心を鷲掴みにされ、身体は熱を帯びた新潟公演9日目の『Duplex』

例年より一日早い節分と立春を経た週末、2021年2月6日(土)の新潟市は、前日早朝の物凄い路面凍結が嘘のように、穏やかな日差しに恵まれ、暦の上のみの春から、日々、その「兆し」が大きくなっていることを実感できる一日でした。

そんな午後、りゅーとぴあ・スタジオBへ、『Duplex』の新潟公演9日目を観に行ってきました。都合3回目の鑑賞でした。有難いことです。

過去2回は、全体を視野に収めることが出来るほぼ中央部の席から観ていたのですが、この日は連れ合いが「最前列で観よう」と言うので、その言葉に従って、首振り覚悟で、一番前の席を選んで腰掛けました。複数回観るのなら、やはり、一度はその選択はアリですね。森さんの『Das Zimmer』では、あたかも「部屋」の一員ででもあるかのように、願えども得られない繋がりに身悶えし、「不在」に身を焦がす、その切なさを共有しましたし、更に、金森さんの『残影の庭』にあっては、3人の腕の産毛さえ視認でき、空気の震えまで伝播してくる近さはもう「圧巻」の一言で、一瞬にしてあたりを浸してしまう武満徹の「一にして全」の楽音とフォルテッシモで迫ってくる無音を全身で浴びることと相俟って、心を鷲掴みにされる時間を堪能しました。両作品とも、これまでの少し引いた席から視線を送っていたときとはまったく別物の見え方でした。

『Das Zimmer』の情緒たっぷりのピアノは誰だろう。ショパンなど、勝手に、無責任極まりなくも、「ホロヴィッツ」などという名前を思い浮かべたりするのですが、まったく根拠もないことでして、どなたか詳しい方からのご教示を賜りたいところです。宜しくお願い致します。m(_ _)m

『残影の庭』は、「耳を澄ますこと」と「目を凝らすこと」により、繰り返される季節の移ろいに、そしてその変化の「兆し」に、「奇跡」を感得する深みに打たれずにはいられません。また、この日は山田勇気さんの浮かべる表情が、金森さんとのデュオのときと、井関さんとのデュエットのときとでは全く異なることに目が反応しました。

どちらの作品に対しても、腕がだるくなるくらいに、少しでも大きな拍手を送りたいと思わずにはいられませんでした。その後、出口付近で手指消毒をして帰ろうと、検温機能付きの機器に両手をかざすと、いきなりピー音が鳴り、「37.7℃」と表示されて、ちょっと焦ることに。しかし、「そんな筈はない」と、慌てて隣のサーモグラフィーカメラに移動し、今度は額で測定させると「36.4℃」という数値を出してくれたので、ホッと胸を撫で下ろしました。なるほど、この公演の「熱さ」は、間接的に、検温機器にも伝わっていた訳でして(←ホントか?)、「ブラボー!」と叫べない今、先刻の精一杯の拍手が演者にその熱量を伝えてくれていたら嬉しいと思いながら、帰路につきました。

『Duplex』新潟ロングラン公演も残すところ、あと3公演となりましたが、楽日前日の2月10日(水)(19:00~)の公演は、11:00より若干の当日券販売があるとのこと。(りゅーとぴあ2Fインフォメーションでの販売。)「争奪戦」が繰り広げられるかもですけれど、諦めていた方には「吉報」と言えるのではないでしょうか。チャレンジあるのみです。もしでしたら、ご検討ください。

(shin)

「心を鷲掴みにされ、身体は熱を帯びた新潟公演9日目の『Duplex』」への3件のフィードバック

  1. shinさま
    公演9日目のブログアップ、ありがとうございました!
    最前列とのこと♪
    おめでとうございます。
    最前列は迫力ありますよね。
    熱が出たそうで・・・(笑)
    私は明日10日目、参ります。
    どこに座ろうかな~
    (fullmoon)

    1. fullmoon さま
      コメント、有難うございました。
      最前列、今回はいつにも増してド迫力ですね。
      過去、2回は演者と目の高さが一致する席からの鑑賞で、
      視線がバッチリ合う瞬間のドキッを堪能してきましたが、
      今回は演者と床面を共有する席の感じから、
      「眺めている」以上の感覚に誘われました。
      仄暗さのなか展開する『Das Zimmer』では、距離を隔てては見えにくいディテールが視認できたり、
      輪郭がくっきりの『残影の庭』にあっては、3人が身体を揺らすのにつられそうになったり、はたまた、「床ドン」の振動が腹に響いてきたり、ともう大満足状態に…。
      fullmoonさん、本日も席選びから楽しいですね。
      感想など、お聞かせください。

      ところで、楽日前日の当日券販売の報、若干枚ながら貴重ですね。fullmoonさんなら、ボウリングで言う、10フレームの「パンチアウト」締めも狙えますね。如何、動かれますか。

      いずれにしましても、大好評のうちに、『Duplex』新潟公演もいよいよ大詰め。益々乗りに乗った、或いは、深みを増したステージとなってきていますから、このあと観る機会に恵まれた方はどうぞお楽しみにということで。
      (shin)

  2. shinさま
    今日は早くも新潟公演最終日となりましたね!
    またまたソワソワ、ドキドキしております。

    10日目は、shinさんに影響されて、最前列に座りました!
    圧倒されますね~~~
    まさに眼福です♪

    昨日の当日券はどうしようか迷いましたが、別途入手していたこの日のチケットを未見の方にお譲りしましたし(なんと計3枚も!)、最終日を楽しみにすることにして、この日は並びませんでした。
    早々に売り切れたそうで、よかったです♪

    shinさんの、本日の公演ブログ、楽しみにしております。
    ワクワク♪
    (fullmoon)

shin へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA