『春の祭典』メディア向け公開リハーサルに行ってきました♪

2021年6月24日(木)の新潟市は日差しも強く、天気予報が予期させた以上に夏っぽい趣の一日。13時からの『春の祭典』メディア向け公開リハーサルに臨むべく、正午前に職場から、充分エアコンを効かせた車でりゅーとぴあへと向かいました。

県内のテレビ局各社のカメラセッティングが済んだ後、劇場の中へと進みます。舞台上に「あの」白い衣裳を纏った舞踊家たちがそれぞれに動きの確認をしている様子が見えてきます。その足許、リノリウムの雰囲気が昨年のプレビュー公演時と違います。また、アクティングエリアを区切る正面奥と両側の幕も異なります。「これが完成形」、そう金森さんは説明してくれましたが、特に彩色が施されたリノリウムは多義的な美しさを放っていました。

予定通りの13時。一旦、緞帳が下り、その手前に一列に並んだ椅子に腰掛けようと、まず井関さんが下手側から登場し、リハーサルが始まりました。やがて、21人の舞踊家にストラヴィンスキーの楽音が重なり、冒頭からの約20分間を見せて貰いました。

その20分間だけに限っても、リノリウムや三方の幕の存在感によってプレビュー公演のときとは随分と違ったものになって見えた印象です。

「OK! OK! Thank you! ちょっと舞台前に集まって貰っていい?」

ちょうど場面転換のところに差し掛かったとき、「OK! OK! Thank you!」と金森さん。続けて、「ちょっと舞台前に集まって貰っていい?」と舞台上の舞踊家を集めて英語で話し始めました。時間にして約10分。距離がありましたので、聞き耳を立ててもほとんど聞こえませんでしたが、「emotional complexity(感情の複雑さ)」なる表現を始め、端々に、「emotion」「emotional」なる単語が使われていたことだけは耳に届きました。その後の囲み取材の際に質問も出ましたが、内容は「トップシークレット!(笑)」(金森さん)とのことでした。

そして13:30からはホワイエで、その金森さんの囲み取材でした。以下に金森さんの答えを中心にいくつか拾い上げてみます。

  • Noismオリジナルの『春の祭典』について:「『生け贄』のテーマ性がどう表現されるのか、現代社会に何を訴えかけるのか、どなたにも感じて頂ける作品になっている」
  • 定員100%での上演について:「ちょっと複雑。舞台人としては客席が埋まった熱気のある舞台で実演したいが、来場頂くお客様には心理的な負担をお掛けするので申し訳ない思いもある」
  • プレビュー公演時との違い:「そんなに変わってないですよ。リノリウムが変わっただけ。印象がだいぶ違う。一年間期間をおくことによってより必然性をもってしまった。昨年よりも作品が重みを表現しなければならない、その重みを感じている。…『最後』が変わりました。作品の終わらせ方が変わりました。あまりにも現実の世の中が大変だし、あまりにも困難なので、舞台芸術を通して、何を最後に届けるか。混沌とした精神の痙攣のような作品の最後、お客様に届けるメッセージは変わりましたね。それは必然だった。稽古していてこれは違うねって。…『希望』というのとはちょっと違う。ある種の『願い』とか、『祈り』みたいなものがどうしても加わらざるを得ないっていうか。『絶望』を『絶望』のまま提示するのはちょっと…、劇場の外が『絶望的』過ぎるっていうか…」
  • コロナ禍における芸術家:「世の中と劇場の中の問題をこれだけ考えたことはなかった。戦後世代ですから、ここまで世界的な事象を日常生活で経験したことがない。そのなかで芸術に問われる意義とか価値は違ってきている」
  • コロナ禍、Noismの『春の祭典』が観客に届けるもの:「難しいですね。…難しいな」(しばし考えた末に)「何を感じて欲しいか、…『力』かな。『生きる力』かもしれないね。価値観とか、思考の産物じゃなくって、『生きる』っていう強さ。『生きる』って何だろうとか。人は誰しも一人では生きていない。『他者と生きる』ってどういうことかっていうことかな。上手く言えないけど」

囲み取材を終えて…。劇場の外にあった当たり前の「日常」が歴史的にも数えるほどの暗澹たる「非日常」へと反転してしまっている現在、金森さんとNoismは如何なる劇場的な《真正》「非日常」を見せてくれるのか、金森さんの言葉を聞いて期待は否応なく募ることになりました。言い換えるなら、それは、来月(7月)、傷を負った私たちの心に届き、私たちを鼓舞する「ハレ」なる舞台が観られることを確信するに充分な時間でもありました。

新潟から始まる今観るべき舞台、ストラヴィンスキー没後50年 Noism0+Noism1+Noism2『春の祭典』。チケットは絶賛発売中です。よいお席はお早めにお求め下さい。来るべき夏、Noismが示す「春」から目が離せません。

(shin)

「『春の祭典』メディア向け公開リハーサルに行ってきました♪」への2件のフィードバック

  1. shinさま
    ありがとうございました!
    久しぶりにNoismの舞台を見て、私自身、生き返る心地でした。

    リノリウム&暗幕が変わっていて、
    そして照明も、とてもよかったですね♪

    7/2(金)、7/3(土)まだお席があります。
    7/4(日)も満席ではありません。
    どうぞお誘い合わせてお運びください。
    素晴らしい舞台ですよ!

    今回、2階席から見ましたが、全くOK!
    どこから見ても、本当に素晴らしい!!
    ぜひどうぞお運びください。
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      コメント、有難うございました。
      「生き返る」感じ、わかります、わかります。
      ホント、Noismの舞台に飢えていたんだなぁって。
      ほんの20分間でしたが、まさに「生き返り」ました。
      それと、プレビュー公演のときには「見送った」(金森さん)という完成形のリノリウムと幕の存在感は舞台上に圧倒的な空間を拵えていましたよね。
      そこに様々に照明が当たるとき、その多義的な美しさにはもう息を呑むしかありませんでした。あれはもう、今回、本公演の見所のひとつと言って良いと思います。皆さん、どうぞお楽しみに。
      いつも「超えてくる」金森さんとNoismは今回も健在。プレビュー公演はあくまでもプレビュー公演。「完成形」の本公演を観ずして、『春の祭典』は観たことにはならないのだなぁと。
      皆さん、乞うご期待ですよ。
      (shin)

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