金森さん。(物語的なものはあっても)物語はない音楽。
稽古のために録音が必要ということで、昨年暮れに原田さんが極寒の佐渡・鼓童村に入って録音。合同稽古までの3週間、それによって振付を始めた。
ライヴは想像を超えて凄かった。「締太鼓の音が身体にくる」(井関さん)「物凄く身体に作用する。皮が皮膚にくる。あれだけの音響のど真ん中にいること、その強度はあまりないこと」(金森さん)
「一番ゾクってくるのは全員静止のとき」(井関さん)「まずデフォルトでピーンと張り詰めた無音があって、そこからどう鳴り始めるか。鳴ったものがどう消えていくか。その隙間に原田さんは『鬼』的なものを直覚して作曲している。『あの始まり』はそれを掴むためにはあれしかなかった」(金森さん)
鼓童さんも普段、演奏時のミスはつきもので、お互いカヴァーし合っているのだが、今回は舞踊家たちがいることで緊張感が凄いと話されていたと。舞踊家にとっても、楽曲が揺らいだとき、「瞬間的に選び取る、凄い客観性が必要」(井関さん)「ある意味、偶然をコンマ毎に必然に置き換えていかなければならない」(金森さん)「めっちゃ楽しいよね」(井関さん)「物凄い集中していかなければ無理。それが楽しい。(観客の)皆さんも今回、体調万全で来られた方がいい。なんとなくふらっと、はやめた方がいい。(笑)集中が引き出されるような空間になる」(金森さん)
「音波が凄くて疲れる。圧が凄い」(井関さん)「音に触れる。音を聴いて踊るのではなく。それが今回、鼓童さんたちとのコラボレーションの醍醐味」(金森さん)その金森さんも少し踊るとのことです。

…そのほかにも興味深い話が続々ぽんぽん出て来て、「もう必聴!」以外には言い表せない、この日のインスタライヴでした。そのあたり、是非、アーカイヴにてお確かめください。
で、その公演、Noism史上最速で、りゅーとぴあは完売。ほかの劇場も好評発売中。お早めにお求めください。また、今週末に迫りましたNoism2定期公演vol.13(@りゅーとぴあ・劇場)にもお運びください。

(shin)

中村祥子さん×井関佐和子さんの「柳都会」vol.25を聴いてきました♪

Noism×鼓童『鬼』京都公演チケットの先行発売が始まった2022年4月16日(土)、夕刻16;30から、りゅーとぴあの能楽堂で開催された「柳都会」vol.25。初ホスト(ホステス)役を務める井関さんたっての希望で招かれたゲストは中村祥子さん。「舞踊家として生きる2人の女性、初の対談」を聴いてきました。

会場となった能楽堂に集まってきた聴衆はこれまでの柳都会とは違った雰囲気で、バレエダンサー中村さんお目当てという方も多かった様子。今回が初めての柳都会参加という方が大勢いらっしゃいました。

16:32。先ずは井関さんが、そして彼女の紹介を受けた中村さんが、それぞれ黒のワンピースに白い足袋を履き、摺り足で、橋掛かりから本舞台に用意された椅子へと進み出ました。

以下、この日のお話から少し紹介を試みたいと思います。

まず、スイスのローザンヌ国際バレエコンクールで出会った、中村さん16歳、井関さん17歳の頃の話から。
その時、初めてコンテンポラリーに挑戦したという中村さん、斜めの床で踊った『海賊』のヴァリエーションで「すってんころりん」とやってしまったことが紹介されるも、「転倒など重要なことではなく、将来性を見極めるのがローザンヌ」と井関さん。
その後、「挽回しなきゃ」との思いで踊った『告白』、中村さんは「何かが降りてきた」感覚で、(理由はわからないとしながらも、)亡くなったお祖母ちゃんと連動して踊り、自分なりに解釈して踊ることを体験、オーディエンス賞を受賞するに至ったとのこと。そしてスカラーシップを得て、シュトゥットガルトへ。

そこからクラシックバレエとコンテンポラリーと、2人の道は別々になるが、その奇縁を繋いでくれていたのが、2人とロパートキナ(ロシア:1973~)を好んだライターの故・浦野芳子さんで、平凡社から2人の本を出版してくれた、と井関さん。

シュトゥットガルトでの中村さん、靱帯断裂の大怪我をして帰国。そのまま契約が切れると、今度はウィーンへ。
やっと入ったバレエ団。コールドバレエだったところ、ソリストの役を貰い、意気込んで、ダブルピルエットの場面で3回まわったら、またしても「すってんころりん」。監督から「舞台全てを台無しにした。お金を払って観に来てくれたお客さんにも失礼」と言われ、プロの厳しさ、プロとは何か、みんなで作り上げていく責任を学んだ。
「『コールドが踊れないと、センターは踊れない』と言いますよね」と井関さん。

井関さんが、ナタリア・マカロワさん(ロシア:1940~)に指導を受けたことがある中村さんに、その印象を訊ねます。答えて中村さん、小柄ながら、「スーパーサイヤ人」のようなオーラを出していた人で、「ひとつひとつの形や振りではなく、内側のものを出すこと。何を表現したいのか見せなさい」と言われたことを紹介。その後、自分のこだわりを入れて踊ろうと思うようになったとのこと。
そして中村さん、ベルリンでウラジーミル・マラーホフ(ウクライナ:1968~)監督のもと、プリンシパルに昇格後も、自分らしさを忘れてはいけない、自分にしか出せないものを、自分ができるベストを、との思いで踊ってきたと。

日本のバレエ環境について:
「こういうふうにやらなきゃ」というふうに固まっていて、狭い。「自分をオープンにできる環境」や自由さがないのが残念と井関さんが言えば、中村さんも、「海外にはいろんなダンサーがいて、エクササイズにしても、みんな違った。美しくいたいという思いがあり、みんな違った格好をしていた。鏡に映してやる気を出したり」と。

ルーティーンに関して:
井関さんが、30代前半はルーティーンが凄かったと言うと、中村さん、「私も!」。「少しズレたら、ピリピリしていた」(井関さん)、「全く同じ道を通り、同じ物を食べないと舞台がうまくいかないみたいに考えて、凄くツラい生き方をしていた」(中村さん)
「その頃、自分は『失敗しない女』だと思っていた。今は『失敗してもいいや』と、舞台ではそれすら自由だと感じられるようになった。隣にいる47歳の人(金森さん)は、積み上げてきたものを崩して、失敗しないギリギリのところを狙える強さがある人」(井関さん)、「挑戦するのが好き。挑戦しないと」(中村さん)

中村さんと井関さん、中村さんと金森さん:
井関さんが柳都会に中村さんを呼んだのが先で、その後、金森さんが中村さん(と厚地康雄さん)を振り付けることになったもの、と明した井関さん。
中村さんは「金森さんは雲の上の人」で、「穣さんの作品を踊れるなんてあり得ないと思っていた」のだが、「NHKバレエの饗宴」に際して、自らの挑戦として、「穣さんの作品を踊らせて頂きたい」と申し出たとのこと。
そのオファーに、井関さんが「熱意は伝わるもの。穣さんはすぐにOKしていた」と話すと、中村さん、「厚地くんは『穣さんが忙しくて断られますように』と言っていた」など、リハーサルまでの間、2人とも不安だったと舞台裏を語った。で、そうして迎えたリハーサルを終えてみて、厚地さんは「一生の宝物になります」と言い、中村さんも「良いものを作りたい。穣さんの世界観に近付きたい」とその思いを口にしたところで、時間は17:20。そこから10分間の休憩に入りました。

(休憩中に、井関さんが紹介していた中村さんの本『SHOKO』をamazonでポチった私です。蛇足でした。)

休憩後は会場からの質問シートを基に、井関さんが中村さんに訊ねるかたちで進行されました。なかからいくつか、簡潔に質問と答えを記していきます。

*中村さんの今後の活動は?
中村さん「Kバレエ団を退団して、今はフリー。バレエの他にも、幅広いことが見えてきた。こういう時期も必要だったと受け止めている。もっと踊りたいとも」
井関さん「表現は息の長いもの。同世代の中村さんは大切な存在」

*一番楽しいこと、一番ツラいことは?
井関さん「楽しいこととツラいことは重なっていることが多い」
中村さん「若い頃と違い、日によって波がある。自分の求める動きじゃなかったりする日はツラい。それを受け入れて、前へ行く」
井関さん「ずっと集中しているのは無理。ONとOFFは大事。最近、Noismも良い感じの波が出来てきた」(笑)

*身体を鍛えること:
井関さん「していない」
中村さん「していない。背中の筋肉が綺麗と言われ、『絶対にしてますよね』と言われるが。でも、リハーサルが始まると、ババババァンって(筋肉が)付いてくる。要は使い方と意識なんですよね」
井関さん「脳からの指示で筋肉は変えられる」

*足袋とトゥシューズ:
中村さんの足のサイズは25.0cmなのに、そのサイズの足袋が入らず、26.0cmの足袋を履いて能舞台に立つことになったのは、甲高だったため。
中村さんの「トゥシューズはスリッパ」発言に、井関さん「!」

*食事で気をつけていること:
「イメージはササミ。ササミですよね。チョコレート、食べないですよね」と言われたりすることが多いという中村さん、「チョコレートは普通に食べるけれど、踊り出したらすぐにシュッとなる。筋肉もついてくる」

*バレエ、ちっとも上達しない。どうやればいい?
中村さん「私もまだまだだと思いながらレッスンしている。終わりがない世界。調子が悪いときには受け入れるしかなく、それを乗り越えてやろうと思える。スタジオに行くだけで気持ちがリセットされる。終わって外に出たときに新たな気持ちになっている。それだけで良いのかなと」

*ルーティーンに入れている食べ物は?
中村さん「納豆や卵といったタンパク質を摂るようにしている。他に、これは初めて言うけど、ヤクルト1000を飲んでいる。(息子はヤクルト400)」
井関さん「うちの人(金森さん)も毎朝、ヤクルトを飲んでいる。市内のスーパーからヤクルト、消えたりして」(笑)

*舞台に出るとき、緊張するのだが、どうすれば?
中村「緊張していてもいい。昔はお客さんへの意識強くて、怖いくらいの緊張感があったりしたが、ある時、舞台のここ、ハコで、自分のファンタジーを作って、自分の世界を楽しもうと思えるようにもなった。要は考え方次第」
井関さん「緊張しない方がヤバイ」
中村さん「ミラクルな舞台の経験ありますか」
井関さん「一度、幽体離脱のような経験がある。『今、舞台から出て行ってもいいよ』ともう1人の自分が言っていて、本当に自由な選択の感覚があった」
中村さん「『白鳥』を踊っている、ゆったりしていた時、何でも出来ちゃうみたいな、余裕の瞬間を味わったことがある」

*ダンサーとして一番の喜びは?
中村さん「終わった瞬間の客席からの拍手。『こういうふうに感じて貰えたんだ』と、それを浴びたとき」
井関さん「終わったときの(客席との)波長がピタッときたとき」
中村さん「踊っているあいだ、普通、客席は見えないのだが、『クレオパトラ』では落ちるとき、見える瞬間がある。これだけの人が一緒に舞台を支えてくれているんだという有難みを感じる」
井関さん「舞台は一期一会の会話」

…とまあ、そんな具合でしたでしょうか。完全にご紹介することは出来ませんが、雰囲気だけでも伝わっていたらと思います。(18:08終了)

中村さんと井関さん。「Fratres(同志)感」溢れるおふたりはもう息がピッタリ合っていて、いつまでも話していられるといった感じでした。金森さんの振付で一緒に踊る機会なんかも妄想されるだけでなく、早晩実現する日がやって来るのでは、とそんな途方もない期待も芽生えたトークイベントでした。

この後、インスタライヴに場所を移して、「柳都会」初、終了後の楽屋トークが配信されました。その模様はこちらからアーカイヴでご覧ください。(スタッフのように動く金森さんも楽しいですよ。)

(shin)

あの感動をご家庭で♪ NHK-BSプレミアムステージ『境界』放送迫る

さあ、いよいよ迫って参りましたね。勿論、NHKのBSプレミアムでの『境界』放送です。明日3月6日(日)の「プレミアムステージ」枠での放送は夜23:20から翌7日(月)2:59まで(『境界』は同番組前半にオンエア予定)。週頭の深夜となるので、リアルタイムで観ることが難しかったりするかもしれませんが、その場合は録画か、或いはNHKオンデマンドでの視聴も選択肢に入ってくることでしょう。

山田うんさん振付演出のNoism1『Endless Opening』と金森さんによるNoism0『Near Far Here』、あの感動の舞台がまた観られるかと思うと本当に嬉しくて嬉しくて、今、言葉にならないくらいです。

同公演に足を運ばれなかった方も、今回はBSの電波に乗って届けられますから、「近い」や「遠い」といった「境界」もなく、皆さんにとっての「ここ」で観ることができる機会な訳ですから、ホント見逃し厳禁ですよね。

この『境界』公演につきましては、当ブログにも稲田奈緒美さんのご批評を掲載させて頂いていますし、「ダンスマガジン」2022年3月号(新書館)には渡辺保さんによる批評(「官能の焔」)のほか、三浦雅士さんによる金森さんへのインタビュー記事(ダンスマガジンインタビュー「21世紀のバレエが動き始めた」)のなかでの言及もあります。どれも読み応えのあるものばかりですから、今回の放送を機に、改めて目を通して浸る愉悦の時間まで手にしたと言えようかと思います。はたまた、金森さんと井関さんによるインスタライヴでの公演「裏話」の方へ行くというのも楽しいでしょう。

そして、それら反芻的な振る舞いにとどまらず、こうしてテレビ放送されることには、様々な「境界」を越境していく波及効果に大なるものがあると信じます。

でも、まずは私が、あなたが、数時間後に迫った放送を堪能致しましょう♪
あな待ち遠しや、待ち遠しや♪

(shin)

裏話満載でマジ必聴!今年初のインスタライヴは『Near Far Here』アフタートーク♪(2022/01/30)

前週末に開催告知があり、2022年1月30日(日)の夜20時(当初予定の21時を変更)から、今年初の金森さん+井関さんによるインスタライヴがありました。『境界』公演に関するアフタートークとされた内容は、より正確には『Near Far Here』のアフタートークであり、約1時間にわたり、たっぷりと裏話などを話してくださいました。今回もおふたりのインスタアカウントにアーカイヴが残されていますから、是非ともそちらでお楽しみ頂きたいと思うものですが、こちらでもごくごくかいつまんだご紹介をさせていただこうと思います。

*ペアルックのおふたり、着ているのはゴールドウィンのNEUTRALWORKS「リポーズ」というスウェットの上下。高知公演の折の頂きもので、疲労回復を促すなどのすぐれものとのこと。

*Noism0『Near Far Here』クリエイション: 「何も知りたくないままのスタジオ入り」(井関さん)で、1曲ずつ作りながら進んでいった。

*冒頭の井関さんの「瞬間移動」: 着物の動きも止めて見せるにはギリギリの移動だった。舞台のど真ん中に、見る対象なしで立っている(止まっている)のはキツかったと井関さん。当初のアイディアでは金森さんと勇気さんの予定だったものを白い女性の姿にすることで「シンボライズ」できるからと変更したとのこと。

*フレームが下りてくる場面: 人力で下ろしている。東京公演の初日、勇気さんを見詰めながら繋がりながら動いていた金森さん。顔ギリギリのところにフレームが下りてきて、表情は変えられないが、内心「うううっ」となった。

*白いスクリーンが下りてくる場面: テレビ放送のための収録が行われた日、機械トラブルのため、タイミング通りにスクリーンが下りてこなかった。歩いてくるとき、背後になるため、それに気付かない井関さん。その先に本来いない筈の金森さんの姿を認めて…。最終的に「『おおっ、これは即興(で踊る)か』と思ったけど、下りてきたから…。」(金森さん)で収まるまでのドキドキヒリヒリのトラブル対応を巡るやりとり、この生々しさは、同時に抱腹絶倒でもあり、必聴です。何しろ、「下りてこなかったら、何してたかわかんない」(金森さん)そうですから。

*バッハの流れる「影」の場面: テーブルが出てくる影絵は収録した映像で、同じ速度で動いていると面白みがないということで、倍速で撮って、ゆっくり2分の1倍で再生し、カウントに落とし込んでいる。で、ひとつの動きに10カウントかけることにしたところ、井関さんは「…9、10」を数えるのに難儀し、「12345678せ~の」と数えていた。そこに楽しそうに突っ込む金森さん。

*アクリル板の場面: 体温が伝わらず、ホントに難しかった。体感がない。あれだけくっついていても一緒になれない。たった1枚でも時間差が凄かった。滑り落ちる危険もあり、「毎回、『気を抜くな』と自分に言い聞かせていた。あのシーンに関しては、気持ちよかったことは一日もなかった」(井関さん)

*動く床の上での金森さんのソロ: 人力で引っ張っている。金森さんの重心の移動と負荷のかかり方を理解して引っ張る必要があり、一方、金森さんも上半身でアクセントを入れながらも、下半身はあとからにするなど、両者に繊細さが求められた。

*真っ暗な中、浮き上がった井関さんの映像の場面: 映像収録時、「パフォーマンス」をした瞬間にOKが出たため、そこに音の小さなズレが生じることになり、それに合わせて踊ることはやめたと語った井関さん。それに対して、金森さんは「初めてその映像に向き合って踊る『一期一会』のライヴ感」が重要と。「最終的にはそこに落ち着いたでしょ」(金森さん)「落ち着いた」(井関さん)
「過去の自分とか、自分の起こしたアクションに対して責任をとるのが今の自分。実人生でも、自分が言ったこと、やったこととどう向き合うか。今をどう生きていくかということ」(金森さん)
この場面が本作のなかで一番最初の構想にあった場面だったとのこと。

*フィナーレのカーテンコールについて: 『オンブラ・マイ・フ』で浮かんだイメージ。「ゼッタイやりたい!」その瞬間、やり方、手順も見えた、と金森さん。
「最後の曲はお辞儀だけだから」と言われた井関さんと勇気さんは「?」となったという。
で、その真っ赤なバラの花びらの大地を用意するのに「30秒以内で」とする金森さん。「その時間じゃ無理」と言う舞台監督に、「ゼッタイいける」と金森さん。上手(かみて)側から段ボールに入った花びらを縦一列の6人がかりで撒きながら舞台を一回で通過することで実現。
更に客席にも降る花びらやら照明やらの詳細を含めて、このあたりの演出上のこだわりに関してはこの日のハイライトと言えます。必聴です、ここ!

*質問1: 『Near Far Here』の着想はどこからきたのか?
-金森さん「根底に、コロナ禍で人と人が同じ空間を共有できない痛みがあり、それとは別に、西洋と東洋の文化への興味があった。日本では、江戸時代に禁教令、隠れキリシタン、信仰心や異文化との出会いがあった一方、同じような時代に、西洋では、信仰と密接に繋がった宗教音楽としてのバロックが隆盛していた。遠いけれど同じ時期に別な形をとった信仰。そんな時期にバロック音楽を聴いて感動。好きな音楽、興味があること、全部を頭に入れて『ガラガラポン』、最初からそれがやりたかった」
-井関さん「Noism0だから、お互い挑戦できることが楽しい」
-金森さん「実験ができるから。自分もどういうものができるかわからないドキドキを味わいたい。新しいことに挑戦したいから」

*質問2: 雷音に託した思いは?
-金森さん「演出的に一番初っぱなに印象づけたかったことと、3回くるのは、アレ、『Near Far Here』。ヴァリエイションを調整した(距離を示す)言葉のメタファーとしての雷音」

*質問3: 3人の衣裳が象徴するものは?
-金森さん「(金森さんと勇気さんのは)ひとりの男の人の衣裳を分割。西洋の神父・聖職者・僧侶と日本の侍の袴をガチャッとデザインとして集めてデフォルメした感じ。(井関さんの方は)ひとりの西洋の女性のドレスとその上に羽織、洋の東西の服飾のエッセンスを入れたかった。黒と白はシンプルに陰と陽みたいに分けたかった」

*質問4: 花びらを客席に降らせるアイディアはどこから?
-金森さん「『オンブラ・マイ・フ』、曲自体が語りかけてくるように、今ここにいることの尊さ、かけがえのなさ、共にいることの素晴らしさを表現・共有したかった。舞台は観客がいなくては成立しないもの。客席を巻き込んで初めて『舞台』というかけがえのない場所が出来る。それを全部、愛で包みたい、そういうイメージだった」

*いつか再演したいと金森さん。また、3月6日のテレビ放送に関しては、「映像は切り取っちゃうので、映像としての作品になる。そういうものとして見る楽しみがある」と金森さんが言えば、井関さんは「『寄り』とか超イヤ!」と。

最後、週末に迫ったメンバー振付公演についても「観に来てください」としたところで、この日のインスタライヴは終了しました。

いつも完成度が高いNoism Company Niigata。それもNoism0となると、もう「どーん」とした圧倒的な風格があるので、この日の裏話に聞かれたみたいな内心のドキドキなどまったく想像もしない世界でした。
ですから、はじめは意外な感じもしましたが、それをおふたりが丁寧かつ具体的に話してくださったので、惹き込まれて聞く裡にマジマジとした「体感」を伴いながら、演者の「リアル」を共有することが出来たように思います。圧巻のアフタートークでした。繰り返して楽しみたいと思います。

以上、粗末なまとめで、失礼しました。(汗)

(shin)

支援の思い新た!活動支援会員対象『境界』公開リハからのインスタライヴ(2021/12/11)

雪到来前の2021年12月11日(土)は、Noismまみれで過ごすことになった一日。先ずは、15時30分から16時50分までが活動支援会員対象で開かれた『境界』の公開リハーサルで、その後、21時からは金森さんと井関さんのインスタライヴがありました。そんなふたつを続けて堪能したら、このところの「芸術監督の任期」を巡って気を揉むもやもやした時間をちょっと傍らにすることができたように感じました。現在進行形のNoismの「今」に向き合うことは即ち、豊穣な時間に身を浸すことなのであって、見詰めつつ、耳を傾けつつ、支援の思いを新たにしたような次第です。

◇活動支援会員対象『境界』公開リハーサル
15時30分、りゅーとぴあ・劇場に進むことを許され、2F客席に身を沈めようとする以前から、白と黒の引き締まった舞台上には、金森さん(黒)と井関さん(白)、そして山田勇気さん(黒)の姿があり、主に井関さんをリフトする動きの試行錯誤が続いていました。Noism0による『Near Far Here』のクリエイションが真っ最中でした。
その後、バロックの音楽と舞台装置も入れて、通して見せてくれる場面もありましたが、そこでも、時折、金森さんがストップをかけては、より流れるような身体の捌き方を求めて、動きが再検証・再検討され、妥協することなく調整を続ける3人の姿を目にすることになりました。そうやって、動きが今まさに作り出されようとしている様子は、「産みの苦しみ」などという紋切り型の表現からはほど遠いもので、(汗をかき、呼吸はあがって、水分補給をする際も苦しそうではありましたが、)気心知れた同士が、じっくり話し合って、色々試しながら動きを獲得していく作業は、どうしてどうして、「いい時間」が過ごされているようで、ホントに楽しそうに見えました。もう期待感しかない道理です。

30分が過ぎたところで、3人のリハ公開は終了。金森さんが客席に向けて、次のように挨拶してくださいました。「え~、日頃より有難うございます。ご覧いただいたように稽古に励んでおります。俗に、『3本の矢は折れない』と言いますが、3人体制になって、今まで以上に活動していきます。これからも宜しくお願いしま~す」とどこまでも明るい調子でした。そして、最後に金森さん、もう一言、「衣裳を脱ぐにも、(3人)お互いが必要なんで…」などと言って笑いをとりながら、Noism0の3人は劇場を離れていきました。

そこから、20分の舞台転換の時間を挟んで、16時20分から、今度は山田うんさんの『Endless Opening』、Noism1の方のリハーサルを30分間見せて貰いました。
主にユニゾンで踊る箇所を見せて貰いました。フォーメイションとしては、一番前に中村友美さん、二列目に庄島すみれさん・さくらさん、三列目には中尾洸太さん、三好綾音さん、井本星那さん、そして最後列に坪田光さん、樋浦瞳さん、ジョフォア・ポプラヴスキーさんというのが基本形のようです。
シンボリックな「台車」、見ました。しかし、衣裳は本番までのお楽しみ。
誕生と死とに挟まれたいっとき、束の間の「花束」然として、ピタリ決まるユニゾンはNoism1ならではなのでしょうが、同時に、一人ひとりの個性を楽しむことが出来る作品ともお見受けしました。SMAP『世界に一つだけの花』や、或いは小林秀雄『当麻』のなかの「美しい『花』がある、『花』の美しさという様なものはない」などを想起しながら、舞台上、留め置くこと能わず、刹那に輝く9輪からなる「花束」を見る体験になりそうだとの思いを抱きました。
山田うんさん、ある場面で、歩く動作の「歩数」が気になり、変更しようかどうか、色々試すのを見詰めるうちに、公開終了時刻となりました。時間が許す限り、細部まで貪欲に動きを練り上げようとする姿は金森さんと変わらないなと思いながら劇場を後にしてきました。

今回のダブルビル公演、初日は来週の金曜日、12月17日。それぞれの創作過程をちょっと見せて貰ったら、もう楽しみで楽しみで仕方なくなってしまいました。

◆金森さん+井関さんインスタライヴ
顔をパグに変えちゃうような悪戯もやりながら始まったこの日のインスタライヴ、お話しは多岐に渡りましたが、ここでは『境界』公演に絞ってご紹介を試みたいと思います。
・『境界』公演の『Near Far Here』、創作も佳境。Noism0はいつもギリギリになる。バロック音楽に感動、全編バロック音楽の小品9曲を使用し、合わせたら繋がりができた。
・バロック音楽の時代、日本は江戸時代。キリシタン信仰が渡来。弾圧、隠れキリシタン。元来、信仰と密接な音楽であり、自分にとっての「信仰」とは何かということになっちゃった。何のために生まれて生きるのか。この世の不条理等々。
・衣裳も和モノとバロックの時代の洋のモノのハイブリッド。境界線を模索する、または融合するポイントを見つける作業。美しい作品ができた。
・バロック音楽のカウント、「3」のリズムが多いのが心地よい。「3」はキリスト教にとっても大切な数字(=三位一体)。今回、3人で踊ることも「3」繋がり。
・りゅーとぴあ・劇場をこれだけ大きく使ったのは初めて。大空間を移動する身体、実演は久し振りで、最初、距離感が掴めなかったが、楽しい。大空間を自分の美意識でコントロールできるようになりたい。
・演出的にも、空間的にも、照明的にも、衣裳も、あらゆる部分で初めての挑戦をしていて、その意味では実験的なのだけれど、最終的にひとつになっていく。
・テーブルでの場面。3人で振りを作っていって、それぞれ所作を解体、バラバラにして、スピードを速くしたり、スペース変えたり、高低差をつけたり、ダイメンション変えたりもした。→作り方的にはコンテンポラリー的だが、同時に、極めてバッハ的。構造を数学的に音楽にしていくこと、バロックに括れないバッハの特性だと思う。
・今回、映像も使っているし、物も使っている。なかでも、アクリル板。井関さんと山田勇気さんとのパ・ド・トロワ(3人の踊り)を作った。アンコントローラブルな(制御できない)不確定要素を盛り込むことで何を見出すか、何が生まれるか見てみたい。(『夏の名残のバラ』でのキャメラもそう。)今の世の中のアクリル板に、目の前にいるのに触れられない悲しみを感じる。
・しかし、今回の『Near Far Here』はネガティヴな作品ではない。今ここにいることの僥倖、有難さ、幸福、奇跡みたいなものを共有したい。エンディングでは我々なりの愛を届けたい。
・今回の衣裳、ひとりでは着られないので、3人一列になって、お互いに後ろを締めて貰っている。井関さんのは中世のドレス然としていて、コルセットが苦しい。金森さんと山田勇気さんの衣裳は、和(=和服、袴)と洋(=僧侶、宣教師)のハイブリッド、かつ、ふたり併せて一人分になる、斜めのファスナーが多用された、どこで割るかっていう複雑なもの。
・今回の照明、所謂、舞台照明ばかりではなく、反射した光、プロジェクターの明かりを使ったり、実験的なことをしながら、美しい明かりになる。
・山田うんさんの『Endless Opening』、同じ「境界」をテーマにしながら、出てくるものが違う点で面白い、多幸感溢れる作品。うんさんの人柄が出ていて、「色」などは対称的だが、どちらもクリスマスに観るにはいい作品。 …等々。

と、そんなあたりをご紹介させて頂きました。全部通してご覧になりたい向きは、アーカイヴでご覧になれます。こちらからどうぞ。

とりあえず、来年9月からの5年間、新潟市での活動継続が決まったNoism Company Niigata、その決定後の最初の公演です。「ちょっとだけでも今までやったことがないことにチャレンジしたい」と語る金森さんは、(奇妙な言い方になりますが、)私たちを常に裏切りつつ、その「裏切り続ける」という点においてはまったく裏切ることのない稀有な芸術監督と言えます。公演の度に私たちの日常を活性化してくれる訳ですから。

そんな金森さんが「自信作」と力を込めて語るNoism0『Near Far Here』、そして、Noism1が山田うんさんとの間で化学変化を見せること必至の『Endless Opening』、大いに圧倒される心づもりで、いざりゅーとぴあ・劇場へ。クリスマス期に放たれる刺激的な贈り物2作、『境界』新潟公演は来週金曜日にその幕が上がります。よいお席はお早めにお求めください。

(shin)

金森穣×東京バレエ団『かぐや姫』記者会見インスタライヴ♪

10月27日(水)17:45から30分間、東京バレエ団の主催で『かぐや姫』について、金森さんへの記者会見インスタライヴが行われました。この日は、かぐや姫 足立真里亜さん・道児 秋元康臣さんによる、初めての通しリハーサルがあったようで、記者の方たちはそのリハーサルをご覧になってからの会見のようです。質疑応答の中には若干、物語のネタバレも含まれていますのでご注意ください。

Q(記者) 以前、信頼している方にリハーサルを見てもらった時に、ダメ出しをされたそうですが、どんなことを言われたのですか?

-A(金森さん) ダメ出しの内容はあまり言いたくないものなのですが(笑)。まだそれほど出来上がっていない時点で、自分も客観性が無く、本来であれば踊りの質とか呼吸、情感、表現を考えなければいけないのに、つい技術的なことにフォーカスしてしまい、振付を早く覚えてほしいとか、そんな気持ちが先に立ってしまったので、それは当然のことながら「舞台芸術としてどうなのか」と言われますよね。はい、その通りですというしかありませんでした。

Q コロナ禍において、Noismの作品がどのように変わったと思いますか?

-A 何を届けるか、でしょうか。自分は本来ネガティブというか暗いので、悲哀、痛み、苦悩、悲しみを表現することが多かったのですが、コロナ禍で世の中が暗いのに、その上にまた暗い作品ではどういうものかと思い、暗い中でも少しポジティブに、希望や愛、人と愛し合うということを届けたいと思いました。

Q 『かぐや姫』の主役の二人やバレエ団について、どんな感じをお持ちでしょうか?

-A 『かぐや姫』はかぐや姫と道児の二人が主役で、ダブルキャストです。今日はBキャストの足立真里亜と秋元康臣の通しを始めて見ました。とてもよかったです。二人が『かぐや姫』の世界に生きていて嬉しかったです。群舞は時間をさいてやったので、こちらもよかったと思います。初日のAキャストの秋山瑛と柄本弾は明日通しをします。

Q 道児と、欲が深い翁のキャラクターの発想は?

-A 道児は高畑勲作品に登場しています。かぐや姫の相手として、境遇が違う二人を組み合わせたいと思いました。二人は貧しい村に住んでいますが、道児はもっと貧しい。でも虐げられながらも懸命に生きています。そんな道児が明るくお転婆で天真爛漫なかぐや姫に惹かれる。そんな女の子が泣いているんですよ。月を見て。今回は1幕のみの上演ですが、かぐや姫が都に行ってしまう2幕、3幕では道児がどうなっていくかも描かれます。

 翁は欲深というか、人間ってこういうところあるよね、という感じでしょうか。翁はかぐや姫を溺愛しています。かわいがっていて、ずっと自分のものにしておきたい。でも子どもは他者ですから思い通りにはならない。それを許容できない父親が翁です。親子喧嘩をして、行ってはいけない夜の竹藪に行くと、何かが光っている。金銀財宝を見つけて、翁は金持ちになって、かぐや姫を連れて都に行くのですが、それでかぐや姫が苦しむのです。

Q ダブルキャストの、二人のかぐや姫と道児のそれぞれの魅力は?

-A 道児は弾と康臣ですが、今日の康臣には驚きました。これまでにない彼がいた。この作品を通して、彼が今まで出してこなかった面を生ききってほしいと思います。弾の方が元々役に合っていると思いますが、今日の康臣を見て弾がどう感じたか。その影響も楽しみです。瑛と真里亜は最初似ていると思ったのですが、性格も踊り方も踊りで魅せる魅せ方も全然違いました。主役によって作品に新しい感情や視座が加わります。だからぜひ2回観てほしいですね。

Q 1幕の最後のシーンでかぐや姫はトゥシューズ(ポワント)になりますが?

-A はい、2幕は都に行くので、その前段階として最後にバレエシューズからトゥ
シューズになります。2幕の宮廷の女性は高貴なので皆ポワントです。高貴なふるま
いをしなければならないかぐや姫は、本当はポワントを脱ぎたい。裸足になりたいのです。

Q 群舞がとても効果的です。全てポワントですが?

-A 群舞は自然を表しています。前半は海、それから竹を表しています。自然は俗世とはかけ離れた超常的な存在で、緑の精として表されます。東京バレエ団では、ポワントの群舞と、男性の群舞をやりたかった。Noismではできませんからね。ポワントで、竹の硬質なスッとした感じを出したかったです。

Q 翁にだけ黒衣が付きますが?

-A 翁には飯田先生(飯田宗孝、東京バレエ団団長 特別出演)に無理にお願いしてやっていただいています。小林十市さんもそうですが、齢を重ねて、今だからこその経験値と存在感があります。黒衣を付けたのは能でいうところの「後見」というか。もし何かあったとしても大丈夫なようにというか…(笑)。

…と、ここまで順調なインスタライヴでしたが、なぜか18:09~音声が途切れ、映像も切れましたが、会見は続いています。18:12頃に復活しました。

Q (使用楽曲のドビュッシーの音楽についてのようです)

-A ・・・ドビュッシーの音楽は「海」や「月の光」など自然を表す曲が多く、情感があります。何より色彩が見える。もう3幕まで、使う楽曲を選んであります。(ほおーという感嘆の声)

Q キリアンの作品にも「かぐや姫」がありますが意識しましたか?

-A いや、こちらは物語ですし、キリアンの方は抽象度が高いので、ほとんど考えませんでした。

Q 金森さんはベジャールとキリアンに学ばれましたが、二人の巨匠に学んだことは何ですか?

-A 話すと長いですよ。時間がかかります(笑)。学んだことが『かぐや姫』に
ギュッと出ていると思います。作品に二人の影響があることを感じてもらえると嬉しいです。若い時は自分自分でしたが、私もそういうことを嬉しく感じられる年になりました。

Q 東京公演は、金森さん、ベジャール、キリアンの作品が上演されますね。

-A はい、『かぐや姫』、『中国の不思議な役人』、『ドリームタイム』のトリプルビルです。縁を感じますね。

 ありがとうございました。

…終始和やかな雰囲気のインスタライヴでした♪ 新潟公演では『かぐや姫』と『ドリームタイム』のダブルビルです。お話を聞いていたら『かぐや姫』1幕はもちろんですが、2幕、3幕も早く観たくなりました。 皆様どうぞお見逃しなく♪

東京公演:11/6(土)14時 11/7(日)14時(@東京文化会館)  
新潟公演:11/20(土)13時、17時(@りゅーとぴあ)
https://www.nbs.or.jp/stages/2021/kaguyahime/index.html

(fullmoon)

『記憶の中の記憶へ』から1週間余、「ゲスト!小林十市さんでーす!」のインスタライヴは超脱力系♪

2021年10月25日(月)、予定されていた18時半より15分ほど早くそれは始まりました。「それ」とは、ゲストに小林十市さんをお招きした金森さんと井関さんによるインスタライヴ。予定が繰り上げられた理由はゲスト・十市さんのお腹の空き具合によるものとのことで、ここでもキーワードは「十市さんのお腹」だったことになります。(笑)私は告知されていた18時半でも間に合わないことが確実だったため、最初からアーカイヴ狙いでしたから、直前の変更による影響はほぼ被ることもありませんでしたが…。

そんなふうに始まったゲストシリーズ初回のインスタライヴ(58:54)です。もうとことん、潔いくらいに脱力系のトークが展開されていきました。今回は、その雰囲気をお伝えすることを主眼に書いてみますが、開始に間に合わなかった人も多かったでしょうし、直に皆さんの耳で、実際の脱力具合を確かめて欲しいものです。インスタライヴ「ゲスト!小林十市さんでーす!」のアーカイヴへはこちらからどうぞ。

☆十市さんの膝
『記憶の中の記憶へ』は、脱力がテーマの『エリア50代』のソロとは真逆。運動量が莫大に増え、「強い身体」を求められたときの反動が膝にきた。その膝は治療中だが、半月板の内側のすり減りは年のせいで、手術は不要、「十字靱帯は大丈夫なので鍛えてください」と言われたと明かす。
「皆さん、聞いて下さい。この(十市さんの)膝は私のせいじゃありません」(金森さん)「勿論、穣くんのせいじゃない。そんなこと思ってない」(十市さん)「十市さんファンに恨まれる」(金森さん)「そんなことはない」(十市さん)

★50代の十市さんが挑んだ『記憶の中の記憶へ』
「楽しかった?」(金森さん)の問いに、「はい」と答えた十市さん。しかし、初日、最初のピルエットがまわれなかったと後悔。「力が出せなかった。燃え尽きようと思ったけど、先に力尽きちゃった。そこが残念だったかなと」とし、また、ゲネプロ、本番初日、本番2日目と踊ると、3日目(本番2日目)には「回復していない。それが若い時との違い」と感じるとも。

☆「ゆるい、頑張らずに踊れるは妄想」(金森さん)
「『楽で、お客さんが喜んでくれる』はそうそうない。振付家から作る段階で、ツラいかどうか、もうちょっと楽にしてあげようか、というのはインスピレーションにない。最初から『楽に』を前提にしたりはない」「ダンサーが『今、いいな』というのを積み重ねていって、結果、そんなにシンドくなかったら、それはラッキー」「ツラくある必要があるとは思ってないけど、結果的にやっぱりある程度のエナジーは要るし」(金森さん)
十市さんは「インスタのピルエット、成功したところしかあげてなかった」のに、そうと知らず、それを見たから「まわるのは負担がないんだと思って振り付けたんだけど」と金森さん。
「今回、穣くんの腕の動きを何とか真似したいと思って頑張った。『大きく、遠く、広く、デカく』、そうしたら肩が痛くなった」(十市さん)
3人で踊る場面、プリエの深さが全然違っていたが、周りがちゃんと固めてくれた。また、いつも、若手には「枠からはみ出さないと…」と言っているのに、枠に収まっている自分っていうのが、「違うじゃん」と十市さん。「本番ではふたり(金森さんと井関さん)を脇に、『松葉杖か』っていう。それで思いっきりプリエしましたよ。…今回、Noismとの共演ということで、自分のなかでも最低限、ここまではみたいなのがあった」とも。

★「今回の作品は間違えやすい作品」(井関さん)
「凄いカウントするよね。ギリシャとか、8と10だっけ。なんとなく数えているふりしながらフレーズで(踊っていた)」(十市さん)
「本当に集中してないと間違えそうだなぁというのが結構あった」(井関さん)「今回、ちょっと振りが違った?どう違う感じだった?」(金森さん)「足にきた」(井関さん)「えっ、プリエ?」(十市さん)「穣さんの作品、結構、プリエ多いんだけど。ベジャールさんに寄せているって言ってたじゃない、穣さんのなかで。イメージが、結構、2番プリエとか多いんじゃない」(井関さん)

☆「兄ちゃんのなかで、オレのはシンドイっていう固定観念が…」(金森さん)
「次はまた違う感じのを」(金森さん)「次があるの?」(十市さん)「次があったら、違う感じの作る」(金森さん)「嬉しい」(十市さん)「この感じやったじゃん。おいら、同じ感じの繰り返すの嫌な人だから」(金森さん)「(Noism)0に特別出演して貰って…。0は結構厳しいですよ」(井関さん)「勇気さんの背中、テーピング見たとき、びっくりしちゃって…」(十市さん)「身体が痛いけど、集中したときの集中力が凄い。若い人たちのエネルギーも良いんだけど、それとはちょっと違う…」(井関さん)

★「十市さんって、一緒に踊ってて、凄い目を見てくれる」(井関さん
「凄く踊りやすい。いろんなダンサーと踊ってきましたけど、結構少ないんですよね。目をただ見てるだけじゃなくて、その人のなかに入ってくる、その感じが」(井関さん)「昔からそう?」(金森さん)「芝居やるようになってからかもしれない」(十市さん)「どんなに上手い人と踊っていても、そこの通じ合いがないと舞台に立っていて、全然楽しくないから、そういう人と踊れることは本当に幸せ」(井関さん)

☆「脱力」をめぐる応酬も…
翌日10時からというレッスンにも、いかにも及び腰で「脱力しなきゃいけない」とする十市さんに、「脱力する前に一回あげなきゃ」と金森さん。十市さん、すかさず「脱力するウォームアップで」と返すも、金森さんからは「脱力はウォームアップ要らない」と。で、負けじと、十市さん「脱力するためのウォームアップを脱力してやって、脱力する踊りを踊って…」と言ったのですが、金森さんから「でも、そんなのばっかりやってるとまたダメになるから、稽古は稽古でして、脱力系を踊って…」と敢えなく一蹴されてしまう十市さんでしたが、「愛されキャラ」振りはよ~く伝わってきました。

…とまあ、そんな感じにしてみました。
「伸びてきた髪を週末に切る予定」の十市さんをゲストに迎えたインスタライヴ、幾分かだけでも紹介できていたなら幸いです。でもまあ、どこをとっても楽しい話ばかりですから、一番は、実際にアーカイヴを聴いてみることですけれど。
それでは今回はこのへんで。

(shin)

10/17『A JOURNEY』横浜千穐楽直後、感動の余韻のままに金森さん×長塚圭史さんのインスタライヴ

10/17(日)、「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2021」のフィナーレを飾るNoism Company Niigata × 小林十市『A JOURNEY ~ 記憶の中の記憶へ』が多くの人たちの脳裏に、胸に、記憶として刻まれてまもなく、17:45からKAATのインスタ・アカウントにて、金森さんとKAAT 神奈川芸術劇場芸術監督・長塚圭史さんのインスタライヴが配信されました。劇場界隈で、或いは劇場からの帰路で、その様子をご覧になった方も多かったと思われます。かく言う私は、「旅」先でもあり、まずは本ブログに公演レポをあげなければならぬという事情から、当初から、後刻、アーカイヴを観ることに決めていました。そして、日付が変わって、翌朝、(NHKの朝ドラ『おかえりモネ』に続けて)楽しませて貰った口です。ですから、皆さん、もうお楽しみ済みと考えますが、こちらでも内容をかいつまんでご紹介させていただきます。

*その実際のアーカイヴはこちらからもどうぞ。

金森さんと長塚さんはほぼ初対面。その長塚さん、劇的舞踊『カルメン』が印象に残っていて、特に「老婆」のインパクトが凄かったと語るところからやりとりは始まりました。

今回、思いがけない作品でびっくりした。どのようにして作られたのか。(長塚さん)
 -金森さん: 第一部冒頭「追憶のギリシャ」、十市さんと一緒に踊る場面の音楽はマノス・ハジダキス(1925-1994)。ベジャールがよく使っていたギリシャ音楽の作曲家で、ルードラ時代から思い出深い人。その人の楽曲を使って作れないかなと考えた。今回の楽曲は『I’m an eagle without wings.(私は翼のない鷲)』、今回のメインテーマである十市さんにもう一度、羽を獲得して欲しいとの思いを込めて選曲した。
『BOLERO 2020』の舞台版は、コロナ禍で創作した映像版で不在だった中心に十市さんを迎えて、他者と熱量を共有したいという鬱積した思いや願いなどを十市さんにぶつけるかたちをとり、そこから第二部へ行けたらと、この構成にした。
 -長塚さん: まず最初、十市さんの記憶から始まった。ダンス遍歴として受け取った。
 -金森さん: コロナ禍の苦悩が発端だったが、人間は人生の折々に、色々な境遇でそうした感情を抱く。時代を超えて、普遍性を持ったものであって欲しい。自由に受け止めて貰えれば良い。
 -長塚さん: 同時多発的で、凄い情報量。ドラマティックな「ボレロ」として刺激的だった。
あと、始まり方に驚いた。十市さんの劇のように始まった。こんなにひとりのダンサーに向けて作品を製作したことはあったか。
 -金森さん: 初めて。最初から最後まで「兄ちゃん」のために考えた作品。

第二部(The 80’s Ghosts)について
 -金森さん: 音楽はユーグ・ル・バール(1950-2014)、80年代にベジャールさんと一緒に作品を作っていたフランスの映画音楽の作曲家。十市さんがベジャールバレエ団に所属した1989年に、ベジャールさんが初演していたのが『1789…そして私たち』。フランス革命から200年後、革命にまつわる作品で、ユーグ・ル・バールがたくさん使われていた。十市さんとベジャールさんの出会いの頃。
その『1789…そして私たち』、200年前の革命で民主化された筈の世の中も、貧富の差は拡大し、争い事は尽きず、何も変わっていないという問題意識をベジャールさんは持っていた。80年代を振り返り、ベジャールさんを思い起こすとき、それは過ぎたことではなくて、今もなおアクチュアル。今現在、我々が生きている世の中の問題とも繋がっている。そのなかにあって、小林十市という舞踊家が52歳になって再び舞台に立とうとしている。その時間スパンをユーグ・ル・バールの曲を用いて表現できないかと思った。
ベジャールもユーグ・ル・バールも度々来日していた。80年代の日本は「バブル」。今から振り返ったら、じゃあ何だったんだろう、と。今もまだ続いている問題は何で、その上で、我々はここからどう「旅」していくかということを、逆に、舞踊家・小林十市に託した。

十市さんの「道化師」、52歳の十市さん
 -金森さん: 孤独で塞ぎ込んでいた17歳の頃、十市さんはいつも笑顔で優しかった。ベジャールさんの作品のなかでも、十市さんが担っていたポジションは「猫」の役など、人間を傍から、社会を斜めから見る目。あらゆる困難、苦悩、悲しみを見たうえで、それを笑いに転化しようというエネルギーを小林十市という舞踊家に感じていた。「道化師」は必然。その明るさ、道化的な要素をNoismメンバーに共有して欲しかった。通常のNoismではなかなかないようなことを十市さんと交わることで生みたかった。十市さんは落語家の孫。落語は人間の業を肯定する話芸、その遺伝子を継いでいる。
 -長塚さん: 道化師、俯瞰して、傍から見ている。今回の舞台でも、座って見ている時間が長かった。そこから踊り始めるのは結構負荷がかかるのではないか。52歳の十市さんの肉体と向き合ってどういう発見があったか。
 -金森さん: 2日目、カーテンコールが終わって、十市さんがちょっと悔しそうにしてたのが何よりかな。稽古して、求めれば求めるほど満足はいかないものだし、舞台に立ち続けるとはそういうこと。苦痛や不安を乗り越えていく、それが舞台芸術の美しさだと思う。十市さんの年齢を考えて振付したけれど、十市さん的には結構 too much だったかも。
でも、やっぱり十市さんは大きな舞台の人だと思う。世界中ツアーして、3,000人とかに向けて大空間で踊ってきた舞踊家。それは絶対、身体のなかにある筈だし、実際ある。
 -長塚さん・金森さん: 『BOLERO 2020』の最後、円のなかに入っていく、あれ、出来ないですよ。あのエネルギーのなかに行って、立つっていう。
 -長塚さん: 一緒に踊ったことはなくても、知り尽くしてるんですね。
 -金森さん: いやあ、だって、たった2年ですからね。妄想、妄想。知り尽くしてないです。(ふたり爆笑)
 -長塚さん: カンパニーとしての「出会い」はあったか。
 -金森さん: いい刺激になったと思う。凄い経歴、数々の舞台に立ってきた52歳でも、本番前に緊張したり、本番後、あそこがもっとなぁとか思ったり。若いメンバーが踊り続けていくなら、その姿が、彼らが共有したことがハッと気付くときが来る。今、もう既に目の輝きに表われてきたりしている。「舞踊道」、長く続く豊かなものである。たとえ、若い頃のように踊れなくなったにしても、そこにまた何か表現の可能性があることを感じて欲しかったし、感じてくれていると思う。
 -長塚さん: この作品がフェスティバルのフィナーレになったこと、凄い良かったなと改めて思う。
 -金森さん: 「クロージングで」ってことで話を貰ったので、なかなかの責任だったが、十市さんへの思いと持てるもの全てを十市さんのために注いだら、多分相応しい何かが生まれるとは思っていた。最終的に「兄ちゃん」が踊り切ってくれて良かった。
 -長塚さん: この構想を聞いてから、事前にプロットを考えて、そこに十市さんに入って貰ったのか、それとも十市さんと一緒に作っていったのか。
 -金森さん: line で、十市さんが踊った楽曲、思い出、写真など送って貰い、情報は共有したが、作品に関しては、自分のなかでどんどん先に作っておいた。あと、十市さんが入ってから、十市さんとの振付は、実際に十市さんに振付ながら生んできた。


作品に関して
 -長塚さん: 深い愛情が詰まった舞台であり、なおかつ、そこにとどまらず、今現在、これから先に向かっていくという作品は本当に素晴らしかった。
 -金森さん: 十市さんを思っている沢山の方々(お母さんやファン)の気持ちを裏切らないように作ったものが、昨日、無事に届いた感覚があって、それが何よりだった。
 -長塚さん: 十市さんのストーリーとして始まっていくのに、その間口がとにかく開かれていることが素晴らしいと思った。個人史みたいなところに行かず、歴史と記憶と現在とことを詰めたことが、閉じないことに繋がっている。作品としては、異質なのかもしれないが、十市さんというダンサーを通してできるひとつのレパートリーになっていくような、「幅」をとても強く感じた。
 -金森さん: 十市さんのために作ったが、十市さんにフォーカスしたいうよりも、「金森穣」の作品を作るうえでの妄想空間があり、そこに十市さんを入れ、そこで十市さんに自由に暴れて貰って、それで作った。十市さんが入ったことで、新たなインスピレーションのチャンネルも多数開いたので、十市さんには感謝している。
 -長塚さん: 全然閉じていなかった。特に開けていて、凄く面白くて素敵な公演だった。

…と、まあこんな感じでしたかね。ここでは拾い上げなかった部分も面白さで溢れていますから、是非、全編通してご覧になることをお薦めします。

そして、更に「もっともっと」という方には『エリア50代』初日(9/23)の公演後に配信された小林十市さん×長塚圭史さんのインスタライヴ(アーカイヴ)もお薦めします。こちらからどうぞ。

それではこのへんで。

(shin)

【インスタライヴ-15】『春の祭典』ツアー後の大質問大会

2021年8月1日(日)20時、『春の祭典』最後のツアー先である札幌から(2時間前に)新潟市に戻ってきたばかりの金森さんと井関さんが、「眠い」なか、前回のインスタライヴ以来、ほぼ3ヶ月振りとなるインスタライヴを行ってくれました。広く質問に答える形式での『春の祭典』大質問大会、約1時間。以下にその概要を抜粋してお伝えします。

*この日の晩ご飯: 北海道名産・鮭のルイベ漬(佐藤水産)
*今回のインスタライヴ中のおやつ: 福島産の桃

札幌公演は15年振り。「皆さん、待っててくれた感じ。(hitaru)楽屋のトイレは入る度に音楽が流れる『最新設備』だった」(笑)(井関さん)

Q:照明の調整に時間はかかったか?
-金森さん「ツアー地では凄く時間がかかって、ゲネが無理になり、本番直前のテクニカルランで初めて通せる感じなのが、今回は設備が良くて、順調だった」
-金森さん+井関さん「札幌スペシャルの照明、次やるときはテッパン。最後にちょっと違う演出・照明が加わっている。もう一個『外部』の世界を感じる照明にした」
-井関さん「最後の最後までライヴ感が凄かった」


Q:『春の祭典』音源はどのように決めたか?
-金森さん「入可能なものは手当たり次第に入手して、実際に踊ってみた。既に作っていた構成に合っていて、演出家としてビビッとくるものがあったのがブーレーズ盤だった」
-井関さん「色々なテンポのものがあったが、ブーレーズ盤が一番、音の粒が立っていると言っていたのを覚えている」
-金森さん「ブーレーズ盤は、情感でいくというより、理知的。音がクリアで構造がはっきりしている印象。後から、ベジャールさんもこれを使っていたと聞いた」

Q:踊るときに一番大切にしていることは何か?
-井関さん「その瞬間をどう生きるか。邪念を抜きにして、その瞬間の空気とエネルギーをどう感じるか。邪魔は入るが、それさえも『瞬間』と捉えて乗り越えること」
-金森さん「舞台に立てば立つほど、緊張感をコントロールする術も判ってくるが、『失敗しないかな』との適度な緊張感で集中度も上がる。そのときの音楽の響き、観客のエレルギー、自分の状態を大切にしたい。そこに身を投じる。そこに居続けるための集中」

Q:一人ひとりに楽器を割り当てた『春の祭典』、音を聴いて踊るのか?
-井関さん「楽譜で割り当てていて、全員で完全にカウントを数えているので、一応判っている。それが大前提で、カウントの取り方、『音色になる』ことの難しさがある」
-金森さん「舞踊家は音楽に合わせることに慣れているが、『音になる』っていうのはどういうことか。「(音が)来る」と判っていることではない。音の呼吸・強度を身体化するという完全にはなし得ないことを21人に求めた」
-井関さん「音に合わせすぎると、音に見えない。外からの目がないと成立しない」
-金森さん「一人ひとりが演奏者であるということが肝。自分が動いたことで、その音が発されているように見えることの難しさ」

Q:しんどいとき、それを超える秘訣は?
-井関さん「体力は、稽古でも頑張ってMAXやるが、本番でガンガンあがっていく」
-金森さん「身体は記憶する。最初の通しは滅茶滅茶しんどいが、そのしんどさを求めちゃったりする。これが危ない」
-井関さん「それに酔っちゃったりするのが危ない。語弊はあるが、作品を超える体力と精神力があって、しんどそうに見えて、しんどくないのがベスト。表現の幅が増えてくる。身体も精神も鍛える稽古、また、本番では最高の作品にするべくコントロールすることが重要。身体でやり切って、その先に見える何かを頭を使って見つけて、身体で試す」
-金森さん「舞踊家は馬であって、同時に騎手である。しかし、騎手であり続けながら馬を鍛えることは出来ない。鍛錬は馬にならなければ出来ない。馬が仕上がった後から、騎手が来るというバランスがいい」

Q:踊った後、どれくらいすると食欲がわくものか?
-金森さん「すぐは無理。でも、作品による」
-井関さん「本番の時は『食欲』はない。『食べなきゃ』っていう感じで『義務』。『完全にコレ、仕事だな』って思ったことも」
-金森さん「遅くならないうちに、できるだけ身体にいいものを、って感じだが、美味しいものの方が入り易い。当然、幸せにもなるし」

*照明や装置の微細な違いに気付く舞台人のビビッドさについて
「なんかちょっと違う。今日、(照明が)眩しい」って言って怒り出すのが「佐和子あるある」と金森さん。「で、照明家さんたちが『えっ、変えてないです』ってザワザワってなる。(笑)でも、厳密に言うと、毎日、照明はチェックで触っている。で、微細には変わっている。どれだけビビッドな感覚で舞台に立って感知しているかは、多分、照明家さんには想像できない」(金森さん)

Q:『Fratres』のお米は使い回しか?
-金森さん「はい。演出部さんが、毎回、終演後にザルでほこりを取っている。降らしたときに詰まっちゃったりするので。金銀山の砂金採りかみたいなレベルで」(笑)

Q:リノリウムのペイント、そのコンセプトは?
-井関さん「近々、映像をアップする予定」
-金森さん「コンセプトを伝えて、(俺以外の)メンバーみんなで塗ったもの。そのコンセプトは上から落ちてきてバチャ。みんなのは噴水みたいにバチャ。まあ、似てるんだけど、上から落ちてくることが…」
-井関さん「みんなで話し合って、やっぱりちょっとずついこうと。ひとり一色ずつ持って」それで、「これ、いけるんじゃね」と最初は井関さんから塗っていった。「踊っているとき、毎回、一瞬、海のような、波のようなエネルギーを感じた」
-金森さん「プレヴュー公演やっているときに、何かが必要と感じていて、『ああ、これか』と気付いたもの。『春の祭典』の色彩の爆発、色の欲情みたいなものを精神的な爆発として付与したかった。アクションペインティングのように上からペンキを落とそうと思ったが、さすがに、劇場の人に『大変なことになるからやめて下さい』と言われて…」

Q:『春の祭典』創作で一番苦労した点は?
-井関さん「一番というと、やはり楽譜読み。ホントに時間かかったし、待つ時間も長かった」
-金森さん「ユニゾンもそんなになくて、一人ひとりに振り付けていたから」
-井関さん「楽譜とにらめっこしていて、これはホントにダンスの作品なのかと。最初の1、2ヶ月くらいは」

Q:ふたりにとって、踊り・振付が「腹落ちする」っていうのはどのような感覚か?
-金森さん「踊っていて、『コレだ』って思うときってことなら、それが判るってことが『経験』なのかなと思う。今にして思うと、若い頃は、腹まで落ちないで、肺ぐらいで止まっていた気がする」
-井関さん「完璧な踊りはないが、その瞬間、光を浴びて、そこに集中していられているときが一番納得できるときか」
Q:振付が自分のものになり、無意識・ナチュラルなかたちで踊れるといった感覚か?
-井関さん「無意識はない」
-金森さん「おおっ、佐和子だねぇ。オレ、無意識だからね」
-井関さん「リハーサルで計算をとことんしておいて、そこからどれくらい外れたところへ行けるかっていうか」
-金森さん「結局、完全にはコントロールし得ないものをコントロールしようとしているから、どちら側に立つのかで違うし、この身体っていうのが凄い矛盾で、そういうものと向き合うことが踊ること。観てて感じる感想とは違う」
-井関さん「ここ最近になって、やっと、バランスっていうのが計算じゃないってことが判ってきた。その瞬間瞬間に選び取っていくこと、それが楽しいなと」

Q:『春の祭典』のキャスティングはどのようにして行ったか?
-金森さん「ホントに直感的なインスピレーションによった。楽器の音色からどのメンバーを想起したかっていうこと。癖も性格も判っているし、音色が舞踊家のもつエネルギー等に合うかどうか、という感じ」

Q:今後、『火の鳥』『ペトルーシュカ』に取り組む予定は?
-金森さん「『火の鳥』はNoism2のために作ったものがあり、それはいつかやりたい。『ペトルーシュカ』は『いつかやるのか?』と…、特に予定はないけど」

Q:昨年の「サラダ音楽祭」の演目、再演はないのか?
-金森さん+井関さん「『Adagio Assai』と『Fratres』に関しては、特別決まっているものはない。今回はジョン・アダムズの新作『ザ・チェアマン・ダンス』。42歳・井関佐和子、走れるのか。(笑)それと20年間、点で踊ってきている『Under the Marron Tree』。e-plus『SPICE(スパイス)』の記事を見てください」
-金森さん「『春の祭典』はいずれそのときのメンバーで再演するだろうし、『夏の名残のバラ』はやる予定がある」

…等々と、そんな感じですかね。疲れていた筈のおふたりでしたが、多岐にわたる質問ひとつひとつに丁寧に答えてくださっていました。その様子、是非ともアーカイヴにて全編をご覧ください。そして次回は「サラダ音楽祭」後かな、と予告めいたものもありましたね。楽しみにしています。

それでは、今回はこのへんで。

(shin)

【インスタライヴ-14】前回、佐和子さん受賞の裏で…穣さん、謎のブルゾン…諸々もろもろ

2021年5月2日(日)21時から行われたインスタライヴは前回から約2ヶ月振り。前回は佐和子さんの芸術選奨文部科学大臣賞受賞が発表された翌日のライヴでしたが、その裏で、今度は穣さんに纏わる、喜ばしい「大人の事情」を抱えていたとは!

 *穣さん、紫綬褒章受章に関して

  • 「びっくりした。紫綬褒章?あれ、どういうやつだっけ?」みたいな感じ。(穣さん)
  • 前回のインスタライヴ前日17時に佐和子さんの受賞が公表解禁。携帯を手に喜びの穣さん、twitterにあげた直後、課長から一報が入り、佐和子さん後転。そこから約2ヶ月。
  • 今もまだ実感ない。何も状況は変わらないから。嬉しいことは嬉しいんだけど。そのうち、あそこから新しい章が始まったんだなという認識はくるのかなと漠然と思っている。(穣さん)
  • 周りの人が喜んでいる姿がいいなぁと思った。(佐和子さん)
  • 知ってもらうきっかけになることは有難い。(穣さん)
  • 「他言して漏れたら、内定取り消しの可能性もあります」の通達もあり、周りはヒヤヒヤしていた。(穣さん)

 *忙しかったこの2ヶ月

  • 3月、東京バレエへの振付の第1回クリエイション。(10日間):Noism以外への新作振付。緊張感もあったが、斎藤友佳理さんをはじめ、物凄くウエルカムな体制にして貰って嬉しかった。
  • 戻ってきて、Noism1メンバー振付公演(3/27、28):芸術監督の仕事(オーダー決め・時間配分等)を山田勇気さんに任せて、穣さんと佐和子さんは本番だけを見た。「初日、楽しかった。みんながやりたいことを追求したなという感じ」(佐和子さん)(←佐和子さんは基本、褒めないのに。一方、穣さんはけなすこともあるが、褒める。)
  • 春休み:高知への凱旋帰省。高知市長を表敬訪問。温かい歓迎。
  • Noism2定期公演vol.12:10年振りの振付。「大変だった」(ふたり)「みんな頑張った。舞台上で良くなってくれたから、それは嬉しかったけど、まあ、大変だったね。何が大変って、若いから、自分がどれだけ出来るかまだわかってないじゃん。『まだいける!』と声を掛けなければならない、マラソンで併走するしんどさ」(穣さん)「エネルギーが吸い取られる」「でも、食らいついていこうとする気持ちはあったし、3日間でどんどん変わっていくのが観られたし良かった」「俯瞰でカンパニーを見ていたら、Noism1のメンバーたちが教え始めていたし、Noism2のメンバーたちも有難く受け取っていたし、そういう先輩・後輩みたいなのが出来てきた方が良い」(佐和子さん)15分休憩の間、約3分位でリノリウムを白から黒に張り替えたり、照明を手伝ったり、色々な仕事を経験できたのは、Noism1メンバーにとっても良いことだった。「みんなで一緒に何かやるのは楽しい。みんなで『ああだ、こうだ』言いながら、野球とかやりたい。監督じゃなくて」(穣さん)

 *穣さんの「謎の」ブルゾンのこと

  • 宮前義之さんとISSEY MIYAKEのエイポック・エイブルのチームの方々からのお祝いの品、TADANORI YOKOO・ISSEY MIYAKEの “KEY BEAUT.Y.”。 横尾忠則さん好きの穣さんが欲しがっていたもの。めっちゃ派手で、「新潟市で着ている人は多分、俺しかいない」「新潟の原信でこの服を見かけても声を掛けないでください」(笑)(穣さん)
  • 佐和子さんからのプレゼントはエイポック・エイブルのジャケットとパンツ(ユニセックス)。着心地良いし、水洗い可能。(この日、パンツを着用。)

 *再び「紫綬褒章受章」に関して

  • 17年間のNoismの活動が評価された。この国の芸術・文化への寄与。
  • 集団性・集団活動の良さ。
  • 「人は入れ替わるが、17年間、ここ(Noism)を通っていった人が作った。Noismの集団性が残っている」(佐和子さん)「たとえ3ヶ月とかであっても、この子がいたっていうこと、痕跡、残影っていうものが記憶のなかに残っているし、Noismのスタジオ、集団のなかに、無自覚・無意識のレベルで残っていて、新しく来る子はそれ、その気配を感じて、一員になっていく」(穣さん)「それがある意味、歴史なのかもしれない」(佐和子さん)「そうね。だから、時間がかかるんだよね、それは」(穣さん)
  • 「目指してきたものが現実のものになり始めているのが、嬉しい」(穣さん)
  • 「今回頂いたものが何かの始まりになるんだとすれば、それはもうちょっと後なんだろうね」「いつも応援してくださっていて、『もっと認められていいのに』と思っている方たちが自分事のように喜んでくださっているとわかるのが、何より嬉しい」(穣さん)
  • コロナ禍で天皇への拝謁はなし。月末に伝達式はある予定ながら、同伴者不可、平服。

 *身体は筋肉痛、頭のなかも大変なことに…

  • 穣さん、絶賛振付中:①サラダ音楽祭(お披露目できるかどうか未定)、②小林十市さんとのDDD、③春の祭典、④夏の名残のバラ、⑤冬の公演、と頭の中に5つの違う公演のプログラムがある状況は今までにない。
  • 佐和子さんはふたつの作品ながら、似ている身体性のため、ほぼ同化し始めている。
  • 「でも、舞踊に打ち込める環境にあるから、ヒイヒイ言いながらもそれを楽しむしかない」(穣さん)「全然全然、それは。朝、起きれないだけで、楽しいです」(佐和子さん)

 *これから…

  • 「変わらないです、何も。まだまだ戦い続けるし、多分、まだまだいっぱい失敗して、いろんな反省もして、これからもそれは変わらないんじゃないかと思う。何を失敗しても、何か大切なことがあって、自分が信じていることがあって、そこだけは目指し続けていきたいので、引き続き、宜しくおねがいします。頑張りま~す。有難うございま~す」(穣さん)

…と、そんな感じでしたでしょうか。盛り沢山で充実のトーク、是非ともアーカイヴにて全編をご覧下さい。それでは、この場はこのへんで。

(shin)