『BOLERO 2020』特別上映と井関さんのトークを堪能♪ (@新潟市民映画館シネ・ウインド)

汗ばむような晴天の2021年6月5日(土)、期せずして同様に「2020」なる年号をその冠に据えた、さるスポーツイヴェントへの灯火運搬継走が実施された新潟市。交通規制の影響やら駐車場の混雑やらがあると嫌だなと思い、早々に万代界隈に入って迎えた新潟市民映画館シネ・ウインドでのNoism映像舞踊『BOLERO 2020』特別上映プラス井関さんのトークイヴェント。さしたる混乱もなく移動できてホッといたしました。

全席完売のこの日、トークの司会を担当される久志田渉さん(さわさわ会副会長)の「混雑を避けるために早めに発券を済ませて下さい」の言葉に従ってチケットを手にして入場時間を待っていると、続々見知った顔がやって来て、シネ・ウインドがりゅーとぴあと化したかのようで、いつものミニシアターとは異なる雰囲気に包まれていきました。

予告編上映なしで、定刻の17:30に、徐々に館内が暗くなると、Noism映像舞踊『BOLERO 2020』の上映が始まりました。そこからの16分弱、これまで幾度となく様々な端末で覗き込むようにして観てきた映像舞踊が、映画館のスクリーンに投影されてみると、まるで新鮮な体験そのものであることに驚きました。大きく映る分、誰を観るか、どこに目をやるかを選択しながら意識的に観る感覚もこれまでにないものでした。また、終盤、モノクロも混じってくる箇所では『ニューシネマ・パラダイス』(ジュゼッペ・トルナトーレ)クライマックスのモンタージュシーンのような趣を感じたのですが、それもこの日の新たな肌合いでした。あくまで個人的な感想ですけど…。

ラヴェルが作り出す高揚感の極みのうちに、上映が終わると、大きな拍手が沸き起こり、それは途切れることなくエンドクレジットの最後まで続きました。個人的に、映画のスクリーンに向かって拍手したのは『シン・ゴジラ』(庵野秀明)の「発声可能上映」のとき以来2度目のことでしたが、そこは「りゅーとぴあ化」したシネ・ウインドですから当然と言えば当然ですよね。

で、終映後、ほどなくして井関さんのトークイヴェントに移行しました。

以下、久志田さんの仕切りで井関さんが語った内容を中心に紹介していこうと思います。

『BOLERO 2020』のクリエイション: コロナ禍の昨年のこの時期作っていた。『春の祭典』公演がキャンセルとなり、ポッカリ空いた時間。舞踊家には踊り続ける必要があり、忘れられたらおしまいという思いもあった。突然作ることになり、『春の祭典』と同時進行で、2週間くらいで仕上げたもの。金森さんは数年前から「ボレロ、ボレロ」と言っていたこともあって、ベジャール版はあまり意識することもなかった。当初からそこにカメラがあり、他者の視線の象徴としてカメラは必然だった。

『BOLERO 2020』の撮影: 当初はメンバーの自宅で撮影する案だったが、メンバーが強く拒否。なかには「東京に住んでいます」などと見え透いた嘘をつく者(「香港人」!)まで出るほど。(笑)で、SWEET HOME STORE TOYANO店の協力を得て、撮影できることになったが、撮影できるのは定休日の1日かぎり。それも窓外からの自然光が変わってしまう19時には撮了する必要があった。9時に井関さんの撮影から始まり、一人あたりMAX45分でいかないと12人は撮れないタイトさ。みんな本当にパニックで、祈るような気持ちだったが、撮影を終えたメンバーがカメラの後ろでカウントを打したり協力して一発撮りを乗り切った。編集(遠藤龍さん)も大変だった筈。細かく音を覚えている必要があり、「第2のダンサー」と言える。

『BOLERO 2020』がもつ別の可能性: いつか生で観て欲しい。映っていないところでやっていることもあるので、一人ひとり全ての映像も観て欲しい。「きっと生でも…」、意味深な様子で大きく眉を動かしながらそう繰り返した井関さん。スタジオでも全員一緒に踊ったことがあるのだそうです。興味を掻き立てられずにはいられませんよね。

芸術選奨、「新潟発の舞踊家」: (受賞の感想を求められ、)遠い昔のような…。でも、びっくりした。こういうニュースって、何も考えていないぼーっとしている時に来るんだなと思った。故郷の高知にいたのが16年に対して、新潟で暮らし始めて17年。新潟という地方での活動を日本の舞台芸術の方々が「新潟発の舞踊家」と評価してくれたことが嬉しかった。この街、この舞踊団がなかったら、私はどこにいたんだろうと思う。このコロナの状況下、東京の舞踊家もウーバーイーツで食いつなぎ、踊るどころじゃないなか、改めて、専属舞踊団の意義を強く感じる。新潟の時間と場所が与えられていることから、言い訳は出来ない、最高のものを見せなければならない。

Noismのこれから: ①「『春の祭典』は研ぎ澄ますだけでなく、何か変わってくると思います」と井関さん。リハーサルでもカウントが変わっているし、細部の変化も20数人が合わさると大きな変化になる。「サプライズ・ヴァージョンです」と笑う井関さん。

②(Noismの精力的な活動予定に関して)「もっとあります。大人の事情で言えないんだけど、いっぱいあるんです」と微笑んだ井関さん。

③『夏の名残のバラ』は、金森さんが自身、「初の映像監督作品」とも位置づける作品。井関さん的には、4人と踊っているような作品で、その4人とは、山田さん、カメラさん、コードさん、枯れ葉さん。見た目の印象とは異なり、実に実験的な作品でもある。

映画館、そして劇場: 見知らぬ人と一緒に観る体験。その場所に行かないと味わえないエネルギーの通い合いがある。自由に非日常に触れることが出来るようになって欲しい。

…ここには書き切れないほど、多彩な内容が語られた充実のトークイヴェントも、やがて終わりの時間を迎えると、館内に再び大きな拍手が谺しました。

その後、ロビーでの井関さん関連書籍の販売に際して、サイン会も行われる由。私も「Noism井関佐和子 未知なる道」(平凡社)を改めて一冊求め、井関さんと金森さんおふたりにサインをして頂きました。

そして一緒に写真を撮って頂けないかとお願いすると、金森さんから「勿論」と快諾を頂き、そこからはもう入れ替わり立ち替わり、大撮影会の風情に。シネ・ウインドの入口付近は大盛り上がりを見せ、金森さんも「記者会見?」と笑うほど。これはもう嬉し過ぎる余禄♪そこで撮った写真のなかから数枚ご紹介します。

さて、もう残り一ヶ月を切った7月2日(金)に『春の祭典』りゅーとぴあ公演の幕が上がります。この日のトークでその日までのカウントダウン感も大きなものになりましたが、まずは、それまでにもっともっと映像舞踊『BOLERO 2020』を観倒したくなったような次第です。そんな人、私だけではない筈。こちらのリンクもご利用下さい。

『BOLERO 2020』特別上映レポートはここまでと致しますが、もう一枚、画像の追加です。司会を担当した久志田さん、司会のみならず、準備から大忙し、もう八面六臂の大活躍でしたので、その労を労いたく、こんな一枚を。久志田さん、色々ご苦労様でした。そして中身の濃い時間をどうも有難うございました。m(_ _)m

渾身の墨書!

また、『BOLERO 2020』に関しましては、当ブログ中、以下の記事も併せてご覧頂けましたら幸いです。

それでは。

(shin)

「『BOLERO 2020』特別上映と井関さんのトークを堪能♪ (@新潟市民映画館シネ・ウインド)」への3件のフィードバック

  1. 皆さま
    昨日のトーク内容の記憶と余韻が消えぬうちに、
    早速、今朝『BOLERO 2020』改訂版をレンタルしました。
    上の記事のなかに取り込まずにしまった井関さんの言葉が表すところをこの目で確かめたかったからでもあります。
    その言葉、久志田さんが群舞のところでピタリ合う部分の快感について触れた際の井関さんの発言です。
    「12人の癖があるユニゾン作りは大変だった。穣さんの癖だけなら踊り易いんだけど…」というものです。
    その言葉を頭に置きながら見直してみますと、「な~る」って感じでした。
    もともと、12人が持ち寄った断片を金森さんが構成するというかたちでのクリエイションですから、動きの流れも通常とは異なるなか、クライマックスではピタリ合わなきゃいけない…。
    そこに至る迄、あちこちに散見されたパーツ(動き)の痕跡を留めながら、見事にひとつに収まる快感には極上のものがある訳です。
    (でも、油断していると、音楽の陶酔感に酔ううちに目の方が疎かになっちゃってたりもしがちで…。NHKの人気キャラクター(「永遠の5歳児」)には「ぼーっと観てんじゃねえよ!」って叱られてしまいそう…。(汗))
    この度は、今までとは違ったものが見えてきた気がしました。まだまだ観なきゃと思った次第です。
    (shin)

  2. shinさま
    ブログ&コメントありがとうございました!
    文章も写真も素晴らしい!!

    いい上映会でしたね♪
    『BOLERO 2020』改訂版はもちろんですが、井関さんのオーラに感嘆しました!
    上映後、白い衣装で登場した佐和子さんは輝くばかりの美しさ♡
    うっとりしました♡
    お話も楽しく面白く、スムーズに進みましたね♪

    名司会の久志田さんは前日仕事を休んで準備に余念がなかったそうですよ。
    久志田さん おつかれさまでした&ありがとうございました!

    トークが終わり、シネ・ウインドの入口付近に行くと、井関さんと金森さんが!
    お二人並ぶと、もうお雛様とお内裏さまですね~♡
    この世の者とは思えません。
    存在自体が非日常です。

    お二人とも何やら少し瘦せたような・・・
    聞けばなんと、コロナ騒ぎで自宅に引きこもっていた間に痩せたとのこと!
    そんなバカな~
    「家にいるといつもより動かないから、食べるのを少し控えたら痩せちゃった」のだそうです!
    すごいですね~
    家にいると普通は太るんですけどね~
    もともと細いのに、ますますほっそりと美しく、精霊のようなお二人♡

    舞台で見るのとはまた違う、間近で見るお二人に目が♡♡でした♪

    さて、shinさんが張ってくれたリンクから『BOLERO 2020』改訂版を再々々視聴いたしましょう♪
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      コメント、有難うございました。
      並びに恐縮です。

      そして久志田さんの聞き上手な仕切りはいつもながら冴えていましたね。ホントに密度の濃い話を聞き出してくれて、アッという間でした。前日、お休みをいただいた話、私たちも聞きました。大感謝です。

      そしてそして井関さんと金森さんのいつも以上にシュッとした姿についてです。私と連れ合いも一目見て、すぐ「痩せた!」と感じたので、私たちも金森さんに訊ねてみました。
      すると、金森さん、「さっきから何人もにそう言われてて。でも、実際、そんなに痩せてはいないんですけど…」と。
      でも納得できなかったので、「例えば、『Fratres III』で観た金森さんは、どちらかというと、細マッチョみたいでしたから、着痩せして見えるんでしょうか」と食い下がる私。
      すると、金森さん、「ああ、それ、舞台上ではアドレナリンが出るので、筋肉がパンパンに盛り上がるんですよ」とのお答え。
      「マジか!」と思ったものでした。
      でも、やはりそれだけじゃなくて、常人とは逆の「巣籠もり効果」もあった訳ですね。
      漸く、腑に落ちました。
      fullmoonさんが言われるとおり、非日常な存在だとの結論に至りました。(汗)
      (shin)

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